というわけでりんさんの誕生日ですね。
誕生日おめでとー!
10月16日の夕方。Roseliaの一名を除く全員が俺の家に集合していた。
前回、リサ姐の誕生日の時と違った点は、全員で一斉に押しかけられた訳ではなく、一人一人やって来てここに揃った感じだ。
「冬木。明日は何の日か分かるかしら」
「りんさんの誕生日ですね」
「今回は覚えていましたね」
「ん?今回は?」
「けー兄酷いんだよ?リサ姉の誕生日知らなかったんだよ!」
「わぁーこれは泣いちゃうな。シクシク」
「いや、伝えられたことないんですけど?」
お察しの通り、友希那さん、紗夜さん、リサ姐、あこちゃんの四人が俺の部屋に集まっている。
ちなみに……
『私が後方から攻撃を行いますのでKeiさんは前線でお願いします(。>人<。)』
『了解です。間違って当てても気にしないので自由にやってください』
りんさんとNFOで二人パーティーを組んでクエストを攻略中である。
最初はボイスチャットでやろうと言ってきたが、こちらの会話が聞かれるとまずいので声が枯れてると言って、一回繋いで声が枯れてる演技をして、普通のタイピングの方のチャットにしてもらっている。
「聞いてるのー?」
「聞いてますよ。ただ、NFOやりながらそっちの会議に混ざるのって割と大変なんですよ?」
並行して行うって意外に難しいなぁーと思いながら……
『本当はあこちゃんや紗夜さんも加わるはずだったんですけど都合が合わなかったようで……なので二人でやっちゃいましょう!』
『適正人数より結構少ないんですが……?』
『Keiさんなら問題ないですよ!』
ちなみに都合が合わないと断った二人は俺の後ろにいますけどね。はい。
「予め燐子の予定は空けてもらっているわ」
「じゃあ、明日の放課後は軽いセッティングですね」
「でも、誰が時間稼ぐの?明日はバンド練習休みって言ってあるし……」
「うーん。同じ学校って意味じゃ紗夜が無難?」
「前回みたいに集合時間ズラすのはダメなんですか?」
「ダメではないわ。ただ……」
「ただ?」
「燐子が男の人の家に一人で入れるかしら」
……あー。あの人、人見知りというか内気というか……
「でも俺の家ですよ?」
「それでも少しハードルがあるんじゃないかなー?」
「じゃあ、誰が時間稼ぎ役を?」
「私……でもいいんですが自信はないですよ」
紗夜さんか……確かに。途中からおかしな話になりそう。
「友希那は置いといて、やっぱりアタシか慧人くんじゃない?」
「……俺がしますよ。時間稼ぎ役」
「おぉーっ!でも何で?」
「こっちで準備する組で確定しているのが友希那さん、紗夜さん、あこちゃん。で、俺かリサ姐のどっちかが時間稼ぎを……って考えたら」
「あ……アタシも準備に回らないといけないのか」
そうなのだ。前回のリサ姐の誕生日で指揮してくれたのは友希那さん。でも今回は、
「あこちゃん。ある程度なら好きにやっていいから」
「わぁーい!」
指揮役はあこちゃんが適任というのは皆の共通認識だった。前回のフォローはりんさんがやってくれたけど、今回のフォロー役にはリサ姐が一番だろう。
「それに、少し前ですが、ゲームのグッズを見に行きたいと誘われていたのでちょうどいいです」
「決まりね。鍵はどうするの?」
「紗夜さんに預けますよ。俺が花咲川行けばいいんで」
「でも、それ怪しまれない?」
「俺が紗夜さんに話しかけるんですよ?」
「普通ね」
「怪しい要素がなかったね」
「話しかけない方が怪しまれますね」
「じゃあ、その時コソッと渡すんだね!」
そして、彼女に約束を取り付け、合流するのも花咲川となり、作戦はうまくいきそうだ。
「あ、そう言えば慧人くん」
「何でしょう」
「家に連れてくるの頑張ってね。何も伝えていないから!」
「……ん?それって……」
「自然にりんりんをここに誘導してきてね!」
それは相当ハードルが高いのでは?いや、自然に家にって……え?マジで?
次の日の放課後。俺の姿は花咲川にあった。……と言っても校門の前で敷地内にギリギリ入っていないのでセーフだ(何が?)
「お、お待たせしました……」
「いえ、待っていないですよ」
「白金さんが来たようなので、私は帰りますね」
「あ、け、けいさんはしっかりと無事にお返ししますので……!」
紗夜さんはりんさんが来るまで一緒に居たが、俺が紗夜さんと居ることを怪しむことはないので、スルーされる。ちなみにりんさんだけでなく、その前に通ったポピパの奴らとか、彩とかにも特に疑問を持たれずに挨拶され終わった。紗夜さん最強説?
まぁ、しっかりと鍵は渡した。だから、後は電話が来るまで、りんさんを出歩かせればいい。
「氷川さんとは相変わらずですね……」
「そうですね。だって、そこに紗夜さんが居るので」
「でも、自分の好きなものに突き進む気持ちは分かります……!」
「りんさんも好きなものには一直線ですからね」
「はい……ただ、どうしても一人で行くには心細くて……」
「そういうものなのか?」
「そういうものです」
並んで歩く……と今更ながら気付く。俺ってりんさんと二人でリアルで会うこと少なかったわ。大抵あこちゃんが一緒だったし。ゲーム?あっちは別だ。
「けいさんが居れば安心です。色んな人が避けてくれるので」
「…………」
それは喜んでいいのか、悲しむべきなのか。どっちか分からないなぁ……。
そんな感じで雑談を交えながらついに目的地に。
「着きましたね……!」
「じゃあ、入りますか」
「けいさん。傍を離れないでくださいね」
「分かってますよ」
ということでお店の中……うん。何というか……
「普通だ」
まぁ、ゲーム系の店とかって必ずしもヤバいオタクが居るわけじゃないよね。別に入るのは初めてでもないし、いかがわしいわけでもないから緊張も背徳感もない。
ただ、俺の場合は一人で来ることはなく、大抵アイツらと一緒に来るから、そういう意味では女子と二人で来るのは新鮮か。
「けいさんけいさん」
「はいはい?」
「コレ見てください。可愛くないですか?」
「なるほど、前のイベントの……」
「はい!衣装も可愛らしくてこの時は少し頑張りましたからね」
「俺はこのキャラの使い魔も可愛いかと」
「確かに。何だか小動物みたいで愛らしい姿でしたよね」
「本当ですよ。何で現実にいないんだろうって本気で思いましたね」
「そうですよね!このイベントの時はストーリーも普段より熱かったですよね。サポートキャラとしてイベント限定で追加された彼女とその使い魔の種族を超えた友情。途中、使い魔が自身の力を抑えきれずに暴走した時なんかは、倒すべきか倒さないべきかを迫られ、倒さないで助けるルートを何度も試した記憶があります。そして……」
十数分後。
「……で、あ……もしかして、話過ぎてますか?」
「いいえ、大丈夫ですよ」
凄いな相変わらず。好きなことになると止まらないというか、何というか……
「羨ましいですよ。好きなことに突き進んでいく姿」
「あ、ありがとうございます。でもけいさんこそ、周りの目を気にしないあたり凄いかと」
「そうですか?」
こう見えて気にしているような……?ん?やっぱり気にしていないかも。
「そう言えば。この前なんですけど、この使い魔を再現で作ったんですよ。後で見に来ます?」
「い、いいんですか?是非お願いします!」
「えぇ」
「よかったぁ……あ、でも湊さんから夜は予定空けとくようにって」
「へぇ。でも、何ででしょう?」
「さぁ……ちょっと分からないですが」
「うーん。まぁ、時間もそんなに取らないですし、いいんじゃないですか?」
「なるほど。それもそうですね」
……本当に何も伝えていないのかよ。予定空けとくように頼むだけとか無茶苦茶怪しまれてるじゃねぇか。もう半分バレてるんじゃないのか?
そんな感じで商品を見て会話をする。
一時間ぐらいしたころだろうか。
「ではそろそろ行きましょうか」
「ん?もう少し見ていかなくていいんですか?」
「はい。満足しました」
「なるほど。じゃあ、行きますか」
電話は来てないが、ここで嫌もう少し……!とか粘ると絶対にバレるのでそんなことはしない。だが……ふむ。一体どうしたものか。まぁ、いっか。そのまま家に向かおう。家にたどり着いて電話が来てなかったら考えよう。
「いろいろなものがありましたね。ついつい見入ってしまいました」
「そうですね。あまりフィギュアとかキーホルダーとか興味がないですが、意外と楽しめるものでしたね」
「確かに。けいさんのお部屋にはそういうグッズはなかったですね。しかも鞄にも付いていなくて……」
「まぁ、気を遣わないようにしてますね。ほら、つけると鞄を丁重に扱わないといけなくなるじゃないですか」
「……普段でも丁重に扱わないといけないと思うのですが……」
壊れてないからいいかなって。……あれ?ダメだったかな?
「そう言えば、けいさん。一つ気になったんですが」
「何でしょう?」
「けいさんがよく組んでいる四人パーティー。あれって全員リアルでも繋がっているのですか?」
「あーぽんちゃんを含んでるアレね」
「そうです」
「まぁ、そうだな。リアルでの繋がりがNFOに反映されたというか……」
「じゃあ、身近な人たちなんですか?」
「そうとも言え……ん?ちょっと待ってください」
ポケットに入れたスマホが震えている感じがする。ということで取り出してみると……
「すみません。電話が来たので少し出ますね」
「あ、はい」
相手は紗夜さんか。なるほど。
「もしもし」
『慧人さん?こちらの準備は完了です。あとどのくらいで来ることができますか?』
「そうだな……20で」
『20分ですね。了解です。家に着く五分くらい前にメッセージを送ってください』
「了解。じゃ」
ということで電話を切る。
「誰だったんですか?」
「先輩ですよ。今度NFOいつやるかって話です」
「あ、そうだったんですね」
勿論、嘘である。これは紗夜さんにも伝えたが、俺が敬語を外し、簡潔に言うことで、電話の相手がRoseliaの面々ではないことを暗に伝える事ができる。
「電話……恐ろしく短かったですね」
「まぁ、りんさんと居るっていうのもありますし、何より……」
「何より?」
「電話ってなんか面倒なんですよ。メッセージや直接話す方が楽です」
勿論、本当である。こんなとこで嘘をつくメリットはない。
「そうですか……確かに。メッセージの方が楽ですよね」
「ですです」
「でも、紗夜さんとは電話で長話とかするんじゃ……」
「あまりないですね。長話するんだったら直接会って話しますし、短いなら大抵メッセージで終わりです。緊急を要したり、或いは会えない状況にない限りは電話の出番はないですね。それに電話だと紗夜さんの声ではないのであまり好きではないです」
「そうなんですか?」
「えぇ。電話で聞こえてくる声と言うのは本人の声ではなく、本人に限りなく近い声です。膨大な音の波形データから本人の声に限りなく近い音を探し、生み出しこちらに送られている」
「あ、聞いたことはあります……」
「だから、あまり好きじゃないんです。耳がいいせいか、それとも普通のことなのかは分からないですが、違う声にしか聞こえないので」
「絶対音感ってそんなに凄いんですか?」
「さぁ。ただ、人より耳は少しいいんで分かんないです」
(耳だけじゃないと思うけどなぁ……)
「慧人さんって博識ですよね……?」
「そうでもないですよ。知らないことは知らないです」
「そうなんですか?」
「えぇ。案外分からないことだらけですよ」
「そうには見えませんが……」
分からないことの方が多い。でも、知る気があるかと言われたら、興味次第としか言い様がない。
とそんな感じで20分ほど。我が家に到着する。
「さ、あがってください」
「おじゃましまーす」
玄関に靴がないことから隠しているのだと察することができる。
「じゃあ、俺は二階に上がるんで、りんさんはリビングに行ってください」
「は、はい……!」
二階に上がるフリをしながら、りんさんがリビングのドアを開けたのを確認し、彼女の後ろから様子を見る。リビングに誘導してと指示は来ていたが一体何が……
「え?え?」
…………何だろう。よくダンジョンとかにある宝箱が見える。それも割と大きめな……。
ぱかっと開けるりんさん。すると、
「りんりんは
ゆきなのかぶと
リサのよろい
さよのくびかざり
あこのつばさ
けいとのつかいま
を てにいれた」
何処からかナレーション……いや、どう考えてもあこちゃんの声だな。うん。
「りんりん!お誕生日おめでとー!」
そのまま抱きつきに行くあこちゃん。
「ありがと……凄い演出だね……!」
「本当は謎解きやダンジョンみたいにしたかったんだけど止められちゃったんだ」
「…………え?マジで?」
「ちなみに本当ですよ」
りんさんの後ろから中に入ったが……あっぶねぇ……まともな人たち残しておいて助かった。あと少しで人の家が魔改造されるところだった。
「いやぁ、燐子ってセンスいいからプレゼント迷ったけど……」
「どうやらよかったみたいね」
「俺なんてあこちゃんのそれに合わせるために頑張ったんですよ?お陰で昨日徹夜です」
「それは大変でしたね。でも流石というべきでしょうか。手作りであそこまで可愛らしく表現するとは。あれ?それだけ拘ったのでしたらお疲れでは?」
「えぇ。まぁ、授業中にしっかりと睡眠時間を確保したので大丈夫かと…………あ」
「……慧人さん。私は授業中に寝るなとは言いません。ただ、寝るなら死を覚悟しなさいと言うだけです」
「あ、そうだった!欲しがっていた頭装備が二個出たから一個あげるね!」
一瞬冷たさがこの空間を支配した。
そんな中、あこちゃんの明るい言葉が響く。その言葉を聞いた瞬間。りんさんの目が物凄い輝きだした。その眩しさは俺には直視できないものがあり……
「あこにプロデュースを任せて正解だったね」
「燐子のあんな顔初めて見たわ」
「紗夜さん。今はりんさんを祝いましょう。ね?」
「そうですね。分かりました」
「さぁりんりん!宴の始まりだよ!」
「うん!」
こうしてりんさんの誕生日会が始まった。
元ネタというか、参考にしたというか、そのまんまというか。
多分、最後の方のやりとりとかは通じている人には通じているかな?
次回は前回の予告通りです。