今回の話は時系列とか世界観とか諸々無視してください。
ガチャ。そう、それは多くのスマホゲームに存在しているもの。時にはゲームのキャラクターが、時にはゲームのアイテム。カードゲームだと、デッキを作るためのカードを手に入れる手段の一つだろう。
ガチャには大抵、ゲームで手に入る貴重なアイテムが必要で、課金勢と呼ばれる人たちはそれをリアルマネーで購入し、何回もガチャを回し欲しいキャラ、アイテムなどを手に入れるだろう。しかし、俺のような高校生を始め、財力がそこまでなかったり、ゲームに課金をする気がないなど、多くの事情や思惑で課金をしない、無課金勢にとってガチャを引くためのアイテムは貴重である。
「慧人。入るわよ」
話は少し変わるが、ガチャにもいくつか種類がある。常に引けるような恒常ガチャ。ある一定の期間しか引けない期間限定ガチャ。課金者のみが引けるガチャなどなど、ゲームによって様々な種類のガチャが用意されている。
この中でもコラボ限定ガチャというのはとてつもなく大きな意味を持つと俺は考えている。コラボ、あるゲームと別のゲームやアニメなどの作品が交わるという一つのビックイベント。コラボイベントはゲームによってやり方は変わるが、そのゲームが一気に盛り上がる機会の一つだろう。実際、コラボ先のゲームをやったことはなくても、コラボしている作品が好きだったり、知っている作品だと、そのゲームに興味を持つ機会の一つとなるからだ。
「どうしたの?スマホを持って……考え事かしら?」
コラボ限定ガチャの話に戻るが、大きなポイントは他のガチャと比べ、復刻率の低さだろう。ゼロに近い……そう言っても過言ではない。つまり、入手できなければ、未来で入手出来る可能性は極端に低いのだ。
「すごい真面目な顔……もしかして、どんなエロ動画を見ようか迷っているのかしら?」
「おいド変態。なんでそうなる?」
「だって、私が入ってきたのを無視してたし、それぐらいの考え事なんでしょ?だったらもう、何を今日のオカズにするか考えているしかないじゃない」
「それはテメェだけだろ」
「安心して頂戴。私はそんなこと考えたことないわ」
「そうかよ」
「だって……あなたが居るから……」
「…………」
絶対に踏み込みたくない領域が目の前に広がっている件について。何だろう。地雷かな?地雷だな。
「はぁ……いいか?こっちは真面目に考えているんだよ」
「ふーん。何を?」
「この世の摂理を」
「なるほど。何故人は(ピーー)したくなるのかね。簡単よ。私と(ピーー)すればその答えはすぐに見つかるわ」
「やめてくれ?マジでなんでお前と話すとそうなるの?」
目の前で服を脱ぎ出そうとするド変態の手を押さえながら話を進めよう。
だからこそ、特にコラボされている作品が好きな作品だったり、コラボ衣装を着ているキャラが好きだったりすると、このガチャは引くしかないのだ。
で、今回。俺は先輩に勧められ始めたゲーム……『ガルパ』や『バンドリ』と言われる音ゲー。そこでコラボイベントが来ているため引こうとしている次第である。
最高レアのコラボ限定キャラである白鷺千聖(目の前のヤツと同姓同名の別人)一点狙いで行こうとしているのだ。
「慧人が音ゲーをやっていたなんて……どうしたの?頭でも打ったの?」
「うるせぇ。先輩に勧められてだ」
「ふーん(ポチッ)」
「お前、何押した?」
「え?そのゲームをインストールしようと思って」
「ノリが軽いな」
「こういうゲームってその場の勢いが大事じゃないの?」
「まぁ、そうだが……」
「でも、リズムゲームって大丈夫なの?貴方、リズム感皆無じゃない」
「安心しろ。反射で押してる」
だからオールパーフェクト……通称APは無理でも、フルコンまではギリ狙える。リズムゲーなんて反射ゲーだと思えばまだ戦えるな。うん。
「凄いわ慧人。この白鷺千聖って子、私と同姓同名だけじゃなくて容姿もそっくりだし何ならプロフィールもほとんど同じよ」
「へいへい。ただ、お前よりも遙かにまともだから。お前のような年中発情している雌ブタじゃねぇから」
「失礼ね。慧人の前でしか発情してないわ」
「そこは否定しろよおい」
「だって……事実だもの」
やっぱり、そっくりさんだわ。いや、赤の他人かもしれない。
「ねぇ……私の初めて……貰ってくれる?」
「おう、初フレンドって意味なら貰ってもいいけど?」
「……っち」
「今『そこで動揺してくれれば、流しやすかったのに』とか思っただろ?」
「え?慧人。なんで私の考えを読めたの?ふふっ、やっぱり私たちは心で繋がっているのよ。だから心だけじゃなくて身体も繋がりましょう?」
「意味分かんねぇことを口走るな」
とりあえず、千聖がチュートリアルを始めたので、俺はコラボガチャを引くことにする。
というか、この女が来なければ既に引いていたはずだが……まぁいい。100連……この100連で引いてみせる。
「……くっ」
最初の10連は最低保証分……最高レアの気配なしか。
最低保証分だと今は、悪いか?いや、まだ10連だし次行くか。
「…………ふぅ」
20連目も最低保証分だけ。……なるほどな。このまま行くとマズいか?いや、だからこそ次で流れが変わるか?
「…………」
30連目……流れが変わるように最高レアを引く……が、全くの別キャラの最高レア。いや、今ので流れがよくなったはず。このまま行けば……!
40、50と最高レアの気配はなく気付けば半分……くっ、いや今の俺に進む以外の選択肢はない。
「ふーん。慧人ってこの子が狙いなのね」
「ああ。一番の推しキャラはこの氷川紗夜って言う紗夜さんによく似たキャラなんだけどな。白鷺千聖も結構好きなキャラだし……」
「……もしかして……愛の告白?」
「お前の脳みそはどこまでお花畑なんだよ」
……というかよく見るとコイツって結構可愛い部類に入るのではないだろうか?いや、アイドルだし、それはある意味保証されているものなんだが……中身がド変態の雌ブタだしなぁ……。
「というか、お前の方はどうなったんだよ」
「今、チュートリアルの後のダウンロード中ね」
「そうかよ」
ということでガチャ再開……くっ、60、70と引くが出ず。……流石に堪えるな……。
「……(ツンツン)」
「なんだよ」
「ふふっ、何だか新鮮な感じがして」
「どうした急に」
「こうやって二人でベッドの上、寝そべりながらゲームするなんてね。しかも、真剣な顔だし」
「うっせぇ」
と、80連目……それは起きた。最高レアの演出……そして、
「おっ……!」
映る影は白鷺千聖そのもの。虹色に輝く最高レアの演出……!こ、これは……!
「そっちじゃねぇえええええええ!」
出たのは白鷺千聖の最高レア。しかし、悲しきかな。最高レアは最高レアでも欲しかったコラボ限定ではなく恒常の方である。
「…………(ぷぷっ)」
「なんだよ」
「慧人も……そんな顔をするのね……!」
「……っ!」
「ふふっ、何というか……その絶望した顔……興奮するわ……!」
「この女……!」
すっげぇ嬉しそうな顔だこの野郎。クソ、コイツを無視して90連目だ90連目。
「ねぇ、慧人……あなたのその顔を見ると……心のチ○コが勃起するわね♪」
ガチャを引くボタンを押した瞬間。無視することが出来ない発言が聞こえてくる。
「おい、なんでピー音仕事しなかった!?今、コイツとんでもない発言したぞ!?」
「これが私の新技。名付けて○隠しよ」
「それ退化しているから!ピー音以下だわこの阿呆!」
「いい慧人?私の最終奥義はモザイクなし。私にかかればどんなワードも包み隠さず言えるわ」
「絶対に最終奥義は使うんじゃねぇぞ!?マジでやめろよおい!俺たち消されるぞ!」
「なるほど……分かったわ。じゃあ、さっきの発言も、漏れてきた……の方がいいかしら?」
「よくねぇけどまだマシだと思う自分がいる……!」
「冗談よ。そんなすぐに興奮するようなド変態じゃないわ」
「…………」
嘘だなと思ったが、ツッコミを入れるのがマジで疲れた。うん。
ちなみに90連目は別の最高レアで……残すとこ10連となった。
「…………」
何だろう。ガチャを引き続けて精神面がどんどん削られていき、あげくすぐ隣のド変態のせいで体力も削られている気がする。
ああ、神様……頼むから引かせてくれ?お恵みを下さい……
「…………」
最後の10連。一人……また一人判明する度に、色々な感情が渦巻く……そして……
「……はぁ」
なんともいえないこの感情。今まで溜め込んで来た分を使い果たし、尚それでも届かない。
たかがゲーム。されどゲーム。ガチャ一つとっても、ここまでなんとも言えない感情に襲われるとは。
「……えっと、このガチャね。慧人。単発と10連ってどっちがいいのかしら?」
「あー俺は10連を引くタイプだが、このゲームだとそこまで大差ないと思う」
「そう?じゃあ、単発で引いてみるわね」
ということで引き始める千聖。まぁ、始めたばっかだし、そこまで試行回数を重ねることは出来ないだろう。
そうだな。よく考えれば、100連と言っているが確実に欲しいなら天井まで行くだろうし……うん、まぁ……そう考えると出なくても仕方がないのか。
「あっ……」
隣のド変態が声を上げる。どうしたのだろうか。
「何だ?」
「当たったみたいね」
「…………」
見せられた画面にはガチャ画面。そこには狙っていた白鷺千聖の姿。
「…………」
「…………(ふふん)」
ドヤ顔をしてくる千聖。……なるほど。
「悪い千聖。落ち着く時間をくれ」
「どうしてかしら?」
「お前を犯しそうになるから」
「ふふっ、100連引いても出ないなんて日頃の行いでも悪いのかしら?私に似たキャラを引きたいなら日頃の行いをよくしないといけないのよ。いいえ、そもそも私に尽くすべきなのよ。だから、ド変態ド変態と罵られるのももちろん嬉しいけど、もっと普段から敬意を持って接してくれれば、神様も微笑んでくれるんじゃないかしら?ほらほら、負けを認めてしまいなさいよ」
「…………(ピキッ)」
この女……!自分がやられたいからって煽ってきやがってるな……!というかやられたいからワザと煽るとかドMじゃねぇか。本当にマゾ雌ブタじゃねぇか。
なんだろう。今も煽り続ける千聖を見ると……うん。返って冷静になってきたな。よく考えればこの女。言葉の奥底に、早く怒って犯してという意味の分からん願望をひしひしと感じる。なるほど。手を出したら負けってこういう時に言うんだな。少し賢くなった気分だ。……いや、もしかしたら少しバカになったかもしれない。
「はぁ……まぁいいや」
「う、嘘でしょう……?結構アレな感じで煽ったのに冷静に……?どういうことなの?」
「素直に認めるわ。俺は引けなくてお前は引いた。過程はどうあれそれが全て。お前が勝者で俺は敗北者だ。だから、よかったな。千聖」
「え、えぇ……じゃなくて!なんで私に怒らないの……?なんで怒って犯さないの……?」
「誰がテメェの見え透いた思惑に乗るかっての」
「くぅ……完璧な演技だと思ったのに……!」
…………あんな見え見えの思惑。冷静になれば誰でも分かるっての。
「まぁ、俺は運がいいわ。別にゲームで引けなくても、限りなく近い存在のお前が居てくれるし。確かにゲームの白鷺千聖も好きだけど、目の前に居る
「……へ?」
「よく考えたら、お前はアイドルとか役者として日頃努力している。ベーシストとしてだけじゃなく、役者やアイドルとしても、体調管理とか美容面とか、演技力をつけるためとか……俺はお前の努力を全て分かるわけじゃないが、それでも凄い頑張っているのを知っている。普段から俺の想像を超える努力をしている……そんなお前に日頃の行いとか言われても、お前の方がすげぇってのは、分かり切っていたこと。お前が弾けているのは俺の前だけだし……だから、いいやって。まぁ、これからもお前が俺の傍に居てくれれば、ゲームでは居なくても……ってどうした?顔が真っ赤だぞ」
「……こっち見ないで」
「は?」
(……さ、さすがにこの不意打ちはダメ……うぅ……慧人ってなんでこういうことをスラスラと言えるの……?)
「ね、ねぇ……慧人。私が傍に居るのって……迷惑じゃないの?」
「アホか。ガチで迷惑なら拒絶しているわ」
「……責任取ってよ……慧人はやっぱり責任を取るべきよ」
「いや、何の責任だよ」
「……私を惚れさせた責任」
「は?」
この後、いつも通り二人で過ごしていたが、いつもより千聖のアレな言動が少なかったことを記す。珍しい日もあるんだなぁ、と思いました。はい。
……おかしい。慧人くん爆死のBADENDで終わるはずが……おかしい。何かがおかしい。
というかうちの千聖さんが
ところで、皆様はどれが悲しいですか?
どれだけつぎ込んでも欲しいキャラが当てられないこと?
それとも、ピックアップがすり抜けて同じキャラでも違うものが当たること?
はたまた、隣の友人が目の前で欲しいキャラを引き当てたこと?
よくありそうなガチャに纏わる悲しみを慧人くんに経験してもらいました。……そのはずなのに、何故か慧人くんが敗北者に見えない不思議な現象ですね。