クールビューティーな紗夜さんを返して(涙)   作:黒ハム

70 / 79
皆様、お久しぶりです。無事、前期の単位が取れたので投稿します。
お気に入り登録に感想もありがとう!
今回より冬休み+α編スタートです。


冬休み+α編
最強の切り札、その名は……


 遅延証明書……そう、それは我ら学生にとって、最強の切り札と言わざるを得ない。

 公共交通機関がある一定以上遅れた場合にもらうことが出来るモノで、公共交通機関を使っているヤツにとっては、これを貰えば遅刻が遅刻扱いにならないのだ。

 つまり、何が言いたいかと言うと……

 

「穏やかな朝だな……」

 

 多少サボっても、学校側にはバレないのである。

 ということで、とあるカフェにて、モーニングの珈琲を啜る。俺の情報網で、本日は相当電車が遅れているそうで、遅延証明書が出ているらしい。というわけで、あたかも電車に乗ったように見せて、ちゃっかり遅延証明書を貰ってきた次第である。

 

「あはは……バレたら、紗夜ちゃんや千聖ちゃんに怒られないかな……?」

 

 ちなみに目の前には花音が居て、一緒にモーニングの珈琲を啜っていた。

 彼女は、いつも通りと言うべきか、なんと言うべきか。駅に向かう最中に、道に迷って居たところを発見した。だから、保護したまではいいが、俺には俺のやりたいことがあったので、連れてきました。彼女は怪しむ様子もなく、駅員さんに遅延証明書をもらった後、カフェまで到着。

 流石にカフェまで連れてきた時は、学校に向かっていないとか、色々気付いてあたふたしていた。ただ、精神的に余裕が生まれたのか、ちゃっかり同じものを注文していたけど。

 

「いいか花音。俺たちは電車が遅延して、学校に行けない設定なんだ。つまり、仕方ないんだ」

「あのー……私も慧人さんも電車使わないよね?」

「ふっ、そんなことか。俺は気分で乗りたかったことにすればいいし、お前は道に迷いすぎて、気付けば電車に乗っていたことにすればいい」

「ちょ、ちょっと!流石の私もそこまで酷い方向音痴じゃないよぉ!」

 

 それはどうだろうか。もう二年の冬だし、通い慣れているはずの学校までで迷子になるレベルだ。普通にあり得そうだけどな。

 

「でも、お前もちゃっかり注文しているじゃないか」

「そ、それは……その、流石に何も注文しないのは申し訳ないかな……って」

「そんなこと言って~本当はこういうことしてみたかったんだろ?」

「うぅ……慧人さんが悪の道に堕としてくるよぉ……」

「ははっ、悪の道なんて物騒だな。まぁ、優等生ではないことは自負している」

 

 そう思っているとスマホが震えた。

 

「なんか来たな」

「あ、千聖ちゃんからだ……えっと、『何処にいるの?』だって」

「あ、俺も『花音がまだ学校にたどり着いていないみたいなの。探してくれる?』だって」

「そっかぁ。もう朝のHR始まっているんだね」

「そうだなぁ」

 

 ということで、お互いに珈琲を一口。

 

「とりあえず、千聖には『一緒に居るから心配するな』と」

「そうだね。『慧人さんと居るから心配ないよ』っと」

「あ、返信来た」

「早いね。なんて来たの?」

「『朝から学校をサボってデートかしら?羨ましいかぎりね』だとよ」

「で、デートって……そ、そんなんじゃないよぉ……!」

「まぁ、俺がお前を連れ出しただけだしな」

「そ、そうだよ!嫌がる私を強引に……!」

「待て待て。嫌がるって、いつも通りついてきたじゃないか」

「だ、だって~慧人さんが学校じゃなくて、駅に向かうなんて思わなかったもん」

 

 いや、学校に向かって歩いていないことに気付け……と言おうとしたが、それが分かるなら途中で聞いてくるはずか。

 

「……花音。絶対に知らない人についていくんじゃないぞ?」

「そ、そんなことしないよぉ……!」

「いいか、世の中にはな?道に迷ったら、そこら辺にいた人について行くバカがいるくらいだ」

「それはバカだねぇ……でも、大丈夫だよ。私は慧人さんにはついていくけど、知らない人にはついて行かないから」

「花音……で、知っている人についてきた結果がコレか」

「そ、それは慧人さんがサボるからダメなんだよ!」

「いいか?俺はサボってるわけじゃない。そう、電車が遅延しているから……」

「そういう言い訳をしているからダメなんだよぉ……」

「…………」

 

 そっと天井を見上げる。ああ、なんだろう。俺ってもしかしなくても不真面目なのかな。

 

「慧人さん……今からでも遅くないよ?私と一緒に学校に行こう?」

「えぇーもう少しサボろうぜ?」

「さもないと、紗夜ちゃんにあることないこと言っちゃうよ?」

「あれ?流れ変わった?」

 

 おかしいな?優しく諭すような感じの出だしだったのに、一瞬で脅しに変わったぞ?

 

「はぁ……甘いな花音。俺がそんな脅しに屈するとでも思ったか?」

「ほ、本気だよ?私だってやるときはしっかりと──」

「ほら、荷物を持て。行くぞ」

 

 そう言うと伝票を持って会計に向かう。

 

「ま、待ってよぉ……」

 

 荷物を慌てて纏めて後ろからやってくる彼女。そんな彼女を横目で確認しながら会計をすませる。

 

「さぁ、学校に行くぞ。まずはお前を花咲川に送り届ける」

「何だかんだ言いながら、紗夜ちゃんには弱いんだね……」

「そんな事実はない」

「あはは……多分、周知の事実だよ?」

 

 自然と隣に立って、自然と腕を組む彼女。まぁ、花音は目を離すと消えてるしなぁ……

 

(慧人さんは目を離すと居なくなるからなぁ……何で居なくなるんだろう?)

 

「なぁ、花音」

「何かな?」

「さっきまでのことは、紗夜さんや他の皆には秘密な」

「ふふっ、二人だけの秘密だね」

「まぁ、千聖からの勘繰りはあるだろうけど、上手く躱してくれよ?」

「うーん、自信はないかなぁ。千聖ちゃん、人の思考読むの得意だもん」

「もしアレだったら、俺がお前を無理やり連れていったとでも言っといてくれ」

「分かった。慧人さんに拉致されたって言っておくね」

「やめてくれ?それだけはやめてくれ?」

「冗談だよ。大丈夫、任せてね」

 

 そうやって微笑む彼女。まぁ、やましいことは一切ないからバレても別にいいんだけど。

 そして、花音を無事に送り届け、俺は虎南高校へ。

 

「遅れましたー」

 

 そして、堂々と授業中の教室に入っていく。

 

「冬木君?どうしてこんなに遅くなったんですか?」

「電車が遅延していたんですよーほら遅延証明書です」

「あ、そうですか。大変でしたね」

「ですです」

「でも君なら、走った方が速そうですけどね」

「あはは、流石に電車にはかないませんよ」

 

 そう言いながら席に着く。いやー……今日も一日始まるか。

 余談だが、花音の演技はすぐに千聖に見抜かれたとかなんとか。まぁ、いっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やはり、冬木慧人が生徒会長では、この学校は破滅を迎えてしまいますね』

『えぇ。校長先生は彼を買っているようですが、このままでは非常にマズいでしょう』

『厄介なのは、生徒の大半と教師の大半を認めさせられていること』

『もう、我々くらいしか残っていませんね』

『そうですね。……我ら風紀委員が彼を粛正しなければいけないかもしれないでしょう』

『来年入ってくる生徒のために、彼の天下を終わらせましょう』

 

 コンコンコン

 

『どうぞ……ああ、先生ですか』

『ちょうどいい人材が見つかりました。彼らに排除をお願いしましょう』

『なるほど……決行はいつにしますか?』

『そうですね……この日なんてどうでしょう。その他の厄介な皆さんを纏めて排除できますし』

『賛成です』

『よろしくお願いしますね、皆さん。全てはこの学校の風紀の為に、冬木慧人を排除しましょう』

『『『はい』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 以下、もしこの日の朝に出会っていたのが花音ではなく別キャラだった場合のお話です。

 

 

 

 

 

『千聖の場合』

 

「あら?慧人、あなたどうしてここにいるの?」

「……千聖か。いやな?電車が大幅に遅延しているらしいから……」

「遅延証明書をもらって、合法的に遅刻しようと」

「その通りだな」

 

 流石、千聖。話が早い。

 

「ふふっ、私も連れて行ってもらえるかしら?」

「え?」

「だって、慧人は合法的にサボるんでしょう?私も面白そうだしついて行くわ」

 

 なんだろう。コイツのことだから、狙いがありそうで怖い。

 

「狙いなんてないわ。ただ……」

「ただ?」

「学校をサボってホテルに直行。朝から日が暮れるまで慧人と(ピ──)。平日の昼という、他の皆が勉学に勤しんでいるという背徳感を味わいながらの(ピ──)……ああ、想像しただけでたまらないわね。今なら、私とお散歩も出来るわよ?首輪を付け、慧人がリードを持つ……いくら学校があるとはいえ、夜中よりはバレるリスクが高い。きっと、慧人は鬼畜だから公園に放置したり……」

「……千聖。やっぱりさ、学校をサボるなんてよくないよ。ほら、学校に行こう?送っていくよ」

 

 俺は笑顔で千聖に答える。しかし、千聖は嫌そうな顔を向けた。

 

「嫌よ。私は慧人と学校をサボって(ピ──)したいの。そういう気分なの」

「ほら、お前もオレも学校を休む回数多いしさ。な?やっぱり出席できるときはしっかり、出席しておこうぜ?」

 

 千聖は芸能活動で、俺はサッカーなどで、休んだり遅刻早退が他の人より多い。うんうん。やっぱり、出席できるときは出席しないとダメだよな。

 

「大丈夫。慧人は賢いもの。勉強なんて余裕だわ」

「いやそういう問題じゃなくてだな……俺が悪かったので、学校に行かせてください」

「……なるほど。そういうことね」

「うーん、どういう意味で納得した?」

「このまま私を虎南高校へ連れて行って、皆にバレないようにしながら校内で(ピ──)をしようと」

「そうじゃねぇよ!?そんなことしねぇよ!?」

「あり得ないわ。あなたのことだもの、きっと、生徒会長権限を使って、生徒会室か保健室を貸切にするつもりよ。そうすれば思う存分できるわね」

「やらねぇからな!?」

「あ、慧人。私は保健室がいいと思うわ。生徒会室にはベッドがないでしょう?……いえ、待って頂戴。確か、慧人以外の生徒会役員は全員女子……生徒会室はもはや慧人と彼女たちの(ピ──)をするための空間に……最高ね!このプレイボーイ!」

「なってねぇよ!?なってねぇし手も出してねぇよ!というか、最高じゃなくて最低だろう普通は!」

「時間が惜しいわね。行くわよ慧人。早くしないと私が妄想だけで満足してしまうわ」

「勝手に満足してろこのド変態!」

「あぅ」

 

 この後、何とか花咲川までの登校デートで許してもらえた。

 これからは千聖にバレないようにしよう、そう思いました。

 

 

 

 

 

『リサの場合』

 

「あれー?慧人君じゃん。どうしたの?この道、君は通らないはずだよね?」

「げっ、リサ姐……」

「むーげっ、って何かな?そんなに会いたくなかったってこと?」

「少なくともこのタイミングでは会いたくなかったです」

「ふーん。じゃ、何しようとしていたの?」

「学校をサボって、何かしようと思っていました」

「……はぁ。慧人君」

 

 そう言って親指をどこかに向ける。

 

「少しだけなら時間があるからさ。お話しよっか」

 

 親指を向けた先には小さな公園……あ、やっべ。逃げられないわ。

 

「……で、どうしてサボろうとしたの?」

 

 公園のベンチに並んで腰掛ける俺とリサ姐。リサ姐は優しい声音で聞いてくる。まるで、イタズラを仕掛けた小学生に聞いてくる感じだ。

 

「それは……その、やってみたかったからです」

「やってみたかった?慧人君は学校をサボるとか平然としてそうなんだけど?」

「あれ?俺のイメージってもしかして悪い?」

「うん。アタシ的にはどうしようもない問題児かな。風紀委員とか生徒指導の先生が頭抱えていそう」

「こう見えて生徒会長ですよ?」

「知ってる。でも、慧人君が歴代最強の問題児であることに変わりはないかな」

「あれ?グレードアップした?」

「ううん。グレードダウンした」

 

 おかしい。リサ姐のイメージが酷い。

 

「で?やってみたいって?」

「あぁ……遅延証明書ってあるじゃないですか」

「あー公共交通機関が遅れたときに出るアレね」

「そうですね。アレが出ると、遅刻とかしても遅刻扱いにならないんですよ」

「確かにね~しょうがないもん。電車の遅れとか、アタシたちじゃどうしようもないじゃん」

「そうですそうです。だから、合法的にサボってみたかったんです。そのために駅に行きたいんです」

「……はぁ」

 

 そう言うと頭を抑えるリサ姐。頭痛でもしたのだろうか?

 

「相変わらず君は、行動力がぶっ飛んでいるよね……」

「お褒めに預かり光栄です」

「うん、褒めてない。普通はそう思っても、わざわざ行かないからね?というかよく調べたね」

「そこは俺の独自の情報網がありますので……」

「はいはい。全く……いい?その人たちはね?サボりたくてサボっているわけじゃないの」

「ですがリサせんせー。とあるバカは遅延証明書を貰ったことをいいことに、遊んでから学校に行ったそうです」

「……訂正するね。そういう人たちを除いて、多くの人は遅れたくないのに遅れてしまうんだよ。ほら、遅刻扱いにならないだけで、居なかった分の授業を受けられるわけじゃないでしょ?」

「……確かにそうですが……!」

「ね?だからさ、学校に行きたくない理由がないなら、普通に行ってこよう?もし、行きたくない理由があるなら、アタシが相談に乗ってあげるよ」

 

 ……なんだろうか。リサ姐がまぶしく見える。……うーん、行きたくない理由か……そう聞かれると特に思いつかねぇな。

 

「うーん、行きたくない理由は特にないですね。ま、行きたい理由もないけど」

「だったら、行ってきたら?」

「気が乗らねぇ……というか、リサ姐ってアレですよね。見た目ギャルというか、不真面目そうなのに、真面目ですよね」

「おっと、どうやら君は怒られたいらしいね?いいんだよ?ここでお説教を始めても」

「そんな脅しには屈しませんよ?」

「ふーん。そうなんだ……」

 

 そう言って手首を掴むリサ姐。逃がさないっていうことだろうか?

 

「じゃあ、慧人君の好きにしていいよ?学校、サボりたいならサボっていいんだよ?」

「あ、マジですか?……で、この手は?」

「そこにアタシもついて行くってこと。あーあ、慧人君がサボっちゃうとアタシまでサボることになるのかー残念だなー今日の1限は楽しみにしていたんだけどなぁー」

 

 俺に向かって言っているというより、ただの独り言という感じで告げてくる。……はぁ。そんなに言われたら……

 

「……分かりましたよ。今日はサボりませんから。大人しく投降しますよ」

「えぇーいいんだよ?ほらほら、サボっちゃいなよ」

「……リサ姐に迷惑をかけると後が怖いので。それに、紗夜さんに無理やり連れていかれたとか言われても困りますし」

「えへへーバレた?」

 

 そう言って舌を出して、空いている手でスマホを見せてくる。イタズラが成功したような顔……全く、この人は。

 

「まぁ、改心したなら今のことは水に流してあげるよ☆」

「へいへい。未遂でしたけどね」

「うんうん……ってああ!慧人君と話していたらもうこんな時間なんだけど!?走って間に合うかどうかなんだけど!?」

「ドンマイ☆」

「コロスよ★」

 

 俺が笑顔で言うと、ガチトーンで言われた。ちなみに、声音と目はマジだったのに、笑顔だったのが怖かったです。

 

「じゃ、送ってきますよ。時間をとらせてしまったのでね」

 

 リサ姐を抱える。さてと、ここから羽丘までの最短経路は……

 

「あ、あのいきなりは……恥ずかしいというか……」

「しっかり捕まって、振り落とされないようにしてくださいね」

「へ?」

 

 次の瞬間、俺は走り始めた。そして、近くの外壁をジャンプで登り……

 

「ひゃっほーう!」

「いいいいいいいいやややややあああああああああぁぁぁぁぁっ!???」

 

 この後、屋根伝いに羽丘まで行ったら、道中でリサ姐が気絶した。

 着いてから起こしたが……何だろう。凄い怯えられた。間に合ったからよかったんじゃないかな?

 ちなみにですが、数日間。リサ姐から避けられることになりました。一体、何がダメだったんでしょうかねぇ?

 

 

 

 

 

『紗夜の場合』

 

「おはようございます、慧人さん」

「おはようございます、紗夜さん。ではこれにて失敬……」

 

 ガシッ

 

 紗夜さんと挨拶をして、すれ違った瞬間、肩を思い切り掴まれた。あはは……

 

「時に慧人さん」

 

 肩を掴んだまま、こちらに顔を向けることなく問いかけてくる。

 

「何でしょうか?」

「あなたはどちらへ行こうとして居るんですか?」

「やだなー学校に決まってますよー」

「ふふっ。でしたら、何故こんな場所ですれ違うんでしょうねぇ?見たところあなたは一人で制服姿。サッカー部のランニングならまだしも、そんな格好で会うのはおかしいんですよ」

「あーいっけね。今日は創立記念日とかで休みでした。いやーうっかりうっかり」

「ふふふっ。面白い冗談です。あの慧人さんが、休みの日を把握していないのはあり得ません。本当のことをおっしゃってください」

 

 ……やっべ。予想通りと言うべきか、完全にバレてる。

 

「紗夜さん。学校に行くのは嘘ではありません」

「えぇ、そうでしょうね。で?」

「俺は、()()()()電車で通学した日に限って、()()()()電車が遅延し、遅延証明書が発行されるんです。だから遅刻しても仕方ないんです」

「ふふふっ、正直におっしゃってください。学校をサボりたい、とね」

「……その通りです」

「素直ですね。よろしいです」

 

 そう言って取り出したのはスマホ。何処かに電話をかけようとしている様子だ。親だろうか?だとしたら甘いな。その程度で俺は止まらねぇからな。

 

「あ、もしもし虎南高校ですか?はい。お宅の生徒会長さんが、学校をサボろうと企て……」

「手が滑ったぁぁああああっ!」

「きゃっ!」

 

 肩から手を放させ、反転し紗夜さんのスマホを掴む。あまりのことにバランスを崩しそうになった彼女を抱きしめつつ、スマホを掴んだ手で電話を切る。

 ふぅ、あぶねぇ。だが、これで学校側はいたずら電話だと思うはずだ。

 

「手が滑ったじゃないですよ……早く放して下さい。こういうことは人目につかないところでお願いします」

「あ、すみません」

「全く……今の慧人さんは通報されても文句が言えませんよ」

 

 そっぽを向きながらそう答える紗夜さん。

 

「すみません……ポテトを奢るので許してください」

「分かりました……別に、元々通報する気もないですけど」

 

 ここで、衝撃が走った。まるで、電気が流れたのか、俺の脳はフル回転する。そして、あることを思いついたのだ。

 

「でも、紗夜さん。今から一緒に行かないとポテトは奢りません」

「ぐっ……!」

 

 胸をおさえる紗夜さん。ふっ、ポテトが絡むと彼女はポンコツになる。

 落ち着いて考えれば、明らかに彼女の方が優位に立っているのだが、今の彼女は気付かない。

 

「ポテト……学校……ポテト……学校……」

「…………」

 

 どうしようこの風紀委員。ポテトと学校を天秤にかけているんだけど?え?大丈夫?マジで大丈夫か?

 

「紗夜さん……?」

「ポテト……ポテト……学校……ポテト……」

「いや、だいぶポテトに引っ張られていますよね?えっと……」

 

 どうしよう、流石に俺の良心が……ねぇ?何か、悪いことしている気分になってきたんだけど。

 

「決めました。行きましょう」

「ちなみにですが……何処に?」

「ポテトです」

「いや、学校に行きましょうよ。そこは学校でしょう?」

「学校の方は大丈夫です。遅延証明書を貰えばいいので」

「いや、良くないですけど?あなた、電車を使わないでしょう?」

「何を言っているんですか?私は、()()()()電車で通学した日に限って、()()()()電車が遅延し、遅延証明書が発行されるんです。だから遅刻しても仕方ないんですよ」

「いやそれ、さっき俺が言ったことですけど?あなた、否定したんですけど?」

「記憶にございません」

「マジかよおい」

「さぁ、行きますよ!ポテトが待っています!」

 

 ズルズルズル

 

 首根っこを掴まれ、引きずられる……ああ、もう。どうにでもなれ。

 この後、無事遅刻しました☆




花音ルート(正史)。慧人に半ば騙されるようにして連れていかれた。花音は、慧人がいないと学校に到達できないため、完全に慧人の方が優位に立っている。最低主人公だな。

千聖ルート。途中から千聖がサボろうとして、慧人が阻止する。遅刻はしていない。
リサルート。お説教更生……まではよかったが……。多分、一番の被害者。遅刻はしていない。
紗夜ルート。紗夜さん(風紀委員)が慧人(問題児)を引き連れポテトに行っちゃった。花音ルートより遅刻している模様。

おかしいな?メインヒロインが一番アウトな気がするぞ。

ちなみに、方向音痴で道に迷ったらとりあえず近くの人について行くバカは私のことです。
後、この話は実体験がもとになっています。というのも作者は、高校時代は電車通学でした。ある時、電車が遅延して、遅延証明書を貰い、別の学校の友達二人と駅にあるカフェでモーニングを堪能したことがありました。まぁ、普通に行けば学校に間に合ったんですけどね。しかも、その日が中間か期末テストの初日くらいだったって言うね。あ、安心してください。生徒指導の人には『大変だったな』と校門で声をかけられて、堂々と『その通りですよ』と答えました。まさか、サボってモーニングを堪能しているとは思うまい。
よい子の皆様はこんな人に育ったらダメですよ?


ちなみに千聖ルート……正式タイトル『まともな千聖さんを返して(マジで)』の記念すべき第一話投稿日は9/1の0:00に決定です!
作品へのURLはTwitterでの告知と、この作品のあらすじの最後の部分に掲載します。また、匿名投稿はしませんし、通常投稿しますので、作者のマイページや、小説検索からも入れます。
9/1の0:00をお待ちください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。