六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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「頼んだぞ」

 

 少しだけ蜜のような甘い香りが鼻に付く穴蔵の中、ここの主だと知らせるように、巨大なラフレシアの上には蟲惑魔の美少女たちが寝そべっており、見る人が見れば楽園だと思う事だろう。

 

 だがその少女達の目は捕食者の目であり、それに睨まれて背筋がこおる。

 

「久しぶりね、カイリ。あ、今は花衣って名前だったかしら?」

 

 自身の本体であろうラフレシアの花の上にくつろいでいる少し紅い髪の女性……いや疑似餌はフレシアの蟲惑魔。

 

 以前俺がここ蟲惑魔の巣に迷い込んだ時に出会った精霊であり、蟲惑魔のリーダー的存在だ。

 

 落とし穴を使ったり、疑似餌である女性の姿を用いて人を巣に誘ったりして人間を巣に誘導し、最後は肉や骨を喰らい尽くす、それが蟲惑魔だ。

 

 俺はその恐怖を嫌ほど思い知り、さっきまでフレシアの隣で縛られているシトリスの蟲惑魔に喰われそうになった。

 

「ふふふ……早く食べたいなぁ」

 

 シトリスは体を縛られながらも未だに俺の事を捕食しようと諦めては無く、不気味な笑みに背筋が走り、ティアドロップも俺を守ろうとシトリスを睨んでいた。

 

 因みに性的に食べられるのではなく、物理的にだ。 有志が描いているイラストではかなり際どいかつ性的描写も多く、性的に食べられる事を夢見る人達もいるがそんな事する様な奴らではない。

 

 だがそんな蟲惑魔が住む巣は今は少々おかしなことになっていた。それは、フレシアの側にいるナチュル・パイナポーがいるからだ。

 

 ナチュル・パイナポーだけじゃない、ナチュル・カメリア、ナチュル・ビーストまで……いや、全てのナチュルモンスターがこの巣にいた。

 

 だが、蟲惑魔達の餌という様子では無い。むしろここにいて住み着いているような印象をうけ、頭の中は困惑していて、それを面白がっているのかフレシアは小さく笑った。

 

「どうして他のモンスターが居るのかって言いそうな顔をしているわね」

 

「それに、クローラーもな。アレもお前たちと共存しているのか?」

 

「いいえ、私達はアレに少し手間取っているの」

 

「クローラーに?」

 

 クローラーの名前を出した瞬間、ナチュル達が僅かに怯えた表情を浮かべながら体を震えていた。

 

 どうやらフレシアの言う私達とは、ナチュル達の事も含まれるようだ。

 

 確かにあいつらだけは異様な雰囲気を感じたのは確かだ。無秩序に襲われたと言うより、確かな意志を持って俺たちを襲ったようにも見えた。

 

「あのモンスター達は突然森にやって来て、誰から構わず襲ってくるの。そこでこの子達ナチュルにも出会ったのよ。襲われる同士、仲良くって事かしら」

 

「勿論私達も罠とか使って抵抗したんだけど、アイツら無茶苦茶に多くてもうしんどい、無理無理」

 

 近くにいたトリオンの蟲惑魔がそういう姿はげんなりし、その疲弊さは痛々しく伝わった。

 

 至る所の壁に傷があったのは、クローラーと戦っていたという事か……状況的に、追い詰められているのは蟲惑魔という事か。

 

「そういえば、ナチュル達もこの森にいたのか?」

 

「いいえ? そういえばどこから来たのかしら」

 

 早速ナチュルに話を……って言っても、意思疎通出来るのだろうか? 試しにナチュル・パイナポーに話を聞いても、「パイナポ!」って鳴き声を出すだけで言葉も何も分からなかった。

 

 他のナチュルモンスターもそうであり、そもそも口が無いのが多いから喋る事すら出来ないのが大半だ。

 

 どうしようか困った時、奥から大きな足音がゆっくりと近づき、足音に振り返るとそこには巨大なライオンのような見た目のモンスターが現れた。

 

 鬣が花冠のような形をしており、体の大半が植物の葉のような物で覆われた巨大なライオンは、見た瞬間大地の息吹の様な物を感じられ、どこか懐かしささえ覚えられた。

 

『人よ、意思の疎通なら我に任せよ』

 

 突然雄々しい声が頭の中に響いてきた。この感覚にも覚えがあった。この頭に直接声を届かせるような感覚はメルフィーマミィもやって来たテレパシーな様な物だ。

 

「うおっ!? なんか風呂場で喋るみたいな音が頭に直接きやがる! なんじゃこりゃぁ!?」

 

 随分と懐かしく感じたが、隣にいた焔は初めてこの感覚を受けて酷く驚き、まるで昔の自分を見てるようだった。

 

『驚かしてすまない。我は【ナチュル・ガオドレイク】。自然と共に生き、神星樹(しんせいじゅ)を守る獣だ』

 

「神星樹……?」

 

「あれだろ、ナチュルの罠カードにあるやつ」

 

「あぁ、あれか」

 

 確かにナチュルの永続罠でそんな物があった記憶がある。最も俺自身はナチュルを使った事が無い為、詳しい事は分からない訳だが……ナチュルにとってはかなり重要な物なんだろう。

 

「でも、どうしてお前達がここにいるんだ? その神星樹はここにあるのか?」

 

『いや、我らの神星樹は……黒いコートを纏った者達ほ手に堕ちたのだ』

 

「黒いコートってまさか……」

 

「セブンエクリプスの奴らじゃねぇか!」

 

 まさかここで奴らの事を聞くとは思わず、俺と焔は目を合わせた後、ガオドレイクは俺達の反応でセブンエクリプスの事を聞き出した。

 

『主らは何かあの共を知っているのか?』

 

「ガオドレイク、俺達はそいつらから大切な人達を助け出そうとしているんだ。でも、俺達もあまり奴らの事は知らない……ごめん」

 

『いや良い。そうか……だが、奴らは危険だ。何故なら、あ奴らは闇そのものであるからな』

 

「闇そのもの……?」

 

『我らの故郷を滅ぼした奴らの力は強大だ。森は焼かれ、地は砕かれ、そしてあの忌まわしきワーム共を産み出した……』

 

「ワーム……?」

 

 なんかどこかで聞いた事ある様な名前が出てきたが、ナチュルとは敵対関係なのはガオドレイクの表情から察せた。

 

「焔、ワームってなんだ?」

 

「あぁ、OCGにワームってカテゴリーが居るんだよ。確か設定ではナチュルの他に、色んな奴らがワームに対して戦ったんだよ」

 

「その理由は?」

 

「設定ではワームは侵略者らしくてな、そんで星を侵略して自分達の星にしようぜってのがワームだ。そんな大層な理由はねぇと思うけどな。ともかく、こいつらナチュル達とかは、侵略してくるワームに対して戦ったんだよ」

 

「そんな戦いがあったのか……」

 

 言うなれば宇宙からの侵略者との戦いという訳だが、規模が規模だから想像すらできない。

 

「でもなぁ、ここにクローラーいるのが謎なんだよなぁ。アイツら設定では【星杯剣士アウラム】に倒されたんだがなぁ」

 

「アウラム?」

 

「星杯カテゴリーのモンスターだ。今さっき出てきたクローラーは、本来なら居ねぇ存在って訳だ」

 

「そんな奴らがどうしてこんな所に……」

 

「俺が知るかよ」

 

『ともかくだ、我らは故郷を追われた際に時空の歪みへと飛ばされ、気づけばここにいた』

 

 時空の歪みという言葉を聞いた瞬間、頭の中の記憶からある出来事が浮かび上がった。

 

 初めて扉と出会い、ポルーションと出会ったあの出来事を。

 

「な、なぁ! それってどこにあるんだ!? 俺達はそれを探しているんだ」

 

『ほう、どうやら主らはそれを何とかすると見たが……あいにくだが、あの機械の虫達の向こうであり、地上にある』

 

 つまり、クローラーの大群を突っ切らないと扉には行けないという事だろうか。そしてそれは地上にあると言うが、それなら好都合だ。

 

 何故なら、地上には空と彼方さんにドラゴンメイドが恐らくだが残っている。俺は連絡を取る為に携帯を取ったが、携帯の画面に圏外のマークがあり、案の定連絡する事はできなかった。

 

 しかしそこで閃花が服のポケットから出てくると、閃花は肩の上に乗って機械の耳をピンと立てると、目の液晶画面に『BOOSTER-ON』という文字が浮かび上がった。

 

 すると携帯の電波が復活し、空達と連絡が取れるようになっていた。

 

「お前増幅装置にもなるのか……すごいな」

 

 閃花自身もそうだが、これを作ったレイ達にも感心するように閃花の頭を撫で、有難く力を借りて早速空達に連絡した。

 

 コール1回だけで空との連絡が付き、ホッと胸を撫で下ろした。

 

『花衣か? 今どこにいるんだ』

 

「地下にある蟲惑魔達の巣だ。そっちは大丈夫か?」

 

『俺と彼方さんは大丈夫だが、問題が発生している。この森一帯にクローラーという奴らが蔓延っている』

 

「そっちにもクローラーがいるのか……」

 

『そっちにもだと? どういう事だ』

 

 俺は空に今まで起きた事を全て話し、情報を共有した。

 

『なるほど。地上でクローラーの大群の中心に扉があるのか……』

 

「何とかならないか?」

 

 空は一呼吸を置いて彼方さんと相談している様子であり、少ししてから返事が返ってきた。

 

『残念だが、俺達のモンスターだと威力が大きすぎてこの森一帯を破壊してしまうかもしれない』

 

『それに周辺には小さいけど町もある。迂闊に破壊すらも出来ないしね』

 

「じゃあどうすれば……」

 

『花衣君、クローラーには司令塔的存在の【機怪神(デウス)エクスクローラー】というモンスターがいる。そいつさえ倒せば、クローラー全員の機能は停止し、こっちで扉は封印する』

 

 司令塔……確かに、それならあれ程大量の機械で統率が取れる事が出来る事の説得力がある。

 

 だが、問題は場所だ。こればかりはどう足掻いても手探りで探し当てるしかない。

 

 ただ闇雲に探せばクローラーの物量で押しつぶされるのは目に見えている。だからこそ対策が必要な所で、空がある提案をした。

 

『恐らくだが、機怪神(デウス)エクスクローラーは地下に居るはずだ』

 

「地下? 何でだ?」

 

『地下なら地上からの攻撃を受けず、狭い地下なら守りやすいからな』

 

「でも場所分かんねぇと意味ねぇぞ」

 

 隣から焔が愚痴をこぼす様に言い放ち、予想通りだと思ったのか、携帯から空の含みのある笑顔を浮かべたような笑い声が聞こえた。

 

『そこに関しては俺が何とかする。閃花のアドレスを受信用のアドレスを俺の携帯に送ってくれ』

 

「ええと……出来るのかなそれ」

 

『コンっ! コンコン!』

 

 閃花が悩んでいる俺を気遣うように吠えると、閃花のカメラアイの文字がまた変化した。

 液晶画面には﹁address-export﹂の文字が送られ他と同時に、携帯から少し驚く声がした。

 

『随分と早いな……どうやら優秀な狐なようだ』

 

「ホントにな。それで、次はどうするんだ?」

 

『破壊したクローラーを一体ハッキングして逆探知を仕掛ける。そしてエクスクローラーが発信している信号を見つける』

 

 俺は言葉を疑った。確かに見た目は機械族……いや、少し調べたら本当に機械族だが、モンスター相手にハッキング仕掛けるという前代未聞の言葉に、開いた口が塞がらなかった。

 

「ほ、本気……だよな?」

 

 空がこういう時嘘をつく奴では無いと分かっている。だが聞かずには居られなかった。

 

 空も自分自身がどれ程突拍子も無い事を言っているのを理解してるのか、携帯越しで自嘲気味に笑った。

 

『馬鹿げているとは思っているさ。人類で初めてモンスターにハッキングを仕掛ける訳だからな』

 

「大丈夫……だよな?」

 

『……どうだろうな。だが心配するな、ハッキングに関しては初めでは無い』

 

「え? えーと……聞くけどそのハッキングの目的って何だ……?」

 

『安心しろ。すずm……いや、トバリのアンチ何人かに少しお灸を据えただけだ』

 

 声では笑っているが、その雰囲気は笑っていなかった。この話を止めるべきだと本能が叫んでいる事を感じると、話を止めた。

 

「とにかく……気をつけろよ」

 

『あぁ、成功したら閃花に座標を送る。それまで死ぬなよ』

 

 そうして空との通話は切れてしまった。

 

「頼むぞ……空」

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあこっちも動くか」

 

 おぞましい程多い機械の虫達であるクローラーの大群を見下ろしていた空と彼方は悩んでいた。

 

 まずハッキングをする為にはクローラーを1体破壊し、彼方が持っている端末に接続しなければならない。しかしクローラーは常に大群で動いており、単独で行動する個体は居なかった。

 

 たとえ奇跡的に単体のクローラーを見つけて破壊しても、他の個体に気づかれてしまってそのまま物量で押し負けられる光景が、空と彼方の頭に浮かんでいた。

 

 そこで空と彼方が考えたのは、破壊し、鹵獲した後の展開だった。

 

「破壊しても他に気づかれる事が明白なら、囮も無駄そうだね」

 

「ええ。なので俺たちが探すのは敵が俺を囲む事が出来ない場所です」

 

 例え他に気づかれたとしても、進行方向が限定されていれば迎撃は容易だ。

 

 例えば1本の道に罠を仕掛ければ、必ずその道に来た敵は罠にかかるのと同じ理屈だ。早速空達は一方通行の場所を探し出すと、空が先に良いポジションを見つけた。

 

「あそこが良いでしょう」

 

 空が見つけたのは1つの洞窟であり、あそこなら出入口は1つだけだ。

 

 空達はクローラーに気づかれないように洞窟へと降り立ち、簡単な作戦会議を決行した。

 

「そういえばドラゴンメイド達はどうなったんですか」

 

「連絡は取ったから直ぐに来るはず……と、噂をすれば」

 

 空から竜の翼を携えたメイド達が空達を見つけると、メイド達は1人を除いて華麗に着地したが、青髪で他とは少し和装のメイドで小柄かメイド、ドラゴンメイド・ラドリーが着地の瞬間バランスを崩し、頭から地面に叩きつけるように転がってしまった。

 

「あらあら、大丈夫? ラドリー」

 

 ナサリーが転んだラドリーを起き上がらせようとしたが、ラドリーは大丈夫と言って自力で立ち上がらせた。

 ナサリーはこの時、ラドリーの成長を喜んでいるような微笑みを浮かべた。

 

「彼方様から話は聞いております。クローラーをハッキングとは……前代未聞ですよ」

 

「それでもやるしかない。分かってると思うが、ハッキングの間、援護しくれないか。一体破壊し、その残骸をここに持ってくる。そしたらクローラーの大群がここに来る筈だから、それを迎撃してくれ」

 

「ハッキングの所要時間は? 長すぎると流石に持ちませんよ」

 

 赤い髪のメイド、ドラゴンメイド・ティルルが乗り気では無い顔を浮かべ、あまり空を信用していなかった。

 

 それもそうだ。機械族のモンスターをハッキングする事自体、空はやった事ない。

 

 それは周知の事実であり、空本人もやってのける自身は無い。所要時間と言われても空には分からない。

 

 だが、必ずやりきるという意志は確かにそこにあった。

 

「分からない。だが必ず成功させる」

 

 根拠も何も無い強がりな言葉だが、空の目は断固たる決意を持っていた。

 

 だが意思だけでは誰も動かない。

 

 言葉だけでは人は動かず、人を動かすにはそれなりの力と信頼が必要な物だ。ドラゴンメイド達は何も言わず、代わりにティルルが右手から炎を纏った竜の鉤爪を伸ばし、クローラー達がいる方向へと向かった。

 

「あまり時間はかけないようにお願いします」

 

 ティルルはクローラー1体を破壊し、その瞬間から他のドラゴンメイド達も空を守る為に位置取りを始めた。

 

 ドラゴンメイド達にとって、空の力強く確固たる目は自分達が信頼できる程のものだったのだ。

 

 信頼された事に関して空は戸惑っていた。会ってから間もないはずの一般人を、ドラゴンメイド達は信頼したのだ。

 

 何故だという前に、ハスキーがティルル……いや、ドラゴンメイド達が全信頼を寄せる訳を話した。

 

「貴方の目は確かな意思があるからですよ。その裏付けに、貴方はレゾンカードの力を解放したのですから」

 

 空はレゾンカードであるリコンタスト・オーバーフローを取り出し、その燃える魂であるかのようなカードイラストを見つめた。

 

「レゾンカードは己の魂。貴方の中にはその燃えるような決意があるのです。ティルルや私達は、それにかけているのです」

 

「なら、俺もそれに応えるか」

 

 ハッキングの準備をする為に空は眼鏡のフレームを軽く2回押すと、レンズに青い光と共に様々な文字コードが映し出された。

 

 その後、空の目には眼鏡のレンズを通してホログラムのキーボードとディスプレイが映し出された。

 

「ん? 空君何してるんだ?」

 

 空が見えている物は彼方達には見えず、空が触れていそうな所に腕を伸ばしても、彼方の手は空気を掴むような感覚だけだった。

 

 空が眼鏡を取り、彼方に渡した。レンズが青く光っている眼鏡を恐る恐る彼方はかけると、空が見えた物と全く同じキーボードとディスプレイが映し出された。

 

「うぉっ!? 何この近未来のテクノロジー満載の眼鏡!?」

 

 思わず彼方は眼鏡を外し、空に返した。

 

「ロマンス・タッグデュエルで使っていたバイザー技術を応用させて貰いました」

 

「いつの間に……」

 

 不敵な笑みを浮かべた空は自分の技術に誇りを持ち、空の技術力に感服を超え、最早恐ろしさを感じた彼方は冷や汗をかいた。

 

 その後、森の奥から爆発と爆音が同時に響く。

 

 しばらくして空中から1体のクローラー突然落下していき、砂埃と共に破壊されたクローラーと手に付いた埃を払うようにして来たティルルがいた。

 

「これで良いですか?」

 

「あ、あぁ……随分と力強いんだな」

 

「ドラゴンですから。さっ、早く仕事をしてください」

 

 ティルルは背中に生えている翼と尻尾を見せながらそう言い、改めてモンスター達との力の差を思い知りながらも、空は破壊されたクローラーの内部を弄り、自家製のUSBメモリを差し込んだ。

 

 すると空の視界に画面が増え初め、多様な文字コードで空の視界は埋められた。

 

「どうだい? 上手くできそう?」

 

 そして今、この場で衝突を起こそうとしている。1体のクローラーが破壊された事により、森から別のクローラー達が空達に向かって波のように押し寄せ、森を埋め尽くす程だった。

 

 それでもドラゴンメイド達は怖気付く事はせず、まるで掃除をし始めかるような佇まいをしていた。

 

「それでは、露払いをさせていただきます。皆様、劣悪客の対処を」

 

 ハスキーが手を2回叩くと、黄緑色の髪をしたメイドのドラゴンメイド・パルラが暴風を吹き荒れさせ、鋭い爪で向かってきたクローラーを切断し、残骸も他のクローラーにぶつけるようにして蹴り飛ばした。

 

 それが開戦の狼煙となるように、クローラー達の勢いは強くなり、ドラゴンメイド達も応戦した。

 

 そんな戦いの轟音をシャットアウトしている空は、クローラーのハッキングに集中していた。

 

 目にも止まらぬ速さでホログラムのキーボードを打ち続け、それはまるでピアノを演奏している奏者でもあった。

 

 一般人からは理解できない文字列が空の視界を埋めつくし、順調にクローラーに内蔵されているプログラムを解析している中で、突然空の手がピタリと止まった。

 

(プロテクトが来たかっ……!)

 

 言い換えれば外部からのハッキングを防衛する為のプログラムであり、突然のプロテクトにも空は対応し続けた。

 

 恐らくプロテクトをしているのはエクスクローラーだと空は考えていた。クローラーという『個』を統率している奴は言わば管理しているサーバーであり、それを処理する為のスーパーコンピューターみたいなものだ。

 

 演算処理は人間の脳を遥かに超え、1人の人間が勝てる訳が無い。だが、元々空に勝つ気は無い。

 

 目的は、エクスクローラーの位置の特定だ。どんな手段を使おうとも、その目的さえ達成すれば空の勝ちである。

 

 空はこのプロテクトに活路を見出していた。これがもしエクスクローラー本体から出でいる物だとすれば、そこから出ている電波等を特定出来ると空は踏んだ。

 

 空の手は再び動き出し、今自分がやれる全てを指に込め、電子のキーボードを叩いた。

 

(プロテクトに対するアプローチを取りつつ、相互受信している個体を見つけ出し通信をクラッキング……、チッ! なら破壊したクローラーと同じ周波数の電波を流してダミーを取りそこでネットワークを再構築……通信成功したがこれはエクスクローラーでは無い……その下の個体か? ならそいつの受信アドレスを奪ってまた更に受信を……)

 

 頭の中でやるべき事を思い浮かび、あまりの計算処理に頭が締め付けられるような頭痛をしながらも空は手を止めずにいた。

 

 圧倒的な集中力は周りの音をかき消し、自分への危険を察知出来ない程だった。

 

 ドラゴンメイドの防衛を掻い潜ったクローラー1体が空のハッキングを止める為に真っ直ぐ空に向かって襲い掛かり、ドラゴンメイドが叫んでも空の耳には入らなかった。

 

「空様っ!」

 

「頼むぞ! フォトン・スラッシャー!」

 

 クローラーが空のいる洞窟に足を踏み入れたその瞬間、援護の為に洞窟に残っていた彼方が持つカードからフォトン・スラッシャーが現れ、クローラーの体を真っ二つにし、洞窟の外で爆発した。

 

 爆発の衝撃から守ろうとフォトン・スラッシャーはその身で空と彼方を守ったが、爆発で粉々になった破片が空の頬を掠め取り、空は軽傷を負ったが空はそれすらも気づいては居なかった。

 

「何て集中力なんだ……」

 

 自分の怪我すら気にしない……いや、認識しないほどの集中力に彼方は驚きつつも、迫り来るクローラーに対抗する為に、様々なモンスターを彼方は召喚し、空の決着がつくまで粘りに粘った。

 

 しかしそろそろ限界だ。クローラーは数を減らすどころか増やしていき、このままではドラゴンメイド達が持たない。

 

「まだですか空様っ!!」

 

「早くしなさいよ! 全く!!」

 

 思わず素の口調を出したティルルの声は空には聞こえなかった。だが、決着はもうすぐつくことは確かだった。

 

「見つけた……!」

 

 遂にエクスクローラーの位置を特定した空はラストスパートをかけた空はあまりの集中力と思考によって鼻血を出し、息をすることさえ忘れていた。

 

 額から汗を流し、その汗さえも感じていない空は遂に、最後のエンターキーを押した瞬間、ホログラムのウィンドウの画面が蜘蛛の巣の様な通信網が現れ、その中から一つだけ赤い印から座標が表示され、それが閃花の所へ送信された瞬間、空は頭を電源の切れた機械のように壁に倒れた。

 

「終わった……」

 

 空は鼻血と破片で傷ついた頬にいつの間にか驚いたが、今は心身共に疲弊していた空にとってはそれは些細な事だった。

 

 余りある集中力によって脳の処理がオーバーヒートしてしまい、急いで空はブドウ糖を補給する為にラムネを取り出して飲む込むように食べた。

 

「疲れている所悪いけど、早く脱出するよ」

 

 彼方は空の肩を借りて銀河眼の光子竜を呼び出し、2人はその背中に乗って空高く飛ぶと、それを見たドラゴンメイド達は人からドラゴンの姿を変え、クローラー達から逃れた。

 

 空からクローラーの大群を見下ろすと、緑の森が黒一色になっており所々赤い光が灯りつつあり、このまま地に足を着くことは出来ないだろう。

 

 だが、それは後々消えることなる事を空達は期待していた。

 

「頼んだぞ……花衣、焔」

 

そして空は龍の上で静かに目を閉じた。

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