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今回はバイト関連のお話です。
タイトルの通り面倒で相手したくない客が登場します。
人と関わるアルバイト。俺はCiRCLEで働いているが、当然客の対応をすることがある。
関わる客の100人が100人、皆いい人かと言われたらそうではない。まぁ、悪い人と言うよりも、ぶっちゃけるなら相手するのが面倒な客も中にはいるのだ。
ウチのバイトでの話をするなら……
「あぁっ?わざわざ来てやってんのに空いていないとかどういうことだよ」
基本CiRCLEは予約制である。勿論、飛び込みで来てもらってもいいのだが空いている保障は出来ない。で、今日は予約で一杯。だから急なキャンセルがない限り、空くわけがない。
まぁ、いつもの彼女たちも当日に急に来ることもあるが、空いていなくて無理そうなら諦めて帰る。当然と言えば当然だ。あくまでここのバイトとしては、特定の客を贔屓にするわけにはいかないのだ。私情を仕事に持ち込んではいけないのだ。うんうん。
……で、面倒な客というのは、
「ですからお客様……」
こっちは空いてないって言ってんのに、さっさと空けろだの何で空いていないんだと文句言ってくる輩。うん。実に面倒である。
あーあ、新人スタッフくんお疲れ様だ。彼は一度、俺がクールビューティー教に落とそうとしたがまりなさんに止められた(『CiRCLEに居るヤバいバイト』参照)。まぁ、確かに。彼なら押したらそのままいけそうな感じがするよね。しょうがないね。
「あちゃぁ……ちょっとガラの悪い面倒そうな客だね……」
「ですね。彼の運が悪かったって事で」
ちなみに俺がカウンターに立つと、こういうオラオラ系は居ないが、俺が何か言うたびビクッとする系や、何もしてないのに謝られる系、後は中々カウンターに来ない系がある。だから俺はカウンターでの接客が一番向いていない。別に取って食おうって訳じゃないのにな。……言ってて悲しくなった。
「だから、空けろって言ってんだよこっちは!」
「そのですね……」
しかしまぁ、埒があかないな。かれこれ5分?10分?よく覚えていないけど、いやーよくやるよ。
「しょうがない。ここは」
おっ、遂にまりなさんが動くのか。いやぁ、こういう荒事は……
「冬木くん。ゴー」
「いや、アンタの出番でしょ。俺を何だと思ってます?」
「我がCiRCLEきっての荒事担当。ゴー」
「ッチ。行ってきますよ。行ってこりゃいいんでしょ?」
舌打ちを敢えて聞こえるようにして面倒な客の下へと向かう。
とりあえず、新人スタッフくん(名前忘れた)を下がらせ俺が前に立つ。
「お客様?ここは基本予約制。予約者優先ですのでそのようなご要望にはお応えできません」
「あぁ?そんなこと知らねぇって言ってん……っ!?」
「他のお客様の迷惑です。さっさと失せないと強制退出させますが……覚悟はおありですか?」
何故か少し睨んで、言葉に圧を乗せただけで、目の前の荒そうな男はおとなしくなる。
「灰色の髪に……そのやる気のなさそうなめんどくさそうな目つき……!」
オイコラ確かにめんどくさいしやる気もねぇけどどういう意味だコラ。
「テメェ……まさか……」
「強制退出までのカウントダウン入りまーす。3……2……」
「お、お前ら引くぞ!」
「本日はご来店ありがとうございます。またのお越しを心よりお待ちしていません」
逃げるように帰って行く。……全く、やれやれだ。まぁ、ゴミ掃除が減るからいいんだけど。
「いやぁ~いつ見ても圧巻だね~。私じゃあんな芸当無理だよ」
「別にちょっと威圧してるだけなんですけどね。あ、後任せたわ」
「は、はい!」
「さすがクレーマー担当!黙らせるのに一役買ってくれているね!」
「そのせいでこっちは普通の客を相手できねぇんですよ?酷くないですか?」
「うーん。……そこはまぁ、面倒な客と君に慣れているあの子たちの担当ってことで」
「へいへい」
CiRCLEの面倒な客。大体俺に投げられる説。ひでぇ。マジでひでぇ。
「……って。こんなことがあったんだよ」
「はははっ!そりゃお前、今までのこと思い出してみろよ」
ある日の夜。東雲のヤツが暇だとか言ったので、久し振りに対決することになった。場所は公園である。
「るっせぇ。今はそんなにねぇから」
「いいじゃねぇか。人避けになるんだろ?」
「人避けというか、面倒な客担当になってんだよ!」
奴に向かってボレーを放つ。だが、ボールをワントラップで威力を殺し、浮いたボールをボレーで返してくる。
「オレも同じ感じだから気にすんな!」
「慰めになってねぇんだよ!」
「慰めるつもりはねぇよ!」
今やっているのはサッカーバレーのちょっと変則版。まず場所が公園なのでネットはない。
そして、俺たちのルールとしては2タッチ以内で相手にボールを蹴り込む。ボールを落とす、ハンド、半径1m以上離れた位置をボールが通過などすると得点が入る。
現在三点先取のデュースなしのルールで、お互いに二点ずつ。ちなみにここまでで30分かかってる。負けた方が勝った方にコンビニでスイーツを奢るって話でまとまった。
先輩に教えてもらったあたりからやっているが、中三とか高校だと、全然点が入らない。大体点が入るパターンは相手に無回転シュートをぶつけて落とさせるとか、体制を崩したところを付け狙うとかそんな感じである。ちなみに、話をしているのは相手を油断させるためだったりする。
「そういや、そろそろ会いたがってたぞ?」
「アイツか?」
「ああ」
「……確かに久しく会ってないからな」
「俺はよく会うけどな」
「そりゃあ同じ学校だからだろ」
アイツか……分かってることは絶対に彼女たちに会わせるわけにはいかない。先輩、東雲と何故か会わせてしまっている以上、アイツだけは会わせるわけにはいかない。
「隙アリ!」
「あめぇよ!」
東雲がシュート並みの威力で俺の顔を狙ったところをボレーで返す。だが、滑り込むようにして取られてしまった。……ほんと、俺たちは滅多な事じゃ点が入らない。だから……
「あ、お化けが」
「誰がそんなことに引っかかるかよ!」
「ッチ!」
「あ、UFO」
「誰が引っかかるんだこの阿呆!」
「クソッ!」
「あ、そこにロリが」「クールビューティーな女性が」
「「何だと!?」」
思わず東雲の指さした方を向く。しかし、そこには誰も居なかった。やっば、条件反射で……!
「喰らえ!」
「させるか!」
「この卑怯者!」
「テメェこそ!」
と、この不意打ちも成功率は落ちている。理由は単純。そこにロリが居ないからだ。いや、居たときはあの男が見惚れてそこに一発ぶちかませるのだが……
「そういや、お前。今日、天使様がテレビ出るんじゃねぇの?」
「はぁ?そんなはずが……」
「いや、サプライズゲストで」
「何だと!?今から見に帰らねぇ……あぁっ!?」
ボールが東雲に当たって落ちる。
「ちなみに今の嘘な」
「テメェやりやがったな!」
「あぁっ!?さっきテメェもスマホが鳴ってるてのにぶっ放してきただろ!?一緒だこの野郎」
「そんなのスマホに気を取られる方が悪いんだよ!」
「お前もテレビに気を取られているから悪いんだよ!」
「……ッチ。負けは負けだ。行くぞ」
渋々ながら向かっていく東雲。まぁ、負けは負け、勝ちは勝ちって言うのが俺らの共通認識なので、ありがたく頂く。ちなみに前回は俺が負けている。
「お前、あの話はいいのか?」
「…………まだ考え中」
「そうかよ。……早く決めろよ。催促されてんだろ?」
「へいへい」
と男二人で歩いて行く。夜って言ってもまだ日が沈んで少し経ってから始めたからそんなに遅くない。
「ここにするか」
「だな……ってここか」
やって来たコンビニ……あぁ、ここか。
「もしかして、ここが例の万引き犯を捕まえたってやつか?」
「そうだな。あの時は……別のことが面倒だった」
「お前何だかんだ持ってるからな~今回も万引き犯がいたり?」
「嫌だわ。今度は夜にお前と万引き犯とチェイスかよ」
さすがに嫌だから、今回はシュートをぶつけて相手を昏倒させるしかねぇな。蹴るものはボールじゃなくてカンとかでもいいけど。
「申し訳ありません……!」
来店すると同時に何か謝っている声が聞こえる。
「ッチ!そんなことも分からねぇのかよ!」
店員に向かって怒鳴る客……あー面倒な客だよな。こういうの。で?その客に当たった可哀想な店員は……
「以後、気をつけますので……」
リサ姐が見えた。……知り合いって……マジで言ってる?
「ここの教育はどうなってんだよ!あぁっ!?」
威圧しているやつはともかく、リサ姐がそんなに言われるほど初歩的な、致命的なミスをしたとは思えない。何処か震えているようだし……こりゃ、適当ないちゃもんつけられてるパターンか?まぁ、そうでなくてもうるせぇし。……というか、見過ごせるわけねぇか。
「わりぃ」
一言東雲に謝り、その男のもとへ向かう。そして、
「耳障りだから黙れよ」
その男に向けて声をかける。振り返って来るが……わぁー睨まれたー。
「あぁっ?こっちは取り込み中なのが見て分かん――」
「うるせぇって言ってんだよ。他の客に迷惑なのがわかんねぇのか?」
「――テメェ、ヒーロー気取り……!?」
こっちまでズカズカと歩いてきて、何かに気付いたようで動きが止まる。
「ヒーロー?んなもん興味ねぇんだよ。邪魔だから邪魔って言ってんだよ」
「お、お前……!」
「冬木ースイーツどれにするよ」
「いや東雲?今、いいとこだからちょっと黙れ?」
「ふ、冬木に東雲だと……!?」
「「あ゛ぁ?」」
「その髪……その声……やっぱり……!ウチのリーダーをやった……!」
リーダーをやった?…………あぁ……
「東雲。お前覚えているか?」
「いや、一々覚えてねぇーよ」
とりあえず俺らは左右からその男の肩を掴む。酷いなぁ……さっきまでの威勢はどこに行ったのやら。というか顔色悪くなってね?大丈夫?救急車呼ぼうか?
「み、見逃してくれ……!お前らのシマだとは知らなかったんだ……!」
いや、俺らにシマとかないんだけど?ヤンキーじゃあるまいし。
「なら、さっさと店員に謝れ。……そして失せろ。今すぐに」
「そうすりゃ見逃してやるよ。……次はねぇぞ。いいな?」
「ひ、ひぃ……もも、もうやらねぇから……!ご、ごめんなさい!」
すると走って逃げ去った……一回自動ドアに思い切り身体をぶつけてよろけていたが。というか、何かすげぇ怯えられたんだけど?足とか生まれたての子鹿を連想させたんだけど?
「にしても、お前が面倒ごとに自分から首突っ込むようになるとは」
「うるせぇ。目障り耳障りだからそのことを言っただけだ」
「へいへい。……たく。そういうことから足を洗ったのになー」
「まぁ、過去のオイタはついて回るんだろ。それより大丈夫か?リサ姐」
「……あ、あーうん。平気だよ。そ、それより商品とお金置いてったけど……」
「どうする?届けるか?面倒だけど」
「いや、逃げられるのがオチだぜ?」
全く。よくあることだけど人の顔を見ただけで逃げるのはどうかと思う。やれやれ。助かったのは客が少ない時間帯だったってことか。またおかしな噂が広まる。……いやもう遅いかもしれないけど。
「面倒な客ってほんとめんどくせぇよな」
「いやーほんとそーですよ~」
「って、モカ。いつの間に」
「さっすがけーとさんです。あの追い払い方はけーとさんしかできませんよ~ね~?」
「う、うん。そうだよね」
「ひでぇ」
「え?冬木。お前、いつからコンビニ店員をナンパするように……」
「待て東雲。このくだりは前にやってんだ。二度目はやりたくねぇ」
「…………?」
すると二人の顔を見て、ポンっと手を打つ。そして、
「あ、オレ帰るわ」
「ちょっ、え?はぁ!?」
「ほらよ。これで足りるだろ。じゃあな」
そう言って立ち去っていく……いや、100円じゃ足りねぇんだけど……。
「あの野郎……はぁ。なにがしてぇんだか」
「そーだけーとさん。もうバイトあがるんで~モカちゃんたちに何かおごってくださいよ~」
「はぁ?え?何でそうな……」
「行きましょーリサさん~じゃ、けーとさんは~モカちゃんたちが着替え終わるまでには選んでいてくださいね~」
そのままリサ姐と裏に消えていく……そして、入れ替わるようにして別のスタッフが入った。いや、何で奢るハメにになるんだよ……
そんな感じで荷物を纏めて来た二人に対して適当に選んで買ったシュークリームを渡す。投げて渡した方が見栄えがいいかもしれないが、何を隠そう俺はノーコンなので投げ渡せない。蹴っていいなら話は別だが、食べ物を蹴るほど非常識ではない。
「しゃーす」
「何か悪いね~……」
「おぉ~しかもただのシュークリームじゃなくてちょっとお高い方~分かってる~」
「はいはい」
「いやぁ~嫌なことは甘いものを食べて忘れましょ~」
「なら、俺も嫌なことあったんだけど?奢られに行ったら自分が奢っていたんだけど?」
「それは大変ですね~」
「いや、お前だけど?元凶お前だけど?」
「じゃあ、あたしの食べかけですけどいります~?」
「いらねぇ。それぐらいだったら自分で作る」
「わぁーい。ゴチになりま~す」
「いやいや、モカに作るって言ってないんだけど?」
「えぇ~?」
「何でそんな反応が出来るの?」
「けーとさんはモカちゃんのことが嫌いなんですか~?」
「嫌いでも好きでもねぇーよ」
「あたしのことは嫌いになっても~シュークリームのことは嫌いにならないでください~」
「いやお前、そんなにシュークリームに思い入れないだろ」
「ですね~モカちゃんはパンの方がいいです~」
「だろうな」
「……ふふっ」
「あ、リサさん笑ってる~」
「どっか笑うとこあったか?」
「けーとさんが面白いからですよ~」
「いや、俺の何処が面白いんだよ」
「ん~頭のてっぺんから前髪くらいまでですかね~」
「おう、髪色か?髪型か?」
「色?」
「お前も同じような髪色だろ」
「じゃあ、きゅーてぃくるですね~」
「待て。きゅーてぃくるって何だよ」
「きゅーてぃくるはきゅーてぃくるですよ~」
「だからそのきゅーてぃくるが分かんないんだよ」
「あっ。あたしこっちなので~お二人ともまた~」
「ちょっ、おい。…………結局きゅーてぃくるって何だよ」
モカは立ち去っていった……俺の疑問を残して。きゅーてぃくるだと?一体何なんだそれは?
「面白いね、モカと慧人くんの会話。噛み合ってるのか噛み合ってないのか」
「……?髪色は合ってるかもしれないですけど、髪型は合ってないですよ」
「……あはははっ!」
すると、リサ姐が何か爆笑し始めた……どういうこと?
「いや、そんな真顔でボケなくても……あはははははっ!」
「???」
何かよく分からんけど……お腹を抱えて笑ってる……ど、どうしよ。と、とりあえず友希那さんにリサ姐が壊れたって報告しないと……。
「ありがとね……今度モカにもお礼言わないと」
「いや、何でモカにも?」
「元気づけようとしてくれたんでしょ?」
「そうなのか?」
笑い始めて1,2分後。笑いすぎたせいか目尻に涙を浮かべているリサ姐にお礼を言われた。
よく分かんねぇけど、まぁ、戻ったならいっか。
「ありがとね……助けてくれて」
「別に。知り合いが困ってるんだったら助けるだろ」
「知り合いじゃなくて友達だよ☆」
「はいはい。だからまぁ、困ってたら頼れよ」
「おぉー頼もしいね☆……じゃあさ」
すると、彼女の額が俺の胸に当たる。そして、俺の右手を軽く掴むとそのまま自身の頭に持って行った。
「……怖かった。凄い見た目から怖そうな人でさ……いきなり大声で怒鳴られて……怖かった。何で怒られるか分からなかった。だけど接客しなきゃって思って……それを隠して……でも行動の一つ一つを怒ってきて……」
「…………」
「……だから耐えるしかないって。耐えればいつか終わるって……そしたらね。慧人くんが守ってくれたの。……本当に嬉しかったの」
「…………」
俺は無言で彼女の頭をなでることにする。
きっと、普通の感覚なんだろうな。これが。理不尽に怒られ、その目で、声で威圧されて。それに恐怖し萎縮してしまう。
今井リサという少女は優しい。優しすぎるぐらいだ。常に周りに気を配ったりして、自分のことだけじゃなく、他を思いやれる。そんな優しい人だ。だからその優しさで他者を心配させまいと振る舞おうとする。……自分がつらい状況にあっても。
そしてしばらくした後、もう大丈夫ってことで手を放す。
「……そうそう慧人くん。ダメだよ?そうやって色んな女の子に優しくしたら」
「はぁ?どういうことですか?」
「勘違いする女子が現れるかもってこと」
「別に。色んなヤツに優しくするつもりは更々ないですけどね」
「あはは~まぁ、慧人くんの優しさは紗夜に向けるべきだよ」
「当たり前じゃないですか」
「おっと。清々しい返しだね~流石の一言に尽きるよ。じゃ、ここまで来れば大丈夫だから」
「じゃあ、また今度」
「慧人くんも気を付けてね~」
手を振ってそのまま帰って行ったので、俺も自分の家の方に方向転換。まぁ、結果オーライかな?…………ん?何か忘れているような……まぁ、いっか。
「いやぁ……慧人くんは危険だわ。自然にそういうことをやるし言うし……うん。やっぱり紗夜と早くくっつけてあげないと……」
「お帰り。リサ」
「うん。ただいま……って友希那!?どうしてアタシの家の前で!?」
「冬木からリサが壊れたって言われて……」
「こ、壊れたって……」
「何かあった?目元が……」
「大丈夫だよ。無事に解決したから」
「そう?」
「それより友希那。確かこの後、猫特集のテレビがやるんでしょ?一緒に見ない?」
「ふふっ。なら一緒に見ましょうか」
メインヒロインって誰だっけ?リサ姐ってヒロインだっけ?と疑問に思いつつ、ウチはハーレムにする気がないので大丈夫です。(何が?)
次回、慧人の秘密編(?)。