クールビューティーな紗夜さんを返して(涙)   作:黒ハム

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更新ペースが安定しないのは許して……
それはさておき、前にやったアンケート……うん。うちの紗夜さんはデレ要素が多いんだなと改めて思いましたね。ところで、その他って答えた人たちは一体何デレを想定したのだろう……?


キッチンは女の戦場だって誰が決めた?

 ある日の放課後。俺の姿は……

 

「あぁ……何でここに居るんだろう」

 

 花咲川女学園にあった。

 勘違いしないで欲しいのは俺は決して不法侵入をしたとかそういう訳ではない。そして、拉致されたとかそういうわけでもない。しっかりとした理由があって来ている。まぁ……

 

『これより。三校合同の料理対決、三日目をはじめさせていただきます。では大将の方々、前へどうぞ』

 

 そんな宣告と共に前に出る。……ほんと、何でこんなことになったんだろうなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 担任から帰りのHRで、お前後で校長室行け、と宣告を受けたのがテスト最終日のことだった。つまり、あの徹夜で会議した日の日中の出来事である。

 担任が言うに、詳しいことは分からんと言われた。用件が不明=面倒ごとだと思い、頭を抱えたくなったが、拒否するわけには行かず渋々校長室へやって来た。決して、サボろうとしたら放送で呼び出すと言われたわけではない。文化祭の時みたく呼び出されるのはゴメンである。

 そして入室するとそこには校長先生、家庭基礎の先生、そして女生徒二名がいた。ちなみに生徒の方は顔を見たことがある程度で名前すら知らない。

 

「揃ったようだね」

 

 重苦しい雰囲気を出す校長。俺としてはテストからの開放感を味わいたいのだが……。

 

「これに名前を書いてくれ。まずは君から」

 

 そう言って家庭基礎の先生が一人一人名前を書かせる。何故か書く場所を指定されたが……どうでもいっか。

 

「君たちに協力してもらいたいことがある」

 

 協力……あぁ。めんどくさそう。

 

「めんどくせぇ感じがするので断っていいですか?」

「君たちには今度。花咲川で料理対決に参加してもらいたい」

 

 …………は?

 

「…………待ってください校長先生。何故そんなことを?」

 

 女生徒の片方が質問を投げかける。当然と言えば当然か。

 

「うむ。話せば長くなるのだが……」

 

 そう言って語り始めたので、簡単に説明していこう。

 羽丘と花咲川に調理部とか料理部的なのがあるらしく、冬休み明けにある何か料理の大会?に参加するそう。で、空気を味わうじゃないけど、交流戦をする話になってウチの虎南にも何故かお声が掛かったそう。曰く、よくあなた方の生徒は見ているから是非と。……誰だろうなぁーそんなに目撃情報を集めている奴ら。

 で、ウチには調理部とかそういうのはないが、近隣高校との付き合いを悪くするのは、よろしくないと判断し快く承諾した校長。ただまぁ、適当に料理好きな人たちを送り込もうとしたが……何をとち狂ったのか勝負に発展してしまい、結果……

 

「我が虎南高校が下に見られるわけにはいかない。というわけで、精鋭部隊、君たちを招集したわけだよ」

 

 はっきり言おう。ウチの高校は多分馬鹿って思われているぞ?だって二つとも進学校だし?普通科しかない普通の高校のくせに半分男子校状態だし?それに何部とは言わないが問題を起こしていたりするし?

 

「1年生時の家庭基礎……特に食分野の成績や調理実習時の振る舞いから選出しました」

 

 ウチの高校は家庭基礎の先生は一人しか居ない。まぁ、一年生の時しか授業がないし、数が多くても意味がないな。

 

「紙面にまとめて渡すので各自読むように。何か質問は?」

「はい。いつやるんですか?」

「平日の放課後。三日間に分けて行われる」

「すみません。バイトと部活が忙しいんですけど……」

「全日参加はしなくていい」

 

 どういうこと?と思い聞いてみると、各校は三人の代表者を、そしてその中でも先鋒、中堅、大将を決めてもらう。本当の大会のルールは色々とあるらしいが、交流戦だし何度も何度も集めてもあれという理由で、一日目は先鋒、二日目は中堅、三日目は大将が料理を振る舞い戦っていくらしい。

 で、勝敗?だが、これは大会に乗っ取り審査員による点数勝負。実際が何人かは知らないが今回は各校の料理部の顧問だったりが審査員を務めるらしい。まぁ、課題点を見つけてそこをどうするかというものだったり、他人の料理のふるまいからも学んでほしいという勉強会に近い側面があるのでこの形式とか……うん。俺関係ないわ。

 だからぶっちゃけ、俺たちは順番だけ決めて、その日だけ参加すればいいらしいが……はっきり言おう。やっぱりめんどくせぇと。

 

「というわけで、もう先鋒、中堅、大将は決まっている」

 

 は?って思うと最初に自分で書いた紙を見せられる。……あーわざわざ書く場所を指定してきたのはそういう狙いかぁー……詐欺だろ。いや、詐欺の常套手段じゃないのかこれ?いいのかこういうの?ねぇいいのか?

 

「私は大丈夫です」

「私も」

「え?異論あるの俺だけ?いや、ぶっちゃけ面倒くさいから降りたいんですけど?」

「大丈夫。大将は冬木慧人くん。君に任せたよ」

「いやいや。全然大丈夫じゃないですよ?」

 

 何故だろう。文化祭といい、万引きといい。二年生になって校長先生とお話する機会が立て続いたせいで名前と顔を覚えられてしまった。悲しい。

 

 

 

 

 

 とりあえず花咲川まで歩いて行く。今日、校長から呼び出され聞いた話によれば先鋒は羽丘の、中堅は花咲川の人がトップで、ウチは先鋒、中堅共に3位。ただまぁ、即興のチームで、しかもそういうの目指してなくて、普段から練習している彼女らにそこまで迫るのは大健闘とのこと。そりゃそうだ。相手ガチ勢だろ。

 何で毎回俺はそういうのに巻き込まれるんだよ。サボっていいで……え?ファストフード店のクーポン100円分?いやいや、もう一声。もう一声……何?なら、ファストフードで使えるカード500円分だと?順位に応じて、倍にしていく?契約書に書いてもいい?……乗った。3位で500円、2位で1000円、1位で2000円?オーケーオーケー交渉成立だ。やってやろうじゃねぇか。決して金で釣られたわけじゃないぞ。

 

「ここが花咲川……」

 

 って言ってはみたものの見ることは初めてじゃない。何ならここはランニングでよく通ってる。ただまぁ、入るのは初めてだな。

 さてと、確か校門で迎えというか案内役の人が待ってるとか何とか。

 

「お待ちしておりました。虎南高校代表の冬木慧人さん」

 

 背後から声が掛けられる。振り向かなくても声だけで……いや、気配だけで分かる。

 

「紗夜さん?」

「そうですよ。慧人さんの案内役です」

「え?何で?」

「風紀委員ですから」

「あ、なるほど」

 

 風紀委員……確かにそうだ。ここは女子校。そんなところに男子生徒を、交流試合とは言え招くのだ。学校からの信頼が高く、厳格な人たちが案内するのは不思議じゃない。

 それに騒動を起こさせない為にも風紀委員という立場の人間は必要だろう。

 

「では行きましょうか」

 

 すると俺の半歩前を歩いていく。時折後ろを振り返り着いて来ていることを確認している。

 

「まさか、慧人さんがこのような形で私たちの学校を訪れることになろうとは……思ってもみませんでしたよ」

「俺もまさかです。文句は校長に言ってやりたいです」

「なるほど。何で釣られたのですか?」

「おっと、そこまでお見通しでしたか」

「えぇ。あの慧人さんだから、めんどくせぇ、と断っていると思いますからね。一体何で釣られたのかと」

 

 紗夜さん。正解。

 

「まぁ、色々と。それより紗夜さん。いつものファストフード店で使えるカードがもらえそうなんですけど今度一緒に行きます?」

「是非お願いします」

 

 微笑んで答える紗夜さん。

 それにしても凄いなぁ……学校の外だったら目を輝かせて、ワクワクとした気持ちを抑えきれずに応えていただろうに……。今の彼女は何というか……そう。俺が求めている受け答えをしてくれる。そうか。学校内だと風紀委員という厳格な立場や本人の性格の関係でこんな感じなのか。

 こんな紗夜さんを毎日見られるなんて羨ましい……!

 

「こちらが会場です」

 

 そうして開けられた扉。そこを通ると……

 

「うわぁ…………帰りてぇ」

 

 一斉にこちらを見てくる多数の目。羽丘と花咲川のそれぞれのチームと思える人たちが固まっており、観客っぽい感じの人たちも何人か。確か観戦自由とか何とか。

 対して、虎南高校のスペースは誰も居ない。まぁ、キャプテンたちには今日はこれのせいで休むと言ってあるが、観戦出来るとは言っていない。言ったら絶対にこっちに来るからだ。応援?違うな。合法的に女子校に入れるーとか言ってやってくるだろう。後はなんちゃってチームメイトは当然いない。あの呼び出された日以来会ってないし当然か。

 圧倒的アウェイ。そして圧倒的場違い。俺の心は早くも帰りたくなっていた。…………ちなみに紗夜さんがこの場にいなかったら、今すぐ棄権→脱走しようと考えているのは内緒だ。だって、棄権しても金は貰えるし(ゲスい)。

 

 

 

 

 

 ということを思い返しながら俺は一歩踏み出す。更に場違いを加速させたのは熱の入りようだろうか。

 俺は淡々とし、どこかめんどくさそうに前に出たのに対し、花咲川も羽丘も「部長!頑張ってください!」とか「決めてください!リーダー!」とかなんとかで……はぁ。よく見なくとも花咲川と羽川の大将の二人はやる気満々だ。しかも、部員と思われる人たちが少しでも技を盗もうとメモ帳を手に目を輝かせている。マジか。温度差がヤバい。助けて。冬に向かってるのにここ暑い。

 

「指定食材は先日お伝えしたとおりです」

 

 指定食材。どうやら、各対決で指定された食材は料理の中にどんな形でもいいから使えとのこと。メインでもサブでも。……ただ、一つだけ問題がある。

 

「すみません。今回の指定食材って何ですか?」

 

 俺は指定食材の説明は聞いたが、今回の指定食材を聞いた記憶はない。

 

「……え?この前、呼び出して伝えたよね?」

 

 審査員のうちの一人である我が家庭科の先生が声をかけるが…………?

 

「…………あー……聞いてなかったです」

 

 そういや、数日前くらいに呼び出されたなぁー……全く聞いてなかったけど。

 

「ふ、冬木くん?伝えてなかったっけ?事前に作る料理は決めておかないと当日困るって……」

「…………?」

 

 え?当日その場で考えるんじゃ……あー指定食材が事前に教えられる時点で察しか。

 

「「…………」」

 

 何か花咲川と羽川の代表者の人たちが、本当にコイツは大丈夫なのか?って目で見てくる。失敬な。大丈夫じゃねぇよ帰りてぇ。紗夜さんが居なかったら今すぐ脱走ものだ。

 

「……えぇ。改めて、今回の指定食材は卵。制限時間は60分です。食材など、リストは先日お渡しした通りで、前に置いてありますのでご自由に」

 

 リスト……リスト……あぁ、あれか。何かもらったなぁ。

 

「それでは、大将戦スタート!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人の動きは早かった。既に作業工程を頭に入れていたせいか、食材を取る段階から迷わず自分たちの調理スペースに持って行った。

 対して慧人さんは、自分の調理スペースで目を閉じて腕を組んだ状態から動かなかった。

 

「どうしたのかな~慧人。動かないと時間なくなっちゃうんじゃないの?」

「だよねーいやぁ、何を考えてるんだろうね」

「開始から五分……動きなしですか…………って日菜に今井さん!?どうしてここに!?」

「あたしはるんっ♪ってしたからやって来た!」

「アタシはヒナに連れられてだね!」

「ちなみに彩ちゃんたちはなんで居るの?」

「それは日菜ちゃんに言われたくないな……」

「私たちは慧人が紗夜ちゃんに連れられて来たから来てみただけよ。ついに女子校に不法侵入して捕まったかと心配になってね」

「あれ?千聖ちゃん……何か面白そうな香りがするって言って付いてきただけだよね?」

「彩ちゃん。静かに」

「あはは……でも本当に慧人くん動かないね。他の人たちは既に張り切っているのに」

 

 他の調理部?の部員も邪魔にならないところから観察し、時折メモを取る。その姿は真剣そのものだ。対して私たちのようなただの観客は雑談をしている。そもそも私たちぐらいしかただの観客がいないのはアレだが。

 

「ねぇねぇ。あれって何を考えていると思うー?」

「え?料理の工程とかを頭の中でイメージしているんじゃないの……?」

「甘いわね。アレは今日の夜ご飯を考えている顔だわ」

「いやいやー学校内での紗夜が格好良くて感傷に浸ってるんだよ☆」

「おねーちゃんはどう思う?」

「はぁ……丸山さんも白鷺さんも今井さんも……分かっていませんね。あの慧人さんですよ?一つしかないじゃないですか」

 

 三人とも、まだまだと言わざるを得ない。特に丸山さん。テストで出たら0点の回答だ。白鷺さんと今井さんはまだ点数が貰えるだろうが……やれやれだ。

 

「ファストフード店で今度、期間限定の二種類のポテトが発売しますが、どちらを注文しようか迷っているんですよ」

「……え?」

「な、なるほど……!それは盲点だったわ……!」

「た、確かに……!慧人くんならあり得る……!」

「さすが紗夜ちゃん……!」

「アタシたちでは分からなかったよ☆」

「……それって……おねーちゃんが考えていることだよね……?」

「いいえ。私は二つとも頼むつもりですから迷っていません」

 

 当たり前じゃないですか。一体何を言っているのやら。

 と、遂に長く閉じられていた目が開かれ、行動を開始する慧人さん。その目には迷いがなかった。

 

「遂にどちらのポテトにするか決めたのね……」

「きっとそうだよ……あの目は間違いない」

「さぁ……抹茶フレーバーか紅茶フレーバ-か」

「ど、どうしよう……比較的まともなはずの三人が全速力でネタに走り始めた」

「「「ネタとは失礼ね(失礼な)(失礼ですね)」」」

「日菜ちゃん~……」

「あはは~大丈夫だよ。彩ちゃんに比べたらマシだよ!」

「日菜ちゃん~……!」

 

 丸山さんは失礼ですね。こっちは真面目に話をしていると言うのに。

 

「……?何だか騒がしいですね」

 

 慧人さんが動き出してからどうにも、周りが騒がしい気がする。何があったのでしょうか?

 

『な、何なのあの包丁捌き……!』

『は、早い。いや、早いだけじゃなくて凄い正確……!』

『あんなの一朝一夕で出来るものじゃない……!』

『一体、どれだけの研鑽を積んでいるというの……?』

 

 ああ、なるほど。そういうことでしたか。

 

「さすが紗夜ちゃんの旦那さんね」

「えぇ、本当にさす……って白鷺さん!旦那さんじゃなくて信徒の間違いですよ!」

「いやー個人的には信徒はアウトじゃないかと……」

「ごめんなさい。気が早かったわね」

「全くです。旦那さんというのはまだ早すぎです」

「あはは~否定しないね~」

「えっと……どうしようね日菜ちゃん」

「んーあたしは面白そうだから慧人を見て来るね!あの三人は任せたよ!(スタスタ)」

「任されても困るよぉ……」

 

 そんな感じで時間が経っていく……凄いなぁ……ところで、何を作るつもりなんだろう?切った野菜がかなりの量があることに驚いている。あんなに大量の野菜とかを使う料理って一体……?

 

 

 

 

 

「残り五分です」

 

 気付けば時間がかなり経っていた。どれもこれも白鷺さんと今井さんがからかうせいだ。

 この勝負は盛り付けまで時間内に終わらせないといけないらしく、見栄えを良くするためにいろいろと思考を張り巡らせている女子の二人。対して、まだ皿の上に何も載っていない慧人さん。

 

「残り三分です」

 

 女子の二人が審査員席に料理を持って行く中、ようやく皿の上に料理が載る……なるほど。チキンライスでしたか。それなら、見栄えがあまり関係ない……?

 

「残り一分です」

 

 あれ?今回の指定食材って卵……?卵は?え?慧人さんがまさかそんな初歩的なミスをするなんて……

 

 ヒュッ!

 

 その時何かが飛んだ。いや、飛んだと言うほどではないかもしれないが、何か黄色い物体が宙を舞った。それは、慧人さんの持っていた皿の上に綺麗に着地した。

 そして、その黄色いものを切ると……

 

『な、何だって……!』

『あんなに卵をふわふわさせるなんて……!』

『嘘でしょ……?見栄えまで美しいなんて……』

 

「完成です」

 

 審査員席に皿を出しタイミングでタイマーが鳴る。

 

『た、タイミングまで完璧なんて……!』

『まさか最初のアレは時間調整のため……?』

『ま、まだよ……!味では勝てているかもしれないわ……!』

 

 そんな声を受けながら自分の調理スペースに戻ってきた慧人さん。すると、

 

 ヒュッ!

 

 また何かが飛んだ。そしてそれを皿で受け止める。

 空いたフライパンに卵を流し入れ……ちょっと待って?一体何をしているの?

 

「あ、あの冬木くん?もう必要ないんだよ?」

「あ、いえ。これ全部俺の夕飯の分ですのでお気になさらず」

「……え?ま、まさか自分の分までちゃっかり確保?多いなぁとは思っていたけど……」

「だって腹減ったので」

「「「…………」」」

 

 会場が静まり返った気がする。だって、今彼の目の前には普通に5皿、五人前くらいあるんだから。

 

 ヒュッ!

 

 卵が飛んだ。そして卵が入る。

 

 ヒュッ!

 

 審査員が実食している中、また卵が飛んだ。そして卵を流し入れる……

 

「ねぇねぇー慧人ー見てておなか空いたから1皿もらっていい~?」

「いいけど、そんなに食えるのか?」

「だいじょーぶ!皆で食べるから!」

「言っとくけど4皿は俺が食うからな、後さっき出来たやつ持って行け」

「わぁーい!ありがとー!おねーちゃんたち!一緒に食べよ!」

「じゃあ、お言葉に甘えてーいただくね☆」

「私も食べるわ」

「ありがとうございます。慧人さん」

「えと、先に食べちゃうね……」

 

 ということで卵が飛ぶのを尻目に見ながら勝手に実食タイム。卵を切ってみると……

 

「おぉっ!こっちもふわふわしている~」

「やるねぇ~」

「手を抜いていないのね」

「自分の分もしっかりとやっているのですね」

「これはすごいおいしそう……」

 

 食べ始めると……うん。見栄えの良さもそうだが、その下にあるチキンライスも具材の大きさ、火の通りなど……凄い。食べる手が止まらないかもしれない。

 

「いただきますっと」

 

 慧人さんも食べ始める。何というか……ものすごい勢いで彼の中に消えていくあたり相当お腹がすいていたのだろうか?それとも、普段はセーブしているだけで、あれがデフォルトなのだろうか?

 

「え、えーっと、冬木くん。結果発表だけど……」

「(ごくん)……あー聞けばいい感じですか?」

「そうだね……じゃあ、食べながらでいいよ」

「あざーす」

 

 凄い軽い感じだ。他の二人は緊張している様子が見られるのに対して慧人さんは緊張よりご飯って感じがする。それだけ、興味がないのだろう。

 

「えー先日までと同様、一人最大20点。三人なので60点満点での採点です」

 

 ということで、点数をつけているが……慧人さんの目はご飯にしか向いていない。そして食べる手も止まっていない。

 

「出揃いました。1位、虎南高校59点。2位、花咲川女子学園、55点。3位、羽丘女子学園、54点」

「……くっ……!」

「そんな……!」

「……(もぐもぐ)」

 

 点数発表を受け、他の二人が悔しさを見せる中、やはり一人だけ食べ続けている慧人さん。……彼って時々マイペースなところがある気がするわ。

 

「三人ともレベルは高いけど冬木くんが頭一つ抜けていましたね」

「でも、そういう虎南高校さんが19点なのは何故?」

「まぁ、彼にはここで満足してもらいたくないって言う私情ですかね……後、話聞いてないとか、今も食べ続けているとかそういう諸々を引いた感じですね」

「でも料理中の動きには無駄がなかったですよね。無駄があればあの量をあの時間で作るのは不可能ですし」

 

 と、講評っぽいのが始まったが……

 

「ねぇー慧人ーもう半皿!半皿でいいからちょうだい!」

「……(ふるふる)」

「ケチー!こうなったら意地でも食べてやる……!おりゃー!」

「……(もぐもぐ)」

 

 日菜と争奪戦をしていてどうやら聞いてない様子だ。何故日菜はわざわざ慧人さんの目の前にある皿を奪おうしているのだろう?そこに二皿、手の付いていないものがあるのに。後……そんなに食べたら夜ご飯が入らなくなるわよ?

 

「今度からオムライス食べたくなったら慧人に頼もうかしら」

「いいねーそれ。あ、ケチャップで文字とか絵とか書く練習していい?」

「……(こくこく)」

「ありがとー千聖もやる?」

「わ、私は遠慮しておくわ。彩ちゃんやってみたら?」

「じゃあ、お言葉に甘えて……」

 

 多分ここに居る私たちは先生の話を誰も聞いてないけど……いいかな。私も混ざろう。

 こうして、よく分からないうちに料理対決は終わっていた。ちなみに、日菜がお腹いっぱいでご飯どうしようと言い出したが、予想通りだった。




以上、慧人の料理回でした。
次回のヒント。

1、夏。
2、学校。
3、主要登場メンバー。慧人、こころ、日菜、モカ。

さぁ、次回は何だろうな~
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