六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
今日の夜は星空が綺麗だ。
こんな星空を眺めながら温泉に浸かれる日が来るとは、今日は本当に良い日だ。
昼間で動き回った疲れが湯船に溶けだしていくように体の内側から疲れが抜けていくようだ。この状況では無ければ。
良い日の筈なんだ。
暖かい湯船に浸かりながら満天の星空が見える露天風呂。そして、美女との混浴。
「花衣様、もっとこっちに近づいてください。これでは一緒に入ってる意味がありません」
タオルとかも無く、ティアドロップが素肌を隠している物が一枚も無い状態でゆっくりとこちらに近づいていく。
湯船に浸かった汗がティアドロップの火照った体を艶めかしくさせ、髪を下ろしているからいつもとは違う雰囲気で心がざわめく。
あられもない産まれたばかりの姿のティアドロップの体が直視出来ず、思わずティアドロップから身体ごと目を逸らし、ティアドロップを見ないようにしたが、それに少しへそを曲げただろうか、ティアドロップは背中から力強く抱きしめた。
「どうして私を見てくれないのですか? 折角誰の邪魔もされずにいれるのに」
ティアドロップの手が体を絡め取るように腰の方につき、あと少しで俺の陰茎に手が届きそうだった。
届かない事に安堵しつつも、どこかもどかしく思ってしまった俺がいた。
あと少し、もう少しでティアドロップが手を伸ばせばそこまで届くが、ティアドロップはわざとギリギリの所で止めていた。
耳元からクスクスと笑っている声がしたからわざとなのは間違い無かった。
「強情な方です。何故受け入れてくれないのですか? 私は花衣様の事を心の底から魂まで愛しているのに……」
今度は徐々に手の位置をあげてティアドロップの掌が俺の胸元まで辿り着き、ティアドロップは抱く力を強くした。
張りのある弾力ながら背中越しでも伝わる肌の滑らかさは、きっと手で触れれば心地よい感触なのだろう。
それをもっと感じさせるようにゆっくりとティアドロップは体を上下に動かし、同時にティアドロップの山も2つゆっくりと上へ下へと俺の背中を撫でるように揺れ動く。
何かと言わないが、ソレが背中を撫でるように擦る度に体に甘い痺れが走る。心臓の鼓動も早くなり、明らかに温泉の湯船が原因じゃない体の火照りも感じてしまう。
湯船の熱さとそれとは別の熱さでどうにかなりそうだ。思わず温泉から上がろうとするとティアドロップに腕を掴まれ、それを拒んだ。
「花衣様、何故逃げるのですか?」
「に、逃げてる訳じゃ……」
「では私から離れないでください。今日はそういう約束ですよね? 誰のおかげで貴方のお友達とお義母様をここに連れて来れたと思っているのですか?」
「ご、ごもっともです……」
「そんなに落ち込まないで下さい。まるで私が悪者みたいじゃないですか。まぁ、ある意味その通りでしょうか?」
するとティアドロップは両手で俺の腕を掴み、本気で逃がさないように露天風呂の済に押し寄せ、足を俺の足と足の間に押さえつけるようにしていた。
ティアドロップの何もかもが近い。
ティアドロップの滑らで艶やかであり、程よく肉ついた太もも。
ティアドロップから発せられる花の様な香り。
俺を押し潰そうと潰れながらも押し寄せてくる巨峰と、そこから見える深い深い谷間。
そして、熱い吐息と透き通る水晶の様な目を持ったティアドロップ本人の顔。
何もかもが近すぎる。今までは服とか来ていたが今は違う。肌を隠している物が何も無く、ティアドロップの何もかもが見える状態だった。
嫌でもティアドロップの体が目に焼き付けられ、脳に刻み込まれそうだが、ティアドロップは体にも刻むこもうと指を絡ませ、足を擦り寄せ、唇を俺の耳元に近づけた。
「貴方はただの人間。そして私は力のある精霊……こうして襲いかかったら何にも出来なくさせるのは、悪者……ですよね?」
「ただの……人間……?」
その言葉に違和感を感じ、同時にある事を思い出した。
それは、黒いドラゴンになった俺のあの時の光景だった。
あの時は怒りで我を忘れていたが、あの時の感覚だけは覚えている。自分の爪が牙のようになり、肌が鱗になったあの感覚は、俺の脳裏に焼き付けていた。
だが今は、そんな事はどうでも良くなるほどの状況だった。
「そうです。それに花衣様も本当は期待しているのでしょう? その証拠に、私の体に釘付けですよ? 私が掴んでいるのは貴方の腕なのですから」
「……ティアドロップ、俺は」
「何も言わないで下さい。知っていますよ。貴方が黒い龍になった事は」
「なっ、なんで……!?」
「レイから聞きました。にわかには信じ難い事ですが、あの子が貴方の事に関して嘘をつく事はありませんから。……ですが、関係ありません。今の貴方は私にすら勝てない普通の人間なんです」
「普通……の?」
「えぇ。だから貴方は化け物なんかじゃありません。私を虜にするこの髪も、私を見るこの美しい目も、私の声を聞くこの耳も、私と繋ぐこの手と指も、私の事を思うこの胸も、私の隣で歩くこの足も、全部全部全部、普通の人と変わらない物です」
ティアドロップは何もかも普通と言ってくれた。
人と変わらないと、人と言ってくれた。
それだけで、しがらみから抜け出せたような気がした。
「……あ、でも、この部分はちょっと人よりも凶悪かも知れませんね」
するとティアドロップは自分の太ももに当たっている物を太ももで触れると、クスリと笑った。
「いや台無しだ!! ちょっと感動的な話だったよな!? なぁ!?」
「台無しなんて……私にとってはすごく大事な問題なんですよ?」
「どこかだ!」
まぁ……これもティアドロップの狙いかもしれない。こいつは俺の事を一番に考えている事はこれまで過ごして来たから分かる。
ティアドロップは気にかけてくれたんだ。多分、昼間のビーチのカンザシ達やレイ達も、口には出してなかったが俺の事を気遣ってはくれたのだろう。
まぁ、若干強引なところはあったけど……
「それよりも花衣様。ここをこんなにしているという事は……期待、しているんですよね?」
「うぐっ……」
「もう言い逃れは出来ませんよ? いい加減、私の事を受け入れても良いのでは無いのですか? どうしてそこまでして拒むのですか」
煮え切らない態度に怒るように頬を膨らませたティアドロップは、俺の腕を離し、隣に座った。
確かに、俺はティアドロップの体を見て興奮はしてしまったし、期待だってしてしまってる。この後どうなるのかも、大体は予想出来る。
嫌な訳が無い。だが、そうすれば……
「そうなったら、皆を裏切ってしまうかもしれないから」
「裏切る?」
「お前だけじゃない。スノードロップやヘレボラス、カンザシにボタン、エリカ。ストレナエとプリムとシクラン、ひとひらに、レイ、ロゼ、アザレア、カメリア……花音。皆の俺に抱いている気持ちは分かってるつもりだ。だから……」
これから後に言う事は、最低な事だ。
男して、人間として、他人や倫理観に絶対に受け入れられない事だってわかってる。
だが、それでも俺のこの気持ちは変わらない。分かってくれなくても、それだけは伝えかった。
「俺は、皆と一緒に居たい。だから、お前と一線を超えたら……不平等って言うか、なんて言うか……」
上手く言葉に言えず、口ごもってしまった。それに対してなのか、ティアドロップは笑った。
「ふふ……ふふふ、やはり花衣様は初心な人ですね。つまりこういう事ですか? 私とまぐわったら、私達の今までの関係が壊れてしまうのでは無いかと考えたのですか?」
「まぁ、そういう事だよ。……最低な事だって分かってるよ」
ティアドロップの笑いは止まる事を知らず、自分が言った事は最低な事を自負している。穴があったら入りたいが、穴は無いのです顔半分を湯船に浸かり、ぶくぶくと泡を出す。
ようやくティアドロップの笑いは無くなり、何かを吹っ切れたかのような顔をしていた。
「そう、そうでしたか。そんな大層も無い考えだったのですね。だったら……最初から襲えば良かったのですね」
「何言って……」
その瞬間、ティアドロップは唇を俺の唇に重ねた。
突然の事に時間が止まったかのように思えた。
唇が重なった瞬間のティアドロップの唇の柔らかさと、少し甘い味が口から脳へと駆け巡り、あまりの出来事にティアドロップを押しのける事さえ出来なかった。
息が苦しい。もう何分経ったのだろうか。いや、1分どころか30秒も経っていないのだろう。
1秒が数分かそれ以上長く感じる口付けの中、ティアドロップはゆっくりと顔を離し、微笑んだ。
「な……なっ……」
何をするんだ。と、言葉が出なかった。
しかも初めてだった。俺は初めて、誰かの唇を重ねてしまった。なんの前触れもなく突然に。
ティアドロップの唇の柔らかさと、そこから感じられた花のように甘い味がまだ唇に残っている。
心臓が飛び出そうだ。息も苦しい、体も熱い。もう一度ティアドロップを見ると、目に映るティアドロップが更に艶やかに見えてしまった。
そんなティアドロップが両手を俺の頬に添え、少し動けばまた唇が重なりそうな程顔を近づけた。
「私とまぐわい、初夜を共にしても何も変わりません。私もあの子達も貴方だけを愛し、貴方だけを想い、貴方の為に生きます。ただ変わる事と言えば、まぐわいが多くなるだけでしょうから」
「何も……変わらない?」
「はい。貴方の対するこの愛も、貴方と共に過ごす時間も、何もかも変わりません。平等? 不平等? 関係ありません。私達は貴方の為に生きるのですから」
ティアドロップはまた俺の顔を両手でゆっくりと挟んだ。
「だから花衣様。期待通りの事をしても良いのですよ? いいえ、してください。熱情的に、本能のままに」
ティアドロップはゆっくりと静かに俺の手に差し伸べ、自分の胸に俺の手を動かそうとしていた……
ティアドロップの許しは得た。
皆の気持ちも知れた。
俺の事も受け入れてくれている。
もう戸惑う理由も、拒む理由なんて無い。
その筈だが……俺の脳裏に黒い龍の姿となった俺が現れ、俺は思わずティアドロップの手を払った。
「あ……」
自分の行動に、自分で驚いてしまった。拒む理由なんて無いはずなのに、何故かティアドロップを拒んでしまった。
……いや、拒む理由は分かっていた。
誰かが許そうとも、気にしてなくても、俺は俺自身がドラゴンになっていた事に恐怖していた。
またあぁなってしまったら? そもそもドラゴンになる人間なんて普通じゃない。
そんな自己解決と何も分からない恐怖、そしてその事を受け入れられないことが相まって、俺はティアドロップを拒んでしまったのだ。
拒んだせいで、ティアドロップは悲しそうな顔を浮かべた。
「これ程言っても……ダメですか?」
「……ごめん、ちょっとのぼせた」
逃げるように、俺はこの温泉から立ち去った。言い訳とか情けないとか言われるかもしれないが、のぼせてしまっというのも事実だ。
温泉から出ていき、急な温度差で頭が緩く締め付けられるような目眩がしつつも、体を雑に拭き、雑に服を着る。
ここで逃げたとしても、また部屋でティアドロップに会うことは決まっている事なのに。
晩飯も済まし、やることも無い。どこか遠出……は流石に危ない。何も知らない所でどこか遠くへ行って迷子になってはどうしようもない。
となれば、行く場所は限られる。どこか落ち着ける場所でありながら、行ったことがある所と言えば、もう昼間に行ったビーチぐらいしかなかった。
とにかく考えを落ち着かせたいと思いながら夜のビーチに足を運び、そこは満月が空に浮かび、海面にも月が浮かんでいた月世界のようになっていた。
昼間の太陽で照らされ、美しい海色を輝かせた光景も凄かったが、この神秘的な光景も目を奪われた。
夜の静まった世界の中で波音を聞いていると、他の何かの音も聞こえだした。
足で水を蹴る音と、子供の笑い声……こんな時間に遊んでいる子がいるのだろうか、気になって声の方に歩き出す。
音が徐々に大きくなるにつれて、向こうに人が多く見えた。7……いや、8人は居た。
結構な多連れだが、俺が知っている人達でもあり、声をかけてみた。
「花音?」
名前を呼ばれてこっちに向くと、花音は驚いた様に立ち上がった。
「か、花衣さん? どうしてここに……」
「いや、たまたま声とかしたから来てみただけだ。海で遊んでいるのは……アロマージ達か?」
遊んでいると言っても、泳いでいる訳でも無く、靴を脱いで海を蹴ったり、砂浜で何かしている程度だった。
はしゃいでいるのはジャスミンだろうか。この中でも元気よく走り回っていた。
「どうしてアロマージ達を?」
「昼間に皆さんを出すのは難しかったので、人気の少ない時間を選んで呼びました。折角なので、皆さんと遊びたくて」
「そっか……なんか、悪いな。六花達皆は好きなように実体化してるのに」
「良いんですよ。アロマの皆さんたちも、実体化しなくても私の傍に居れれば良いと言ってます」
「はい。もちろん、花音の身を守るためなら、実体化をしますけどね」
ローズマリーが花音の両肩を抱き、友達のように頬を引っ付けていた。
「仲、良いんだな」
「えへへ、でも花衣さんと比べたらそうでも無いですよ?」
「いやいや、俺の場合はあっちの方からのアタックが強いと言うかなんというか……」
「でも、それぐらい貴方の事が大好きなんですよね」
「重すぎる……けどな」
「でも、ティアドロップさん達は凄いと思います」
すると花音は、夜空に浮かぶ満月を眺めると、話を続けた。
「誰かに好意を伝えるのは、本当に大変で、怖い事なんですよ」
「……どういう事?」
「例えば、限りなく仲のいい友達を好きになってしまったら、どうしますか? この居心地の良い関係よりも深い関係を望んでしまい、好きと言ってしまい、もし関係が壊れると考えたら……私だったら、躊躇ってしまいます」
花音がしてくれた話は、よくある事だが実に納得や心当たりがある話だった。
確かに、人は心地よい関係を好む。好きな物同士で意見があったり、気遣いが必要ない関係等、自分が自分でいられる環境は、誰しもが望んでいるものだ。
だが、それでも人はその先を求める物だ。惚れた人と一緒にいたい、愛し合いたいは、誰しもが一度は考えるものだろう。
だが人は恐れる物だ。結果、ぬるま湯見たいな関係に落ち着いてしまうと、花音は言いたいのだろう。
すると話を聞いていたのか、ジャスミンがこっちに寄って来て、話に混ざった。
「えー? でも、私花音の事大好きだよ!」
ジャスミンはギュッと花音を抱きしめると、花音も嬉しそうにジャスミンの事を抱き締め返した。
「ふふ、ありがとうジャスミンちゃん。でも、大人になっていくと怖いって思っちゃうの。私みたいにね」
「えー、どうして?」
「えーと……多分、嫌われたくないと思ってしまうからかも。誰だって、嫌われたくはないでしょ?」
「どうして嫌うの?」
「え? えーと、迷惑に思う……から?」
「どうして迷惑に思うの? 好きって言われたなら嬉しいも思うけど」
「え、ええと……」
ジャスミンの純粋な質問の連打に花音はどうすればいいか分からず、隣にいたローズマリーに顔を向けると、ローズマリーはジャスミンを抱えた。
「はいはい、質問は後でね。花音は今、花衣と大事な話の途中だから」
「え〜」
「えーじゃない。じゃあ、2人でごゆっくりしてね」
ローズマリーは俺や花音にウィンクを飛ばし、何やら気を使わせたようだった。
「話が逸れてしまいましたね。とにかく、貴方に真っ直ぐな好意を伝えているティアドロップさん達は凄いという事です」
また花音は、月を見上げていた。
「……月が綺麗ですね」
その言葉が言葉通りの意味なのか、それとも別の意味なのかは分からなかった。
花音がさっき言った言は、どう言った経緯かは知らないが、別の意味では貴方のことを愛してるという告白の意味を持っている。
この言葉に対してどんな風に返せば良いのか分からず、俺は何も言わずに頷いた。
「言葉って便利ですね。こんな何気ない言葉が別の意味になり、さりげなく気持ちを伝えられるのですから」
花音は月を背にして俺に振り返った。
「それに縋る私は卑屈な女です。自分の気持ちを真っ直ぐに伝えられないのですから。だから、花衣さんはあの言葉に返事……出来なかったんですよね?」
俺が単純なせいなのか、心を見透しているような笑みを花音はした。俺は何も言えずに、花音の言葉を黙って聞き受けた。
「でも、ティアドロップさん達の好意だけはちゃんと返していると思います。だって花衣さん、ティアドロップさん達の事を第一に考えていますから」
「そんな訳無い。第一に考えていたら、俺はここに居ない」
もし第一に考えていたら、俺はあの時ティアドロップを受け入れたはずだ。
俺の言葉に疑問を持った花音だが、それ以上何も聞かずに話を続けた。
「でも、今ティアドロップさん達の事で悩んでますよね? そんな顔をしてますよ」
「え、そうか?」
「はい。羨ましいぐらいです。花衣さんも、素直な気持ちを伝えてみたらどうですか? 私のように、変な言葉を使わずに」
「素直な気持ち?」
「花衣さん、ティアドロップさん達に『好き』って言った事ありますか?」
「それは……」
多分、言ったことない。
いつもティアドロップ達の好意に甘えて、何も言わなかった。一緒に居たいとは言っているが、俺はティアドロップ達に対しては、たった2文字の言葉さえ言ってなかった。
「その様子では言ってないみたいですね。……言ってあげてください。ちゃんと自分の気持ちを言わないと、相手は一生貴方の気持ちなんて分かりませんから」
「でも……花音は」
「私は良いですよ。貴方の気持ち最優先です。それに私、諦めている訳では無いですからね?」
花音は右手の人差し指と中指を唇に当ててると、その指を俺の唇に当てた。
「ほ、本で見た事ありましたけど……これ、恥ずかしいですね。えへへ……」
「花音……」
「……あ、もうこんな時間。では、私はアロマさん達とお部屋に戻ります。花衣さんも、お気をつけてお部屋に戻ってください。では、おやすみなさい」
花音はアロマージ達にそろそろ戻ると伝えると、アロマ達はカードに戻り、花音と共に部屋に戻った。
俺もある決心を抱き、ティアドロップがいるであろう部屋に戻った。
ホテルに戻り、部屋に近づく度に足が重くなっていくようだった。エレベーターを押す力も弱々しくなってボタンが上手く押せず、自分の部屋の階のボタンすら押さずにエレベーターの中で少しの時間いた。
だがようやく部屋の前に辿り着き、外にある機械にカードをかざしてロックを解除してドアを開けた。
部屋は電気を付けておらず、ずっと俺の帰りを待っていたティアドロップがベッドの上に座っていた。
だが、ティアドロップは振り返る事はせず、背を向けたまま話した。
「おかえりなさいませ、花衣様。……温泉の時の事は、すみません。少し、舞い上がったみたいで……」
「……」
明らかにショックを受けている声色だ。こうなったのも……俺のせいだ。
「そこにベッドがありますので、そこで寝てください。私は後で寝ますから」
確かにティアドロップの隣にはもう1つ空いているベッドがある。だが、俺はそのベッドには行かず、ティアドロップを背中を合わせるようにしてティアドロップがいるベッドに座った。
「花衣様……?」
「ごめん、あの時何も言わなくて出ていって。本当はあの時、嬉しかったんだ。普通の人間だって言ってくれたのをさ」
だが俺自身がそれを受け入れられなかった。
自分が人ならざるものだという事実が受け入れられず、恐れていた。
もしまたあの姿になってティアドロップ達を傷つけたらと考えたら、怖くて仕方なかった。こんな化け物なんか居ない方がいいとも考えていた。
だけど、それでもティアドロップ達は俺の傍に居てくれると言ってくれた。
そんなの、嬉しくない訳が無い。嬉しいに決まっている。
だが、ティアドロップ達はそんな気持ちは知らない。俺が言ってないのだから、知る術なんて無い。心さえ読めない限りは。
「それに、いつでも俺の傍に居てくれる事も凄く嬉しい。母さんが居なかった時は美味しい料理も作ってくれて、家事とかもしてさ、本当に俺の為になんでもしてくれたよな」
ティアドロップ達と共に過ごした日々が頭の中に蘇ってくる。
初めて出会った時の事、家で過ごした事、レイとロゼと戦った事、色んな事と出会い、戦い、共にいた事。
たまに喧嘩したり、束縛が激しい時とかもあったけど、それでも、一緒に居て楽しいし、もっとずっと居たいとも思ってる。
だが、それを口に出していなかった。だから言うんだ。
いつの間にかこの心の中で生まれた感情を、ティアドロップに向けて言った。
「俺はお前達……いや、ティアドロップの事が好きだ」
言った。言ってしまった。冷や汗が止まらず、この先どうなるかも分からず膝を擦ったり、貧乏ゆすりしたりと、とにかくそわそわしてしまった。
「……本当ですか?」
「あ……あぁ。本当だ。好きだ」
するとティアドロップは凄まじい速さで体をこっちに向け、俺をベッドの上に押し倒した。
押し倒された俺はティアドロップの初めて見る、頬を染めた余裕の無い顔を見た。
「やっと……やっと花衣様からその言葉が聞けました! あぁ……喜びが駆け巡ってくるようです!」
嬉し涙を流し、自分の体を抱いたティアドロップはすかさずまた俺の唇に唇を重ね、今度は舌をねじ込んだ。
口の中から雪崩のような快楽が押し寄せ、まるで力が吸われていくかのように力が抜けていく。
また短くも長い時間の中で、互いの唾液が交わる中、舌と舌の間で糸の橋が出来るほどのキスが終わるとティアドロップは着ていた服をはだけさせた。
「じゃあ……良いですよね? 貴方は私の事を受け入れた。もうこの後の事も……受け入れてくれますよね?」
俺は生唾を飲み込み、ティアドロップがゆっくりと俺を抱いた。
今までティアドロップとこうして抱きしめた事はあったが、今日はいつもと何か違っていた。これまでよりもティアドロップの肌の感触や体温、そして吐息がいつにもまして感じられた。
これからする未知の領域に踏み入れる度に、心臓が痛い程に動いてしまう。そんな心臓を宥めるようにティアドロップは俺の体を撫で、また唇を重ねる。
「愛してます。これからも永遠に……」
時間は0時を過ぎ、俺の誕生日が迎えたと同時に、俺はティアドロップと長い夜を共にした。
「誕生日おめでとうございます。そして……ふふ、卒業も……ですね」
月明かりの中、ティアドロップは微笑み、ゆっくりと体を重ねっていった……。
オリカをまとめた章が欲しい?
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欲しい!
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別に( *¯ ³¯*)