六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
神経衰弱デュエル、その名の通り神経衰弱とデュエルが融合したデュエルであり、公式のデュエルでは無く、この聖奈学園という学校の文化祭で生徒が決めた変則ルールだが、俺は1度だけこのデュエルを見た事がある。
あの時とはルールが少し付け加えられているが、基本的なルールは同じだ。
カードを捲る前にカードの種類を宣言し、そのカードの種類と同じカードならばその効果が使える基本的なルールが理解出来れば問題ない。
「ではデュエルを始めましょう。先行は貴方からでどうぞ。初めてだから慣れる兼ね合いでね」
「ありがたいな」
「花衣さん、頑張ってください!」
花音の応援もあって気を引き締めこのデュエルに取り掛かり、早速俺はこのデュエルについて考えていた。
まず、このルールは普通の神経衰弱の様にどこにどのカードをあるが覚えておく必要がある他、手早くモンスターを出す必要がある。
何故なら、もしモンスターを出せなければそのままダイレクトアタックでライフが無くなり、負ける可能性があるからだ。
下手に魔法・罠のコンボを使わず、まずモンスターを召喚して起点を作るのが最適な筈だ。
「俺は【罠カードの発動を宣言】!」
手始めに手前のカードを引くと、引いたカードは【閃刀術式ーアフターバーナー】だった。
「それは魔法カードなので発動できません。ですが、次に【魔法カードの発動を宣言】すれば……」
「効果は使える。……普通ならな」
アフターバーナーは表側のカードを破壊する効果だ。だが、全てのカードが伏せカード扱いのこのデュエル、ましてや先行ではこのカードは使えない。
カードの効果が使えなければ効果は不発となり、墓地には行かずそのままセットされてしまう。
墓地にカードを溜めたい閃刀デッキに置いては不発はなるべく避けていきたい。
「俺は【魔法カードの発動を宣言】!」
さっきとは別のカードをめくると、めくられたカードは【閃刀姫ーレイ】だった。
「それはモンスターなので不発ですね」
「だがこれでモンスターは召喚出来る。俺は【モンスターの召喚を宣言】する」
当然めくるカードはさっきめくったレイのカードだ。
これで俺は閃刀姫ーレイを通常召喚し、場にあるカードはレイだけの状態だ。本来ならここから次のターンに備える為にカードを伏せるが、もう俺は全てのカードの発動を宣言した為、これ以上魔法カードを発動する事は出来ない。
……だが、まだ出来ることはある。
「俺は【閃刀姫ーレイ】を素材にリンク召喚!」
「あ、そうか! EXデッキからなら好きなモンスターを出せるんですね」
花音の言う通り、この神経衰弱デュエルではEXデッキに関しては何も制限は無く、通常のデュエル通りの感覚で場に出せる。
「俺は【閃刀姫ーシズク】を特殊召喚!」
閃刀姫ーシズク
LINK1/リンク/水属性/戦士族/ATK1500
「ターンエンド。そしてエンドフェイズ時に【シズク】の効果で、墓地に存在しない【閃刀】魔法カードを手札に加える」
「この場合は【魔法カードの発動】をもう一度宣言出来ます。ただし、【閃刀】魔法カードしか発動出来ません」
ここで無理にカードを発動させることは無い。俺がやるべきなのは、どこにカイムがあるのかが問題だ。
サーチが出来ないこの状況で、40枚の中でカイムを引ける確率は低い。それでも探し当てるしかない。
手前のカード群から1枚めくり、めくったカードは【増援】だった。魔法カードだが閃刀カードでは無いので不発となり、そのまま裏返した。
【増援】はデッキから戦士族モンスターを手札に加えられる強力なカードだが、この神経衰弱ルールでは単なるカードめくれるチャンスが増えるだけだ。
「では私のターン。私は【モンスターの召喚】を宣言!」
「なんだって?」
このルールなら最初に魔法・罠カードの宣言をした方が、めくれる回数も発動するチャンスも多くなる筈だ。
それなのにモンスターの召喚を宣言するという事は、それ程モンスターの召喚に自信があるのか、それともモンスターだと確信する何かがあるのか。
疑惑の中で男子生徒がめくられたカードは……【サイバードラゴン】だった。
「おお、【サイバードラゴン】は相手フィールドのみモンスターがいれば特殊召喚出来るモンスター! 特殊召喚なので僕はもう一度【モンスターの召喚】の宣言ができます!」
男子生徒はガッツポーズをして喜んでいた。この喜びようはイカサマをしている様子では無く、本当にたまたま当てたようだ。
まぁ、よくよく考えてみればこれたただの遊びだ。イカサマをして評判を下げるような事はしないか。
「次も【モンスターの召喚】を宣言。じゃあ次は……これだ!」
更にもう1枚モンスターの召喚を宣言し、めくられたカードは【神獣王バルバロス】だった。
「レベル8のモンスターなので召喚は出来ないですね!」
「いいえ、このモンスターはレベル8ですが、リリース無しで召喚出来るんです。その代わり、攻撃力は1900になりますけどね」
「えぇ!?」
リリースなしの召喚に花音は驚き、これで相手の場にはモンスターが2体揃ってしまい、それぞれ閃刀姫モンスターを突破するのには十分な攻撃力を持っている。
これで確信した。相手のデッキはほぼモンスターで構成されたフルモンスターデッキだ。
安易に特殊召喚出来るモンスターや、リリース要因が必要ないモンスターを並べ、一気にライフを削りきる気だろう。
「続いて【魔法カードの発動】を宣言」
男子生徒がめくったのは魔法カードでは無く、2枚目の【サイバードラゴン】であり、その後の罠カードの発動も【サファイアドラゴン】という通常モンスターで攻撃力1900のモンスターだった。
これで次のターンあのカードをめくられたら終わりだ。ライフ8000ならまだしも、今回のデュエルは4000形式だ。流石にあれは受け止めきれない……!
「このままバトル! 【サイバードラゴン】で【閃刀姫ーシズク】に攻撃!」
墓地に魔法カードが無いから攻撃力の低下は無く、純粋な攻撃力に負けてライフが減ってしまい、シズクが墓地に行かされる。
桜雪花衣 残りライフ4000→3400
「だが戦闘で破壊された事により、墓地の【閃刀姫ーレイ】を蘇生!」
「まだまだ! 【神獣王バルバロス】でアタック!」
「【閃刀姫ーレイ】の効果で自身をリリースする事で、EXデッキから【閃刀姫ーカイナ】を特殊召喚し、その攻撃を無効にさせる!」
「やりますね。ターンエンドです」
「何とか耐え切りましたけど……」
「次のターンはきついな……」
花音はさっきめくられた【サファイアドラゴン】のカードに目を向けていた。
もう一度カイナを出して攻撃を止めたらまだチャンスはあるが、俺のデッキは閃刀騎ーラグナロクの効果を最大限に活かすため、EXに入っている閃刀姫と閃刀騎は1種類かつ1枚しか入れてない。
カイナが墓地にある今、もう攻撃を止めるのは無理だが、前のターンでめくっているアフターバーナーを発動すれば相手モンスター1体を破壊する事も可能だ。
基本的に魔法・罠の発動が1回しか出来ないこのデュエルでは、モンスターを大量展開する事は不可能。……そこそこ詰みだな、これは。
「ターンエンドです。さぁ、貴方のターンです」
負けるかもしれないの考えているせいで額から汗が流れ、頬を伝った所で汗を拭って俺のターンだ。
今俺が把握しているカードは、【増援】と【アフターバーナー】だ。
安定感を取るなら【アフターバーナー】だろう。これを使った後、【カイナ】を素材に【閃刀姫ーカガリ】をリンク召喚すれば、効果で墓地の【アフターバーナー】を手札に加えてもう一度使う事も可能だ。
だが、そうなれば防戦一方は確実だ。
相手のフルモンスターデッキの攻撃力の前では、たかだか攻撃力1500なんて無いに等しい。
ここで決めるのは早計だ。とにかく俺がやるべき事は……
「俺は【罠カードの発動】を宣言」
この一手にかけるしかない。もしこれがモンスターカードならば、まだ逆転の目は残される。直ぐにはめくらず、手の平の下でカードを選び、これと感じたカードを探し当てる。
勿論裏側のカードからどのカードなのか分かる訳も無ければ、閃刀姫のスリーブを使っているから汚れや傷から判別出来る訳でもない。というよりカードを傷つける事はまずしない。
ようやく手に着けたカードは、少し左側にあるカードだ。カードをめくるとそのカードは魔法カード【閃刀起動ーエンゲージ】だった。
「残念、それは魔法カードですね」
「くっ……! 俺は【魔法カードの発動】を宣言する」
そうして俺は【アフターバーナー】のカードをめくり、今最も攻撃力が高いサイバードラゴンを破壊した。
「なるほど、モンスターの数を減らした訳ですか。でもそれじゃあ変わりませんね」
この生徒の言う通りだ。ここで【カガリ】を出して墓地の【アフターバーナー】をもう一度出したとしても、次のターンの総攻撃は食い止めきれない可能性がある。
そしてあの生徒の口ぶりからして、相手の裏側のカードはほぼモンスターに違いない。
ここで勝つ為には……カイムを引き当てるしかない。
勝つ、必ず勝つ。
この一手で勝敗が決める緊張の中、花音が祈る様に手を握って力強く目を閉じ、霊体化状態の六花と閃刀姫達も何も言わずじっと見守る中、直感で俺が手を止めたのは、一番手前のカードだった。
(……そこにいるのか?)
返事なんて無い。だけど俺の直感はここだと叫んでいた。合理的な考えも、理論的な考えも、確率論も無いただの思い込みの領域だが、今最も信用できる情報なのは間違いない。
「俺は【モンスターの召喚】を宣言」
「お願い……花衣さんが勝てるカードが来ますように……!」
深呼吸を繰り返し、後悔はしないと自分に言い聞かせながらカードに指を置いた。
めくるカードが鉄のように重く感じ、別のカードを選んだ方が良いのではともう1人の自分の考えが頭に過ぎる。
だが直感はこれだと言っている。何故だろう、この直感を信じられるような気がするし、こういう風に直感で何かを成した記憶があるような気がする。
…………ダメだ、思い出せない。多分俺がカイムの時そうしたのだろう。何故かそう確信はしていた。
あれやこれやと考えたが、やっぱりこのカードにしよう。そう決めた瞬間、カードの重みが消えたようにも思え、ゆっくりとカードを持ち上げ、その裏に隠されたカードの正体を目に映した。
「……意外と近くにいたな」
勝ちを確信した笑みを浮かべ、カードを男子生徒に向けた途端。その男はかけていた眼鏡をズラす程おどろいた。
「俺は、【閃刀騎ーカイム】を召喚!」
「そ、それはレゾンカード!? このタイミングで来るなんて!」
「【カイム】の効果により、俺はデッキ、手札、墓地からレベル4【閃刀姫】モンスターを2体まで特殊召喚出来る。俺は墓地にいる【閃刀姫ーレイ】を特殊召喚する。特殊召喚なら、何回やっても問題ないだろ?」
俺の質問に男子生徒はゆっくりと頷いた。
それはそうだ、さっき相手は【サイバードラゴン】を特殊召喚した後にモンスターを召喚したのだから。
これで俺の場にはモンスターが3体。召喚条件は整った。
「俺は【カイム】【カイナ】【レイ】の3体でリンク召喚! 召喚条件は【閃刀騎モンスター含むモンスター3体】!」
エクストラデッキからようやくこのカードが出せる事に少しの開放感を得ながら、テーブルの上にリンクモンスターを置いた。
「さぁ来い! 【閃刀騎ーラグナロク】!」
閃刀騎ーラグナロク
LINK3/リンク/光属性/戦士族/ATK????
「【ラグナロク】の効果発動、メインモンスターゾーンは全てエクストラモンスターゾーンになり、可能な限りエクストラデッキから【閃刀姫】と【閃刀騎】モンスターを特殊召喚出来るけど……こういう場合はどうなるんだ?」
「フィールドの置けるモンスターの数は変わらず5体までです」
「じゃ、遠慮なくいかせて貰う。エクストラデッキから【ジーク】【アザレア】【カメリア】【閃術兵器-S.P.E.C.T.R.A】【エンゲージ・ゼロ】を特殊召喚する」
そしてラグナロクの攻撃力は場にある【閃刀姫】または【閃刀騎】カードの攻撃力×1000だ。今は5体いるから、その攻撃力は5000となる。
閃刀騎ーラグナロク ATK5000
「そして、【ラグナロク】が与える戦闘ダメージは倍になる。勝負ありだ」
「くぅ〜やっぱりレゾンカードは強いですねー!」
負けた悔しさと、れぞんカードを間近で見れた喜びが一緒になった表情をみせた男子生徒は、悔いなく負けを認めるように笑った。
「行くぞ! 【ラグナロク】で【バルバロス】に攻撃だ!」
バルバロスの攻撃力は1900。5000の攻撃力から引けばその差は3100となるが、ラグナロクの効果でその倍のダメージ6200のダメージが男子生徒に襲いかかる。
男子生徒 残りライフ4000→0
WINNER 桜雪花衣
「……ふぅ」
「いや〜お見事でしたよ」
「本当に凄いです! 花衣さん!」
花音と男子生徒は俺の勝利を称えるように拍手をし、何だか照れ臭くなってきた。
男子生徒は机の上に散らばったカードを片付け、その様子を見ながら俺もカードを全て回収すると、男子生徒のデッキを覗いた。
するとやはり、男子生徒のデッキは全て高い攻撃力で集まったフルモンスターデッキだった。
「やっぱりモンスターだけのデッキだったか」
「この神経衰弱デュエルでは、変に魔法・罠を使うより、モンスターを大量展開した方が良いですからねー」
だろうな……俺もカイムを引けなかったら負け濃厚だったし、流石この神経衰弱デュエルを催しているだけある。
「それにしても、流石レゾンカード所有者ですね。勝つ事が当たり前みたいな顔をしていましたね」
男子生徒が言い放った言葉に手を止めてしまい、その顔をした自分の顔を手で隠し、口元を手で覆った。
そういえば、いつの間にか勝つ事を気にしていた。
ただの遊びだって分かっているし、勝ちたいと思う事は勝負において最も重要な事だとは分かっている。
だがその勝利に対する執念のベクトルが違う。どうしても生き延びたい、死にたくない。負けたら死という文字が目の前で浮かび上がってしまうのだ。
文化祭の催しだったら少しはこの気持ちを捨てられると思っていたが、そうでも無かった事に少しだけ落胆してしまう。
「では、勝ったのでこちらから景品を渡します。えーと……あったあった。どうぞこちらを」
男子生徒から1枚のカードを手渡された。大きさはデュエルで使うカードと同じだが、カードに書かれているのは大きく『30ポイント』と書かれていた。
「なんだこれ?」
「この3階のデュエルスペースでは、各クラスの催しデュエルをクリアする、フリースペースでデュエル等をするとポイントが貰えるんです。すみません、言うのが遅れてしまいました」
花音から説明を受け、もう一度文化祭のパンフレットを見ると確かにそのように書かれており、200ポイント集めると豪華景品が貰えるらしい……。
このお嬢様学校の豪華景品って何だ? 電化製品? リゾート地? 文化祭でそんな高価な景品がある訳無いと思うが、花音レベルのお金持ちが揃っているこの学校だったら有り得ると思ってしまう辺り、この学校の敷居の高さを感じた。
「どう……でしたか? 花衣さん、楽しめましたかね?」
花音が不安そうにそう訪ねて来た。
勝つ事への執念やデュエルに対しての姿勢が変わることは無かったが、楽しめと言えば楽しめた。
「あぁ。ありがとう、花音」
「良かった……! あの、他にも色々あるらしいので見に行きませんか?」
「分かった。じゃあ、案内よろしく」
「はい!」
神経衰弱デュエルを終え、花音に腕を掴まれて3階で催されているデュエルをまわることにした。
いざまわってみるとか結構催しがあった。
詰めデュエル、カード当てクイズ、カードの攻撃力の計算対決など……デュエルに関連する物ばかりだ。
しばらく見て回ると、一際に人が集まっている所がある。あそこはパンフレットを見る限り、初心者向けのベースらしく、基本的なルールや細かな裁定など丁寧に教えてくれる所だ。
デュエルも今や世界を巻き込んだ社会現象になっており、デュエルが強い=ステータスみたいなものになっている。
プロデュエリストという職業もあるし、最早デュエル中心の世界になっているから、初心者が絶えないのは当然と言えば当然だろう。
だが文化祭の催しにしては相当盛況があり、俺は気になって遠くで初心者ペースを覗くと、人混みの間でチラリと彼を見つけた。
「彼方さん?」
「あ、本当ですね。そう言えば、デュエルスペースでの初心者講座を請け負うと言ってましたね」
そういえば彼方さんもこの学校の生徒なんだっけ。
確か外部進学でこの学校に入学し、成績優秀だから学費も免除された待遇を持っているのだとか。少し現実離れしてる事情だと今まで思っていたがこうして彼方さんをここで見れた事でその現実離れは消え、彼方さんの凄さを改めて知った。
そんな彼方さんが端目で俺と花音を目撃すると、少しだけ手を振るだけで直ぐに目の前にいる初心者に対し、丁寧なルール説明をしていた。
「彼方さーん♡対象を取るのと選ぶってどう違うのですか?」
「こっちも聞きたいです〜どうしてサイクロンでカードを破壊したのに効果が発動するのですか?」
「今は私の番ですわ! すみません彼方さん、このカードの使い方なのですが……」
特に女子生徒からの熱い要望が多く、彼方さんは嫌な顔1つせず、丁寧に教えていた。流石彼方さんだ。
やがてクラスメイトの男子生徒が交代時間を知らせ、彼方さんは申し訳なさそうに席を立つと、女子生徒は名残惜しく彼方さんを見送った。
そんな彼方さんは近くにいた天音ちゃんと手を繋ぎ、こっちに来た。
「やぁ花衣くん、花音さんと文化祭デートか?」
『違います』
「お前が否定するのかよ」
俺が言う前にティアドロップが神速で否定し、彼方さんは「相変わらずだ」と言っているかのように笑った。
「天音、花衣くんと花音さんだぞ」
「久しぶり、天音ちゃん」
人見知りな天音ちゃんに威圧感を与えないように膝を曲げ、目線を合わせるように挨拶した。
「あっ……あぅ、久しぶり。花衣お兄ちゃん」
天音ちゃんは小さいながらも挨拶を返し、最初の頃は目も合わせてくれなかったらよくぞここまで成長したものだ。
『天音ちゃんだ! 久しぶりー!』
「あっ、久しぶり……! ストレナエちゃん」
天音ちゃんを見たストレナエ達は、実体化せず霊体化のままで天音ちゃんの隣にたち、天音ちゃんもストレナエ達に会えて喜んでいた。
「やっぱり同年代の精霊には勝てないな、花衣くん」
「良いじゃないですか。天音ちゃんも喜んでくれて何よりです。ところで、天音ちゃんはここの生徒なんですか?」
「いや、天音は別の小学校だ。俺が帰るまでは学校内にある一時預かり所で居てもらってる」
「大変ですね……」
「でもまぁ、ああして精霊と話せているんだ。この調子でクラスメイトの友達も出来れば良いんがな……」
「やっぱり、まだ人見知りは治りませんか?」
「まぁな……」
兄としては精霊だけじゃなく普通の人間との交流と深めて欲しいと願っている彼方さんとは裏腹に、天音ちゃんの人見知りはまだまだ健在だ。
そもそも天音ちゃんがこれ程人見知りなのは、幼い頃誰かに誘拐されたと彼方さんが言っていた。
故に人に対しての警戒心が大きくなるのは無理もないだろう。
だがストレナエ達とは打ち解けてるんだ、いずれは解消するに違いない。
「なにか人と接するきっかけがあればは」
彼方さんはそう呟き、きっかけと言ってもそもそも天音ちゃんから人から遠ざけるのが問題だ。出来れば同年代で活発な……同姓、つまり女の子が望ましいけど、そんな子はいるだろうか。
望み薄な考えにふけっていると、急に誰か俺の名前を叫んだ。
「あれ? 花衣お兄ちゃんだ!」
小さな女の子が俺の名前を呼び、どこから聞こえたのかもう一度廊下を見渡すと、兎のように小走りでこっちに向かっていく女の子が見えた。
少し違うがこの学校の制服と雰囲気が似ている制服を着こなしながらも、ワンポイントの兎のヘアピンに、薄い水色の三つ編みされたサイドテールを肩に引っ掛けるような髪型の女の子が、俺に向かって飛びかかってきた。
思わず女の子を受け止め、それを見たティアドロップ達と花音はショックを受けたかのような顔を浮かばせ、女の子に向けて怒るに怒れない複雑な感情を向けていた。
そりゃあ小さな女の子に怒鳴る程ティアドロップ達は大人気ない……のか? まぁ我慢している方だろう。
それにしてもこの女の子……どこかで見たような気がするなと思ったと同時に女の子は顔を上げ、久しぶりの再会を喜んだ。
「久しぶり! 花衣お兄ちゃん!」
「あ……
「せいかーい! ねぇねぇ何でここに居るのー? ここの生徒じゃないよね?」
顔を見て思い出した。この子は
まさかここの生徒とは考えもせず、思いがけない再会に戸惑った。
「俺はこの花音って人に招待されて来たんだ」
「この制服は初等部の子ですね。初めまして
「うん、よろしくー! そっちの人は?」
「俺は彼方。覚えてないかもしれないが、ロマンス・タッグデュエルで一目は見たんだよ」
「あ、思い出した! あのおっきくて綺麗なドラゴン使った人だ! がおーって!」
可愛らしく
「ねぇねぇ、そっちの子はだれー?」
「ひぅ!」
天音ちゃんは彼方さんの後ろに隠れてしまったが、
追いかけられる天音ちゃんは涙目になりながら彼方さんの周りを回って
「ねーねー! 何で逃げるのー?」
「なんで追いかけるの!?」
「そっちが逃げるからじゃーん!」
彼方さんの周りで鬼ごっこが始まってしまい、彼方さんは苦笑いしながらも天音ちゃんの腕を掴み、そのまま抱き上げて鬼ごっこを止めた。
「こら、廊下を走っちゃダメだろ」
「だって……」
「ごめんね。ええと、
「全然いいよ! 鬼ごっこ楽しかったし」
「ごめんね。あっ、そういえば君は初等部なんだよね? デュエルはやってるかい?」
「うん! ほら、私のメルフィーデッキ!」
「
「お兄ちゃん!?」
いきなりのデュエルに天音ちゃんは体が飛び上がる程に驚き、目頭に溜めていた涙が溢れ出させていた。
「むむむむむ無理だよ! 私がデュエルなんて無理だよー!」
「なんで? 面白いよ! タッグデュエル! やろうよデュエル!」
「でも彼方さん、タッグデュエルって事は彼方さんもペアを組む必要がありますよね?」
「いや、俺1人で天音達とデュエルする」
彼方さんは笑みを浮かべデッキを取り出し、今からでもデュエルしようとしていた。
だが天音ちゃんは乗り気では無く、そもそもデッキすら持っているのか怪しかった。
「彼方さん、天音ちゃんってデッキ持ってるんですか?」
「あぁ。天音は【クリボー】を使ってる」
クリボーって……あのクリボーか? 確かにクリボーは種類があるが、あれでデッキが組めるのか……どうやって攻めるのか分からず、少しを興味を持ってしまった俺は天音ちゃんには是非デュエルして貰いたいと思った。
「無理無理無理!! 私なんか無理だよ!」
いやいやと天音ちゃんはデュエルは嫌がっており、思うように話が進まない事に彼方さんは頭を悩ませた。
これには花音も同情してしまい、思わず彼方さんにデュエルする事を止めさせようとしていた。
「彼方さん、無理にやらせなくてもいいのでは……」
「いや、是か非でもやらせたい。きっかけが出来ましたからね」
「きっかけ……?」
だが彼方さんはこのデュエルをやらせてたがっていた。
(まさか、彼方さん。天音ちゃんと
さっき話した、天音ちゃんが人を信用出来るきっかけになると考えているのなら、協力したのは山々だが……天音ちゃんがあの状況じゃ、誰が何を言っても聞かないだろう。
そんな天音ちゃんの頭を彼方さんは優しく手を置き、ゆっくりと頭を撫でて諭すように話した。
「天音、これはお前が絶対やるべき事なんだ。お前は……そろそろ人ともう一度接しないとダメだ」
「でも……」
「ねぇねぇ天音ちゃん、私とデュエルするの……嫌?」
悲しませた罪悪感なのか、それとも彼方さんに言われたからか、もしくは自分の中で無自覚にこのままではダメだと思っていたのか分からないが、天音ちゃんは
「や、やってみる。私、この子と一緒にお兄ちゃんとデュエルする」
天音ちゃんは自分のデッキを彼方さんに突きつけるように取り出し、そのデッキは精霊に愛されている証拠なのか、光り輝いているように見えた。
オリカをまとめた章が欲しい?
-
欲しい!
-
別に( *¯ ³¯*)