というわけでどうぞ。
10月25日の夜。
『というわけでKeiくん。準備はやってくれた?』
『最低限の手回しだけです。後は明日やります』
『NFOで会議とは何だか新鮮ですね』
『そーしゃるでぃすたんすってやつだよ!』
『本当のところはリサさんが集まりに行くとバレる可能性があるって事なんですけどね』
俺とRoseliaの一名を除く全員でNFOをやっていた。
友希那さんとリサ姐の家の位置関係的に、俺の家で集まって~と言うのはバレるからである。あれ?じゃあ、リサ姐の誕生日の時は……まぁいっか。過ぎたことだし。
と言うのと後は明日のそのパーティーというかその開催場所がCiRCLEなので、俺の家で集まる必要がない。
開催場所がCiRCLEの理由は明日が休日で、俺がバイトに入っていて、Roseliaも予約を取っていたからだ。ここまで都合良く条件が揃っていたとは……。
『まりなさんに言ったら協力してくれたのでOKです。後片付けはいつも通りしっかりやってくれればいいって』
『そこら辺は心配しなくていいよ☆』
『そうですね。使わせていただくのですから片付けもしっかりとやりますよ』
『後は給湯室のところで軽く作れるので、そこで諸々作る予定です』
『あれ?夕食はどうするの?』
『今回は友希那さん次第ですね』
まぁ、NFOで会議にも限界があることは百も承知。既に彼女たちの中で大まかに決めて、俺はそこに手伝ったり自分の役割を遂行するだけだ。
実を言うと毎回そんな立場だけど。ほとんど彼女たちが決めて、俺はフォローというか、与えられた役割をこなすというか。
『というか、明日は何やるんですか?俺は特に何も聞かされていないですよ』
『Keiの仕事は料理とかの裏方担当ですね。バイトと並行してなので、役割をたくさん与えるわけにはいかなかったです』
『バイトがなかったらどうなってたんだ俺は……』
『多分、断っていたと思いますよ……私も少し断りたい気持ちが……』
『ダメですよ!皆でやろうって言ったじゃないですか!』
『でも、一回やったことあるじゃん』
『あの時は別と言いますか……でも、分かっていますよ。やると決まった以上本気でやりますから』
『うんうん。そのいきだよ☆』
ふむ……俺がバイトに入っていなかったら何をさせられていたのだろうか。すげぇ気になるが……
『まぁ、明日はお任せを。Roseliaの担当は俺がやりますので途中で第三者が介入はしないかと』
『さっすが~そういう時にバイトの友人って便利だよね!』
『お願いしますね。私もあまりRoseliaとKei以外には見られたくないので……』
本当に何をやるんだこの人たち。
リサ姐とあこちゃんがノリノリ。紗夜さんとりんさんは消極的。本当に何をやらかすんだこの人たちは。
10月26日。そんな不安?を余所に俺は裏で料理をしつつ、いつも通り業務を行っていた。
「やっほー」
すると鞄を持ったリサ姐を筆頭にRoseliaの友希那さんを除く面々が揃っていた。
「とりあえず、ここの掃除、最低限のセッティング、料理など、与えられた任務は完遂しましたよ」
「うんうん。しっかりやってくれたね~」
「ふっふっふっ。流石は、魔王けー兄。完璧ではないか」
「お褒めに預かり光栄です。あこ姫?」
「うむ。くるしゅうない」
言葉だけ聞けば従者と主人のやりとり。だが、実際は俺があこちゃんの頭をぽんぽんと軽く叩いている(?)状態でのやりとりなのでまぁ、ちょっと不思議な状態。どっちが上なのやら。
「では、私たちが準備しますので湊さんが来たらお願いします」
「それまでの間は誰も入らせないようにしてください……!」
「あ、慧人くん。友希那が来たら連絡して。早すぎたら足止め頼むからよろしく」
「へーい」
ということで、部屋から出て行く。足止め……しなくていいことを祈るか。
こう考えると真っ先に思い浮かぶのはパンドラの箱だろうか。他には、竪琴の名手オルペウスと冥王ハーデースのやり取りだったり、プシューケーとペルセポネーだったり。
何が言いたいかというと古来より神や人と言うのは、開けてはならない箱を開けたり、振り返ってはならないのに振り返ったり、中を見るなと言われているのに見たりと、禁止される行動をしたくなるものである。だから、今あの部屋に入りたくなる気持ちが少しあるのは普通のことなんだ。
「まぁ、入らないけど」
もし、部屋で彼女たちが着替えていたらアレだし、入るなって言われて入ってしまうと彼女たちからの信用が失われる可能性がある。一時の興味に流され、彼女たちからの信用を失うのはあまりに痛い。
まりなさんには話が通っっている。まりなさんが「あの部屋に近づくと冬木君に殺されるからダメだよ」と言ったらしい。いや、そうだけどさ。それで、さっきから同僚たちに恐れられているんだけど?軽い風評被害だよ?
そんな感じで通常業務をすること三十分。
「友希那さん。待っていましたよ」
「えぇ。他の皆は?」
友希那さんが現れる。見えたと同時にメッセージを送信。
何というか……普通はこっちで予約の確認!とかしないといけないだろうけど、よく利用してくれるいつもの五バンド、25人に至っては、俺とまりなさんは少なからず全員把握しているから軽い顔パス状態。他?他の客は俺が怖いとかで近づいただけでおびえられるから嫌だ。
メッセージの返答としては準備OK!だそうだ。よかった。普通に案内できるな。
「つい先ほどですね。さぁ、行きましょうか」
「分かったわ」
嘘はついていない。30分前だろうが、俺にとってはついさっきということにしておけばいいからな。
「ここですね」
「ありがと」
そう言って友希那さんが扉を開ける。すると、
「友希那さん……」「友希那さん」「友希那」「湊さん」
「「「誕生日おめでとうニャー!!」」」
(なんなのかしら……)
なんなのだろうか……。
友希那さんの後ろから見えた光景としては、猫耳、猫の手、猫の尻尾を付けた、りんさん、あこちゃん、リサ姐、紗夜さんの四人がいた。
……一体、何なのだろうか?
「ちょっとあなたたち。最近私のことを誤解……」
「フシャー!」
パフッ
「いたっ」
紗夜猫に伸ばされた友希那さんの手。それが可愛らしい……間違えた。威嚇する猫の鳴き
すると、リサ姐……いや、リサ猫と目が合う。……あぁ、了解です。
「まぁまぁ友希那さん。ほら、誕生日だからこんなに可愛らしい四匹の猫が祝ってくれてるじゃないですか」
「にゃっ!にゃっ!」
しゃがみ込んで脇に置いてあった猫じゃらし(のおもちゃ)を片手にリサ猫の前でゆらゆらさせる。それをリサ猫は捉えようと遊んでいる。
「そういうこと……」
すると、友希那さんのスイッチが入る。なるほど。ここからは本気で見ていくようだ。半端な演技では通用しないと……まぁ、俺関係ないけど。
他の四人も空気が変わったのには気付いた様子。各々が猫っぽい行動を取り始めた。
「…………(スッ)」
「チチチ……」
手を差し出すも、りん猫はカーテンの隅から顔をのぞかせるだけで懐こうとしない。
一方あこ猫は駆け回って、そのまま
ズシャァァァアアアアッ!
近くに置いてあった紙袋に突撃していった。そのまま紙袋を貫通し……なるほど。それっぽいな。
「はい。どうぞ」
「ありがとう」
猫じゃらしを友希那さんに渡す。そして揺れる猫じゃらしに喜々として飛びかかるリサ猫。うんうん。……そう思ってると紗夜猫と目が合う。…………なるほど。
「はい」
「にゃ~」
煮干しを取ってきてそれをあげる。すると、口に咥えてそのままゆっくりと食べる……改めてみても破壊力がやばい。カラオケで一度見たことあるけどあの時以上に拘っていて……あぁ、尊い。なんて可愛らしいんだろう……特に紗夜猫。このままお持ち帰りしたい。Take out OK?
そんなことを考えているとリサ猫と一瞬目が合う。あ、了解です。
「じゃあ、友希那さん。俺はいったん戻りますのでごゆっくり」
業務に戻るふりをして、ケーキとか諸々を運ぶ準備に取りかかる。
あの素晴らしい空間に居た余韻に浸りながらふと思う。なるほど……
「俺、バイトで助かった」
あんなの俺はやりたくない。心の底からそう思った。
「お疲れ様」
「あ、お疲れ様ですまりなさん」
「どうどう?様子は」
「まぁ、友希那さんのサプライズパーティーってことで大成功かと」
「そっかぁ。他のバンドの子たちもいろいろやっているみたいだからね~」
「あはは、まぁ、ここ使いやすいですし」
「じゃ、この後もよろしくね」
「了解です。あ、賄賂……間違えた。まりなさんたち用のケーキ作って置いておいたので後で、皆さんと食べてください」
「ありがとー!後の仕事は私たちがやるから冬木君はRoseliaに専念していて!」
「あざまーす」
こうやって手回しも万全だ。向こうは甘いものが食べられる。俺は仕事が減る。Win-Winってやつだ。
そしてケ-キのトッピングを済ませて、カートに乗せて運んでいく。
「如何でした?友希那さん」
「みんな完璧に猫になりきっているわ。それでこそRoseliaよ」
「「やったニャー!」」
「では、ここからはパーティーですかね。ケーキもご用意しましたのでどうぞ」
ケーキも毎度の如くお手製である。友希那さんが主役なので、猫型ケーキに猫型クッキーなど猫づくしである。更に、
「こちら、ラテアートの猫でございます」
「か、可愛い……!」
「おぉ……っ!これは素直に凄い……!」
「け、けー兄!絵も確か絶望的に下手くそだったんじゃ……!」
「ペンで書く絵はダメでも、ラテアートは行けました」
紙とかに猫を描かせると何処かの金髪のアイドルバンド兼女優並みに悲惨だが、ラテアートならいけた。自分でも不思議である。ちなみに昨日あれからこのためだけに徹夜したのは内緒だ。
「でも、今は何を……?」
「現在3Dに挑戦中です。先に食べていてください」
「平面から立体に行くのですか……?」
「ね、猫づくし……!」
「凄い……ここまで慧人くんがするとは想像もしていなかったよ……!」
「任せてください。料理と手芸とサッカーは本気なんで」
「あれ?勉強は……?」
「…………」
「慧人さん?返事は……」
ふぅ。ここからは神経を使わなければいけない。手早くかつ丁寧に……!
「完成です」
「「「おぉー!」」」
「しゃ、写真撮っていい?」
「あこも撮るー!」
「す、凄いです……!」
「完成度が高い……!」
「か、可愛らしいにゃーちゃんが……!」
何だろう。今更だが彼女たちの誕生日を迎えるごとにできることが増えている自分がいる。前は羊毛フェルトだし、今回はラテアート。俺は何を目指しているのだろうか。
とそんな感じで盛り上がり、終わりを迎えたころ。一つ忘れていることがあった。
「そう言えば、友希那さん。誕生日プレゼントです。どうぞ」
「ありがとう。中を見ても」
「えぇ」
そして中から出てきたのは、羊毛フェルトで作られた猫。
「本当は大きめのを作ろうか迷いましたが、このような形で」
「あれ?これって……」
「お察しの通り、リサ姐に渡したのとお揃いです」
いやぁ、写真撮っておいてよかった。記憶だけでの再現は無理だ。もっとも、二ヶ月で成長しているはずだが。
「皆、ありがとうね。最高の誕生日よ」
友希那さんの言葉と締めの言葉。うんうん。
「じゃあ、次の予約を取ってくるわ」
そして、友希那さんは予約を取りに行く。
「やるじゃん慧人くん。アレはアタシたちでも予想外だったよ」
「本当に何でもできるんだね!凄い凄い!」
「尊敬します……!」
「流石です」
「ありがとうございます」
こんな感じで無事にサプライズは成功。良かった良かった。
本当は最後にポンコツな紗夜さんが猫の真似に本気出しすぎて人間に戻れなくなったってくだりをやって次回続きにしようとしていましたが断念。
流石に猫相手では話が進まなかったです。