六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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今回、花衣くんの謎とか色々判明しますがかなり設定が複雑化でクッソ難しくなっているので、後書きの方で今回分かった出来事や解説をざっくりまとめておきます。

あとこれ書いている途中になんと閃刀姫カメリアが登場!一言で言えばまぁ〜ラグナロクに使えますなこの効果。

ラグナロクの効果使ってカメリアを墓地に送って相手フィールドに特殊召喚し、ラグナロクの戦闘ダメージ倍の効果を使えば下手すればワンキル出来ますね。
でもこんな戦い方花衣君はやらなそうというか絶対したく無さそう(KONAMI感)


真相

 

 遂に謎が解かれる時が来た。

 

 ウェルシー達の目的、レゾンカードが作られた理由、俺の事を監視する監視者達の目的、そして俺の正体。

 

 探しても、考えても、まるで霧を掴むかのような分からなかった謎が遂に晴れると考えると、誰しもが固唾を飲んで目の前にいる精霊、ドラゴンメイド・ハスキーがこれから言う事に耳を傾ける。

 

「では、まずは貴方方を襲ったウェルシー達……【セブン・エクリプス】についてお話しましょう」

 

「【セブン・エクリプス】?それがウェルシー達の組織の名前か?」

 

「あくまでこちら側が命名した物です。名称があった方が何かと都合が良いでしょう」

 

エクリプス……確か、日食や月食など天文現象における蝕を意味する言葉だった筈だ。

直訳すると7つの蝕みという事になるが、どうやら前に言っていた彼方さんと空の予想は大まか間違っていないらしい。

 

「そんな名前をつけているという事は、敵の規模は7人なのか?」

 

「ある者……?」

 

「おっしゃる通りです。彼女達はある者の復活の為に、世界を闇で蝕む7つの生贄を探し、ある者を復活させる事……それが彼女達の目的です」

 

「それが花衣様の正体に繋がります。花衣様、貴方の正体とは……」

 

 次に言われる間の数秒が、数分にも数時間にも感じられる程に時の流れがゆっくりとなった。

 ついに知れる。知ってしまう。恐らくまともな正体では無いとは予想は出来る。

 だが、受け入れるしかない。どんな正体でも受け入れる覚悟はある……そう思っていた。だが、現実は俺の予想を遥かに壮大であり、残酷だった。

 

「花衣様、貴方様はダークネスの依代です」

 

「ダー……クネス?」

 

「おい、それって……」

 

 今この場にいる中で、この言葉を知っているのは言い出したハスキー以外では、俺と彼方さんだけであり、思わず俺と彼方さんは目を見合せた。

 そしてその意味とは……物語に出てくる単語であるという事だ。

 

 だが有り得ない。何故なら、ダークネスはフィクションの存在なのだから。

 

「だ、ダークネス? なんだそれ」

 

 事情……いや、この場合は元ネタと言うべきか、知らない焔と空は聞き慣れない単語に戸惑っていた。だが、2人は知っている。何故なら、アニメの存在が無くなる前の世界では、2人はこの名前を言っていたからだ。

 

 ダークネス、遊戯王GXで登場したラスボスであり、宇宙が一枚のカードから生まれた時のカードの裏側の存在……まぁ、要するに、宇宙の闇が生み出した闇の怪物と認識すればいい。

 

 ソイツは最終的に、GXの主人公である遊城十代によって倒された。……だが、そんなフィクションの作品のラスボスが出てくるとは……いや、全く同じ名前という可能性がある。

 

「なぁ、ダークネスってあの十代さんが倒した奴で間違いないのか?」

 

 試しにハスキーにそう言うと、ハスキーは首を縦に頷いた。

 

 だが、有り得ない。そうなるとフィクションの中のラスボスがこの世界に存在しているという事になる。いくら世界が遊戯王中心になったとは言え、これは流石に行き過ぎだ。

 ぶっ飛んでいる事実、いや妄想に俺は思わず鼻で笑ってしまった。

 

「アニメの中のラスボスの依代が俺? 冗談だろ……」

 

「この状況で冗談が言えると思いですか?」

 

「だが花衣君の言う事は最もだ。もしそれが事実だというのならば……この世界は一体なんなんだ? まさか、物語の世界だとは言わないだろうな」

 

「お、おいおい。物語とかラスボスとか何言ってんだよお前ら。俺らにも分かるように言えよ」

 

「ダークネス……まぁ、簡単に言えば数々の宇宙の創造神で、闇……深淵そのものって言えばいいのかな? まぁ、宇宙の暗黒面かな?」

 

「いや訳わかんねぇよ」

 

「まぁ、神を超えている存在って言えばいいよ」

 

 サラッととんでもない事を言っているが、概ね彼方さんの言う通りだ。

 

 宇宙が一枚のカードから生まれた時のカードの裏側……闇そのもの、見た目は羊の骨のような顔をしており、全身が黒いローブに包まれた怪物の様な外見をしていた記憶がある。

 

 だけど、焔達は前の世界でもアニメを見ていた筈だ。それを話題にして話した事もある。

 

 だが、焔と空はそれを知らないと言っている。理由は分からないが、俺と彼方さん以外の人間はアニメの事も物語の事も知らずにいる。認識の食い違いに歯がゆく思いつつも、この光景を見たハスキーは続けて言葉を繋げた。 

 

「……どうやら、先にこの世界の事について話さなければならないようですね」

 

 ハスキーは一旦俺の正体の事を避け、この世界の事についての真実を話した。

 

「花衣様、彼方様。貴方方が言う【前の世界】というのは存在しません。この世界は何も変わっていないのです」

 

「何も……変わってない?」

 

 嘘だろ……? じゃあカードゲーム中心のこの世界が本来の世界って……ダメだ、信じられない。俺が知っている世界は遊戯王は単なる娯楽の域を超えず、世界の中心になる事は無かった。

 

 そして、そのカードゲームを促販する為にアニメだってあった。俺はそれを見ていたし、覚えてもいる。彼方さんも同じ事を思っているはずだ。

 

「物語などと仰っていますが、それは虚妄です。この世界は、元からこの様になっていたのです」

 

「虚妄……? 嘘って事なのか? じゃあ、【前の世界】。つまり、遊戯王のカードゲームが娯楽の範疇を超えない世界はなんだったんだ?」

 

 この世界が元から遊戯王中心の世界だったと言われても、俺にとっては前の世界の方がよっぽど普通だ。それにもしハスキーの言う事が本当だとしたら、この世界全ての人の思考や、世界の情勢を変えたという事になる。

 

 一部の所や人だったらまだしも、遊戯王が中心になっている世界で情勢すらも変えられるのは不可能だ。何故なら、その痕跡等が絶対に残るからだ。

 例をあげるならば、【前の世界】ではレゾンという会社は存在しなかった。これは間違いない。

 

 たとえ存在を隠そうとしても、ネットの書き込みやそれに関わった会社への痕跡が必ず残る。それにレゾンという世界を牛耳るぐらいの会社を隠すために存在を消したのなら、世界に何かしらの影響は必ず受けた筈だ。

 

 だが、そうはならなかった。自分なりの考えや結論を持ち、ハスキーは続けた。

 

「それがもし、夢だとしたら?」

 

「夢……?」

 

「これを話すには、まずこの宇宙がどのようにして生まれたのかを話さなければいけませんね」

 

「この世界がどうやって生まれたのか……?」

 

「長くなります。少々お時間を頂きます」

 

 そうして、ハスキーは言葉を紡いだ。

 

 

 

 

 遠い昔、ある男が闇を持って深淵を打ち倒し、深淵は宇宙の片隅に追いやられた。

 

 深淵は冷たい宇宙の中、微かに届く悪意を取り込んでいた。

 

 怒り、憎しみ、悲しみ、恐怖、絶望。

 

 それは生きている者が決して離れる事の無い悪意の感情であり、宇宙から取り込んだ悪意は宇宙を包むほど大きくなり、やがてまた新たな宇宙が誕生した。

 

 12の宇宙では無い別の宇宙、13個目の宇宙を作り出した。

 

 無数の星々に、無数の虚無。神秘的でありながら、手を伸ばすと魂さえ奪われる黒い空は、正しく深淵そのものだった。

 

 深淵は男に復讐を誓った。

 

 あの男に勝つ為に、更なる闇を求める為、自身に捧げる触媒を探した。そして見つけた。ある男を、親を知らず、何も知らない空っぽの存在は、自分にとって都合のいい人形そのものだった。

 

 深淵は赤子に自分の一部を宿した。そして、悪意を取り込む。少しづつ、少しづつ、まるで文明が作り上げる様にゆっくりと、着実に悪意は赤子に育てられた。

 

 だがある光が深淵を見つけ、それを消し去ろうとした。だが、光では深淵は消せなかった。しかし赤子はそれに気づかず、育てられ、闇と共に成長して行ったのだった。

 

 強い光はまた新たな影を作り出し、影は闇となってまた光を呑み込む。そこである者は考えた。事実を虚妄に包むこもうと。

 

 嘘で事実を包み込み、全てを思い出させなくさせる。まるで覚めた夢の事を忘れるかのように。

 そうして彼は世界を巻き込んで夢を見続けた……だが、そこ夢は覚めた。

 

 光と闇、相反する戦いは終わりを知らず今も尚続いている。この先の行方は、最早神さえも知らぬまま……

 もしも、依代がダークネスに触れたその時は……全ての宇宙は深淵よりも深い闇へと堕ちるだろう。

 

 

 

「なんか、壮大つーかなんというか……訳わかんねぇ」

 

「要はこの世界……いや、宇宙自体がダークネスという存在が作った事で間違いないのか? そして、ダークネスが花衣と接触した時には……まぁ、宇宙の終わりと言ってもいいのか?」

 

 空の考えにハスキーは頷きで答えた。

 

「そして、ダークネスの依代に選ばれたのが花衣という訳か……そして、その依代自体の存在を隠すために、あえて事実を物語にし、事実とは認識しないようにした訳か?」

 

「お、おい空。俺にも分かりやすく言ってみてくれ」

 

 話についていけなかった焔は空に分かりやすい説明を求めた。まぁ、確かに少し難しかったのも分かる。

 ストレナエ達も首を傾げて頭の上に疑問が浮かび上がっていた。

 

「例えば、お前は夢を夢だと認識できるか?」

 

「はぁ?」

 

「人は簡単に夢を夢とは認識できない。夢の中での自分自身は、いつの間にか夢の中の出来事が現実だと思ってしまい、夢とは認識出来ない事が多い」

 

「ええとつまり、どういう事だ?」

 

「……つまり、花衣は最初から夢を見せられながら生きてきたという事だ。最初から夢を見せられれば、それは夢として絶対に認識出来ない。一種の催眠みたいな物だな」

 

「催眠……?」

 

「夢遊病みたいな感じか。今思えば、1年前の花衣は確かに様子がおかしかった……これが原因か?」

 

「夢……? 何だよそれ……ふざけるなっ!!」

 

 思わず俺は叫び出した。

 

「今まで夢を見て生きてきた? 冗談じゃない! 俺はちゃんと今までずっと生きて……」

 

 その瞬間、言葉を発するのを止め、今までの人生を振り返った。

 

 灰色で何も感じず、虚無の日々を過ごした日々が脳裏に蘇り、胸の奥で焦燥が溢れ出そうだった。

 

「違う……違う違う! 俺はちゃんと生きてきた! 母さんとだってちゃんと! 生きてきた!」

 

 そうだ、俺には母さんがいた。生みの親は事故で亡くなったけど、母さんは俺を拾って、育ててくれた。

 仕事で家にいない日は多かったけど、誕生日や俺の大事な日には必ず来てくれて、一緒に過ごしてくれた。

 

 一緒にケーキを食べたり、一緒に買い物をしたりした。その事実は確かに俺の記憶と心に刻まれている。

 

「それに俺は焔や空とも出会って友達として過ごしてきた!それが嘘や幻だって、お前はそう言いたいのか!?」

 

空に突っかかり、空はハッとして俺に顔を向けた。

 

「俺はそんなつもりで言ったわけじゃない」

 

「ごめん……母さんを探しに行ってくる」

 

 これが嘘な訳が無い。母さんの存在だけが俺が生きてきた証拠だと言い聞かせ、俺はこの部屋の扉を勢い良く開け、母さんを探した。

 

「花衣様! 待って下さい!」

 

 後ろの方でティアドロップの声と、皆が止める声が聞こえ、足音も複数耳の中に入ったが、それは頭の中に入らず、俺は母さんを探し、走った。

 

 

 

 

 花衣を追いかけ、精霊達は全て外に出て言ってしまい、ここにいるのは彼方と天音、焔、空と雀、そしてハスキーとアロマージだけとなった。

 

「お、おいおい行っちまったぞあいつ。どうすんだ?」

 

「……すまない。俺の無責任な発言のせいだ。俺も花衣を追いかける」

 

「いや、花衣君の事は六花達に任せよう。それよりもハスキー、貴方に聞きたいことがある」

 

 彼方は花衣を追おうとする空を止め、ハスキーの話を聞くようにと目で伝えた。

 

「ハスキー。今の話は本当に真実なのか? 俺には、さっき言った事がその場しのぎの嘘としか思えないが」

 

 彼方の揺さぶりにハスキーは顔を一瞬歪めた。その一瞬を彼方は見逃さず、更に追求した。

 

「やはりな。おかしいと思ったんだ。もし花衣君がダークネスの依代という事実が正しければ、花衣のお母さん……監視者の1人であるウィッチクラフト・ジェニーの事はどう説明するんだ」

 

「ど、どういうことだ?」

 

「都合が良すぎるということだな。ダークネスの依代である花衣を今まで育ててきたのは、才華……いや、ジェニーだ。おかしいだろ、ジェニーと目の前にいるハスキーは話を聞く限りではダークネスとは敵対関係だ。何故花衣がダークネスの依代だと言うことが最初から分かったんだ?」

 

 彼方の考えを空が変わりに言い出すと、焔はポンと手を叩いて理解したらしい。

 

「あ、そうか。わざわざ敵の奴らが花衣がダークネスの依代だぞ〜って自分から言う訳無いもんな」

 

「それに、依代程度であのウェルシーが花衣君に対する異常的な崇拝も気になるしな」

 

 空は、ウェルシー達の花衣に対する態度も気になっていた。依代とは言ってしまえば生贄と何ら変わらず、ダークネス本体とは言い難い。

 

 空は初めてウェルシーが花衣に対する忠誠心から、そのような違和感を得たのだ。

 

「流石だね空くん。それに疑問は3つある。1つ、何故ダークネスの依代が花衣君だと分かったのか、2つ目は俺の虚妄についてだ。俺も花衣君と同じように遊戯王の物語は知っている。そして3つ目は……」

 

 彼方はそばにいる天音の手を繋いだ。

 

「ウェルシーから聞いたんだが、俺と天音には使命というのがあるらしい。その使命とは何だ」

 

「……聞けば引き返せませんよ」

 

「もう引き返せない所まで来てるさ」

 

 彼方はこの瞬間、天音を守ると誓いながら天音の手を離さなった。天音も彼方の手を握り直し、この後の言葉を聞く心構えを終えた。

 

「俺もさ。それによ、その話が本当ならダークネスの味方のウェルシー達も世界を闇に? まぁ、とにかく危ない目に合わすんだろ。黙っちゃいねぇさ」

 

 自らを奮い立たせるように焔は右手で拳を作り、左手でそれを何度も受け止めていた。

 

 焔は決意を顕にし、焔は空を目に向けると、目に向けた先は雀に気遣っている空を目撃した。

 

「……お前はどうするんだ?」

 

 空は雀にそう聞いた。雀は頭と心に刻まれた恐怖が蘇りつつあった。

 

 雀はこの先命をかける領域だと本能的に感じていた。精霊の事なんて今見ても信じられず、まだあの時のトラウマは頭の中から離れていない。

 

 逃げ出したい。何もかも忘れたいと体を震わせながらも、雀は花音と共に過ごしてきた精霊であるアロマージ達に目を向け、攫われた花音の姿が過ぎった。

 

 雀の瞼の裏に、花音と過ごした日々が蘇る。

 

 数々の出来事を胸に雀は立ち上がり、右手で左手を隠し、不敵な笑みを浮かべた。

 

「無礼者が! 我は闇を統べる者ぞ! この程度で怯えるなんて事は無い!」

 

 トバリとしての雀を見せつけたが、よく見れば足が小さく震えていた。空はその震えを見逃さず、もう一度雀の顔を見た。その顔は怯えながらも勇気を出した者の顔であり、怯えを必死に堪えていた。

 

「それに……私、花音と霊香、カレンも助けたいから」

 

「らしいぞ」

 

 空はアロマージ達の方に目を向け、アロマージ達は何も言わず、目で言葉を交わした。

 

「私達も同じ気持ちです。私達は花音に助けられました。だから今度は、私達が彼女達を助ける番です」

 

「……かしこまりました。では、真実を話しましょう。3つ目の質問からお教え致します。彼方様、そして天音様には重要な使命があるのは事実です」

 

 ハスキーは服のポケットからある1枚のカードを取り出し、表側に向けるとそれは何も書かれていない白紙のカードだった。

 だが、カードには無数の粒子がまるで星々の様に輝いており、普通のカードでは無いとこの場にいる者全てが一目で分かった。

 

 ハスキーはそのカードを天音に渡すと、天音はそっとカードを手に取り、カードが白く輝き出した。

 

 瞬間、天音の頭の中に何かが語りかけて来た。産声の様であり、鳴き声でもあり、或いは川や森のせせらぎでもある不思議な音が、天音の耳や心に溢れ、満たしていた。

 

 それが表すように天音の体にも変化があった。金色の髪は美しい銀色に変わりつつ、目も星のように輝く。

 

「天音!!」

 

 天音とカードの異変を感じた彼方がすぐ様カードを取り上げ、カードの輝きは消え、天音も様子も戻り、少し静寂を過ぎた後、彼方は天音に体を寄せる。

 

「大丈夫か天音!? 怪我とかは無いか?」

 

「うん。大丈夫だよ」

 

 天音はこう言うが、彼方は念の為に天音に外傷がないか隅々まで確認し、自分の目で外傷がない事に心の底から安心を吐き出した。

 

「そうか……お前、天音に何を渡した」

 

 彼方はハスキーに怒りの目を向け、さっきの異常には焔や空達の警戒心を煽った。

 焔は直ぐに不知火の刀を持つ準備を始めており、次何かしたら飛びかかる勢いだ。だが、その勢いは天音の行動によって沈黙した。

 天音が彼方の元から離れ、ハスキーを庇うように両手を広げ、ハスキーの前に立ったのだ。

 

「や、止めてあげて。この人は……わ、悪い人……? ドラゴンさん? じゃ、ないよ!」

 

「天音……」

 

「お、おいおい。これどうすんだ?」

 

 あまりの予想外の行動に焔は困惑しつつも警戒心が解きはじめ、空も彼方に向けて考えを送った。

 

「彼方さん、話を聞いてみよう。ここでやり合っても、情報が得られない」

 

「……分かってる。ダメだな、直ぐカッてなるのは」

 

 自分の行動に反省しつつ、話しを続けてくれとの目線を送り、ハスキーは続けた。

 

「天音様の使命はそのカードの力を開放する事です」

 

「これが? ……このカードは何だ?」

 

「それは、この宇宙が作り出した時に産まれたカード。端的に言えば、ダークネスに対抗する為のカードです」

 

「だが、このカードには何も書かれていないぞ」

 

 誰がどう見てもそのカードは白紙のままであり、先程の様に光り出す事も無かった。

 

「そのカードはまだ産まれていないのです。無限の可能性を秘めており、どのようなカードになるかはその時になるまでは分からず、その力を解放させる為には天音様の力が必要なのです」

 

「天音の力? ……まさか、精霊と話せる力と関係があるのか?」

 

「その通りです。天音様の使命とは、数多の精霊と心を通わせ、そのカードの力を解放させる事です。そして、貴方はそのカードを使い、ダークネスを倒す……いえ、消滅させる事なのです」

 

「俺がダークネスを?」

 

 彼方はもう一度白紙のカードを見つめたが、全くその力が感じられず、ハスキーの言う事を疑った。

 

「信じられないのも無理はありません。ですがこれが貴方達2人の使命です。そしてこのカードは、同時にレゾンカードを生み出されるカードでもあります」

 

「何だと……!?」

 

 すると彼方が持っていた白いカードがまた輝き始め、数枚のカードからまた新たなカードが生み出された。

 

 新たに生まれたカードの方には、テキストやモンスターが描かれており、誰もが見た事ないカード……レゾンカードが彼方の手に渡った。

 

「これは……!」

 

「そのカードは貴方に託します。……ですが、白紙のカード。オリジンカードは返してもらいます」

 

 彼方はオリジンカードと呼ばれた白紙のカードをハスキーに投げ渡し、新たに作り出されたレゾンカードを手に取って見た。

 

 そのカードは間違いなくギャラクシーアイズのカードであり、彼方にとっては願ってもいない新たなカードだった。

 

 使命を託されたカードを見た彼方はこの瞬間、自分が普通の人間とは違うのだと確信した。

 

「話すのが遅れましたが、これが私達監視者の2つ目の役目です。レゾンカードはダークネスに対抗する為に生み出された物、そのためとても大きな力があります。私達は、このカードに相応しい人を見極める為にこの世界に参りました」

 

「つまり、監視者はウィッチクラフトやドラゴンメイドだけではないと?」

 

「なるほど、花衣の監視者と同時に、レゾンカードの選定者でもあったのか」

 

 ハスキーはコクリと無言で頷いた。

 

 確かに、これ程の力があるカードを不特定多数の人間に使わせる訳には行かないと彼方は納得した。

 もし不特定多数の人間にカードを使わされれば、それこそ悪意ある人間がこのカードの力を使って良からぬ事をするのは目に見えていた。

 

「それで? ダークネスを倒すという大層な使命がある俺と天音は何者なんだ?」

 

 普通では無いという事を受け入れ、彼方はハスキーから逃げないように真っ直ぐと貫く目線を向けた。

 ハスキーはその覚悟を受け取り、嘘偽り無い真実を彼方に告げた。

 

「貴方と天音様は……ダークネスを倒す為に生み出された精霊です」

 

「……そうか」

 

 彼方は目を閉じ、この事を静かに受け入れていた。

 

 生み出された……つまり、この世界の人間では無いとこの場にいる誰もが半ば理解した。

 普通の人間でも無ければ、生まれさえも特殊に思わず彼方は力無く笑った。ここにカレンが居たらどんな言葉を浴びせるのだろうかと考えていたが、そのカレンはウェルシー達によって連れ去られた為、もう居ない。

 

彼方は天音を手をそっと握り、心の奥底から真実を受け入れようと努力した。

 

「じゃあ何だ? 彼方と天音はモンスターって事か?」

 

「そういう訳ではありません。そもそも貴方方の言う精霊とは、言わば別の世界の住人です。お二方のように普通の人間もいらっしゃいますし、精霊の世界は何も1つの事を指しているのでは無く、いくつかある世界の一纏めを指しているのです」

 

「あ〜……ダメだ、頭痛てぇ……」

 

「わ、私も何を言ってるのか分からない……」

 

あまりの情報量に、焔と雀はこの話についていけなかった。

 

「要するに、精霊の世界は複数あって、彼方さんと天音ちゃんは別世界の人間という事だろ?彼方さん達の使命は分かったが、彼方さんの……虚妄か? その事については何も言ってないぞ」

 

「それにつきましてはお教えする事ができません。ある方によってそのようにしろと、お願いされた故……」

 

「ある方……?」

 

 彼方の代わりに空が問い詰めようとしたが、ハスキーはそれについては固く口を閉ざしてしまった。これ以上無駄だと悟り、空はこれ以上何も言わなかった。

 

 いや、言わないと言うより聞く姿勢に入っていた。次はなんと言っても、花衣の本当の正体についてだからだ。

 だが、空の頭の中には1つの結論が導き出されていた。

 

 だが、それはあまりにも花衣にとって残酷な物であり、この場にいる者達にとっても最も考えたく無いものでもあった。

 神頼みという事はあまりしない空だが、この時だけはどうか自分の考えが間違っている事を願っていた。

 

「それでは、このお話をしましょう。花衣様の本当の正体は……」

 

そしてそれは、各々の心を砕くのに充分な事実だった。

 

 

 

 

 

 

「母さん……どこだ?」

 

 思わず皆から離れ、母さんを探して廊下に出たが、母さんと一緒にいたロゼが何処にも居なかった。

 何かあったのか、またウェルシー達に攫われたのかと頭の中で考えが張り巡らせ、また俺は廊下を駆け巡る。

 

「母さんは……夢なんかじゃない……!」

 

 本当の親は不幸な出来事で亡くしてしまった赤ん坊の俺を引き取って育ててくれて、母親として一生懸命俺をここまで育ててくれた。

 

 その軌跡は決して偽りなんかじゃない。そう言い聞かせながら母さんを探す。窓ガラスに見える光景は目には映らず、血の味の様な息が喉を通る。

 

 頭が痛い……少し吐き気もする。だが、走る足は止めなかった。

 

 そして……見つけた。母さんとロゼが、窓際の所で向かいあって話していたが、ロゼは急に膝を崩し、片膝を付いた。うっすらとロゼが赤い閃刀を地面に突き刺したのが見えたが、そんな事はどうでも良く、俺は叫んだ。

 

「母さん!!」

 

 俺の声に気づいたロゼと母さんは驚き、ロゼは何故か赤い閃刀を消えさせたが、それすらも気づかずに俺は母さんの前に立つ。

 走り続けた疲れが息となって吸っては吐き出すのを繰り返し、頭が緩く締め付けられる痛みになりながらも母さんに顔を向けた。

 

「か、花衣? どうしたのそんなに息切れして……何かあっ」

 

「母さんは! 嘘じゃ無いよな?」

 

「……え?」

 

 いきなりこんな事言われて驚いた母さんを見た俺は、自分が支離滅裂な言葉を発しているのをようやく気づいた。呼吸を整え、母さんが分かるような言葉を伝えた。

 

「母さんは……俺の事、息子って思ってるかな。俺は母さんの事、血は繋がって無くても本当の母親の様に思っている! 誕生日とか祝って貰ったことあるし、大事な日とかはちゃんと家に帰ってくれた。たから……」

 

 上手く言葉に言い表せない。不安や焦り、そして母さんに真実を伝えないような言葉が上手く出せず、言葉を出すどころか言葉を失ってしまった。

 

 舌を斬られた雀の鳥のように何も言えず、呼吸する事しか出来なかった。

 

「花衣……」

 

 そんな俺を落ち着かせるように、母さんは俺を静かに抱きしめ、頭を撫でた。

 

「大丈夫、落ち着いて。私は貴方の……」

 

 母さんは何故か声を震わせ、その後の言葉を言わなかった。だがそれは一瞬であり、昔のように優しい声色で言って欲しいことを言ってくれた。

 

「私は貴方の母親よ。それだけは……それだけは本当だから」

 

 俺は静かに涙を流した。安心が溢れ出すように涙は止まらず、母さんの服を濡らし続けてしまう。

 そんな俺を母さんは離さずゆっくりと頭を撫でた。うっすらと頭の中で、これと同じ様な光景が思いだされる。

 

 今住んでいる家とは少し違った部屋はオレンジ色の明かりが灯り、多数の本が積み上げられた本の塔とまた違った本と巻物が敷き詰められた数々と棚に囲まれていた。

 

 _良い子ね█カイ。貴方はいつか立派な□█に……

 

 瞬間、頭の中の光景に電子の砂嵐が走った。辺りの光景はまるで塗り潰されるかのように途切れ途切れに代わりだし、目の前の光景が変わりだしていく。

 

 赤い絨毯が敷かれたまるで貴族のような部屋に……ベッドの上には黒い服を身にまとったグリーンゴールドの色を持った女性が、赤子をあやしていた。

 

 ……いや違う。赤子は俺だった。これは赤ん坊の頃の記憶だろうか。だとすれば、今目の前にいるこの人は俺を産んでくれた……血の繋がった本当の母親なのだろうか。

 

 _泣かないで。大丈夫です。ずっと貴方の中で、貴方を守りますから

 

 そうして母親かもしれない女性はそっと俺を抱き寄せ、俺の意識は現実へと引き戻された。

 

「花衣、どうしたの?」

 

「あ……いや、何でだろう……なんか、昔のことを思い出しちゃって……」

 

「昔って、いつの?」

 

「え? えっと……今いる家には無い部屋だったから……結構昔かな? よく思い出せないけど」

 

「大丈夫よ、私はずっと覚えてるから。貴方が赤ん坊の頃から今まで……」

 

「……うん、ありがとう」

 

 色々あったのに、母さんは何も聞かずにそっと傍に居てくれた。本当に色々あった。俺の正体とか、監視者の目的とか、色々。でも、この瞬間だけは全てを忘れて涙を流した。

 

「……親子水入らずね」

 

 ロゼが気を利かせてなのかこの場から離れようとすると同時に、ティアドロップ達皆も少し離れた所でさっきの出来事を見たのか、その場から動きはしなかった。

 

「ロゼちゃん、お義母さん……ううん、あの人」

 

「アイツは花衣に正体を隠す事を選んだ。これからも、ずっと花衣の事を騙していく。……でも、それが花衣の為でもあるかも」

 

「うん、嘘は時には武器にもなるし、優しさにもなる」

 

「カメリア、君が言うと妙に説得力があるな」

 

「アザレアだって、嘘つくの得意なくせに」

 

「ふっ、お互い痛い所を突かれるな」

 

「でも、もし彼女が花衣の事を……花衣の幸せを壊そうとするならそうなる前に潰す。私が生きてるのは、花衣の為だから」

 

何かロゼが話し込んでいるようだった。

 

 だが、それを壊すかのように、コツコツとゆっくりと、それでいて大きく着実にこっちに近づく足音が鳴り響く。

 徐々に大きく、ゆっくりと近づく足音と共にその人はここに現れた。

 

「彼方さん……?」

 

 名前を呼ばれても彼方さんは何も言わず、ただ俺を見るだけだった。

 

「花衣君。俺とデュエルしよう」

 

「デュエル……?」

 

「あぁ。花衣君、俺は君を……本気で倒しに行く」

 

 彼方さんの目は、本気で俺を倒そうとする目だった。まるで、仇でも見ているかのように……強く、真っ直ぐで、畏怖する目だ。




明らかになった情報

・世界について
この世界はダークネスによって新たに生まれた宇宙であり、この世界だけは精霊との繋がりを持っていなかった。
花衣がダークネスの依代だとは悟られないように、あえて遊戯王が娯楽の範疇を超えず、事実が物語が存在していた。しかし次第にこの世界は精霊の世界と繋がりを持った為、その虚妄は壊されてしまう。

・花衣の正体
その正体はダークネスの依代であり、言うなればダークネスが復活する為のパーツである。もし花衣がダークネスと接触すれば、ダークネスは復活し、全ての次元の宇宙は深淵に包まれる事になる。
だが、真相はまた別らしい……


・虚妄について
結論から言うと、花衣と彼方は夢を見せられた状態であり、一種の夢遊に近い状態だった。
物語の存在や、デュエルは娯楽として存在を今まで夢として植え付けらていたが、最近になってその虚妄は解かれた。原因は恐らく、ウェルシー達によって精霊の世界との繋がりが持ったと考えられる。
また彼方にもこの現象を受けた理由は、ある人物による要望だと言うが、その理由は不明。

・天音、彼方の役目
この世界にダークネスが出現した時の対策として、産み出されたのが天音と彼方である。天音は数多の精霊を使役する力を持っているが、ダークネスの依代である花衣がこの世界に来た為か、まだ力が制御出来ないため、彼方にも一部力を継承させていた。

・レゾンカードの役割
レゾンカードはダークネスに対抗する為に天音が無意識に創り出したカードであり、オリジンカードを完成させる為の副産物であった。あくまで対抗する為のカードだが、ウェルシー達にダメージを与えるのも可能。
もし花衣がこのレゾンカードに敗れた場合、レゾンカードの力により花衣の存在は消えてしまう。

また、レゾンカードの一部は精霊が見える能力があり、彼方と空のカードが該当する。

・オリジンカード
レゾンカードを生み出せるカード。
ダークネスを消滅させる為に産まれたカードであるが、その本当の力はまだ開放されていない。
この力を開放する為に天音が誕生したが、肝心の天音が力を出し切れていないのが現状。


・ウェルシー達の目的について
通称セブン・エクリプス。
ウェルシー達の最終目的はダークネスの復活。その為には花衣の存在と、7つの罪を担う7つの存在が必要不可欠。
7つの罪の存在は誰でも良いという訳では無く、この世界を覆うほどの闇を持っている人物でしか相応しくないと言う。

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