六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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束の間の終息

 

 蟲惑魔の森で発生した精霊界への裂け目の問題を解決した俺達は、蟲惑魔達が拠点としている巣穴へとまた足を運び、事態が解決した事への喜びを、ここ元ピックアップデュエル開催会場で分かちあっていた。

 

 元ピックアップデュエル開催会場は、蟲惑魔の森の何処かにあった精霊界への扉を探す為に開催された為、俺達は直ぐにこの会場に移動する事が出来た。

 

 何よりも嬉しいのは、花音を助け出した事だ。しかし、花音は未だに目が覚めておらず、今はここの医務室のベッドで眠っていた。回復には時間が経つ事だろう。

 

 花音の傍にはアロマ達が花音の目覚めを待つように傍に立っており、無事を祈っていた。

 

「ふーん、これが貴方達が言っていた花音ちゃんね。可愛い子じゃないですか〜」

 

 ただし、マグノリアとロザリーナは花音が攫われた後にこの世界に来た為、こうして花音と対面するのは初めてだ。

 

 花音が目を覚ましたら、新しい仲間が増えた事に驚く事だろう。

 

「にしてもよぉ、まさかクローラーが出てくるとは思わなかったぜ」

 

「あぁ。それにそれを手足のように操ってもいた。想像以上に厄介な敵だな、セブン・エクリプスは」

 

 それに奴らは自分達が使うモンスターだけじゃなく、他のモンスターの姿や能力をそっくりそのまま模倣する様な力もある。

 

 ウェルシーのデュエルの時、アイツはアロマモンスターも使ってきた。もしあの力を使って更に強力なモンスターを使ってきたとすれば……かなり対処は厳しくなる。

 

「まっ、何はともあれ一件落着だろ?」

 

「あぁ。ナチュル達も元の場所に戻れるようハスキー達がやってくれるだろうけど……」

 

「蟲惑魔は?」

 

「ここに残るらしい。こっちの方が人間が寄ってくれるらしいから……」

 

「生々しい理由だな」

 

 聞いた話によるとここは自殺スポットとして有名らしく、蟲惑魔達はその人間達を食料としているらしい。

 

 流石にピックアップデュエル中はそんな事起きなかったが、それが終わって著しくまたここに足を運ぶ人が増えたらしい。

 

 同じ人間だからその視点でしか物事を考えられないが、同じ人間が……しかも、自殺しようとしている人間を貪り食べられるのを想像すると、少し嫌な気分にはなる。

 

 まるで、命を弄んでいるような気がしてならない。

 

 だが蟲惑魔達にとっては人を食べるのは、牛や豚を食べると同意義だろう。俺たち人間も、動物の命を食べているのだからあまり偉そうな事は言えない。

 

 そんな所でピックアップデュエルをしたのは驚いたが、異世界への扉を探すには、ここが最適だったのだから仕方ない。

 

 これからも蟲惑魔達は、ここに招かれるように来た人間を食料にするのだろう……。

 

「気にするだけで無駄だ。弱肉強食は自然の摂理だからね」

 

 彼方さんが気にするなと言わんばかりにそう言ったが、やはり気にはなってしまい、つい考え込んでしまう。そんな姿を見て、彼方さんは何か思った所があるようだ。

 

「花衣くん、君は随分と自分の事よりも他人の事を気にかける傾向があるんだね」

 

「え? そうですか? 自分ではそんな事思って無いですけど」

 

 俺だって自分の考えや気持ちを優先する事だってあるにはある。

 

 駄々こねて母さんと一緒に過ごしたい時もあったし、別段そんな他人優先見たいな自覚は無かったが、彼方さんから見ればそんな風に見えたらしい。

 

「それが……何か?」

 

「いや、だからこそちょっと危ういなって」

 

「危うい……?」

 

 彼方さんの表情が何かを危惧している様な顔になっており、どういう事かと言おうとしたが、近くにいたティアドロップがそれを遮った。

 

「花衣様をその辺の馬の骨と一緒にしないでください。あと花衣様に近いです、離れてください」

 

 俺に近づいたティアドロップは彼方さんをどかして俺と体をくっつかせるように俺の右腕を組んできた。

 

「確かに花衣様は危ういです。その優しさに誑かされて他の悪女に騙されないか心配です……まぁ、私がいるのでその心配はありませんが」

 

「あ、危ういってそういう感じ?」

 

「まぁ……うん、それもあるかな……たはは」

 

 明らかに意味が違う危うさを彼方さんは示唆していた様な気がするが、苦笑いでティアドロップの言う事を違うと言うことは察せられた。

 

 一体彼方さんはどう言った意味で『危うい』と言ったのだろうか……? あの時の表情から察するに、かなり深刻な意味を持っているのだろうけど……誰かの事を考えるのは、それほど危険な考えなのだろうか? 

 

「それにしてもティアドロップ達が無事で何よりだ。本当に良く耐えてくれた」

 

「貴方の為ですから当然です。私の命が枯れる時は、貴方が居なくなる時ですから」

 

 ティアドロップは心臓の鼓動を確かめるかの様に胸に頭を擦り寄せ、その鼓動を1秒も聞き漏らさずにいた。

 

 体勢が体勢だからティアドロップの顕になっている胸元が一望出来てしまい、顔を見あげてティアドロップの胸を見ないようにし、無意識にティアドロップから離れようとしたが、ティアドロップが力強く引き止めてそれは叶わなかった。

 

「旦那様? 何もティアドロップさんだけ奮闘していた訳ではありません。私達にもお情けをくださいませ」

 

 カンザシも俺に寄り添うように体を近づかせ、両手を俺の胸に添えてゆっくりと顔を近づかせ、首元に口付けを交わした。

 

 そしてそれを皮切りに、スノードロップ達もグイグイ接近してきた。

 

「花衣君〜私にもなにかしてよー」

 

「差し支え無ければ……私にも是非」

 

 そう言ってティアドロップとカンザシはスノードロップとヘレボラスと入れ替わり、2人は俺の両膝に座った。

 

 少しヘレボラスの方が体型や色々な所が大きいのか、少しヘレボラスが乗っている膝が悲鳴を上げているが、ヘレボラスを悲しませないように俺は耐えた。

 

 そして決心した。筋トレをしようと、後で焔に鍛え方を教わろう。

 

 スノードロップへのご褒美は、頬への口付けらしく瞳を閉じて右頬を差し出すようにした。瞳を閉じているのは、唇への口付けを期待しているからだろうか。

 

 そしてヘレボラスも同様に同じものを求めるように頬を差し出した。

 

 だが、焔達が見ている中でそれをやる気にはなれない。チラリと焔を見ると、焔達3人やドラゴンメイド達は背中を向けて遠くの方に行っていた。

 

「俺たち何も見てないからなー!!」

 

「プライバシーは気にするな」

 

「モテる男は辛いね」

 

 3人の男は背中を向けてそう語った。

 

「ねぇナサリー、どうしてあの人達の事見ちゃいけないのー?」

 

「ラドリー、貴方にはまだ早いから……」

 

 青髪のメイド、ラドリーの目をナサリー苦笑いを浮かべながら隠し、ナサリーはお構いなくと言うように笑った。

 

「花衣君ー?」

 

「花衣さん……」

 

 目を潤わせた2人を無下にする事は出来ず、俺はそれぞれ求めている事をした。しかも、これで終わりでは無い。まだエリカとボタン、ストレナエとプリムとシクランにひとひら、そして……レイ達もいる。

 

「私も戦ったんだから私にも頂戴ネ!」

 

「もしやってくれないと……ふふ、どうなるか分かりますよね?」

 

「六花達だけなんて事はしませんよね〜?」

 

「わ、分かってる……分かってるから」

 

 

 

 

 

「後ろでイチャイチャする声聞くの何かムカつくな……」

 

 焔は恨み節を唄うかのようにそう言いながら拳を握り、その拳で小さく壁を叩いていた。

 

「そう言うな。アイツの前世が善行を積んだ結果だからな」

 

「くっそー!! 俺の前世はなんで徳を積まなかったんだよぉぉ!!」

 

 焔は壁を殴る力を強め、サンドバッグを殴るようかのように壁を殴打し続け、その結果焔の拳の指がヒビ割れる音が鳴ると、焔は右手を抑えて蹲った。

 

 当然の結果だと空は対応せず、代わりに近くにいたナサリーが直ぐさま救急箱を持って焔の右手を治療した。

 

 そんな中、彼方が焔の言葉を聞いてある違和感を抱いた。

 

「前世……か」

 

「どうかしたんですか? 彼方さん」

 

 空が彼方の反応を見て気になり始めると、彼方は自分が違和感を共有した。

 

「いや、【六花精華カイリ】や【閃刀騎ーカイム】って、本当に花衣君の前世なのかなって思ってね」

 

「どういう事ですか?」

 

「……なに、ちょっとした好奇心さ。それよりも早く帰る準備をしないかな。もう夕陽が差し込んで来て、天音も帰りを待っているからね」

 

 適当にはぐらかした彼方は空達と一旦距離を置き、空は彼方の考えに対して並々ならぬ考えを持っていた。それは恐らく、彼方が辿り着いた考えと全く同じだった。

 

「……彼方さん、それは花衣がこの世界の人間じゃ無いということになるぞ」

 

 これが何を意味するのかは分からない。この世界の人間でも無くても、人間は人間。そこにそれ以上もそれ以外の定義は無い。

 

 だが、空の視点にとって別世界の人間=精霊だ。

 

 精霊がこの世界に辿り着く為には、まずその元となるカードが必ず無ければならない。

 

 ティアドロップなら六花聖ティアドロップのカード、レイなら閃刀姫ーレイのカード等がそうだ。

 

 もし花衣が精霊だとしたら、そんなカードが少なくとも2枚ある。それがカイリとカイムな訳だが、花衣からそのような感じは一切無い。

 

 なら、どうやってこの世界に居るというのだろうか。カードが無いのなら、やはりこの考えは杞憂で花衣はこの世界の人間だったらそれはそれで良い。

 

 だが、それは有り得ないと空の頭が理解していた。

 

「……そもそも普通の人間がドラゴンとかになれる訳無いか」

 

 空は足元にあった小石を蹴り、ドライな自分に対しての怒りを発散させた。

 

「花衣、お前は本当に何者なんだ……?」

 

 

 

 

 

 

 

「あ、足がちょっと痺れてきた……」

 

 流石に数人の女性を連続で載せ続けるのはしんどい。いや、別にそれほどまでに苦痛でも何でもなく、どちらかと言えば焔達が認知されている前でやるのが凄く恥ずかしかった。

 

 だけど仕方ないじゃないか。顔も整っていて器量が良い女性にあんな圧のかけた笑顔を向けられたら……誰だって従うに決まっている。

 

 嫌という訳じゃなく、恥ずかしいだけだ。だがそのかいあってか皆上機嫌になり、特にレイはある出来事が起こったおかげかかなり気分が良く、ほごらかな笑顔を浮かばせていた。

 

「ふんふふ〜ん、私と花衣さんの絆のカード……ふふ、また使って欲しいな〜!」

 

 レイは新たなカード【希望の絆ーレイ】のカードを両手に持って何度も眺めており、再度使われる日を待ち望んでいた。

 

 これまではティアドロップ、カンザシ、ストレナエと六花聖のみが新しい姿のカードが変化し、レイは陰ながらそれを羨んでいた。そこで出たのがあのカードなんだから嬉しくない訳が無い。

 

「良いなぁ〜早く私も花衣君の力で新しいカード出てきて欲しいな〜! 花衣君、私のカードも作ってよー!」

 

 プリムがレイを羨ましそうに見ながら俺の肩に乗って肩車の状態になると、プリムは俺の頭を掴んでお強請りして来た。

 

 俺もそうしたいのは山々だが、どう言った状況でどうなるのか分からないのだからやりたくても出来ない。

 

 前からそう言っているがプリムは聞かずに地団駄を踏む代わりに俺の頭を弱く叩き続けた。

 

「大丈夫だプリム。新しいカードが無くても、お前らの事を使い続けるし、ずっと一緒にいるから」

 

「ほんとに?」

 

「あぁ、本当だ」

 

「じゃあ大丈夫! 花衣君大好き!」

 

 プリムは俺の肩から降りると前の方から直ぐさま抱きつき、頭を擦り寄せてその頭を撫でた。

 

「やっぱり、花衣さんは皆さんの事が大好きなのですね」

 

「まぁそれなりには……ん?」

 

 聞いた事ある声が聞こえてゆっくりと顔を後ろに向けると、アロマ達に囲まれた薄緑色のロングヘアーをなびかせた彼女が笑顔で俺と再会した。

 

「お久しぶりです、花衣さん」

 

「花音! もう大丈夫なのか?」

 

 プリムを抱きながら立とうとすると、足の痺れを忘れてたったせいで足がビリビリと痺れてしまい、またすぐに椅子に座ってしまった。

 

「あぁ慌てて無くても大丈夫ですよ! 皆さんから花衣さんが頑張ったと聞いているので、ゆっくりお休み下さい」

 

「そうだよ、花衣君はゆっくり休んでね」

 

「あぁ、ごめん2人とも……ありがとう」

 

 花音とプリムの言葉に甘える事にした俺は、椅子に背中をもたれ込む様にして座り、プリムも気遣ったのか俺の膝から降りてくれた。

 

 花音が無事に目が覚めた事で肩の荷が降りたようにも感じ、今一度花音の顔を見た。

 

 最高で最悪の誕生日に攫われたあの日からずっとこの日を待っていた。出来たら、霊香とカレンさんも助けたかったが、今は花音を救い出せた事を喜ぶべきだろう。

 

 花音が目を覚ました事が焔達も聞いたのか、焔達も花音の元まで走り、集まってきた。

 

「おー! 花音じゃねぇか! 良かったなお前ら!」

 

 焔はアロマ達と俺にそう言うと、アロマ達も頷きながら安堵の息や喜びの言葉を上げ、ローズマリーがようやく助けられた事の感動で涙さえも流していた。

 

「本当に良かった……花音が無事でっ」

 

「うん。ローズマリーちゃんも……何だか印象変わったね。アロマリリスだっけ? 可愛いね」

 

「もう、今それ言うっ?」

 

 しかしローズマリーは笑顔でそう言い、アロマリリスの姿を花音に見せていた。

 

「皆さんの事は、ローズマリーちゃん達から聞きました。本当に……ありがとうございます」

 

「いや、本当に無事で良かったよ。……残念だけど、霊香とカレンさんがまだだけど」

 

「ですが、皆さんが必ず救い出すんですよね? 勿論、私も精一杯お役に立てるように頑張りますから!」

 

 花音は小さくガッツポーズをし、俺達は花音の言葉に絶対の約束をするように力強く頷いた。

 

 そう、絶対に2人とも助け出す。俺よりも、焔と彼方さんがそれを強く望んでいる筈であり、彼方さんが早速ある事を話してくれた。

 

「花音さん、早速で悪いが……君が捕まった時の状況を話してくれないか? 俺達には、情報が必要なんだ」

 

 申し訳なさそうに彼方さんはそう言うと、空気が少しづつ重くなりつつあり、誰もが真剣に花音を見た。

 

 セブン・エクリプスの情報は今俺達の手元には無いに等しいほど少なく、恐らく今最も情報があるのはそんな奴らから助けられた花音だけだ。

 

 だが、花音の表情から申し訳なさが見え隠れしているのを見えてしまい、あまり期待はできなかった。花音自身も、期待応えることが出来ないと分かったのか、花音が最初にした事は、頭を下げる事だった。

 

「ごめんなさい……実は、あまりよく覚えないのです。捕まった後どんな所にいたのか、何が目的なのかも、あまり覚えていません。ですが、一つだけ覚えているのがあります」

 

「どんな事だ?」

 

「私や、霊香ちゃん、雀ちゃん、カレンちゃんは……あの人達の仲間になる為に産まれてきた。と言っていました」

 

「はぁ? 何言ってんだあのローブ女ぁ! んな訳ねぇだろうが!」

 

 花音が言った言葉は耳を疑ってしまい、焔はそれを聞いて拳を叩いて怒りを顕にしていた。それはそうだ。こんな事言わされたらたまったものではない。

 

 だが妙に信憑性があるのが最悪だ。現に霊香は雪女に魂を乗っ取られている状況だが、雪女はこうも言っていた。

 

 _アンタ、私に体を譲ったでしょ!? それなのになんでっ!?

 

 あの時の雪女からは嘘を言って俺と焔を欺く余裕さえ無かった。信じたくは無いけど、霊香は本当に雪女に魂を売った可能性がある。

 

 何故そんな事をしたのかは分からないし、そもそも俺達は霊香の事についてあまりよく知らない。思えば、そんな事気にも止めなかった。

 

「なぁ花音、霊香の事どれだけ知ってるんだ?」

 

「?? どうしてそれを?」

 

「霊香がなんで雪女に魂を乗っ取られた理由が、そこにあると思ったから……」

 

 あくまでカンだ。証拠も確信も何も無いただの推測だが、霊香の事を知れば少しは何か分かるかも知れない。

 

 ほんの一筋の光さえ見つければ、そこが霊香を救い出す為の糸口になるかも知れないと思った。その為にはまず彼女の事について知らなければならない。そしてこの中で霊香と親しいのは、花音だけだ。

 

「そうですね……可愛いものが好きだったりとか。あと、辛いものが大好物ですよ。あとそれから……」

 

「……えーと、家柄とかは分からないか? 確か【除霊家】って、言ってたから、聞いた事無いかなって」

 

 花音は見当違いな答えを出してしまって謝りながら顔を真っ赤にし、恥ずかしさで穴があったら入りたい程縮こまってしまった。

 

「ごごごごごめんなさい〜!! 私ったらなんて見当違いな事を……」

 

「いや、大丈夫だから。それで、どうかな?」

 

 そばにいたアロマ達も声をかけてようやく花音は落ち着くと、霊香とこれまで過ごした日々を思い出すかのように目を閉じたが、一気に表情が曇った。

 

「ごめんなさい……実は、霊香ちゃんあまり家の事は話さなかったので、特に知っている事は無いです。家族が居て、少し変な従姉妹が居るとは言ってましたけど……」

 

「従姉妹…………あぁ!!!」

 

 従姉妹……そうだ、確か霊香の従姉妹である人とこの会場であった事があるんだった。確かあの時名刺を渡されたから、急いでその名刺を探すと、丁度財布の中にその時の名刺があった。

 

「びっっくりしたぁ……なんだよ花衣、急に声出して」

 

「俺、霊香の従姉妹と会ったことあるんだよ!」

 

「あぁ? それって確か……霊亡だっけ? あのちょっと根暗な眼鏡の」

 

「え? 会った事あるのか?」

 

「あぁ。お前もあんのか?」

 

 俺はこのピックアップデュエル会場で霊亡さんに会った事を皆に伝えると、渡された名刺を見せた

 

「えーと……【霊媒師 魂乃 霊亡(たましの れいな)】……こんなフルネームだったのか」

 

「どうやら霊媒師として活動しているらしいな。電話してみたらどうだ?」

 

 空からこんな提案を受け、迷っている理由は無い。俺は名刺に書かれた電話番号を入力し、携帯を耳にかけて数秒後、確かにあの人の声が携帯越しに聞こえた。

 

『も、もひもひ!? えと、あの……私、霊媒師の霊亡と申します! えと、今日はあの……ご依頼でしょうか!?』

 

 この挙動不審の言動は間違いなく霊亡さん本人だった。

 

「もしもし? えーと、ピックアップデュエルでお会いした桜雪花衣です。覚えていますかね?」

 

『あ──!! はいはい! 覚えてますよ〜!! 貴方の霊はよーく覚えます!! それでそれで!? 今日はどんな、はっ、ご相談でしょうか!?』

 

「えーと……白井霊香っていますよね? 俺の友達で、貴方とは従姉妹の。その子についてちょっと詳しく聞きたい事があって……」

 

『霊香ちゃんですか? でもあの子、確か今は海外旅行してると言ってましたよ?』

 

 どうやら攫われた事についてはそんな風に誤魔化しているのか……ドラゴンメイド達から何も聞かされない辺り、恐らくセブン・エクリプスがその様に認識を改変したんだろう。

 

「ええ。ですけど彼女の事について聞きたいんです。近い内……いえ、出来れば明日でも話をできませんか?」

 

『わ、分かりました……? では明日……どこで集合しますか?』

 

 俺はドラゴンメイド達に目を配り、情報共有の為にドラゴンメイド達の所で霊亡さんを招きたいと思うと目で訴えると、ハスキーは何も言わずに頷いた。

 

「だったら、明日駅前に集合しましょう。そこから話せる所で行きます」

 

『わ、分かりました! うへへ……楽しみにしてます〜』

 

 霊亡さんは楽しみを隠しきれない笑顔を浮かべるのが目に見えるような笑い声を残し、通話を切った。

 

「どうやら、聞けるようだね」

 

「はい。ハスキー、また場所を借りるけど……」

 

「かしこまりました。では明日、料理をご用意致します」

 

 これで後は話を聞くだけとなり、これで霊香が……そして除霊家がどう言ったものなのか分かる筈だ。

 

 それが、霊香を救い出せる一筋の道だと今は信じるしか無かった……。

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