クールビューティーな紗夜さんを返して(涙)   作:黒ハム

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前回以上に紗夜さん以外の人がメインのお話です。
また前回から評価してくださった方々ありがとうございます。もうすぐ評価者数二桁行きそうですね。


腹黒そうな人と会うときは気を付けろ

 それは花音をおんぶして爆走した翌日のことだった。

 

「残念だよ。冬木」

「何が残念だよ。キャプテン」

「どうやら俺たちは、お前を消さなければならないらしい」

 

 朝……朝は基本毎日朝練があるので参加している。

 あの後は結局、学校に戻る気がなかったので、黒服さんと部活の(数少ないまともな方の)友人たちに頼んで荷物は回収させてもらった。ありがとう。本当にありがとう。

 で、朝練に行くと何故か囲まれた。周りには同じ部活の仲間たちが目を光らせている。

 

「昨日の件……と言えば分かるか?」

 

 昨日はあの後、極一部のまともなメンバーは予定通りここに戻ってきたが、花音を乗せて逃走した俺、並びに俺を追いかけてきたキャプテンたち大勢は部活時間中は帰ってこなかったという。……え?お前ら、あの後結局何時まで探してたの?まさか昨日は帰ってないとか言わないよな?

 顧問には、今日は走り込みの日ですと言ったらオッケーだったらしい。まぁ、うちの顧問甘いし掛け持ちだししょうがないね。だって、今もいねぇし。

 

「まぁ待て。話せばわかる。俺は決して疾しい気持ちがあったわけじゃないんだ」

「疾しい気持ちがないなら逃げる必要はなかっただろう」

 

 ……確かに正論だ。正論ではあるがそれは違うだろう。

 

「……どうすれば解放される?」

「話が早いじゃないか。身の潔白を示してみせろ」

「……身の潔白……だと?」

「ああ。お前がお礼と称してあの女子から何か誘われていないか、何もないことを示してみせろ」

 

 ……なるほどな。ふっ。甘いなキャプテン。お前の考えなど手に取るように分かっていた。故に、花音には、そういうのはやらないでとお願いし、その場で完結させておいた。しかも彼女は俺の頼んだ通りL○NEでもそう言うのは送ってこなかった。ありがとう花音。恩に着る。

 俺は勝利を確信した。

 

「生憎示せるのはL○NEぐらいしかねぇが……それでもいいか?」

「構わん。見せろ」

「ほらよ」

 

 こいつらにスマホを渡す。万が一こいつらが変なものを送っても、問題ないようにはしているが……

 

「ふむ。分かった。今回は潔白だと信じよう」

 

 ……なるほど。そこは義理堅いようだ。

 

「ありがとな」

 

 キャプテンから俺にスマホが渡るその時だった。

 

 ピロリン♪

 

 誰かのスマホが鳴った。誰のだろう?俺のである。

 

「……おい冬木。千聖って人からL○NEが来てるぞ…………女か?」

 

 こいつらの残念なところ。女からのL○NEに敏感なのである。

 ま、まぁ?あの千聖さんだし?そんなね?こいつらの導火線に触れるようなL○NEは送ってこないだろう。

 

『本日17時。CiRCLEのカフェで話があるわ』

 

「…………」

「…………」

 

 千聖……!送るタイミング最悪……!

 

「…………サヨナラー」

「「「逃がすなぁぁっ!」」」

 

 畜生!話って何だよ!というか何で今のタイミングで送ってくるんだよおおぉぉぉっ!

 とりあえず今日の部活は急用が出来たから欠席だな。うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?待たせたかしら」

 

 時間は16時55分。約束の時間の五分前に来るとはさすがというか何というか。

 

「いいや。俺もさっき来たとこですよ」

「そう?」

 

 と、向かい側の席に腰掛ける。

 白鷺千聖。アイドルバンド、Pastel*Palettesでベースを担当する少女。また幼い頃から子役として活躍してきた女優でもある。言ってしまえば芸能人であり有名人であるのだ。

 で、そんな彼女の印象だが……腹黒か?だから普通の人なら女子から……しかもアイドルから話があると言われたらウキウキで来るだろうが、俺は最初から警戒しかしていない。……なら拒否しろよって話だが、拒否できる気がしない。

 とりあえず、やって来た千聖が荷物を置いて、注文を済ませる。

 

「で?話って何ですか?」

「……聞くけど慧人。あなた昨日何したの?」

「…………プライバシー保護のため黙秘権を行使します」

「そう」

 

 すると何やら文章を打つ千聖。何だろう。とても嫌な予感がする。

 

「もし、真実を話さないのであればこの文章を送ります」

「えーっと?」

 

 相手は……紗夜さんだな。で?

 

『今、慧人に言い寄られています』

 

「……すみません。それ送られると誤解が誤解を生むのでやめてください」

「紗夜ちゃん怒るでしょうね……何故とは言わないけど」

「……話しますから……話させて頂きますから……!」

 

 畜生!この人やっぱ敵に回したくねぇ……!

 

「と言っても、昨日は花音をおんぶしてCiRCLEに連れてっただけですよ?」

「えぇ。でも不思議なことに『花音を背負った人とそれを追い掛ける虎南高校サッカー部の大軍』ってことから、花音が誘拐されたとかそのままホテルにとか色んな話が飛び交ってたわよ」

「…………」

 

 涙が止まらねぇ……俺は善意でやっただけなのに。後俺もサッカー部の一員です……。

 

「まぁ、あなたが花音に手を出した、とは思わないけど」

「ははっ。手を出したって言ったらどうします?」

「ふふっ。そんなの決まってるじゃない」

 

 すると笑顔でフォークを手に取り、注文して届いたパンケーキにぐさり……お、おぅ。なるほど。

 

「……すみません。冗談です」

「えぇ。気をつけてくださいね。ただ、私もあなたの紗夜ちゃんに対する姿勢は知っています。だから、もしそのようなことがあれば……私一人ではすまなかったでしょうね?」

「……重々承知しております……」

 

 ……威圧感がね?こうね?あるね?……俺、この人は多分一番怒らせちゃいけないと思う。

 

「……まさかそれを確認するために呼び出したと?」

「まぁ、それもあるわね」

「……呼び出すタイミングを考えてください……!」

「あら?マズかったかしら」

「マズかったですよ!?そのせいで朝っぱらからまた逃走劇を繰り広げてたんですからね!」

「それはそれは。お疲れ様」

「あ、どうもです……じゃねぇ!誰のせいだと!?」

「そうね。昨日の件を大事にしたあなたにも非がある」

「ぐぬぬ……!」

 

 優雅に紅茶を飲む彼女。学生服なはずなのに絵になるのはさすがというか何というか。

 こ、この女……!……はぁ。まぁいいか。過ぎたことはしょうがない。コイツのおかげで走る長さ、時間は倍以上になったが遅刻はしなかった。それは感謝だな。ん?感謝なのか?

 

「いいや。そんな細かいこと……で?他には?」

「あなた先日、紗夜ちゃんに太ったと言ったそうね」

「……どこからそれを……!」

「お忘れ?あなたたちがよく利用するファストフード店…………そこに誰がいるか」

 

 そこに誰がいるかだと?確かバイトで……

 

「花音と彩じゃねぇか……!」

「正解よ」

 

 そういやあの日注文するときに居たわ話したわ。

 

「あなたが私をどう思っているかは分かりませ――」

「腹黒魔王」

「――分かりましたが、私の情報収集力を舐めないでくださいね」

 

 俺はこの人を一番怒らせてはいけないと思ってる。だから怒らせよう。

 ……いやね?あるじゃん。押すな!と言われると押したくなるあれ。あれと一緒。

 

「……いい?紗夜ちゃんだから長々と自分が太ってないことの証明ですんだのよ?普通の女性はああは行かないわ。肝に銘じておきなさい」

「へぇー千聖の場合は?」

「ふふっ。そんなの笑顔で否定して受け流すだけよ」

「へぇー俺相手でも?」

「そんなわけないじゃない。あなた相手ならそんな世迷い言を言う愚かさを身体に刻み込んであげるわよ。それも徹底的に」

「もしかして、特別扱いですか?」

「えぇ。もちろんよ」

 

 笑顔で話す俺たち。お互いに目の奥は笑っていなかった。

 やっぱりこの人、絶対俺のこと嫌いだ。

 

「ここからはちょっとした雑談なんだけど。付き合って」

「構わないですよ。どーせ、そのつもりですし」

 

 よく見ると周りにはほとんど人がいない。なるほど。丁寧な話し方をしていたのはそれで、か。

 とまぁ、1,2時間程、彼女の雑談という名の愚痴に付き合う。まぁ、呼び出し喰らったときはいつもこんな感じだから今更だけど。

 

「じゃあ、この辺で」

「えぇ。では」

 

 会計を済ませてさっさと別れる。ドライと言われるかもしれないが、別に普通だと思ってる。

 別れるときには既に暗くなっていた。夏も終わり段々と日の入りが早くなるのか……。

 

「……っと」

 

 そういや一つだけ言うの忘れてた。まぁ、言わなくてもいいんだが…………はぁ。

 

「まだその辺にいるだろ」

 

 進む向きを変え、彼女の進んだ方へと走って行く。

 

『なぁなぁ。オレらと遊ばねぇか?』

『いえ。結構です』

『そんな連れねぇこと言わずにさぁ』

『すみません。急いでますので』

 

 すると走ってった方向から二人分の男の声と、さっきまでいた千聖の会話が聞こえる。日も落ちて暗くなった道。ここは繁華街みたいなところではなく、人通りはない。よく見ると千聖が大学生くらいの二人に絡まれている。

 あーあれか。これが歴代のサッカー部の勇者(阿呆)が言ってた、『夜に困ってる女子が居たらラノベ展開』ってやつか。……まぁ、アイツならそれくらい一人で対処できそうだが……

 

『ちょっとくらいいいじゃねぇ……』

「おい」

 

 千聖の肩を掴もうとした男の手首を掴む。さすがに千聖と言えども手を出されたら敵うとは思えん。それに、そんな様子をただ見ているほどの無能に成り果てたつもりはねぇ。

 

『あぁ?何だテメェ』

 

 その男の吐息からは……うっわ酒臭っ!な、なるほど。酔ってんのかこいつら……心なしか顔も赤いし。そりゃ酔ってなきゃ制服を着た学生に声をかけるとも思えんか。

 

「わりぃな兄ちゃんたち。……生憎コイツは俺の彼女(ツレ)なんでね……今なら酔い醒ましに一撃喰らわせることで許してやるが?」

『テメェ……調子に乗ってんじゃねぇぞ!』

 

 振り下ろされる拳。どうやら思考回路が正常に働いてないらしいな。

 

「決裂……か」

 

 拳に蹴りを合わせて弾き飛ばす。たく、話が通じねぇか。めんどくせぇ。

 

「悪い千聖」

「え?ちょっ……きゃっ!」

「しっかり捕まってろよ!」

 

 そして、素早く彼女の膝裏に腕を回しそのまま背中をもう片方の腕で支える。咄嗟のことではあったが、彼女は素早く首のところに手を回してくれる。そういう役でも演じたことがあるのか?いや、違うな。落ちないように首にしがみつこうとしただけだ。

 捕まってることを確認して逃げ出す。はぁ?戦わないのかって?いや、酔っ払いども相手だぜ?逃げる方が楽に決まってんだろ。サッカー部連中に比べりゃあんなの雑魚と変わらん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そろそろ下ろしてくれるかしら?」

「ん?このまま家まで送ってっても……って、分かった分かった。分かったからカバンを肩に当ててくるな」

 

 要望通り降ろすが…………だがまぁ簡単に撒けたな。現役運動部舐めんじゃねぇぞ。酔っ払いに負けるほど柔な鍛え方されてねぇんだぞ。

 

「助かったわ。ありがとう」

「……素直に礼を言われると調子狂うな」

「こういうときは素直に受け取りなさい」

「はいはい」

 

 だって……あなたが素直にお礼を言った記憶が意外と少なく……いやそうでもねぇか。ツンデレじゃあるまいし。

 

「……でも慧人。あなた何故?まさかストーカー?ごめんなさい。あなたがストーカーなら通報しなくては」

「思い上がりも大概にしておけ。誰が好き好んでお前をストーキングするんだ」

「嫌よ嫌よも好きのうち」

「ふざけるな」

「……で?本当に何故あの場所に?あなたの帰る方向とは違うわよ」

「あぁ……お前に言い忘れてたことがあってな」

「言い忘れてたこと?」

 

 ……はぁ。多分バカなんだろうな……俺って。

 

「無理すんなよ。愚痴ぐらいならいくらでも付き合ってやるからな」

 

 だって、自分で自分の首を絞めに行ってるのだから。

 

「…………ふふっ。やっぱり、あなた面白いわ」

「うるせぇ。紗夜さんと同じで平然と無理しそうだからな」

「……そうね。心配してくれてありがと」

「じゃあな。後は一人で大丈夫だろ」

「えぇ。もう目と鼻の先よ」

 

 俺は踵を返して歩み出す。

 

「気をつけて帰りなさいよ」

「へいへい」

 

 片手を挙げてさっさと帰る。

 

「…………はぁ。彼は優しすぎるのよ……()()さえなければモテたでしょうに……だから」

 

 ――だから紗夜ちゃんは好きになったのね。彼のことを。早く告白しなさいよバカ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰り道。千聖からのL○NEで『ちなみにあなたの彼女になった覚えはありません』と来たので俺も『お前を彼女にした覚えはない』と返しておいた。

 後日、虎南高校のサッカー部の生徒がナンパから女子生徒を救った、とウチの高校や近所で有名になり、サッカー部が見回りという名目で夜のランニング距離が長くなったことを記す。




というわけで、千聖さんとの距離感が不思議なことになってる主人公でした。
大丈夫です。ハーレムにはしません(Maybe)。
次回は紗夜さん出します。
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