六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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今回は、私がやりたかった事、他の執筆している小説の主人公と主人公同士の共演です。

一応、他にも執筆しているものがありまして、宣伝みたいな事になってはしまいますが、良ければそちらの方も見てくれると嬉しいです。

勿論、これは特別な物語なので本編とは一切関係がありませんし、今後出てくるキャラは本編とは一切出ないので、この話を飛ばしても構いませんが、是非ともご拝読してくれると幸いです。


それでは、どうぞ


遥かなる海への訪問者

 

 ある日、何の考えもなく歩きたいと思い、街の海の方へといつの間にか出歩いていた。

 

 まだ海開きという時期には少し早いせいか、まだ海には誰も居ない。

 

 ただ、俺たちを除いては。

 

「そーれ!」

 

「あー! やったなストレナエ! この〜!!」

 

「きゃっ……! プリムちゃん、こっちまでかかったよ!」

 

「わたしにも、かかった。わたしも、おかえし、する」

 

 ストレナエ、プリム、シクラン、しらひめの姿をしたひとひらの3人4が海の上を走りまわり、4人で海水をかけあって遊んでいた。相変わらず元気な4人組だ。

 

「よーし! 行きますよボタンさん!」

 

「かかってこいネー!!」

 

「ボタン、後ろは任せて」

 

「ちゃんと狙ってね、レイ」

 

 ボタンとエリカ、レイとロゼは2対2のビーチバレーをしており、何やら白熱している様子だ。

 

「見てみてアザレア。カニがいるよ」

 

「これがカニ……初めて見た」

 

 アザレアとカメリアは何やら海沿いにいるカニを見つめていた。

 

 2人にとって、自然の生物を見るのはそんなに珍しいものなのか、2人はなんの変哲も無いカニをじっと見つめていた。

 

「ヘレちゃん、そっちはどう?」

 

「ちょっとここが固まって無いから、もう少し待ってて下さいね……」

 

 どうやらスノードロップとヘレボラスは砂で何かを作っていた。2人の体半分ぐらいの大きさであり、完成まで時間がかかりそうだ。

 

 皆が皆、やりたい事をやっている中、俺はだらっと太陽に焼かれながらのんびりと過ごしていた所を、2つの氷の傘で太陽の光が遮られた。

 

「花衣様、日を浴びるのは良いですが、熱中症になってしまいますよ?」

 

「そして旦那様の美しい肌が焼かれてしまいます。私としては、黒い肌の旦那様より、そのままの旦那様の方が好みです」

 

 ティアドロップとカンザシが俺を気にかけてくれ、両隣に座り、挟み込む形になった。

 

「……平和ですね」

 

「あぁ。命懸けのデュエルやらあった事が懐かしく思えるよ」

 

 こんな平和な時がいつまでも続けば良いなと思い、穏やかな海の漣を聞いて少し寝転んだその時、空にキラリと輝く星の様な物が見えた様な気がした。

 

 気のせいかと思い光った所を凝視すると、また何かキラリと光ったような気がした。今度は少し大きくなった。

 

 目を細めて光った所をもう一度見ると、ぼんやりとだが何か見え始めた。白くて……少しだけ黒い所が見えて徐々に大きくなっていく。

 

 それに何だか動いているような気がする。ひらひらと動いている物は……服? いや、服にしては動きが変だ。服だったらゆっくりと揺らめいているのに、あれは激しく動いている。

 

 視力の限界まで見て白い服らしき物を眺めると、何とその服の袖には腕があり、よく見ると顔らしき物が見えた。

 

「ちょっと待て、あれ……もしかして人か!?」

 

 思わず立ち上がって落ちて来る人を凝視し、こっちに向かって落ちてきていた。

 

「おおぉぉい! そこの人達ー!! どいてどいて──!」

 

 落下途中の人が退けと言っているが、そうするつもりは無い。もしこのまま退けばあの人は砂浜に直撃するか水面に打ち付けられるかどっちかだ。

 

 どんな高さで落ちていったのか分からないが、落下速度からしてかなりの行動から落ちてきた筈だ。

 

 もしも海に着水したらまるでコンクリートに打ち付けられた様な衝撃が体に走るし、砂浜でも同じ事だ。何としても受け止めなくてはならない。

 

 だがどう考えても間に合わない。今から受け止める準備をしようとしても間に合わず、落下してくる人は海にへと落ちていき、空に届きそうな程大きな水しぶきが広がり、しぶきはまるで海水のシャワーの様に俺たちに降り掛かった。

 

「ぺっぺ! しょっぱい〜! なになに!? 何があったの!?」

 

 近くにいたストレナエ達がもろにしぶきにかかってしまったが、無事な様子だ。とにかく皆を集め、落下してきた人の安否を確認したいが……

 

「か、花衣さん! 生体反応があります。しかも……五体満足です」

 

「はっ!?」

 

 喜ばしい事だが、それ以上に驚きが溢れ出た。

 

 あの落下速度で海に落ちてしまったら、余程良い体制じゃない限り、凄まじい勢いになる筈だ。

 

 例えるなら、コンクリートの壁が台風並みの速度でぶつかってくる様な物だ。水飛沫の量や勢いからしてかなりの衝撃の筈であり、とても生身の人間が耐えられる物じゃ無いはずだ。

 

 だが、レイが確かに生体反応を検知しており、俺達は固唾を飲んで海に飛び込んだ人を見ると、そこにはピンピンしていた白い服……まるで軍服の様な黒髪で髪先が蒼く、獣の耳の様なくせ毛をした男が、笑って歩いてきた。

 

「いててて……危なかった。君達、怪我は無い?」

 

 俺達は絶句した。自分よりもまさかの俺達の事を心配しており、男の体は濡れている以外何とも無かった。

 

 明らかに人間が耐えられない衝撃の筈なのに何とも無い様子がティアドロップ達の警戒心を煽り、俺を庇うようにして立ち塞がった。

 

「花衣様、下がってください。この方は只者ではありません」

 

 ティアドロップ達は有無を言わさずに武器を持ち出し、男の人は慌てて両手を上げて降伏の意を表した。

 

「ちょちょちょ待って待って待って!?!? 俺、アズールレーンの指揮官なんだけど!?」

 

「アズール……レーン?」

 

 聞いた事無い単語を呟いた俺は困惑し、ティアドロップ達も聞いた事が無いのか首を傾げた後、レイ達閃刀姫は迷わず閃刀を構え直し、今でも男を斬り伏せようとしていた。

 

「訳の分からいない単語を並べて混乱させようとするつもりですがそうは行きません」

 

「……え? 知らないの?」

 

「聞いた事も無い。嘘をつくならもう少しマシな嘘をついた方がいい」

 

「じゃ、じゃあさ! セイレーンは?」

 

「セイレーン? ……海の怪物の事?」

 

「いや、確かにそうなんだけど。ちょっと違うな……じゃあ、KAN-SENは知ってる?」

 

「かん……せん? お前、ボクのマスターに何かウイルスを感染させるつもりかっ!」

 

「その『感染』じゃなくて! 船のKAN-SENだよ!」

 

「船のかんせん? 聞いた事も無い……」

 

 閃刀姫達と男の会話には認識の食い違いが頻繁にあり、ここまで来ると不信感どころか困惑の方が出てくる。

 

 どうやら、あっちでは意味がある言葉だろうが、こっちからすれば訳の分からない単語だ。まるで宇宙人に会話でもしているかのような感じだった。

 

「とにかく、敵意は無い。本当だ」

 

「……どうしますか、花衣様?」

 

 俺は男の目を見た。

 

 ……何だか、どこか通じるような物が感じ、男の目は折れない程真っ直ぐで海のような穏やかさと力強さのある蒼い目をしていた。

 

 俺は、この目を信じてみようと思った。

 

「1度話を聞こう。俺は桜雪花衣って言うんだ」

 

「おうせ……かい? 珍しい名前だね」

 

「桜の雪に、花の衣って書いてそう言うんだ。よく言われるよ。そっちの名前は?」

 

「俺はあまg……」

 

 男は名前を言おうとした矢先、自分の口を閉じるかのように右手で口を塞ぎ、名前を言い直した。

 

「俺の名前は……マーレ・テネリタスって言うんだ。よろしく花衣君」

 

「マーレ……テネリタス?」

 

 そっちも人の事言えない程不思議な名前だなと思いつつも、俺とマーレは握手を交わし、とりあえずの自体は収束した。

 

「ところで花衣君の周りにいるこの人達は誰かな?」

 

「あぁ。ええと、こいつらは俺の……」

 

「妻です」

 

「伴侶です」

 

「将来を誓った恋人です!」

 

「本妻よ」

 

「死でもふたりを分かたれない存在」

 

 皆が一斉にとんでもない事をマーレに言い、全て恋仲だと知ったマーレは目をぐるぐると回して混乱していた。

 

「だぁぁぁ! 皆ただの……友達みたいなものだ!」

 

「ああ……うん、大丈夫大丈夫。俺も似たような境遇だからさ、分かるよ」

 

「え?」

 

「俺も周りの人が女性ばかりなんだ。あぁ、自慢してる訳じゃ無くて……とにかく、君の事を軽蔑とかはしてないから! 大丈夫!」

 

 何を分かったのかマーレはグッと親指を立てながら笑ってくれたが、とりあえずまぁ何も詮索はしないでくれて良かった。

 

 何とか打ち解けた後、早速ティアドロップが質問を投げかけた。

 

「次はこっちの質問です。貴方は何故空から落ちて来たのですか?」

 

 そう。それが一番の謎だった。マーレが何故上空から落ちても無事だったのも謎だが、それ以上に何故そうなったのか分からない。

 

 一体何がどうなったら空に落ちるという事が起きたのか、飛行機でも空中分解でもして爆散したのだろうか。

 

 携帯を見てニュースを見たが、そのような事故は無かった。

 

「あぁ〜それなんだけど……俺もよく分かんないんだよね〜」

 

「は?」

 

「なんかいきなり執務していたらさ、目の前に光が覆って、気づいたら空にいたんだ。んで落ちて、何とか着地して……今に至るって訳」

 

「なんだそれ……」

 

「とにかく、どうして落ちたのか分からないって訳。それと、こっちからも質問させて」

 

 今度はマーレからの質問を聞いた。

 

「アズールレーンって存在する?」

 

 なんか引っかかる様な質問だが、そのアズールレーンという単語は聞いた事も無い。少なくとも、この世界では存在しない物だ。

 

「ティアドロップ、レイ。お前達の世界ではどうだ?」

 

「……いえ、聞いた事もありません」

 

「同じくです」

 

 他の皆も同じような反応をしており、皆が知らないという事は、この人は精霊では無いという事なのか? 

 

 それにしては人間離れした頑丈さを持っているのが気になるが……ここはティアドロップ達の正体をバラす危険性があるが、マーレが人間なのか精霊なのかを確認出来る一言を言った。

 

「マーレ、カードになってみてくれ」

 

「カード? 何を言ってるの?」

 

 これで確信した。マーレは人間だ。

 

 精霊は必ず依代となるカードがあり、それがないと精霊はこの世界に存在できず、下手すれば命を失う。

 だけどマーレはさっき言った俺の言葉を訳が分からなそうにしていた為、マーレが精霊という点は無くなった。

 

 嘘をついてる様子も無いし、そもそも隠す必要性が無いからこれは大丈夫だろう。

 

 だが人間と確定した上でもマーレの頑丈さが説明出来ないのが謎なんだが……

 

 するとマーレは何か思い当たる節があるのか、なにか呟いた。

 

「そっか……じゃあここは俺といた世界とは別の世界なのかな」

 

「別の世界……?」

 

 どう言う事だと聞こうとしたその時、いきなりまた海の方に水飛沫が上がった。

 

 何事かと海の方に顔を向けると、有り得ない情報が目から頭に伝わり、頭が目に映っている真実を拒もうもしていた。

 

 海の上……文字通り水面に人が立っていたのだ。しかも何人も、せいぜい50はくだらないだろう。

 

 見た目からして女性だろうか。全員薄型で髪は白く、背中には何か魚の形を模した様な機械を背負っていた。

 

 そして本能が恐れている。アイツたちは危険だと。

 

「なんだあいつら?」

 

「あれは……セイレーン!」

 

「セイレーン……?」

 

 さっきマーレが言っていた奴の事か? 確かに海の悪魔と呼ぶのに相応しい恐ろしさは感じるが……それ以上に不気味さが感じられる。

 

 まるで幽霊でも見ているかのように生気を感じられず、真っ直ぐこっちに向かってきた。

 

「花衣さん、離れてて下さい。ここは私達が……」

 

 レイ達もあのセイレーンの恐ろしさを本能で感じたのか、閃刀モードへと切り替わり、戦おうとしていた。

 

 だが、それよりも前にマーレが海へと駆け出した。あまりの行動にレイ達も目を見開いて驚き、声を荒らげた。

 

「何してるんですか!? 危ないですよ!」

 

「大丈夫アイツらとは戦い慣れてるんだ」

 

 するとマーレは笑って海に向かって常人では有り得ないジャンプで海に飛び込むと同時に、マーレの背中が光だし、2つの蛇の様の様な形をした機械……いや、生物か? 

 

 だが違う。まるで生物と機械の中間のような歪な物がマーレの背中に現れ、マーレは水面の上をまるでアイススケートの様に滑っていく。

 

「アイツ……海の上を!?」 

 

「頼むぞ」

 

 機械に語りかけた後、まずマーレは右の機械の口から砲塔を伸ばし、そこから糸のように細い紫色のビームを横一線に薙ぎ払うと、その軸線上の海が爆発し、その上に立っていたセイレーンという物が爆発に巻き込まれ、そのまま爆散した。恐らく半分はやれただろう。

 

「一撃であの数を……!?」

 

 戦いに身を投じた事もあるレイはこの力を驚いていた。それはそうだ。50対1という圧倒的な戦力差を前に、たった一撃で半分にまで減らしたのだから。

 

「次は……!」

 

 今度は左の機械から小さな飛行機の様な物を飛ばし、まるで生き物の様に有機的に動き、全てセイレーンに向かって突撃した。

 

 あまりにも早い動きにセイレーンはついていけず、全て急所に当たった瞬間爆発し、飛翔体に触れたセイレーンは跡形もなく吹き飛んだ。

 

「凄い……まるでホーネットビットみたい」

 

 確かにあの武器は閃刀姫が使うホーネットビットに酷似していた。

 

 だが、その性能は圧倒的にマーレが使っていた物の方が遥かに性能が良かった。まるで飛翔体に意思があるかのような動きに、触れたら致命傷の爆破はまさに確実に成功する特攻だった。

 

 一瞬にして全ての敵を全滅させたマーレは、まるで帰り道を歩くかのように水面を歩き、この砂浜へと帰還したのと同時に背後の蛇が光となって消えた。

 

「ふぅ、怪我は無い?」

 

「あ、あぁ……あんた、本当に何者なんだ?」

 

 まるで船のように自由に水面を走り、謎の機械を使って謎の敵を一瞬にして全滅させた戦闘能力……謎が尽きない男は、大らかな笑みを浮かべてこう言った。

 

「俺? 俺はアズールレーンの指揮官。君達がいる世界とは、別の世界、もしくは別時空から来た存在……かもね」

 

「別の……時空?」

 

 話のスケールが想像出来ず、俺はその場で立ち尽くすしか無かった。

 

「そういえば、そのアズールレーンとは何なのですか? 貴方はその指揮官と仰っていましたが……」

 

 頭の整理が追いつかない俺に変わり、カンザシが上手い質問をしてくれた。

 

 そう、マーレがいつも言っているアズールレーンとは、この世界には存在しないが、マーレにとっては大事な事に違い無かった。

 

「あ〜うーん、それを説明する為には、ちょっと俺達の世界について説明しないといけないんだよね。長いけど聞く?」

 

「花衣様の耳を煩わせない程度でお願いします」

 

「まるで姉さんみたいな人だね。ええと……名前聞いてないや」

 

「花衣様の永遠の伴侶、ティアドロップと申します」

 

「OK。じゃあ、手短に話すね」

 

 俺達はマーレがいる世界についての情勢を聞いた。

 

 何でも、マーレの世界には海の9割があのセイレーンという物に長年支配されており、それをどうにかする為に、KAN-SENという軍艦の力を宿した女性が戦っているという。

 

 KAN-SENはマーレと同じ様に海の上を駆け出し、日々セイレーンと戦い、今は制海権を取り戻しつつあるらしい。

 

 そして、そのKAN-SEN達が所属しているのがアズールレーンと言い、人類の希望となる物である。

 

 つまりマーレは、そんなにKAN-SEN達を指揮する指揮官という訳だ。

 

 これだけ聞けば、まるで閃刀姫の様だった。ある意味、似た者同志なのかもしれない。

 

「ということは……マーレもKAN-SENなのか?」

 

「いや、俺はちょっと違うかな。うーん……こればかりは言えないかな。あんまり人に聞かせる物じゃ無いし」

 

 ここだけはマーレは頑なに答えようとはしなかった。今まで明るかったマーレの顔も暗くなり、本当に話したくなさそうだった。

 

「そして、あのセイレーンは多分、俺がこの世界に来た影響でこの世界に来てしまったのかもしれない。だけど、もうあれ以上は来ないと思うよ」

 

「なるほど……確かに貴方は別の世界の存在らしいですね。ですが……それにしては随分とは冷静ですね」

 

「いや〜実は俺の世界にはちょくちょく別世界の人が来るんだよ。なんだっけ、超次元? から来た女神達や、ホロ……なんだっけ? まぁ、そこから来た人と、あと怪獣とか現れたし」

 

「いやどんな世界なんだ」

 

 いくらなんでもハチャメチャ過ぎるだろ、まるでコンビニに行くかのように気軽に別世界への干渉をしている為か、話のスケールがちょっと落ちた様にも感じられた。

 

「でも俺から別世界に来るのは初めてだなー。ちゃんと帰れるかな〜」

 

 危機感の無い心配事だが、マーレからしてみれば状況はかなり深刻な筈だ。帰る術も分からず、最悪この世界に一生居続け無ければならないかもしれないのに、マーレは不安すら無かった。

 

「怖くは……ないのか?」

 

 俺だったら怖くて震えが止まらないと思う。マーレの話を聞く限り、マーレとKAN-SENの関係は、俺と精霊達と同じような物だった。

 

 切っても切れない繋がりがあり、今まさにそれが断ち切られようとしている。俺だったら早く帰りたくて、離れ離れになるのが嫌でたまらない。

 

 もしそうなったらと思うと堪えきれず、俺はマーレに説いた。

 

「怖いよ。当たり前だよ」

 

 するとマーレは隠す事無く本心を言った。だが、それとは裏腹に彼は笑っていた。

 

「でも、俺の世界に来た人は皆こんな感じの思いをしたんだ。だけど帰れた。だったら俺も帰れるんじゃ無いかなって思ってる」

 

「帰れる保証は無いのに……か?」

 

「ここで止まってたって仕方ないよ。止まるよりも、1歩ずつ前に向いて歩く。例え暗闇の中だとしても、1歩歩けば1歩進めるんだから」

 

「……強いな、マーレは」

 

「そうでも無いさ。さて、次は君達の事を教えてくれ無いかな? さっき君達が言っていた、精霊とかの話も聞いてみたい」

 

「そうだな。俺達は……」

 

 今度は俺がこの世界の事を話した。

 

 他にも六花達の事、閃刀姫達の事、こことは別の世界がある事、そして……今俺の周りの状況の事全てを話した。

 

「そうか……君も、誰かのために戦っているんだね」

 

「あぁ。まだ敵が何者かすら分からないけどな」

 

 正体不明の敵……そして、その犠牲になってしまった人だっている。俺はそいつの為にも、何も知らない人達を巻き込まない為にも、戦うと決めたんだ。

 

「君も充分強いよ。誰かのために命をかける……それはとても真似は出来ないし、君の強さの証でもある。そして、君には頼もしい仲間がこんなにもいるしね」

 

 マーレは俺の後ろにいる皆を見て、どこか懐かしそうにしていた。

 

「君には仲間がいる。想ってくれる人がいる。それを忘れちゃダメだよ。俺も仲間が居たから、こうして今生きているから」

 

「どういう事だ?」

 

「……こっちの話さ。それよりも、その遊戯王ってカードゲーム、こっちの世界でもあるよ」

 

「えっ!?」

 

「うん。裏のイラストもこんな感じだったし、同じものだと思う」

 

「嘘だろ……?」

 

 まさか全く同じカードゲームが別の世界でもあったのか……まさかとは思うがそっちにも精霊の世界があるのだろうか、恐るべきアズールレーンの世界と言うべきなのだろうか……? 多分、一番驚いたと思う。

 

「あーそういえば俺がこの世界に飛ばされた時、なんかカードが光った様な気がする。多分それが原因かな」

 

「という事は、同じカードを使えば元の世界に戻れるとこいう事ですかね?」

 

 レイの言う通り、それが一番可能性としては高いだろう。俺はマーレにどんなカードだったか聞くと、遊戯王をあまり知らないマーレにとっては難しい質問だった。

 

 マーレから聞いた情報では、枠が少し茶色。おそらくは効果モンスターであり、ローブ姿の人型だったという。

 

 だが俺も遊戯王は始めたばかりで1年も経っておらず、なんならまだ俺は六花関連や閃刀姫関連ぐらいしか使ってない。

 

 これだけの情報でも恐らく該当するカードが多い為、こうなったらある人に頼むしか無かった。

 

 その頼む人というのが……店長さんだ。カードショップの店長さんなら色んなカードの事を知っているし、多分抽象的な特徴でも知っているのだろう。

 

 俺達は行きつけのカードショップへと足を運ぶ事にした。俺は皆をカードに戻すと、マーレは目を丸くして驚いた。

 

「ええええ!? えっ!? 皆はどこ行ったの!?」

 

 あたふたと周りを探すマーレが少し可笑しくて笑ってしまい、俺は笑いながらカードを広げた。

 

「大丈夫。ちゃんとここに居るから」

 

「え……ええ……?」

 

「そういう存在なんだ。説明しただろ?」

 

「は……はは、世界は広いなぁ」

 

 普段では絶対みれない光景にマーレは感激しつつも戸惑い、俺達はカードショップへも足を運んだ。

 

 初夏の日差しの中、足を運ぶ最中、マーレはずっと街並みをずっと眺めていた。街並みと言うより、歩いている人々の顔を見ている様な気がした。

 

「そんなに珍しいのか?」

 

「ううん。似たような街並みは俺の世界でもあるよ。ただ、平和だなって」

 

 マーレは街並みと歩いていく人々を眺め、立ち止まった。

 

「確かに俺の世界はちょっとは平和になったけど、まだ皆不安がっているんだ。セイレーンが居る限り、自分達に危険が無いという事は無い。皆、心の奥底では怯えながら暮らしているんだ」

 

「……マーレ」

 

「だから、ちょっと羨ましい。こんなふうに心から笑って過ごせてる日常があるって事が」

 

「……気休めなだけかも知れないが。マーレならきっと、そんな日常が作れる筈だ」

 

「ありがとう。さ、早くそのカードショップって所に行こう」

 

「あぁ」

 

 何だか少し、マーレという人間が分かったような気がした。自分よりも他人の事を優先し、他人の為に力を尽くすその姿はまるで昔の俺、カイムのような奴だなと思った。

 

 道を歩き、ようやくカードショップがあるビルへと辿り着き、ビルの中の狭い階段を登り、小さい扉を開けてカードショップへと入る。  

 

「ほい、じゃあ【六花来々】の効果でえんぺんをリリース」

 

「あぁ〜私のえんぺんちゃんがぁぁ!」

 

「そんで【六花聖ティアドロップ】でダイレクトアタックな。これで俺の勝ちだ」

 

「むぅ……お兄! もうちょっと手加減してよ〜!」

 

「ふわんだりぃず相手に手加減したら俺がやられるわ」

 

 向こうでは白髪の少年と銀髪のツインテールの長身の女性がデュエルをしていた。

 

 長身の女性があの少年の事を兄と言っていたので兄弟とは思うが……男の方は男性とは思えない程の美形だった。

 

 それはさておき、別世界にでも入ったかのような雰囲気にマーレは飲み込まれ、マーレはキョロキョロと店内を見渡した。

 

「おぉ……なんか沢山のショーケースに色んなカードがあるね。これ全部遊戯王なの?」

 

「あぁ。ちょっと見ていく?」

 

 マーレは頷き、ケースの中のカードを見つめた。

 

「えっ、カード1枚に10000円!? こっちはもっと高い! あっ、これ見た事あるやつだ!」

 

 驚きの連続にまるで子供の様にはしゃいでるマーレを見ると、俺が初めてここに来た事を思い出す。

 

 俺も最初はそんな風に驚いていたなぁ、カード1枚に数万円はするし、強いカードはノーマルでも1000円以上はする異常さに驚いていた。

 

 まぁでも、その後たまたま出会った六花聖ティアドロップのカードからティアドロップが出てくるという、人生で1番驚いた出来事もあったし、懐かしい。

 

 そろそろマーレが満足したのを見計らい、俺は早速店長さんに話を聞いた。

 

「あらいらっしゃい。その軍服見たいな人はお友達?」

 

「はい。マーレって言うらしいです」

 

「マーレ? 海って意味かしら」

 

「あ、よく知ってますね」

 

「へぇ、そんな意味があったんだ。そんな事より、店長さん。こんなカードを知ってますか?」

 

 俺はマーレが話してくれたカードの特徴を店長さんに伝えた。

 

 だけど、店長さんは悩んでいた。

 

「うーん……ローブだけじゃ絞れないわね。もっと何か特徴は無い? ポーズとか、イラストとか、レベルとか」

 

「ポーズ? なんか右手を上げてたような……」

 

「右手を? じゃあこれかしら……?」

 

 店長さんはタブレットを操作し、1枚のカードを見せてくれた。

 

 カードの名前は……ディメンション・アトラクターというカードだった。

 

「店長さん、これどういうカード何ですか?」

 

「最強の手札誘発カードよ。これを出されるだけで殆どのデッキが機能停止するという準制限カードよ」

 

 確かに書かれている事がとんでもなく強い。

 

 墓地にカードが無い状態にしか使えないが、発動すれば次のエンドフェイズまで墓地に行くカードが除外されるという、とんでもないカードだ。俺の六花と閃刀姫も墓地のカードを使うから、これを発動されると苦しいかもしれない。

 

「て、手札誘発とか準制限って……どういうこと?」

 

「まぁ、そんなに深くは考えなくて良いさ。店長さん、このカード1枚貸してくれませんか?」

 

「え? うーん……良いけど、ちょっと待っててね」

 

 すると店長さんはショーケースの中にあるディメンション・アトラクター1枚を取り出し、俺に貸してくれた。

 

「言っとくけど、傷とか汚したりしたら買ってもらうからね?」

 

「き、気をつけます。じゃあマーレ、ちょっとこっちに……」

 

 今日は人が少ないおかげで目立たない所も多く、俺はマーレをそこに連れていき、ディメンション・アトラクターのカードを渡した。 

 

 早速マーレはディメンション・アトラクターのカードをかざしたりしたが、何も反応が無かった。

 

「あ、あれ? おかしいなー。確かに俺が見たカードはこれだったんだけどなぁ」

 

「どういう事だ……? やっぱり普通のカードじゃダメなのか?」

 

 予想出来た考えではあったが、これが当たって欲しく無かった。マーレが元の世界に帰れる手段だと思ったが、振り出しに戻ってしまい、どうする事も出来ない状況になってしまった。

 

「ごめん、マーレ……」

 

「ん? 大丈夫だよ。でも困ったなぁ……うーん、とにかく喉乾いたし何か飲み物でも……ん?」

 

 マーレが上着のポケットをまさぐったその時、マーレはそのポケットからある物を取り出した。少し縦長い四角形のケースは、間違いなくデッキケースだった。

 

「ん? こんなケースあったっけ?」

 

 マーレがデッキケースを開けると、中身は確かにデッキだった。

 

 マーレがデッキを机の上に広げて見せると、マーレのデッキはなんとティアラメンツだった。

 

 ティアラメンツと言えば、最近になってまた規制のかかった強力なテーマであり、噂では規制されてもまだ強力たいうある意味恐ろしいテーマだ。

 

 そんなカードをマーレは知らずに持っており、マーレ自身も覚えが無い様子だ。

 

「ここに来る時にいきなり出てきたのかな……あ、これ俺と同じ名前だ。【絶海のマーレ】だって。なんかカッコイイね」

 

「……もしかして、それを使ってデュエルをしたら良いんじゃ。いつの間にか持っていたんだろ? なんか怪しいいと思うが」

 

 状況的な判断だが、もうこれしか考えられる事が無い。さっきみたいに成功するとは限りないし、なんの根拠も無い言い分だが、マーレはそれを快く受け入れてくれた。

 

「うん、じゃあやってみようか。……って言われても、俺ルールとかあんまり知らなくてさ」

 

「じゃあ、店長さんに話して見たらどうだ? あの人だったら分かりやすく説明してくれる筈だ」

 

 俺は店長さんの方に顔を向けたが……その店長さんは先程デュエルをしていた長身の女性と話し込んでおり、どうやら時間がかかりそうだ。

 

「……うーん、長そうだね」

 

「だったら、俺が教えようか?」

 

 困っていた所に突然さっきの女性とデュエルをしていた女性……いや、男性が俺達の前に現れた。

 

 チラりと見た感じ女性っぽいなと思ったが、改めて近くで見ると男性っぽさも感じられ、いわゆる中性的な顔立ちだった。

 

 白のポニーテールの後ろはカーテンのように広がっており、毛先がマーレと同じ様に蒼く、右目が海のように蒼く、左目が草原のような緑色をしたオッドアイだった。

 

 服も全体的に白で統一されており、白いロングコートには、六花の雪模様が散りばめられていた。

 

「えーと、君は?」

 

「あぁごめん。なんかそっちの黒髪の君がルールが分かんないって聞いてね。俺の妹が店長にアドバイスを貰ってるから聞きづらそうにしているから、お詫びにとね」

 

「本当に!? 初対面なのにありがとう! あ、俺はマーレって言うんだ? で、こっちが花衣君!」

 

「知ってるよ」

 

「え?」

 

 オッドアイの青年は本当に俺達のことを知っているかのような目をしており、俺とマーレは身を引き締めた。

 

「……あぁ、違う違う。俺が知ってるのはそっちだよ。花衣君はこの前テレビに出てたからね。ちょっとした有名人なんだよ」

 

「テレビ? へぇ、そうなんだ」

 

「あ、あぁ……まぁ」

 

 なるほど、ロマンス・タッグデュエルの時に見ていたのか……。

 

 それにしても、まるでマーレが別の世界から来た事を知っている様な説明口調だったのは気の所為だろうか。

 

「……ティアドロップ、あの人、俺の事見えてるか?」

 

『いいえ、あの人は私達の事を見えていません』

 

「じゃあ……ウェルシー達や精霊とは無関係って訳か」

 

 どうやら、俺の考えすぎな様だ。心の中で彼に謝罪をしながら、俺は彼の名前を聞いた。

 

「ところで、貴方の名前は?」

 

「俺? 俺の名前か……」

 

 すると彼は少し考え込みながら、こう答えた。

 

「白でいいよ」

 

 名は体を表す。これ程それが似合った言葉は見つからず、白は不敵に笑った。

 




特別キャラ紹介

マーレ・テネリタス(17)

花衣達や精霊達がいる世界とは別世界から来た謎の青年であり、アズールレーンという組織の指揮官。
実直で多らかな性格であり、KAN-SEN達からは慕われており、指揮能力も高く信頼されている。

そして彼自身、KAN-SENにしか備わってない艤装があり、その性能や出生は謎に包まれている……

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