クールビューティーな紗夜さんを返して(涙)   作:黒ハム

40 / 79
アンケートのやつです。
今年中に

UA150,000、お気に入り数1,500件、投票者50人、50話目の投稿

この四つを目標に掲げ、一つでも多く達成していきたいですね。
特に最後のは作者が頑張れば行けるので、達成目指して頑張ります。


惚気回(紗夜ver)

 平日の放課後。とあるカフェにその二人の少女は居た。

 一人は氷川紗夜。とある男から女神様と崇拝されている少女である。

 Roseliaのギター担当で『サッドネスメトロノーム』という二つ名を持つ。花咲川女子学園に通い高等部2年B組に在籍。また、風紀委員を務めている。

 もう一人は白鷺千聖。とある男から天使様と崇められている少女である。

 Pastel*Palettesのベース担当で『微笑みの鉄仮面』という二つ名を持つ。花咲川女子学園に通い高等部2年A組に在籍。また、女帝とも言われている。

 

「…………」

「…………」

 

 紅茶を一口啜る彼女たち。その姿だけで絵になること間違いなしである。

 

「紗夜ちゃんとこうしてカフェでお茶するなんて、少し前だったら想像も出来なかったわね」

「えぇ。本当にそうですよ」

「ダメ元であっても頼んでみるものね」

「今日はバンドでの練習も、部活もありませんでしたから」

 

 白鷺千聖は放課後、予定が空いていた。そのため当初は、松原花音を誘いお茶をしようかと考えていた。しかし、弦巻こころによる急な思いつきに松原花音は巻き込まれ、その考えを諦めることになる。冬木慧人を誘い愚痴でも話そうか考えていたところに、氷川紗夜が通りかかり、ダメ元で頼んでみたところ彼女は快くオッケーしたのだ。

 少し前までの氷川紗夜であれば、このようなお茶会にかける時間を無駄と切り捨て、ギターの練習に時間を費やしていただろう。しかし、今の彼女は友人との時間も大切にするようになってきた。だからこそ、予定がなく、断る理由もなかったので快く引き受けていた。尚、彼女は彼女で冬木慧人とファストフード店にでも行こうかと考えていたというのは内緒だ。

 

「さてと、何を話そうかしらね」

「そうですね……」

 

 ということで、二人の共通点となっている音楽……バンドの話であったり、学校の話や彼女たちの共通の友人や知人、関係者の話をしていた。

 話も一段落付いた頃。白鷺千聖はあることを聞くことにした。

 

「そういえば、紗夜ちゃん。紗夜ちゃんって慧人のこと好きよね」

「……何故それを」

「見ていたら分かるわよ」

「……なるほど。白鷺さんには隠していても誤魔化せないようですね」

 

(あれで隠しているつもりだったのかしら)

 

 笑顔のまま、内心では少し驚いている。それもそうだろう。まさか、あんなに露骨でわかりやすいのに、それを隠し通せていたと氷川紗夜は本気で思っていたからだ。

 

「そういえば、紗夜ちゃんからは聞いたことないわね。慧人をどうして好きになったのかとか、最初の印象とか」

「そうですね……最初の印象は変人です。初めて会話した時に女神って言われましたからね。正直頭おかしいと思いましたよ。でも、今にして思えば、その残念さも慧人さんらしいと言えますしね」

「あぁ……」

 

 千聖にも思い当たる節ではないが、共感できることはある。冬木慧人の頭のネジがぶっ飛んでるのはもはや周知の事実。だから、彼が残念なところをいくら見せようともう慧人だからの一言に尽きてしまうのだ。悲しいことに。

 

「でもRoseliaが動き始めるまで……だから去年ははっきり言って必要最低限しか関わろうとしなかったと思います」

「いや。よくそのスタートがあって関わろうとしたわね……」

「そこが不思議なんですよね……私の利害と合ったというか……慧人さんが私の性格とかを考えて動いていたような。あ、去年の秋くらいからはテスト勉強を一緒にやることもありましたね。最初は『人に教えることって勉強になるんじゃないですか?』って言われて、確かにと。慧人さんにしてはまともなことを言っていて、少し驚きました。でも納得するのが癪だったので『そこまで言うなら仕方ないです』と言って、しょうがない感じを出していましたね」

「へぇ。でも今は違うでしょう?聞いたわよ。テスト前日までゲームしてバイトしていたあのバカにミッチリ勉強を叩き込んだって」

「そうですね。慧人さんには言ってないんですけど、私にとって最初の頃は自分の為だけでしたよ。慧人さんに教えるということを通して、自身の勉強をする。それ以上でもそれ以下でもないです。でも、今では全然違いますね。慧人さんと共に何かする。もうこれだけで十分なんです。あ、勿論勉強していますよ?ただ、教えるときに肩が触れ合ったりとか、手と手が重なったりとか……勉強会っていいですよね。教えるという大義名分の下に彼とその触れ合っても仕方ないと自分に言い訳できるんですから」

 

(……多分勉強会関係なしにあなたたちはイチャついていると思うわ)

 

 軽くドヤ顔している氷川紗夜。彼女にとって、最初こそ『自分の勉強の為』だったが、今ではもう『イチャつく機会の一つ』となってしまった。

 ただ残念なのか本来の性格なのか。彼女は勉強会となればもちろん勉強をし、勉強がメインと言っているので脱線してイチャついて終わっていくことはほとんどない。

 

「それに学校側もいいことをしますよね」

「いいこと?どういうことかしら?」

「いえ。テスト勉強会と銘打っている以上、テストがなければ勉強会は生まれないんです。中間テストと期末テストだけだったら年四回しかそのチャンスがないところを単元テストという素晴らしい存在のおかげで、一週間……いえ、直近の二週間以内に何かしらのテストが彼を待っています。そのテストに向けて勉強会というものを開くことができます」

「……つまり?」

「いつ誘ってもテストに向けての勉強会と言えるから誘いやすいです」

 

(テストをイチャつくための口実に出来ると考えているのね……昔の貴女なら絶対にあり得なかったわ。……これは悪い意味での成長じゃないかしら?)

 

「でも夏休みとか、長期休みはそれだと厳しいんじゃないかしら」

「そうなんですよね……そこはどうしたらよいのでしょうか……」

 

 少し落ち込んでいる様子を見せる。そこを不憫に思ったのか白鷺千聖は助け船を出すことにした。

 

「彼の宿題を見るという名目はどうかしら?終わっていなければ勿論。終わっていれば『本当に身についているか確かめる』とでも言って」

「なっ……!」

 

 氷川紗夜に電撃が走る。そして、白鷺千聖の手を取り……

 

「な、なんて素晴らしい発想!流石白鷺さん!その発想はなかったわ!」

「そ、そう?」

「えぇ。これで普段からもっと誘いやすくなりました。なるほど……宿題のためと言えば……ふむふむ。アリですね。これなら行けます」

 

(どうしましょう。『宿題を一緒にやる』とか『宿題を見てあげる』とかって、テストの次か下手したらテストよりも前に思い付くと思うのだけど……え?嘘でしょこの子?……あーそういうことかしら。紗夜ちゃんって、そもそも宿題を誰かとやるということを考えていない人なのかしら)

 

 氷川紗夜に一切の演技を感じない。本気で考えもしなかったのだろうと白鷺千聖は考える。

 

「ところで、何で紗夜ちゃんは慧人のことを好きになったのかしら」

「そうですね……気付いたら、というのは答えになりますか?」

「うーん……個人的にはもう一歩踏み込んでいきたいのだけど……」

「意識したのは今年の夏休みくらいです。それまでギターのことを考え……後は日菜と問題があったので、慧人さんのことは見ているようで見ていない感じだったと」

「日菜ちゃん?」

「えぇ。あの子と少し……」

 

(確かに。日菜ちゃんの性格と紗夜ちゃんの性格を考えると……なるほどね。なんとなくだけど分かる気がするわ)

 

「慧人さんには余裕のなかった私を何度も見せました。Roseliaのこと、Roseliaより前のバンドでのこと、日菜のこと。何度も強く当たったんです。でも、彼は全てを受け入れてくれました……甘えていたんでしょうね」

 

(……人のことは言えないわね。私も白鷺千聖が壊れないように、彼を使っている。一緒……いえ、きっと私の方が醜いわね)

 

「でも一回だけ。その時だけは慧人さんは私のことを怒っていましたね。怒ると言うと少し語弊があると思いますが……」

「その時?」

「えぇ。私が少しスランプに陥っていたといいますか……自分の音に自信を持てない時がありまして。その悩みのせいで色々と……」

 

(……紗夜ちゃんにもそんな時期があったのね)

 

「彼は私の話を聞いて、私に同情したり、同調したりすることなく自分の意志を私にぶつけてきました。……まぁ、立場的には日菜側によっていましたけど」

「へぇ。あの慧人が紗夜ちゃんと対立する……ねぇ」

「彼は私を女神だ何だ言いますけど、イエスマンにはなってないですね。自分の意思と違えばハッキリとノーを突きつけられる人間ですし、自分が正しいと思ったことはしっかりと言ってくれますよ」

「確かにね。そういうところは羨ましいわ。ほんと」

 

 誰に対してでも自分の意志を告げ、面倒なことは面倒とはっきり言うが、最終的には流されやすい。物で釣られたり、氷川紗夜のお願いだったりで。そこも彼らしいと一言で表せてしまうのはいいことなのだろうか?

 

「その後ですかね。私の心に少しゆとりが生まれたので、慧人さんについて考えたんです。そして、彼のことが気になっている自分に気付きました。料理が出来るとか裁縫が上手という女子力の高いところ。身体能力が高く、サッカーで活躍する格好いい姿。頭もそこそこ良く、何でもできるように見せて、絵や音楽が壊滅的というギャップがあって。色んな姿を見ている中ではっきりとしたんです。この人のことが好きなんだって。この人の隣に立ちたいって。それにですね。彼に抱きしめられた時、心の中に温かいものが生まれるんですよ。満たされると言うのですね。きっと」

 

(普段からは想像できないくらい穏やかな表情……恋って凄いわね)

 

「……でも、少しだけ不満があるんですよ。彼は他の女子とも距離が近い気がするんです。い、いえ、仲が悪いよりは全然いいことなので否定したり咎めたりはしないんですけど……その、多くの人は呼び捨てなのに、私にはさん付けや様付けで何だか距離を感じますし……」

 

(距離というより、崇拝の対象だから呼び捨てとか烏滸がましい……的な感じではないかしら。それに、様を付けて呼んでいるのはあなただけよ)

 

「白鷺さん!どうすればもっと距離を縮めることができるんですか?こういうことは白鷺さんや今井さんが詳しいかと」

「……なるほどね。どういうイメージを持たれているかはなんとなく分かったわ。分かった上で申し訳ないのだけど、私自身にそういう経験はないわよ。それに、仕事上の付き合いで何人かの男性とはお話しても、プライベートでは慧人以外の男性とはほとんど関わっていないわ」

「そうなんですか……でも、いいですよね白鷺さんって。お互いに呼び捨てで、距離も近くて仲がよく……羨ましいです。しかも悪友という彼の中で特別な枠組みに入っていますし……」

 

(……どうしましょう。何かを間違えたのかしら?紗夜ちゃんに羨ましいって言われる筋合いはないのだと思うけど……本当にどうしましょう。何処に地雷が埋まっているか分からないわ)

 

「それに何だかモヤモヤするんですよ。慧人さんが他の女性と仲よさそうにしているのを見てしまうと。傲慢だと分かってはいますが、私だけを見てほしいというか……この前の調査隊の時もそうでした。彼の全部を知りたいって、隠し事をしないでほしいって……変ですよね」

「そのこと自体は変じゃないと思うわ。それだけ彼のことが好きなのよ」

「……なるほど」

 

(嫉妬……で確定ね。もしも、彼女の理性がなくなれば慧人は……いえ、私の身も危なそうね。頼むから慧人。くれぐれも紗夜ちゃんを病ませないようにね)

 

「……そう言えば紗夜ちゃん。日菜ちゃんが言っていたのだけど、お菓子作りを始めたとか何とか」

「はい。少し前のことですが羽沢珈琲店で、お菓子作り教室がありましたので参加を。そこから本格的にと言いますか、今はまだクッキーだけですが……」

「理由は?何かあるのかしら?」

「一つは、バンドのためですね。今井さんがよく手作りクッキーを差し入れで持ってきてくれますが、それがあるのとないのでは練習の質などが大きく違うのです。慧人さんは頼めば色々と作ってくれますが……」

「あくまで慧人はRoseliaのメンバーではない以上、毎回作ってもらうのは遠慮してしまうのね」

「……それもありますし、何より見た目に反した、その丁寧さや可愛さなどから、今井さん以外の私たち4人の心に来るものがありまして……クッキーも差し入れの時は丁寧にラッピングまでされて……」

「乙女なの?あの男は」

「何というか……負けた気分になりますので。今井さんはそこから慧人さんと話しているんですが、どうにも私たちは途中から打ちひしがれる気持ちになってしまうというか……」

「……なんとなく分かるわ。その気持ち」

 

 見た目は不良、中身はマイペース問題児。そんな男が可愛らしいラッピング付きで差し入れをして、しかもおいしいとなると、敗北感が襲って来ても仕方がないのだろう。

 

「もう一つは……やっぱり慧人さんですね。前も一緒に料理して楽しかったですし……その、彼ばかりに作って貰っていて……自分のも食べてもらいたいというか。今はまだ自分一人では自信のあるものが作れないですけど……いつか食べてもらえたらなぁって。そうでなくても一緒に料理する。前みたいに教えてもらいながらもいいんですがもっとこう……肩を並べる?とまでは行きませんがそのような形で一緒にできたらなって……」

 

(紗夜ちゃん……なんて乙女なの?可愛いという言葉がすごく似合うわ)

 

「羽沢さんから教えてもらったんですけど、前回のお菓子教室が好評だったようで、第二回をやるそうなんですよ」

「そうなの?」

「詳細はまだ決まっていないそうですが、クッキー以外のものをやってみたいとおっしゃっていたので」

「なるほどね……」

「と、ごめんなさい。途中から私ばかり話していますね」

「いいのよ。気にしないで」

「もうこんな時間ですか……」

「本当ね。会計を済ませてお開きにしましょうか」

 

 席を立つ二人。会計を済ませて店の外に出た。

 

「紗夜ちゃんって変わったのね」

「そうですか?少しだけしか変わってないかと」

「いいえ。かなり変わったと思うわ」

「ふふっ。でもそう言う白鷺さんも変わられたかと」

「そうかしら?」

「えぇ。そうですよ……あ、そうでした」

「何かしら?」

「えっと……さっきの話は慧人さんには内緒にしていただけると……」

「ふふっ。勿論よ。私たちの秘密ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃……

 

「いやぁ、こころの発想は相変わらずヤバかったな」

「ごめんね……巻き込んじゃって……」

「なんだかんだ楽しかったから気にしてないぞ」

「あはは……私はちょっと疲れちゃったかな」




次回、紗夜さんと千聖の会合の裏で慧人や花音たちは何をしていたのか。
ヒント。ガルパピコ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。