六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
就活等忙しい期間であり、中々に進捗が進まなかった事を改めてお詫び申し上げます。
今回、新たなカードをいつものように後書きにて掲載しています。
因みに新しいカード、自分でもドン引きする程強いと思いますので、良かったら感想よろしくお願いします。
誰かが泣いている声がする。
夕焼けの下、誰もいない公園で1人でブランコに乗っている少女を見かけた。
晴れているのにも関わらず、少女が着ている黒い服や黒髪は濡れていた。今の季節が春と言ってもまだ寒い筈だ。
現に少女の体は震えており、このまま外に入れば風邪をひくことは確定だろう。そんな中、彼女と目が合ってしまった。
思わず目を逸らしてしまったが、目が合った以上放っておく訳には行かなかった。
少女に声をかけると、少女は笑った。
そしてその瞬間、世界は暗転した。
目を開けると次に彼女は泣いていた。何かを訴えている様だったが、声は聞こえなかった。
聞こうとしても聞こえず、どうしようも無いところを彼女はいきなり俺の手をつかみ、指切りをした。
何かを約束したんだろうか。だが、思い出せない。
だが、思い出せなければならない様な気がする。……何だ?
「待ってるから」
待ってる? 何から? 何を? ……一体彼女は、何を待っていると言うんだ?
そして世界はまた暗転した。
目が覚めるとそこは暗闇の世界だった。
身体には稲妻の亀裂が走った痣があり、頭痛も響いて吐きそうだった。
ここはどこだ……? 周りを見ると、目の前には黒いあぁ、そうだ。思い出した。
俺はデュエルをしていたんだ。命をかけたデュエルを。
身体中の痛みがまだ残っており、立ち上がる事さえ苦痛だった。
声が出ない。苦しい。痛みで涙が出そうになる。いや、既に出ていた。メガネのレンズには涙の水滴が流れ落ちたせいで視界が歪んでいた。
視界だけじゃない、耳もおかくなっていた。
向こうの3人が俺の無様な姿を見て笑っていた。何を言っているか分らないが、侮蔑の言葉を吐いているのは間違いなく、まるでサーカスのピエロが芸を失敗した所を見ているかのように、心の底から見下していた。
だが、一つだけ聞こえる声があった。向こうの3人とは別の懐かしい声が。
「空っ!」
名前を呼ばれると同時に風が吹き荒れ、俺の視界はクリアに広がり、ようやく視覚と聴覚が元に戻った。
元に戻った視界で懐かしい声の主である雀に顔を向けると、雀が泣きながらも安心の笑みを浮かべた。
「空! 良かった……」
雀がへこたれながら膝をつき、余程俺の事を心配してくれた事が目に見えて分かり、こんな状況でも嬉しい気持になる。
本当に、こんな状況じゃ無ければ大喜びしていた所だ。ライフが0になれば命を失うデュエルで、ティアラメンツ、クシャトリヤ、マナドゥムの3人同時とデュエルなんて状況じゃなければな……。
「なーに笑ってんだぁ? 状況分かってねぇのかよ」
「そうそう。ここで勝った気になってるの夢見すぎでしょ」
「どうせ勝ちは確定だ! 俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
3ターン目終了
人形A 人形B 人形C
ライフ:8000 ライフ:7000 ライフ:6000
手札:4 手札:1 手札:5
□□⑤□□ □□⑧⑨□ □□⑫□□
□□③④□ □⑥⑦□□ □⑩⑪□□ ⑬
□ □ □ □ □ □
□□□□□
□□□□□
空
ライフ:1100
手札:3
③:ティアラメンツ・カレイドハート(守備表示)
④:ティアラメンツ・ルルカロス(守備表示)
⑤:伏せカード
⑥:No.89 電脳獣ディアブロシス(守備表示)
⑦:クシャトリヤ・アライズハート(守備表示)
⑧:クシャトリヤ・バース
⑨:伏せカード
⑩:フルール・ド・バロネス
⑪:マナドゥム・プライムハート
⑫:伏せカード
⑬伍世壊=カラリウム
確かにあいつらの言う通りだ。相手の場には特殊召喚を無効にするルルカロス、墓地に行くカードを除外する状態のアライズハート、そしてどんなカード効果を無効にするバロネスに伏せカードがある。
ざっと見て5妨害以上あるこの状況で俺の手札は2枚……。そして、俺のレゾンカードであるイグニッション・ファルコンは、クシャトリヤの効果で裏側除外されている。
正直勝てる要素は見当たらない。これで勝てたら奇跡と言ってもいいだろう。
「……俺のターン」
「俺は永続罠【クシャトリラ・プリペア】を発動! これでお前が罠を使った時、お前の手札を見て1枚除外してやるぜ!」
ここに来て手札すらも潰しに来たか……だが、直ぐにドローは出来ず、デッキトップに置かれた指が動けなかった。なにかされた訳では無く、俺自身ドローするのを拒んでいた。
小刻みに震える指が鉛のように重く、俺が今どれだけこの状況を怖がっているのかを表していた。
もしこれでこの状況を打開できないカードを引けなかったらその時点で俺の負けとなり……文字通りの死がやってくる。
そもそもこの状況を打開できるカードって何だ?
モンスターも、魔法も、罠も無効にされ、特殊召喚も何もかも許してくれない状況だ。
レゾンカードのイグニッション・ファルコンはアライズハートのエクシーズ素材にされている。
……無理だ。勝てない。
このドローはいわば死刑宣告だ。
このカードを引いたその時、『お前は死ぬ』と死神が囁いている様にも思えてくる。
死への恐怖が鉛……いや、それ以上に重たい何かが体に覆い被さる様にのしかかり、冷や汗と過呼吸を引き起こす。
怖くて、逃げ出したくて、こうなるぐらいなら目を背ければ良かったと後悔してしまいそうになる。
_折れるな
その時、頭の中に声が響くと同時に風が吹いた。
俺の声でも無く、ここにいる誰かでもない男の声が聞こえ、周りを見渡す。
しかし見渡す先は闇が広がり、とても人がいる気配はなかった。だが、それでも声は響き、その声と共鳴するように風は吹き荒れた。
_鉄の意志、鋼の強さを持て。反逆の意志が折れない限り、お前の機械の翼はどこまでも羽ばたける。……それにお前にはもうひとつの翼がある。
それを最後に声は聞こえなくなり、風がデッキの上のカードだけを巡るように吹き荒れ、カードは上空へと舞った。
「空ー!!」
雀の声が聞こえた瞬間、やがて落ちていくカードを手にし、引いたカードはあの時生まれ変わった新たなレゾンカードだった。
「……イグニッション、お前なのか?」
返事を聞こうとしても、声は聞こえなかった。だが確信はあった。
あいつが、イグニッション・ファルコンが俺の背中を押してくれた。
いや、イグニッションだけじゃない。雀もその1人だ。
怯えていた俺に前を向かせる勇気をくれた。もしそうだとしたら……俺はそれに応えなければならない。
「それに、推しの前ならカッコつけないとな」
推しの前で下手な笑顔を向け、俺はこのカードを発動した。
「俺は【RRUM-リコンタスト・オーバーフロー】を発動!!」
「出たっ! 空のレゾンカード!」
「はっ! 俺は【フルール・ド・バロネス】の効果発動! それを無効にして破壊する!」
バロネスが黒い光を帯びた槍を俺に向け、槍先から黒い光が俺に襲いかかる。しかし、その光は俺に届くことは無く、俺の前に鳥の翼を象った紋章が浮かび上がり、俺を守ってくれた。
「な、何っ!?」
「残念だったな。俺のフィールドにこのカードしか存在しない場合、お前達はこのカードに対して如何なるカードの効果も発動出来ない!」
3人のおかげで俺のフィールドにはリコンタスト・オーバーフローしかカードは無い。つまり、もうアイツらは俺のカード効果を無効にするのは不可能になった。
「だ、だけどお前にレゾンカードのモンスターを出すことは不可能だ! 何故ならそれは俺の【アライズハート】のX素材に……」
「それも解決できるのさ」
「何だと……?」
「まず、俺の除外されているカードを全てデッキに戻す。その後フィールドのカード全てを墓地に送る!!」
「フィールドのカード全て墓地に!?」
突然フィールドに黒い暴風が吹き荒れ、このフィールドにある全てを吹き飛ばした。
カードが全て墓地に送られた事により、アライズハートのX素材になっていたイグニッション・ファルコンは墓地に戻り、これでこいつを召喚する手筈が整った。
「生まれ変わったこのカードの力、存分に思い知って貰う! カードを墓地に送らせた後、墓地の【RR】Xモンスターをデッキに戻す」
「そ、それで終わり……?」
「終わる訳が無いだろ」
声色を低くしただけだが、俺から出る圧に戦意を失ったのか手札を落とし、涙目で怯えていた。
「その後、墓地に送ったカードの枚数までEXデッキから【RR】Xモンスターを素材にしたランク13の【RR】XモンスターをX召喚する。墓地に送ったカードは……9枚! 俺は9体の【RR】モンスターを素材にエクシーズ召喚!」
9体のモンスターがEXデッキから飛び出し、上空に発生した黒い穴に向かってRR達は飛び立ち、EXデッキの1枚が紫色に光出した。
光り輝くカードを手に取り、手に取った瞬間頭の中に浮かんだ言葉を発した。
「空高く羽ばたく隼よ、何者にも遮られない意思と翼で、究極を越えた最後の意思となれ!」
煌めく黒い穴から光が漏れ、黒い霧と共に四枚羽の機械の隼が姿を現した。
「来い! ランク13【RRR-リノベイル・イグニッション・ファルコン】!!」
RRR-リノベイル・イグニッション・ファルコン
ランク13/エクシーズ/闇属性/鳥獣族/ATK4000/DEF4000
「そして、この一連の処理後、墓地に送られたカードはフィールドに戻る」
「はっ! だけど一旦墓地に送ったおかげで攻撃力は元に戻った! このターンで決着は付けれない!」
確かに、今の状況ではこのターンに決着をつく事は出来ない。
一旦墓地に送られた事により、バロネスの無効効果は再度使えるようになり、アルティメットの効果で下がっていた攻撃力も元に戻っている。
イグニッションには相手モンスター全てに攻撃出来る効果があれど、戻った攻撃力を考えればトドメまで刺すことは出来ない。
だが、このターンで決着をつく必要は無い。もうアイツらは、自分達が作ったルールで自分の首を絞める事になる。
「バトルだ! 【リノベイル・イグニッション・ファルコン】で、全てのモンスターに攻撃!!」
イグニッションの翼から無数のビットが周りに展開し、腰や翼に搭載された砲塔全てが相手フィールドに向けられ、エネルギーをチャージするかのように光が収束された。
「全て吹きとばせ! イグニッション!」
イグニッション・ファルコンの銃口から無数のビームが相手フィールドに降り注ぎ、相手フィールドのカードを全て焼き払った。
人形A 残りライフ8000→6000
人形B 残りライフ7000→5800
人形C 残りライフ6000→4000
「くそ! 俺たちのモンスターが!」
「だが、俺の【プライムハート】の効果で、墓地から【ヴィサス=アムリターラ】を特殊召喚する!」
「メインフェイズ2に入り、墓地の【リコンタスト・オーバーフロー】の効果発動。これを【リノベイル・イグニッション・ファルコン】のX素材にする。これでターンエンドだ」
人形A 人形B 人形C
ライフ:6000 ライフ:5800 ライフ:4000
手札:4 手札:1 手札:5
□□②□□ □□③□□ □□⑤□□
□□□□□ □□□□□ □□④□□ ⑥
□ □ □ □ □ □
□□①□□
□□□□□
空
ライフ:1600
手札:3
①:RRR-リノベイル・イグニッション・ファルコン
②:伏せカード
③:クシャトリラ・バース
④:ヴィサス=アムリターラ
⑤:伏せカード
⑥:伍世壊=カラリウム
「くっ……だけど、たった1体のモンスターで何が出来る! 俺らのターンで直ぐに……」
「いいや、お前達の負けだ。【リノベイル・イグニッション・ファルコン】の効果発動。相手ターンにX素材を取り除く事で、このターン相手モンスターの効果は無効化される」
「な、何よそのカード……! 反則じゃない!」
「まだだ。更にこの効果発動後、相手は可能ならばこのモンスターに攻撃しなければならない。そして攻撃しなかった場合、プレイヤーは2000のダメージを受ける」
「はっ? ちょっと待てよ、それって俺のターンはどうなるんだよ……?」
マナドゥムを使っている男が血の気が引いた青ざめた顔を浮かべ、俺に問いていた。
あいつのライフは4000。そしてリノベイル・イグニッション・ファルコンの効果で攻撃しなかった場合、2000のダメージを与えるという事は……
「もうお前のターンは永遠に来ない。その2人に何とかして貰うんだな」
「は、はぁ!? おい! 早く何とかしろよ!」
「ちょ、無理言うなし! モンスターの効果が無効にされてるから何も出来ないし! とにかく、モンスターを伏せる!」
フィールド上に裏側のカードがセットされ、マナドゥムの男はそれに対し逆上し、溢れんばかりの罵詈雑言を女に向けていたが、何かは聞き取れず、まるで動物の鳴き声の様なものだった。
この煩い叫びにイグニッションは嘆かわしくも鬱陶しく思ったのか、イグニッションは男に向けて雄叫びを上げた。
機械と鳥の声を合わせた雄叫びは男を圧倒し、マナドゥムの男は震えてイグニッションの顔を見ると、腰を抜かして尻もちを着いた。
(もうあいつの戦意は無くなったな)
実質1人を片付いたが、正直もう勝負は付いたと言っても良いだろう。
「た、ターンエンド!」
「この瞬間、【リノベイル・イグニッション・ファルコン】の効果でお前らに2000のダメージだ」
人形A 残りライフ6000→4000
人形B 残りライフ5800→3800
人形C 残りライフ4000→2000
「お、俺のターン……」
「そのスタンバイフェイズ時に【リノベイル・イグニッション・ファルコン】のエクシーズ素材を取り除き、お前達のモンスター効果は無効になる」
これでフィールドも手札も墓地も除外ゾーンも、何もかもモンスター効果が無効になった。
魔法カードや罠を使えない訳では無いが、相手がクシャトリラである以上、手札からの特殊召喚を使わなければ展開が出来ず、クシャトリラ・バースを使って召喚したとしても、攻撃が出来なかったら2000のダメージを受けるのは確定する。
だがあのライフではどんな事をしても無意味だ。
モンスターを残すために守備表示で出したとしても、あと2ターンでライフが0になり、ダメージを抑えてわざと攻撃しようとしてもそれは変わらない。
それをようやく知ったクシャトリラの男は、ターンエンドを宣言せずにいた。
だが、1番ターンを終えるなと思っているのはマナドゥムを使っている男だった。
「お、おい! お前何とかしろよ!! このままじゃ俺のライフが0に……」
「うるせぇ! モンスター効果も使えないんじゃ何も出来ねぇよ!」
「魔法カードとかあるだろ! おいっ!」
「早くしてよ! このまま私達あいつに……殺され……」
女の言葉を遮るようにイグニッションが咆哮すると、3人共負けを確信して怯えに怯え、表情が青ざめつつあった。
状況は入れ替わり、今度はあっちが命の危機に瀕していると、アイツらは涙ぐんだ目でカードを地面に置き、膝を地面に崩して頭を下げた。
「た、頼む! 見逃してくれっ! 俺はまだ死にたくねぇ!」
「……つまり、俺にサレンダーしろと言っているのか?」
俺の考えが当たったのか、マナドゥムの男が土下座して俺に懇願し、何度も何度も頭を下げた。
1人だけじゃない。負けを悟ったのか他の2人も瞳孔を開き、無様な泣き顔を見せて何度も何度も頭を下げた。
それを見て、体の底から怒りが沸くと同時に、どうしようもない程のクズさに嫌気がさした。
雀の過去をえぐり、尊厳や何もかもを踏み躙り、ついさっきまで俺の命を奪う事になんの躊躇いも無く、むしろ興味を示していた奴らが、今となっては命を惜しんでいた。
どうしようもないほどに自己中心的で、道徳が欠け、他人を尊重しない奴らに配慮なんて必要ない。
「……悪いが、お前らに負けるつもりは無い。最初からそう言ってるからな」
アイツらにとってこの言葉は死刑宣告に等しく、3人共絶望に満ちた顔を浮かべ、パニックや癇癪を引き起こした。
甲高く同じ罵詈雑言を発しているその姿はまさに獣であり、人間とは思えなかった。
「いやぁぁ! 助けてっ! お願いっ!!」
「死にたくねぇよっ!!」
「ふざけんなよっ! 人殺しになるんだぞ!」
「それはこっちのセリフだ!」
思い切り、喉と肺が潰れる程の大声を出し、イグニッションも同じように叫んだおかげで彼らは黙り、俺の話を聞いた。
「死にたくない、助けて欲しい、逃げ出したい。俺もさっきまでそんな気持ちだったさ、だけどお前らはどうだった? 楽しんでいたんだぞ、人殺しを!」
3人は反論出来ず、思わず目を逸らしていた。
「なんでそんなに人を陥れるのが好きなんだ? 何故それが間違っていると、傷つけると知らない? そこまで知能がくさっているなら、お前らは人間じゃない、思考を停止し、悦のみに縋るただの動物だ」
「な、何熱くなってんの? キモいんですけど」
「なんで分からないんだ……!」
「それはこの人達が根っからの悪意に満ちた方々だからですよ」
突然丁寧でな口調の声がクシャトリヤを使っていた男から出し、その男は体の力が抜けたかのように腕と足を伸ばしていた。
そして男が動き出すと、その目には生気が宿っておらず、暗い眼差しが俺を見つめていた。まるで、人形のようにでもなったかのようだ。
それに、さっき声……アイツに違いなかった。
「お前……ポルーションなのか?」
『正解です。正確にはこの方の精神を乗っ取ったというのが正しいのですがね』
「精神だと……?」
『そう、言わば人形です。この方達にカードを渡した際に、少し細工をしたんですよ。おかげでこんな風に動かす事も出来ますよ』
すると体を乗っ取ったポルーションは男の体を自由自在に動かした。
腕を固定しつつも体を曲げたり、重力を無視した回転を続け、体を雑巾の様に絞る体制も取っていた。
そんな人間が出来ない動きをしたせいで、男の体から骨が折れる痛々しい音が鳴り響いた。
だが男からは痛みや苦痛も感じられず、文字通り操り人形になっていた。
肉が抉れ、抉れた部分には骨の一部が飛び出してしまい、それを見た雀は目を逸らし、吐き気を催していた。
「なに……あれっ……うっ」
「見るな雀!」
『おや、すみませんでした。いや〜人間ってやっぱり脆いですね〜』
ポルーションは悪びれも無い謝罪をし、男の体を元の位置に戻した。
だが、その姿は見るに耐えず、手の位置や腕の位置はもう元には戻らず、関節の位置さえも変わっていた。
「何がしたいんだ……お前は……! お前は」
『何って……まぁ、手伝いに来たんですよ。ターンエンド』
「何っ!?」
男……いや、ポルーションがターンエンドと言ったその瞬間、イグニッションの効果が発動し、相手プレイヤーに2000のダメージを受ける事が確定した。
つまり……マナドゥムを使っていた男のライフはこれで尽きることになる。
ライフが0になったマナドゥムの男の足元から黒い手が無数に伸び、男の体を締め付けるかのように掴んだ。
掴んで手は黒い地面に伸びており、無数の手は男を暗い地面のそこ、何も見えない深淵に引きずり込んでいた。
「な、なんだよこれっ! おい! 離せ! 離してくれぇぇ!!」
『残念ながらそれはできません。まぁ、貴方方の様ななんの生産性も無い人間がいなくなった方が、誰かのためになるでしょう。良かったですね〜』
「ふざけるなぁぁ! あぁっ……嫌だ! 嫌だぁぁぁぁぁぁぁ」
男は最後までもがくが、無数の手によって力は入らず、そのまま深淵へと落ちていった……。
あまりにも無力な最後に汗が逆立ち、本当の意味でこのデュエルに対しての恐怖が生まれた。
これが闇のデュエル……負けたら最後、あんな風に終わってしまうのか……。
「なによこれ……誰か! 助けてっっ!!」
身内の最後を見たティアラメンツを使った女はカードを投げ捨て、この暗闇から逃げようと走り去るが、さっきの黒い手がそれを許さず、女の足を掴んで転ばせた。
女は足をバタつかせるが、それでも黒い手の力は変わらず、女は逃げたくても逃げられなかった。
『さぁ空さん。早くトドメを刺してください』
「……なんなんだ。お前は?」
『私はポルーション。それ以外の何者でもありませんよ』
「お前達の目的はダークネスの復活か?」
『おや? そこまで把握していますか。えぇ、そうですよ』
驚いているようにも思える態度だが、口調からして驚いてはおらず、驚いているふりをしているのが丸わかりだった。
「そのダークネスを復活した後、どうするんだ」
『そこまではちょっと言えませんね。ささ、そんな事より早くこのクズ達を処理しましょう!』
倒すという言葉では無く、処理と聞いた瞬間、ポルーションにとってコイツら人間はただの物だと俺は悟った。
だからこそ、さっきのように操った人間を無機質の人形のように扱っているんだ。
まさに実験……実験に夢中なマッドサイエンティスト……それがアイツ、ポルーションだ。
『おや? あの女のセットモンスターは【ティアラメンツ・メイルゥ】なので、貫通ダメージで勝てますよ? うーん、何故攻撃しないのですか?』
もし攻撃したら、さっきの男見たいに深淵に呑み込まれてしまう事は明白だ。
この攻撃が通ってしまえば、直接的では無いとは言え俺が彼女を殺したという事になる。そんな命を奪うような真似は、俺には出来なかった。
『おや、気が引けますか? じゃあ、こうしましょうか』
ポルーションを操った男が糸の切れた人形の様に倒れ、同時にさっきまで暴れていた女が意識を失った様に静かになると、女はゆっくりと立ち上がり、デッキの上に手を置こうとしていた。
その時理解した。この女はポルーションに操られていると。
デッキの上に手を置く……この行動は、デュエルに置けるサレンダーを意味していた。
このままではサレンダーとして扱われ、ここで命を落とす事になる。
「止めろ!!」
ポルーションを止めようと叫ぶが、ポルーションはそのままデッキの上に手を置いた。
その瞬間、ポルーションが操るのを止めたのか、女は意識を取り戻し、自分の手の下にデッキが置かれているのを見て絶望した。
「……え? 何これ……?」
掠れた声で自分の行動に疑いを持ったその時、無数の黒い手が彼女に襲いかかった。手足を掴まれ、抵抗しよう物なら手足を貫かれ、悲痛な叫びと共に彼女も深淵に飲み込まれていった。
「いや! いやぁぁぁぁ! 誰かっ! 助けてっっ! 何だってするから! だから……あぁっ……いやっ、いやぁぁぁぁぁぁ!!」
急いで俺は彼女の元に走り、必死に伸ばしている手をつかもうとした。だが、僅かに。ほんのコンマ数秒が届かず、俺の手は虚空を切り、彼女の絶望の眼差しを向けられたまま深淵に飲み飲まれた。
怒りとも悲しみとも違うこの渦巻く感情に駆られ、俺は地面を殴ってどこかも分からない所で叫んだ。
『はい、これで貴方の勝ちです。いや〜良かったですね! 雀さんも貴方の命も守れて』
最初に操った男の体に戻ったポルーションは相変わらずの笑顔で俺の勝利を祝福した。
「……狂ってる、アイツ」
雀の言う事は最もだった。
これまで出会ってきた中で、1番狂っていた。
倫理観も、価値観も、何もかもかけ離れ、恐怖と同時にコイツは絶対に倒さなければならないという危機感も生まれた。
「お前は一体……何なんだ」
『私は
ポルーションが操るのを止めたのか、男は倒れ、倒れた男に手が伸びた。
男は目覚めることも無く深淵に飲まれていき、叫びもせず助けも求めずにゆっくりと消えていった……
WINNER 機羽 空
最後に残った俺が勝者となり、イグニッションと闇の空間が消え、景色が元のビル街と青い空に戻り、雀を取り囲んでいた檻も消え去った。
俺は勝った。雀も守れて、俺も生きて、喜ばしい事……の筈だ。
だが、俺の心には深い爪痕が残った。
名前の知らない奴を俺は3人も見殺しにした。その事実が傷跡になり、心を抉り、罪悪感と無力さが込み上げた。
「空……」
そんな俺を雀は心配そうに見つめていた。
「空は悪くないよ。あの3人をやったのはポルーションだから。それに倒さないと、空があんな風に……」
「……分かってる」
引き金を引いたのはポルーションだ。それは事実だ。
それにやらなければこっちがやられる状況だった。こうするしか……無かったのか?
何が正解だったのか、何をすれば良かったのか、今となっては後の祭りだ。どうしようも無く沈んでいた所を、雀が服の袖を引っ張った。
「なんだ?」
「ちょっと……行きたい所あるんだ。良い?」
雀は真剣な様子だ。遊びに行くという感じでは無いのは確かだった。
それに、俺自身何か気を紛らわせたかったのかも知れない。雀の言う事に俺は頷き、雀の行きたい場所を聞き出した。
「どこに行くんだ?」
「ここの近くにある病院。そこにね……」
突然歯切れが悪くなり、雀はその後を言うのを躊躇っていた。言おうとして口を開けようとしても、俺の顔を見た途端また口を閉ざすのを繰り返し、ようやくその後を言ってくれた。
「そこに……私が殺した人がいるから」
新たになったカード紹介
RRUM-リコンタスト・オーバーフロー
・自分フィールドに他のカードが存在しない場合、相手はこのカードに対してカードの効果を発動出来ない。
①:自分メインフェイズ1開始時に発動できる。
相手フィールドと自分フィールドのカードを全て墓地に送り、その後自分の墓地の『RR』Xモンスター全てを素材に、EXデッキからランク13『RR』Xモンスターを上に重ねてX召喚扱いで特殊召喚する。
一連の処理後、墓地に送られたカードをフィールドに戻す。(元々表側のカードは表側で置く)
このカードでX召喚したモンスターが表側で存在する限り、自分はモンスターを召喚・特殊召喚出来ず、次の自分のドローフェイズとメインフェイズをスキップする。
オリカをまとめた章が欲しい?
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欲しい!
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別に( *¯ ³¯*)