六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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蟲惑魔の森へようこそ

 

 誰も居ない樹海の中、俺たちはある物を探す為に少し不気味な森の中に入ろうとしていた。

 

 俺たちというのは、いつものメンバーだ。焔、空、彼方さんに六花と閃刀姫……そして、ドラゴンメイド達だ。

 

 とは言ったものの、この森には一度だけ来た事があった。

 

 それはピックアップ・デュエルという大会の中で足を踏み入れ、そこである精霊達と出会ったのだ。

 

 それは他の人からしたらとてつもなく幸運で羨ましいものだと考えるが、俺にとっては心にトラウマを刻まれた存在だった。

 

「はぁ……気が滅入るなぁ……」

 

「大丈夫かい? 花衣君」

 

 事情を知っている彼方さんが心配で駆け寄ろうとしたが、寸前でレイ達閃刀姫が自分で俺の介抱をすると言うかのように彼方さんを止め、彼方さんはやれやれと言いながら俺にとって笑みを浮かべ、その場から立ち去った。

 

「大丈夫です花衣さん、あんな虫共は私が守って差し上げますから」

 

 そう言って、レイはどんと胸を張った。頼もしい限りだ。

 

「……ん? そういえば六花達どうしたんだよ」

 

 焔が姿の見えない六花達を探すと、俺は六花デッキが入っているカードケースを出し、ここに居ると答えた。

 

「何が起こるか分からないし、闇雲に皆を出して離れ離れになると危険だから、今回はレイ達に護衛を頼むよ」

 

「そういうことです。六花の出番はありませんから」

 

『精々あの蟲惑魔達の餌にならないように頑張ってください』

 

 霊体化しているティアドロップがレイに激励……? をすると、煽られたレイは見せつけるように俺の腕を抱きしめ、ティアドロップはムッと頬を膨らませながらカードへと戻って行った。

 

 ちなみにレイの言っていた虫とは、蟲惑魔の事だ。

 

 蟲惑魔というのは、落とし穴などのホール罠カードを駆使して戦うテーマだが、そのビジュアルの高さ等がかなり人気なテーマの1つだ。

 

 だが、イラストに描かれている女性の姿は疑似餌……つまり、餌を誘き寄せる為の存在であり、本体はおぞましい肉食昆虫や植物だ。

 

 巨大な蜘蛛やウツボとか……やばい、思い出しただけで寒気が止まらず足が震えてしまう。

 

 訳あってその蟲惑魔達にいる所にまた足を踏み入れるという事になったのだが……今更帰る訳には行かない、ここに戻ってきたのは、さっきも言ったがある物を探す為だ。

 

 今からそれを振り返る為に、ドラゴンメイド・ハスキーがその説明をしてくれる。

 

「皆さんお揃いですね。今回の目的はこの森のどこかにある精霊界への扉を封印です」

 

「封印? ぶっ壊した方が手っ取り早そうだがダメなのか?」

 

 焔が首を傾げてそう質問した。

 

 確かに焔の言う通り、破壊が一番手っ取り早そうだが、ハスキーは首を横に振った。

 

「破壊は……最後の手段としましょう。ただでさえこの世界に影響を与えているのです。破壊すればどうなる事か……」

 

「だから安全に封印という訳か。扉を発見したらどうする?」

 

「その時はこちら側から確認出来ますのでご安心ください」

 

 どうやら連絡手段を持ち合わせているようであり、こちらから心配する必要は無さそうだ。

 

「よーし! さっさと行こうぜ蟲惑魔の元へ! うへへ……もしかしたらあんな事やこんなことできたり……」

 

「目的が違うぞ馬鹿。俺達は扉を探しているんだ。蟲惑魔はそれを知っているかもしれないという事だから探すんだ」

 

「わーってるよ! でもよ、蟲惑魔のエロさは男の夢があるんだよっ! おら、さっさと行こうぜ!」

 

 焔は意気揚々と森の中へと入っていき、俺達も続けて森の中へと入っていき、ドラゴンメイド達は捜索範囲を広げるために別行動をとった。

 

 木々が生い茂り、日の光があまり指されていない為か暗闇が多い場所が多くどこから蟲惑魔達が出てくるのか分からないが、閃刀姫達が俺の周りを囲うようにして守っており、何時どこから蟲惑魔が襲いかかったとしても問題は無い。

 

 だが、閃刀姫達は俺だけを守るように焔達を一切守っていなかった。

 

「なぁ、焔達の護衛もしろよ。丁度あと3人いるんだし」

 

「なんで私が花衣以外の事を守らないといけないの?」

 

 ロゼが薔薇の棘のように鋭い言葉を放ったが、焔はあまり気にはとめず、逆にいつも通りの事で笑って水に流してくれた。

 

「俺は別に良いぜ。不知火の刀で対抗出来るしな」

 

「俺もイグニッション・ファルコンで自衛出来る」

 

「俺もギャラクシーアイズがいるから大丈夫かな、安心して花衣君を守ってくれ」

 

 焔達の言い分にレイ達は明らかな喜びの感情を浮かび上がらせ、自衛という言い分で俺にとって抱きついてきた。

 

「ほら、あの人達もああ言ってますし」

 

「……ごめん、皆」

 

「気にすんなって、さーて進みますか! ……って言っても、こんなバカ広い森の中でどうやって捜し物すんだ?」

 

 見通しが悪い森の中で捜し物は確かに骨が折れるどころでは無い。

 

「いっその事この辺燃やすか?」

 

 焔は不知火の刀を取り出し、刀に炎を纏わせて今すぐにでも森を焼き払おうと刀をぶん回し、俺達に火の粉がかかろうとした。

 

 その危ない行為を空が焔の頭に拳を入れて止めさせ、焔も冗談だと言いながら笑って不知火の刀から炎を鎮火させた。

 

「生態系が壊れるから止めろ馬鹿」

 

「でもよぉ〜ノーヒントで物探すのってしんどいだろー! あ、そうだ。空、お前のRRで空から探すのはどうよ」

 

「無理だ。こんな木々が生い茂っている中で空から見下ろしてもまともに森の中は見れないから無駄だ」

 

 確かにここからでも森はかなり生い茂っていてほんの数メートル先の景色が見れないほどの深さだ、こんなに気が密集していては流石に地上からでも空中からでも探すのは困難だろう。

 

 だがそれでも探すしかない。幸い()()()()()()()()()()はあるから移動に関しては対して苦では無い。

 

 とにかく道なりに沿って歩き、周りに注意して探せば問題無いだろう。

 

「……待って、ここで一旦止まろう」

 

 彼方さんが何故か俺たちをこの森が生い茂る中で足を止めさせ、周りを警戒し始めた。

 

「どうしたんですか?」

 

「なぁ皆、おかしくないか? こんな森が生い茂っている樹海の中でどうして道と言える様な物があるんだ?」

 

 彼方さんの言葉の意味を理解する為に、俺達は今まで歩いてきた道を振り返った。

 

 まるで歩きやすくする為に砂で分かりやすく道を作っていて、周りにある気や原っぱも無い。ましては枝さえも無い。

 

 まるで、誰かが道を作ったかのようだったが、彼方さんはそこがおかしいと言ったのだ。

 

 この樹海で道を作る必要は無いし、そもそも誰が作ったのか……そしてここには誰がいた? 点と点を繋いで線にすると、自ずと答えが分かってきた。

 

「そうか……この道って」

 

「そういう事か」

 

「な、なんだなんだ? どういう事だよ」

 

 空は俺や彼方さんと同じ答えを出した様だが、焔はわけが分からない様子だった。そんな焔に、彼方さんは簡潔に答えを出した。

 

「考えてもみてくれ、この近くに店や建造物が無い樹海で道を作る必要がどこにある? そしてこの森には蟲惑魔がいる。つまりこの道を作ったのは……」

 

「蟲惑魔って事だ。つまり俺達はこの道の先に誘導されて……」

 

「あーあ、バレちゃった。けど問題無いよ。もう私達の穴に入っちゃったんだから」

 

 どこからともなく少女の様な声が聞こえたその瞬間、道だったものが焔の足元から崩れ落ち、まるで口を開くかのような穴に焔は落ちようとしていた。

 

「うぉおおおおおおおっ!?」

 

「焔っ!」

 

 落ちていく焔の手を掴んだが、踏ん張りが効かずに俺も大穴に落ちてしまった。

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

「花衣さんっ!!」

 

「行くんだレイ! 俺と空君は大丈夫だ」

 

「言われなくてもそうするつもりです! 行くよ皆!」

 

 大穴から落ちる中、レイ達が俺を追いかけるように穴へと入り、空のライズファルコンを召喚し、彼方さんと空を乗せて飛び立ったのを確認できた。

 

 空と彼方さんは大丈夫そうだが、落下している俺達が問題だ。穴はそれほど大きく無く、壁を沿うようにして落ちている為、落下の衝撃で死ぬ事は多分無い。

 

 だが、もしこれが硫酸が溜まった落とし穴とかなら終わりだ。地面に落ち切る前に焔を助けながらどうにかしなければならない。

 

 何かを言う状態ではなく、一か八かレイに目を配り、ウィドウアンカーで焔を助けるように伝えようとすると、俺が目を配るよりも前にレイとロゼがウィドウアンカーを腕に装着し、そのまま俺達を掴むようにアンカーは付けられた。

 

 さらにアザレアがロゼを、カメリアがレイの腕を掴み、レイとロゼの閃刀よりも一回り大きい大剣型の閃刀を壁に突き刺し、徐々に落下速度が落ちていき、俺達は宙吊り状態で無事穴に落ち切る前に止まることが出来た。

 

「ふぅ……助かったよ皆、ありがとう」

 

「花衣さんを助けるのは当然ですから。だけど……」

 

「これ、どうやって上がろうか」

 

 カメリアがはるか遠くにある陽射しを見上げると、陽射しが点ほど小さく、かなり深い所まで落ちた事が分かった。

 

 イーグルブースターで上がれる……幅では無い。仮にイーグルブースターを使ったとしても、エンジンの熱で火傷では済まない事態になる。

 

 レイ達もそれが分かっているから手詰まりな様子だ。となれば方法は……

 

「……下に降りるしかないか」

 

「でも蟲惑魔が待ち構えているかもしれません」

 

 レイ達の言う通り、穴に落ちたら間違いなく蟲惑魔が待ち構えているのは確定だ。

 

 だが、上に上がる方法が無いならもう活路は下しか無い。

 

 レイにホーネットビットで穴底が地面なのかどうかを調べさせると、ビットの結果下は普通の地面らしく、着地狩りしようとする動きは見られないらしい。

 

「レイ、そのまま花衣の事は任せる。私とアザレア、カメリアが先行するから、問題無かったら連絡する」

 

「分かった、気をつけてね皆」

 

「待て待て、俺どうすんだよ! このままシャンデリアみたいに宙吊りになれってか?」

 

「貴方には自分の刀があるからそれで何とかして。それじゃっ」

 

 ロゼが冷たい棘のような態度で焔を突き放すと同時に、ロゼ、アザレア、カメリアが躊躇いなく穴へと落ちていった。

 

 カメリアの支えが無くなると同時に、レイはすかさず六角形のゲートから閃刀を取り出し、勢いよく岩盤に閃刀を突き刺すと、それが楔となって俺達の落下を防ぐと、レイはウィドウアンカーを引き、俺の体を手繰り寄せては離さないように抱いた。

 

「お、おい! 別にこうしなくても良いだろ」

 

「いいえ! こうしないとダメなんです。ん〜花衣さんの匂いと温かさ……たまりませんっ♡」

 

「それよりも焔は……」

 

「だぁぁぁぁ! くそったれがぁぁぁ!!」

 

 ウィドウアンカーから離された空は急いで自分の手に炎を纏わせ、纏わせた炎はやがて刀となり、怒りに任せて思い切り岩盤に突きつけると、何とか焔の落下は防がれた。

 

「ふぅ危なかった……」

 

「そのまま落ちてしまえば良かったのに」

 

「うるせぇ落ちるかばーか! しかし、空達は大丈夫か?」

 

「彼方さんもいるし、あの2人なら大丈夫だと思うけど……」

 

 落ちる寸前に空がライズファルコンを呼び出して彼方さんと一緒に上空へ飛びだったから、少なくとも蟲惑魔の落とし穴に引っかかる事は無いだろう。

 

 そして数分が経ち、レイのホーネットビットが動き出すと、ビットからロゼのホログラム映像が映し出された。

 

『レイ、下に降りたけど待ち伏せは無かった』

 

「了解、じゃあ花衣さん。行きましょう、絶対に手を離さないようにしてくださいね」

 

「ま……まさか……」

 

 レイは更に俺を抱きしめ、絶対に離さないようにした所で黒い閃刀を壁から抜こうとした所、焔が慌ててそれを止めた。

 

「おい! 俺どうすんだよ!?」

 

「自分で何とかしてください」

 

「お前本当に花衣以外の男に冷たいなぁ!」

 

 レイは閃刀を壁から抜き、俺を抱きながら真っ直ぐ穴へと落ちていった。

 

 命綱も何も無い状況からの垂直落下はさながら紐なしバンジージャンプであり、情けなく俺はレイの肩をしっかり持ち、叫びながら穴に落ちていった。

 

 焔もレイの思い切りの良さに絶句しながらも、覚悟を決めて刀を壁から抜き、壁沿いで落下速度を落としながら穴底へと落ちていった。

 

 穴はかなり深く、数十秒経った所でようやく岩の地面が見え始めると、レイはウィドウアンカーで岩壁を引っ掛けるようにし、落下速度を落として綺麗に着地し、何とか穴の底にたどり着いた。

 

 後から遅れて焔も来たが、途中から刀がすっぽ抜けて綺麗に着地とは行かず、背中で着地してしまう形になってしまった。

 

「いっっってぇぇ……あぁ、死ぬかと思った」

 

 幸いな事に刀がすっぽ抜けた所から底までの高さはそこまで無かった為、軽い怪我で済んだ様子だ。

 

 それでも痛いものは痛いと語るように焔は体を震わせて立ち上がった。

 

 レイに横抱きにされて安全に着地した俺にとっては酷く申し訳ない気持ちになり、罪悪感からいますぐレイから降りようとしたが、レイが頑なに俺を離さないように、俺の腕や足を強く掴んでいた。

 

「れ、レイ? もう良いだろ?」

 

「嫌です。花衣さんをお姫様抱っこする機会なんて滅多にありませんから」

 

 レイは甘える猫のような口と笑顔で頬擦りをし、その後臭いを覚える犬のように首元を嗅いできた。

 

 焔とかロゼ達が見ている中でこれをやられるのはとんでもなく恥ずかしいから止めろと言ってもレイは止めず、それを見たロゼ達は怒った顔をして近づいてきた。

 

「レイ、気持ちは分かるけど今はそんなことしている場合じゃない。早く花衣を離して」

 

「そうだ。気安くにボクのマスターに触れるな」

 

 アザレアがレイを突き飛ばしながら、俺を奪う様にするとアザレアは後ろから俺を抱きしめた。

 

「ふぅ……やっぱりマスターの匂いは落ち着く。……少し女の臭いが混じっているのは気に食わないけど」

 

「もう良いだろ皆。それにしても……ここ、穴が多くないか?」

 

 改めてこの穴底の空間の周りを見渡すと、壁の至る所に穴が空いており、その穴の近くには何かが擦れた跡が無数にあった。

 

 それに、蟲惑魔達が通る穴にしては随分とサイズが微妙だ。疑似餌である人の姿で使っているに関しては少し大きく、本体の巨大な昆虫タイプの物が通るにしては小さすぎる物がある。

 

 全体的に、サイズが違うのだ。ここまで統一感が無いのは逆に不自然だ。

 

 俺が前に蟲惑魔の穴に落ちた時には、統一感のある大きさや内装が多く、今見ている様な大きさが違う穴に対して不自然に感じられた。

 

 そんな時、どこからともなく何かが近づく音が聞こえてくる。その音は閃刀姫達にも聞こえたのかレイ達は直ぐに警戒態勢に入り、焔も不知火の刀を取り出して壁に空いた穴に向かって目を離さないでいた。

 

「花衣さん、私達から離れないでください」

 

「あ、あぁ……」

 

 焔も戦えると言うのに、こうなった時に何も出来ない無力感に苛まれながらも、焔と閃刀姫達が俺を守るように囲い、大きくなりつつ音に意識を向けた。

 

 音が大きくなる度、それがなんの音なのかは分かりつつある。

 

 なにか駆動音……機械が動いている音がする。蟲惑魔の所に機械はおかしい。しかもそれが1つではなく複数聞こえ出し、音が大きくなる度に警戒心と心臓の音が大きくなると、1つの穴から赤い光が漏れだし、アザレアが直ぐさま反応した。

 

「そこだっ!」

 

 アザレアが赤く光った穴に紫と黒の斬撃を放ち、斬撃が当たったのか穴から爆炎と砂埃が吐き出された。

 

 だがその爆炎から何か黒い物体が現れると俺達の前に姿を現した。

 

 俺達の前には、俺達よりも一回り大きなボディに、蜘蛛のような足がの四つあった奇妙な機械が現れた。

 

 虫にも似た何かに戸惑っていると、焔がそれを見た瞬間目を丸くさせた。

 

「アレって……【クローラー・スパイン】か?」

 

「クローラ……? って何だ?」

 

「そういうカテゴリーの昆虫族がいるんだよ。にしてもこいつら設定ではこんな所にいる筈がねぇんだけどなぁ……」

 

「どういう事だ……?」

 

『███□▂▅▇█▇▅▂▪▫❑⧉◻︎!!!!』

 

 焔が気になっている理由を聞こうとしたも、その時間はどうやら無さそうだ。クローラー・スパインと言われたモンスターは赤いカメラアイを不気味に動かすと、形容できない甲高い機械音を出すと、この空間の穴から大量のクローラーが俺達に襲いかかってきた。

 

「クローラーってこんなにいるのか!?」

 

「そりゃあ虫だからな! 伏せてろ花衣!」

 

 焔が刀に炎を纏わせながら横一文字にふると、刀から炎の斬撃が横に広がり、一気にクローラー達を焼き尽くしたが、穴からまだまだクローラーが大量に湧き出してくる。

 

 こんな狭い場所でこの場を覆い尽くす程の数の敵がいたらティアドロップ達は出せない。

 

 ここは何とか閃刀姫達だけで対処するしかない。

 

「花衣に手を出させない!」

 

 ロゼがマルチロールからカガリの装甲を纏うと、焔の同じように炎を纏った剣でクローラー達の装甲を焼き尽くしながら殲滅していき、クローラーの数は徐々に減っていく。

 

 しかし、どこからともなく小型で翼が生えているクローラーが俺に向かって突撃し、俺の頬にか擦り傷が生まれた。

 

「マスターっ!」

 

 直ぐに攻撃してきたクローラーに大剣を怒りに任せて突き刺したアザレアは体を細かく震えさせ、瞳孔が絞られた鋭い目付きと、頭に血管を浮き立たせるほどの怒りを顕にした。

 

「よくも……よくもボクのマスターにキズを付けたなゴミ虫どもがぁぁぁっ!!」

 

 怒りを力にアザレアは一体のクローラーに大剣を突き刺すと、大剣を抜くこと無くクローラーを突き刺したまま力任せに剣を振り回し、クローラーの装甲で他のクローラーの装甲を壊し続けていた。

 

「うわぁ、ガチギレじゃねぇか。怖っ」

 

 焔がアザレアの気迫にビビりながらも、閃刀姫達に負けない程の動きと剣さばきでクローラーを倒していった。

 

 レイ達も様々な装備を使ってクローラーを撃破しているが、多勢に無勢で徐々に押し返されて行っている。このままでは確実に物量で押し切られる事は明白だ。

 

 何か突破口は無いかと辺りを見渡すと、上の穴から何か白い糸が何本も束ねられたような物が出されるのを目に入り、糸は俺達の目の前にたどり着いた。

 

「それに捕まって!」

 

 どこから聞いたことがある声が糸が飛んできた穴から聞こえだし、糸はその穴に繋がっていた。姿が見えないが、これは間違いなくあのモンスターが出した糸だと確信した。

 

 罠かもしれないがこの状況で罠に陥れるメリットも無ければ、今はクローラーの軍勢に勝てる対策も無い。

 

「皆! この糸に捕まるぞ!」

 

「良いのか!?」

 

 焔が疑心暗鬼になっていたが、俺が考えている奴なら問題ない。その言葉を信じた焔は向かってきたクローラーを叩き切った後、真っ先に糸に手を握った。

 

 レイ達がクローラーをある程度倒したタイミングでレイ達をカードに戻し、糸を引っ張って合図を出し、糸は俺達を連れて行くように巻かれ、無事壁の上にあった穴まで移動出来た。

 

 だがクローラー達も執拗に俺達を追いかけ回し、壁を這いずっても追いかけるその様はまさに無視であり、悪寒さえ感じた。

 

 だがそれもここまでだ。六花デッキから3枚のカードを取り出すと同時にカードが光輝くと、カードからティアドロップ、スノードロップ、ヘレボラスが実体化した。

 

「頼んだぞ3人とも!」

 

「任せてください」

 

「虫は大人しく駆除されてよね!」

 

「ごめんなさい、私も虫は無理なので……!」

 

 3人はお互いの氷の傘を重ねると、傘先から青白い光が大きくなり、光が螺旋を生みながら槍となって放たれると、槍は弾けて爆発し、辺り一帯を白い光で覆われた。

 

 あまりの眩しさに思わず腕を前に出して目を守る様にし、やがて光が消えてゆっくりと目を開けると、そこには氷色の世界が広がり、氷の中で時が止まったかのようにクローラーの大群が全て凍りついていた。

 

「うぉぉすげぇな……」

 

 これには焔も思わず息を呑んでしまう程の迫力であり、俺もここまでは初めて見たから圧倒されてしまう。

 

 これを生み出したティアドロップ達は疲れていないのか平然としていた。

 

「大丈夫ですか、花衣様」

 

「怪我は無い?」

 

 怪我らしい怪我は無く、強いて言えば小さなクローラーで頬に擦り傷を負わされた程度だ。

 

 そこを確認するように傷跡に触れようとすると、ヘレボラスが俺の手を握り、代わりに氷を溶かした濡れたてで俺の傷を優しく撫で、その後すぐに絆創膏を貼ってくれた。

 

「ありがとう、ヘレボラス」

 

「貴方の為ですから」

 

 そう言ってヘレボラスは微笑み、一連の流れを見た焔はニヤニヤしているのを見た俺とヘレボラスは、顔を赤くして何とも言えない雰囲気になってしまった。

 

「ねぇー、そこだけイチャつくの禁止〜私だって頑張ったんだよー?」

 

 羨ましそうに見ていたスノードロップが抱きつくと、頭を撫でてと言わんばかりに頭を擦り寄らせた。

 

 頭だけじゃなくて色々柔らかい所が当たっているからそこに意識を向けられてしまい、ティアドロップのジト目の視線が突き刺さる。

 

「スノードロップ? 今は状況が状況なのでそれは後にしてください」

 

「そう言って花衣君から私を離そうとするの見え見えなんだけど……まっ、その通りだよね」

 

 名残惜しそうにスノードロップは俺から離れ、ティアドロップはひとつ息を漏らすと何食わぬ顔で俺の隣に立ち、俺達を助けたアレについて話を持ちかけた。

 

「花衣様、先程の糸ですが……」

 

「あぁ……多分、蟲惑魔だと思う」

 

 ここは蟲惑魔の巣だ。そう考えるのが妥当だろう。

 

 この穴の奥に繋がっている暗闇の向こうに、間違いなく蟲惑魔はいる。

 

 俺達をおびき寄せて捕食しようとしていると言う可能性は捨てきれないが、前に聞いたあの切羽詰まった声色から考えると、その可能性は低い。

 

 戻ると言ってもクローラーの大群を凍りつかせたせいで出入口も全て塞がって閉まっている。

 

 もっとも、こうしないと他の穴から無尽蔵にクローラーが湧いてしまう為、ティアドロップ達は何も悪くない。

 

「……行くしかないか」

 

 そうなるとやはり、俺達は前に進むしか道はない。

 

 暗闇を照らす為にポケットから閃花を起動させ、閃花は狐の鳴き声を上げた。

 

「道を照らしてくれ」

 

『くぉーん!』

 

 閃花はカメラアイから白いライトを真っ直ぐ照らし、俺達を先導する様にして先を歩いてくれた。全く、よく出来たロボットだ。

 

「行くぞ、皆」

 

「おう。ぐふふ、あの先に蟲惑魔がいると思うと……」

 

「お前の思っているような奴らでは無いと思うけどな」

 

「んだよ、夢がねぇなお前」

 

「一度会ってるからな」

 

「あー、そうだったっけ。でもさ、楽しみなのは変わりねぇよ! だってよ、マジモンの精霊に会えるなんてワクワクするじゃねえか!」

 

 嘘偽りない期待の目をしながらソワソワと体を動かし、はにかむ笑顔の焔を見て、俺はふと考えた。

 

 確かに焔と空みたいに、精霊とは縁のない人にとっては架空だったモンスターが実在していると分かり、それが目の前で見れると言われたら期待せずにはいられないだろう。

 

 もしも俺が焔と同じ立場だったらと思うと、焔と同じ気持ちになっていたかもしれない。

 

 俺の場合、状況が状況だったからかあまり嬉しい気持ちにはなれず、期待でソワソワしている焔を見て羨ましくも思った。

 

 記憶を消さない限りはもう決して味わえない感動を羨んでしまうのは何故だろうか。

 

 このデュエルモンスターズの物語を見て、俺もいつかは会えるのだろうかという、当時は絶対叶わないと思いながらも、夢を抱いたからだろうか。

 

 多分、その夢を抱いた気持ちと同じ様な気持ちを焔から感じ取ったせいで、焔を過去の自分と重ね、そう思ったんだろう。

 

「ん? どうしたんだ花衣」

 

「いや……羨ましいなって」

 

「んだよそれ」

 

『コーン! コンコン!』

 

 ふと先陣を切っていた閃花が突然叫び出すと、閃花の先には開けた所が見えたが、陽の光が無いためかなり暗いく、閃花のライトでは良く見えない。

 

「うわっ、暗いな。こうなったら俺の炎で明るくしてやるか」

 

 焔が刀の先に炎の球を作り出し、刀を野球のバットに見立てて広場に向かって打とうとした。

 

 確かに焔の炎なら広場を明るく出来ると思うが、何かうっすらと動いているのが見えた。

 

「待ってくれ焔、なにかいる」

 

 焔の前に手を横に出し、じっと目を凝らして蠢く影を見つめると、影は軟体動物のようにうねうねと動きだし、ほのかに酸味がある甘い匂いもしてきた。

 

 影がこちらに気づくと、真っ直ぐ近づき初め、ティアドロップが俺を守るように前に出た瞬間、暗闇から影が姿を現した。

 

 その影とは、頭がパイナップルでしたがツタの奇妙なモンスターであり、パイナップルの頭にはくりんとした目があった。

 

「パイナポ!」

 

「こいつは……ナチュル・パイナポーか?」

 

 名前を呼ばれたナチュル・パイナポーはまた元気よく挨拶をするように声を上げた。

 

 反応を見る限り、このモンスターはナチュル・パイナポーで間違いなかった。

 

「おいおい、ここは蟲惑魔が住み着いている穴じゃねぇのか?」

 

「それは間違いない……と思う」

 

 蟲惑魔の餌かとも思ったが、逃げている様子は無い。むしろこの穴蔵に安心感を覚えているような印象を持ち、蟲惑魔に襲われそうになった所を俺達が助け出したという形では無いのは確かだ。

 

 一体何が何だか分からないその時、頭から何か水のような物が落ちた冷たさが感じられた。しかも何だか妙に甘い匂いをしながらも、頭に触れると少し粘ついたことから嫌な予感をさせた。

 

 恐る恐る水滴? が滴った頭上に顔を上げると、オレンジ色の何かが頬に伝わると同時に、壁に張り付いていた白髪の少女が口が裂けるほどの笑みを浮かべた蟲惑魔が、血のような赤い目で俺をじっと見つめていた。

 

「みぃぃぃつけたぁぁぁ」

 

 あまりの恐ろしさと不気味さでナチュル・パイナポーは奥の方へと逃げ、俺は背筋が凍って声を失いながら立ち尽くしてしまい、謎の蟲惑魔らしき女性は壁を蹴っては俺に飛びつき、離さないようにガッチリとホールドした。

 

 白い髪で左目を隠しており、その隠された瞳から白い液体の様な物が滴り落ち、服というか布を巻いただけの着こなしは間違いない。

 

「お前……シトリスの蟲惑魔か?」

 

「んー? どうして私の名前を知っているの? でも、関係ないや。だって貴方は今から私に食べられちゃうんだから」

 

 目の前で肉を食べる準備をし始めるかのようにシトリスの背後には本体であるムシトリスミレという花が壁から生えるように現れ、花弁が開くと中央がオレンジ色の唾液を垂らしながら俺を食おうとしていた。

 

「やっぱりこの展開かぁぁ!」

 

「花衣様っ!!」

 

 急いでティアドロップが俺を助けようと氷の魔法で本体のムシトリスミレを凍りつかせようとしたが、シトリスはまた別の花を壁から生えさせると、花が身代わりになる様に本体を守った。

 

「食事の邪魔をするなんてイケナイ人達。貴方も食べちゃおうかしら」

 

 シトリス生え顔だが、その裏には食事の邪魔をされてご立腹な本心が漏れだした声色でシトリスはまた更に多数のムシトリスミレをティアドロップ達を囲んだ。

 

 このままではティアドロップ達まで捕食されるという最悪な展開が頭を過ぎり、何とかデッキケースから閃刀姫達をもう一度出そうとしたその時、ティアドロップ達を囲んでいたムシトリスミレが突然燃え始めた。

 

「おうおう羨ましいじゃねぇか花衣。そんな美人に迫られてよ」

 

 炎を生み出したのはやはり焔だった。焔が持っている炎の刀が全てのムシトリスミレを燃えさせると、シトリスはバツが悪そうな顔をしていた。

 

「へぇ……貴方も邪魔するの?」

 

「というかそいつ離してくれよ。変わりに、俺が餌になっても〜良いんだぜ〜?」

 

 焔は鼻の下を伸ばしており、明らかに下衆な考えを持っているのは火を見るより明らかだった。

 

「お前なぁ……こんなに状況じゃ無いだろ」

 

「うるせぇ! あのエチエチな蟲惑魔に迫られるんだ! 男なら誰しもが夢を見た展開だろうがおい!」

 

「普通に命落とすけどな!?」

 

「たとえそうだとしても……俺に悔いはねぇ!」

 

 いつに無く真剣な顔付きで格好いい言葉を言っているが……前後の会話で雰囲気どころかお前の心情背景もボロボロだった。

 

「ここまで変態思考がヤバいのって逆に凄いよね、へレちゃん」

 

「え? えーと……私から何か言うのは……その、あんまり人の事言えないので」

 

「ですが花衣様を渡してくれるのならその男はどうでもいいです。食事の内容が変わるだけです」

 

「あらあら? 本当に良いの? この男の子も貴方達の仲間じゃないのかしら?」

 

「「いいえ」」

 

 まさかのティアドロップとスノードロップの即答だった。幸いヘレボラスは答えに悩んでいたが……というか悩まないで欲しい。仲間だって即答はして欲しかったが、そう言っても焔の下衆な心には誰も勝てず、焔はスキップしながらシトリスの前に立つと、従順な餌に意識を向けられ、シトリスは俺から離れ、焔の前に立った。

 

「そこまで言うのなら貴方を食べちゃおうかしら。それに、貴方私のこの胸を見ていたから、最後に良いもの見せてあげる」

 

「お? おお?」

 

 シトリスは上半身が顕になった胸をわざと揺らし、その豊満な胸を強調させると、焔は見た目で伝わる柔らかさに興奮を隠しきれずにいた。

 

 あぁ、もうアイツダメかもしれない。

 

 多分助けようと邪魔したら怒られるんだろうな……と思いながらもとにかく助ける為にレイ達を呼び出そうとしたその時、シトリスへと植物のツタが延び、シトリスの抱き抱えるようにして巻き付かれた。

 

 俺はまだ他の精霊を読んでおらず、ツタは穴の奥へと続いていた。それにこの緑のツタは……見覚えがあった。

 

「ダメよシトリス、今は食事をとる暇なんて無いんだから」

 

「この声……やっぱりお前か」

 

 穴の奥から足音が聞こえ、更には忘れもしない声が後ろからした。

 

 声がまるで顔を舐め回す様な感覚は忘れられず、俺の苦手な相手が今目の前にいた。

 

 少し紅い髪にはラフレシアの花飾りに、人間を真似するようにして黒い下着で胸を隠しつつも服とは言えない服を着た女性がゆっくりと、現れた。

 

「久しぶりね、花衣」

 

「フレシア……フレシアの蟲惑魔……」

 

 名前を呼ばれた彼女は、ただ静かに笑った。




一番好きな蟲惑魔はシトリスの蟲惑魔

使いやすいし、見た目がしゅき

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