クールビューティーな紗夜さんを返して(涙)   作:黒ハム

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もうすぐRoseliaの映画公開だなと思う今日この頃。
映画館で映画を見るのが苦手なタイプの人間なので……はい。

今回はタイトルの通りです。勝つのはどちらでしょうね……?


Roselia VS 慧人 ~第Ⅱラウンド~

 水族館に花音とたえと行った翌日。午前中の部活も終わり、家に帰ってきた俺は、ご飯を軽く作り食べていた。

 結局、昨日の最後に送ったL○NEは、千聖の奴が既読スルーしやがったので、何がやりたかったか全然分かってない。未読スルーしていないあたり、アイツは答える気がないことをアピールしているんだろう。

 だからと言って、何かを期待することも身構えて待つ必要もない。親もいつも通り揃って仕事で遅いし、家の戸締まりだけ確認して俺は寝ることにする。戸締まりさえしておけば不法侵入されることはないだろう。……まぁ、侵入されたらその時はその時ってことで。

 

 ピンポーン

 

「…………今、何時だぁ……?」

 

 時計を見ると14時30分過ぎ……おっと、二時間くらい寝たのか。

 

 ピンポーン

 

 とここで、インターホンが鳴っていることに気付く。想定より寝過ぎたせいで頭が回っていないが……宅配便?なんか頼んだのか……?まぁいいや。

 

 ピンポーン

 

 ピンポーン

 

 ピンポーン

 

 ……急いで向かう気がない俺にも問題はあるが、何回も押しているあたり、何かの押し売りか勧誘か?……まぁ、大体そういう奴らって俺が出ると逃げ帰るしなぁ……ちなみに親からも公認である。

 

「はいはーい……」

 

 未だ眠たい目をこすりながら鍵を開け、玄関のドアを開ける。あくびを片手で押さえながら開けるとそこには……

 

「女神様……?」

 

 何だろう……直視できない眩しさを感じる。それは思わず目を閉じてしまうほどだった。そして、ゆっくりと目を開けていくとそこには……

 

「こんにちは。慧人さん」

「紗夜さんですか……それにああ、Roseliaがお揃いで」

「あれ?隠れていたのによく分かったね、けー兄」

「空気で分かる」

「相変わらず、すごい感覚ですね……」

「褒めても何も出ませんよ」

「ありゃ?寝起きかな?」

「さっきまで寝てたんでね」

「髪がいつもよりボサボサよ」

「後で適当になおします」

 

 ふぅー段々とスイッチが入ってきた。

 

「何の用でしょう?」

「暇ですよね?だから来ました」

「え?何で暇だって知って……あぁ」

 

 思い当たる節があった。千聖か。アイツがリークしたのか。

 

「まぁいいや。どうぞあがってください」

「わぁーい。お邪魔しまーす」

 

 ということで家に上げる。ところで、何で暇だから来るって話になっているんだろうか?

 

「ねぇね、けー兄の部屋に行こうよ!」

「あぁ、別にかまわ……!?」

 

 すると何か嫌な予感がした。そう。俺の中のセンサー(第六感)が、彼女たちを部屋にあげるのは危険だと告げている。

 

「……あーちょっと散らかってますよ」

「それくらいなら……気にしませんよ……?」

「いいんですか?」

「おやおや~?それとも、何かあげたくない理由でもあるのかな~?」

「……まぁ、特にないんでいいんですけど」

 

 ……流石にこんな風に言われてはあげない訳にはいかない。ぽてぽて事件を始め、今までも彼女たちを何のためらいもなく部屋にあげた前例がある以上、頑なに否定しては怪しまれるだけだ。……仕方ない。さっきのが杞憂に終わることを祈るか。

 というわけで部屋に。ちなみに、ちょっと散らかっているのは本当だ。勉強机の上には参考書とか教科書が出しっぱなしだし、パソコン周りはそこそこきれいだが、ベッドの上はさっきまで寝ていたのでクチャクチャになっているし、本棚とかも少しだけ本が雑に置かれている。

 

「許容範囲ね」

「散らかっているというほどはないですね」

「やっぱり、少し広いですよね……」

「確かに。6人がカーペットの上で座れるもんね~」

「え?俺椅子の上じゃダメですか?」

「ここは床に座ろうよ~ほらほら」

 

 ということでカーペットの上に……何故か正座させられているが。いや、紗夜さんとか真面目だから正座しているし、他の人たちも正座なりしていてそんな中であぐらをかくことがためらわれるというか……まぁいいか。

 

「……で?何でしょうか。とりあえずミニテーブル的なの持ってきた方がいいですか?」

「お構いなく~」

「はぁ……」

 

 いや、マジで何しに来たんだこの人たち。本当に暇だから来たのか?いや、それにしてはこっちの予定を確認してから来ているし……うーん?

 

「そう言えばご両親は?」

「仕事で遅いですよ」

 

 まぁ、あの人たちは夜型と言ったらアレだが、昼頃から夜にかけてが多い。だから今日も午前中は家に居たらしい。らしいというのは、俺が帰ってきたときには仕事に行っていたからだ。

 

「けー兄~トランプとかなーい?」

「あるぞ」

「じゃあさ!ババ抜きとかしながら何か話そうよ!」

「なんかって……まぁいいけど」

 

 ということでトランプを持ってくる。

 

「イカサマありですか?」

「普通になしだよ!?」

「冬木。イカサマする気だったの?」

「まぁ、していいならしようかと」

「へぇーじゃあさ、やってみせてよ」

「分かりました」

 

 要望に応えるべく、下準備をすることに。

 

「まず、このカードに細工がされてないことを確かめて、AからKまで順に、スートごとに並べてください」

 

 ということで、五人が一枚一枚表裏を確認しながら、並べていく。

 

「後はそれを綺麗に積んで下さい」

「ジョーカーは?」

「一番上に」

「りょーかい」

 

 綺麗に積み上げられる。一番上がジョーカー。その下にハートのKからA、ダイヤ、クラブ、そして一番下がスペードのA。

 

「じゃあ。まぁ、やってみますか」

 

 まずは、普通にシャッフルしていく。五人が手元とかをすごい見てくるので、時折リフルシャッフルやウォーターフォールシャッフルなどを織り交ぜたりしてみる。

 そして一人一人に配っていく。配っていく時も警戒されているようだが気にはしない。今回は六人居るので、一人だけ八枚になるはず。まぁ、それは俺なんだけど。

 

「…………え?普通だったよね?」

「何か格好いいシャッフルが混ざっていたよね!」

「配るときも怪しい動きはなかったかと……」

「配られたカードもバラバラです。あ、一組揃ってました」

「私は二組ね……でも、本当にやったの?」

「はい。これで俺の一位ですね。俺の手札AとKしかないので」

 

 そして俺は自分の手札を全て見せる。そこには、Aが四枚、Kが四枚あった。

 

「「「…………えぇっ!?」」」

「まぁ、これやったらあからさますぎるので、普通はやらないんですけどね」

 

 さすがにババ抜きで配られた段階で、あがりなんてあり得ない。いや、正確には確率がむちゃくちゃ低い。細かく計算はしてないけど、偶然とか運がいいとかで片付けられるよりイカサマや不正を疑われるレベル。

 それくらいのレベルだから、普通はやらない。……まぁ、もう一つ仕込んでいたが。

 

「ちなみにリサ姐。リサ姐のところにある上から三枚目のカード。それジョーカーですので」

「……え?嘘、本当にジョーカーなんだけど」

「……もしかして慧人さん。すべてのカードの行方を把握しています?」

「まさか。そこまで処理能力も記憶力も高くないですよ。精々、自分の手元のカードとジョーカーぐらいしか分からないですし、そもそも意識して操作してないです」

 

 恐らくバカみたいな天才とかにこれをやらせたら全員の手札が分かるかもしれないが、生憎そこまでの能力はない。というか、神経衰弱やポーカー、七並べなんかはともかく、ババ抜きでは全部のカードの位置を把握しても他のゲームよりメリットが少ないと思う。というか、ただの遊びでそこまでやるのは……ねぇ。意味が分からん。

 

「じゃあ、頑張ってくださいね」

 

 振り出しからリサ姐が不利だが、そこまで大差はないだろう。最初から手札をシャッフルしているぐらいで、あくまで普通。本来のババ抜きであれば、最初から手札をシャッフルする人間はほとんどいない。勿論、いるにはいるだろうが、その行為はその人がジョーカーを持っているのでは?と他の人に思わせることになり、疑われる要因になってしまう。まぁ、今回は既にバレてるから関係ないけど。

 リサ姐が笑顔であこちゃんに差し出して、あこちゃんが必死に考えたりしているのを尻目にネタばらしでもしておこうか。考えていたイカサマは大きく二つ。やらなかった方は、自分の手札となるカードをシャッフルの最中で抜いていき、それを配るときに、自分のところに渡していくやり方。やらなかったのは単純に五人が凝視してきてたから。流石に八枚もシャッフルの最中に消そうと思うとどこかでバレる。

 

「あああぁぁぁっ!」

 

 三周か四周くらいしただろうか。あこちゃんがカードを取った瞬間、叫んだ。ジョーカーが回ったんだなと誰もが思った。

 

「あこちゃん……ババひいたんだね……」

「ふ……ふっふっふ……い、今のはただの演技に過ぎない。場を盛り上げるためにわざとやったのだよ……」

 

 などと供述したが、ババを引いたのは丸わかりだ。動揺を隠しきれず、更に、りんさんが引こうとカードに手を置くと表情が変わってる。具体的にはある一枚のところに手が置かれると物凄くキラキラした目を向けていて、それ以外のカードだとどこか悲しそうである。

 そんな分かりやすい光景を見て、りんさんが取った行動は……

 

「白金さん。あなたババを持っていますね」

「何のことでしょうか?」

 

 あこちゃんのババを引いたのだった。で、ここに俺が居るはずだが、初手一抜けしたので紗夜さんが引く番だ。

 二人の攻防戦を見つつ、俺が今回やったイカサマについて。スート順に並べてくれ、ジョーカーの位置も指定した初期の段階では、全員が何段目に何のカードがあるかを把握している。自身の処理能力や技術もあるので、全部操作はしないで、自分のところに来るカードと、ジョーカーの位置だけ把握し続け、シャッフルで操作する。勿論、ゆっくりやったらバレるし、明らかに怪しいので、ある程度速くするのも忘れずに。後は、一枚分上下に誤差が生まれたときとかは、シャッフルで無理やり直すより配るときに直す方が早いので放置しておいた。

 配るときに誰からも指摘がなかったのでバレていないが、実は数回。山札の一番上ではなく二番目のカードを配る、セカンドディールと言うものをやっている。マジックでも使われるものだが、イカサマには持って来いの技術である。

 

「紗夜……あなたババを引いたわね」

「何のことでしょう」

 

 段々と皆の手札が少なくなってきた頃、友希那さんが紗夜さんに問いかけていた。紗夜さんの表情は何というか……無だった。そう、なにもなくなっていたのだ。さっきまでの表情が消え、死んでいたのだ。

 

「これね……っ!」

 

 そして、紗夜さんの感情が復活すると共に友希那さんが顔をしかめた。

 

「おやおや~?友希那がババを持っているのかな~?」

「……持っていないわ」

「そう?ならこのカード♪」

 

 友希那さんも分かりやすかった。正確には割と親しい人には分かるやつだ。この人、あこちゃんと同じタイプだ。だから今、この人はリサ姐がババ以外を引いたので少しムッとしている。

 ……この人たちの半数以上はギャンブルに向いてないのでは?ギャンブルは言い過ぎでも、ポーカーとか絶対向いてないだろ。相手……特に知り合いからすればいいカモだ。

 そして宿命と言うべきか、最初にリサ姐、次にりんさんと抜けていき、カモ三人が残る。その中でも、紗夜さんが他二人より少しだけポーカーフェイスが上手かったので三番目に抜ける。

 

「さぁ、引くのよ。あこ」

「我が千里眼を持ってすればババを見抜くことは容易い……!」

 

 友希那さんとあこちゃんの一騎打ち。最弱決定戦である。その結果……

 

「妾の勝利なり!」

 

 あこちゃんが勝った。ビリは友希那さんである。

 

「今のは無効よ。冬木がイカサマをしていたもの。だから、もう一回よ」

 

 友希那さん曰く、今のは負けてないけどこのままだと癪だからもう一回やってくれだそうだ。

 

「今度はアタシがシャッフルするよ☆」

「そうですね。慧人さんに任せるとおかしなことが起きるかもしれません」

「そんなイカサマなんてしませんよ。そこまでして勝ちに行く気はないので」

 

 イカサマは当然リスクが伴う。さっきは、宣言した上で見抜かれなかったからいいが、これが何も言わずに見抜かれた場合、糾弾されることは不可避だろう。

 で、配られたカード……うん。普通だ。凄い豪運があるわけでもないので、一組揃って後はバラバラ。ジョーカーは幸い来ていない。

 

「さっきとは逆回りにしましょう」

 

 ということで、今回は紗夜さんからカードを引き、りんさんにカードを引いてもらうことになったが……うん。

 

「…………」

「…………」

 

 紗夜さんと目が合う。いや、見つめ合っているとかそういうわけではなく、最初から心理戦が起こっている……あ、この人ジョーカー持っているわ。

 

「…………」

 

 一枚ずつ探っていく。基本的には無である。

 

「…………!」

 

 しかし、一枚だけ、僅かに反応を見せた。なるほど。これか。

 

「……はぁ。今回だけですよ」

 

 そう言ってカードを引く。やっぱりジョーカーか。まぁ、このやりとりから、どうせりんさんにはババが来たことがバレてるのでシャッフルする。

 

「引きましたね?」

「さぁ?何のことでしょうか?」

 

 そう言って差し出す。りんさんがこちらの目をジーッと見ながら反応を伺ってくるが……

 

「…………」

 

 特に反応しない。演技する気もないので、何のカードに触れられても反応しない。ただ、俺の手札は八枚あるので、さすがに初手ピンポイントでババを引くことはなかった。まぁ、三周目にひいたんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後、何度かババ抜きをして、配置も変えた。何故なら途中から、紗夜さん、あこちゃん、友希那さんのババを高確率で引く俺、りんさん、リサ姐が誕生したからである。見事に顔に出る三人のババを引く顔に出ない三人ということで、ジョーカーが回りに回った。他にもぶたのしっぽで、大量のカードを抱える友希那さんやあこちゃんとか七並べで、ずーっと止めていた俺やリサ姐とか色々とあった。ちなみに神経衰弱は紗夜さんとりんさんが凄かったですね。記憶力いいなぁ……。

 そして気付けば時刻は17時頃……

 

「ちょっと買い物行ってきますね」

「今から?」

「えぇ。昨日食材を使いすぎてね。ところで五人は夕食どうします?食べていきますか?」

「んー。作ってくれるなら頂こうかなー」

「そうね。いただくわ」

「では、私もいただきます」

「お願いします」

「あこもお願い~」

「了解です」

 

 長いこと正座していたなぁと思いながら立ち上がる。

 

「……(つんつん)」

「……何をやっているんですか?」

「いえ、深い意味はありません(つんつん)」

 

 足を指でつんつんされるが、特に何も思わない。一体、彼女はどうしたのだろうか?

 

「あ、そうだけいさん。NFOを開いてもらえますか……?」

「別にいいですよ」

「ありがとうございます。サブの方でいいですので……」

 

 まぁ、断る理由もないのでパソコンを立ち上げてNFOを開く。起動するのを待っている間も紗夜さんから足を指でつつかれているが気にはしない。そういうことをしたい気分なのだろう。……でも、真面目な顔でやられると……この人は何がしたいのかとすげぇ聞きたくなるけど。

 

「はい。見ても面白くはないと思いますが……ではこれで。もし、誰か来たら教えてください」

「「「はーい」」」

「分かりました(つんつん)」

「紗夜さん?行ってきますので、それをやめていただけると……」

「分かりました」

 

 ということでさっさと買い出しに行く。えーっと、買い物メモを頭の中に作って……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第一段階は失敗のようね」

 

 慧人さんが家から出て行ったことを確認してから、私たちは行動を起こす。

 

「そうだよね~いやぁ、まさか痺れていないとは想定外」

「長時間の正座に慣れていたのでしょうか……?」

「我慢しているようには見えませんでしたね」

「けー兄のデータ、サブでも面白いことやってるみたい~」

 

 私たちは暇だからという理由だけで、今日慧人さんの家を訪れたわけではありません。当然ながら、昨日考えた復讐を実行するためです。

 

「燐子。パソコンはお願い」

「お任せください……!」

「アタシたちは捜索開始だね」

「えぇ。白鷺さんのアドバイスを基に行きましょう」

「おぉー!」

 

 白鷺さんとメッセージで話し合った結果。やはり弱みを握るのが一番という結論に至った。弱みを握れば、従えやすくなる。それが罰ゲームでもいいし、発展させるにしてもだ。で、やっぱり相手が男子高校生なのでそういう系の本や、画像、動画、検索履歴などを探すのがいいと。

 

「鬼門はアタシたちじゃパスワードが分からなくてパソコンを開けられないことだったけど、こうも容易いとは」

「えぇ。流石に警戒が緩すぎる気がしますね」

 

 私たちだからいいものを、こうも警戒がなされてないといずれ問題が起きますね。ここは一つ。パソコンやスマホなどの情報機器を気軽に相手に渡すことの危うさを身をもって体験させましょう。

 

「ダメね。分厚い本のハードカバーを外しても何も出てこないわ」

「こっちも~そもそも二重底?ってあるのかな?」

 

 曰く、不自然に厚い本や、引き出しの二重底に隠してあることもあるそうだ。最初にお邪魔したときの影響で、警戒がされていると同時に私たちの探索能力が知られている。ならば、こういう場所に隠すのでは?というのがアドバイスだった。

 

「あ……」

「湊さん。何か見つけましたか?」

「冬木の成績表とかテストの点数表」

「けー兄ってどれくらい頭いいの?」

「…………嘘でしょ?冬木って馬鹿じゃないの……?」

「学年順位一桁……全国模試とかの成績も普通にいいし……」

「…………(ふふん)」

「り、リサ姉!紗夜さんがドヤ顔しているよ!」

「くぅ……流石紗夜に鍛えられているだけのことはある……!まさかアタシより頭いいとは思わなかった……!」

「そうよ。何で頭いいのに勉強から逃げたがってるのよ。てっきり同類と思ったじゃない」

「まぁまぁ……それに……頭が良くないと……高得点はとれないですから……」

 

 まぁ、慧人さんは元々優秀でしたからね。勉強に対してやる気がないくらいで、素のスペックは高いですから。机の上の勉強の形跡を見る限り、しっかり言ったことはこなしているようでよかったです。

 

「……うわぁ……」

「どうしたの燐子?何か見つかった?」

「い、いえ、ブックマークのところ開いたのですが……」

 

 そう言われて皆で見ると、そこに登録されていたサイトは……

 

「うわぁ……五割が料理関連、三割くらいサッカーで、残りも裁縫とか……」

「……これが男子のよく見るサイトなの?」

「多分例外ですよ……」

 

 そのまま履歴も見ますが……うん。サッカーのフェイントの練習動画とか、料理のレシピ……あ、水族館を調べていますね。なるほど……じゃないです。これじゃ、女子力が高く、サッカーを熱心にやっていると言うだけで、弱みにならないですか。

 

「では、次の手を打ちましょうか」

「えっと、推測候補だったね」

「履歴を消している可能性がありますから……」

 

 白鷺さん曰く、パソコンの推測候補の中にどんな言葉があるかでも弱みに繋がる可能性があるらしい。

 

「五十音順に行こっか」

「そうですね……えーっと、『あいまぜ』『医者殺し』『うけじゃ』『えびし』『おしきはば』……」

「「「医者殺し!?」」」

 

 ど、どうしましょう。ほとんど意味が分からない中にとんでもない言葉が混ざっていた。

 

「どどどうしよう!けー兄が!けー兄が殺人を!?」

「おおお落ち着くのよ。一旦落ち着きましょう」

「そそそうですよ、け、けいさんがそんなこと……!」

「そそそそうですね。しそうな顔ですがそんなこと……!」

 

 弱みとかを通り越して、とんでもない言葉が出てきたことに戸惑う私たち。

 そんな中、今井さんだけが何かを思案している様子。そして『医者殺し』と打って検索をした。

 

「やっぱりね。料理のことだよそれ。三重県での呼び方みたいだね」

「「「え?料理……?」」」

「うん。他の四つだけど、料理に関係していたからね。これももしかしたらって思ったけど当たったみたい」

「でも医者殺しなんて物騒ね」

「あはは。意味的には医者がいらないってことで医者殺しみたいだよ」

「よかったぁ……けー兄が殺人を計画していたわけじゃないんだ」

「あと少しで……通報するところでした……」

「慧人さんですから……」

 

 その後、すべて調べたがほとんどが料理に関することだった。残りもサッカーとかで弱みになりそうになかった。

 

「……この手は……使いたくなかったです……」

「そうだね~ボロをここまで出さないとはやるねぇ☆」

「ふっふっふっ。しかし、我らには全てお見通しぞ」

「そうね。やりましょうか」

「えぇ。最後のアドバイスを実行しましょう」

 

 最後に言われたのは隠しフォルダの存在。そういう系の画像や動画を纏めたフォルダを巧みに隠しているとのこと。確かにそれなら何の躊躇いもなくパソコンを渡したのも頷ける。

 

「……あ、ありました。それも二つ……」

「……これが隠しフォルダ……!」

「開きましょう」

「……はい」

 

 白金さんがフォルダを開く。するとそこに出てきたのは大量の写真だった。

 

「…………あれ?そういう系の画像じゃないね」

「盗撮……とかじゃなさそうね」

「……この写真とかいつのでしょうか?」

 

 そう言って指さしたのは、若宮さんが慧人さんに抱きついている写真。何故か二人とも着物?を着て、ボロボロで血に染まっているが。

 

「あ、でもその辺パスパレの子たちがたくさん写ってるね」

「日菜に確認してみますね」

 

 ということで日菜に電話を掛ける。すると、すぐにあの子は出た。

 

『もしもし?おねーちゃん?どうしたの?』

「日菜。一つ聞きたいけどいいかしら」

『いいよ~!』

「着物を着て、ボロボロで血が付いてる若宮さんが、同じくボロボロで血に染まっている慧人さんに抱きついている写真があるのだけど、何か知らないかしら?」

『ボロボロで血?…………あ、それ前の撮影のやつだ!サングラスかけて偉そうにしている千聖ちゃんの写真があったら確定だよ!』

 

 サングラスをかけて……コレかしら。

 

「あったわ。でも何故……?」

『なんかねー千聖ちゃんがバラエティーの企画みたいなので、「アイドルが映画監督に挑戦!」だったかな?それに参加することになって……あ、これまだ放送されてないから先の話なんだっけ?まぁいいっか!うん!とりあえずその映画撮っていた時にあたしたちが写真撮影会してたやつだね!』

「なるほどね。ありがとう」

『はいはーい。もしかして慧人のパソコンからかな?麻弥ちゃんがしっかりと送ったって言ってたし』

「じゃあ、切るわね」

『うん!』

 

 ということで分かった……分かったが。

 

「ど、どうしましたか?紗夜さん……怒ってます?」

「いえ……そんなことはないです」

 

 その撮影での写真を見ていると何処か楽しそうな彼の姿を見ると……何だろう。少しだけ心が黒くなる。私だってまだ一緒に写真を撮ったことがないのに……。

 

「嫉妬ってやつですかね」

 

 そのまま写真を遡って見ていくが、パスパレとの写真以外、凄い気になる写真は出てこない。まぁ、それでも色々と出て来るがそういう系のものは一切なかった。

 そんな中で、一番下。一番古いと思われる写真たちが少しだけ気になった。

 

「これって中学時代のかな?」

「そうでしょうね」

 

 中学時代の制服を着た慧人さんと東雲さん。卒業式の写真なのか二人とも何か片手に持っている。卒業証書を入れたものだろうか?そして……その二人と肩を組むように、真ん中に写っている女の子が……。制服を着ていて、でも二人と違って何も持っていない。

 別の写真は、私服姿の先輩さんと写っていたり、四人で写っていたりするが……一体、この女の子は誰なんだろう?この三人の誰かの兄妹……には見えないけど。

 

「お?こっちのファイルは動画みたいだね☆」

 

 そんな思考を巡らせている中、二つ目の隠しフォルダを開く今井さん。そこには、動画が入っているようだ。

 

「この動画は何なのか……」

「音量は下げたので……ヘッドホンなしでも大丈夫かと……」

「未知の世界だね……」

「見ましょうか」

 

 私たちは再生ボタンを押す。そして……そして…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、反省してください。皆さん」

 

 夜。リビングには正座している五人がいた。

 

「だ、だって~!」

「大方、俺の弱みを握って、罰ゲームでも考えていたんでしょ?どうせ、千聖にでも相談して」

「そ、そこまでバレているとは……!」

「あの女が人の予定を聞いてきたんで、一枚噛んでいるのは想像に難くないです。というか、言ったじゃないですか。いくら探してもそういう本も画像も出てきませんよって」

「だからってあの仕打ちはあんまりだよ……」

「そうですよ。あのトラップは酷いと思いませんか?」

「……いや、人のパソコンを勝手に調べていたアンタらの自業自得です」

「それでも……あれは最低です……!」

「どうするのよ。夢に出てきたら」

 

 彼女たちは人のパソコンを調べ、隠しフォルダに気付いた。で、そのファイルに入っていた動画を再生して、悲鳴を上げたタイミングで俺が帰宅した。分かりやすく言うとこんな感じ。

 じゃあ、何の動画を見て悲鳴をあげたか。最初の頃とか、部屋に来たときに散策していたから、またやるんじゃないかと思った。そこで隠しフォルダを作り、そこにホラー系の映像をいくつか入れておいた。リアルの心霊映像からホラーゲームのそういうシーンまで多種多様。もし、散策した人たちがここまで到達した場合、興味本位で動画の再生ボタンを押すだろうから、悪戯のつもりで。……ちなみにそのことを俺はさっきまで完全に忘れていたが。

 その悪戯がうまいこといって部屋に戻ったときは、カオスだった。息をしていない友希那さん。そんな彼女に抱きついて悲鳴をあげるリサ姐。耳を塞いでぽてぽてと連呼する紗夜さん。あこちゃんとりんさんも涙目で這いずりながら部屋から脱走しようとしていた。

 とりあえず場の収集をはかり、落ち着いたところで現在、俺が夕食を作っている間、正座させて反省させている。

 

「まぁ、相手が俺でよかったですね。人のスマホやパソコンを興味本位で調べると、思わぬ危険が潜んでいるという、いい経験になりましたね」

「「「ぐぬぬ……!」」」

 

 どこか納得がいかない顔をする五人。そんな彼女たちの表情を眺めながら料理を作る。ふむ。中々いい眺めだな。

 

「…………でも、慧人さん……怒っていないんですか?」

「何故、怒る必要があるんですか?」

「無断で色々と見てしまったこととか……見られたくないものがあるかもしれないのに」

「そうですね……まぁ、俺としては、泣き叫ぶ皆さんの表情が見れたのでよかったです」

「な、泣き叫んでませんよ!」

「そうよ。私は意識が旅立っていただけよ」

「あ、あれは匍匐前進の練習だよ!」

「じゃあ、ホラー映画でも見ます?もっと、グロくて怖いものも用意できますよ?」

「や、やめて!アタシああいうのは本当に無理だから!」

「そ、そういうのはよくないと思います……!」

「冗談ですよ。怒っていないんで安心してください。さてと、出来たので、運ぶのを手伝ってもらえますか?」

 

 そう言うと運ぶのを手伝ってくれる五人。俺はそれを尻目にあるものを取り出して、注ぎ、一人一人の前に並べていく。

 

「…………慧人くん。水にしては色が変じゃないかな?」

「それとも、お茶ですか?それにしては違うような……」

「いいえ。水でもお茶でもないですよ?」

「……聞きたくないけど、それって何かな?」

「対Roselia決戦兵器ver2.0です」

「「「…………」」」

 

 その言葉を聞いた瞬間、全員すげぇ嫌そうな顔をした。

 

「あの日から進化させました。日々、研究に研究を重ね、あの時よりも栄養バランスなど健康面に配慮。()()()()()()()()前より()()()()いいものに仕上がっています」

 

 良薬口に苦しとはよく言ったものだ。まぁ、ちょっとマズくなっちゃったけど、前よりもいいものになっているからオッケーと言うことにしておこう。

 

「……ま、まさか……それを飲ませることは……しないですよね……?」

「飲ませるなんて人聞きが悪いですよ、りんさん。皆さんに()()()()()()だけですから」

「怒ってるよね!?けー兄、絶対怒ってるよね!?」

「ホラーに正座で満足したんじゃないの?」

「怒ってる?満足?はははっ。面白いことを言いますね」

「じゃ、じゃあ何故そんなものを……?」

 

 何故?やれやれ、何故だなんてそんなの決まっているというのに。

 

「もちろん……悶え苦しむあなた方の表情を、見たいからに決まってるじゃないですか」

(もちろん……あなた方の健康面に配慮してですよ)

「「「…………ごめんなさい」」」

「ごめんなさい?謝らなくて大丈夫ですよ?遠慮なくどうぞ。皆さんのお好きなタイミングで飲んでくださいよ」

「「「…………」」」

「ああ、安心してくださいね。もし、飲めないなら……俺が()()()飲ませてあげますので」

「「「…………」」」

 

(((な、なんて清々しい笑顔……!や、ヤバいよこの魔王……!)))

 

「いい勉強になったでしょう?復讐って、悲劇しか生まないんですよ?」

「「「本当にごめんなさい……!」」」

 

 

 

 この日。慧人(魔王)の家から生きて帰れたものはいないとかなんとか。




第Ⅱラウンド。慧人の勝利。
皆様の予想は当たっていましたか?……一体、Roseliaが勝てる日はいつになるのやら。



次回予告

突如、慧人と紗夜の前に現れたポテト。
ポテトに拳を向ける慧人。しかし、ポテトの前に立ちはだかったのは……

「慧人さん。あなたを倒します」
「紗夜さん…………」

ポテ堕ちした紗夜だった。彼女はポテトを守るために慧人に拳を向ける。
追い詰められていく慧人。慧人は紗夜を救い出すことができるのか。
そして、ポテトの目的は何なのか?

次回、サヨVSケイトVSポテト 前編



Q.何故前編なんですか?

A.合わせたら20,000字超えたから。


Q.メインヒロイン、主人公、最後何なんですか?

A.ポテトはポテト以外の何でもねぇぇえええええ!
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