六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
ちゃうねん…飽きたとかじゃ無いんや…ただ友人が使う閃刀姫が面白そうだから作ろうとかそういうもんやねん。
リンクスでウイッチクラフト使って妨害したりSinデッキでワンキルしてるとか言わんといてくれ…
大会の準々決勝も終わりに近づいた。第一試合である俺と名前も知らない他人の試合は俺の勝利に、続いて第2試合の炎山vs白井の勝負は炎山の勝利。第3試合の機羽vs河原は機羽の勝利に終わった。
そして、この第4試合、咲初vsレイの勝負で準々決勝が終わる。終わりゆく大会の行先を参加者が見守っていた。
「よろしくお願いします!」
「…お願いします。」
元気よく挨拶する咲初に対し、まるで興味が無いと思わせるような淡々とした挨拶のレイによるデュエルが始まった。コイントスにより、先行は咲初となった。
「…頑張れよ。咲初…」
レイがもしかしたら…遊戯王のモンスター【閃刀姫-レイ】の可能性が浮上している事から、俺はこの試合を気にしていた。もしかしたら、決勝であの子と戦うことになりかもしれない。そして…もしかしたら俺に関係している存在…気にしない方が無理だった。
「ん?お前、あの子の事気になってんの?」
「え…?あ…違うからな!?」
俺のつぶやきが炎山に聞かれ、俺はその言葉の意味を否定した。だが、炎山に否定したのが仇となり炎山はそうかそうかと笑ってこの場を見過ごした。
「大丈夫だって、この大会終わったらどっか食べに行くかって誘うから…そん時電話番号とか聞けよ?」
「だからそういう意味じゃ…!」
「お前ら何の話してるんだ?面白そうだから混ぜてくれよ。」
「おう聞いてくれよ空。あのな、花衣が花音の事が…」
「だから違うから!」
機羽までこの話に参加し、炎山が勘違いを言いふらそうとしていたのを俺は必死に止める。機羽は俺の態度を見て何かを悟り、少しの溜息を吐いて俺を見た。
どうやら機羽は勘違いだと分かってくれたようだ。
「ま、今は試合を見よう。確か花音が【アロマ】だったな。」
「んで、レイが…なんだっけ?」
「【閃刀姫】よ、一度見たから分かるわ。」
炎山の問いには後から来た白井が答えてくれた。白井の後ろに、ひょこっと顔を出した河原がその姿を見せた。
「【アロマ】と【閃刀姫】か〜どっちが勝つのかな?」
「…お前雰囲気変わったな。」
機羽のツッコミには俺も思った。さっきのデュエルの河原と今の河原は雰囲気こそ似てるがテンション自体は違っていた。
なんか…いつも漆黒の闇とか何とか言ってそうな感じだったが、そうでも無いのかな?
「ふ…今は戦いに備え力を休ませているのだ…」
前言撤回、変わってない。思い切りあっち系だ。河原は左目を左手で隠し、如何にものポーズで俺たちを見ていた。…なんだろうか、見ているこっちが恥ずかしくなってきた。
「お前、俺に負けたけどな。」
「うぐ…そ、それはそうだけど!」
機羽のツッコミに河原が機羽に突っかかるように近づき、そのまま討論になってしまう。それを見た白井が呆れながら河原の肩を掴み、口喧嘩を止めさせた。
「何やってるの…全く。機羽 空…だったかしら。この試合の勝者が貴方の対戦相手になるのだからしっかり見ておいたらどうかしら?」
「あ…あぁ。そうだな…」
白井の迫力に圧倒された機羽は素直に咲初の試合を観察した。
そう、俺と炎山はAブロックの準決勝、機羽がいるのはBブロックなので、同じBブロックである咲初かレイ、この勝者が機羽の準決勝の相手になる。相手を知り、観察して敵の出方を見るのは禁止にはされていないので、機羽は相手の戦略を見ていた。
「なぁ炎山…【閃刀姫】ってどんなデッキなんだ?」
戦略を観察すると言っても、俺はまだ色んなデッキの知識を知らない。そこで、今回レイが使っている【閃刀姫】について説明をお願いした。
「【閃刀姫】か…ん〜メインモンスターゾーンをあんまり使わないのと魔法カードが三枚墓地にあるとその真価を発揮するテーマだな。」
「メインモンスターゾーンを使わない…?」
通常、モンスターを召喚する時に使うのがメインモンスターゾーンだ。これは最大5体まで召喚可能であり、それ以上は召喚出来ない。これの他に、エクストラデッキから召喚する時に置く事ができるゾーン、エクストラモンスターゾーンという物がある。これはフィールドの中央に2つ存在し、プレイヤーはそのどちらか1つしか使えない。融合やシンクロ、エクシーズモンスターはこのゾーンを使って召喚するのもメインモンスターゾーンを使って召喚する事も可能だ。ただし、リンクモンスターはエクストラデッキから召喚する時は必ずこのゾーンを使用するのだが、つまり【閃刀姫】はリンクモンスターだらけのテーマなのだろうか?
「じゃあ【閃刀姫】ってリンクモンスターだらけのテーマ?」
「ん、まぁ当たってはいるな。ま、見てれば分かるさ。」
炎山がデュエルの方に目を向け、俺は咲初のデュエルを見届ける。そして、デュエルが始まっても限らずレイは帽子越しで俺の事を見ていた…
「私はイービル・ソーンを召喚し、リリースします。その効果で貴方に300のダメージを与え、私はデッキから"イービル・ソーン"を2枚特殊召喚します!」
レイ残りLP8000→7700
咲初の先行から始まり、まずはレイに効果ダメージを与えた。
「私は、"イービル・ソーン"2体でリンク召喚!召喚条件は植物族モンスター2体!"アロマセラフィー・ジャスミン"を召喚!」
アロマセラフィー・ジャスミン
植物族/LINK2/ATK1900
「更に自分よりライフが多い場合、手札から"アロマージ・ローリエ"を手札から特殊召喚します!」
アロマージ・ローリエ
レベル1/植物族/ATK800/DEF0
成程、先程のイービル・ソーンの効果ダメージにより、レイのライフは7700になり、結果咲初は相手よりライフポイントが多い状態になった…そして先程召喚したモンスターは"アロマセラフィー・ジャスミン"のリンク先に召喚している。
「私は"アロマセラフィー・ジャスミン"ちゃんの効果発動。リンク先のモンスターをリリースして、デッキから植物族モンスターを守備表示で特殊召喚します。私が選択するのは"アロマージ・ジャスミン"ちゃんです!」
アロマージ・ジャスミン
レベル2/植物族/ATK100/DEF1900
「更に、ローリエちゃんが墓地に送られた時、私はライフを500回復できます。」
咲初 残りLP8000→8500
【アロマ】はライフを回復して、それを利用して効果を発揮するテーマ…どうやらまだまだ続くようだ。
「"アロマージ・ジャスミン"ちゃんの効果発動!自分の方がライフが多く、この子が存在する時に、私は通常召喚に加えてもう一度この子以外の植物族モンスターを召喚出来ます。」
「…?それって特殊召喚出来るってことか?」
「いや、違う。この場合は召喚権をもう一度使えるって意味だ。この場合は、植物族モンスターを召喚する時は必ず表側表示にしないとダメだ。表側表示なら、"アロマージ・ジャスミン"をリリースしてレベル5以上のモンスターを召喚する事も可能だ。」
成程…あくまで召喚権の回復…みたいな物かな?つまり咲初はもう一回手札からモンスターを召喚出来るという事になる。
「私は手札の"ローン・ファイア・ブロッサム"を召喚!そしてこの子をリリースして、デッキから植物族モンスターを召喚出来ます。私はデッキから"アロマージーマジョラム"さんを特殊召喚!」
アロマージーマジョラム
レベル5/植物族/ATK2000/DEF1600
「お、この配置…中々良いな。」
「この配置が…?」
炎山が関心するように頷きながら咲初の場面を見つめていた。今咲初の場面はエクストラモンスターゾーンに"アロマセラフィージャスミン"にそのリンク先には先程召喚したアロマージマジョラムがいる。しかし俺にはこれの何が良いかよく分からなかった。
「まず、"アロマセラフィージャスミン"にはライフポイントが相手より多ければ、リンク先のモンスターは破壊されない能力がある。そして、"アロマージマジョラム"は同じくライフポイントが相手より多ければ、自分の植物族モンスターでの戦闘で発生するダメージを0にする…どういう事か分かるか?」
機羽が疑問に満ちた俺の顔を見て場面にあるモンスターの効果を説明した。えーと…盤面には"アロマセラフィージャスミン"のリンク先にモンスターが2体…。
そして先程の効果の事を考えると…
「それって…ダメージも受けないし、戦闘でも破壊されない…無敵ってこと?そんなのどうやって…」
破壊もされずにダメージも受けないって…なんだその無敵は。そんなのどうやって突破すればいいんだ…?
「戦闘では無敵だけど、効果では無力に等しいわ。"アロマセラフィージャスミン"の効果はあくまでも戦闘による破壊を無効…効果では破壊されるわ。」
白井の説明によると…効果でジャスミンを破壊すれば破壊は出来て盤面は崩れるという訳か…
「ま、相手は【閃刀姫】だから当然、効果破壊の魔法カードも積んでいるはず…引いてないのを祈るしかないね。まぁ…引いてなくてもこの布陣をどうにかするかもね…」
河原が何が思い詰めたような顔してデュエルを見届けていた。咲初はカードを二枚伏せてターンを終えた。
「私のターンドロー。」
機械的に淡々とした声と仕草でデッキからカードを1枚引き、躊躇いも無くカードを場に出す。そしてそれを見ていた機羽が何にか気になることがあるようだ。
「あのデッキ…枚数が多いな…」
「え?ダメなのか?」
「ダメという訳では無いが…目当てのカードが引きずらくなるからあまりおすすめはしない。余程引きに自信があるのかそれとも…」
レイのデッキをよく見ると、確かに他と比べてデッキの枚数が多い、恐らく40枚以上あるのは間違いないだろう。デッキの枚数は40枚以上60枚以下と決められており、その範囲内なら何枚でも良い。だが、デッキの枚数が多すぎると、目当てのカードが引きずらくなるので、なるべく40枚に収めるのがおすすめだと教わったので、俺のデッキは40枚に収めている。しかし、レイのデッキは明らかにその枚数を超えていた。
「魔法カード"増援"を発動。デッキからレベル4以下の戦士族を手札に加える。私は"閃刀姫-レイ"を手札に加え、そのまま召喚。」
閃刀姫-レイ
レベル4/戦士族/ATK1500/DEF1500
(あのカード…何か他のとは違う…)
ぞわりと、あのカードが場に出た時、俺の体が震え出した。あのカードから感じる得体の知れないオーラみたいな物が俺を掴んで離さないように俺を恐怖で支配していた。まるで意志を持っているかのように…
「私は魔法カード"テラ・フォーミング"を発動。これにより私はフィールド魔法"閃刀空域-エリアゼロ"を手札に加え、これをフィールドに置く。」
フィールド魔法…確かフィールド魔法ゾーンに置く魔法カードで、その効果はお互いのプレイヤーに影響を受ける魔法カードだったな。
「手札から魔法カード"モンスターゲート"を発動。"閃刀姫-レイ"をリリースし、通常召喚可能なモンスターが出るまでデッキの上からカードをめくり、モンスターが出たら特殊召喚する。そして残りのめくったカードは全て墓地に送る。」
レイは"閃刀姫-レイ"をリリースしモンスターが出るまでデッキをめくり墓地に送った。1枚2枚と次々とカードを墓地に送るレイは中々モンスターが出ず、デッキの半分以上が墓地に送られていく。そしてようやく、通常召喚可能なもう1枚の"閃刀姫-レイ"を引き当て、またもや"閃刀姫-レイ"を特殊召喚する。
あれほどあったデッキが今では厚みを失い、あと数ターンでデッキ切れになる程だった。
「私は"閃刀姫-レイ"の効果発動。このカードをリリースしエクストラデッキから【閃刀姫】モンスターをエクストラモンスターゾーンに特殊召喚する。私はエクストラデッキから"閃刀姫-カガリ"を特殊召喚。」
閃刀姫-カガリ
LINK1/機械族/ATK1500
「お…あのカード、イラスト違いのレアカードじゃん。」
「イラスト違い…?」
「カードの中には違うイラストが描かれているシークレットレアがあるんだよ。あれはその1枚って訳だ。」
イラスト違いである"閃刀姫-カガリ"は敵を見下しているのか冷たい目をして武器を構えていた。だが何故だろうか…あの目がまるで俺の事を見ているような気がしてならない。自惚れかもしれないが、確かにそう感じる。現にあのカードも"閃刀姫-レイ"と同じようなオーラが俺の周りに纏わりついて離さない。
「"閃刀姫-カガリ"が特殊召喚に成功した時、自分の墓地にある【閃刀】と名のつく魔法カードを1枚手札に加える。私は"閃刀機構-ハーキュリーベース"を手札に加える。」
レイはデッキよりも多くのなった墓地の中から、1枚を墓地から手札に加えた。
「更に、"閃刀姫-カガリ"の攻撃力は自分の墓地にある魔法カード1枚につき100アップする。」
「え!?それってつまり…」
咲初は驚いのあまり、レイの墓地に積み重ねられたカードを見た。あの墓地はモンスターゲートによって墓地に送られたカードでありその全ては…魔法カードだった。
「えーとあいつ何枚モンスターゲートで魔法カード墓地に送った?」
炎山は数えていなかったので"閃刀姫-カガリ"の攻撃力が分からずにいた。それを言う俺も途中まで数えるのを忘れ、攻撃力が分からずにいたが…あの枚数…30枚ぐらいはあるはずだ。
「…49だ。」
「機羽…?なんて言った?」
「今レイの墓地にある魔法カードは全部で49枚ある。つまり…"閃刀姫-カガリ"の攻撃力は4900上がり…攻撃力は6400だ。」
閃刀姫-カガリ ATK1500→6400
「攻撃力6400!?そんな…」
凄まじい攻撃力の上げ幅を見た咲初はその攻撃力に驚いたが、盤面的に大丈夫な筈だ。咲初には戦闘破壊を無効にするジャスミンと、戦闘ダメージを0にするマジョラムがいる。戦闘面では大丈夫な筈だ。だが、それは虚しくも壊された。
「私は魔法カード"閃刀機-ウィドウアンカー"を発動。自分のメインモンスターゾーンにモンスターがいない時、フィールドの効果モンスターを対象にして発動。そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。私は"アロマージーマジョラム"の効果を無効にする。」
「そんな…」
これにより、戦闘破壊はされないがダメージは受ける事になる。しかし相手のモンスターは一体…いくら攻撃力が6400でも耐えきれるはずだ。
「私は装備魔法"閃刀機構-ハーキュリーベース"をカガリに装備。このカードを装備したモンスターはダイレクトアタックが出来ませんが、2回攻撃が可能となる。」
「それってつまり…」
「戦闘破壊はされないが…戦闘ダメージは受ける。そして貴方の"アロマセラフィージャスミン"は相手よりライフが多ければ自分含むリンク先のモンスターは破壊されない。その効果が仇となりましたね。」
つまり…攻撃力1800の"アロマセラフィージャスミン"と攻撃力6400の"閃刀姫-カガリ"が戦闘するとマジョラムの効果が無効になっているので、咲初に4400のダメージを受ける。
ジャスミンは破壊されないが…先程の装備魔法により、ダイレクトアタックができない代わりに2回攻撃が可能となった。破壊されなかったジャスミンにもう一度攻撃すればそのダメージは8800…咲初の8500のライフは消し飛ぶ。
「そして貴方が伏せたカード…恐らく"渇きの風"ですよね?」
咲初は図星をつかれたかのように伏せたカードを見た。反応からしてどうやら当たりのようだ。
「"恵みの風"や"潤いの風"だったらライフ回復効果もあったのに…貴方はもう終わりです。」
最早万策尽きたように咲初は顔を俯かせ敗北を受け入れていた。
「私は、"閃刀姫-カガリ"で"アロマセラフィージャスミン"を攻撃!」
ライフがレイより多い為ジャスミンは破壊されないが咲初は5000ものダメージを受ける。
咲初残りLP8500→3500
通常これで攻撃は終わりだが、装備魔法により、"閃刀姫-カガリ"は2回攻撃出来る。伏せカードの"渇きの風"のライフ回復効果は無い…
「"閃刀姫-カガリ"の2回目の攻撃で"アロマセラフィージャスミン"を攻撃!」
「ま…参りました…」
咲初残りLP3500→0
勝者 レイ
準々決勝の終わりはレイのワンターンキルによって幕が閉じられた。
デュエルを終えたレイは勝利の喜びに浸ること無く、この場から立ち去り、またもや店の隅で座った。
対する咲初は圧倒的な力を見せつけられたせいか、酷く落ち込んでいた。
「花音…」
白井と河原が慰めるように彼女に寄り添い、彼女のカードを片付け渡した。咲初は素直にデッキを受け取り、深呼吸してから顔をあげた。
「あはは…ごめんね雀ちゃん。私…負けちゃった。」
「花音…貴方…」
「ちょっと、外の空気吸ってきますね!」
誰でも分かる無理に強がった笑顔を振りまきながら咲初は店の外へと出ていった。あの顔を見た俺たちはどうすれば良いか分からず、そのまま立ち尽くしていた。
「…声…かけずれぇよな。」
「まぁそうだな…」
炎山と機羽は声をかけて慰めるべきだろうがその言葉を持ち合わせていない俺達はどうすればいいか分からず、時間が解決してくれるのを待った。そんな時、後ろから女性の声がした。
「あの…よろしいでしょうか?」
俺を呼んでいるのか俺は後ろに振り返ると、そこには黒いドレス来ていた大人びた女性…"アロマージマジョラム"がそこにいた。
「どうした花衣。何も無いところ振り返って。」
「え?あ、いや…何でもない。」
炎山達が見えないとすると、今彼女の姿が見えるのは俺だけだ。俺は他の皆に悟られないように彼女に背中を見せ、聞こえないように小さくマジョラムと話す。
「一体なんの用かな…?」
「花音に…あの子に声をかけて貰ってあげてください。」
何となく予想出来た用に俺は驚きも何も出なかった。だから答えは決まっている。
「無理だ…どんな言葉をかけたらいいか分からないんだ。」
自分の不甲斐なさと無力さを痛感はしてるがそれを認めて諦めてる俺は自分が更に嫌になり肩を落ち込ませるように落とした。だが、マジョラムはそれでも俺に来て欲しいと言ってきた。
「貴方と花音は同じ私達が見える存在…だからこそ貴方に来て欲しいのです。あの子は負けに対して泣いているのでは無く、私達の事を思って泣いているのです。」
「どういう事だ…?」
「…それはご自身の目で見てください。」
そう言ってマジョラムはそのまま何も言わず、振り返るとそこにはマジョラムの姿は無かった。
「…俺、行ってくるよ。」
「大丈夫なのか?」
要件を言わなくても察した皆は声がかけられるかと心配していた。だがマジョラムの最後の言葉…あれが本当なら同じ精霊が見える俺が行かなければならないと判断したまでだ。俺は何も言わずに首を縦に振り、咲初を追いかけた。
店を出て、咲初を探すと階段上から何やらすすり声が聞こえた。俺は階段を上がり、段差がない所で咲初と実体化しているジャスミンを見つけた。
「ごめんね……ごめんねジャスミンちゃん…私が不甲斐ないせいで…痛い思いさせちゃったね…ごめんね…」
咲初はジャスミンを優しく包むように抱きながら、涙混じりの声でジャスミンに謝っていた。背中越しで咲初の顔は見れないが、きっと彼女は泣いている。ますます声がかけづらい状況で、俺はますますどうすればいいか分からなくなった。1度時間を置いてもう一度咲初に会おうと手すりを持って階段を降りたが、それが仇となり、手すりの軋む音がそこら中に響いた。
「…!誰ですか?」
最早逃げる事は出来ず、諦めて俺は咲初の所まで階段を登る。そこには、やはり涙を流し、鼻を赤くしていた咲初とアロマージジャスミンがいた。
「ちょっと…声かけようかなって…」
「…お隣どうぞ。」
咲初に言われ、俺は咲初の隣に座った。近くで見る咲初の顔は悲しみにくれており、ジャスミンの頭を優しく撫でていた。
…気まずい。どんな風に声をかけるべきなのだろうか。
また次がある?今回は運が悪かった?こんな日もある?
全部違う。こんなのでは咲初を元気付ける事は出来ないと判断し、また違う言葉を頭の中で考える。その無限ループが続き、俺と咲初は無言のまま気まずい空気の中にいた。
「…無理しなくても良いんですよ?」
俺の悩んでいる顔を見た咲初は俺の考えを察したのか咲初は力無き笑顔でそう言った。それを見た俺は、何も出来ない無力さを痛感した。…こんなにも心が息苦しくなるのは初めてだ。息が出来るはずなのに、それでも苦しい。まるで水に首を締められてるかのように呼吸がしずらかった。
「私…どこかで天狗になっちゃったんです。ここまで勝ち上がって…次も勝てるだろうと踏んでいたら、呆気なくワンターンキルされて…情けない…ですよね…」
「…そんな事無い。負けたら何だって悔しいし、誰だって悔しくもなる。…涙を流す人だっている。」
スポーツでも勉強でもはたまたゲームだって負ければ悔しい。悔しさで涙を流す事は決して悪い事では無いし、人として当然の感情だ。
「違うんです…これは悔しいのもありますが。ちょっと違うんです。」
そう言って咲初はまた小さく涙を流し、懸命に涙を拭いていた。隣にいたジャスミンも自前のハンカチで咲初の涙を拭こうと懸命に咲初の目を擦る。
「ふふ…ありがとう。ジャスミンちゃん。」
咲初はお礼を言いながら笑顔でジャスミンの頭を優しく撫でた。ジャスミンも撫でられて嬉しいのか、はにかんだ笑顔を浮かべ、何とも微笑ましい光景だ。
「もちろん悔しいのもありますがこれはちょっと違うんです。…精霊が見えちゃうせいかどうしても目に浮かぶんです。この子達が戦ってる姿がどうしても…」
咲初は目を閉じ、先程の戦いを思い出していた。
「さっきのデュエルの最後…ジャスミンちゃんが二回の攻撃を受けた時、ボロボロになったジャスミンちゃんの姿が目に見えたんです。それを見ていた私は、私自身が許せなくて…どうにも出来ず、いつの間にか泣いていました。」
「優しいんだな。」
「そんな…私は…」
「誰かの為に涙を流せるのに、優しくないなんて言える?」
話を聞く限り、咲初の涙は悔しさでは無く、ジャスミンの為の涙だと理解した。他人の痛みを知り、寄り添い、労り、涙を流せる咲初は本当に優しい。
咲初の気持ちも分からなくは無い。もし俺の目の前で六花達がやられていく姿を見ると…多分心苦しくなる。咲初の気持ちは誰よりも分かっているつもりだ。
「君の優しさはアロマ達に届いてる。ジャスミンの顔を見れば分かるよ。」
ジャスミンの顔は優しく慈愛に満ちた顔で咲初に微笑んでいた。
「私…貴方を守れて良かった!だから私…平気だよ!」
「ジャスミンちゃん…」
俺の前で初めてジャスミンは声を上げ、自分の気持ちを咲初に伝えた。イメージ通りの愛らしい声は咲初の耳に届き、心にも届いた。
「ありがとう…ジャスミンちゃん!」
咲初は嬉し涙を流しながらジャスミンに抱きつき、ジャスミンも咲初を抱き返した。こうして見ると…まるで2人は姉妹…親子みたいな感じだ。俺は邪魔にならないように隅っこに移動し、彼女達が満足するまでこの場に静観した。
やがて2人の抱擁は終わり、咲初は吹っ切れたように立ち上がった。
「花衣さん!ありがとうございました!皆に迷惑かけたので謝ってきますね。」
皆の所に戻った咲初を追いかけるようにジャスミンも霊体化し、カードの中に戻る前に俺に丁寧にお礼のお辞儀をしてからカードに戻った。俺は別に何もしてないんだが…悪い気はしない。俺も皆の所に戻ろうとしたその時、マジョラムがまた俺の前に姿を現した。
「ありがとうございます。やはり貴方を呼んで正解でした。」
「俺は何もやってないよ。咲初自身が立ち上がっただけだよ。」
「ですがそれは貴方がいなければあそこまで行かなかったでしょう。本当に…ありがとうございます。」
マジョラムは深く礼をし、感謝してもしきれない態度を表した。
「実は、貴方を呼んだのは他にもあります。あの子…"閃刀姫-レイ"を使っていた彼女の事です。」
「え…?何か分かったのか?」
俺が今1番知りたい情報が願ってもいない方法で舞い込んで来た俺は、気持ちを切り替え、マジョラムの話を聞く。
「あの子は…私たちと同じです。私達と同じ、デュエルモンスターズの世界からやってきた者です。正体は察しているかもしれませんが彼女の名は…"閃刀姫-レイ"です。」
同じデュエルモンスターズの精霊だから、自分達と同じ存在を感じたのだろう。だが説得力があり、俺の中の疑問の雲が晴れた。だがまだ問題がある。もしレイとロゼがそうなら、何故実体化し続ける事が出来る?
その疑問もマジョラムがすぐに答えてくれた。
「あの子達が実体化し続けている理由…それは、存在ごとこの世界に来たからです。」
「どういう事だ…?」
「私達モンスターは、カードを通じてこの世界に来ています。カードを通じ、私達は自分達の世界と貴女方の世界を行き来しているのです。故に、実体化には相応の力が必要なのです。ですがあの子達は…存在をこちらの世界に移したのです。」
「つまり…デュエルモンスターズの世界から直接こっちに来たって事か?」
マジョラムは正解と言うように首を縦に振った。
成程…カードを介さずに存在ごとこの世界に来れば力を使わずに実体化し続ける事が出来る。
「でもそんな事…やって良いのか?」
この世界に法律というルールがあるようにデュエルモンスターズの世界にもルールがある筈だ。違う世界の行き来なんて…そんな大きな事を果たしてやっていいのだろうか?
「いえ私達がこのように実体化しているので禁止自体はされていません。…そもそもそんな方法は無かったのです。カードを介して実体化するのはともかく、カードを介さずにこの世界に移動するのは前代未聞なんです。」
「えぇ!?じゃあレイ達はどうやってこの世界に来たんだ…?」
「分かりません…あるとすれば…」
マジョラムは少し思い詰めたような顔をしながら言い出そうか悩んでいたが、この際聞き出せる話は聞き出すべきだ。俺は構わないと言う意味合いで首を縦に振り、マジョラムはその姿を見て決心がついた。
「実は…【閃刀姫】達の他にあと一人…同じように存在ごと移動した人物がいるのを感じます。」
あと一人…!?マジョラムが感じ取れると言う事は…まだ店の中にいるということになる。
「それは誰かは分かるか?」
「ごめんなさい…そこまでは…」
それが分かればマジョラムだって教えてくれるだろう。だがそうだとしたらそいつの目的は何だ…?わざわざ存在事移動しなくてもカードを介せば好きなようにこの世界に移動出来るはずなのに…?
考えても分からないのでこの疑問は頭の片隅にでも置く。
「最後に…【閃刀姫】達にはお気をつけ下さい。彼女達の目的は何故かは知りませんが、貴方です。」
「それは…まぁ、分かっているよ。」
機羽のデュエルが始まる前…俺はロゼとティアドロップの戦闘を間近で見た。戦闘終わりにロゼが放った一言、
_絶対連れ戻すから…
あの言葉が俺の耳から離れない。何故俺を狙うのかさえも分からない。もしかしたら度々見る夢と関係あるのだろうか…
「俺は一体…閃刀姫となんの関係が…?」
「…とにかく、一度戻ってみてはどうでしょうか?」
「あ…うん。そうだな。」
マジョラムは咲初のカードに戻ったのか、姿を消した。俺は1歩ずつ階段を降り、カードショップへと戻った。
心に数々の引っ掛かりと疑問を感じながら…
そして、そんな状態の俺を気にもとめず、時間は進み、炎山との準々決勝が始まろうとしていた…
ここまで(〜90話)出てきたレゾンカードの中で強いと思うのは?
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六花聖華ティアドロップ、カイリ
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閃刀騎-カイムと閃刀騎-ラグナロク
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銀河心眼の光子竜
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RRRリノベイルイグニッションファルコン
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炎転生遺物-不知火の太刀
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常闇の颶風