六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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機械の心はあるか

 

 早速だが、機械に心はあると考えた事はあるだろうか。

 

 正直俺は無いと思っている。理由は単純、機械とは人間が作り出し、人間に利便性を提供する為に存在する物だからだ。

 

 利便性に人への思いやりはあれど、その物自体に心がある訳では無い。それだと機械自体では無く、作った技術者に対して言えるからだ。

 

 どうしてこんな事を言ったかと言うと、俺にはそうでもしないと達成出来ない目的があるからだ。

 

 セブンエクリプスという、この世を闇に包み込む存在、ダークネスという物の忠実な下僕のような奴らにさらわれた花音、霊香、カレンを取り戻す為、俺や焔、そして彼方さんが所持しているレゾンカードの真の力を開放しなければならない。

 

 もしそれが出来なければ、ダークネスと深い関係の花衣がドラゴンメイド達に引き渡され、最悪その場で命を無くすかもしれない。

 それを阻止する為に、俺は所持しているレゾンカード【RRUMーリコンタスト・オーバーフロー】の真の力を開放しようとしているのだが……

 

「……どうすれば良いんだ」

 

 あれから3日経ち、未だにこのカードの力を解放させるヒントすら手に入れてないのはまずい。時間が経つ度に焦りが込み上げ、分からない事への苛立ちも積もっていく。

 

 とにかく色んな事を試した。オーバーフローのカードに記されている紋章が歴史や伝承などのモチーフになってないか、あるいは何か隠された意味があるのかとカードを調べたり、思いつく物は全て試したが、結局は分からないままでいた。

 

 そもそもこれが意味ある紋章なのかすらも謎だ。一応RRカードである為、他のRUMと照らし合わせたりもしたが、類似点は鳥のような翼を模しているだけだ。

 

 やはり、RRモンスターとの対話をするしか無いのだろうか。だが種族が鳥獣族でもRRは機械で出来た鳥だ。まともな対話が出来るとは考えにくい。

 

 行き詰まった時の癖でよくやるんだが、髪を一部摘んで上げていじる動作をしてしまう。昔からこの癖をやってしまうため、その部分がくせ毛になってしまい、どうしても直すことは出来なかった。

 

 次の考えを模索している中、携帯の着信音が鳴る。相手は……雀だった。

 

 ﹁今から会える? ﹂

 

 ﹁ドラゴンメイド達から聞いたんだけど、レゾンカードの真の力を解放する為に頑張ってるらしいから、私も何か手伝えないかなって﹂

 

 雀に送られたメールはこんな感じだ。そういえばアイツもレゾンカードを持っているが、あの場所には居なかった。恐らくはノーカウントだと思うが、確認したおいた方が良いだろう。

 

 それに、丁度人手が欲しかった所だ……少しガスを抜くように息をしてから雀に返事を返した。

 

 

 

 しばらくして雀が俺の家にやって来た。人気配信者らしからぬ落ち着いた雰囲気を押し出した服だけを見れば誰かと思わせるが、正真正銘こいつは俺が知る河原雀だった。

 

 今日は両親が仕事で家に不在な為、雀を適当にリビングに招いた。一応客だから冷蔵庫に中にあったオレンジジュースをコップに注ぎ、雀に渡した。

 

「おぉ、ありがとう! どう? レゾンカードの方は」

 

「全然ダメだ。いくら何でも情報が少なすぎる」

 

 あての無い紋章に、会話すら困難の状態……これでレゾンカードの真の力を解放するなんて無理だ。

 

 花衣の経験から察するに、極限状態を乗り越えたらカードの力が解放されると思うが……前提条件が分からない以上、無闇やたらにそんな状況に陥るのは得策では無い。いやむしろ、そうなる方が難しいだらう。

 

 だとしたら可能性がある……対話にかけるしかない。俺はある人に電話するために携帯を取り出した。

 

「ん? 誰かに連絡するの?」

 

「彼方さんに連絡をかける。天音ちゃんの力を借りる為にな」

 

 彼方さんの妹、天音ちゃんにはほぼ全ての精霊と対話できる力があるらしい。その力を使ってRR達と対話する事が出来れば……少なからずレゾンカード解放のヒントが得られるかもしれない。

 

 とにかく、何かを成し遂げる為には情報が絶対に必要だ。期待と望みを胸に秘めながら指を動かし、彼方さんに連絡を取る。

 

 ワンコール、ツーコールと長いコールが鳴り続き、帰ってきたのは機械音声の言葉だった。

 

『おかけになった電話番号は電波の届かない所にいるか、電源を切られている場合がござ……』

 

 機械音声の言葉を最後まで聞かずに一旦電話を切り、もう一度かけ直すが、帰ってくるのは同じだった。

 

「電話、帰ってこないの?」

 

「あぁ。電波が届かない所にいるのか? くっ……時間がないのに……!」

 

 焦りが苛立ちになり、次の考えを模索するがそれすら出てこない自分の容量の狭さに苛立ちが湧いてくる。

 頭をかき、机を指で叩きながら足を小さく動かし、目の前の光景が暗くなる。

 

「ね、ねぇ空……少し休んだ方が」

 

「うるさいっ!」

 

 僅かな声が羽虫の様に聞こえ、思わず机を叩いてしまう。その衝撃で雀を驚かせてしまった。

 そんなつもりは無いが、雀にとっては邪魔をしてしまった気待ちになってしまったのだろう。その事に気づいた俺は雀をもう一度見たが、雀は怯えた目をしていた。

 

「ご、ごめんなさい……邪魔するつもりは無くて……」

 

「いや……すまん。少しイラついていた」

 

「ううん、私の方こそごめん……」

 

 俺のせいで重苦しい空気になってしまい、雀は渡されたジュースさえも喉を通らなくなった。一種の罪悪感に苛まれた俺は、重い口を開けた。

 

「……少し出かけるか?」

 

「え? どこに……?」

 

推し(お前)の好きな所ならどこでも歓迎さ」

 

 これは俺の本心だ。精一杯の下手な笑顔を浮かべると雀は笑ってくれた。

 

「えぇ〜? じゃあ……空の好きな所!」

 

「俺の? とは言うが、俺が行く所は騒がしくも無ければ」

 

「良いのいいの。私の配信で結構なスパチャしてくれてるでしょ? その特典って事で! ……あっ、ふふ……貴様は我の眷属だからな。眷属の事も気にかけるのが主としての責務だからな!」

 

 †黒翼トバリ†としての性格となって言い直し、薄れて行った思考が蘇る。

 

 普段はちょっと痛い女子高生で、目立ちだかりの奴だが大衆からは推定30万人以上のファンがいる有名ネットアイドルだ。そんな奴が俺の目の前に、しかも推しだ。

 

 俺の好きな場所に行きたいと言っているが、その場所は雀にとっては恐らくとてつもなくつまらない場所だ。

 

 その場所とは工業博物館であり、その名の通り工業中心の博物館だ。色んな工業技術や歴史、そして本物と差異が無い飛行機のエンジンのモデルやレプリカが並び立ち、相当大きな博物館ではあるのだが、機械に精通していない雀にとってはつまらないだろう。

 

 例えるなら、興味の無い映画を延々と見続けさせられている物だ。俺だけなら良いが、正直知識が精通していない雀に拘束させる訳には行かない。

 

 しかも俺の推しだ。推しがつまらなさそうにしている顔を見たくは無い。俺のわがままで自分勝手だが、そんなエゴな気持ちが押し勝ってしまい、無難な所を言い出そうかと思ったが、雀はそんな考えを見透かすしているかのような笑みを浮かべ、俺の額を人差し指でつついた。

 

「むぅ、無礼な眷属だな。我は貴様の好きな所に案内しろと言っているのだぞ! 嘘をつくのは万死に値する!」

 

「なんで分かるんだ」

 

「ふふ、これこそ我が魔眼の力……貴様の心などお見通しだわ!」

 

 右手で左目を隠す仕草をしながら、どこからか取り出した赤いコンタクトレンズをはめ込み、左目が赤く輝いていた。本当に魔眼という物があるのか、それとも俺が分かりやすい顔をしていたのか不明だが、今の雀に嘘をつくのは無理そうだ。

 

「後で何か言っても聞かないからな」

 

「はん! 黒き天界から舞い降りたこの我だぞ。下界の世界などどれもこれもが同じものだわ!」

 

「じゃあ、そうするが……あまり期待するなよ」

 

 そうして準備を済ませ、推しと共に行きつけの博物館に行くという滅多に訪れない機会に恵まれる事になった。

 

 バスに乗り、そのまま電車に乗り、博物館との距離が近づく度に本当にここで良いのかという疑問が積もり、今からでも別の所に行くべきかと考えるが、隣の雀は配信者故のコミュ力でどんどん俺に話題を振ってくる。

 

「ねぇねぇ、いつも使っているSNSなんか名前とかサービス変わるらしいよー? なんでだろうね?」

 

「さぁな……」

 

「あ、見て見て〜これ今買おうとしているカメラなんだけどどう思う?」

 

「良いんじゃないか?」

 

「そうだ! 新しいパックなんか今回凄いらしいね! 【黒魔女ディアベルスター】……ふっ、我程では無いが力を感じるな」

 

「性能も良いしな」

 

 機関銃の様な会話のレパートリーが流れ込み、別の所に行くという考える暇なんて無かった。俺は雀の会話に受け答えていると、雀は会話を止め、覗き込むように俺を見た。

 

「ねぇ……もしかして、あんまり私と喋るの楽しくない……?」

 

「いや、そうでは無いが。どうしてそう思った?」

 

「だって空、あんまり表情変わらないし、受け答えもちょっと単調だから楽しく無いのかなって……」

 

 どうやら俺の態度で不安を駆らさせてしまったようだ。別に雀との会話は楽しくない訳がなく、むしろ会話を振られて楽しい気持ちもある。

 推しに話しかけられて嬉しく無いファンがいる訳が無い。

 

「推しとの会話が楽しくない訳が無いだろ。会話の受け答えは……緊張しているからだ」

 

 照れ隠しで雀の顔をそっぽ向き、雀の顔がニヤニヤとしているのが見えなくても分かる。

 

「へぇ〜? 空にもそんな気持ちあるんだねー?」

 

「こんな状況なら誰だって緊張するさ」

 

 恐らく雀が俺に近づけば俺の心音が聞こえるほど鼓動が早くなっている。聞かれたくない一心で座り直すと同時に少しだけ雀との距離を取った。だが雀も同じような動きで少しだけ距離を縮めた。

 

(こいつは雀、こいつは雀だ……)

 

 知り合いとしての雀と言い聞かせながら、電車の中を過ごし、やっとの思いで博物館へとたどり着いた。

 

「ほわぁ〜大きいね!」

 

「まぁ博物館と資料館を合わせたみたいな物だからな。入るぞ」

 

「あー! 待ってよー」

 

 雀と一緒に大扉を開けて中に入ると、冷房の効いた涼しいロビーが俺達を招き、受付にある機械でチケットを二枚買おうとすると、雀は財布を出して自分の分を出そうとした。

 

「え? 片方私が出すよ?」

 

「気にするな。俺の好きな所に行かせた礼だ」

 

「そっか……うん、ありがとう!」

 

 雀はこれ以上何も言わず、チケットを手に取ると早速ゲートの方に向かい、その近くにあった改札機の様な機械にチケットを入れると、自動ドアが招くように開き、いよいよ博物館の中へと入る。

 

 中に入ると、そこには宙吊りになった昔の飛行機が飛び交い、大きなビンテージ風のショーケースの中には、古い機械がいくつも展示されていた。その中でも俺は古いエンジンを見た。

 

 あまりにも古くて経年劣化で錆び付いている物はあるが、ここまで風化を抑えている所を見ると、この博物館の保存技術には目を見張る物がある。

 

 変わり映えしないと言えばそれまでだが、変わり映えしないほど風化させない技術があるという事だ。

 

「ねぇねぇ〜いつまでそれ見てるの? 早く次行こうよ〜」

 

 どうやら、連れの人はそれ程考えていないようだ。まぁそういう奴がほとんどだろう。雀の言う通り、順路を辿って次の展示場に行く。

 

 雀に飽きさせない様に、飾られている機械がどういう物で、どのような物に使われているのかも話した。出来るだけ分かりやすく、丁寧に教えた。

 

「それでこれは、産業革命時に作られた物で、主に動力して使われたもので、今のエンジンの基礎になっている物だ。この技術は当時では画期的でベアリングの駆動を安定かつ安易に作れて……そもそもベアリングというのは回転する機械を支える為の物でタイヤとかによく使われる物で……っ、すまない。喋りすぎた」

 

 長々と喋りすぎてしまい、雀を困らせたと思って早々に口を閉じて雀を見た。

 だが、雀はそんな心配を無下にする様な笑みを見せ、逆に説明を途切れた事に不思議と思っていた。

 

「ん? どうしたの?」

 

「いや、こんな長々と説明されてもつまらないだろ」

 

「そんな事無いよ? 空の説明は聞いてて楽しいよ」

 

 そんな訳が無い……と言いたいが、雀の浮かべた笑みは嘘偽りが感じられず、言ってくれた言葉さえ嘘なのかどうか疑うのも馬鹿らしく思えた。

 

 これはあれだ。オタクに優しいギャル的なヤツだ。ギャルと言っても、雀はベクトルは違うが俺とほぼ同類だ。それ故、俺に共感出来るものがあるのだろう。

 

「ねぇねぇ、空ってどうしてそんなに機械とかメカメカした物が好きなの?」

 

「急だな」

 

「だって気になるじゃん。私の秘密を見たんだし、空の事も教えてよ、私の眷属なんだからさ」

 

 雀は厨二のポーズをしながらそう投げかけた。秘密を見たというか、雀の方からドジを踏んでバレたと言うか……まぁ、減るものでは無い。事のあらましを博物館を歩きながら話した。

 

「最初は好奇心だった。何で車が動くんだろうってな」

 

「それはエンジンとかでこうタイヤを動かすんでしょ?」

 

「そう。だが小さい頃はそれすらも分からなかった。だがある時、父さんがエンジンを作っているのを見たのが始まりだった」

 

 俺はこの博物館にあるエンジンを見て話を続けた。

 

「エンジンと一言で言っても、その構造の一つ一つに名前があり、役割もある。そうして小さな役割を組み合わせて、1つの大きな役割となる。それが機械だ。少しづつ0から1に、1から100にもなれる可能性があるところに、俺は惹かれたんだ」

 

「それで、機械が好きなんだ」

 

「それだけじゃない。機械はこの地球上で唯一人間だけが作れる物であり、可能性に満ち溢れた物だ。鳥だけにしかなし得なかった空を飛ぶ事も、人は長い時間をかけ、飛行機としてそれを実現した」

 

 それだけじゃない。誰もが火を扱える様になり、誰もが電気を用いて明かりをつけ、遠くの者と連絡が取り敢え、この地球上で初めてこの地球という星から離れ、別の星に手を届かせる事も出来た。

 

「機械は可能性だ。作り方、アイディア、1つ変えるだけで無限の道がある。俺はその無限の道を作りたいと思って機械の道を歩んだんだ」

 

「おー。いつもぶっきらぼうな空が熱く語る事だけはあるね」

 

「っ……からかうな。好きなものを語ったら誰でも熱弁するだろ」

 

「そうだね。感動しちゃった」

 

「ええ。私も実に感動しましたよ」

 

 突如として知らない声が耳に入り、感覚が長い拍手と足音が徐々に大きくなる。拍手が鳴る方向に顔を向けると、紫色の髪に白衣を着た男が俺達の前に現れた。

 

「貴方が機械に対しての姿勢、実に関心しました。技術者として感動しちゃいましたよ」

 

「そ、それはどうも……」

 

 いきなり話しかけられて少し警戒してしまい、それが露骨に態度に出たせいか、白衣の男は頭を下げ、1歩後ろに下がった。

 

「これは失礼致しました。いきなり話しかけるのは無礼でしたね」

 

「別に構いませんが……貴方は機械工学の者で?」

 

 だが服装からしてどちらかと言えば科学者の印象に近かった。

 

「うーん、まぁそのようなものですね。ですが私も機械には精通しているので、ここにいますから」

 

 白衣の男はここにある大きなミサイルのレプリカのショーケースに立った。

 

「産業革命により、人類の技術は大きく進歩し、農業から工業の世界へと移り変わった。列車を作り、船を作り、車を作り、電気で夜を照らした……素晴らしい進化だ。まさに革命だ」

 

 まるで演説でもしてるかのようにたからな声を上げ、産業革命の素晴らしさを俺たちに話した。

 

「ですが、良い事ばかりじゃない。機械化の性なのか汚染物質が含まれた物を海に流して海を汚し、場所を取るために木を斬り、山を斬り、環境を汚染し、破壊した。そしてあろう事か、人間を殺すための兵器も作った! なんとも嘆かわしい事ですね〜」

 

(こいつ、まるで他人事の様に話すな……)

 

 嘆かわしいと言うが、白衣の男からは悲しみの感情が読み取れず、それどころかそれを嘲笑うかの様な物まで感じた。

 

「そしてそんな兵器から現代技術が生まれ、人々に利便性を持たらした。そしてその先にあったものは……幸福の追求だ」

 

「幸福の追求?」

 

「そう。便利になり、生活において労力を必要としなくなって人間は幸福を望んだ。承認欲求、他人を支配したい欲、そういう悪意がね」

 

「幸福を追求する事が悪意と言うのか」

 

「ええ。だってそうでしょ。他人を蹴落とす幸福なんて悪意意外の何者でも無いでしょ?」

 

「ねぇ空、この人なんか変……怖い」

 

 確かに、こいつからは何か得体の知れない物が纏わりつくような感じがしてならない。まるで影を相手にしているみたいだ。それも陽の光すら通さない闇の様な……異質という言葉がこれ程までに合う雰囲気は無かった。

 

「お前は何者だ」

 

「申し遅れました。私はポルーション。貴方方の敵です」

 

「ポルーション……? お前っ! セブンエクリプスか!」

 

「セブン……エクリプス? 随分と大層な名前ですが、もしかして私達の事ですか? エクリプス……月蝕……いや、蝕みの意味ですかね。良い名前なので貰っておきましょう」

 

 こんなところでセブンエクリプスに接触するとなると、狙いはやはり雀だろう。雀を守るように前に立ち、対抗策のレゾンカードであるイグニッション・ファルコンのカードを手にかけるが、こんな所でイグニッション・ファルコンを出してしまえばここにいる人達を巻き込んでしまう。

 

「おっと待ってください。別に私は戦う為に来た訳ではありません。ただ、そちらのお嬢様を渡して欲しいだけです」

 

「やはり雀が目的か。花音さん達をさらってお前達は何を企んでいる」

 

「それはお教えできません。ですが、ウェルシーさんがどうしても雀さんも欲しいとの事でして……どうにかなりませんか?」

 

「誰が貴方達の所に行くもんか!」

 

 雀は俺の後ろで反抗的な態度を取り、やれやれと言わんばかりにポルーションはこめかみに指を置き、静かに顔を振った。

 

「はぁ……やはりこうなりますか。では、用意していたプランでやりますか」

 

(来るのか……?)

 

 ここでイグニッションを出すのは無理だ。だから雀の手を取り、ここから全力で逃げた後、イグニッションの力が十分に出せる場所まで走る心構えをしたが、ポルーションは何もせずに後ろに振り返り、俺たちに背を向けた。

 

「どういうつもりだ」

 

「正攻法では雀さんは手に入りませんからね。では、また会いましょう」

 

 ポルーションは影に吸い込まれるように消えてしまい、不気味な雰囲気を残していった。

 

「何をするつもりだ……アイツ」

 

「空……私、大丈夫なのかな」

 

「大丈夫だ。守ってみせる」

 

 とにかくここでは何をされても対応はできない。直ぐにでも博物館を抜け出し、急いでドラゴンメイド達が拠点としているカフェに向かうのが得策だ。急いで公共機関を使ってその場所に行った。

 

 雀の震えている手を離さず、しっかりと握る。だが雀の手は震えは止まらなかった。無理もない。得体の知れない物から狙われているなら、怯えるのも当然だ。

 

 だが、守らなければならない。何がなんでも……必ず。

 

 一刻も早くドラゴンメイド達に行きたいが電車に行く道で人混みが多く、思ったように進めずにいた。

 

 そんな時だ。人混みに巻き込まれてポルーションに攫われるリスクを避ける為に、一旦人混みが少ない噴水広場へと移動した。

 

 ここなら見晴らしが良く、周りにたむろしている学生も居て少々目立つがイグニッションも使える。それに雀の心労も少しは楽になる筈だ。

 

 雀を近くのベンチに座らせ、とにかく休ませた。

 

「大丈夫か?」

 

「うん……何とか」

 

 雀が顔を上げて作り笑顔を浮かべたその時、何かに気づいたのか、目を見開いて顔を下げた。

 

 明らかに俺の後ろにいる学生達を見て動揺を隠せずにいた。

 

「ね、ねぇ……ここから離れない?」

 

「……あいつらとは知り合いか?」

 

「うん。ちょっと……ね。だからここから離」

 

「んん〜? もしかして雀ー?」

 

 後ろにいた学生の1人の女性が雀の名前を呼び、雀が肩を上げて怯えていた。その女性は笑いながら雀に近づき、女性が近づく度に雀は体を震わせ、怯えていた。

 

「ねぇねぇ〜やっぱり雀じゃーん。おーい、こんな所に雀がいたわよ!」

 

「マジ!? おお、本当じゃねぇか!」

 

 女性が他のメンバーに声を掛けると、続々と雀に近づき、囲んだ。

 

「んん? おい、こいつもしかして黒翼トバリじゃねぇか?」

 

 雀が配信で使っている名前を当てられると、雀の怯えが更に上がった。俯く雀の顔と、スマホに移し出されたトバリの顔を見比べると、1人の男が合点が行った笑顔を見せた。

 

「あー、メイクしてるけどこいつトバリだぜ!」

 

「えぇ〜あの雀があのトバリ!? あはは、笑えるんですけど!」

 

 下衆な笑い声が響き、何も言えず怯え続ける雀を見て何かを察した俺は雀の手を引き、囲んでいた所から雀を引き離した。

 

「んー? 誰よアンタ」

 

「こいつの友達だ」

 

「はっ、随分と陰キャな見た目ね。まぁ、こいつにはお似合いかもね」

 

 恐らくリーダー格である濃いメイクの女子高生は名前の知らな俺に悪びれなく失礼な事を言い出した。苦手な奴だ……こういうタイプは。

 

「行くぞ、雀」

 

 雀の手を引き、明らかに嫌がっている雀をここから離れさせようとしたが、取り巻きの男2人に道を阻まれた。

 

「ねぇ、そいつと一緒に居るの止めた方が良いよ?」

 

「何だと?」

 

「……めて」

 

 雀が何かを言おうとしたが、女は喋るのを止めなかった。

 

「だってその女……」

 

「やめてぇぇぇぇ!!」

 

 

「人殺しだもん」

 

 

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