気付いた方もお見えすると思いますが、このサブタイトルはポケモン映画のディアルガVSパルキアVSダークライのオマージュです。
……ところで何故、ポテトがダークライポジションなんだ?
それはある休日。紗夜さんと二人並んで歩いていたときだった。
「そう言えば慧人さん」
「何ですか?」
「今日ですね。とても素敵な夢を見たんです」
「へぇーどんな夢なんですか?」
「そこは綺麗な花畑のすぐそばでした。私は大きな木の下で、一人ギターを弾いていたんです」
夢の中でもギターを弾いて居るとは流石だな。
「そこへ、一頭の白馬が現れたんです。そこに乗っていたのは――」
あ、これ王子様が迎えに来ているパターンだな。紗夜さんでもそんな乙女チックな夢を見るんだ……
「――ポテトでした」
「へぇーポテトかぁ…………ん?……は?って、ポテトが迎えに来たんですか!?」
「ポテトがポテトを差し出しながらこう囁くんです。『迎えに来たよ』って」
「いや、迎えに来るのお前じゃねぇだろ!?いや、ポテトにお前もおかしいけど!」
「それに対し、私はポテトを受け取りながらこう返すんです。『私にはギターがあるからあなたのポテトは受け取れない』と」
「いや、受け取った後ですよね!?気付いて!あなたもうポテトを受け取っていますから!」
「するとポテトはこう返しました。『あなたの心に正直になっていい』と」
「あーうん。もうポテトが喋っていることは無視していいですよね?」
「私の心は激しく揺り動かされました。でも、たった一つ、私には譲れないものがあったんです。『慧人さんが居るから……』と私は切なそうに返すんです」
「紗夜さん……ギターは?ギターは何処へ消えたんですか?ポテトに負けたんですか?」
「ポテトは言いました。『ケイトとポテト、どっちが大切なの?』と」
「……ん?マジで?時々そういう二択を二次元で見るけど、俺、食べ物と比べられたの?」
「私は激しく悩みました。ケイトもポテトも私にとっては甲乙つけがたい、どちらが大切かなんて選べません。でも選ばなくてはならないことは分かっています。だから必死に考えました」
……俺は泣くべきなのだろうか?ポテトと比べられて、ほぼ同列と言われていることに。
いや、もしかしてアレか?紗夜さんにとって、ポテトは彼女が狂うほど好きなモノ。つまり、彼女の中でも最高の地位に立っている。そして、そんなポテトと俺が比べられる……同格扱いされているのだ。だから、その喜びを噛み締めればいいのか?
…………訳が分からない。何だか、錯綜している気がするな。
「そして長考の末、私は結論を出そうとしました。その時でしたね」
「え?何がですか?」
「夢から覚めたのが」
「……ちなみにですが、頭の中でどんな結論を出したんですか?」
「そんなの……くちゅん……を選んだに決まっているじゃないですか」
「なんて都合のいいくしゃみ……!そのせいでどっちか分かんねぇ……!」
と、その時だった。俺が怪しい気配を感じたのは。
「誰だ。出て来い」
紗夜さんを片手で制止し、曲がり角に潜む怪しい気配に向け声を発する。
「慧人さん……?」
「……もう一度だけ言う。出て来い」
「ふっ、仕方ないな」
そう言って出て来た姿に俺は驚愕した。いや、マジで驚いた。
「ぽ、ポテト……?」
フライドポテトのかぶり物(この時点でおかしい)をかぶり、スーツ(多分)を着た変態(多分あってる)が出てきたからだ。
「ま、まさかあなたは……!私が夢で出会ったポテトなの……?」
「え?ちょ……え?こんなヤバい変態が夢に出てきたんですか?」
「そうだよ」
「いやアンタもアンタだよ。便乗してんじゃねぇよ」
「そんな……本当に出会えるなんて……!」
「何で泣きそうになってるんですか!?いや、どう考えても泣く要素はないですよ!?」
え?ないよね?今のどこに泣く要素があった?
「さぁ、行こう紗夜。我らが世界……そう。ポテトワールドへ」
「いや、異世界転生物じゃねぇんだよ行こうじゃねぇんだよ。ふざけんなよおい」
「そうですね……」
「ちょ、マジでヤバいって紗夜さん。そこの変態は今すぐ通報するべきですって」
流石の俺でも分かる。これは通報案件だと。
「……我らの神、ポテ神様の下へ」
「待って紗夜さん。何であなたの目からハイライトが消えているんですか?え?今の短時間で何が起きたんですか?もしかして、一瞬でポテトに洗脳……ポテ脳されたんですか?」
「どうやら我らの話についていけない輩がいるようだ」
「ついていけるわけねぇだろ。いや、ほんとマジで」
「では、紗夜よ。我らの行く道を邪魔する不届き者を倒そうではないか」
「イエス、ポテ」
おっと?俺が悪いのかこれ。何で紗夜さん臨戦態勢なんだ?え?マジで?これ戦う流れなの?
……と、まぁ、半分冗談はおいておいて。あのポテト何者だ?声はボイスチェンジャーの類いが使われているにしては余りにも自然な地声に聞こえる。声からして男?だが、この声を俺は聞いたことないし……そもそもだ。紗夜さんの弱点がポテトって知っている人間は少ないはず……何者だ?もしかすると……相当ヤバい
「慧人さん。あなたを倒します」
「紗夜さん…………」
俺に紗夜さんを傷つけることは出来ない。だから彼女を避け、後ろの変態野郎を潰すしかない……だが、あの正体が身内の場合、手加減しておかないといけない……が、あのまとっている空気というかオーラ。どうにも、知り合いに
「全てはポテトのために」
紗夜さんから振るわれる拳を避け、近くの外壁に足を付けてそこから跳躍。一気に変態の下へと跳んでいく……が。
「……っ!」
紗夜さんが俺とポテトの間に入る。何とか紗夜さんに当たらないように避けたが……くっ。運動神経は前々からいいとは思っていたが……まさか、反応されるとは。
そんな驚きをよそに、目の前に立つ紗夜さんから蹴りや拳が飛んでくる。
「どうやら攻撃できないようだね」
「うるせぇ」
紗夜さんの攻撃を避けながら思考を進める。ただ、猶予はあまりないかもしれない。今の紗夜さんは恐ろしく強化されている。さっきの攻撃も普段の彼女なら間に割って入るどころか、反応されるはずがない。ポテトのためなら限界を超えられる……なんて人だ。
変態の正体が本当に分からない理由は単純だ。だって、変態とオーラが似ている人間って言うのが……目の前にいる紗夜さん。彼女自身だからだ。
そう考えると日菜も該当するが……日菜は違う。アイツなら紗夜さんが気付かないはずがない。誰なんだ?紗夜さんに空気が近い変態…………変態……ん?まさか……!
「ポテ狂サイドの野郎か……!」
つまり、同族。クソ、だったら話が早い。あんなかぶり物している変態だ。間違いなく紗夜さん側の人間だ。…………あれ?これだと紗夜さんも変態って言っているような……ま、いっか。
「……ッチ!」
一瞬の隙をついて変態に接近し、蹴りを放とうとする……が、またしても紗夜さんが反応して、変態を守るようにして立つ。そのため、攻撃を中断……が、その僅かな隙をついて紗夜さんの蹴りがとんできたので咄嗟に軸足を地面から放し、姿勢を低くすることで回避。そのまま、両手をついて無理やりバク転のように身体を一回転させ、距離を取りつつ体勢を立て直す。
……って、そもそもだ。仮に正体が分かったとしても、紗夜さんを抑えないとヤツに攻撃は届かない。だが、抑えたところでどうする?気絶させるわけにはいかないし……抑えているタイミングでポテトが何も仕掛けてこないとは限らない。
「さぁ、君はどうする?我らと共に堕ちるか……それとも私を彼女諸共葬るか」
「…………っ!」
考えろ考えろ考えろ。どうすりゃ、紗夜さんを傷つけずに倒せる?どうりゃそんなことが……
「……イチかバチかか」
振るわれる拳や蹴りを受け流しながら、頭の中で何人か候補を挙げては消していく。
俺一人では絶対に勝てない。紗夜さんが敵の手に堕ちた以上、そんなことは知っている。彼女の体力切れを待ってもいいが……不思議なことに今の彼女なら限界を超えそうで怖い。
だが、もう一人居れば別。たった一人、この場に追加されるだけで流れは変わる。……問題はそのもう一人だ。人選をミスする訳には行かない……よし。彼女にしよう。彼女が適任だろう。
スマホを取りだし、素早くメッセージを送る。頼む、気付いて動いてくれよ……!
「警察にでも通報するつもりかい?」
「……あ」
と、ここで気付く。よく考えなくても110番すればいいじゃないか?と。だって、目の前の変態、通報すれば捕まるでしょ。最低でも職質ぐらい受けるだろうし、うん。問題ないな。
「遅いです」
だが、それに気付くと同時に紗夜さんの攻撃の速度が増してくる。……クソ。相手が紗夜さんってだけでここまで勝てないものなのか……いや、ダメだ。傷つけることは出来ない……!
「どうしたんですか?守ってばっかでは勝てませんよ」
「知ってますよ」
少しでも紗夜さんの身体に負担がかからないように、攻撃を受け流す。ただ避けているだけではダメだ。少しでも彼女を消耗させないようにしないと。
そんな攻防を続けること十数分。
「慧人くん!」
どうやら、天は俺に味方しているらしい。
「言われていたもの持ってきたよ!」
そして掲げる袋。その袋を見て紗夜さんの動きが固まった。
「ナイスです!金は後で払うんで!」
その一瞬の隙を突いて、彼女を背後から抱きしめて身動きを封じる。
「……っ!放して……!放してぇ……!」
「ってえぇっ!?何かポテトのかぶり物している人!?それに紗夜と慧人くん何やってんの!?」
「リサ姐!早くポテトを紗夜さんの口の中に!正気を取り戻させるんです!」
「え?しょ、正気?よ、よくわかんないけど、う、うん!えい!」
リサ姐は状況に混乱しつつも、紗夜さんの口の中にポテトを入れる。すると、力が抜け落ちたように倒れ込もうとする紗夜さん。
「慧人くん。これって……」
紗夜さんにポテトを供給しているリサ姐。
ポテト(ヘンタイ)のポテト(センノウ)を解くにはポテト(ホンモノ)しかない。あのハンムラビ法典にもあるんだ。目には目を歯には歯を、ポテトにはポテトを……とな。つまりこれで合っているはずだ。
呼ぶのをリサ姐にした理由は単純だ。紗夜さんがポテトで暴走した姿を見ても凄い反応しない人間で、俺の簡潔なメッセージを信用して行動を起こしてくれる人物。……後はそこのポテトを見ても何とか正気を保ってくれる人物を選んだ結果である。
ちなみに、千聖でもよかったがアイツは仕事があるかもしれないから早々に除外した。日菜も同様の理由。で、Roseliaの他のメンバーに関しては、メッセージを送っても正しく動いてくれないか、そこのポテトのせいで思考停止する可能性があったから、一番頼れそうなリサ姐が残ったというわけだ。え?リサ姐はバイトしているだろって?…………まぁ、来てくれたからなかったんだろうな。うん。
「うっ……ここは?」
Sサイズのポテトを食べきった紗夜さんが意識を取り戻す。別に気絶していたわけではないが。
「気付きましたか?」
「慧人さんの声がします」
目を開けた彼女。しかし、その瞳は何も映していないように見えた。
「そんな……!」
遅かった……のか?彼女に負担をかけすぎた……というのか?
「紗夜さん!しっかりして下さい……!紗夜さん!」
「すみません慧人さん……目の前が真っ暗で……そこに居ますよね……?」
「ここに居ますよ……!俺なら……ここに居ますから」
「よかった……ごめんなさい……私」
「もう喋らなくていいです……もう……大丈夫ですから……!」
「……慧人さん…………」
「紗夜さん…………!」
そのままゆっくりと閉じられた目。俺は静かに彼女を下ろす。そして……静かに相手に狙いを定める。
「待っていてください。すぐに終わらせますから……リサ姐。紗夜さんを頼みます」
「う、うん?」
(ど、どうしよう……どういう展開なのこれ?え?本当に何が起きているの?何カメラでもあるの?え?何かの撮影?いや、カメラないし……え?じゃあ、え?何がどうなっているの?)
「…………」
そして、勝負は一瞬だった。
「…………え?今何が……」
宙を舞う変態。変態が宙を舞い、そのまま堕ちた。文章で表すならたったそれだけだった。
「クハッ……」
「さて、まずは変態の正体を拝むとするか」
「や、やめてくれ……!」
俺はフライドポテトの上の部分を握り、勢いよく上に引っ張る。そして、中から現れたのは……
「「誰?」」
水色っぽい髪の40前後のおっさんだった……いや、誰?リサ姐と顔を見合わせるが……うん?やっぱりこの人誰?
「なっ……」
すると、いつの間にか目を開けていた紗夜さんが顔を真っ赤にしていた。そして、
「お父さん!?何をやっているの!?」
「「え?」」
緊急速報。緊急速報。変態の正体、紗夜さんと日菜の実の父親だった。
あーだから、紗夜さんや日菜とオ-ラが似ていたのか。納得納得……?
「そ、そのだな……これには深い事情があって……」
「こんな頭のおかしな人が身内だなんて、周りに知られたら私の立場が……はっ」
すると我に返った紗夜さん。まるで、ブリキのおもちゃの首を動かすような、ぎこちない首の動かし方で、俺とリサ姐の方を向いて……
「見ました?」
「「うん」」
逆に見ていないと思っているのだろうか?
「う」
「「う?」」
「うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
すると、紗夜さんが顔を真っ赤にし、顔を両手で押さえながら全速力で走り始めた!?
「ちょっ!?さ、紗夜さん!?」
「ダメだよ!今は追っちゃダメ!」
紗夜さんの方へと走り出そうとする俺の腕をリサ姐が掴む。そうこうしている間にも紗夜さんは遙か遠くに……
「どうして止めたんですか!」
「……ダメだよ。今は、紗夜の中で状況の整理が追いついていないからさ……一人にしてあげて」
「くっ……確かに」
自身の親がこんな奇行に走っていたことを知られる……確かにとんでもない感情に襲われてもしょうがないか。
「それに……今、紗夜のお父さんと二人きりにしないで!」
「あ、絶対そっちの理由の方が大きいですよね」
「そんなことないわけないよ!」
「リサ姐落ち着きましょう。一旦深呼吸です」
「すまないが、ちょっと起こしてくれないかい?」
「あ、すんません」
……ん?何で俺が謝ってるんだろうか?まぁいいか。
あの後、紗夜さんのお父さんに肩を借して立ち上がり、そろーっと逃げようとしたリサ姐の手首を掴んで公園へと歩いてきた。ちなみに人間二人を引きずったりするのって大変だなと感じた今日この頃。
「何でアタシまで連れてきたの!?アタシ関係ないよね!?」
「リサ姐。既に貴女はこの事件の関係者です」
「勝手に事件扱いしないでもらえるかい……?」
「いいんですか?警察に言ってもいいんですよ?職場の同僚とかに言ってもいいんですよ?」
「……すまん」
「人の父親を脅している!?ダメだよ慧人くん!この人、慧人くんのお義父さんになる人だよ!?媚を売っておかないと!」
「だから?」
「だから、君にとって重要な人だって言ってるの!」
「…………?」
「何でちょっと意味が分からないって顔をしているの!?」
「あ、あのーそろそろ話しても」
「少し黙っていて下さい!アタシは慧人くんに言わないといけないんで!」
「あ、はい。すみません」
「……そう言うリサ姐だって黙らせているんじゃ」
「何か言ったかな?」
「あ、はい。すみません」
リサ姐。怖い。助けて。
「いい慧人くん?近い将来、君はこの人に『お義父さん!紗夜を下さい!』って言うの」
「すみません。それは恋愛小説の読み過ぎでは?」
「そしてあなたは静かにこう言うの。『……娘を頼む』ってね!」
「……え?私ももう決まっているのかい?」
「返事は?」
「「…………」」
「へ・ん・じ・は?」
「「は、はい……?」」
紗夜さんのお父さんと目が合う……な、何だこの状況?よくわかんないぞ?
「と、とりあえず落ち着きましょう、リサ姐。ね?一旦落ち着きましょう」
「そうだね……じゃあ、アタシはこれで」
「いやいや、リサ姐。せめて話だけでも、話だけでも一緒に聞いてくださいよ……!」
「慧人くん。時には見放すことも大切だよ☆グッバイ♪」
片手を挙げ、カッコよく去ろうとするリサ姐。
こちらに背を向き、歩き始めた彼女。だが、ここで泣きながら引き留めるのは二流のやること。一流のやることは……
「リサ姐……今度、グリーンスムージーを(無理やり)飲ませますよ」
「しょうがないな~気が変わったから、アタシも残るよ☆」
「流石ですリサ姐。俺、信じてましたよ」
「いやぁ~まぁ、ここで見捨てることはしないよ~」
笑顔で振り返って、帰ってくるリサ姐。一流はたった一言で引き留めることが出来るのだ。ちなみに彼女の目が一切笑っていなかったので、今度から夜道には気を付けようと思います。
「……で、紗夜さんのお父さん。一体何でこんなことをしたんですか?」
「それはだな……最近……というか、夏頃からか。ある男の名を紗夜がよく口にするようになってな。いや、前から聞いてはいたけど明らかに頻度が増えてだな。……まぁ、でもその頃か。ようやく、紗夜と日菜が昔みたいに少しずつ仲良く食卓を囲うようになったのは」
あぁ、なるほど。確かにあの頃の紗夜さんと日菜は険悪だったからなぁ……正確には紗夜さんの方からが大きいけど。そりゃあ、食事をともにする……ことも少ないか。
「紗夜の口から出るだけならまだいい。だが、日菜の口からも出るし、あの二人の友人の話をしていても度々登場して……あの子は一つのことに没頭すると周りが見えなくなるから……」
「その名前の出る男の人が気になったと」
「そういう事だな……まぁ、あの子が選んだんなら間違いはないと思っていたが……あまりにもその男から他の女性の話に繫がるものだから……」
「なるほど。女癖の悪い男の可能性があったと」
「そういうことだな……試す方法がアレだったのは……すまないと思っている。紗夜が暴走した時にどうやって解決するかを見たかったからなんだ」
「ふむふむ。ところで、そんなに名前が挙がってた男って誰なんですか?」
「「え?」」
「……ん?」
何でリサ姐まで驚いたのだろう。俺にはその男の正体が掴めていないというのに。
紗夜さんがそんなに口にする親しそうな男性……ふむ。一体誰なんだ?
「いや、どう考えても慧人くんのことだよ?何言ってるの?」
「よく考えてくださいよ。紗夜さんから名前が挙げられる可能性はありますが、俺が女遊びとかするわけないじゃないですか」
「まぁ、確かにそうだね。何だかんだ流されない気がするし。そもそも流せないだろうし」
「でしょ?大体、俺からどうしたら他の女子に話が行くのやら」
「え?君、本心で言っている?君と紗夜さえ望めば、ハーレムエンドにいつでも路線変更可能だよ?」
「マジですかリサ姐」
「マジマジ。とりあえず、慧人くんや。君のハーレム候補に誰がいると思う?」
「逆に聞きます。誰がいるんですか?」
言っとくけど俺だぞ?リサ姐は本当に分かっているのかな?
「うーん。紗夜は確定枠だから置いておいて、千聖は絶対に居るでしょ。後、ヒナも行けるんじゃない?それから、燐子やあこ、花音、つぐみ辺りもいけると思うよ」
「へぇーリサ姐は?」
「アタシ?ふふ~ん、そんなに軽そうな女に見えるかい?」
「いいえ全く。これがギャルゲー的な何かなら、攻略難易度は易しそうに見えて高いかと」
「おぉー流石、お目が高いね~うーん。そーだね……慧人くんは料理や家事も出来て、運動神経もいい。何より何度も助けてもらうような優しさもある。それに、こうやって知らない仲じゃなく親しい部類に入る。そんな君と付き合うか…………あれ?これは行けるね。うん。アタシも慧人くんハーレムに加われるね」
「やりましたね。攻略完了ですか?」
「だね~何ならアタシが加われば友希那が付いてくるかも?」
「ハッピーセット感覚ですね」
「そうそう。今なら友希那も付いてくる~みたいな?」
「ですね」
……あれ?友希那さんってそんなにチョロかったっけ?
「ともかく、さっきから名前が挙がっていたのは君なの。ですよね?紗夜のお父さん」
「あ、ああ。慧人さんや慧人って言ってたから間違いないだろうね」
「ふむふむ」
ともかく、話は飲み込めた。つまり、変態の奇行ではなく、紗夜さんのお父さんによる選定だったと。……まぁ、事情を知らなければただの奇行としか映らない……事情を知ってもそうとしか思えなかったわ。
「でも、紗夜……娘さんと距離が空いちゃったんじゃ……」
「……ふっ。前からそんなに近いわけじゃないから今更だよ」
何処か遠い目をしている。なんとも悲しい話だ。
そして、立ち上がる紗夜さんのお父さん。
「ただ、よかったと思うよ。君の傍に居るあの子は何処か輝いて見えた。そんなあの子を見ることができて本当に……これからも頼むよ」
そのまま立ち去ろうとする……が。
「す、すまない……この歳で、無茶しすぎたようだ……家まで送ってくれないかい?」
すぐに動けなくなっていた。なんとも情けない話だ。
紗夜さんのお父さんを家まで運ぶ。リサ姐は帰りましたね。
ちなみに『今度覚えておいてね♪』と言われながらお金を渡しました。賄賂じゃないです。ポテト代です。
ピンポーン
「……?私が居るから、インターフォンは要らないんだけど?」
「まぁ、いつもの癖ですね」
すると、ドアが空いた。中からは……
「あ、慧人だ!いらっしゃい!……ってあれ?何で慧人とおとーさんが一緒に居るの?」
「いろいろあったんだよ」
「本当ですね」
「ふーん……あ、あがっていってよ慧人!」
「そうか?じゃあ、少しだけお邪魔するわ」
ということであがらせてもらうことに。
「日菜、この人何処に置いておけばいい?」
「うーん、その辺に転がしておけば?」
「……え?扱いが酷くないかい?」
「しょうがないな~慧人。ソファーの上に転がしておいて~」
「だから転がすって言い方が酷いと思うんだが……」
「へーい」
「君もかい……」
そんなわけで、ソファーの上に紗夜さんのお父さんを転がす。
「そうそう慧人!おねーちゃんがさ!すっごい勢いで帰ってきたと思ったらさ!『もう外を歩けない!』とか言って布団にくるまっちゃったんだ~何かやっちゃったの?」
「うーん……俺と言うか……この人がと言うか……」
「ええ~教えてよ~おねーちゃん布団の中で、ブツブツ言ったまま出てこないレベルなんだよ?」
「まぁ、何だ。後で教える」
「約束だからね!」
流石に俺の口からは言えない事なんだよな……だって、あの人の名誉とか威厳を守らないといけない……ん?いや、そうでもないか。よく考えなくても興味なかったわ。
「あ、そうだ慧人!おねーちゃんを引っ張り出すの手伝ってよ!もー、おねーちゃんってば、あたしが声をかけても全然出てこないんだよ?」
「……まぁ、時にはそっとしておくことも大切に――」
「よし決まりだね!おねーちゃんの部屋に行こう!」
「――ですよねー。お前は無視するって分かってたよ」
という感じで日菜に腕を掴まれてそのまま紗夜さんの部屋の前。
「いい、慧人?ノックしてから入るんだよ?」
「ゴメン。それくらい分かる」
コンコンコン
「おねーちゃん~出て来た?」
「いや、普通返事待つからな?」
日菜はノックすると同時に部屋を開ける。
目に飛び込んで来たのは、綺麗に整頓された部屋。流石と言うべきか、彼女の部屋は綺麗に整頓されていて……だからこそ、ベッドの上で丸くなっている布団が凄い目立った。
どうやら、布団の中にいて、丸まっているのは本当らしい。
「おねーちゃん?慧人が来たよ~」
「け、慧人さん!?い、今は見ないで下さい!……合わせる顔がないんです」
「じー。本当に何したの、慧人?」
「いや、原因お前の父親だから。俺も被害者だからな」
「おとーさんが?そりゃあ、おとーさん、ちょっと頭のおかしなところあるけど……」
可哀想に。実の娘からおかしいと思われているなんて。
「で?どうするよ。力づくでいくか?」
「はぁ~やれやれだよ慧人ーそんなことはダメダメ。もっとこう頭を使わないとさー」
「じゃあ、どうするんだよ」
「うーん……あ、閃いた!こうしようよ慧人!あたしと慧人で、おねーちゃんの好きなところを言い合うの!そしたら照れたおねーちゃんが出てきてくれるはず!」
「日菜……お前、天才か?」
「ふっふ~ん♪まぁ、天才日菜ちゃんですから(どやぁ)」
「さらに、照れた表情の紗夜さんが拝める。最高じゃないか同士よ(ガシッ)」
「まぁ、それほどでもあるけどね~(ガシッ)」
日菜と固い握手を交わす。こういう時の日菜ほど、頼りになる者はいない。
「って、そんなこと私が許可すると思いますか!」
紗夜さんが飛び出てきた。
なるほどな。一見すると、素晴らしく完璧だと思われた作戦。唯一残念だったのは、俺たちはこの会議を本人の前でやっていたことくらいか。
「まぁまぁ紗夜さん。とりあえず一回布団の中に入って入って」
「そーそー。まだ出てきちゃダメだよ?おねーちゃん」
「あーそうですね。失礼しまし……ってそんなわけないでしょ!」
「ッチ」
「おっと慧人さん。今、舌打ちしましたね」
「っち」
「日菜も真似しなくていいんです」
「どうする日菜?紗夜さん出てきたけどやるか?」
「そーだね~じゃあ、あたしから行くね!」
「行きませんやりませんやらせません」
「「おぉーこれが『ません』三段活用(パチパチパチ)」」
「はぁ……」
とまぁ、とりあえずそんな感じで三人、囲うようにして座ることにする。
「あれ?あたしたちの目的達成しちゃった?」
「あ、そう言えば」
「え?あ、その……」
そう言って、紗夜さんが布団に手を伸ばそうとする。
そんな中。日菜と一瞬アイコンタクトを交わす。そして、日菜が布団を遠ざけ、その隙に紗夜さんを後ろから抱き寄せる。腕を回し、彼女の腹部と胸の上辺りにそれぞれの腕が来るようにする。
「放してください……!今の私には顔を隠すものが……布団が必要なんです!(バタバタ)」
「ジタバタしないで下さい。ほら諦めるんです」
「そーだよおねーちゃん!諦めて慧人に捕まっているんだよ~」
「うぅ……慧人さんのバカ……」
「俺はバカじゃないです」
「いや、充分バカだと思うよ~」
「え?突然の裏切り?」
「そもそもあの連携は何なんですか?何でこういう時に息ピッタリ何ですか?」
「まぁ、目を見たら分かったんで」
「だよね~何だかビビッって来たんだよね~」
実に不思議である。何か目が合ったら日菜の考えていることが伝わったという感じがしたというか……まぁ、そういうこともあるな。うん。
「でも、紗夜さん。紗夜さんがそんな隠れることはないんですよ?」
「でも……!」
「そもそもさーおねーちゃんと慧人、何があったの?」
「まぁ、お前には話すって言っていたしな、実は……」
ということで、俺たちの身に起きたことを話す。話し終わって……
「うーん、でもさぁ。おねーちゃんがそうやって隠れようとする必要なくない?おとーさんが醜態を晒しただけでさー。あたしは全然リサちーや慧人に合わせる顔がないとか思わないけどね~」
「それは……そうだけど。でも……」
「それにおねーちゃんが慧人の前で暴走するのなんて今更じゃん。あたし的には楽しそうだからオッケーって感じかな」
「今更って……そんなに暴走していませんよね?私って……」
「それはどうだろうか。ポテトが関わると酷く、時には屁理屈を並べたりして、あの手この手で俺を説得しようとする。まぁ、他にもぽてぽてしか言えなくなったり、ポンコツさが垣間見えたりして……うん。とてもじゃないが、暴走してないとは言えない。ただまぁ、彼女の為にここは嘘をついておくか。
えぇ、大丈夫ですよ」
「……やっぱり、暴走しているんですね」
おかしい。何でバレたのだろうか。
「慧人ー全て口から出ていたよー」
「え?マジで?何処から?」
「それはどうだろうか。ってとこ」
日菜の声真似がうまいなー……じゃなくて。
「それ全部じゃん」
「いいんです。どうせ私なんてこういう女なんで」
「すねないで下さいよ……まぁ、そんなすねたところも可愛らしいと思いますけどね」
「可愛っ……か、からかわないで下さい!」
「えぇ、可愛いと思いますよ(ふー)」
「ひゃぁあっ!い、いきなり耳を責めないで下さい!」
「じゃあ、どこならいいんですか?」
「どこもダメです!」
「むー……二人ばかりなんかズルーい!あたしも混ぜてよー!」
この後、日菜も混ざって三人で仲良く(?)過ごした。
紗夜さんが選んだのは……
-
ケイト
-
ポテト