六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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夏の日差しの元で

 

 夏と言えば何が浮かぶだろうか。

 

 青い海か、白い砂浜か、強い日差しか、それとも別の物だろうか。

 

 少なくとも、俺の隣の奴は別の物を浮かんでいる。

 

「くぅ〜!! やっぱ夏と言えば女の水着だよなぁ! 日差しでてらつく肌に! 普段では見えない太ももや谷間! 夏サイコー!!」

 

 今いるビーチを前に焔は自分の煩悩を恥じる事も無く堂々と叫び、聞いているこっちが恥ずかしくなってしまい、焔とは他人を装う様に離れたが、焔はそんな俺を逃がさず、俺の肩を抱いてきた。

 

「ほらほら、お前も見てみろよ。あの長髪の女! ケツのくい込みがすげぇよ……」

 

「お前はそれしか見てないのか」

 

「んだよ、つれねぇな。あ、そうか。お前はティアドロップ達やレイ達の水着や下着とか堪能してるもんな〜。もう普通の人じゃ興奮出来ないってか?」

 

「言わせておけばこの野郎……!」

 

 ありもしない事を面白がるように洞を吹く焔に怒りの感情が抑えられず、ビーチの砂浜を思い切り蹴り上げては砂を焔の顔面にぶつけ、顔に砂を吹っかけられた焔は逆上し、俺の体を掴んではそのまま背負い投げ、砂浜に背中を打ち付けられる。

 

 こちらも負けじと焔の服を掴んで右足を焔の腹に添えるように触れ、思い切り体に力を入れて焔を巴投げをした。

 

 あちらも同じように背中から砂浜に叩きつけられ、いよいよ収集がつかなくなった。

 

「やんのかオラァ!」

 

「元はと言えばお前が変な事言うからだろ!?」

 

 焔と取っ組み合いになり、投げては返され、砂をかけられてはかけ返しをつづけた。

 

 元はと言えば焔が変な事言ったからだとは思いつつも、拳と拳がぶつかり合おうとした瞬間、物陰から飛び込む形の影が足で焔の顔面を蹴り飛ばした。

 

 顔面を飛び蹴りされた焔は意識外の攻撃でまともに防御出来ずに向こうの方に吹っ飛ばされてしまい、近くにいた他の観光客がざわめいていた。

 

 こんな事するなんて1人しかいない。金髪の長い髪に、白のビキニの水着を着た彼女の名は、閃刀姫ーレイ。

 

 そう、あの閃刀姫だ。

 

「花衣さんに手を出すとは、殲滅対象ですね!」

 

 さっきの取っ組み合いを見たせいかレイは髪を逆上した猫のように逆立て、目をギラリと輝かせ、焔を睨んだ。

 

 だが、レイのようになっている奴は1人では無かった。どこからともなく焔の背後にも1つの影が動き出すと、焔に関節技を決め、ミシミシと骨を折る気でいるのは閃刀姫ーロゼだ。

 

「私達の存在を知っててやってるのなら容赦はしない」 

 

「ぐぉぉぉ! ギブ! ギブアップ!!」

 

 力強く降参を意を示すように焔は右手を砂浜に何度も叩いたが、ロゼは許す事はせず、焔は泡を吹いてそのまま気絶してしまった。

 

「よし、倒したわ」

 

 ロゼは気絶した焔から離れ、そのまま埋めるようにして焔を砂をかけた。

 

 今気づいたんだが、ロゼも水着姿になっており、レイとは対照的に黒の水着を着ており、ロゼのイメージ通りのクール系だった。

 

 そんなロゼを追いかけるように、また2人の閃刀姫もこのビーチにやってきた。

 

「くそっ遅かった! ボクはまだ攻撃してないのに!」

 

「でも、もうあの子は息してないよ。無駄な事は止めよう」

 

 アザレアとカメリアも到着し、2人もやはり水着だ。

 アザレアはスイムウェア型の黒い水着で、カメリアは意外にもフリルが付いている白のビキニ水着だった。

 

 2人は焔に対して南無南無と手を合わせていたが、肝心の焔はやられてはいなかった。

 

「勝手に殺すなぁぁ!」

 

 砂風呂状態の焔は積まれた砂を吹き飛ばしては立ち上がり、服に付いた砂を振り払った。

 

「ちっ、生きてたのね」

 

「おいコラ、流石に傷つくぞ」

 

「冗談よ。2割ぐらい」

 

「ほぼ本気に思ってんじゃねぇか!」

 

 やいのやいのとロゼと焔の口喧嘩が止まらず、流石に止めに入る事にした。

 

 まぁ元はと言えば焔がいらないことを話したせいでもあると思いながらも、焔とロゼの間に割って入り、何とか仲裁はしたが、海に入る前から何だかどっと疲れた。

 

 近くの空いてるパラソルの影に座り込むと、右の頬に缶ジュースを差し出しされ、右の頬が冷たくなる。

 

 差し出されたジュースの方に顔を向けると、黒の水着で上着を来た空がさっきの喧嘩を見たのか、苦笑いを浮かべていた。

 

「大変だな。騒がしい奴が友達なのは」

 

 そうだなと言うように、俺は笑って空から手渡されたジュースを手に取り、一口で半分程飲み干した。

 

 暑さを忘れるかのようにすっと体の内側から冷えだし、腹の中がジュースで満たされていく感覚はこの夏しか味わえないものだろう。

 

 これで空と焔、閃刀姫達はビーチに集まったが、後数人がまだ来ていなかった。

 

「なぁ、母さん達はまだなのか?」

 

「才華さん達ならそろそろ来るはずだ。お、噂をすればと言うやつが来たぞ」

 

 空は俺の後ろに指を指し、振り返ると大きな荷物を持った水着姿の母さんに、それを手伝うティアドロップ達や花音達が遅れてやってきた。

 

 各々が普通では見られない水着を着て新鮮さが増している中、太陽の輝きと共に白い肌が照らされ、強調している露出している肌がさらに眩しく見え、思わず目を逸らしてしまう。

 

「お待たせしました花衣様。少し準備に手間を取ってしまいました」

 

 最初に声をかけたのはティアドロップであり、薄水色で唾が長い帽子に、それに合うパレオのスカートは神秘的という言葉が似合っていた。

 

 意外にも露出面が抑えられてはいるが、何故か盛れ出している色気というものに充てられてしまい、全身が熱くなり、胸が一瞬飛び出してしまいそうになった。

 

「……俺は邪魔者らしいな。失礼するぞ」

 

「え? お、おい!」

 

 何かを察した空は逃げるようにこの場から立ち去り、向こうで焔と合流した。

 

「花ー衣君。私の水着はどうかな?」  

 

 そんな俺の肩を叩き、こっちに振り向かせたスノードロップは水着を見せるようにクルリと体を一回転させた。

 

 モデル体型のようにすらっとした手足に引き締まった腰や腹に、黄金色の髪は誰しもが魅力される事だろう。その魅力を最大限活かすようにワンショルダー系の水着で乳房が見え隠れするように俺の劣情を煽るようにしていた。

 

「似合ってるよ」

 

 遜色ない意見でもスノードロップは喜んではにかむ笑顔を見せ、近くの物陰にいたヘレボラスの水着を俺に見せるように、ヘレボラスを物陰から連れ出した。しかしヘレボラスはタオルに身を包んでおり、水着を見せないようにしていた。

 

「ほら、花衣君。ヘレちゃんの水着も見てあげて」

 

「や、やはり私は良いです。こんなだらしない体を花衣さんに見せるわけには……」

 

「いいから!」

 

 スノードロップはヘレボラスが巻いているタオルを引き剝がそうとしていたが、六花のなかで一番力があるヘレボラスがスノードロップに負ける訳はなく、ヘレボラスは水着を見せる事は無かった。

 

 だが、スノードロップが説得を受けたヘレボラスはついに折れ、ゆっくりとタオルをはだけさせ、自分が着ている紫の水着を見せた。

 

 紐で結ぶタイプの水着で驚いたが、それ以上に水着にくい込んでいは太ももがヘレボラスの肉厚を示しており、胸も水着が支えきれないと叫ぶかのように長くて大きい巨峰の肌を多くを隠せずにいた。

 

 恐らく、六花達の中で最も露出面が激しいだろう。まぁ、これは本人が狙ってる訳じゃ無いと思うが……

 

「ど、どう……でしょうか。やっぱり、こんなふとましい体なんて嫌いでしょうか……」

 

「い、いやいや。似合ってて可愛いよ。ヘレボラス」

 

 本当はもっと別の意見や気持ちもあるんだが、それを言っちゃ何かが終わりそうだが止めた。

 

 俺の言葉を聞いたヘレボラスはさっきまで暗かった表情を明るくさせ、今度は照れくさそうにして頬を赤く染めた。

 

「相変わらずね。花衣さんが幻滅するわけでも無いのに……それよりも旦那様、お次は私の水着をご覧ください」

 

「あら、こっちも見てくださいな」

 

 今度はカンザシが花柄で赤い水着を着ていたが、その上に着物のような腰ぐらいまで大きさがある花柄の上着を着こなし、カンザシのおしとやかさがあふれ出していた。

 

 エリカも同じような衣装だったが、カンザシと違う点は色と露出面の多さだった。まるで水着をはだけさせているようなデザインで、更にそれを着崩すようにしているから否が応でもエリカの柔肌が目に移ってしまう。

 

「むっ、花衣君、私のも見て欲しいネ! 皆とは違う水着! 見テ!」

 

 ボタンがカンザシとエリカの間に入ると、まるで中華服のような水着を見せた。

 

 確かにボタンの水着は他の奴とは違い、かなり独特だった。中華服の様な肩掛けタイプの水着だったが、下は短いスカート型であり、水着の後ろには牡丹の花が描かれていた。

 

「うん、皆似合ってるよ」

 

「花衣君ー! 私達は〜?」

 

 今度は俺の上着を摘んでいるストレナエとプリム、シクランの3人が水着を見せつけた。

 

 ストレナエがいつも着ている黄色のワンピースを水着にした様な感じとなっており、泳ぐ気満々で浮き輪を身につけていた。女の子らしい、可愛い感じだ。

 

 プリムとシクランは同じ水着であり、ペアルックで仲睦まじい水着だ。白のワンピースタイプだから、どことなくストレナエの物と似ていた。

 

 そして最後にティアドロップの首元からひとひらが飛び出しており、くるりと一回転してロリータファッションの様な青色の水着を見せ、俺の頭の上の定位置についた。

 

「なんか水着って新鮮だな。ライブ・デュエルとはちょっと違う物もあれば、似てるような物もあるし」

 

「1年で滅多に見られない衣装ですからね。それに花衣様の水着も素晴らしい物です」

 

「確かお義母様が作られたものでしょう?」

 

「まぁな」

 

 俺は自分の着ていた水着をもう一度見た。

 

 黒くてシンプルな海パンは店で買った奴だが、パーカーの方は母さんがデザインし、作った物だ。

 

 右半分が黒色を占めているが白い線でシンプルな花柄が描かれ、左半分が白を占めてそれを黒い線で斬撃の様な物が描かれていた。

 

 世界にひとつだけ、俺だけの水着と言われると特別感が出て嬉しくなる。そんな水着を作ってくれた母さんが重そうなクーラーボックスを下ろし、花音達と共にやってきた。

 

 母さんは被っていた帽子を脱いで三つ編みされた金髪の髪をなびかせ、体の殆どを隠しているハイネック型のベージュ色の水着を着て汗を拭いていた。

 

「手伝おうか? 母さん」

 

「ん? 良いの良いの。それよりも、花衣はちゃーんとティアドロップさん達と仲良くしなさい。全く、私が居ない間にこんなに沢山の女の子と仲良くしてただなんて、言ってくれればいいのに」

 

 果たしてどうやって複数の女性と仲が良いんだ言えば良いのかと反論ながら苦笑いした。

 

 それに、母さんから見ればティアドロップ達とは初対面だが、ティアドロップ達から見れば母さんとは姿こそ見られては無いが初対面では無いのが説明しづらい理由の一つだ。

 

 結局言えずに昨日ギリギリまでティアドロップ達の存在を知らずにいた母さんは呆れていたのを覚えてる。

 

「ところで花衣。貴方花音ちゃんやティアドロップさん達、それにレイちゃん達と女の子と仲が良いけど、誰が一番好きなの?」

 

 突然の質問に空から貰ったジュースを握りつぶし、中に残っていたジュースが飲み口から溢れ出すと、俺の右手がジュースでベタベタになった。

 

 そして忘れてはいけない、この場には六花達という燃料がある事を。

 

 母さんはそんなガソリンに火をつけるどころか爆弾を俺に投げつけ、俺の周りの六花達は静かに感情を爆発させ、じっと俺の事を見ていた。

 

「それは私も気になりますね〜花衣様は一体 誰が 1番に 思っているのでしょうか?」

 

 圧をかけてくるティアドロップが怖い。

 

「まぁ結果は見えてますけどね」

 

 勝ちを確信しているカンザシが端目で俺を見ていた。下手をすれば後でナニされるか分からない。

 

「ねぇねぇ花衣君〜私気になるな〜? 言わないと……どうなるか分かんないよ?」

 

 逃げ場を無くすかよように背中から抱きつくスノードロップ。なんか最後怖い事言ったのは聞かなかった事にしよう。

 

 答えなければ雰囲気になって熱いはずなのに冷たい汗が止まらず、ここだけ冬場の様に体が冷たくなってくる。

 

 ぐるぐると張りめぐる答えの数々から最適解の答えを探し出す中で、焔か空、もしくはレイ達でも誰でもいいからこの状況を何とかしてくれと神頼みを願った。

 

 お願いします。ライフを半分にしても良いので母さんの発言を無かった事にしてくれませんかね【神の宣告】に書かれた神様。名前を知らないのはご無礼だとは思ってます。

 

 しかしそんな都合のいい事が起こるわけも無く、覚悟を決めて口を開け、枯れた言葉を出そうとした。

 

「お、俺は……」

 

 声を出した瞬間、ドンガラガッシャーンという漫画擬音が鳴り響いた。何事かと全員音が出た方向に振り向くと、母さんが持ってきたクーラーボックスとその中にあった物と一緒に横たわっている花音が居た。

 

「あいたた……」

 

 どうやら花音がクーラーボックスに足を引っ掛けて転んでしまったらしい。

 

 その光景を見た霊香と雀は、クーラーボックスの中にあったジュースや食材についた砂を取り払いながら花音を労った。

 

「大丈夫、花音?」

 

「全く、ここまで来てドジね。花衣がぼけっとして見てるわよ」

 

「へ?」

 

 霊香が俺に指を指し、花音がその方向に顔を向けると目が合ってしまい、始終を見た俺は少し笑って手を振った。

 

 見られたと理解した花音は思わず霊香の後ろに隠れてしまった。

 

 しかし霊香が1歩右に移動すると隠れていた水着姿花音がまたもや目に入る。

 

 白を基調とした小さめの花形のフリルが付いており、胸元にもハイビスカスの花が添えられていた。

 

「ど、どうですか?」

 

「似合ってるよ。花音らしい」

 

 素直な意見を言い、それを貰った花音は笑顔をはにかませながらまた霊香の後ろに隠れてしまった。

 

「全く……嬉しいならそう言えば良いのに」

 

「その通りですわー! 賞賛されたのなら、堂々とするべし! 謙遜なんてナンセンスですわ!」

 

 突然聞いた事ある高らかな声が高い所から聞こえた。

 

 だがこのビーチに高い所なんて無く、何故そんな所から声が聞こえるのかと周りを見ると、海の方から大量の水を噴出している機械。恐らくフライボードであろう所から、腕を組んでいた人影がいた。

 

 間違いなく、知っている人だった。

 

「オーホッホッホ! 久しぶりですわね花音さん!」

 

「か、カレンちゃん!? どうしてフライボードに乗ってるの?」

 

「そんなもの美しく貴方の前に登場する為に決まってますわ! どんな時でも美しく高貴に、そして派手にやるのが流儀でしてよ!」

 

 するとカレンさんはフライボードのロックを外し、フライボードの水圧が弱まってくるのと同時にその場から飛び出し、見事この砂浜に着地して花音の前に現れた。

 

 花音とは対照的な黒水着で胸を張って登場し、主を失ったフライボードはそのまま海の中へと浮かび、恐らくカレンさんの執事であろう人が回収した。

 

「相変わらず凄いね、カレンちゃん……」

 

「派手好きなだけですよ、花音さん」

 

 遅れて黒のパーカーの水着を着た彼方さんと、白いワンピース型の水着で大きな麦わら帽子を被り、星型のアクセサリーをその帽子に付けていた天音ちゃんが手を繋いでやってきた。

 

「やぁ花衣君。それにお母さんや花音さん、皆も一緒だね」

 

「貴方が花衣が言ってた彼方君ね。花衣がいつもお世話になってるわ」

 

「いえいえ、こちらこそ花衣君には助けられた事もありますし」

 

 母さんと彼方さんは挨拶を交わしながら握手をすると、母さんは天音ちゃんにも声をかけた。

 

「貴方は天音ちゃんね? 可愛い子ね」

 

 人見知りの天音ちゃんは初対面の人を見ると直ぐに彼方さんの後ろに隠れてしまうのだが、何故か母さんの前だとそうはならなかった。

 

 彼方さんもこの反応が珍しいのか少し驚いており、天音ちゃんと母さんを交互に見ていた。

 

 天音ちゃんはじっと母さんの目を見ると、何か分からないことがあるかのように首を傾げ、母さんも笑顔のまま首を傾げた。母さんから何かを感じたのだろうか? 

 

「どうしたのかな? 天音ちゃん」

 

「ねぇ、おばさんってなんの人?」

 

「おば……っ」

 

 事実だが痛い所を突かれた母さんはまるで石になったかのように固まり、相当ショックだったのか笑みが崩れかけており、体ごと後ろに向くとショックで膝を崩した。

 

「うぅ、確かにそうだけどこうして面と向かって言われると来るものがあるわね……」

 

「そ、そんな事ありませんよお義母さん」

 

 ティアドロップはすかさず母さんのフォローに入った。

 

 ティアドロップのフォローで母さんは気楽になったのか、ティアドロップに良い印象を与えた。

 

「ありがとうティアドロップさん。良い人じゃない、花衣。これなら安心して任せられそうね」

 

「まぁ、お義母さんったら……」

 

 するとティアドロップは勝ち誇ったかのような笑みを浮かべてはカンザシ達を煽るようにして笑い、皆は対抗心を燃やした。

 

「先を越されましたが、最終的に旦那様の心を掴めば良いのです。この際過程や方法なんでどうでも良いですね」

 

「さーんせーい。ふっふっふ、折角の海だから、海らしい事をしないとね!」

 

 出遅れたスタートを取り戻すかのようにスノードロップは俺の腕を掴んだ。

 

「かーい君。ヘレちゃんと一緒に泳ご!」

 

「わ、私も? 泳ぐのは苦手なのですが……」

 

 スノードロップは俺とヘレボラスを連れて海にまで走り、ダイブするように海に引きずり込んだ。

 

 透き通った海に体が沈み、スノードロップとヘレボラスと共に海中を一瞬だけ見渡すと、共に海の中から外へと顔を出し、スノードロップは波に攫われないように俺の事を抱きしめた。

 

 スノードロップの2つの柔らかい物が潰れる程強く抱きしめられ、足も絡めるようにして離さない。

 

 普段と違って素肌が露出している分、感じるところは多かった。胸とは違った肉厚の太ももに、細くも柔らかい腕と細い指が上着の下を通って素肌で触られ、ゾクリとした感覚が走る。

 

 だが目と鼻の先にあるスノードロップの顔を見てしまったら、そんな感覚なんか感じる暇なんて無かった。

 

「あは、花衣君ってドキドキしてる。私に抱きつかれて興奮した?」

 

 俺の飛び出してしまいそうな心音をスノードロップは潰れた胸で察知すると、更に体を密着させては近くの岩の方にチラリと目を向けた。

 

「ああいう、如何にもな岩って漫画ではよくあるよね。……そういうの、しちゃう?」

 

 本気で心臓が飛び出してしまいそうな事を言ったスノードロップは蟲惑な上目遣いで俺を見つめ、自身の谷間を見せるかのようにわざと体を屈んだ。

 

 息が荒くなりかけ、水着の中にあるものがどうにかなってしまう。ここでなったら今後の予想は大抵想像はついてしまう。

 

 だがそれが逆に理性と本能の揺らぎが出てしまう。

 

「す、スノードロップ。抜け駆けはダメですよ」

 

 それを見たヘレボラスは対抗するように俺の後ろに抱きつき、前と後ろに柔らかいもので挟まれてしまった。

 

 柔らかな感覚が俺の心を甘く溶けさせ、理性と本能の攻めぎあいの中、スノードロップとヘレボラスが更に距離を縮める。

 

 最早お互いの肌の境目な無くなるほどになって少し息苦しくもなり、抜け出そうにも抜け出さずにいた。

 

「じゃあさ、2人で抜け駆けしちゃう?」

 

 スノードロップは俺の頭を飛び越すようにして体を乗り出し、スノードロップの2つの物が顔に覆いかぶさった俺を置いてヘレボラスと顔を見合せた。

 

「私達と融合〜なんて」

 

「ゆ、融合って……そんな、破廉恥です」

 

「でもヘレちゃんいつも花衣君の事想像して慰m」

 

「そ、それは言ってはダメです!」

 

 2人とも体を乗り出すようにしているが、その間に俺がいる事を忘れないで欲しい……

 

 顔がうずくまって息もしにくいからそろそろ限界になる。

 

 胸の中で意識が朦朧とする中、俺の頭の上が光り出すと、を頭の上にいたひとひらがしらひめの姿になり、スノードロップとヘレボラスを離れさせた。

 

「ふたりとも、ちかい。かい、くるしんでる」

 

「あっ、あはは……ごめんね〜花衣君」

 

「かか、花衣さん! ごめんなさいごめんなさい……! 私が太いせいで……ごめんなさいごめんなさい、嫌わないでください!」

 

「だ、大丈夫大丈夫……ひとひらもありがとうな」

 

 ひとひらのおかげで何とか難を逃れたが、本能と理性のせめぎ合いでちょっと疲れたような気がした。

 

 とにかく2人から逃げるように海を泳ぎ、砂浜の方まで泳いで帰り、それ程泳いだ訳でも無いのに疲れが体を支配していたが、そんな中でも皆は迫ってくる。

 

「花衣さん、一緒にビーチバレーしましょう!」

 

「花衣君! 次はプリムちゃんとシクランちゃんと一緒に貝殻集めしよー!」

 

「旦那様、こちらで私に日焼け止めを塗っては貰いますか? ふふふ……」

 

「……順番にな」

 

 泳いだばかりで体力を使った俺は、まずカンザシ達のオイル塗りから始めた。

 

 他の奴には頼めば出来るだろうと言おうとしたが、カンザシの他にエリカとボタン、そしてへれボラスと後で帰ってきたスノードロップ達が上部分の水着を脱いでおり、スタンバっていた。

 

 先を越されてしまい、仕方ないと思いつつもまずはカンザシの日焼け止め塗りを始めた。

 

 適量のオイルを手のひらに付けて、オイルの冷たさでカンザシが驚かないようにゆっくりと水に浸かるようにオイルを少しづつ背中に垂らし、伸ばしていく。

 

「んっ……あんっ」

 

「変な声出さないでくれ、なんか変な事している見たいだろ」

 

「うふふ、ごめんなさい。旦那様の手つきが心地よくてつい」

 

 オイルを塗っているだけなのにカンザシの喘ぎ声で全く別の事をしているように思えて仕方ない。

 それでもカンザシはうつ伏せの状態で俺の事をじっと見つめ、たどたどしい手つきをじっと見ていた。

 

「何か変な塗り方でもあったのか?」

 

 じっと見つめるカンザシについついそんな事言うと、カンザシはまた笑って言った。

 

「いいえ。とてもいいですよ。……もう少し前の方に塗ってくださると嬉しいですけど」

 

「前? 首の方か?」

 

「いいえ、ここですよ」

 

 カンザシが指定したのは首ではなく……胸の方だった。カンザシは自分の指先で自分の横乳をツンと続き、つついた所が沈み、指を離すとゼリーのようにぷるんと揺れていた。

 

 いきなり一部顕になった胸を見てしまい、目を逸らして手を止めてしまう。そんな初心で、恋愛経験ゼロの思春期男子の反応を見たカンザシは小悪魔の様に面白おかしく笑った。

 

「うふふ、冗談ですよ。やはりいじめがいがありますね、旦那様は」

 

「お前なぁ……」

 

「ですが塗って欲しいのは本当ですよ。もし塗らないと私、体を起こしますよ?」

 

「なっ……!」

 

 カンザシの水着は止める部分が解けている状態だ。もしここでカンザシが起き上がってしまったら……想像は容易についてしまう。

 

 そんな事させないようにカンザシの背中を両手で抑え、起き上がらせないようにした。

 

「ば、馬鹿! こんな所でそんな事するなっ!」

 

「顔が真っ赤な旦那様も可愛いです」

 

「ぐっ……と、とにかく、もう背中とか終わったからもう良いだろ? 足とかは自分で出来るはずだ」

 

「そうですね。ありがとうございました……これで否が応でも他の方のオイル塗り最中に私の事が頭に入りますよね?」

 

「それが目的ってわけか」

 

「旦那様の可愛らしい反応を見たかったと言うのがありますけどね。……あぁいけません。昂りが抑えられません。ふふ……」

 

 これ以上カンザシのサディスティックな行動を受けたら沼にはまるかのように逃げられなくなりそうだ。ティアドロップとは方向性の違う独占欲を感じるのは気のせいだろうか。

 

 とにかく、次はエリカだ。エリカも準備を完了してうつ伏せになっており、カンザシと同じくゆっくりと始める。

 

「お願いしますね、花衣さん」

 

「あぁ、行くぞ? 冷たかったら言ってくれ」

 

 予め言って置くことで冷たさの不意打ちを無くし、ゆっくりとオイルを塗っていく。少し冷たかったのか、エリカは体を少し震えさせたが、直ぐに落ち着きを取り戻した。

 

 オイルをエリカの背中に馴染ませるようにしてゆっくりと塗り広げ、背中からお腹にかけてオイルを塗りたくる。

 

 だが少し量が少なかったのか、オイルはエリカの腰部分で終わってしまい、追加で少しオイルを足してエリカの腰部分を重点に塗っていった。

 

「カンザシには随分と虐められたようですね、花衣さん」

 

「まぁな。というか、見ていたなら止めてくれよ」

 

「私も花衣さんが恥ずかしがっている姿を見るのは好きですから」

 

 エリカもカンザシ見たいにSっ気が強い……。だが、今どうのこうのする様子は無く、ただ静かに俺のオイル塗りに体を預けていた。

 

「……カンザシ見たいに何かしないのか?」

 

「おや? されるのがお好みですか?」

 

「そういうのじゃ無くて!」

 

「心配しなくても大丈夫ですよ。貴方が望むなら、どんな事でもしますわ」

 

「い、今はお前らの為にオイルを塗ってるだけだ。……よし、これで大丈夫だろ?」

 

「えぇ。ありがとうございます」

 

「花衣君ー! 次はこっちネー」

 

 次は俺を呼んだボタンの番だ。

 

 早く早くと言うように足をゆっくりとばたつかせて待っているボタンの前に立ち、そっとオイルを体に塗り伸ばす。

 

 カンザシとエリカとは違い、細めで引き締まっている健康的な体つきは言うなればアスリートと言っても良いだろう。だが、本人はこの体を良しとはせず、逆にヘレボラスの様な体付きを羨んでいるらしい。

 

 その証拠に、チラリと羨むようにヘレボラスを見ており、頬を膨らませていた。

 

「良いネ……ヘレボラスは」

 

「そんなに羨ましいのか?」

 

「そりゃあ、羨ましいネ。花衣君、いっつも皆の胸をチラ見してるネ」

 

「えっ!? そ、そんなに見てたのか?」

 

 まぁ……思い当たる節はあるにはあった。思い返せば劣情に負けて胸元を見ていた様な気がした。

 

 焔の事を言えないなと心の中で呟き、弁明という訳じゃないが、ボタンに話を続けた。

 

「ヘレボラスにも言ったんだけどさ、俺は体だけ見て人を好き嫌いするとかしないぞ」

 

「分かってるネ〜。おっぱいが大きいと花衣君と触れ合う所が少なくなるし、小さいには小さいなりの魅力があるヨ? 試してみるネ〜?」

 

「遠慮するよ」

 

 ボタンは綺麗な白い歯を見せて笑い、さっきの羨みの悩みは消えたようだ。それに丁度良く手に塗りこんだオイルもなくなり、ボタンの番が終わった。

 

 さて、これでカンザシ達のオイル塗りが終わり、次はレイ達とのビーチバレーだ。カンザシ達に一言言ってからレイ達の方に向かい、もう準備は万端だった。

 

「よーし、じゃあ早速始めましょ!」

 

「だが人数が奇数だぞ?」

 

 俺を含めると今は5人。奇数だからどっちかが2人だけどなってしまい少し不公平じゃないかと思うが、そもそもレイ達閃刀姫は常人離れした身体能力があるから、俺がついていける訳が無く、人数差なんて関係ないと考えてしまった。

 

 だが、そこで暇を持て余していた焔が、空と彼方さんを連れていた。

 

「おっ、面白そうな事してんじゃねぇか。俺らも混ぜてくれよ」

 

 焔達を入れれば合計は8人。丁度4対4になる。レイ達は不服そうにしていたが、俺が何とか説得し、4対4でのビーチバレーが始まろうとしていた。

 

「じゃあチーム分けはどうしようか?」

 

「はい! 私が花衣さんと一緒のチームです!」

 

「レイ、それは身勝手すぎる」

 

「そうだ。ここは最優のボクと一緒が相応しい」

 

「私も花衣と、一緒が良い」

 

「だぁぁぁ!! 面倒だからグーとパーで決めるぞ。行くぞ! せーの……」

 

 やはり閃刀姫同士、誰が俺と組むかの言い争いになってしまい、半ば強引にチームが決定した。俺が出したのはグーで、俺と同じ物を出したのは焔とレイ、そしてカメリアだ。

 

 パーを出したのは彼方さん、空、ロゼ、アザレアの4人で、1回で綺麗に別れた。

 

「やったー! 花衣さんと同じチーム!」

 

「うん、嬉しい」

 

「うっし、よろしくな」

 

 アザレアとレイがあまりの嬉しさで俺に飛びつき、焔も準備運動をして体を伸ばしていた。

 

「ぐぬぬ……花衣と敵なんて」

 

「ぐっ……だが、マスターが決めた事だから仕方ない。よろしく頼むぞ、2人とも」

 

「あぁ……閃刀姫の動きについて行けるのだろうか」

 

「まぁ、動きはセーブしてくれるらしいし、何とかなるんじゃないかな?」

 

 こうして、仲良く平和なビーチバレーが始まり……では無く、別次元のビーチバレーが勃発した。

 

 弾丸のように飛び交うボールは砂浜を抉り、最早触れる事さえ危なかった。

 

「おいっ! 動きはセーブしろって言っただろ!」

 

「花衣、知ってるかしら。恋と勝負はいつだって真剣……!」

 

 ロゼの言うことは最もだが加減を知って欲しい限りだ。ロゼのサーブはレイに向かって放たれ、レイは両手だけではなく体全体を使ってボールを高く飛ばした。

 

「花衣さん、アザレアに向かって上げてください!」

 

 レイに言われてアザレアに向かってトスをし、トスされたボール目掛けてアザレアはネットの上よりも高く飛び、相手コートに向かって思い切りボールをスパイクした。

 

 叩きつけられたボールはもはや球の形を留めておらず、まるで槍の様に変形しており、あまりの異次元さに空はついていけずにコートの外から一歩足を踏み外していた。

 

 空の気持ちも分かる。こんなの逃げ出したいに決まっている。

 

 変形されたボールをアザレアがしっかりとブロックし、彼方さんにボールが渡ってまたロゼがボールを叩く。

 

 こんな異次元のビーチバレーだが何故か焔はついて行っており、ボールを体のバネを活かしてはサーブを上手く返したり、閃刀姫達の動きについていっており、はっきりいって化け物だった。

 

 正直、同じ人間かどうか怪しかったレベルだった。

 

 やがて異次元のバレーボールは、ボールが破裂するという展開で幕を閉じ、同点のまま試合は終わった。

 

「ひゃ〜! 同点か! まぁ、楽しかったぜ!」

 

「に、二度とやるかこんなビーチバレー……」

 

「流石にこれはキツいね、あはは」

 

 息を荒らげている空と彼方さんは死地を体験したせいでかなり疲れ切っており、それに比べて焔は清々しい顔をして汗を拭った。

 

「あぁさっぱりした。そうだ花衣、次はストレナエ達の方に行くんだろ? ストレナエ達はあっちの方にいるぜ」

 

「そういえば天音もストレナエ達と居たな。花衣君、見てやってくれ」

 

「わかりました、じゃあ行ってくるよ」

 

 次はストレナエ達と一緒に貝殻集めだ。皆で集めた貝殻や不思議な色をした石を集めた後、それを小さなガラス瓶に詰めたり、後にやった砂遊びで砂のお城の装飾にも使ったりした。

 

「ねぇ、ここにこの星型の石を付けたら良くない?」

 

「じゃあこの丸くて綺麗な貝殻も付けてみよ!」

 

「あ、天音ちゃんはどう?」

 

「うん、とっても綺麗!」

 

 天音ちゃん、ストレナエ、プリム、シクラン達4人がせっせと自分達だけの砂のお城を作っており、とっても張り切っている。

 

 何だろうか、娘のお遊戯会を見ている父親の気持ちを味わっていると言うべきか、心が温まる様な気がした。

 

「あら? 花衣はストレナエちゃん達と砂遊びかしら?」

 

「母さん……と、花音とカレンさん、それに霊香と雀? 意外な組み合わせだね」

 

「ちょっとそこで話していたのよ。そっちは砂遊びねぇ

 ……私もやっていいかしら?」

 

 すると母さんも参加し、デザイナーの意地を見せるように、デュエルモンスターズに登場するモンスター、クリボーやスポーア等、丸っこい物ばかりのモンスターや、なんと青眼の白龍まで細部まで再現出来るという再現度ぶりだ。

 

「おぉ……これは凄いですね」

 

「wonderful! これはアートの価値がありますわ!」

 

 確かにカレンさんの言う通り、最早芸術の域に達していた。

 

「わっ! 皆見てみて! あれすごいよ!」

 

 母さんの作品を見たストレナエ達は興味を惹かれて母さんの作品をじっとみた。

 

「凄い凄い! ねぇねぇ花衣のママ! 一緒にすごいお城作ろうよ」

 

「えぇ。良いわよ。皆もどう?」

 

「は、はい! 精一杯頑張りますね!」

 

「良いですわよ、私の美的センス、お見せしますわよ!」

 

「まぁ、良いわよ」

 

「ふっ、我の禁断の指で万物を創造してやる!」

 

「じゃあ俺も……」

 

 と、言おうとしたその時、少し喉の乾きと小腹が空く音がなってしまった。

 

 そういえばビーチバレーとかしたしかなり喉が乾いた。この暑さだから熱中症になっては笑えない。一旦飲み物を飲む為に戻ると母さんに伝え、母さんが持ってきたクーラーボックスの中からジュースを取り出し、ゆっくりと飲んだ。

 

「あっちこっち行って、大変ですね。花衣様」

 

 傘をさしていたティアドロップが俺の隣に来て隣に座り、さりげなく俺の肩に頭を置いた。

 

 少し冷たくも人肌の温もりがあるティアドロップの肌と触れ合い、暑さが取り除かれるようだった。

 

「今まで何してたんだ?」

 

「貴方の事をずっと見ていたのですよ」

 

「……今日は随分と大人しいな」

 

 普段のティアドロップでは考えられない程大人しく、逆に心配になるぐらいだ。訳を聞こうとすると、ティアドロップは妖しく笑った。

 

「昼は皆に譲ります。ですが……夜は私が独占しますから」

 

「ああ……そっだったな」

 

 忘れてはならない事が一つあった。

 

 そもそも俺や焔達がここにいるのは、ティアドロップの条件付きでここにいる。

 

 その条件は単純でシンプルの、ティアドロップの言う事を1回聞くという事だ。

 

 ティアドロップは今この条件を使っておらず、言い草から夜に使うらしい。

 

 夜にホテルとなれば……考えられるのはそう多くは無い。それに母さん達をこのリゾート地に連れてくれた事もある。

 

 つまり今日の夜に何をされるかは、ティアドロップの裁量次第だった。

 

「ですが、私も見てばかりではありませんよ。スノードロップ達とのまぐわい、カンザシ達との体の触れ合い、ストレナエ達との楽しみの共有、閃刀姫達との汗の流し合いを見ているだけで胸が張り裂けそうな程痛くなりました」

 

 ティアドロップは俺を逃がさないように俺の腰に手に付け、そのまま体を手繰り寄せた。

 

「この胸の痛みの責任、取ってくれますね?」

 

 そうして夜は、やって来た。

 

 チェックインはビーチに行く前に済ませたから部屋決めは既に済んでいる。

 

 焔と空、霊香と雀、彼方さんと天音ちゃんとカレンさん、母さんとストレナエとプリムとシクラン、カンザシとボタンとエリカ、そしてスノードロップとヘレボラスとひとひらがそれぞれの部屋に入り、俺はティアドロップと2人きりの同室となった。

 

 流石はリゾートホテルと言うべきか、外観は美しい海や街並みが一望でき、外にはプールがあると来た。部屋も広くてルームサービスも充実、ベットもフカフカで雲の上にいるかのような気分になる。

 

 海で泳いだり色んなことがあったせいで疲れが一気に押し寄せ、フカフカのベットに飛び込む。

 

「花衣様、疲れる事は察しますが海水をお湯で洗い流した方が良いと思いますよ。このホテルには温泉がありますし」

 

「あぁ……じゃあ入ろうかな」

 

 確かに体はベタベタで少し気持ちが悪い。というかここ温泉まであるのか……なんでもあるな。

 とにかくここは温泉に入る事になり、最低限の荷物を持って温泉がある所に行こうとすると、何気ない顔でティアドロップも着いてきていた。

 

「おい、なんで着いてくるんだ」

 

「え? 私は花衣様の永遠の伴侶なのですよ? ついて行くのは当たり前じゃないですか」

 

「いや、女のお前は男湯には入れないだろ」

 

「……? あぁ、言うのが忘れてましたね。実はスタッフに言ったのです。この時間で貸し切れる温泉を提供してくれると」

 

 するとティアドロップは招待券を見せつけた。

 

「ふふ、この招待券はかなり優遇される権利があるんです。例えば、温泉の貸切なんで造作もないことです」

 

「と、言う事は……」

 

 困惑なのか、それとも心の奥底の本能なのか分からない生唾を飲み込み、ティアドロップは獲物を見る獣の様であり、小悪魔の様でもある目をさせた。

 

「混浴となりますね。楽しみです」

 

「嘘だろ……?」

 

 空いた口が塞がらない俺を、ティアドロップは俺の腕を掴んでそのまま2人だけの浴室に連れていかれる事になってしまった。

 

 俺、どうなるんだろうか……

 

 

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