六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
どこにでもある広場には、若々しい緑色の芝生が生い茂り、心地よい風が吹いている。
だが、今その風はある人物への恐怖となって俺の心と体を貫き、体と細胞、そして本能さえも震え出してしまう。
震える手で俺はデュエルディスクを上げ、カードという剣を引き、自分が生きる為に戦う。
「……彼方さん」
俺は今は敵である彼方さんに言葉を発したが、彼方さんは聞く耳を持たなかった。言葉は威圧で斬り伏せられ、最早俺達はこうして戦うことしか道は無かった。
「本当に俺と戦う気ですか?」
「言った筈だ。俺は君を倒す。そういう風に産まれたらしいからな」
そう言い放ち、彼方さんは口を閉ざした。
どうしてこうなったのだろうか……事の発端は、1週間前のあの日、俺の誕生日に起きた悲劇に遡る。
_デュエルが始まる前……
あの時の悲劇が起こり、あまりの情報量とショックの出来事に、数日間俺は部屋に引きこもるような形に陥ってしまった。
電気も付けず、机の上には乱雑に置かれたカードの山と、律儀に並べた六花達へのプレゼントが置かれた。
ストレナエ、プリム、シクランから貰ったスノードームが白銀に淡く輝き、その隣でレイ、ロゼ、アザレア、カメリアが作ってプレゼントとしてくれたキツネ型の小型ロボット、俺が【閃花】と名付けたロボットがスリープモードになり、体を丸めて寝ていた。
もっとも、俺が手動でそうした訳だが。
閃花は俺の心情を理解するプログラムが施されているのか、落ち込んでいた俺に寄り添うように機械の皮膚を擦り寄せた。
嬉しいのは嬉しかったが、今はとにかく1人になりたかった為、閃花をスリープモードにした。
ひとひらも閃花と同じように俺に寄り添ってくれたが、俺の顔を見たひとひらは、その後寄り添う事はしなかった。
「夢を見せられて生きてきた……か」
俺は机の上に行き、6枚のカードを手にした。そのカードは、【ブラック・マジシャン】【E-HEROネオス】【スターダスト・ドラゴン】【希望皇ホープ】【オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン】【ファイア・ウォール・ドラゴン】だった。
どれもパックで当てた物であり、使いはしなかったが記念として残してあった。
これらのカードはある人物達のエースモンスターであり、この世界に生きる人達にとっては、なんの変哲も無いカードだが俺にとってはデュエルを始めたきっかけでもあるモンスター達だ。
テレビという箱の中で、このカードを使っていくつもの修羅場を超え、強敵やライバルと戦ってきた。
それがきっかけで焔と空と一緒にデッキを探したり、店長さんと初めてのデュエルをしたり……そして、ティアドロップと出会った。
だが、俺が見た物語は全て物語のフィクションでは無く、現実だった。
そして、その現実を物語として植え付けられて生きてきたらしく、俺は今までずっと夢を見ながら……いや、現実の俺は人形の様に誰とも交流せず過ごしてきた。
今思えば、俺はこれまで何事にも興味を示せず、息を吸い、食事をするだけの植物の様な生き方しかしてこなかった。
いわば人形のような生活だった。あまりにも笑える話だ。今まで生きてきた軌跡は全て幻……俺は最初から監視者達によって、生き方さえも管理させられていたのだから。
でも、母さんは違う筈だ。俺を育ててくれた人だけは嘘じゃないって決まっているのに、どうしても疑いと不安が拭い去れなかった。
ドアのノック音が聞こえた。多分、母さんだろう。
「……花衣? ご飯、どうする? もう貴方3日も部屋から出てないから心配で」
3日……もうそんなに経っていたのか、それなら腹が減るのも当然だ。動いてないから体も少し動くのが辛い。重い体を何とか動かし、扉に近づきその扉を開けると、母さんだけではなく、いつものドレス姿では無く、青いワンピースをその上に黒い長めのベストを羽織ったティアドロップが料理が乗せられていたトレーを持っていた。
トレーには温かいシチューが湯気を立ち昇らせており、さっき作ったばかりだったのだろう。
「やっと出てきてくれた。ティアドロップさんも心配で来てくれたのよ」
「花衣様……」
「うん、ありがとう。これ、食べとくから」
会話らしい会話は殆どせず、俺はシチューを手に取り、扉を閉めた。
「あ、待ってか……」
母さんに呼び止める前に扉を閉め、母さんを拒んだ。
バラけたカードを片付け、机の上にシチューを置いたが、食べる気はしなかった。
白い湖の上には色取りの野菜が浮かび、本当に美味しそうだ。
きっと、母さんとティアドロップが俺の為に一生懸命作ってくれたんだろう。
シチューの匂いが鼻を通り、食欲を刺激させる。机の傍にある椅子に座り、銀色のスプーンを使ってシチューを1杯すくう。
スプーンにはシチューと人参、玉ねぎがすくわれ、1口食べる。
「……美味い」
本当に美味しい。野菜は本来の甘みを損なわうこと無く茹でられ、シチューもミルクの濃厚な味が舌の中で踊っていた。
普通だったらどんどん食べられるのだが、今はもうこの1杯でもう食欲を失せてしまった。まるでさっきの1杯でこのシチュー全てを食べた様な感覚だ。
食欲が失せ、ほぼ満杯のシチューを部屋の外に置こうと扉を開けると、そこにはまだティアドロップが部屋の外で待っていた。
「ま、まだ居たのか!?」
「当たり前です。私はいつでも貴方の傍にいたいのですから。……それよりも、まだこんなに残っていますよ」
多く残っているというか、スプーン1杯しか食べられていないシチューを見たティアドロップは目を細め、俺を押し倒さんと言わんばかりに俺ごと部屋に入ろうとした。
シチューがあるトレーを両手で持っているから抵抗らしい抵抗も出来ず、明かりの付いてない部屋にティアドロップを入れてしまい、部屋に入ったティアドロップはシチューを取り上げ、俺に食べさせようとしていた。
「口を開けてください花衣様。もう3日何も食べていないのです。何かを入れないと体が持ちませんよ」
「も、もう腹は膨れたから大丈……」
そして、俺の意思とは関係なく腹の音が鳴った。隠しようの無い音にティアドロップはまたじっと細めた目で俺を睨み、無言の厚を乗せながらシチューを食べさせようとスプーンを近づけさせた。
「ほら、やっぱり何か食べほうが……」
「良いから! 勿体ないなら、お前が食べれば良いだろ」
「……分かりました」
するとティアドロップはシチューを机の上に置き、そのまま俺の言う通りシチューを食べた。
妙に味わって食べているが、ティアドロップの事だ。きっと改良点を探す為に味わっているのだろう。相変わらず、俺の為に労力を惜しまない良い奴だ。俺なんかには勿体ない。
嬉しい気持ちもあるが、今は引け目を感じてしまい、ティアドロップを背にすると、ティアドロップから肩を叩かれた。
「今度はなんだ……」
少し苛立ちが抑えられなかった声色で振り返った瞬間、ティアドロップのくちびるが俺の唇と重なった。
いや、重なるどころかティアドロップは俺の口を強引に開けさせるように舌まで入れ、俺の口に何かを流し込んだ。
「んっ……ちゅっ……
暖かく、少しとろみのついた液体……間違いない、これはさっき食べたシチューだった。所々人参やじゃがいもが崩されており、固形物の野菜が俺の口に流し込むのは容易だった。
どうやらティアドロップが変に味わっていたのは、味わっていたのでは無く、野菜を俺よ口に流し込める程に噛んでいたからだ。
ティアドロップの口から俺の口へとシチューが流れ込み、抵抗する力がどんどん失われていく。
振り解こうとしてもティアドロップは俺の顔を両手で掴み、どんどん体を寄せていき、ついにはベッドの上に押し倒される。
数秒が数分と感じる時間の中、全ての物を俺に流し込んだティアドロップは唇と舌を離し、俺はシチューを全て飲み込んだ。
「んっ……はっ……どうしたか? 口移しのシチューの味は」
ティアドロップはしてやったという顔で口元についたシチューのシミを舌で舐め取り、妖艶に笑った。
口移しのシチューの味は……はっきりいって分からなかった。
ティアドロップと口重ねたあの時、俺は味覚を失ったかのような感覚に陥った。
感じられたのはシチューの温かさととろみ、噛み砕いた野菜の感触と、ティアドロップの柔らかな唇と俺の口を犯す舌だけだった。
というより、後に言った2つぐらいしか感じられなかった。
「な、なにやってんだ!」
「こうでもしないと食べないでしょう。さぁ、もう一口いきますよ」
「待て待て待て! 分かった! 食べるから!」
慌ててシチューの皿を取り、1杯、また1杯とシチューを食べ進めた。
「初めからそうすれば良いのです。……あ、でも花衣様が抵抗したので口移しが出来たと考えれば……ふふ、儲けものってやつですね」
「相変わらず強引だな……」
「こうでもしないと、花衣様は話もしませんから。……この3日間、私たちを避けていたのは何故ですか?」
「……俺がダークネスの依代だからだ」
食べる手を一旦止め、俺はあの時ドラゴンメイド・ハスキーに言われた真実を思い出した。
_貴方はダークネスの依代なのです。
依代……簡単に言えば霊が取り付く対象であり、俺はそんなダークネスの依代……つまり、ダークネスが取り付く存在という事だ。
ダークネスとは、俺が知る限りだと物語上の存在だったが、ハスキーの言う事ではその物語は実際にあった出来事であり、ダークネスは着々と復活の準備を進めていたらしい。
ダークネスとは宇宙の闇が作り出した存在と言われ、闇そのものの存在だ。ダークネスは人の心の闇に付け込んで自身の虚無の世界へと引き摺りこむ事をしており、それはある人物によって人類の全滅は免れたが、そのダークネスを復活させようとしているのはウェルシー達の組織、セブン・エクリプスだ。
セブン・エクリプスはダークネスの復活の贄として花音、霊香、カレンさんを攫い、今の所その動向は掴めていない。
こうしている間もダークネスが復活する時間は迫り、その依代であると言われたら拒みたくもなる。いつ俺がダークネスに乗っ取られるか分からないし、もしティアドロップ達を手にかけたらと考えると……拒みたくもなる。
「……俺は、みんなと一緒にいちゃいけない。だったら、俺はこのまま消えてしまいたいっ……!」
「花衣様……」
「それに、俺は今まで嘘の人生を歩まされた。信じていたものが嘘で、今まで見てきた物感じてきた物が全部幻って言われたら、もう何を信じれば良いか分からないんだ……」
果たして俺は生きていたと言えるのだろうか。全てが嘘で塗り固められた幻を見せられながら生き、そして自分がこれからどうすれば良いのか、生きる事さえ正しいのか疑問を持ってしまう。
いや、いっその事ここで消えたいと願ったその瞬間、ティアドロップが後ろからそっと抱きしめた。
「そんなこと言っては行けません。それに、私達は決して虚妄でも、幻でもありません」
ティアドロップは俺の右手を掴むと、自分の右頬に俺の右手を添えた。
「感じますか? 私の肌の温もりを」
手のひらから微かに暖かく、滑らかな肌の心地よさが感じられた。俺はその問に頷いた。
次はゆっくりと撫でるように俺の右手を動かし、手はティアドロップの唇に触れた。
「んむっ……どうですか? 私の唇は。柔らかくて、弾力がありますよね」
指先が温かくも弾力のある感触が伝わってくる。少し押すと跳ね返されそうな程ハリがあり、唇の色も美しい薄い桃色だった。
さっきこの唇でキスをしたと思うと、胸の内側から熱いものが込み上げてきた。この気持ちはなんだろうか。
胸の気持ちが分からないまま、俺はティアドロップの問に頷いた。
次にティアドロップは手を顔から離し、ティアドロップの豊満な胸へと手を誘おうとしていた。
これからやられることに咄嗟に左手でティアドロップの腕を掴み、その進行を止めた。
「そ、それ以上は……ダメだ」
「どうしてですか? 私達はこれ以上の事をシたのですよ? この服の隔てりが無くなり、赤子のように私の胸を花衣様は……」
「だぁぁ! 言うな! 思い出してしまう!」
大声であの時の夜の事を思い出さないようにしたが、ティアドロップの微笑みはあの時の夜と全く同じ様な顔をしていた為、否が応でもあの時……深夜0時の誕生日の出来事を思い出してしまった。
ティアドロップは笑って俺を受け入れ、誘い、体を重ねた時のことが一瞬現実と重なった。
その一瞬力が抜けた俺の腕がティアドロップの力に負け、俺の手のひらがティアドロップの胸を鷲掴みにした。
鷲掴みと言っても、ティアドロップの大きな胸は俺の手には収まらず、両手を使っても手から溢れ出る程の豊満さがあった。
指先から手のひらまで胸の奥まで沈み、このまま力を入れたら握り潰してしまう程に柔らかな胸は、何度も触ってきたが、それよりも感じられたのはティアドロップの心音だった。
ドクンドクンと、一定のリズムの心音は、俺のバクバクと鳴っている心音と違ってとても落ち着いていた。
「感じますか? 感じますよね? 私の鼓動、胸の柔らかさ。花衣様はこの私が幻だと思いますか?」
「……思わない」
「花衣様、私達は確かにここに存在します。貴方を想い、貴方だけを考え、貴方の為に生きています。この存在とこの事実だけは、幻でも嘘でも無く、貴方にとっての真実です」
ティアドロップはそれを証明しようと俺と体を密着させた。胸が潰れる程強く、互いの体の裂け目を無くす程の熱い抱擁は、幻ではなく、確かに感じられる物だった。
「それに、貴方は自分の意思であの時レイを助けたのでしょう?」
ティアドロップが言っている事は、俺が初めてレイとロゼに出会ったあの日だ。
レイとデュエルし、負けたレイは地割れに巻き込まれて谷底に落ちていった。
それを見た俺は無意識に体が走り、落下するレイの谷に飛び込んでレイを助けたのだ。あの時は本当に無意識であり、自分でもなんであの行動に出たのか当時は分からなかったが、今思えば俺がカイムの生まれ変わりだからあんな事をしたのだろうか。
だけどあの時、俺はレイを助けたいと思ったのは紛れもない事実だ。
「誰かを助けたい、誰かの力になりたい気持ちは決して虚妄では出来ません。貴方はいつだって誰かの為にここまで生きてきたのです」
「そうですよ、花衣さん」
「!?!?」
突然風のように俺の部屋のベッドの上にレイが座っており、レイは俺たちの前に現れた。
「れ、レイ!? なんでここに?」
「なんでって、花衣さんが心配で来たんですよ。声をかけようと思ったらその人が先に来ていたので、窓の1部を切り抜いて内側から鍵を開けました」
レイが窓の方に目を向けると、確かに窓の一部が綺麗な円に切り抜けられていた。あれも閃刀の技術によるものだろうが、それを強盗まがいな事に使わないで欲しい。
「というかなんでティアドロップさんの胸を掴んでいるのですか!!」
「え? い、いやこれはティアドロップが……」
「んっ……花衣様、揉む力が強いですよ♡」
「そんなに力入れてないぞ」
「ぐぬぬ……じゃあ花衣さんの左手を借りますね! ほら! どうですか花衣さん! 私の胸は!」
今度は左手腕をレイに取られてしまい、左手がレイの胸を掴んだ。ティアドロップとは一回りも小さいが、それでも大きい部類だ。というか六花達が全体的に大きすぎるかもしれない訳なのだが……
レイの胸はティアドロップと違い、弾力があった。少し揉むと指が少し押し返され、違った揉み心地が……って、何言ってるんだ俺は。
もう恥ずかしさで手を離して穴があったら入りたい程だ。穴と聞いて蟲惑魔のカード達が手招きしているようにも見えたが、お前らの穴だけには絶対に入りたくない。
そんな事はどうでもいい。話そうとしてもやはり精霊の力には勝てず、なされるがままにされていると、ティアドロップはニヤリと笑った。
「あぁ、少し気分が昂ってしまいました。どうですか? 私達で今からでも……」
「ま、待ってくれ! まだ日が高いし母さんだっているんだぞ!」
「……確かに、そうですね。流石にお義母様がいる中では出来ませんね」
するとティアドロップとレイは俺の手を話し、俺は手を直ぐさま2人の胸から離した。
……まだ2人の感触が忘れられない。
「まぁ仕方ないですね。また次の日にしましょうね、花衣さん」
「やる事は確定なんだな……」
「当たり前じゃないですか! ティアドロップさんだけにやって、私達を除け者にするのは嫌です! ちゃんと私にもしてくださいね!?」
「なんで俺が怒られてるんだ?」
「それはともかく、花衣様。彼方様とのデュエルはどうされるつもりですか?」
「めちゃくちゃ話の腰折るなぁ……」
だが、どこかで気持ちの切り替えは必要だ。
ティアドロップの言う通り、彼方さんとのデュエルをどうするかは決めなければならない。
あの時、デュエルを挑んだ彼方さんの目は明らかに俺を倒そうとしている目だった。
それはつまり、レゾンカード……俺を倒す為のカードを使うという事だ。もし俺がそのデュエルにレゾンカードによって負けてしまえば、俺の存在は消えてしまう。
勿論このデュエルに行かない選択肢もある。行かなければどうなるかなんてことは彼方さんの事を考えると無いと思う。
だが、あの時の彼方さんの目は何かを訴えかける様な目でもあった。あの目が一体何を意味しているのか、俺は知りたい。
知らなければ、きっと後悔してしまうような気がする。
「……俺は彼方さんとデュエルしようと思っている」
「そんな! 無茶ですよ!」
レイの言う事も分かる。俺と彼方さんのデュエルの腕は大きな差がある。負ける可能性は大いにある。
だがらって挑まない理由にはならない。
「俺は、彼方さんがどうしてデュエルを挑んだ理由を知りたい。それに、これからレゾンカードを持っている決闘者と戦うかもしれない。ここで逃げたらこの先も逃げてしまいそうになるかもしれない」
死にたくなければ、デュエルを忘れてしまえば良いかもしれない。だが、逃げたら誰かを守れない。
逃げて何もしなければウェルシー達がまた何も知らない人達を犠牲にして目的の為に動く筈だ。それを知らずにいるのも、俺のせいで犠牲になるのは……もう沢山だ。
「……俺は今まで幻を見せられながら生きた。いや、生きられていた。だから、今は自分が後悔しない選択をして生きたい。……皆、付き合ってくれるか?」
「当然ですよ」
「その答えはもう決まってますよ、花衣さん」
「「最後まで貴方と共に生きます」」
分かってはいた事だが、やっぱり言葉にして聞くと安心した。
「そうと決まれば、まずは彼方様とのデュエルをどう乗り越えるかですね」
「銀河眼……火力もそうですが、妨害もそれなりに出来るモンスターばかりですね。それに彼方さんのレゾンカードはである【銀河心眼の光子竜】は、相手モンスターの種類によって効果を得る効果があります」
確かに、ギャラクシーアイズそのものも厄介だが、やはり注意すべきはレゾンカードである
戦闘で相手モンスターを除外し、その除外したモンスターの種類によってその効果を得るのだが、そのどれもが強力だ。
通常か儀式モンスターならバトルフェイズ終了時、そのカードの攻撃力の半分のダメージを相手に与える。
融合なら対象のモンスターの融合素材の数だけフィールドの魔法・罠カードを選び、破壊出来る。
シンクロなら対象の素材となったチューナーモンスターの数だけ相手フィールドのモンスターを選び、破壊出来る。
エクシーズなら対象の除外した時のエクシーズ素材の数だけ追加攻撃が出来る。
唯一リンクモンスターに対しては何の効果も無いが、除外されて閃刀姫にとっては除外されてメインモンスターゾーンに行かれるだけでも驚異になり得る。
しかも
しかも攻撃力は4000……迂闊な戦闘は敗北に繋がること間違いなしだ。
「どうしますか? 花衣さん」
「うーん……どうすると言われても相手は彼方さんだしなぁ……」
「その件なのですが花衣様、少しよろしいでしょうか?」
「ん? どうしたんだ」
「少し、合わせたい人達がいるのです。花衣様がお元気になったら、空さんの部屋に来て欲しいと」
「空の家? それはどうして……」
「あそこには……アロマージの方々がいます。何やら花衣様にお願いがあるのだとか」
アロマージ……花音の精霊達か。花音が攫われてアロマージ達は置き去りにされたが、空が持っていたのか。
一体なんの用があって会うのか分からないが、ティアドロップの言う事だ。
俺はアロマー人達に会うために、空の所に足を運んだ。
家から歩き、数時間で空の家にたどり着き、俺は空のガレージを尋ねて中に入った。
そのには、エンジンのような部品が組み立てられ、少しの機械油の臭いが鼻につくいつものガレージに、空が待っていた。
空は3日ぶりの俺を見ると少し安堵の表情を浮かべたが、それは直ぐに消え去り、無愛想な顔へと戻した。
「……3日も音沙汰が無くいきなり来るのは少し無作法じゃないのか?」
「うっ、そう言われるとなぁ……」
「なに冗談だ。これ以上言えば、お前のモンスター達に何をされるか分からないしな」
精霊が見えるようになった空が俺の背後にいるティアドロップとレイ達に目を向けると、またからかうように笑った。
「それで、空。あのカードは……」
「勿論ここにあるぞ。お前に渡しておく」
空は11枚のカードを渡した。そのカードとは、花音のカード、アロマージのモンスターだった。このカードは全て精霊が宿っており、空がアロマカードを預けたらしい。
焔だとカードの管理がずさんになる……と空が判断したらしい。まぁ、分からなくは無いが。
ともかく、俺は空からアロマのカードを手に取り、精霊に声をかけようと静かにアロマ達に呼びかけた。
「……聞こえるか?」
『はい、聞こえます』
まるで頭の中に直接語りかける様に声が聞こえた。この声は……ローズマリーだ。
ローズマリーがカードから実体化させ、このガレージには似つかわしくない青色の服に、アロマの匂いを纏った青髪の女性が目の前に現れた。
そして、その女性ローズマリーはいきなり俺に頭を下げてこう言った。
「お願いします! 私達……アロマージを貴方のデッキに入れてください!」
「は……え、ええ?」
突然デッキに入れてくれと言われて混乱し、とにかく頭を上げてくれとローズマリーを説得した。
だがローズマリーは頭を上げず、必死に頭を下げ続けた。
「私達はそれほど力が無いのは分かっています。だけど、それでも私達……花音を助けたいんです!」
ローズマリーは顔を上げ、真っ直ぐ俺の目を見た。
その青い瞳には花音を助けたい決意が溢れ出し、確固たる意思さえも感じられる。
(そうだよな、アロマージ達は俺よりも何倍の時間と一緒に花音の傍にいたんだ。この世界で一番、花音を助けたいと思って……いや、助け出すと決めている奴らだ)
その時間の中に、花音とアロマージ達の間にはかけがえのない瞬間がいくつもある筈だ。それを取り戻す為にも、俺の答えはもう決まっている。
俺はローズマリーに手を差し伸べた。
「一緒に花音を……皆を助けよう」
「っ……はい! ありがとう……ございます!」
ローズマリーは右手で握手を交わし、左手で涙声を抑えながら嬉し涙を流した。
まさかそこまで泣くとは思わずにいたが、焦る様な事は無かった。
「あ……ありがとうございます。ふふ、花音が好きになる理由が分かった様な気がします」
「え? ……あ、あぁ。そ、そうかな」
ローズマリーの涙を拭い、ローズマリーは軽く頭を下げて感謝した。だが、その後俺は左手で握っている涙で濡れたハンカチを見つめた。
ローズマリーを涙を見た瞬間、俺は無意識に何故かハンカチで涙を拭った。まるで、いつもそうしてきた様に……。
「おい、そういう雰囲気になるのは他のところにやってくれないか。一応ここは俺の家のガレージなんだが」
「そうですよ。共に行くという事にはなりましたが他の女性の過剰な接触は許しませんよ……?」
空がガレージにある2本の工具をカンカンと叩き、ティアドロップが氷の笑顔でこの場の気温を氷点下まで下げると、ローズマリーはハッとした表情をした後、照れくさそうに笑い、その照れくさい顔が花音の顔と被った様にも見えた。
ローズマリーから距離を離すようにレイが俺の右腕を掴んでは抱き寄せ、左手腕にティアドロップが腕を絡めて体を寄せた。まるで、自分の物だと見せつけるように。
「花衣、アロマと一緒に戦うのはいいが、お前アロマの使い方分かるのか?」
「え、えーと……ライフを回復する戦法なのは分かる」
「他は?」
「……知らん」
「だろうな。付け焼き刃の戦法は自分の首を絞めるぞ。そんなんじゃ彼方さんとのデュエルに瞬殺されるぞ」
「そうだよな……って、なんで彼方さんとのデュエルを知ってるんだ?」
「彼方さんから教えてくれた。1週間後……というか4日後か。お前とデュエルするってな」
「何で空に?」
「知らん。まぁとにかく、お前がアロマと共に戦うと言うのなら、まずはアロマ達の戦い方を知るべきだ」
空は携帯を取り出し、誰かに連絡を取ると、空は今すぐにでもデュエルを取り掛かろうとしていた。
「よし、今からアロマを入れたデッキを作り、お前とデュエルして戦い方を覚えさせる」
「そ、空とデュエル……?」
「心配するな。レゾンカードの力はデュエルディスクを使わないと発揮出来ないらしい。そもそも、デュエルディスクが開発されたのは、レゾンカードの力を最大限に引き出し、お前を倒す事だ。つまり、デュエルディスクを使わなければ、レゾンカードを使ってもお前を倒せないという訳だ」
「そんな事誰から……」
「ハスキーだ。ここに戻る際に色々と聞いておいた」
そして詳しく聞くと、どうやらデュエルディスクは精霊の世界と繋げる扉の役割もあるらしい。勿論、全てのデュエルディスクがそうとは言えず、量産される予定の殆どはソリッドビジョンを使い、モンスターを投影するが、レゾンカードを持っている人達に向けては、特別なデュエルディスクを与えるという。
「相変わらず抜け目の無いやつだ」
「分からないことがあれば聞く。当たり前だが大事な事だからな。さっき焔にも連絡を入れておいたから来るはずだ。時間が無いからビシビシ行くぞ」
「あぁ、よろしく頼む」
デッキを取り出し、また新たなデッキを皆で作る事になった。作ってはデュエルし、反省点や構築を見直し、また作り、戦い、気が済むまでそれを繰り返す。
1日、2日、3日、4日と続き、ついにデッキは完成した。
完成したデッキと共に、彼方さんとのデュエルが始まろうとしていた……。
新たに発見した情報
_デュエルディスクとレゾンカードの関係
デュエルディスクが開発された目的は、レゾンカードの力を最大限に発揮する為。
デュエルディスクは精霊の世界と繋げる扉の様な役割があり、その扉をくぐることで精霊は最大限の力を発揮する。
しかし、そのデュエルディスクを使えるのはレゾンカードを持っている者だけであり、一般の人達はソリッドビジョンを介してモンスターを投影するデュエルディスクを使う他ない。
オリカをまとめた章が欲しい?
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欲しい!
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別に( *¯ ³¯*)