六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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幕間が終わり、いよいよ本編の再開です。

今回の章で物語が大きく動き出すので、最後までお楽しみくださいませ。


第7章 暁闇
憩いの場


 

 カランと鈴の音がなる扉を開けると、そこは落ち着いたレトロの雰囲気が心地が良いカフェだった。

 

 店の上には清潔な空気を循環するためのシーリング・ファンが回っており、誰か描いたのか分からない絵画が飾られ、不思議な居心地にさせた。

 

「うぉぉ……知る人ぞ知る見たいな感じの店だな」

 

 隣にいた焔がそわそわしながら誰もいないカフェを見渡すと、カフェのキッチンの所から明かりが漏れ、そこからコツコツと足音が大きくなり、そこに居た人が露になった。

 

 少し明るい金色と宙の様な色を合わせた髪をした男性、彼方さんが、ここの制服なのかエプロン姿で出迎えに来てくれた。

 

「やぁ、いらっしゃい。花衣君、焔君、空君」

 

「彼方さん。今日は店を貸してくれてありがとうございます」

 

「良いよ良いよ。店長さんも今日は休みにして貸してくれただけだしね。なんなら、廃棄予定の物を使って何か作ろうかい?」

 

「マジか! じゃあ大盛りメニューおねしゃす!」

 

 タダ飯がありつけられると理解したのか、焔は早速席に座ってふてぶてしく注文した。

 

 見ているこっちが恥ずかしくなってしまうが、彼方さんは焔の注文を快く聞いてくれた。

 

「花衣君と空君はどうする?」

 

「え? えーと……じゃあ、おすすめで」

 

「適当で構いません」

 

「了解。水の入ったピッチャーがカウンターにあるから、それを飲んでくれ。俺はここのキッチンで料理しながら花衣君の話を聞くよ」

 

 カウンター越しから見えるライブキッチンで彼方さんは手早く料理を開始しようとすると、俺のデッキケースから1枚のカードが光だし、光は彼方さんの隣に飛び出した。

 

 光が飛び出した先にティアドロップがキッチンに姿を現すと、包丁を持った彼方さんを見ていた。

 

「失礼、花衣様の料理は私が作ります。他の方が作った料理を食べるのを見るのは嫌ですので」

 

「おい、ティアドロップ……」

 

「まぁまぁ、別にいいよ。廃棄予定の食材はそこにあるから、使っていいよ」

 

「では、失礼します。待っててくださいね、花衣様」

 

「……あぁ、分かったよ」

 

 割り込んだティアドロップも早速調理に入り、俺達も俺達でここに来た目的を果たそうとした。

 

「そんにしてもお前、春頃から【六花】達と一緒にいたのかよ。くー羨ましいな!」

 

「それはともかく、俺達に話て貰うぞ。お前が一体、今どういう状況になっているのか」

 

「……あぁ」

 

 俺がここ、彼方さんが働いているカフェに足を運んだのは、今の俺の現状を焔達に話すと決まったからだ。

 

 数日前、オールイート・カーニバルという祭典で俺、彼方、空の3人で行った時、たまたま出会わせた世界的アイドル、ミスティック・メロディーのアリアさんと出会い、そこから3対3のライブデュエルというものをした後、事件は起こった。

 

 突如として現れた謎の勢力により、俺達だけではなく、一般人の人達にも被害が出てしまい、あやゆく俺や焔達は最悪命を落とすかも知れなかった。

 

 そして、その事件を起こした勢力の中には……見下がいた。

 

 見下とは腐れ縁というか、何かの因縁めいた物があったが、ここまでとは思っていなかった。

 

 しかも見下は闇を纏った不気味なカード【主義大罪(エゴイスト)】という特別なカードを使い、デュエルを挑んでは俺を苦しめた。

 

 だが、デュエルの最中に新たな閃刀騎カードを手に入れた事により何とか勝利を収めたが……その後がとんでもない出来事の繰り返しだった。

 

 まず……見下の消滅だ。

 

 何の理由から分からないが、見下の仲間であるアルムという女性によって見下は……命を奪われた。

 

 燃える体に焼ける肉がまだ脳裏にこびりついており、忘れる事なんて出来なかった。

 

 そしてその後、ウィッチクラフト・マスターヴェールが現れ、見下達がライブ前会場を襲った事実を無かった事にしており、その際時間が巻き戻ったのだ。

 

 だから、誰もライブデュエル後の惨劇を覚えてない……いや、寧ろそこに辿り着いてはおらず、その惨劇を知っているのは俺やティアドロップ達、そして焔達だった。

 

 ……そして、焔達が謎の勢力、つまりウェルシーが率いる組織に首を突っ込んでしまった以上、俺は焔達に知っている事を話さなければならない。

 

 だから今日、ここに居るのだ。

 

「じゃあ、聞かせて貰うぞ。お前はアイツらの事をどこまで知っている」

 

「それは……俺にも良く分からないんだ。だけど、アイツらは俺を狙っていて、目的の為なら関係ない人を平気で巻き込む奴らだってことは分かる」

 

 最初に接触したのはポルーションという男であり、毒を使ってティアドロップやレイ、そしてそこにいた心咲ちゃんと言う子供や自然まで命を奪いかけようとしていた奴だ。

 

 アイツも見下と同じ闇を纏ったカード、【汚染大罪(ポルーション)】というカードを使い、俺を苦しめた。

 

 何とかしてデュエルには勝ったが、アイツはまだ余力を残してそうな印象だった。

 

 続いて接触したのはウェルシーという、恐らくこの組織のリーダー格であり、俺の事を異常的な崇拝をしている女性だ。

 

 とにかく俺を優先して動いており、俺に対して偶像的な思想を抱いていた。

 

「……本当に嫌な女です。花衣様に下らない妄想を押し付けているのですから」

 

 そう嫌悪したティアドロップはフライパンに溶かした卵を流し込み、弱火でじっくりと加熱していた。

 

「まぁ……ウェルシーに限らず、殆どの奴が俺に忠誠心の様な物は感じてるけどな」

 

 今確認している所だと、ウェルシー、ポルーション、ジェネリア、アルム、そして焔達の話だと、ディペンという女性までいるらしい。

 

「ざっと5人ぐらいか。うへぇ、一体的は何人いるんだろうな」

 

 確かに焔の言う通りだ。ウェルシー達の目的どころか、規模が分からないのが不安の一因だ。

 

 ふとどれくらいの規模が考えていると、彼方さんが調理を終え、黒い鉄板に特大のハンバーグとサラダを盛り付けた料理と、米が山盛りの茶碗を焔に渡した。

 

「おぉ! 美味そう! いったっきゃーす!」

 

 焔は早速ハンバーグを勢い良く食べ、あまりの美味しさなのか箸が止まらず加速していた。

 

 いや、焔はいつもこんな感じだ。俺の家に来て母さんの手料理を食べた時も大体そうだったし。

 

「お、いい食べっぷりだね。……花衣君の話、多分規模は7人じゃないかな?」

 

「7人?」

 

「俺もそう思うな」

 

 どうやら、彼方さんと空は同じような考えでその結論に至ったそうだが、俺は見当もつかずにいた。それを見兼ねた彼方さんは、次は空の賄いを作りながら話してくれた。

 

「花衣君、君が戦ってきた【主義大罪(エゴイスト)】と【汚染大罪(ポルーション)】には、ある共通点がある。その共通点が恐らく、七つの大罪だろう」

 

「七つの……大罪?」

 

「ん? でもさぁ、七つの大罪ってあれだろ? 嫉妬とか、憤怒とかのヤツ。でもそんなの出てきてねぇぞ?」

 

「確かに有名な物はそれだけど、実は新しく出来た物があるんだ」

 

 新しい七つの大罪……? 焔と俺は疑問を浮かべ、空が話してくれた。

 

「今までの7つの大罪はやや個人主義的な側面があったため、これまでとは違う種類の大罪もあるということを信者たちに伝える為に作ったそうだ。個人では無く、社会に対しての罪という事だ」

 

「それが……敵が7人って事の根拠か?」

 

「あぁ。【環境汚染】【遺伝子改造】【人体実験】【麻薬中毒】【社会的不公正】【貧困】【過度な裕福さ】この7つが現代の大罪と言われてる」

 

「そして話を聞く限り、見下は恐らくだが社会的不公正の力を持っていたんだろう」

 

 確かに納得出来る所はあった。環境汚染という所もポルーションに一致しているし、そういえばウェルシーという名は、裕福という意味がある。

 

 確かに筋は通っていた。

 

「そして、見下を消しては雀さんを味方につけようとしている辺り、まだ仲間は揃っていない筈だ」

 

「揃ってもいないのに何で仲間をやっちまったんだろうな」

 

「……俺に負けたから? いや、それじゃあポルーションにも同じ事が起こると思うし」

 

 何かヒントは何かとこれまでの事を思い返すと、アルムの言葉を思い出した。

 

 _アイツの罪は、結局は自分の為にしかならなかった。世界を蝕む程じゃ無かったという事だ

 

「……自分の為に力を使ったから?」

 

「だから見下を……やったのか?」

 

 アルムの言う事が正しければ、自分の為にしか力を使わなかったから消した。という結論が辿り着いてしまう。

 

「だが目的は分からないな。世界を蝕む……という点がヒントになりそうだが」

 

「何だ何だ? 世界征服でもしようってのか?」

 

「良い線は行ってると思うけどね」

 

 焔の言う通り、世界征服を目論んでいるのだとしたら、やり方が回りくどい様な気がする。

 

 ウェルシー達は恐らく、町の1つや2つを破壊する所では無い力を一人一人持っている筈だ。その気になれば、全世界を破壊する事だって可能な筈だ。

 

 それなのに、今まで表立って行動しなかったのは何故だろうか。何かを待っているのか……それとも……

 

「まぁ、ウェルシー達の目的が君という事は確定だろうけどね」

 

「そうですね……俺とアイツらは、一体なんの関係が……」

 

 アイツらの俺に対する態度や目的を悩み、考えていると、俺の前に出来たての薔薇の様な形をしたオムライスが出てきた。

 

「花衣様、悩んでいるばかりではお体に障ります。まずは昼食をお食べください」

 

「ティアドロップ……」

 

「ティアドロップの言う通りだ。この事は多分これ以上話してくれても俺たちじゃ分からないだろうし」

 

「……はい。じゃあ、頂くよ」

 

 ティアドロップが作ってくれたオムライスを食べようとスプーンを探したが、スプーンが机には無く、ティアドロップの手にスプーンがあった。

 

 するとティアドロップはスプーンを使って一口分オムライスをすくうと、俺に差し出した。

 

「はい、アーンして下さい。花衣様」

 

「え? い、いや……」

 

「嫌なのですか? 何故ですか? いつもやっていると言うのに」

 

「いつも!?」

 

 ティアドロップの爆弾発言に焔と空は驚き、俺は恥ずかしさでわなわなと体が震えた。

 

「て、ティアドロップ! 皆が見てるからその……」

 

「関係ありません。見ているのであれば見せつければ良いのです。私達の関係は誰にも邪魔されず、永遠に続く物だと。さぁ、早くお口を開けてください」

 

 口を閉じてるのにも関わらずにねじ込もうとしているティアドロップの圧は大きくなりつつあった。

 

「……何故、口を開けてくれないのですか? 私の料理が食べたく無いのですか?」

 

 ティアドロップの目に光が点っておらず、俺にとっては日常茶飯事だが、これを初めて見た焔達は背筋が凍りつき、俺とティアドロップの間から一気に距離を取った。

 

「嫌です……嫌ですよ? 貴方の為に作ったのに、捨てる事も貴方以外の人に食べさせるのは嫌です」

 

「……分かった、分かったから」

 

「はい! じゃあお口を開けてください」

 

「そうはさせませんよ!」

 

 諦めていた瞬間、レイが俺とティアドロップの間を割って入ると、スプーンにあったオムライスを一口で全て食べてしまった。

 

 その事実を目の当たりにしたティアドロップは怒りを超えて冷酷な何かへと変わり、ティアドロップの怒りが溢れるかのようにこの店の空気が冷たくなった。

 

「貴方……何をやっているのですか? それは花衣様の為だけに作った物ですよ?」

 

「毒味ですよ! 貴方が花衣さんに媚薬とか盛ってないか検査する為です!」

 

「そんな馬鹿な事しなくても花衣様の心と体は私の物です。邪魔しないでください。……あ、彼方さん。替えのスプーンはどこですか? 他の女の雑菌や唾液が付いたスプーンを花衣様に使わせる訳には行きませんので」

 

 そう言ってティアドロップは持っているスプーンを凍りつかせ、キッチンの洗い場へと放り投げた。

 

「あ、あぁ……スプーンとかはそこに置いてあるぞ……」

 

 彼方さんはキッチンとカウンターを繋ぐ所を指を指し、ティアドロップは直ぐさま新しいスプーンを取った。

 

「ありがとうございます。では花衣様、またお口を……」

 

「ずるいです! 私も花衣さんにあーんしたいです! こうなったら……」

 

 レイもまた新しいスプーンを取り、ティアドロップと同じようにオムライスを1杯分すくい、俺に差し出した。

 

「はい、花衣さん! 口を開けてください! 私のだけを食べてください!」

 

「なっ、私が作った物ですよ!?」

 

「世の中先行有利です! さぁ、早く!」

 

「いいえ、私のだけを食べてください!」

 

「い、いや……そんなに食べられは……」

 

 しかし2人とも同時に俺の口にスプーンをねじ込ませ、確かに美味いが口の中が苦しく、息ができない時が続いた。

 

「愉快なもんだな」

 

「チクショー……羨ましいぞ!」

 

「モテる男は辛いね」

 

 そんな野次馬3人共はこの様を肴の様にして水や料理を食べており、面白がるように笑っていた。

 

 特に焔はおもむろにムカつく笑い方してるから尚更腹が立つ。

 

「しかし、たった数ヶ月の仲なのに距離が近いな」

 

「数ヶ月ではありません。私と花衣様は時を超えた仲なので」

 

「いやいや、私こそ切っても切れない赤い糸で結ばれていますから」

 

「「むむむむ……」」

 

「そうか、確か君達は花衣君の過去……いや、前世を知らないんだな」

 

「前世?」

 

「花衣君、見せてみたらどうだ?」

 

 彼方さんに言われ、俺は六花精華カイリと、閃刀騎ーカイムのレゾンカードを2人に見せた。

 

「お、お前のレゾンカードだな。これがどうかしたのか?」

 

「これ、俺なんだ」

 

 たった二文の言葉は2人を固まらせ、一人は目を丸くして口を開け、一人は思考を張り巡らせてこの言葉を真意を探ろうとしてメガネを外し、こめかみを押さえた。

 

「……すまん、もう一回言ってくれ」

 

「この2人は俺の前世らしいんだ。俺自身、この時のことを覚えてないけどな」

 

 こう言うが2人はどうも信用していなかった。無理もない、いきなりデュエルモンスターズのモンスターが俺の前世であり、しかもカイリとカイムはどちらも顔を隠している。

 

「証拠ならありますよ」

 

 するとレイが助け舟を出すかのように俺がカイムだった時の写真を見せてくれた。

 

 写真には中世の様な街並みを背景に、レイと俺のツーショットばかりの写真をこれみよがしに見せていた。

 

「おぉ……確かに、花衣と同じ顔だなー。何でレイとのツーショットしかないんだ?」

 

「………………さぁ?」

 

「絶対これしか持ってきて無いだろ」

 

「えへへ」

 

 コツンと一発レイの額に指をつつき、話を続けた。

 

「だが花衣とは随分と雰囲気が違うような気がするな……カイリの方は持ってないのか?」

 

「ありますよ。こちらになります」

 

 するとティアドロップが見せたのは、穏やかにお茶を嗜むカイリの姿や、木陰で昼寝しているカイリの姿だった。

 

「おぉ……髪色とか違うけど顔は花衣だな。でもなーんか雰囲気が違うんだよなぁ。カイムの方は明るいし、カイリの方は大人しい感じだな」

 

「正直、顔が似ている他人と言うぐらいしか思えないな」

 

「そう……か」

 

 2人の意見に納得している自分がいた。確かに、俺も初めてまともに過去の写真を見たが、カイリやカイムは俺とは雰囲気がガラリと違っており、本当に前世なのかと疑うぐらいだ。

 

「だが、俺達には分からない事を感じてこうして前世を超えて出会い、愛してるんだろうな。信じてみよう」

 

「俺も俺も。つーか、面白いな! お前が前世の存在のカードを使ってるなんてな!」

 

「焔……空、うん、ありがとう」

 

「んで? これで話しておきたい事は言った感じか?」

 

「いや、まだある。レゾンカードの事だ」

 

 すると空は、レゾンカードであるイグニッション・ファルコンを取り出した。

 

「あーそっか。俺らのレゾンカードって、花衣の事どうにかする為のカードって、ウェルシーが言ったんだっけ? 信じていいのかよ」

 

 焔達は自身のレゾンカード、不知火の太刀、イグニッション・ファルコン、銀河心眼のカードをテーブルに置いた。

 

 レゾンカード……このデュエルモンスターズを運営しているレゾンという組織が無作為に決闘者を選び、世界にたった1枚のカードを与える超レアカードとして認知されているのだが、その実態は俺の抹殺を目的としたカードでだった。

 

 だが、焔はウェルシーから言われた情報と聞いていまいち信用出来なかったが、こればかりは信用しても良いだろう。試しに俺は焔の不知火の太刀に触れようとすると……いきなりカードから炎が燃え盛り、俺の接触を拒んだ。

 

「うぉっ! 俺のカードから炎が!?」

 

「俺が触れるとこうなるんだ。まるで俺を拒むようにな。……だから、ウェルシーの言う事は信用しても良いと思う」

 

「だとしたらお前のカードは何なんだ。レゾンがお前の事を倒す為に作られたカードだったら、お前がそのカードを持ってるのは矛盾してるだろ」

 

 空の言う事は最もだ。俺を倒す為に作られたカードを、何故俺が持っているのかと問われると、答えられるのは1つしかない。

 

「このカード、カイリとカイム……いや、それだけじゃない」

 

 俺は六花聖華カンザシや、エクシーズモンスターの閃刀騎等、まだ誰にも見せた事が無いレゾンカードを見せ、事実を伝えた。

 

「このカード達は、デュエル中突然出てきた物なんだ。カイリやカイムだってそうだ。俺は一度だって、レゾンからカードを渡されてない」

 

「つまり、花衣君はカードを作り出す事が可能なのかい?」

 

「いえ、元々これは別のカードだったので、作ると言うよりかは……変化した。って言う方が正しいと思う」

 

「どっちでもすげえよ。じゃあお前、好きなように好きなカードを変えれるのかよ」

 

「いや、俺にだってどうしてこんな風になるのか分からないんだ。それに、たとえ好きな様にカードを作り替える事が出来るようになっても乱用はしないさ」

 

「ほへ〜真面目だなぁ。でもよぉ、レゾンが花衣を倒したいのは分かったんだが、回りくどくねぇか? 何で花衣を直接やらねぇんだよ」

 

「花衣の周りにはティアドロップ達がいる。直接的な介入は出来ないんだろう」

 

「当然です。花衣様は必ずお守りしますから」

 

 空の言う通り、ティアドロップ達が居るから直接的な介入は難しいだろう。

 

「となると……残る謎は、花衣君の正体と言う事になるけどね」

 

 3人は一斉に俺の方に顔を向けた。

 

 確かに、ここまでして俺を倒そうとするレゾンが気になるが、それ以上にレゾンがここまでやる理由になっている俺の正体も、俺自身も気になっている。

 

 分かっているという事は、俺はウェルシー達と何か関連があるという事だ。アイツらの上に立つ存在だったのか、あるいはまた別の物なのか、予想は浮かぶが、どれも良いものでは無かった。

 

「……なぁ、皆はもし俺がバケモノだったら、迷わず俺を殺してくれるか?」

 

 この言葉を発したと同時に、俺が黒い龍に姿を変えた事を思い出した。

 

 人の形よりも数倍の大きさの手足、鋭い爪に、冷たくて黒い鱗。

 

 自分が自分で無くなってしまうあの感覚は、今でも鮮明に覚えている。

 

 ただそこにあったのは、目の前の奴らを全員ねじ伏せたいと思うドス黒い感情だけだった。

 

 もしも、アレが俺の正体であるのだとしたら……俺は人では無い。

 

「……最悪、ここで俺を消しても」

 

 そして次の瞬間、焔の手刀が俺の脳天に直撃し、世界が揺れるような衝撃で体がぐらつき、目もチカチカしてしまった。

 

「いっった……!」

 

「バーカ。もしお前がやばい事になってもこうして殴って止めてやるよ。人殺しになりたくねーしな」

 

「同感だ。だがそれ以前に友人として全力で助けてやる」

 

「2人とも……」

 

「だが、花衣君がデュエルを続けるのは少し危険だな。2人ともにレゾンカードを渡したと言う事は。君達の関係を把握しているはずだ。そうだとしたら、花衣君と面識がある人達にレゾンカードを渡し、戦わせる舞台を用意するはずだ」

 

「戦わせる舞台?」

 

「レゾンカードを持っている者だけが参加出来る大会とかね」

 

 彼方さんの推理には納得出来る物が多かった。

 

 確かに、レゾンカードを使用してのデュエルで俺に勝利する事が、俺の抹殺の条件だとしたら、レゾンは必ず俺の周りの奴らにカードを渡すだろう。

 

 証拠として、焔と空にもレゾンカードを渡している。雀だってそうだ。という事は、花音や霊香、そして俺が出会ってきた人達の中にも、レゾンカードを手に入れる人は必ず現れる。

 

 そして、彼方さんの言う通り、レゾンカードを持っている者だけの大会を開催し、必ず俺に出場させるつもりだろう。それが1番確実なのだから。

 

「んなもん無視すればいいんじゃないか?」

 

「いや、下手をすれば花衣のお母さんである才華さんを人質にとる可能性がある。迂闊には断れないな」

 

「ちっ、汚ぇ奴らだぜ」

 

「だから花衣君。もしも君が生きたいと思っているのなら、強くなるしかないな」

 

「強く……か」

 

「でも、君には仲間がいるだろ? ここにも、そっちにも」

 

 彼方さんは焔達とティアドロップ達に指を指した。

 

「そうですよ。私達はいつでも貴方の味方です」

 

「そうです。私にどーんと任せてください!」

 

「突っ込みすぎて玉砕しないようにして下さいね」

 

「そっちこそ足を引っ張らないで下さいよー?」

 

 また口喧嘩してるが、互いの事を心配している言葉だ。ティアドロップとレイだけじゃない。俺のこのデッキには、もっと沢山の仲間がいる。これだけでも俺は幸せ物だ。

 

「んで、これで喋りたい事全部終わった感じか?」

 

「……あ、そうだ。ちょっと話がそれるけど、渡したい物があるんだ」

 

 俺はとある招待券を皆に見せた。

 

 その招待券とは、マリンセスビーチというリゾート地の招待券であり、ティアドロップがピックアップデュエルの優勝賞品として受け取った物だ。

 

 マリンセスビーチとは、かなり有名なリゾート地であり、一年中適温で底が透き通る程美しい海が広がる場所だ。

 

 その近くにあるホテルも、まるで街一個相当の設備となっており予約待ちが数年となっている。

 

 だが、ティアドロップが勝ち取った招待券には特別待遇があり、これさえあれば何時でも好きな時に予約出来る代物だ。

 

 これを売りに出せば数十万円は下らないだろう。

 

「おぉ〜良いね。それにお前の誕生日と被ってるし、良いじゃねぇか」

 

「断る理由は無いな」

 

「彼方さんもどうですか?」

 

「いや、俺は別の手段で行くよ」

 

「別の手段?」

 

「実は花音さんが先にカレンさんを誘っていたらしいが、カレンが『貴方への施しは受けません!』って言って、俺と天音の3人のチケットを取ったらしいんだ。相変わらず、プライドの高い女だよ」

 

 さりげなくやばい事をしているような気がするけど……まぁ、焔と空、そして彼方さんも行くことになれた。

 

 チケットの招待は20人までは可能らしいから、ティアドロップ達とレイ達、後は花音達も合わせると丁度20……いや、ひとひらはしらひめに慣れる時間が限られており、人数には入れないから19人だ。あと一人となると、もう誘う人は決まっている。

 

「よし、決まりだね。店も借りっぱなしじゃ行けないし、ここいらで鍵をとか閉めるよ」

 

「じゃあゲーセン行こーぜ。たまには違うゲームとかしようぜ」

 

「そうだね。じゃあ俺は店の片付けに手間取るから、先に行ってていいよ」

 

「わかりました。じゃあ2人とも、カードに……」

 

「「嫌です」」

 

「……まぁ、隠す必要は無くなったしな」

 

 ティアドロップとレイはそれぞれの腕に抱きつき、両手に花状態になってしまった。

 面白がるように焔は写真を撮っており、空はやれやれと呟いていた。

 

「さっ、行きましょう」

 

「お、おい、そんなくっつくなって」

 

 2人に体の境目を無くすほど腕を抱きしめられながら、俺は店へと出ていった。

 

 

 

 

「うし、じゃあ俺も先に行くわ。アイツの面白い奴姿を見物しねぇとな」

 

「良い性格してるな」

 

「にしし! アイツが笑ってる所、珍しいからな! 去年とは大違いだぜ」

 

「……そうだな」

 

 空は、何かを思い返していた。焔は店を出ていき、空は水を一杯飲み干した後、立ち上がらずに何か考え込んでいた。

 

「ん? どうしたんだい空君」

 

「いや、花衣も変わったなって」

 

「そういえば、昔の花衣君ってどんな人だったんだい? 少し気になるな」

 

「そうですね、強いて言えば……」

 

 

 

 

「まるで、人形の様なやつでしたよ」

 

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