さて、一体誰が犯人なんでしょうね?
あこが指をさす……その先に居たのは……
「――リサ姉。そうだよね?」
「「「……っ!」」」
リサだった。指をさされた彼女の表情は驚きに包まれていた。
「い、いやいやいや!?アタシじゃないよ!?」
「本当に?」
「そうだよ。ほら、さっきだって全員違うって話になってたじゃん」
「そ、そうだよあこちゃん。ここにいるみんなじゃ無理だって……」
「ううん。それが間違いだったんだよ。そして、あこの推理だと、リサ姉しか犯人はいないんだよ……」
「で、でも……」
「落ち着いてリサ。まずはあこ、聞かせて。あなたの推理を」
「うん。問題点は、全員アリバイがあること。そしてけー兄を拉致することは不可能ということ」
「そうですね。両方を崩さないといけませんね」
「まず、けー兄を拉致するということ。これ、実は最も簡単だったんだ」
「……どうして?冬木が寝ていたとでも言うの?」
「そうじゃないよ。紗夜さんの時に出てきたけど、けー兄は警戒していなかったんだよ」
「どういうことなの……?」
「うん。けー兄はあこたちの誰が来ても、警戒を絶対に緩める。あこたちに警戒心を抱くことはないんだよ」
「……そっか。紗夜に対しては特に緩いけど、アタシたちでも警戒する素振りは見せないね。でも、それだと候補は……」
「うん。候補はあこたち全員になる」
慧人は紗夜以外にもこの中のメンバーに対し、警戒心を抱くことはない。だから、拉致することは可能だと言う。
「だから、重要なのはけー兄を拉致した方法じゃなくて、拉致した時間なんだ」
「今井さんが電話した一昨日の昼から、その日の夜までの何処かのタイミングで。ということでしょうか?」
「そう思っていた。でも、本当はそれが違ったら?」
「……っ!まさか、あこちゃん。それって……」
「うん。通話したログが残っている。でも、けー兄のスマホから電話していた人が、けー兄じゃなくて犯人だったら?もっと言うとそもそも電話にけー兄が出ていなかったら?」
「もっと早くに拉致されていた……そういうことになるのね」
「犯人が二つのスマホを使って電話を掛ける……そういうことですか?」
「可能性は捨てきれないです……!」
「い、いやいや!アタシが電話した相手は慧人くんだったから!慧人くんと話していたから!」
「思い出してみてよ。誰が最初にけー兄のスマホを見つけたか」
「「「……っ!」」」
慧人のスマホを最初に見つけた人物。3人が一斉にリサの方を向いた。
「だから、けー兄のスマホは実は犯人が持っていたもの。そして犯人は、自分が見つけたようにあこたちに言って、最初からそこにあったかのように偽装したんだ」
「……そんなことしてないよ。じゃ、じゃあ、本当の慧人くんが消えた時間は?」
「一昨日の昼より前……ただ、その前の日の夜は……」
「私と氷川さん、それにあこちゃんの三人と一緒にNFOをしていましたね」
「うん。だからその直後になると思う」
「なぜかしら?一昨日の午前の可能性もあるでしょう?」
「けー兄のお母さんは言ってたよね?一昨日から姿を消しているって……つまり、一昨日の朝の時点で既にけー兄が居なかった可能性があるんだよ」
「なるほど……検証は必要ですが、一昨日からという表現……それが一昨日の朝からだった可能性もありますね」
「うん。それに、夜の方が人目には付かないから……後、けー兄は朝から勉強するほど真面目じゃない!そんな朝から勉強するけー兄なんておかしい!」
「「「あ、確かに」」」
酷い言われようである……が、これが日々積み重ねて来た人徳というヤツである。
「ちょ、ちょっと待ってよ!ここ最近、夜は出掛けず家に居たよ。ほら友希那も、アタシの部屋の電気が付いているの見ていたよね?」
「えぇ、そうね。付いていなかったら気付くはずよ」
「でも、リサ姉の姿は見た?部屋の電気だけなら偽装はできるよ?」
「……っ!そ、それは……確かに……」
「嘘……」
「それに今井さん……ずっと、犯人はここに居ないと主張を繰り返していましたし……」
「ずっと、弦巻さんのせいにしようとしていましたね……」
友希那、燐子、紗夜……三人から疑いの眼差しを向けられるリサ。
「……事件を最初から振り返るよ」
そして、目を閉じて今までの推理を組み立てるあこ。
「まず、犯人はけー兄を拉致しようとけー兄の家を訪れたんだ。あこたちと最後にNFOをプレイしたその日の夜にね。出迎えたけー兄は、犯人の姿を見ると警戒心を解いたんだ……それが事件に巻き込まれてしまうとも知らずにね」
「拉致した犯人は、アリバイを強固なものにすべく行動を起こした。通話履歴を残すことによってね。それが一昨日の昼。そこからはバイトなり誰かと行動することで自分にアリバイができるから」
「そして今日。異変に気付き始めたあこたちと共にけー兄の家を訪れたんだ。そこで、持っていたスマホを部屋に置いておく。そして、自分が最初に見つけたように振る舞ったんだ。このスマホは外に持ち出されていないと思わせるためにね」
「そんな事ができた犯人は、もう一人しか居ないんだよ。だから認めてよ――リサ姉」
流れる沈黙。
誰もあこの推理に異を唱えるものはいなかった。
ガチャ
「あーやっと帰ってこれた。全く、いつもの事ながら面倒くせぇことに巻き込まれ……あ、いらっしゃ――って、もしかして今何か重い話とかの最中でした?……んじゃ、失礼します」
ガチャ
流れる沈黙。
あまりの光景に全員、開いた口がふさがらない。そして、
「は、犯人は、リサ姉だよ!」
「答えてください今井さん……!」
「そ、そんなリサ……!」
「うぅっ……まさか今井さんが……」
「待って待って!今そこに居たよね!?」
「あ、あこの魔眼には映らなかったかな?」
「きっとあれはケイトニウム欠乏状態の私に見えた幻覚です」
「正直に言ってリサ……!」
「そ、ソンナイマイサンガ……」
「困惑しすぎでしょ皆!えぇい!もう!」
リサは部屋を飛び出す。そして鬼気迫る表情で慧人の部屋の扉を開けた。
バァンッ!
「慧人くん!集合だよ!」
「え?何ですかリサ姐?俺は休憩した……ちょっ、なんでそんな怒っているんですか?」
「怒ってないから!ほら、行くよ!」
「そ、そんな強引にしなくても……」
「早く来ないとアタシが犯人にされるの!」
「犯人?何の?」
「慧人くん失踪事件の!」
「あ、じゃあ、犯人はリサ姐で。これは決まりですね。解決かいけ」
ドンッ!
「慧人くん?」
「これが壁ドン……リサ姐が五割増しでイケメンに見える……」
「冗談でもそういうことは良くないと思うなー」
「ちげぇわ。ただの般若だ」
「うん。戯れ言はそろそろいいんだよ?」
「リサ姐が怖い件について。当局としては一切責任を取らない所存であります」
「いいから来るの!返事は!」
「へーい……って返事したから首根っこ掴まないで下さいよ!」
そして、物音から少し経って。
「あのー……何で俺、正座させられているんですか?」
被害者、冬木慧人は五人の少女の前で正座していた。
「さぁ、慧人くん?
「ちょっと待ってください。いや、何で事件扱いになっているかも、何でリサ姐が犯人なのかも分かってない人間に、何を説明しろと?」
「では私から説明しますね」
~少女、説明中~
「と、こんな感じですかね」
「なるほど……犯人はリサ姐で決まりだ。もう、これが真実でいいんじゃないか?」
「え?やっぱり、そうだったの?」
「ああ。実は俺、リサ姐によって監禁されていたんだ。リサ姐が居なくなった隙に何とか脱出して――」
「慧人くん?何本がいいかな?」
「――え?何本って?」
「折る指の本数」
「誰かぁっ!リサ姐がガチでキレてる!誰か助けて!」
「「「…………」」」
「全員目を背けた!?いや、キレている原因の大半はあなたたちですよ!?」
「じゃあ、正直に言おうか?もし、そんな面白くないオハナシをこれ以上聞かせるなら……本気でヤルよ?」
「「「…………」」」
ガチだった。目がガチだった。この人は答え方を間違えれば本気で慧人を殺る気だった。
「や、ヤるって……俺、初めてなんですけど……」
しかしこの男はバカである。明らかにヤバい相手に対して、冗談をぶち込んでいったのだった。
「…………アタシも初めてだから……人を殺るの」
「え?そうだったんですか?てっきり何人も殺ってきた後かと」
「それは慧人くんの方でしょ?色んな人を殺りまくって……」
「そんなわけ……」
「話が脱線しているわよ。冬木、さっさと説明」
「へーい……と言うかその前にいいか?」
「どうぞ」
「第一、犯人が誰であれ、俺を拉致したんだったら『さがさないで』というメモがあること自体おかしくねぇか?」
「えっと……それも犯人が……」
「俺が書いたことを前提に推理していたんでしょ?拉致されている途中で書くタイミングがない。それに他の誰かが似せて書いた可能性を欠如している……が、まぁ、そっちの方がおかしいだろうな。犯人が書いたなら、どこかに出かけるとか書いて、スマホと財布を持ち出して紙を残した方が、俺が出掛けたように装える。俺を脅して書かせたとしても、そっちの方がいいはずだ」
「「「…………」」」
「第二に、朝から勉強するほど真面目じゃないって言うのは認めてやろう。ああ、俺は真面目じゃない。だが、そんな男がNFOをやり終わって夜も遅いのに、そこから勉強し始める方が違和感あるだろ。冬休みの課題も終わり、課題に追われていない状況下で、ゲームした後の夜中に勉強するほど真面目じゃねぇよ」
「……確かに……
「「え?冬木(けー兄)、冬休みの課題終わったの?」」
「「え?友希那(あこちゃん)、終わってないの?」」
「……続けて頂戴」「つ、続きを言って!」
「……そして最後。確かにアリバイトリックはリサ姐しか使えねぇ。だけど、そのリサ姐はいつNFOが終わるって把握していたんだよ。近隣で見張る……ってのは無理だろ。そんな夜中に、リサ姐が家の近くでこそこそ怪しい動きをしていたら、俺の方から近付く。スマホと財布を持ってな?玄関先で油断していたならともかく、外でなら不意打ちは不可能だ。周りの目もあるかもしれないし、外の広いスペースなら至近距離でもない限り避けられる」
「……あれ?あこの推理……もしかして穴だらけ?」
「まぁ、面白くはあったな。例えば、リサ姐が事前の仕込みで、俺の部屋に盗聴器とカメラをセットしていた……これは突発的な犯行ではなく、計画的な犯行であった。ってシナリオがあれば、もっと完璧な犯人の出来上がりだろ。『さがさないで』っていう文面も、一周回ってやはり失踪したって結論に持って行くための文章だったとか」
「な、なるほど……じゃあ、その一文を追加して、もう一回犯人を追い詰めるシーンから……」
「やらないよ!?第一、それただのヤンデレのストーカ-だからね!?」
「え?リサ姐ならやりそう……あ、何でもないので振り上げた拳をお納め下さい」
「慧人くんの頭に?」
「違います。あなたの懐にです」
折角、他の四人が納得した推理を反論して崩したのに、余計なことを言って怒らせる慧人であった。
「で?結局、何だったの?」
「何が?」
「一昨日から消えていた理由」
「そんなに大事じゃねぇですよ。リサ姐と電話した後、黒服さんたちに連れられヘリに乗せられ、そのまま雪山に行って遭難して、館に迷い込んでゲームに巻き込まれて、そのまま首に爆弾付けられ、主催者との契約である殺人事件の犯人を推理、捕らえに行ってきて、今まで帰れなくなっていただけですよ」
「ほら!やっぱり弦巻家が関わっていたじゃん!」
「ふっ……私はリサを信じていたわ」
「私も今井さんを信じていましたよ」
「私も……犯人は居ないと思ってました……」
「あこも、本当は犯人じゃないって分かってたよ」
「本当に?嘘つくのは良くないと思うなー」
「「「疑ってごめんなさい!」」」
「うんうん。しょうがない。今回の件は水に流してあげよう」
(何だろう。Roseliaの美しい友情を見たのはいいんだけど……何で俺はまだ正座させられているの?俺、今回の件の一番の被害者なんだけど……?ん?よく思い返せばあのメモって確か……)
「「「…………って雪山で遭難して事件に巻き込まれていたぁ!?しかも首に爆弾!?」」」
「いや、反応遅くないですか?ラグが酷すぎですよ?そのせいでこっちは、今の今まで帰れなかったんですよ」
「……もしかして、殺人事件の推理って……」
「少なくともあなたたちのやっていたやつではなく、ガチの事件です」
「ば、爆弾って……」
「爆発してたらドカーンでしたね。いやー頭と胴体がお別れするところでした。まぁ、終わったことなんで気にしなくても……」
「「「説明しなさい!」」」
「…………へーい。えーあれは心地の良い朝でした。小鳥の囀りにより起き……」
「爆発するところまでカットで」
「してねぇよ!?流石の俺でも爆発してたら生きてねぇよ!?」
「じゃあ、拉致されたところまででいいからカットして!」
「へーい……というか、俺、リサ姐に恐喝されたんだけど。従わなければ首を折るって脅されたんだけど?それに対して何かないんですかー?」
「言ってないよね!?アタシが言ったのは戯れ言一つにつき、肋骨を一本ずつ折ることだよ!というか、もうすでに五、六本折ってもいいよね!?」
「増えたしよくねぇよ!?指だけじゃ飽き足らず肋骨まで折られるのかよ!?」
「あぁもう!早く言わないと慧人くんの関節全て外すよ!」
「分かったから!分かったから肩に手をかけないで!?というか、罰がどんどん酷くなってんだよ!」
「羨ましい……今井さんばかり慧人さんとイチャついて……私だって久し振りの慧人さんとイチャつきたいのに……」
「「誰もイチャついてないけど!?」」
「「「何でもいいから早く進めて」」」
こうして、慧人の回想が始まるのだった。
「よく、ここまでたどり着きましたね」
「えぇ。ようやくあなたの下へたどり着いたわ」
「先ほどのメッセージはよかったのですか?」
「慧人が失踪したそうよ」
「なるほど」
「心配かしら?」
「いいえ、いつものことですので。そちらこそ心配では?」
「まさか。どうせ、ふらっと帰ってくるでしょう」
「そう」
「それで、東雲さん。あなたの知る慧人の秘密を教えて下さるかしら?」
「まぁ、あのバカともそういう約束なんでね。お話ししましょうか……アイツの抱える爆弾を」
次回『雪山×館×探偵×魔王』
雪山にて遭難したハロハピ+慧人。見つけた館には10人の探偵が集まっていて……
「頼む……!あいつらだけは……あの5人の命だけは保証してくれ……!」
(珍しく)慧人が真面目にお願いする……?
そして、また前編後編に分かれる可能性が存在……?