六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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こんにちは、もう少しで社会人となって不安のせいか小説の書き方をド忘れした白だし茶漬けです。

前書きで愚痴みたいな物を書くのはいささか目に悪いの思うのでこの辺りにしておいて、次回からはかなり特殊なデュエル話となります。

アニメ5dsをかなり見ている人なら、縁のあるデュエルなのでお楽しみに!


ようこそ私の学園へ

 

 お嬢様学校というのを聞いた事あるだろうか。

 

「ごきげんよう」と挨拶したり規律が厳しいイメージがあり、生徒全員が金持ちだったり偏差値が高かったりと、まぁ俺のような一般人が中に入る事は一生ないと思っていた。

 

 だが、そんな俺が今まさにその学園の正門前にいる。

 

 学校というより城と思う程大きくて美しい外観は初見じゃ絶対に学校とは思えず、目が潰れるほど眩しくも見えた。

 

 正門をくぐる人達は全員高級なスーツに、見るも眩しい腕時計に革の靴を履いている人ばかりで俺はいい意味で悪目立ちしていた。

 

 通り過ぎていく人は珍しいものを見るかのように俺を端目で見ては通り過ぎ、帰りたい気持ちで吐きそうになった。

 

 

「花衣くん、気分悪そうだけど大丈夫?」

 

 隣にいたスノードロップが心配そうに俯く俺に視線を合わせながら背中をさすってくれており、そのおかげか少し気分も軽くなった。

 

 スノードロップだけでは無く、エリカとロゼも同じような目を向けていた。

 

 3人ともいつもの服装ではなく、少しお洒落なドレスを着ておりとても新鮮だった。

 

 こうなった事の発端は1週間前のある日だった。

 

 

 

 

 _1週間前にて

 

 花音の学校が来週文化祭があるらしく、そこに俺を招待する為に、わざわざ直接招待状を届けに来た事がきっかけだった。

 

 花音が家に入り、招待状を渡すのまでは良い。

 

 問題はティアドロップ達だった。

 

「絶っっったいに行かせません!!」

 

 ティアドロップが分かりやすく怒りを露わにして頬を小さく膨らませ、花音に渡さないようにと俺の顔を自分の胸に押し付けるようにして抱きしめた。

 

 顔がティアドロップの胸に飲み込まれたせいで息がほとんど出来ない状態になり、近くにある机を叩いて離せと手で変わりに訴えようとしても、ティアドロップはホールドを止めずに花音との会話を続けた。

 

「花衣様は私の大事な人です。誰にも奪わせませんし誰にも渡しません。それなのに文化祭に招待……それってデートですよね?」

 

「で、デートって訳じゃ……ただ、一緒に回れば楽しいかなって思っただけで……」

 

「それをデートと言うのです。私以外とのデートなんて認める訳にはいきません」

 

 これにはレイやカンザシ達も無言で頷き、是か非でも俺を文化祭に行かせなく無かった。

 

 強めの言葉に花音はたじろぎ、目を閉じて口をバツの字になっており、それを見ていたローズマリーが花音のフォローにまわり、ティアドロップ達に言い返してきた。

 

「別に文化祭ぐらい良いじゃないですか。第一、そんなにその人を束縛しなくても……」

 

「では貴方はそこにいるベルガモットを他の女性に取られても良いのですか?」

 

「べ、……ベルガモットは関係ないでしょ!?」

 

 いきなりベルガモットと名前を呼ばれた本人も驚いて咳き込んでしまい、ローズマリーは妙に慌てていた。

 

 ……まさか、ローズマリーとベルガモットって付き合っているのか? 

 

 会話に集中していたおかげかようやくティアドロップの胸から顔を抜け出し、ベルガモットとローズマリーを交互に見ると、ベルガモットは否定するように苦笑いしながら手を横に仰ぐ様にしており、ローズマリーもベルガモットに対してあれ以上の反応を示さず、互いに恋愛の好意があるわけでは無さそうだった。

 

「とにかく、堂々と花衣様をデートに誘うその態度がはっきり言って気に入りません。言ってしまえば、他人の男を取る行為ですから」

 

「うぅ……確かにそうですよね……すみません」

 

 しょんぼりとした花音を見てしまったせいか心にズキリと針を……いや、槍を貫かれた様な痛みが襲いかかってきた。

 

 わざわざ直接来たんだからここで突き放す様な事はしたくないし、かと言ってティアドロップ達の気持ちも無視するのはこちらとしてもやりたくない。

 

 心が揺れ動き、しかも板挟みの様な状態でティアドロップと花音の気持ちに挟み潰されてしまうような気分だが、それでも互いの気持ちを無下にしない方法を模索した。

 

 実を言うと花音の学校に興味はあるにはあるし、文化祭も行きたいとは思っている。となれば、考えは1つしか無かった。

 

 それは、ティアドロップ達を霊体化ではなく、実体化でどうにかして文化祭に連れていく事だ。

 

 たけどそういうのは何だか女性を取っかえ引っ変えしているクズな男の様な感じがして自分の不純さを殴りたくなってきた。

 

 だがこれしか方法が思いつかず、かといって皆を霊体化のまま連れて行かせるのも酷だ。

 

 頭を悩ませて唸り声をあげている俺に、ティアドロップはそっと手を俺の肩に置いた。

 

「ですが、花衣様がどうしても行きたいのなら、止めはしませんよ」

 

「ティアドロップ……」

 

「まぁ、私達がちゃんと旦那様を管理していれば問題ないですね。これ以上旦那様に集る害虫……コホン、女性を寄り付かせないようにね」

 

 カンザシも問題無いとは言っているが、カンザシの細い目の笑顔が背筋を凍らせ、あまりの怖さにカンザシに顔を合わせられなかった。

 

 カンザシだけじゃなく、スノードロップやヘレボラス、エリカやボタン、レイ達までもがカンザシと同じような笑顔を向けていた。

 

 だがその笑顔を向けられるぐらいの節操の無さをしているから俺からとやかく言う事も資格も無い。

 

「花衣くんー! 私は行ってみたいー!!」

 

 唯一ストレナエとプリムとシクランが文化祭を楽しみにしている笑顔を見せているのが救いだ。

 

 だがそれが逆に良心を傷つけられ、笑顔が太陽よりも眩しくも思えた。

 

 その笑顔に心を打たれた俺は2つ返事をして文化祭のチケットを受け取った。

 

 

 

 

 

 _そして現時刻に至る。

 

 事の経緯を思い出したのに時間を使ったのと、スノードロップ達の介抱のおかげで少し緊張がほぐれてきた。

 

 立ち上がった後に少しだけ深呼吸して心を落ち着かせ、正門前に合流予定の花音を待ち続けた。

 

 そろそろ来る時間だと思い、正門の広場に目を向けると、人混みをかき分けながらこちらに走っていく女子生徒が見えた。

 

 黒を基調とした制服とスカートは高級感を強調させており、一目でこの人は各位が高い人だと分かるぐらいだ。

 

 それを見事に着こなしているのが間違いなくこの生徒という証だ。

 

 息を切らなしながらもこちらに向かっていく生徒、花音に向かって手を振ると、花音はこちらに気づいて手を振って返してくれた。

 

「皆さん〜! お待たせ致しました。ちょっとホームルームに時間を取らせちゃって」

 

 花音は息を切らし、深呼吸をして息を整えた。

 

「いや、大丈夫だよ」

 

「では、改めてまして……ようこそ聖奈学園へ!早速案内致しますね。どうぞこちらへ」

 

 花音は正門の中へと案内し、俺達は花音について行った。

 

 校舎は割と普通の部類であり、俺の学校の校舎とそこまで変わらないが、広さはかなりある。端から端まで歩くだけで10分以上はかかるのは間違いなく、文化祭だからその広い校舎は数々の模擬店で埋め尽くされていた。

 

 校舎を一回りすると意外と店も普通なものが多かった。

 

 たこ焼き、お好み焼きにパスタやカレーなど、和洋中が揃っており、所々普通の店の規模の大きさの模擬店があり、生徒や一般客が楽しでいるのが目に見えた。

 

「校舎内では教室を使った催しもあるんですよ。そちらに行かれますか?」

 

「へぇ、例えば?」

 

「例えば……」

 

 花音が説明しようとすると、通行人の男と花音の背中がぶつかってしまい、花音はバランスを崩して背中から俺の方に倒れこんでしまう。

 

 慌てて花音を受け止めると、花音は俺の体に持たれかけるようにして転倒する事を防いだその瞬間、右手にムニッという擬音が聞こえる程柔らかい物が掴んだ感覚が伝わってきた。

 

 この妙に触りなれた感触でありながらも少し違うような、そんな人それぞれが持つ柔らかいものは……ソレであると間違いなかった。

 

 冷や汗が滝のように流れる中で花音の絹のような柔らかな髪から香る花の匂いが花から頭の中へと広がり、それが引き金となって固まった思考がほぐれた瞬間、次に目にしたのは花音の赤面した顔だった。

 

「あ、あの……花衣さん、わ、私の……その…………」

 

「ご、ごめん! 本当にごめん!」

 

 慌てて花音の胸から手を離し、何度も謝った。

 

 未だにあの柔らかな感触が覚えている中、花音は赤面しながらも服のズレを直し、何も言えない空気になってしまった。

 

「…………」

 

「うぅ……」

 

「少しよろしいでしょうか、花衣様」

 

「うおっ!?」

 

 俺と花音の間に割って入るように実体化したティアドロップが先程の出来事を見たせいか、細い目でじっと俺を睨んでいた。

 

 原因は当然あの行動だが、あれは事故でワザとじゃない事はティアドロップも分かっている筈だ。

 

 話せば分かると踏んですぐに言葉を出そうとしたが、ティアドロップの笑顔で背筋が凍りつき、俺から何か言える雰囲気ではなかった。

 

「私というものが居ながら他の女の胸を触るのはどうかと思いますが」

 

 事故とは言え触った事実は揺るがないから否定しようが無い。

 

 ティアドロップの首筋から額にかけて血管が浮き出る程の怒りの圧が凄まじく、笑顔が笑顔の機能をしておらず

 、笑顔が氷の針のように俺を突き刺しては体から血の気と温度が抜かれていき、夏の残暑をかき消していくようだ。

 

 下手な言葉は発せないし、抵抗すらも許されず、ただ苦笑いと冷や汗をかきながらティアドロップの体温を感じる事しか出来なかった。

 

 そんなティアドロップがゆっくりと耳元に口を近づかせ、花音や他の人には聞こえない程の小さな声が囁かれた。

 

「花衣様、今日は多少の事は目を瞑ります。ですが貴方は私と体を重ね、どれ程愛し愛せているのか確かめあったのです。故に、貴方の心は誰のものか考えてくださいね? でなければ……お仕置です」

 

 最後にフッと息を吹きかけ、体をビクつかせた俺の反応を見て笑ったのか、それともそのお仕置を期待しての事なのか真意は分からず、ティアドロップは姿を消した。

 

 幸い周りに人は居なかったからティアドロップの姿を見たのは俺達以外は居ない。

 

 ホッと息を撫で下ろし、ティアドロップの介入より空気が少しだけ元に戻った俺と花音は、ぎこちないながらも会話を続けた。

 

「あの、ティアドロップさんはなんて言ってましたか?」

 

「え? ええと……羽目を外しすぎないとか言ってた」

 

 花音の前で体を重ねたとかそんなディープな事が言えるわけも無く、少しだけ曖昧な答えをしたが花音は気にしておらず、模擬店巡りを再開した。

 

 それにしても、お嬢様学校というのがあってか全体的なクオリティがかなり高い印象を持った。

 

 飲食物の取り扱いや、調理方法、そして店の規模も目を見張る物があり、文化祭というより普通の祭りに近い印象だ。

 

 規模の大きさに関心しながらも、途中で甘い匂いが俺と花音の鼻につくと、匂いの先には出来たてのクレープ生地が焼きあがっており、それを前の客がまだかまだかも忙しなく待っていた。

 

「凄いな、クレープを生地から作っているのか」

 

 それだけの設備が揃っているという事なのだろう。クレープは簡易テント内で作られているが、専用の機材や電源は揃っており、問題なく営業出来る状態だった。

 

 広い場所故に、あのような大掛かりな設備も用意できるとは流石お嬢様学校……恐るべし。

 

 丸い鉄板の上で出来上がりつつあるクレープに花音の食欲が刺激されたのか、花音は無意識にクレープ屋を見つめて足を止めていた。

 

「……はっ! いけませんいけません、今は花衣さんの案内優先です! でも……うぅ〜美味しそう……」

 

 あまりの食べたさに独り言が大きくなりつつあり、花音はそれに気づいてないようだった。

 

 多分、「食べに行くか?」と言っても花音は俺の案内を優先してクレープ屋を後にする事だろう。こういう時は、俺が食べたいと言ったら行く筈だ。

 

「あ、あ〜俺、クレープ食べたくなってきたな〜? 良いかな?」

 

 あまりにも酷い棒読みをすると花音は目を輝かせて俺に顔を向けた。

 

「そ、そうだったんですか! なら一緒に食べましょう!」

 

 どうやら相当食べたかったのか花音は俺を置いていってクレープ模擬店の方に走っていき、俺も後からついて行く。

 

 幸いそれ程混んでおらず、メニューも少ないからそれ程注文の時間はかからなさそうだ、前の2人が心待ちしてクレープを待っている間、テントに垂れ下がっていたメニューを眺めて何を食べるか迷った。

 

 メニューは四つあり、バニラ系、イチゴ系、チョコ系、ベリー系だけだが、写真を見る限りどれも美味しそうだ。

 

 俺はベリー系に決めたが、花音がまだ決め兼ねているのかメニューのクレープを見て目を泳がせながら悩み続けていた。

 

「うーん……イチゴ、いやバニラも捨て難いですね。ううん……どれも美味しそうで悩みますね……」

 

「ゆっくり決めたら良いよ」

 

「すみません……いっその事全部トッピング出来れば良いのですが……」

 

 確かに全部トッピング出来たら悩む事は無いだろうが、メニューに全乗せは無いから諦めた方が良いだろう。

 

 前の客がクレープを受け取り、遂に俺たちに順番が回って店番の生徒と花音と目が合うと、目の色を変えて驚いていた。

 

「あ! 花音さんじゃないですか! お久しぶりでございます!」

 

 カウンターの生徒は身を乗り出す勢いで体を前に出し、花音に元気よく挨拶をした。同じ学年か? いや、言葉遣いからして後輩だろう。

 

「少し長期の留学はどうでしたか? 花音さんの事ですから、きっとどこでも優雅に過ごしたのでしょうね」

 

「あはは……まぁ、そうですね」

 

 花音は何とも言えない苦笑いを浮かべて目の前の後輩の会話を流した。

 

 無理もない、夏頃からこの秋にかけてほんの数ヶ月しか無かったが、花音はウェルシーに幽閉されて酷い事をされたんだ。

 

 花音は何も覚えてないと言うが、助けた時の傷つかれた花音の体を見たら、どんな事をされたのか想像にかたくない。

 

 後輩に悪意がある訳じゃ無いが、何も知らずに優雅に過ごした。なんて言われた花音はどんな気持ちになったのだろう。その気持ちをリセットする為か、花音はクレープのメニューを眺めた。

 

「花衣さんはもう決めましたか? 私はまだ決め兼ねてているので、先に食べていても大丈夫ですよ」

 

「いや、大丈夫だ。さっきも言ったけど、ゆっくり決めてくれ」

 

 花音は申し訳ながらも、俺の言葉に甘えてゆっくりと注文を決めた。

 

「あの、花音さん。この人は誰でしょうか?」

 

 目の前の生徒は俺を見て首を傾げていた。

 

 制服ではなく、私服である事からこの学校の生徒では無いと思ったのだろう。

 

「この人は桜雪花衣さんです。ええと、ロマンス・タッグデュエルで私のタッグだった人ですよ」

 

「あぁ! 花音さんのお付き人!」

 

「つ、付き人?」

 

 お付き人って確か、身分が高い人のお世話をする……いわば従者みたいなものだ。

 

 分かりやすく言えば、メイドや執事だ。どうしてそう思ったのかは直ぐに言ってくれた。

 

「だって花音さんのような高級なお方が平凡なお人のお隣に立てるのはお付き人だけですから。良かったですね、花音さんのお付き人で」

 

 心の底からそう思っているのが伝わる表情と声色だった。

 

「花音さんは凄いのですよ? 本来なら貴方の様な人は隣に立つ所か見る事すら叶わない程高貴な人なんですから。そうだ、折角だから花音さんにはクレープ全トッピングを……」

 

 無意識に下に見られている言いようであまり良い気分では無く、彼女に悪意は感じられない分どう受け取れば良いか分からず、苦笑いで事を済ませようとした瞬間、花音が店のテーブルを両手で叩きつけた。

 

 両手で思い切り叩いた音が周りにまで響き、通行人は一瞬足を止めて花音の方に見た後直ぐに歩き始めたが、目の前にいる生徒と模擬店でクレープを作っていた生徒は花音の行動に固まり、花音の目を見た途端肩をビクつかせた。

 

「私の大切なお友達を悪く言わないでください」

 

 初めて聞く花音のドスの効いた声に女子生徒達は震え出し、花音は俺の腕を掴んでこの店を後にしようと離れた。

 

「あ、あの……クレープは?」

 

「必要ありません」

 

 恐る恐る彼女は花音に注文を聞いたが、花音は怒りを静かに秘めた瞳を向けて振り返り、突き放すようにそう言った。

 

 花音は無意識に腕を掴む力を強くなり始め、一刻も早くあのクレープ屋から離れようと早く歩いた。

 

「か、花音?」

 

 立ち入り禁止の貼り紙を無視し、誰もいない下駄箱へと向かっていく花音に声を掛けると花音が我に返り、強く握っていた手を離してゆっくりとこちらに顔を向けると、花音は強く握っていた右手を左手で覆うように重ねてこちらを見ていた。

 

「あ……ごめんなさい、私ついカッとなってここまで歩いていました」

 

「あの生徒の言葉を聞いたからか?」

 

 花音は無言でゆっくりと頷いた。

 

「あの子に悪意が無いのは分かっています。傍から見ればそんな風に思うのも分かってはいます。自分の立場は分かっているつもりですから」

 

 花音は胸の苦しさを抑えるように両手で自分の胸に手を当てていた。

 

「それでも貴方は私の大切な……」

 

 花音がいきなり言葉につまると顔を赤面し、その後の言葉を言わないままでいた。

 

「そ、そうだ! 気分転換に3階のデュエルスペースの様子を見ませんか?」

 

「デュエルスペースなんてあるのか?」

 

 花音に文化祭のパンフレットを見せてもらうと、どうやら外は食べ物系、校舎内はアトラクション系と分けているらしく、その中で3階はなんと全てのフロアがデュエルスペースになっているらしい。

 

 従来のデュエルもできる他、生徒が考えた特別なデュエルや詰めデュエルを解くと景品も貰えるらしい。

 

 面白そうな催しだと思うが、普通のデュエルをやる気は起きなかった。

 

 デュエルをするとなるとどうしてもセブン・エクリプスの事がチラついてしまう。

 

 命をかけたデュエルをし続けた今の俺にとって、デュエルは命をかけた戦いそのものだった。

 

 勿論ここで行うデュエルは単なる遊びだってわかっている。だが、心に刻まれた戦いは決して消える事は無く、ずっと心に蝕んでいた。

 

 勝たなければ死ぬ。勝たなければ大切な物を守れない。勝たなければ生きられない。

 

(勝つ為には……相手を潰せばいい)

 

「っ……!」

 

 ダメだ、こんな事を考えてしまう。だからデュエルを避けてしまっているのかもしれない。

 

 この悪意の闇で相手を飲み込み、危害を加えたらと思うと戦えない。

 

 俺はもう……戦うべき敵以外とデュエルしたくない。

 

「花衣さん?」

 

「あ……ごめん。じゃあ、行ってみようかな」

 

「はい。きっと楽しめると思いますよ」

 

 見るだけなら問題ないと判断し、花音につられて校舎の3階に向かった。階段を登るにつれて色んな人たちの騒ぐ声が耳に入り始める。

 

 3階の廊下に足を踏み入れると、デュエルスペースが目の前に広がった。

 

「モンスターで攻撃!!」

 

「今攻撃と言ったな?罠発動! 【聖なるバリアーミラーフォース】!!」

 

「撃つなぁァァ!!!!」

 

 デュエルスペースの席はほぼ埋まっており、誰もがルールを守って楽しくデュエルしていたり、盤面に四苦八苦している顔をしている人もいた。

 

 全員楽しそうだ、今の俺には眩しすぎて見られずついつい目を逸らしてしまう。

 

 花音に連れていかれるがままに3階の廊下を歩き続けると、俺の事を知っている人が何人か声をかけてきた。

 

「あ! 最多レゾンカード所有者の桜雪花衣だ!」

 

 誰かが俺の名前を叫ぶと他の人も反応し、デュエルを中断して雪崩のように人が集まってきた。

 

「すげー! 本物だ!」

 

「レゾンカード見せてくれよ!!」

 

 続々と集まりだしてくるデュエリストに質問攻めされると同時に通行止めされてしまい、俺と花音は身動きか取れなくなってしまう。

 

「あ、あのー! すみませんが通して貰えませんか!?」

 

 花音が通してくれと訴えるが、あまりの人の多さに花音の声はかき消されてしまい、通行人はどく様子は無かった。

 

 俺も「デュエルするつもりは無い」と言ってもそれでもデュエルしたい人が多くいて困った中、花音の手を掴みながら人混みを利用して姿を隠し、何とかおしくらまんじゅう状態の人混みを抜け出した。

 

あまりの人混みに息がつまり、何とか抜け出したと同時に溜め込んだ息を吐き出すぐらいに多かった。

 

「ふぅ……大変だったな」

 

「本当ですね……ごめんなさい、花衣さん。私がここに行こうと言ったばかりに」

 

「気にしないでくれ。……折角来たから、1回だけデュエルしようかな」

 

「だったらあそこはどうですか? 神経衰弱デュエルって書いてありますよ?」

 

「神経衰弱デュエル……?」

 

 どこかで聞いた事あるような言葉で少しだけ記憶を遡ると、確か5Dsにそんなデュエルがあった様な気がする。

 

 細かなルールは覚えてないが、あれが出来るとなれば少しだけ興味が湧き、俺はその神経衰弱デュエルがある教室へと入ると、1人の男子生徒が声をかけてきた。

 

「あ、いらっしゃいませ。神経衰弱デュエルの参加者ですか? デッキは持ってますか?」

 

 俺はカバンの中にある2つのデッキケースから、閃刀姫のデッキを選んだ。

 

「では、メインデッキに入っているカードを全て机の上にバラけてください」

 

 言われた通りに俺はカードを机の上にばらまくと、対戦相手の男子生徒もカードをバラけさせ、本当に神経衰弱みたいな事になった。

 

「ではルールを説明します。お互いにライフポイントは4000のスタートになり、初めにそれぞれ1回ずつ【モンスターの召喚】【魔法カードの発動】【罠カードの発動】を宣言してカードを1枚捲って貰います」

 

 ルールを聞くとだんだん記憶の中にある神経衰弱デュエルの事を思い出してきた。

 

 確か不動遊星が相手のイカサマを見抜き、スターダスト・ドラゴンの連続攻撃で勝利を収めたデュエルだったが、流石に今回はイカサマは無いだろう。

 

 男子生徒はルールを分かりやすくする為、実際の動きを見せた。

 

「では、まずは【罠カードの発動】を宣言」

 

 男子生徒はそう言いながら1枚のカードをめくると、そのカードは魔法カード【死者蘇生】だった。

 

「この場合、僕は【罠カードの発動】を宣言したので不発です。次に【魔法カードの発動】を宣言」

 

 そう言って彼はさっき捲った【死者蘇生】のカードをめくった。

 

「この場合、宣言と同じ種類のカードを捲りましたが、【死者蘇生】は墓地のモンスターを特殊召喚するカードです。墓地にはモンスターがいないのでこれは不発になり、そのまま裏返します」

 

 なるほど、不発になったカードはそのままセットされるという訳か。

 

「そして【モンスターの召喚】。これが少し難しいですから見ててください」

 

 そういって彼は何枚かカードを捲り、モンスターカードを出すと、そのモンスターは【召喚師アレイスター】というカードだった。

 

「【モンスターの召喚】を宣言してモンスターカードをめくった場合、通常召喚として扱われます。そしてこのモンスターは召喚した時、デッキから【召喚魔術】という魔法カードを手札に加えられますが……」

 

「でも、それじゃあ神経衰弱の意味が無いですよね?」

 

 花音の言う通り、該当するカードを当たるまでめくり続けたら神経衰弱の意味も薄れる。

 

 男子生徒も当然と言うように頷くと、ルールの細かな説明をしてくれた。

 

「ええ。なのでこのように【デッキから特定のカードを加える、特殊召喚する、セットする等の効果】はそのカードの発動の宣言をもう1度使える事にします」

 

 つまり手札に加えるのではなく、カードを捲るチャンスが増えるという事か。

 

「更に、デッキからカードをドローする効果も同様です。その場合はお好きなカードを宣言してから捲ってください。何か質問はありますか?」

 

「……カードの効果を発動する為のコストはどうするんだ?」

 

 例えば【ワンフォーワン】という魔法カードは、手札のモンスターを墓地に送ってデッキからレベル1のモンスターを特殊召喚出来るカードがあるんだが、手札がないこの神経衰弱デュエルではそもそも捨てられてる手札がない為、このカードは使えない。

 

 その辺りも抜かりないというように、彼は眼鏡を光らせながらクイッと上げた。

 

「その場合はコストを無視して効果を発動します。そして、それに適したカードでなければ召喚や効果も発動出来ません」

 

 という事は、【ワンフォーワン】の発動コストは無視するが、レベル1のモンスターをめくらないと出せない訳か。

 

「ああそうだ。言い忘れていた。裏側で置かれているカードは全て【伏せカード】として扱われ、手札に戻すカードは全て破壊される効果に変えますのでご注意を」

 

「えーと……伏せカードという事は……」

 

「【ハーピィの羽根帚】とか当てられたら全部のカードが破壊される訳か」

 

「ええ!? それじゃあ全部のカードが破壊されたら負けじゃないですか!」

 

 そう、しかもセットカードを破壊する効果もこのルールじゃモンスターすらも破壊される可能性がある。

 

 俺のデッキにも一応全破壊するカードはあるにはあるが、それを当てる可能性はかなり低い。

 

「その他のルールはこのルールブックにあるので、それを見ながらやってください。それじゃ、行きますよ!」

 

 神経衰弱デュエル……変則的なデュエルであの人みたいに上手くいくとは思えないけど、負けるつもりは無い。

 

対戦相手である男のメガネの向こうにある瞳に闘志を燃やし、神経衰弱デュエルが今始まろうとしていた。




神経衰弱デュエルのルールまとめ

①:お互いはカードを捲る前に、【モンスターの召喚】【魔法・罠カード】の発動をそれぞれ1回宣言してカードを捲り、宣言したカードの種類が一致していたら召喚、効果が使える。

②:裏側のカードは全て伏せカードとして扱う。

③:カードの効果を発動するためのコストは無視する。

④:モンスターの特殊召喚を発動した時、モンスターの召喚の制限を1回増やす。

⑤:カードを手札に加える効果は、そのカードの種類と同じカードの宣言を1回増やせる。

⑥:召喚条件、発動条件を満たせていないカードの効果は不発となり、再びセットされる。

⑦:カードの効果を無効する効果は、次の相手のターンに持ち越されて発動し、次の自分のターンになれば墓地に送られ、効果を使ったとみなされる。

⑧:手札に戻す、デッキに戻す効果は破壊する効果として扱う。

その他の質問は担当者(作者)にてお気軽にお申し付けください。

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