六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
まさか本当にランク13のRRモンスターと、RRR(ライズランクマジック)という名前が来るとは思わなんだ(困惑)
しかもアロマ新規も来てくれたという事は……KONAMI、見ているんですか……?
まぁそんな自惚れはさておき、ようやくRR新規が来てくれて嬉しい限りです。次は純粋に不知火の新規がほすぃです(強欲)
この1週間は、人生で生きてきた中で一番長い1週間となった。
焔、空、そして彼方さんの3人はこの一週間、レゾンカードの真の力を解放する為に奔走してきたのだろう。
その成果を確認する為、俺は今ドラゴンメイドが秘密裏に経営しているカフェへと足を運び、ドアを開いた。
するとそこには、外の暑さを忘れさせる涼しい空間に、既に3人とドラゴンメイド達が揃っていた。
「よっ、久しぶりだな花衣」
焔がいつも通り気さくな笑顔で挨拶し、その反応を見て俺は安心した。
嘘をつけない焔が今この反応をしているという事は、焔も、空と彼方さんもどうやらレゾンカードの件では上手くいった様だ。
こういう時、こんなふうに表情から結果がわかりやすいのは有難い。
俺は空いている席に座ると、奥からドラゴンメイド・ハスキーが現れ、会話を始める前にメイドの作法なのか、一礼した。
「本日はお集まり頂きありがとうございます。その様子だと、焔様、空様、彼方様3人は、無事レゾンカードの解放に尽力出来たのですね」
「あぁ。もう散々だったわ」
すると焔は、レゾンカードを取り出して俺達に見せてくれた。
「……ん? 焔、そのカードはなんだ?」
すると空が焔のレゾンカードの違和感に気づいた。
俺も焔のカードを確認すると、なんと焔のカードは魔法カードでありながらも、リンクマーカーが付いていた。
本来リンクマーカーはリンクモンスターにしか無いものだが、魔法カードにリンクマーカーが付いているのは初めて……では無かった。
事情を知っている彼方さんと目が合うと、俺はその魔法カードについて口を開けた。
「それ……リンクマジックじゃないか!」
「リンクマジックだぁ? んだそれ」
「俺と花衣君が知る遊戯王では、リンクマジックという魔法カードにリンクマーカーが存在するカードがあるんだ。まさか焔君がそれを使うとはね」
結局リンクマジックは、アニメの中のカードにはなってしまったが、それが友人の焔がこうして手に取っているのを見ると感慨深い。
このリンクマジックには、俺だけではなく、ハスキー達ドラゴンメイドも興味を示していた。
「まぁ……リンクマジックですか」
「ハスキー達も知ってるのか?」
「ええ。リンクマジックは、デュエルの理を崩しかねないカードですからね。存在したカードは焔様のカードを除くと1枚のみ……大変貴重なカードでございます」
「お、もしかして俺って空達の中ですげぇカードの力出しちまったとか? なぁなぁ、空のも見せてくれよ!」
「はしゃぐな。言われなくても見せてやる」
焔に急かされながら、今度は空もレゾンカードを取り出した。焔のカードは前と変わらず【RRUM】。ランクアップマジックを超えるカードだったが、焔のリンクマジックの様な変わりようは無い。
だが、その効果は凄まじいものであった。
「げっ、相手のカード一旦墓地に送って発動だぁ? これXモンスターきつくねぇか?」
「あぁ。しかも、融合召喚によって召喚したモンスターの効果も無効にされるから、盤面がリセットされるより巨悪だ」
「わぁ〜、花衣さんを倒すレゾンカードにはピッタリなカードでs」
「パルラっっっ!!」
緑髪のドラゴンメイド、パルラはハスキーに名前を呼ばれて肩を上げ、俺達もその声の圧力と迫力にさっきまでの盛り上げの空気が吹き飛ばされた。
ハスキーは怒りで一瞬だけ我を忘れたのか、背中の羽を広げ、パルラはその怒りで震えていた。
ハスキーはパルラに向けて鋭い眼光を向け、パルラは何も言わずに縮こまった。
「……申し訳ございません。こちらの者が失礼な事を言いましたね」
「気にしないでくれ。事実……だから」
確かに、六花Xエクシーズモンスターや閃刀姫リンクモンスターを多く使う俺にとっては、このカードは天敵に近い存在だ。
まさに俺を倒す為に存在するカード。レゾンカードとして相応しい力を持っている。
空はそんな俺を倒す為のカードを見て、少し申し訳なさそうな顔を浮かべたが、気にする必要は無いと目で言った。
そんな空は、分かっていないなと言うようにため息をはいた。
「勘違いするな。花衣、これはお前を倒す為のカードじゃない。お前を守り、止める為のカードだ」
「空……」
「安心しろ。お前の命を奪う事はしない」
空は珍しい笑顔を見せると、そばにいた焔はすかさず携帯を取り、それを写真に収めた。
「お前っ、なに勝手に撮っているんだ」
「いや〜まさかお前がツンデレ発言の代名詞「勘違いするな」と良い笑顔してたからさ、これは撮らねぇとダメだろ」
「今すぐ消せ」
「やなこった。折角だからグループに送ってやるよ」
「……もういい。好きにしろ」
無闇に消そうとして焔に突っかかっても、運動神経の差で取り返せないと悟った空は、逆に諦めていた。
だけど、写真を撮ろうとした焔の気持ちも分かる。
空は小さく笑っている所が多く、あんな風に感情を全面に出した笑顔を向けたのを見たのは初めてだ。
「そうだ。なぁなぁ、彼方さんの見せてくれよ」
「俺かい? 俺はこれだね」
そう言って今度は彼方さんのレゾンカードを見せてくれた。
焔と空も気になってテーブルに置かれたカードを覗き込むように見ると、2人と違ってレゾンカードの名前すら変わっていた。
「
「前は確か、星雲の集い……でしたっけ?」
「あぁ。名前も変わるタイプは俺だけの様だね。しかもその分強力なカードだよ」
確かに、攻撃力を超えれば簡単に儀式召喚出来て、しかも儀式召喚に使われたのがエクシーズモンスターだったら、X素材を使わなくても発動出来るって……とんでもないな。
「うへ〜2人ともすげぇカード作ったなぁおい」
「俺からして見れば、リンクマジックを作った焔君の方が凄いけどね」
確かに三人とも凄いカードを生み出したけど、やっぱりリンクマジックが一番印象深い。
リンクマジックと言えば……遊戯王VRAINSで登場した【裁きの矢】だ。リンク先のモンスターの攻撃力を倍にすると言う、シンプルで強力な効果だが、焔のカードはその効果にプラスして墓地肥やしの効果もある。
魔法カード単体で見れば、多分焔のカードが最も強いだろう。
「あ、そうだ。そういえばレゾンカード以外にもこんなカード貰ったんだぜ」
そう言って焔はデッキケースからカードを数枚取り出し、テーブルに広げた。そこには魔法カード1枚とエクシーズモンスター数枚があり、そこには共通して【魔妖】という名前が記されていた。
「【魔妖】の……エクシーズモンスター?」
「お前……これどこで手に入れたんだ?」
「貰ったんだよ。妲己に」
「妲己って……昔のお姫様の名前だっけ?」
「いや、確かに歴史上の人物にはいるが、決闘者にとっての妲己は……魔妖の妲己だろう」
「それって……まさか、精霊?」
彼方さんは頷き、妲己の事について詳しく聞いた。
「焔君、妲己に会ったってどういうことだい?」
「どうもこうも、なんか俺ん家の神社には古い倉があってさ、そこに何百年封印されたとよ」
「……待て、おかしくないか? 妲己はティアドロップ達と同じ精霊の筈だ。精霊というのは、こことは違う精霊の世界とやらに居るんじゃないのか?」
確かに、精霊ならこの世界とは別の精霊の世界にいる筈だ。にも関わらず、何百年も封印されていた……という事は、その何百年もこの世界に居たという事になる。
この時点で精霊との矛盾……というか、精霊という存在自体の意味合いが変わってくる。
もう訳が分からず、助けを求めるようにハスキーに目を配らせると、ハスキーはその目を見て助け舟を出した。
「恐らくはレゾンの力によるものでしょう」
「どういう事だ?」
「この世界では、記憶や想い、現象、魂までもレゾンは力として得るためにカードにさせるのです」
「つまり、妲己達もそうだと?」
ハスキーは頷き、頭を下げながら1歩後ろに下がった。
「あぁ〜妲己もなんかそんな事言ってた様な気がするか。なんか強い想いがカードになるって」
「ええ。そしてレゾンがそれを察知し、妲己や魔妖の力をカードとして得たのでしょう。ですが、魔妖自体がカードを作るとは思いませんでしたが……」
「まぁ、ここにカードを作る奴がいるから、それほど不思議じゃねぇけどな」
焔は俺に指を指した。レゾンカードの真の力を解放した焔達には言われたくないと思うが……。
「それにしてもまさか昔からこの世界にいるモンスターがいるとは思わなかったよ」
「あぁ。空想上のモンスターだと思われたが、案外実在したモンスターもいるのかもな」
「恐竜族とか結構居そうだよなー」
確かに恐竜族や、歴史上の人物の名前と似ている、もしくは同じモンスターも多く存在している。現実では有り得ない様な形をしたモンスターも、もしかしたら大昔、人類が産まれる前に存在していたのかもしれないと思うと、過去に行って見てみたい気持ちが少しばかり浮かんだ。
「空想上で実在したと言うと……花衣君、君に少し面白い話があるんだ」
彼方さんは俺を呼び、きっと驚くと言って口笛を吹いた。
彼方さんの口笛は上手く、どこか聞いたことある様なメロディーだった。
頭の中で記憶を巡り、彼方さんの口笛を聞きながら記憶の中のメロディーを探った。
「……あっ、このメロディーって」
ようやく思い出せたと同時に、彼方さんは銀河眼の光子竜を見せた。
「この前、ナンバーズハンターに出会った」
俺は最初、彼方さんの言葉とその意味を疑った。
先に出た言葉は有り得ないという五文字だった。何故なら、彼方さんが出会ったその男というのは、空想上の人物だと言おうとしたその時、俺は出逢ってきた出来事を思い返した。
(……ダークネスや精霊達見たいな、物語でしか存在しなかった奴らが居るんだ。そりゃあ……いるよな)
今までの事象から、彼方さんが言ったことを理解した俺は、その名を聞いて思わず身を乗り出す勢いになった。
ナンバーズハンターは、俺にとって別の意味を指しており、彼方さんもそれを承知でわざわざナンバーズハンターと言った事は、直ぐに分かった。
「ナンバーズハンターって、あれだろ? 妲己と同じモンスターだよな?」
「あぁ。だが、そちらの2人の様子をみるとそれだけの意味では無さそうだな」
事情の知らない2人は何が何だか分からない様子だった。
だが、あれが普通の反応だ。それ故に少しもの寂しさもあった。
(半年前だったらこういう話を振ったら盛り上がったんだろうな……)
だが、その記憶は虚妄。作られた夢みたいな物だ。そんな現実はどこにも無く、ただ虚しさだけを残していった。
彼方さんはどうなんだろうか。俺と同じ様な状態になった事もあり、彼方さん自身も虚妄の焔と空みたいに、こうして物語の事を話していたのだろうか。
俺は彼方さんじゃ無いし、彼方さんがどんな人生を過ごして来たか分からない。
だけど、ナンバーズハンターの話題を出してきた彼方さんは俺を見て嬉しそうだった。
「声も仕草も、見たままだったよ。それに強かった。もしかしたら、もっと凄い人にも会えるかもね」
その凄い人というのは、俺にとって複数人いた。
もしその人達に会ったらどうしようかなとか、そういう妄想が膨らんでいき、その時を楽しみにしている自分がいた。会えたら良いんだけど……。
「さて、俺達だけの話はここまでにしようか。空君の方は何があったのかな」
少し置いてけぼり状態の2人に気を使ったのか、彼方さんはまだレゾンカードを見せていない空に話をふった。
彼方さんの考えが空に伝わったのか、空は感謝の意を込めて一礼した後、少し目つきが鋭くなった。
「俺は……ポルーションにあった。そしてそいつが操った奴らとデュエルした」
ポルーションの名前を聞いた俺達はさっきまでの和やかな雰囲気をなくし、体全体に電気が走るような衝撃を受けた。
反応からして、焔と彼方さんはポルーションの仲間、セブンエクリプスと接触はしてない様子は分かり、接触したのは空だと理解出来た。
そして、何故ポルーションが空を狙った理由も自ずと理解出来た。
「目的は雀か?」
「あぁ。性懲りも無く雀を狙っていた。それ程までに雀が欲しいらしい」
「その雀さんは? ここには居ないけど」
彼方さんの言う通り、ここに雀が居ない。まさか連れていかれたと思ったが、空の反応からしてそうでは無さそうだ。
「雀は今病院で友人のリハビリに付き合っている。雀もレゾンカードを持っているから、暫くは大丈夫だろう……が」
空は目線を外し、小さく足をゆすりつづけていた。
確かにレゾンカードを持っていれば、セブンエクリプスに襲われたとしても、レゾンカードが反応して持ち主を守ってはくれるが、それでも襲われたという事実で不安は拭いきれなかった。
レゾンカードはダークネスやセブンエクリプスの奴らに対して対抗する為のカードだ。
それはあちらも分かっている筈なのに、それを見越して襲ってくるという事は、少なくとも対抗策があると言うことだ。
空もそれが分かっているからこそ、不安や焦りが感じるのは仕方がない。
「一応、俺のイグニッション・ファルコンも渡してるから大丈夫だ。それに、数年ぶりに再開した親友なんだ。邪魔は出来ない」
「自分のレゾンカードを? 空、オメェ随分心配してんだな。雀の事好きなのか?」
「…………合理的に判断したまでだ」
「ほーん? へぇ〜?」
焔は空の態度に興味津々の様子だ。
空の顔から判断しようとにやけ顔をしながら空の正面に周りこもうとしており、空は回転する椅子を使って焔に顔を向けず、背中を見せるようにするが、焔がしつこく空の顔を見ようと回り込んだ。
流石の空も鬱陶しく思ったのか、焔と面を向かった瞬間、焔の脛に思い切りローキックをお見舞いした。
拗ねを蹴られた焔は声にならない叫びを上げ、近くのソファーへと寝転んだ。まぁ自業自得だな、あれは……
焔を撃退した空はハスキーに顔を向け、いよいよ本題に切り出した。
「さて、近況報告はここまでだ。そろそろ話して貰うぞ。セブンエクリプスの動向をな」
そう。俺たちが知りたかったのはこれだ。
花音、霊香、カレンさん3人をセブンエクリプスに連れていかれた俺達は救出を考えたが、そもそもセブンエクリプス達の動きを知る事すら出来ない状態だった。
そこで助け舟を求めたのは俺の監視者であり、目の前にいるドラゴンメイド達だ。彼女達はレゾンの末端だと言うが、少なくとも俺達よりも情報は持っていると思い、ここに来た訳だ。
だがドラゴンメイドの長、ハスキーは俺達の実力では危険だと判断し、その提案を蹴った。
そこで、ハスキーに認めてもらう為に焔達はレゾンカードの真の力を解放し、無事3人とも真の力を得たレゾンカードを手に入れる事が出来た訳だ。
「本当によろしいのですね?」
3人のレゾンカードを確認したハスキーは真紅と黒の翼を広げ、敵意や殺意を俺達に送った。
その敵意に反応したのか、デッキにいたティアドロップとレイがカードから実体化し、俺を守った。
焔や空、彼方さんもその殺気を察知し、焔はレゾンカードを取り出して抵抗しようとしていた。
「これから貴方達は、このように敵意や殺意を向けられ、命を落とす事もあるのです。貴方方はまだ子供です。人生があり、未来がある。それを一時の感情で手放すのは……見てられません」
ハスキーの言う通りだ。これは遊びでも無ければ、夢物語でも無い。本当に命をかけた戦いだ。
想像以上に苦しいかもしれない。戦う事を後悔するかもしれない。
逃げ出すのなら今だと、ハスキーは目でそう言った。
……だけど、それでも。俺の、俺達の気持ちは変わらなかった。
「うるせぇな。俺はやられたらやり返せねぇと気が済まないんだよ。それに、霊香を絶対に取り返す。俺の手でな」
焔は右拳を握り、左手でそれを受け止めながら決意を固めた。
「俺は……雀を守るために戦いたい。アイツが安心して人生を過ごせるように」
空は力強い目をハスキーに向け、その意思を貫いた。
「俺もやるさ。……それが俺の成す事だからね」
彼方さんの言葉には、重みが感じられた。まるで、自分が戦う事が決まっている使命の様な物が感じられ、彼方さんが何か遠い別の存在になったと一瞬錯覚してしまった。
「どうやら3人の意志は固そうですね。……残りは桜雪花衣さん。貴方だけです。どうしますか?」
「俺は……」
瞳を閉じて、これまでの出来事を思い浮かべる。
ティアドロップ達と出会い、レイ達に出会って戦って、彼方さんと出会い、ポルーションに出会って命懸けのデュエルをした。
そこから俺の人生は大きく狂ってしまったのかもしれない。
自分とは関係ない所で人が苦しみ、そして死んでいった人が居た。
そいつは決して良い奴では無かった。だけど……死んで良い訳では無かった。あの時の、燃えていく彼の助けを求める顔がどうしても頭から離れなかった。
それだけじゃない。相手は躊躇いもなく関係の無い人を巻き込んでいく。
俺のせいで……俺が近くにいたせいで死にかけた子も居た。もしも今後そうなると言うのなら、貝の様に閉じこもって生活する方が良いのかもしれない。
だが、それではその人達を守れない。
助けられなかった事への後悔はもうしたくない。
「俺は……もうこれ以上関係ない人を巻き込みたくない。これ以上巻き込まない為に戦いたい。皆と一緒に」
焔達と、ティアドロップとレイに顔を向きながら、ハスキーに向かってそう言った。
この時もう後には戻れないと悟った俺は皆の覚悟を示すように1歩だけ前に出て、ハスキーから目を逸らさずにいた。
ハスキーはついに折れたのか1歩後ろに下がり、カーテシでの一礼をした。
「……かしこまりました。それでは、貴方方に私達が知る全てをお話致しましょう」
「うし! やったな! 花衣」
「あぁ」
これで花音達が救える為の道が出来たと喜びを分かちあったその時、力強くドアが開かれ、ドアについていたベルが激しく揺れた。
「勝手な真似はしないで貰おうか。ドラゴンメイド・ハスキー」
俺達の喜びをかき消すかのような声に聞き覚えはあった。女性の声だがトーンが低く、声だけでこの場を制していた。
後ろに振り返ると、日に照らされた白銀の髪に、鋭い氷のような青い瞳を持っていた女性が俺を睨み、その目に俺は体が震えた。
この震えは間違いなく恐怖だ。恐怖の理由は明らかだった。何故ならあの人は、この世界で誰よりも俺の事を殺したがっている人なのだから。
「
そう、
そんな人がこの場所に足を踏み入れ、ハスキーの事をドラゴンメイドと言った。しかもティアドロップとレイの事も眼前と見ているということは、この人も精霊が見えているんだ。
白夜はゆっくりと店内に入り、白夜の圧が店内に重くのしかかった。
威圧で肩に重りでも載せられたかのように重く、苦しくなり、逆らえない雰囲気があった。その雰囲気はドラゴンメイド達をも屈服させ、ドラゴンメイド達は声をあげることすらできなかった。
「なぜこの男を殺さない。この男はいずれこの世界、いやこの次元すら壊しかねない存在なんだぞ」
「ですが彼には可能性があります! もう少しだけ猶予を与えても良いのでは……」
「黙れ。お前達ドラゴンメイドはただの使い魔という事を忘れるな」
白夜は更に鋭い眼光をハスキーに向け、ハスキーは手足を小刻みに震えさせながら後ろに下がった。他のドラゴンメイド達もそうだ。ティルルは何も言わず、パルラは怯え、ラドリーは怖がってナサリーの所に言って抱き締められていた。
有無を言わせない威圧感でドラゴンメイド達は屈服し、矛先が俺や焔達に向けられた。
白夜は焔達が持っているレゾンカードを見ると、自分が渡した物とは違う事に気付いたようだ。
「カード本来の力を引き出したのは見事だ。だが、何故奴を殺さない。こればかりはガッカリだ」
力を引き出した事だけは認めてはいたが、本来の役目を果たさないことに関しては幻滅していた。焔達からしてみれば、やりたくも無いことを強いられ、勝手に幻滅されるのはお門違いにも程がある。
そんな自分勝手で、傲慢な態度に焔はムカッ腹を立てて突っかかった。
「なんだぁ? てめぇが勝手にレゾンカード渡したんだろうが! 勝手にガッカリとかすんじゃねぇよ!」
「道具の使い方も理解出来ない猿が扱っているのか……」
「んだとぉ!?」
「落ち着け焔、奴は一応レゾンのトップだ。ここで問題を起こして訴訟でも起こされてみろ。俺達は犯罪者の仲間入りだ」
怒りで溺れる焔を空が何とか宥め、焔は苛立ちを抑えきれないまま奥のソファーへと座った。
確かに、レゾンというのはありとあらゆる流通や産業を支えている企業でもあり、それは娯楽……つまりこのデュエルモンスターズも例外では無い。
そんな世界の宝的な存在を傷つけたりでもしたら、俺達が悪者にされるのは目に見えている。空はそれを理解したからこそ焔を止めたんだ。
「やはり、こいつらにレゾンカードを渡すのは間違いだった」
すると白夜は空に向かって手を伸ばした。
「レゾンカードを返してもらおう。無論お前もだ、炎山焔、星空彼方」
淡々とした声色で白夜はそう言った。だが彼方はそう言われることを予見していたのか、微動だにせずに受け答えた。
「生憎だが俺の手持ちにレゾンカードはこの魔法カードしか無い。それに、返す理由も無い」
「アレは本来我々のカードだ。あの男を倒す気が無いと言うのなら、持っていても無駄だ」
「倒す理由すら無いからだ。逆に、今の花衣は頼もしい味方と捉えることも出来る。違うか?」
「論外だ。お前はあの男の正体を知っている筈だ。それなのに味方やら仲間と言っているのなら、楽観しすぎだ」
互いに1歩も引かない論争に終わりは無く、空は俺を守る為にあの白夜に対して何度も言葉を言い続けた。
「何故使命を果たそうとしない。今ここでお前達がこの男を倒せば、この次元は決して光が届かない闇に覆われることも無い。端的に言えば、世界と人類救われるんだ。それなのに何故だ?」
「その救うべき人類の中に花衣君が居るからだ」
空との論争に彼方さんも見かねてか空に肩入れし、白夜に目を向けた。
「花衣君には様々な可能性がある。それを信じてはどうですか?」
「その可能性の中に一欠片の危険があるというのが分からないのか。それがこの次元を呑み込むのなら尚更だ」
「そうさせないように俺達やレゾンカードがあるんじゃ無いんですか」
意外にも白夜さんは彼方さんに対して強くは出なかった。彼方さんから圧を感じているという訳では無く、何か遠慮的な物を醸し出していた。
「そこまで言うのであれば証明しろ。ハスキー、コイツらに【扉】の事を話せ。それに、もう好きにしてもいいぞ」
「それはつまり、この方達を信用すると?」
「違う。これまで通り監視するんだ。それと、星空彼方、使命は果たせ。お前はその為に産まれたのだから」
そう言って白夜はこの場から去り、いつの間にか止めていた呼吸を取り戻した。
皆やドラゴンメイド達も圧迫感から開放されたかのように力が抜き、近くのソファーや椅子に座り込んでしまった。
まさかドラゴンメイドまでこうも威圧するとは、流石はレゾンのトップと言うべきだろうか。だが、それだけでは設定できない何かが彼女にはあり、それとは別に何か天敵見たいなものも感じ取れた。
まぁ、レゾン自体が俺の天敵なのだから、当たり前と言えば当たり前なんだけど。
「結構威圧的な感じだったな。彼方さん、大丈夫ですか?」
「あぁ。問題ない。嫌な人だったね」
俺に気を使ってか、彼方さんは白夜に対して愚痴をこぼす様にして話してくれた。
「ホントな。んじゃ、教えてくれよ。敵の目的って奴をな」
焔の言う通り、俺達の目的はそれだ。予想外の人物によって脱線してしまったが、その人物が居なくなった事により、ようやく本筋にいけそうだ。
「かしこまりました。では、アフタヌーンティートとご一緒にご説明させて頂きましょう」
するとハスキーは手を2回叩くと、周りにいたドラゴンメイド達が奥のキッチンへと向かい、ケーキやスコーン、クッキー等の焼き菓子がもりつけられたスタンドをこっちに運んでくれた。
にしてはかなりの量だ。俺たち4人では食べきれない量だが、実態化していない皆と食べるのを考えれば丁度いいぐらいの量だ。
「良ければ、他の六花様と閃刀姫様、そしてアロマ様もご一緒にどうぞ」
やはりハスキーは実態化していない皆にも配慮した量を提供してくれた。
俺は快くそれを受け入れ、他の皆のカードを取りだし、この場に現れさせた。
すると、カードから飛び出すようにストレナエが現れ、一目散にクッキーに手を出した。
「んー! いい匂い! いっただきますー!」
ストレナエが一目散にテーブルに置かれたクッキーを頬張り、あまりの美味しさに頬を添えていた。
後からカンザシ達も姿を現すと、そのがっつきに呆れながらも、カンザシは躾ける様にストレナエの頭にゆっくりと手刀を入れた。
「行儀が悪いですよストレナエ」
「えー、良いじゃんまだまだあるんだし!」
「食べすぎて夕食食べられなくなっても知りませんよ」
そんなたわいのない話を交わしながらも、ストレナエは食べる手を止めず、それにつられてプリムまでも菓子に伸ばす手を止めなかった。
「まだまだありますから、ごゆっくり食べてください。さて、それではお話致しましょうか」
ハスキーもティルルが煎れた紅茶を1口のみ、ようやく本筋へと入った。
「まず、相手の目的はダークネスの復活です。そしてその為には、この次元と12の次元を繋げる事です」
「12の次元?」
「こことは別の次元と認識して構いません。俗に言う精霊の世界ですね」
「ティアドロップ達が元々居た次元と言う事か。その繋げる方法は?」
「各地に【扉】と言われる物が存在し、そこで精霊の世界とこの世界を少しづつですが侵食……いえ、融合しているのです」
「それってまさか……メルフィーパークにあった物か?」
俺の問いにハスキーは頷いた。長らく謎になっていたこの世界と精霊の世界の融合の件が、まさかここで明らかになるとは思わなかった。
「確かあそこは白ローブの着た魔法使いが何とかしたな……」
「ウィッチクラフト・マスターヴェール様ですね。彼女はこの扉を封印する為に動いており、ウィッチクラフト業を一旦抜けているらしいですね」
「なぁ、確かウィッチクラフトの融合魔法にそんな感じの無かったか?」
「【ウィッチクラフト・コンフュージョン】かな。なるほど、ヴェールが抜けたのはそれが理由か」
「そのカードはヴェール様が面白がって作ったカードらしいですけどね」
あいつもカード作れるのかよ……。結構大事な場面の筈なのに、改めてその魔法カードのイラストを見てみると当のヴェール本人は緊張感が無い顔をしていた。
マスターをいきなり任命されたハイネは泣き顔になり、他のウィッチクラフト達は呆れた顔をしている者もいれば、いきなり行方をくらませた事に怒っている者もいた。
ウィッチクラフトのリーダーが突然何も言わずに仲間元に離れたら、仲間が怒るのは当然だ。
「んで? そのヴェールが扉を封印してくれてる訳か? なら、問題解決じゃねぇか」
「いえ。残念ながらそう上手くはいって居ないのです。【扉】の存在はかなり前から察知していましたが、封印出来たのは先程申した1箇所だけです」
「1箇所だけ!?」
「お恥ずかしい事です。ですが、対抗策はあります。その為にレゾンカードがあるのですから」
「ここでもレゾンカードが必要なのか」
「ダークネスに対抗する為に作られたカードですから」
確かにハスキーの言う通りだが、いくらなんでも用途が多すぎる。そうまでしないと対抗できないという事なのだろうか。
「だったら、決闘者全員にレゾンカード渡せば良いじゃねぇか。何でそうしねぇんだ?」
確かに焔の言う通り、レゾンカードを大量に作る事が可能ならば、それ程多くの人がダークネスに対抗出来るかつ、防衛手段にもなるはずだ。
だがハスキーの反応を見る限り、それは叶わない事だろうと悟った。
「確かにレゾンカード自体は作れます。ですが、カードの力を引き出す事は誰にでも出来る訳では無いのです」
「どういう事だ?」
「レゾンカードは持ち主の感情や心によって姿や力を変えるカードでもあります。それは焔様たちが良く知っている筈です」
焔達はこの1週間の出来事を思い返し、レゾンカードが自身の心情や感情等で変わった事に心当たりがあるように頷いた。
「なので、闇雲にレゾンカードを渡しても力を引き出せず、逆に相手に奪われてしまう可能性もあります。そうなれば、レゾンカードに対して対抗策が出る恐れもあり、一部の人にしか渡してないのです」
「じゃあ花音達を攫ったのはレゾンカードに打ち勝つ為……?」
「いえ、白夜様の命により彼女達にレゾンカードは渡しておりません。雀様は例外として渡しておりますが……」
「何故雀だけなんだ?」
「花音様、霊香様、カレン様、この3人には違和感があると白夜様は仰ってました」
「違和感……?」
「ええ。詳細は不明ですが、その違和感で白夜様はその3人にレゾンカードを渡しませんでした」
「だぁぁ! なんか分からないことだらけでモヤモヤするなクソ!」
「だが、その違和感がカレン達を攫う要因というのは確かだ。セブン・エクリプスの目的がダークネスの復活が含まれているのなら……」
「ダークネスの復活に花音達が利用されるということですね」
彼方さんは静かに頷き、俺たちの間に緊張感や焦りが生まれた。いまこの瞬間にも、花音達が無事な保証は無い。
最悪……なんて言葉は使いたくない。俺たちにとっては、今セブン・エクリプスの動向や場所すら分からない状況が最悪なのだから。
「とにかく、こちらでも【扉】の調査は進めます。【扉】をどうにかすれば、あちらから動きは出る筈です」
「それまでは何も出来ないか……」
「んじゃあさ、この話止めて別の話をしていいか?」
「別の話?」
突然焔がそんな事を言い出し、俺は空の彼方さん、ハスキーに目を合わせた。
確かにこれ以上話しても何も情報が得られないだろうと全員が思ったのか、目を合わせたら皆同じ様に頷いた。その目配りは焔にも意図が伝わり、焔はポケットに丸めたせいでクシャクシャのポスターをテーブルの上に広げた。
「夏祭り……?」
「そっ。毎年恒例、不知火神社夏祭りな。お前ら来るだろ?」
不知火神社夏祭りは、その名の通り神社の境内で祭りをやる行事だ。この辺りに住んでいる人なら縁のある行事であり、規模もかなり大きい事からかなり有名だ。
この夏祭りには確か花火大会もあり、特にこの花火を見る為に他の所から来る人だっている程壮大だ。
ポスターを見た俺は、正直今年もやるのか。という気持ちしか湧かず、行く気にはなれなかった。
別に行きたくないという訳では無い。むしろ去年は行かなかったから今年は行こうかと思ってはいた。
だが、一秒でも早く花音達を助けたい。その為には強くならなければならない。自分の命や助けたい者を助けたければ、そうする以外の方法は無いと、痛感させられたからだ。
その焦りや不安が俺の心を押しつぶし、夏祭りを楽しむ余裕が無いと分かっているからこそ、行く気にはなれなかった。
そしてこの夏祭りに反応したのは、空でも彼方さんでも無く、ストレナエとプリムだった。
「夏祭り! 面白そう! ねぇねぇ花衣君行こうよ〜」
「私も行きたいー! お祭り行きたい行きたいー!!」
俺の服の裾を引っ張って夏祭りへ行く事を強請る姿は傍から見れば父親と子供だった。他にもプリムも俺の背中にしがみつき、ストレナエと同じ様に行きたいと叫んだ。
俺にとってはいつもの光景だが、焔達から見ればそれは微笑ましい家族の様な光景なのか、柔らかな笑顔を向けた。
「連れて行って貰ったらどうだ、お父さん」
「誰がお父さんだ!」
まさかの空から来たボケに思わずツッコンでしまった。
「ねぇねぇ行こうよ花衣君〜!」
「行きたい行きたい行きたーい!!」
子供と変わらない体重と体型だが、2人にぶら下がられると流石に重くて立っていられない。2人を支える為に右腕でストレナエを抱き上げ、左腕でプリムを抱き上げ、2人を支えた。
「行こ?」
目線が同じになったからストレナエの新緑の眼と、プリムの紫色に光る純粋な目を向けた。
純粋で濁りのない眼の輝きを持った少女2人の願いを無下にはしたくないが、それでも俺の心は揺らいでいた。
行くだけならストレナエ達でも可能だが、そういう訳では無いのは勿論察してはいた。
葛藤の中で悶える俺に手を差し伸べるかのように、今度はティアドロップが近づき、俺の心を見透かしているかのように笑った。
「焦る気持ちは分かりますが、今は心を休まれてはどうですか? 傷ついた心では、いざと言う時に立ち上がることはできませんから」
「ティアドロップ……」
ティアドロップの言葉に、皆は何も言わずに頷いた。
「…………じゃあ、浴衣とか買わないとな」
「やったー!」
浴衣で祭りに行くという意味合いでそう言うと、抱き上げていたストレナエとプリムは嬉しそうに頬を擦り寄らせてきた。
ストレナエとプリムの最大級である愛情表現にを見て羨ましがったのか、ティアドロップ達は何も言わずに無言で俺の前に集まりだした。
何も言わずとも、次は私の番という文字が顔に浮かんでいるのが見え、これを避ける手段は無い。
次第に囲まれていき、遂には一歩も動けない状況になってしまい、頬を擦り寄せようと皆顔を差し出すように前に出た。
「花衣様、私にも同じ事をしてください」
「えっ……いや、流石にそれは……」
焔達が見ている手前では出来るわけも無い。そう思って焔達の方に気を配って目を向けたが、焔達は全員謎の気遣いで背中を向けていた。
「心配すんな、俺ら壁の方に向いてるからさ」
「なんなら耳も塞ごうか?」
「イヤホンを耳栓代わりにするか」
焔、空、彼方さんはイヤホンをして壁に身体を向け、止める手どころか意思さえださなかった。
「彼方さんまで……なぁ、マジョラムもなんか言ってくれ!」
同じ精霊だから何とかなるかもしれない淡い期待でマジョラム達アロマにも声をかけたが、マジョラムはこの光景を楽しそうに見ながら微笑んでいた。
「好かれてますわね」
この時点でアロマ達には助ける気は無いと悟った。止める手だても人も居なければ、皆とのスキンシップは良くて先送り程度でしかこの場を止める事は出来なかった。
「だ……誰も居ない時、家の中だったら良いから」
結局この後俺は皆に連れ去られるように帰って行った。
オリカをまとめた章が欲しい?
-
欲しい!
-
別に( *¯ ³¯*)