クールビューティーな紗夜さんを返して(涙)   作:黒ハム

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援道未知さんより頂いたネタです。ありがとうございます。
頂いたネタ回という名の割と重要な回かも?
高評価ありがとうございます!お気に入り登録も感謝です。
もう少しで総合評価が2000に……11月中には突破できそうですかね?


看病しよう ☆

 朝……今日は天気がよいにも関わらず朝練はない。朝練はないが普段の習慣で割と早めに来てしまった。なのでちょっとボールを蹴って早めに教室に入ることにする。

 で、朝練なしの理由は……まぁ、何というか。

 

「まさか……ウチのキャプテンが朝補習を組まれるとは」

 

 ウチの阿呆が日頃の追試や放課後の補習だけじゃ足りなくなって、朝も使わせてくれとのこと。それで休みだ。……あほくせぇ。とまぁ、うちの阿呆は置いといて、

 

「どうした冬木?何か考えごとかい?」

「…………キャプテンのこと?」

「違うな。いやちょっと気になることがあってな……」

 

 昨日バイト中にRoseliaが入店した(まぁ予約入っていたの知ってたけど)。だが、そこに紗夜さんの姿はなかった。彼女たち曰く、明らかに無理してそうだったから帰らせたそう。本人は隠して誤魔化そうとしていたらしいが、その程度見抜けないはずがないと一蹴したらしい。

 だから、心配で連絡も取ろうとしたが結局取ってないしで、現在。気になりすぎている節がある。

 

 ピロリン♪

 

 L○NE……電話?日菜から?

 

「もしも――」

『おねーちゃんが熱出した!』

 

 あーやっぱりか。なるほど、昨日のRoseliaの皆の目と判断は正しかったと。 

 

「分かった。家に人は?」

『えっと、お父さんとお母さんは仕事で、あたしはまだ居るけど学校で外せない用事が……』

 

 あの日菜が紗夜さんより優先しなければならないなんて、いやそれもだが……

 

『それにおねーちゃんに言ったら、「私のことはいいからあなたは行きなさい」って……』

 

 あの紗夜さんが、自分のために妹が学校を休むことをよしとしないか。

 

「なら、俺が看病しにいく」

『学校は?』

「サボる」

『分かった!待ってるね!』

 

 切れる電話。スマホをしまい、俺は鞄の中に荷物を戻していく。

 

「悪い。森下に千石。授業ノート任せた」

「ちょっ、お前。何処に」

「俺には行かなければならない場所がある」

「…………分かった。行ってこい」

 

 そして鞄を背負って、そのまま窓に向かってジャンプ。

 

「……アイツここ何階か分かってるのか?」

「…………分かってないでしょ」

 

 着地を綺麗に決めてそのまま下駄箱で靴を履き替え、氷川家に向かう。

 

 

 

 

 

「お前ら全員居るなー……ん?冬木はどうした?朝一番に来ていただろ?」

「…………女のもとへ向かいました」

「果たさなければいけない使命があるらしいですよ」

「そ、そうか……そう言えば朝、窓から飛び降りる生徒がいたらしいが誰か知ってるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、慧人!」

「日菜!」

 

 そして紗夜さんと日菜の双子が住んでいるマンションへとたどり着く。

 

「鍵はこれ!何かあったら連絡して!じゃ、後任せたよ!」

「ああ。託された」

 

 日菜はダッシュで学校の方へと向かう。あれは遅刻ギリギリってところか。

 

「お邪魔します」

 

 俺は彼女たちが住んでいる家に。

 中に入ると誰も居ないように感じる静けさ……まぁ、そりゃそうか。

 そして紗夜さんの部屋の前、

 

 コンコンコン

 

 すると、扉が静かに開かれる。

 

「ひ、日菜……?あなた、学校に……」

「俺ですよ」

「慧人さん……どうして」

 

 どうして、と聞かれても答えは一つしかない。

 

「勿論、あなたの看病をするためですよ」

 

 彼女をベッドまで運んで横にさせる。

 

「さ、寝ていてください」

 

 彼女は布団の中に入り、顔だけ布団から出す。 

 

「学校は?」

「自主休校です」

「さぼったのね」

「バックレただけです」

「すっぽかしたのね」

「そうとも言います」

「行きなさい」

「嫌です」

「行って」

「お断りです」

「……怒るわよ」

「どうぞ」

 

 目だけは何処か不機嫌そうな、そんな感じを見せるが……

 

「すみませんね。たとえ、怒られようと蔑まれようと。紗夜さんの事を放っておくなんて、俺の心が許さないですよ。まして、弱ったあなたがここに独りになるというのにね。…………だから絶対に譲りませんよ」

 

 俺は彼女の瞳を見て答える。多くの人は俺のことを馬鹿と言うだろう。だが、それがどうした?

 学校をサボって女子の下へ行くやつなんて馬鹿という言葉がお似合いだろう。

 周りからなんと言われようと、どう思われようとそんなことどうでもいい。俺の中で彼女が大切なことに変わりはないのだ。

 

「…………っ!」

 

 すると、顔が更に紅くなっていく。まさか、熱が上がったのか?

 

「さぁ、寝ていてください。早く風邪を治したいんでしょ?」

「…………」

 

 そして、布団を顔の上まで被る紗夜さん。

 数分した後、俺は行動を起こす。彼女が寝たかどうかは分からないが、流石に何も持ってきていない以上、このまま一緒に居るだけでは意味がない。

 

『日菜。冷蔵庫の中は勝手に使っていいのか?』

『いいと思うよ!でも、何入ってんだろう?』

 

 いや、把握しておけよ……と思ったが、料理をしない人間は冷蔵庫の中とかどうでもいいのか?

 とりあえず、冷蔵庫の中を見ておこう。…………ふむ。

 

『ちょっと買い出しに行ってくるわ』

『おっけー!カギだけよろしく!』

 

 頭の中でリストを作る。そして、

 

「……ちょっと行ってきます。すぐ戻りますので」

 

 紗夜さんが眠ったことを確認してから買い出しに行く……まぁ、制服でも問題ないだろ。知らんけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 我ながら情けないと思っていた。

 体調管理は基本中の基本。それなのに、ほんの少しのミスからこの様である。

 ギターの練習に没頭し過ぎて、気付けばいつもの寝る時間を超していたのが一昨日。朝から寝不足のせいか、少し身体にダルさを感じていたが、それをごまかして振る舞っていたのが昨日。ただ、Roseliaのメンバーにはバレたようで練習に参加する前に帰らされ、そこから家で少し自主練するつもりが思うように弾けずに……とやっているうちに再び、寝る予定の時間を過ぎてしまった。

 そして今朝。起きようにも身体に力があまり入らなく、どこか熱っぽさがあった。体温を測ってみると38℃近く出ており、風邪を引いてしまう。

 

「……慧人さん」

「あ、起きましたか」

 

 そこから両親は休めないことを悔やみながらも仕事に行き、日菜は学校に行ってこの家に一人きりになったと思った。しかし、慧人さんが自分が学校あるというのにサボって駆けつけ、現在二人きり。

 

「……ごめんなさい。迷惑をかけてしまって……」

「迷惑だなんて思ってないですよ。俺が好きでやっていることなんで」

 

 風邪の時は寂しい気持ちが強くなるのだろうか?彼の声を聞くといつも以上に安心できる。

 

「それにどうせなら頼るとか言ってほしいですね。迷惑をかけるより断然響きがいいです」

 

 私の頭を静かに撫でながらそう言ってくれる。何だろう。慧人さんの手って、私より大きいんだなぁ。それに、私の額の方が熱いはずだから、本当は冷たく感じているはずなのに何処か温かい。不思議な気持ちだ。

 

「……そうだ。食欲はありますか?」

「……少しだけ……」

「でしたらこちらを……」

 

 そう言って差し出したお盆。その上には器があって……中を開けると、そこには……

 

「おいしそうですね……」

 

 しらすとネギ。そして卵が入ったお粥……それを一口分すくって、息を軽く吹きかけ冷まそうとする慧人さん。

 

「紗夜さん。口を開けてください」

「あー……」

 

 そっと口に運ばれる。今の私でも食べやすいもので、とても優しい味が口の中に広がっていく。

 

「おいしいです……」

「それはよかった。もう一口いります?」

「お願いします……」

 

 いつもよりゆっくりと食べる私のペースに合わせてくれる。慌てさせたり、急かしてきたりすることなく……私に合わせてくれる。

 ゆったりとした時間が流れる。そして気付けば彼の持っていた器は空に。

 

「なるほど。そこまで食欲は落ちていなかったようでよかったです。おかわりはいりますか?」

「大丈夫です……」

「あ、飲み物いります?」

「いただきます」

 

 そして、差し出されたコップ。

 

「まだ熱いので少し気をつけてください」

「はい……」

 

 少し息を吹きかけ、冷ましてから飲む。……レモネード……あれ?この風味は……

 

「生姜……?」

「よく気付きましたね。正解です。レモネードはビタミンCがとれますし、生姜も身体にいいですからね」

「温かくて……おいしいです」

「ありがとうございます。配分などを調整したかいがありました」

 

 身体の内側からポカポカと温かくなっていく感覚……。

 

「空になりましたね。じゃあ、片付けてきますね」

 

 そう言って立ち上がろうとする慧人さん。その背中を見ると……

 

「……行かないで……」

「ん?」

「…………あ、ごめんなさい……何でもないです」

 

 行かないで。一人にしないで。

 普段はあまり感じない寂しさを感じてしまう。でも、これ以上甘えるわけには……

 

「何でもないわけないでしょ?」

 

 すると、手に温もりが……

 

「こうすれば寂しくないですか?」 

「……はい」

「じゃあ、こうしていますね」

「……ごめんなさい……」

「紗夜さんはもっと甘えてもいいんですよ?少なくともこういう時ぐらいは」

「……でしたら……その……このまま、頭を撫でて下さい……」

「えぇ。分かりました」

 

 彼の温もり……この胸に広がる温かさはきっと……あぁ……私ってやっぱり彼のことが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紗夜さんは美しい人だ。クールな振る舞いはその美しさを際立たせる。

 でも、それは彼女の一部に過ぎない。時折見せるポンコツな所もかわいらしい一面も、どれも彼女だ。

 そして、今のように弱っている彼女も、きっと彼女の見せる一面なのだろう。

 

「分からないなぁ……」

 

 分からない。

 俺は一体、どうすればいいのだろうか。

 この気持ちは一体何なんだろうか。思慕する心か……それとも別の心か。分からない。

 

「…………」

 

 自分の掌を見る。

 俺のこんな穢れた手で貴女に……いえ、貴女たちに触れるべきではないんじゃないか?本当は俺のような人の心がないバケモノが……

 

「ただいまー!慧人慧人!おねーちゃんは!?」

「寝ているぞ」

 

 気付けば夕暮れ。学校が終わっていても不思議ではない時間だった。

 

「じゃあ、静かにだねー」

 

 すると、日菜の後ろから現れたのは、

 

「リサ姐。それに友希那さん、りんさん、あこちゃん……あ、お見舞いですか?」

「そうよ」

「顔色が昨日より良さそうですね……」

「ふっふっふっ。これなら復活も目前であろう」

「……んっ……あれ……皆さん?」

 

 目を覚ました様子の紗夜さん。身体を軽く起こして、周りの様子を窺う。

 

「起きましたか?お見舞いに来てくれたそうですよ」

「そうですか……すみません。今回はご迷惑をおかけいたしました」

「気にすることないわ。無理する前にしっかりと休んでちょうだい」

「だよねー。紗夜って倒れるまでやりそうだからね」

「そうですよ!でも、倒れる前でよかったです!」

「そうですね。後、けいさん……ちょっとこちらに」

「何でしょう?」

「えっと……その」

「じゃあ、おねーちゃん!ちょっと汗拭くから上を脱いで!」

「なるほど。じゃあ、出て行きますね紗夜さ……」

 

 視線を彼女に移すと俺は見てしまった……

 

「どうしましたか?慧人さ……」

 

 咄嗟に胸のあたりを隠す紗夜さん。

 汗ばんだシャツが彼女に張り付き下着が透けて見えて……

 

「……見ましたね」

「完全に見たよね~」

「……ミテナイデス」

「色は?」

「水い……あ」

「冬木。来なさい」

「……はい」

 

 友希那さんに連れられ部屋の外に。そして扉は閉められる。……いや、閉め出されたのは分かるが、何故この人と二人きりという状況に?

 しかも相手が友希那さんって微妙に会話のネタに困るんだよな……あ。

 

「そう言えば友希那さん。誰が最初に気付いたんですか?」

「何を?」

「紗夜さんの体調ですよ」

「そうね。皆ほぼ同時に……かしら。まぁ、燐子は学校で見かけたときから少し違和感を覚えていたらしいけど」

「流石りんさん。でも、友希那さんも気付いたんですね」

「当たり前じゃない。バンドメンバーの体調の変化に気付けないなんてリーダー失格よ」

「なるほど……」

「……と言っても、少し前の私ではきっと気付けなかったんでしょうけど」

 

 そう言った友希那さんはどこか遠い目をしていた。

 

「Roseliaの皆……いえ、あなたも含めた周りのお陰で今の私があるのよ」

「……ははっ」

「……ちょっと?今の所に笑う要素はなかったと思うのだけど?」

「……いいや。そう思うと俺も同じだなって」

「同じ?どういうことなの?」

「今の俺があるのは、きっと皆が居てくれたから何だろうなって」

「そう。でも、私から見たら出会った頃とそんなに変わってないわよ?」

「ひでぇ言われよう。これでも成長したと思いますよ」

「ふふっ。あなたがそう思うなら、きっとそうなのね」

「…………なぁ、友希那さん」

「何かしら?」

「俺って人間に見えるか?」

「……質問の意味がよく分からないのだけど……?」

「いいから。答えてくださいよ」

「そうね。人間に見えるわよ。少なくとも猫には見えないわ」

「比較対象が猫って……」

「ニャーちゃんを馬鹿にしないで貰える?」

「いいや、友希那さんらしいなって」

 

 と、そんな感じで友希那さんと話していると……

 

「おーい、入っていいよー慧人くん」

「分かりました」

「じゃあ、アタシたちは軽く作るから紗夜をみていてね~」

 

 リサ姐たちと入れ違いになるようにして入る俺。

 

「友希那さんは?」

「リサたちの方に行ってくるわ」

「そうですか」

 

 ということで一人で入っていく。すると、布団を深く被った紗夜さんが。

 

「……さっきはその……お見苦しいものを……」

「別に謝ることじゃないですよ。寧ろ謝るのは俺の方です」

「……日菜に比べたら小さいんですけどね」

「何故それを言ったんですか!?」

「いえ、慧人さんなら知ってると思いましたが……」

「いや、知ってはいますけど……」

 

 どうしよう。何というか……開幕からおかしな方向へ話が進もうとしてしまった。

 

「…………ありがとうございます」

「急にどうしたんですか?」

「本当は慧人さんが来てくれて嬉しかったんです……私のことをそんなに心配してくれていることに。そして、慧人さんが居てくれたから一人じゃなかった。……一人きりって凄く寂しいから」

「…………そう」

「思えば、出会ったときからですね。きっとあなたが居なかったらずっと孤独だった。Roseliaに出会うまで独りだった。……だから、感謝しているんですよ。あなたのお陰で独りじゃなかった。傍に居てくれてありがとうございます」

「…………」

「無理しないでください。日菜が居ますので、慧人さんも休んでくださいね」

 

 そのまま布団の中に入っていく紗夜さん。

 

「そうだ。下の様子を見てきてください。日菜が迷惑をかけているかもしれないですし……」

「分かりました」

 

 そう言って部屋を出て行く。

 やっぱり、分からないなぁ。ああ言ってくれた紗夜さん。でも、俺には――

 

(危なかった……。あと少しで言いそうだった。私は慧人さんに――)

 

「傍に居る資格なんて本当にあるのか?」「これからもずっと傍に居てほしいだなんて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日。

 

「先日はありがとうございました」

「いえ、紗夜さんが元気になってよかったですよ」

「それでその……何かお礼をしたいのですが……」

「お礼なんていいですよ」

「そういうわけにはいきません」

「そうですか」

「ですので、何かその……慧人さん。私にしてほしいこととかありませんか?」

「してほしいことですか?」

「い、いえ。お礼にお金とか物とかは違うと思いまして……その、私に出来ることがあれば何か……と思いまして」

「そうですね……あ、一つ思いつきました」

「何でしょう?」

「まぁ、お願いですね。その――」




少しずつ歯車が動き出す。
……ところで、前回のアンケートの第三の選択肢って一体何だろう?
最後に慧人がお願いしたことは一体……?(当てられたらすごいと思う)
また、黒塗りの所はクリック&ドラッグしてみると……?
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