前回のアンケートから慧人くんはボケ担当、時々ツッコミということが……なるほど。
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「やぁ!」
かわいらしい声と共に刀を振り下ろしてくる少女。名を若宮イヴと言う。
「甘い!」
その刀に合わせてこちらも右手に持っていた刀を振るう。……ナニしてんだろう本当に。
ガンッ
刀と刀がぶつかる音が響く。勿論本物ではない。レプリカである。……流石に真剣での斬り合いとか嫌だ。
ただし、地味に重さがあるのは内緒だ。何でも重さが1kgあるレプリカらしい。そりゃぁ重々しい音も出るわ。
「くぅ……やりますね。流石ケイトさんです!」
「生憎、動体視力と反射神経だけはいいんでね」
イヴちゃんが振るうのを全て持っている刀でさばいていく。
「いやぁ……いつ見ても凄い戦いッスね」
「そうね……どっちも人間離れしれいるわね」
「いっけぇーイヴちゃん!慧人を倒すんだぁ!」
「やっちゃえーイヴちゃん!」
「はいです!」
周りに観客として居るパスパレの応援もあり、ドンドン刀を振るってくる。
まぁ、見て分かるとおり一種のゲーム感覚でやっている。
ルールは簡単。イヴちゃんが俺に一撃を与えたらイヴちゃんの勝ち。彼女が降参したら俺の勝ちである。……いや、俺から攻撃できるわけないじゃん。万が一当たったりしようものならアレだし。面倒だし。
「はぁ……はぁ……」
「そろそろ諦めたらどうだ?」
「いえ、諦めるのはブシドーに反します!やぁ!」
「マジかよ……」
何分経っただろうか。とりあえず思うことは、イヴちゃんって体力あるなぁ……ほんと。こんな刀を振り続けるなんて。こっちも息が少しずつ上がり始めているというのに……
「そろそろ終わらせよ」
少しずつではあるが彼女の力が刀を振った勢いに負け始めている。精神的にはまだいけるだろうが身体がついて行けてない。
「わわっ……!」
大ぶりになった刀にこちらが少し力を込めて押し当てる。そのまま刀の重さに負けてバランスを崩したところをすかさず、彼女の背後に回り左手で彼女を抑え、右手に持つ刀を置いて手刀を彼女の首元に持って行く。
「くぅ……殺せ」
「いや違う。そこは降参するとこだ」
「武士は降参するぐらいなら自決を選ぶと聞きました!」
「やめてくれ?頼むから、普通に降参を選んでくれ?」
「ぐぬぬ……そこまで言うなら仕方ありません」
ということで、本日の対決は無事勝利であった。
「お疲れ~二人とも~」
「凄いねイヴちゃん!こんなに重いものをあんなに振っていて」
「武士は刀が命です!でも、さすがに疲れました……」
「それに比べ、慧人は余裕そうね」
「なわけ。やる度に強くなっていくから正直大変だわ」
「それを身体能力でカバーしているのが慧人さんですね」
と、会話しつつ手首と足首に付けてるアンクルウェイトを外していく。後は上に着ているウエイトベストを脱いでと、
「ふぅー身体が軽いわ」
「今って何キロだったっけ?」
「アンクルウェイト一つ2.5kgだから四つ合わせて10kg。そこにウエイトベストが10kg」
「合計20kgのおもりつけてあの動きは……うん。化け物だよね」
「だけど、そろそろ限界だわ。おもりの重さをまた減らそうかと考え中」
「確か、一番最初は40kgだったッスね。ベストが20kgで、アンクルウェイトが5kgだったッス」
「ああ。さすがに最初は俺がほぼ動けなかったから直ぐに30kgに落としたけど。それでも段々と追いつかなくて最後は二、三発喰らったし。今のイヴちゃんなら多分一方的にやられる。普通に瞬殺で終わるな」
何故こんな阿呆なことが始まったか。
体力作りと筋力トレーニングで何か楽しみながら出来ないかと考えた末、こうして剣を交えて練習したらいいんじゃないかと誰かが言い出したそうだ。無論、イヴちゃんしか出来ないし、やりたくない方法だがその案には一つ、重大な欠点があった。即ち、誰も相手がいないという点である。そこを、身体能力が化け物級だしまぁなんとかなるでしょ、という適当な理由で選ばれたのが俺である。だが、それでも剣を本物に近い重さにした以上当たると怪我する可能性があるし、そうなればイヴちゃんが遠慮する。そこで思い切り振るうためにベストやアンクルウェイトなどで当てても支障がない場所を作った。まぁ、俺の練習にもなるからいいんだけど。
「ケイトさんは剣道はやらないのですか?」
「やらねぇし、やったとしたらイヴちゃんには負ける」
「どうしてですか?あんなに強いのに……」
「防具が邪魔だし、視界が悪いし、蒸し暑いし、竹刀が直ぐに折れるし、というか打つときの姿勢とか知るか」
「よく一瞬でそれだけ出て来るわ……剣道をやりたくない理由」
「え?竹刀って折れるの?」
「知らないですけど、本気で振るうと、竹刀が折れるんですよね。だから体育の授業とか面倒でした。すぐ折れてしまったので」
「ケイトさん……それはバカ力ってやつですね」
明らかにひかれているが仕方ない。俺は剣道が出来ないからな。中学時代、一回の授業中に竹刀を三本へし折ったときには先生も明らかに動揺していたな。それ以来剣道の授業は見学かサボっていた気がする。
だから、剣道では修行しないし、剣道では修行相手になれない。代わりにこうやって戦っている。勿論、さっきも言ったように一種のゲーム的なもの。勝利条件以外にもルールは存在する。例えば俺は防御するときは刀が基本で、蹴りとか拳はNGとかな。
とりあえず思うのは、コレの成果かは分からないが彼女の体力や筋力が付いてきている。本人は修行です!って楽しそうにやっているからいいんだが……
「皆さんもどうですか?いい運動になりますよ!」
「あはは~流石のあたしでも遠慮しておくよ」
「一度振っただけで筋肉痛になりそう……」
「ジブンにはこれは合わないと思うッス」
「私も遠慮するわ」
恐らく他の子たちに聞いてもさすがにやりたくねぇだろう。それに俺の立ち位置も代わりたくはないだろう。いくら相手がモデルとアイドルを兼ねた美少女だからと言って、自らを危険に晒す真似はしないだろうな。うんうん。……そういや、モデルにアイドルに茶道部、華道部、剣道部、そして喫茶店でバイト……恐ろしい子だなぁ……イヴちゃん。
「うーん。イヴちゃんが主役で慧人が悪役の時代劇でもやったら面白いんじゃない?」
「おぉっ!悪を討つんですね!」
「待て。何で毎回俺が悪役なんだ?」
「いやいや~慧人には正義やヒーローって言葉は似合わないよ~」
「そうッスよ。自分でもそう思ってるんじゃないんですか?」
「まぁな。そういう系より悪の方が似合ってると思う」
「あはは……認めちゃったよ」
確かに。ヒーローか悪かを選べと言われたら、悪の方が似合ってるとは思うけどさ?それでも悪になりたいわけじゃないんだよ?
ちなみに今更ですがここは事務所です。何処かの金髪さんに連行されました。いや、大抵はCiRCLEでやってるよ?CiRCLEにある休憩室的な場所で。ただ、たまに事務所のレッスンスタジオ的なところでもやらされる……まぁ、いいんですけどね、はい。さすがに公園とか公共の場で刀(レプリカ)を振り回すわけにはいかないので。
そして、どうしてこうなったのだろうか。
「アナタの悪事もここまでです!悪はこの私が成敗してみせます!」
慧人の前には剣士の羽織を着たイヴが居る。だが、今のイヴはいつものイヴではない。
「ハッ!悪事がコレまでだぁ?随分と生意気なこと言ってくれんじゃねぇか」
羽織を着た慧人自身も近くに置いてある刀を取り、彼女と正面から向き合う。今の慧人もいつもの慧人ではない。
「下らねぇことをぬかしてんじゃねぇよ小娘が。キサマごとき、斬り捨ててくれるわ!」
慧人は刀を鞘から抜き、刀の先を彼女に向ける。
「そうですか……」
それに合わせて彼女も刀を抜く。そして……
「はぁぁっ!」
キンッ!
刀と刀がぶつかり合う音が響き渡る。すると、そのまま鍔迫り合いになり、イヴと慧人が互いに刀をぶつけ、押し合うが……
「弱いな」
「なっ……!」
慧人が鍔迫り合いを制し、バランスが崩れてしまったイヴの空いた胴に向けて蹴りを入れる。それを諸に喰らったイヴは転がるようにして飛ばされてしまった。
「おいおい、この程度で成敗するとか、笑わせてくれんなよ!」
「まだです!やぁっ!」
「はっ!」
すぐさま立ち上がり、慧人の方に突撃するイヴ。そんな彼女の刀をすべて見切り、自身の持つ刀で容易く捌く慧人。立ち向かうイヴにそれをあしらう慧人。力の差は歴然だった。
「次はこっちから行くぞ」
「くぅ……!」
イヴの攻撃を流し、彼女の体勢を崩したところに、刀を構え追撃する慧人。
キンッ!キンッ!キンッ!
幾度となく振るわれる刀。すぐさま刀を構え直し、辛うじて防いでいるイヴ。激しい刀の応酬が続いている。
少しずつイヴ側に浅い傷がつき始めたそんな中、イヴが後ろに跳ぶことで二人の距離が少しだけ開く。
「その程度で俺を倒そうとか百年はえぇんだよ。尻尾巻いて逃げ出したらどうだ?」
「武士は……敵を前にして、背を向けて逃げ出すことなどしません!」
傷を負い、血が流れているイヴ。羽織も血と砂で汚れてしまっている。
対して慧人は傷もほとんどなく、綺麗な状態だった。
誰が見ても明らかにイヴの勝ち目はない。しかし、彼女の目は決して諦めていなかった。
「気に喰わねぇなその
容赦なく刀を振り下ろす慧人。それに対して、イヴは下から刀を振り上げ、刀同士がぶつかる。
刀と刀がぶつかり合い、少しずつイヴは押されてしまう。
「私は……負けるわけにはいきません!アナタによって幸せを奪われた人々の為にも!私は……私は……っ!!」
「なっ……!」
次の瞬間、慧人の振り下ろした刀が弾かれ宙を舞う。生まれた一瞬の隙。それを見逃す程イヴは甘くはなく、空いた胴を斬りつけ、その勢いで慧人の後ろに。
「俺がこんな所で……」
バタッ
倒れる慧人。倒れた彼の周りには血の海が……。
「悪は必ず滅びます」
刀を鞘に収めるイヴ。しかし、彼女もこの戦いでの傷から膝をついてしまう。
そして……
『はい。カットォ!』
声が響き渡った。
「凄かったよねぇ~あんな動きよく出来るよね」
「イヴさんも慧人さんも、いつも以上のキレでしたね」
「あ、お疲れ様イヴちゃん。すごかったね!」
「ありがとうございます!」
「アレって、最低限しか台本なかったんだよね~」
「ほとんどアドリブだったんですか!?」
「はい!入れてほしい場面のイメージを図と一緒に伝えられただけです!後はノリです!」
「途中とか目が追いつかなかったのに……あれを即興でやっていたんだなんて……」
カメラマンをはじめとしたスタッフが映像の確認をしている中、見ていたパスパレの三人とイヴが今の感想を言っている。そんな中、血の海に沈んでいた慧人が額に青筋を浮かべながら、サングラスをかけて座っている少女の元に詰め寄っていた。
「おいこら千聖……!」
「千聖?今の私は監督よ(キリッ)」
「なら監督さんよぉ……最後の場面。俺は寸止めで後ろに抜けていくって聞いてたんですけど?」
「そうね。慧人にはそう伝えたわ」
「おいコラじゃあ、イヴちゃんには」
「本気でやって構わないと伝えたわ」
「ざけんなよ!?本当に当てられて驚いたんだけど!え?当てられたんだけどって思ったわ!」
「その分、リアリティーが凄い出ていたわ。素晴らしい演技よ」
「演技じゃねぇよ!斬られたのがリアルなんだよ!このバカントク!」
「バカントクとは失礼ね。あなたの腹筋は何のためにあるの?」
「少なくとも盾じゃねぇよ!?」
監督千聖に詰め寄る役者慧人。
「そんなことはどうでもいいわ」
「オイコラテメェふざけんなよ」
「ところで慧人。イヴちゃんを蹴った場面。アレは寸止めしたんでしょうね。こっちからは完全に当たったように見えたのだけど」
「当たり前だろ。さすがに蹴らねぇよ」
「あたしからも、うわぁー慧人やっちゃったよーって見えたけどね」
「いやいや、慧人さんが蹴ったらやっちゃったよーではすまないと思いますよ」
「そうだよね……下手したら色々と折れるかも」
「さすがケイトさんでした!すべての攻撃に殺気というか本気が感じられました!」
「確かにね。見ていて冷や冷やしたわ」
「んなこと言ったらイヴちゃんも最初からスイッチ入っていただろ。本気で斬ってきただろうが」
「当然です!ケイトさんには全力で当たらないと押し切られると思ったので!」
わいわい言っているが、慧人はここで一つの疑問を持つ。
「所で、何で千聖が監督なんだよ」
「「「……えっ?」」」
「慧人って千聖ちゃんから説明なかったの?」
「いいや?普通に呼び出され連れて来られた」
「いや、衣装とか着てたよね?何も思わなかったの?」
「急に着替えろと言われたし……何か血糊とか用意されていたし……で、結局何でだよ」
「番組の企画よ。『映画監督に挑戦してみた』って感じのね……」
サングラス越しに遠い目をする千聖。そして、なんとなく察した慧人。だが附に落ちない点がある。
「で、何で俺なんだよ。お前の人脈なら俳優とかも普通に呼べただろ」
「そうね。でも、彼らを呼ぶのってぶっちゃけ金とか事務所とか番組とか色々と面倒なのよ」
「おい。それはぶっちゃけすぎだ」
「だから、私の悪友を頼ることにしたわ。あなたなら何の見返りも求めずやってくれるだろうし」
「せめて、先に全部言え。まぁ、言われてたら多分、断っただろうけど」
「何も聞かずにやってくれたじゃない。まぁ、言ってたらあなたが断ることは分かっていたわ」
仲がいいのか悪いのか。
「まぁ、映像確認とかするけど、ここまで早く撮り終わるのは想定外よ」
「やりました!褒められましたよケイトさん!」
「あーそうだなー……というか着替えていいか?」
「せっかくですし写真を撮りましょう!ハグです!」
「はぁ?ちょ、帰りて……やめ、イヴちゃん!抱きつくなぁ!」
「はいはーい。写真撮りますよー」
血糊とか付いて、傷だらけのボロボロ(に見える)二人。
「そう言えばずっとカメラ構えていたよねー麻弥ちゃん」
「なかなかこういう機会がないので……あ、千聖さんの監督っぽい写真も撮りましたよ」
「よく撮れてるねっ!千聖ちゃん名監督みたい!」
「しっかりと後で皆さんに送っておくッス!」
この後、慧人に送られてきた写真の数々。しっかりと、パソコンに転送しておいた慧人であった。
ちなみにあの絵は『今回の話のヒントのために書いたイラスト』ではなく『千聖監督がイヴと慧人に見せたイラスト』です。……だから棒人間だったんだ。一枚に収めるためだったんだ。決して絵が下手くそ過ぎて、慧人とイヴちゃんを書けなかったとかじゃない。
次々回。紗夜さんと慧人のイチャつきを見たいという読者の心の声が聞こえたのでお答えします。幻聴かもしれないけど勝手に答えます。
次回?ヒント、Roselia。