六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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お久しぶりです。
今年の四月から新社会人となり、社会の波に揉まれまくっている白だし茶漬けです。

慣れない環境に身を置き、投稿頻度に間が置いてしまいますが、これからも応援してくれると嬉しいです。

社会人となって、自分で扱えるお金が多くなったら、依頼とかでこの小説の挿絵みたいなものも、いつか出したいですね


兎と龍と星々と

 

 体育館が歓声で埋め尽くされていき、3人のデュエルの開始を待ち望んでいた。

 

 最も求めているのは、彼方さんが持つレゾンカードを見たがっている。

 

「彼方様〜!! 今日も凛々しいですわ〜!!」

 

「レゾンカードを見せてくれぇぇ!!」

 

「彼方! 彼方! 彼方!」

 

 観戦席から彼方さんのコールが鳴り止まず、体育館が震え上がっている程の熱狂だった。

 

 俺たちはその様子を特別待遇の3階席から見下ろしていた。その様子を見た花音はあまりの熱狂に充てられのか、汗を流しながら制服のボタンを少しだけ外した。

 

「ふぅ〜凄いですね、彼方さんの人気は」

 

「彼方さんはいつもあんなに人気なのか?」

 

「ええ。成績優秀で人当たりも良くて、顔も整っているので嫌われる理由が見当たりませんからね」

 

「……流石彼方さん」

 

 ステージにいる彼方さんは歓声に応えるように観客たちに手を振るファンサービスをし、ファンサービスを受けた女性達は黄色い声を上げた。

 

「まるでアイドルだな」

 

「あっ! でも! 私は花衣さんの方がかっこいいと思ってますよ!!」

 

「え? あ、ありがとう……」

 

 いきなり花音から顔を褒められて困惑しつつも、褒められて嬉しい気持ちが勝り、不意に頬が熱くなって花音と目を逸らし、花音も自分のやった事に恥じているのか、花音も目を逸らして少しだけ気まずい雰囲気になった。

 

『私達が見ているのに花衣様を誑かすのは止めてください』

 

 俺と花音を挟むようにしてティアドロップがジト目で俺を睨んのと同時に、体育館のステージから白い煙が左右噴出されると、煙の向こうからアクロバティックに前転しながら現れた女性の姿が目に映った。

 

「文化祭の催しだったとしても、デュエルある所に私あり!! このデュエルの実況は私『Mix』が務めます!」

 

「あの人本当にどこにでも出てくるな……」

 

 もう驚く事すらしなくなり、Mixさんは対戦するデュエリストの紹介に移行した。

 

「今回のデュエルは2対1のデュエル! 1人で戦う決闘者は、レゾンカード所持者の星空彼方! 相手の行動を先読みし、銀河眼(ギャラクシーアイズ)の火力で一気に叩くのが彼のスタイル! そんな彼を相手にするのは〜? なんと2人の女の子だぁ!」

 

 Mixさんが左手を伸ばすと同時に、彼方さんの場所と向かい側にあるデュエルフィールドにライトが当たり、2人の少女がライトの前に照らし出された。

 

「まずはこの子! 動物大好き兎乃心咲(うさぎのみみ)ちゃん! うーん小動物のような可愛さだ! 果たしてどんなデュエルをしてくるのだろうか!?」

 

「心咲ちゃん頑張れ〜!!」

 

 ライトの下に照らされた心咲ちゃんは両手で観客達に向けて大きく手を振り、母性や父性本能を刺激された観客達は緩い笑顔で応援していた。

 

「2人目はこの子! なんと対戦相手である星空彼方の妹! 星空天音!!」

 

 今度は天音ちゃんがライトに照らされ、観客達も彼方さんの妹という言葉に反応し、どんなデュエルをするのか期待が高まっていた。

 

「彼方の妹!? てことはあの子もレゾンカード持ってるのか!?」

 

「きっと凄いデュエルするに違いないよ! 楽しみ〜」

 

 人が苦手の天音ちゃんは無数の観客達に見られてプレッシャーを感じてしまい、観客達の視線に耐えきれずにとうとう心咲ちゃんの後ろに隠れてしまった。

 

「おや? 恥ずかしがり屋ですかね? 初々しいしくて可愛らしいですね〜!」

 

 天音ちゃんの性格を悟ったMixさんは天音ちゃんに負担をかけ無いようにそれ以上何も言わずにいた。

 

「ではここでルール説明です! 今回はハンデとして、彼方選手にはいろいろな制限がかけられます! まず1つに、このデュエルの先行は天音選手か心咲選手どちらかになり、彼方選手はこの2人のターンを終えた後、自分のターンになります!」

 

 つまり必ず3ターン目でようやく彼方さんのターンになるという事か。

 

 現代遊戯王に置いて先行が圧倒的に有利だが、彼方さんが使う銀河眼(ギャラクシーアイズ)の様な後攻でワンターンキルが出来るタイプも多くある。このハンデは彼方さんにとってそこまで痛手では無いと思った矢先、Mixさんがある一文をつけ加えた。

 

「しかも! 彼方選手のデッキは【ハイランダー】っ! 2人の幼き決闘者の前に、どう戦い抜くのでしょうか!」

 

「花衣さん、ハイランダーって何ですか?」

 

「デッキの中身が全部1種類で、同じカードが入ってないデッキの事だ」

 

「それでは望んだカードを引く可能性が低くなりますよね?」

 

「うん。だから結構難しいデッキ構築だ」

 

 ピックアップデュエルの時は目当てのカードが引くことが少なくて四苦八苦したが、その分立てられる戦略も多くなり、妨害も受けずらいのがハイランダーの特徴だ。

 

 彼方さんの事だからレゾンカードを使うとすれば……ドラゴン族主体のハイランダーデッキだと予想はできる。

 

 ドラゴン族をサポートするカードは豊富にあり、ハイランダーでも彼方さんの完璧な戦術が見れる筈だが……銀河眼(ギャラクシーアイズ)のハイランダーは強みを失うのが大半だ。

 

 銀河眼(ギャラクシーアイズ)カードの中には、特定条件を満たせば、Noのモンスターの攻撃力を倍にさせるモンスターがいるが、その為には銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトンドラゴン)が手札かデッキにいる必要がある。

 

 つまり、彼方さんの今のデッキではワンキルはほぼ不可能。2人の猛攻を耐え凌ぐ事ができるかどうかが彼方さんの勝利に繋ぐのは間違いない。

 

「それでは早速初めて行きましょう! デュエルフィールド起動!」

 

 Mixさんは左手を上げると同時にフィールドが虹色に光り出すと、モンスターゾーンや魔法・罠ゾーンがステージの上に浮かび上がるように表示された。

 

 随分と大掛かりなソリッドビジョンに観客達は声を上げ、今か今かとデュエルを待ち望んだ。

 

「ねぇねぇ天音ちゃん、どっちから先にやる?」

 

「はぅっ! じゃ……そっちからで良いよ……」

 

「じゃあ私から行く!!」

 

「OK! それでは心咲ちゃんからのデュエルで始めましょう! 観客のお前ら! 準備は良いか!? デュエル〜」

 

「「スタート!!」」

 

 星空彼方vs星空天音&兎乃心咲

 

「行っくよー! 私のターン! まずは永続魔法【メルフィーとにらめっこ】を発動! その効果で、手札の獣僕モンスターをデッキに戻して、デッキから【メルフィー・ワラビィ】を加えるよ!」

 

「ここで心咲ちゃんは手札交換! メルフィーは相手ターンでの妨害を得意とするテーマであり、可愛い顔してエグい効果が満載です!」

 

「えーと、じゃあこれ使うね! 手札の【鉄獣戦線(トライブリゲード)・フラクトール】を墓地に送って、デッキから【鉄獣戦線《トライブリゲード》・ナーベル】を墓地に送るね」

 

「鉄獣戦線《トライブリゲード》か……」

 

 彼方さんはそう呟き、気を引きしめる様に深呼吸をした。

 

 確か鉄獣戦線《トライブリゲード》って空も使っていた記憶があるが、モンスター1体しか召喚しなかったからあまり動きは知らない。あれがどうメルフィーに絡むのか、楽しみだ。

 

「えっと、墓地に送った【ナーベル】の効果でデッキから【鉄獣戦線《トライブリゲード》・キット】をデッキから墓地に送ってー、【キット】の効果でデッキから【鉄獣戦線《トライブリゲード》・ケラス】を手札に加えるよ!」

 

「1枚から2枚のカードを墓地に送るかつ1枚を手札に! これは爆アドですねぇ!」

 

「まだまだ〜! 手札の獣族モンスターを1枚墓地に送って【ケラス】を特殊召喚! そして【ケラス】の効果発動! 墓地の獣族モンスターを4体墓地に送って、その数と同じリンク数のモンスターをEXデッキから特殊召喚できるよ!」

 

 4枚除外したということは……一気にLINK4のモンスターを特殊召喚できるということか。ここまで短い手数で大型リンクモンスターを出せる所まで腕を磨いた心咲ちゃんの成長具合に思わず脱帽した。

 

 焔の話では攻撃力0のモンスターを通常召喚したりと、初心者にありがちな事をばかりしていたと聞いていたが、今の心咲ちゃんからはそんな様子は無い。

 

 心咲ちゃんは右手の親指と人差し指で輪っかを作り、それを口に入れて優海甲高い指笛を吹いた。

 

「こーい! シュライグー!!!」

 

 指笛に誘われて来るように、体育館の天井から鷹のような片翼を羽ばたかせ、自分の全長よりも大きい銃を背負ったペストマスクのモンスターが心咲ちゃんの前に現れた。

 

 あれは……空が使ったモンスター、シュライグだった。

 

 鉄獣戦線シュライグ

 LINK4/リンク/鳥獣族/ATK3000

 

「出たー! 鉄獣戦線《トライブリゲード》のエースモンスター、シュライグだぁぁ!!」

 

「私はカードを1枚伏せて、さらにエンドフェイズ時手札の【メルフィー・ワラビィ】を守備表示で特殊召喚!」

 

「ここで【メルフィー】の共通効果であるエンドフェイズ時の特殊召喚で盤面を展開! 次は天音ちゃんのターンです!」

 

「わ、私のターン……えーと、えっと……じゃあ、【リンクスレイヤー】を特殊召喚して、魔法カード【ティンクルファイブスター】を発動!」

 

 フィールドのリンクスレイヤーが5つの星へと姿を変えると、それぞれの星から色違いのクリボー……いや、クリボー5兄弟と呼ばれる5体のモンスターが現れた。

 

「効果で【クリバー】【クリビー】【クリブー】【クリベー】【クリボー】を特殊召喚!」

 

「おっと天音ちゃんが使うのは【クリボー】だ! ダメージを無効にする効果が多く、これは長期戦になるか!? それとも彼方選手のドラゴンが殲滅するのか!」

 

「わ、私は【クリベー】を素材に【リンクリボー】をリンク召喚!」

 

 リンククリボー

 LINK1/リンク/サイバース族/ATK300

 

「えーと、カードを2枚伏せてターンエンド……」

 

 2ターン目終了時点

 

 星空彼方:LP8000

 手札5 墓地0 除外0 デッキ35

 □□□□□

 □□□□□

 ① □ ⑧ □

 ②③④⑤□ □⑨□□□

 □□⑥⑦□ □□⑩⑪□

 星空天音:LP8000

 手札:1墓地:3除外:0デッキ:29

 

 兎乃心咲:LP8000

 手札:3墓地:0 除外:4 デッキ30

 

 ①:リンクリボー

 ②:クリバー(守備表示)

 ③:クリビー(守備表示)

 ④:クリブー(守備表示)

 ⑤:クリボー(守備表示)

 ⑥⑦:伏せカード

 

 ⑧:鉄獣戦線シュライグ

 ⑨:メルフィー・ラビィ

 ⑩:メルフィーとにらめっこ

 ⑪:伏せカード

 

「さぁこれで天音ちゃんと心咲ちゃんの盤面は強固となりましたが、ハイランダーデッキの彼方さんはどう立ち向かうのか!?」

 

「俺のターン、ドロー」

 

 いよいよ彼方さんのターンとなり、彼方さんは天音ちゃんと心咲ちゃんの盤面をじっと見ていた。

 恐らく、手札にあるカードから最善の展開を頭の中で考え込んでいるに違いない。

 

「まずは魔法カード【超再生能力】を発動。次に手札を1枚コストに魔法カード【ドラゴン・目覚めの旋律】を発動。デッキから攻撃力3000以上かつ守備力2500以下のドラゴンを2体手札に加える」

 

「ここでドラゴン族専用のサーチカード!! 果たしてどんなカードを加えるのか!?」

 

「俺が加えるのは【銀河眼の光子竜】と【青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)】を手札に加える」

 

「ここで【青眼(ブルーアイズ)】が来たァ!」

 

「次に魔法カード【トレードイン】発動。手札の青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)】を捨て、2枚ドローする」

 

 累計4枚のカードを引き込んだ彼方さんだが、ドローしたカードを見た瞬間苦笑いを浮かべていたのが見えた。

 

 やはりハイランダーだから望んでいたカードが来ないのが大半だろうか、相手の盤面を見てキツそうな雰囲気を醸し出していた。

 

「キツイなこれ……手札の【銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)】を捨て、【銀河戦士(ギャラクシー・ソルジャー)】を特殊召喚する」

 

「ふふーん、特殊召喚したから【ワラビィ】の効果発動! この子を手札に戻して【メルフィー・パピィ】と【メルフィー・キャシィ】をデッキから特殊召喚!」

 

 ワラビィのお腹の袋からパピィとキャシィが飛び出すと同時に、ポニィが手札に戻っていった。

 

「そして獣族が特殊召喚されたから【シュライグ】の効果でそのモンスターを除外するよ!」

 

 シュライグの銃口が銀河戦士(ギャラクシー・ソルジャー)に向けられた瞬間、1発の弾丸が彼方さんのモンスターを貫き、光となって霧散した。

 

「だが特殊召喚した効果は発動している。効果で俺は【銀河騎士(ギャラクシー・ナイト)】を手札に加える」

 

「最初に加えたカードを全て墓地に……?」

 

 確かにドラゴン族は墓地のカードを利用できるものがあるが、折角手札に加えたカードをわざわざ墓地に捨てる行動に俺だけではなく、観客達も全員ざわめき始めた。

 

 単なるプレイングミス? 彼方さんに限ってそんな事は有り得ないと思うし、銀河騎士(ギャラクシー・ナイト)は召喚した時に墓地の【銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)】を特殊召喚する事ができるモンスターだ。

 

 だが彼方さんはその後の動きはせず、手札と相談するように睨んでいた。

 

(今出せば間違いなく除去される。取れる選択肢は……これだな)

 

「永続魔法【銀河百式】を発動。発動処理としてデッキから【フォトン・エンペラー】を墓地に送って効果発動。俺の墓地に【ギャラクシー】モンスターがいるから、こいつを墓地から特殊召喚だ」

 

「特殊召喚したから【キャシィ】の効果! 手札に戻ってデッキから【メルフィー・ラッシイ】を手札に加えて、【ポニィ】の効果も使ってデッキから【カラントーサ】を特殊召喚!」

 

 2匹のメルフィーが手札に戻り、その場に変わったのは白い体毛と草木のようなものを背負った兎だった。

 

「【カラントーサ】が獣族の効果で特殊召喚されたから、相手のカードを1枚破壊するよ! そのモンスターを破壊!」

 

 カラントーサは白い光が溢れ出し、その光に当てられたフォトン・エンペラーが光となって破壊されてしまったが、彼方さんはニヤリと小さく笑った。

 

「かかったな」

 

「ほぇ?」

 

「俺はリリース無しで手札の【銀河騎士(ギャラクシー・ナイト)】を通常召喚し、効果で【銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)】を墓地から特殊召喚する」

 

「えー!!?」

 

 彼方さんのフィールドに2体のモンスターが現れ、【銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)】が高らかに吠えた姿を見た観客達は大きな叫び声を上げ、天音ちゃんは目の前にドラゴンが現れた事でその場でうずくまってしまった。

 

「ひぅ! 怖い……!」

 

「大丈夫だよ! あれ本物じゃないよ!」

 

「本物だもん……」

 

 あまりの迫力で天音ちゃんは泣き出す寸前になり、心咲ちゃんが何とか慰めようとした。

 

 その光景を見た銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)は一歩後ろに下がり、天音ちゃん達を怖がらせまいと少し体をちぢ込ませるように、膝を曲げ、目線を落とした。

 

心做しか銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)が申し訳なさそうな目をしていたような気がした。

 

「更に永続魔法【銀河百式】の効果で……天音、お前のEXデッキを1枚除外する」

 

 銀河眼の光子竜の手の光が天音ちゃんのEXデッキまで伸び、彼方さんの目の前に天音ちゃんのEXデッキが顕になった。

 

「俺は閉ザサレシ世界ノ冥神(サロス=エレス・クルヌギアス)を除外する。これで俺のモンスターをリンク素材には出来ないな」

 

「先程除外されたモンスターはLINK5の大型モンスターですが、相手モンスター1体をリンク素材にする事もできる除去効果を持っているモンスターです! これは相手の攻めを削った良いプレイングです!」

 

 天音ちゃんのカードが1枚除外され、攻め手のひとつを失った。

 

 だが忘れてはならないのがこれは2対1のデュエルだ。攻め手を1つ潰したとしても、天音ちゃん達のダメージは少ない。

 

 それに心咲ちゃんのフィールドには攻撃力3000で、特定のモンスターを特殊召喚すると相手モンスターを除外出来るシュライグがいる。彼方さんはまずアレをどうにかしなければ勝機は薄い。

 

「更に俺は【銀河騎士(ギャラクシー・ナイト)】と【フォトン・カイザー】をエクシーズ召喚!」

 

「ここでエクシーズ召喚! しかしこの素材では得意のワンキルコンボには届きません!」

 

「だから俺が召喚するのはこいつだ! 来い! 【No.90 銀河眼の光子卿】!」

 

 No.90 銀河眼の光子卿

 ランク8/エクシーズ/光属性/戦士族/ATK2500/DEF3000

 

 フィールドに銀河と思わせるような鎧を纏った騎士が現れ、シュライグと騎士の睨み合いが続いていた。

 

 確かあのモンスターは……モンスターの効果を無効にする効果がある。

 

 だが今の状況で出してもその恩恵は薄いと感じてしまう。

 

 何故なら、ここで攻撃したとしてもあの攻撃力じゃ倒せるのはせいぜいクリボー達やカラントーサの様な小型モンスターだけ、彼方さんが倒すべきなのは攻撃力3000で対象に取らない除外の効果を持つシュライグの筈だ。

 

 伏せカードを警戒していた線もあるが……彼方さんの意図は分からずじまいだった。

 

 そんな疑惑を吹き飛ばすようなカードを、彼方さんは残り2枚のカードから1枚を取り出した。

 

「俺は儀式魔法【遍く星雲の集い(コズミック・ジラーチ)】を発動! 

 

「!?!?」

 

 見た事も聞いた事も無い儀式魔法だが、あれは確かに彼方さんのレゾンカードには違いない。だが名前が少しだけ違うし、モニターに映し出されているカードテキストは大分違う。

 

 レゾンカードだからか、何故か心がざわめき、観客達も見たことないレゾンカードでざわめいていた。

 

「なんだあのカード……」

 

「彼方さんの新しいレゾンカードとか?」

 

「でも名前似てるぞ……?」

 

「こ……これは新たなレゾンカードなのか!? その効果は一体なんなんだー! 彼方選手ー!!」

 

「すぐにわかるさ。俺は【銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン)】と【銀河眼の光子卿(ギャラクシーアイズ・フォトン・ロード)】で儀式召喚!」

 

 2体のモンスターの周りに星々が煌めき、2体のモンスターが溶け合っていく。

 

 溶け合ったモンスターは星が瞬く体を持ったドラゴンへと変わり、星の瞬きがこの体育館全てへと広がっていき、体育館がまるで宇宙かのようになった。

 

「銀河を超えし天翔る星の竜よ、遍く願いを糧にし、今ここに闇を照らす願いの化身となれ! 【|銀河心眼の光子竜《コズミックアイズ・ギャラクシー・フォトン・ドラゴン》】!」

 

 銀河心眼の光子竜

 レベル10/儀式/光属性/ドラゴン族/ATK4000/DEF2500

 

「わぁ……綺麗なドラゴン!」

 

「うおおかっけぇ!!」

 

 一般的な目線では賛美の声を受けているあのモンスターだが、俺にとっては震えが止まらないドラゴンだ。

 

 輝く星々、血のように流れている宇宙のような体、そして雄々しい爪と目には殺気みたいなものを感じる。

 

 そんな震える右手をティアドロップが、左手を花音はそっと手を重ねた。

 

「大丈夫です花衣様。私が守りますから」

 

「ティアドロップ……」

 

「私も事情は聞いています。微力ながら私もお守りしますから」

 

「花音……あぁ、ありがとう」

 

「私も忘れちゃ嫌ですー!」

 

 後ろからレイが抱きしめ、自分を忘れられない様に首元に唇を重ね、レイの金色の髪からマリーゴールドの香りがふわりと香った。

 

「忘れてないさ。レイも、皆の事も」

 

 後ろに振り返ると、そこにはみんながいた。スノードロップ、ヘレボラス、カンザシ、ボタン、エリカ、ストレナエ、プリム、シクラン、ひとひら、ロゼ、アザレア、カメリア。

 

「今度こそ……忘れないさ」

 

 一度はみんなの事を忘れたが今度こそ忘れない。大切は存在なんだから。

 

「……ふっ、俺のモンスターをダシにしてイチャコラしてるね」

 

 彼方さんに見られていると思ってふと彼方さんの方に目を向けると、彼方さんが一連の流れを見たのか笑っていた。

 

 破廉恥な事はしていないが、妙な恥ずかしさが込み上げて、一瞬彼方さんから目を逸らした。

 

「行くぞ、バトルだ! 俺は【|銀河心眼の光子竜《コズミックアイズ・ギャラクシー・フォトン・ドラゴン》】で【鉄血戦線・シュライグ】に攻撃!」

 

 |銀河心眼の光子竜《コズミックアイズ・ギャラクシー・フォトン・ドラゴン》がシュライグに向けて流星のようなビームを放ち、シュライグは負けじとライフルを打ったが、ライフルはビームの熱に溶けてしまい、シュライグはそのまま戦闘に負けてしまった。

 

 兎乃心咲 残りライフ8000→7000

 

「うぅ〜! けど、【シュライグ】が破壊されたこら効果を……」

 

「無駄だ。【|銀河心眼の光子竜《コズミックアイズ・ギャラクシー・フォトン・ドラゴン》】の効果発動!」

 

「何っ!?」

 

「か、彼方さん!? そのモンスターの効果は今発動は……」

 

「出来るのさ。それが」

 

 Mixさんの困惑を晴らすかのように、彼方さんは説明した。

 

「【遍く星雲の集い(コズミック・ジラーチ)】の効果で儀式召喚したモンスターは、素材にしたXモンスターの効果を使える。X素材を使わなくてもその効果を使える!」

 

 つまり、銀河眼の光子卿(ギャラクシーアイズ・フォトン・ロード)の効果を受け継いだという事か……。下手したら殆どのXモンスターの効果を使えるのはとんでもなくないか? 

 

 しかもカード効果を受け付けない効果もあるから、絶対に無効にされない……厄介だな。

 

「まだ終わらないぞ。墓地の【ブルーアイズ・ジェット・ドラゴン】の効果発動。フィールドのモンスターが効果・戦闘で破壊された時、こいつを特殊召喚する」

 

「ええ!? そんなモンスター……いつ」

 

「最初に発動した【ドラゴン・目覚めの旋律】のコストに捨てたのがそれさ。そして【トレード・イン】で捨てたのは【青眼の白龍】だ。それで【ジェット・ドラゴン】の効果を発動出来たのさ」

 

 ここまで見越して墓地に行かせるカードを選んでいたのか……計算高いと言うより、度胸がすごい。

 

 忘れているかもしれないが彼方さんの今のデッキはハイランダーだ。望んだカードを引き当てることすら難しいこのデッキで、彼方さんはここまでの展開をした。

 

 今は手札を全て使い切ってのこの盤面だが、彼方さん本来のデッキならもっと強固な盤面を出来上がっていた筈だ。恐ろしいな……彼方さん。

 

「そして【ブルーアイズ・ジェット・ドラゴン】で【クリビー】に攻撃だっ!そしてこのダメージ計算時、【クリビー】を手札に戻す!」

 

「させないよ!手札の【メルフィー・ラッシィ】の効果で、手札の【キャシィ】でシンクロ召喚するよ!」

 

「何っ!?相手ターンにシンクロ召喚だと!?」

 

彼方さんは驚いているが、わざとらしい演技だった。多分、言いたかっただけだろう。

 

「来てー!レベル4【うきうきメルフィーズ】!効果で【ジェット・ドラゴン】を手札に!」

 

「やるな……俺はターンエンド。そしてこのエンドフェイズ【超再生能力】の効果で、3枚ドローだ」

 

 3ターン目終了

 星空彼方:LP8000

 手札4 墓地10 除外1 デッキ26

 □□□□□

 □□⑫□□

 ① □ □ □

 ②③④⑤□ □□□⑧⑬

 □□⑥⑦□ □□□⑩⑪

 星空天音:LP8000

 手札:1墓地:3除外:0デッキ:29

 

 兎乃心咲:LP7000

 手札:3墓地:2 除外:4 デッキ28

 

 ①:リンクリボー

 ②:クリバー(守備表示)

 ③:クリビー(守備表示)

 ④:クリブー(守備表示)

 ⑤:クリボー(守備表示)

 ⑥⑦:伏せカード

 

 ⑧森の聖獣カラントーサ

⑬:うきうきメルフィーズ

 ⑩:メルフィーとにらめっこ

 ⑪:伏せカード

 

 ⑫:銀河心眼の光子竜

 

 

「さぁターンが1周したぞ!? 彼方さんの場のモンスターは1体だけですが、強固な耐性を持った【銀河心眼の光子竜】が存在します! 果たしてこの盤面を小さな女子達はどうするのか!?」

 

「さぁ、どうする?」

 

 彼方さんはまるで突破される事を待ち望んでいるかのような笑顔を向けていた。

 

 だが、彼方さんのモンスターは一筋縄では行かない。

 

 2度も戦ったから分かる。彼方さんを倒すにはそれ相応の奇跡が必要だ。

 

 その奇跡を天音ちゃんと心咲ちゃんはどう引き寄せるか……頑張れ、天音ちゃん。

 

「うぅ……勝てるのかな……私」

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