六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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今回はデュエル描写はあれど、デュエル回ではありません。
一応オリジナルカードを展開しているので後書きにて記載しておりますー


光あるところに深淵あり

 

 夜空のデュエルアカデミアの元、この夜空を星のように威光を放った女がいた。

 

 俺の事を抹消しようとする強い目はまるで剣に突き刺されるような痛みさえも感じられる。

 

 今ここで、奴とデュエルが始められようとしたが俺の手にはデュエルディスクもなければデッキも無い。

 

 俺のデッキは……別れの意味合いを込めてティアドロップ達に渡したからだ。俺にはもう必要無いし、なんならここで死ぬつもりだ。

 

 もう誰も傷つけたくない、だけど俺が生きている限り皆がまた傷ついてしまう。

 

 だったらもう居なくなる事でしか守ることが出来ないじゃないか。デュエルなんてする必要は無い。

 

 そう……思っているはずなのに、俺の右手にある黒い闇が溢れるデッキがデュエルをしない事を許さなかった。

 

 黒いデッキを手に持ち、カードを確認するとカードは闇に塗りつぶされて何も見えなかった。

 

 だがただ1つ、【ダークネス】というカードを除いて。

 

 この【ダークネス】だけはハッキリと見えていた。そして、これを使ったデュエルも覚えている。これを使って俺はデュエルをした。

 

 いや、違う。俺じゃない、ダークネスだ。どうしてか自分自身をダークネスだと思い込んでしまった。俺はダークネスの依代……ダークネス本人では無い。

 

 首を振ってさっきの考えを振り払い、その弾みで俺の右腕にはいつの間にか黒いデュエルディスクが付けられていた。

 

 デュエルディスクと言うには禍々しく、最早影そのものと言ってもいい物だった。

 

「さぁ、デッキという剣を向けろ。私がお前を消してやる」

 

「俺は……デュエルするつもりなんて」

 

「ならそこで木偶の坊になっていろ。今ここで、お前を消す。それが私の使命だ」

 

 白夜はデッキからカードを引き、デュエルは俺の意思関係なく始まった。

 

 ﹁桜雪花衣 vs 天道白夜﹂

 

「私のターン。手札からフィールド魔法【闇を消し去る光の楽園(ルクス・ペイン・サンクチュアリ)】を発動」

 

 白夜が聞いた事ないフィールド魔法を発動すると、白夜の背後には巨大な翼が神々しく羽ばたく空飛ぶ要塞が現れ、要塞が輝く光にデュエルアカデミアを包んだ夜空が昼間の様に照らし出された。

 

「何だ……? あのカードは」

 

「更に私は手札から魔法カード【光が生まれた原初の輝き(ルクス・オルトゥス)】を発動。この効果により、私は次のバトルフェイズをスキップする代わりに、もう一度ドローフェイズを行う事が出来る」

 

「もう一度ドローじゃなくて、ドローフェイズをもう一度だと……?」

 

 今までこんな効果を持ったカードなんて見た事ない。あれがレゾンを束ねる者の力って事か。

 

 関心している場合じゃない、白夜の周りに小さな光がデュエルディスクに触れるとデュエルディスクは更に輝き、それと共鳴するようにフィールド全体に鐘の音が鳴り響いた。

 

「私のドローフェイズ時、フィールド魔法【闇を消し去る光の楽園(ルクス・ペイン・サンクチュアリ)】の効果を発動。通常のドローを破棄する代わりに、デッキから光属性モンスター、または【光】と名のつくカードをデッキから加える」

 

「【光】と名のつくもの……?」

 

「こういう事だ。私はデッキから【光の結界像】を手札に加える」

 

 あれは確か……光属性以外のモンスターの特殊召喚を封じるモンスターであり、確かに名前には【光】がある。

 

 確かに強力だ。光に関連するからどんなカードでも手に取れる……まさに闇を葬り去る為のカードだ。けど、もう俺には関係ない。

 

「私は【光の結界像】を通常召喚。これで私達は光属性以外のモンスターを特殊召喚できない」

 

「……あぁ、そうだな」

 

「更に私は儀式魔法【流星輝巧群(メテオニス・ドライトロン)】を発動。手札の【竜輝巧-バンα】を墓地に送り、手札の【崇光なる宣告者】を儀式召喚!」

 

 光の城から【崇光なる宣告者(アーク・デクレアラー)】が現れ、その輝く羽が目を潰すほど眩しかった。

 

「更に、墓地の【光が生まれた原初の輝き(ルクス・オルトゥス)】の効果発動。光属性モンスターが召喚・特殊召喚された場合、このカードを除外し、デッキから光属性モンスターの【イーバ】を手札に加える。ターンエンドだ」

 

 1ターン目終了

 天道白夜:LP8000

 手札:1 墓地:2 除外:1 デッキ:30

 □□□□□

 ①□□□② ③

 □ □

 □□□□□

 □□□□□

 

 桜雪花衣:LP8000

 手札:5 墓地:0 除外:0 デッキ35

 

 ①:崇光なる宣告者(アーク・デクレアラー)

 ②:光の結界像

 ③:闇を消し去る光の楽園(ルクス・ペイン・サンクチュアリ)

 

 

「……俺のターン」

 

 黒いデッキからカードを1枚ドローしたが、やはりこのカードも黒く塗りつぶされたかのような闇が溢れており、カードテキストも隠されてしまっている。こんな状態じゃ使う事も出来ない。

 

 見えている手札である【ダークネス】を使えば使えるかもしれない。

 

 けど、俺はデュエルするつもりは無い。このままターンを終えようとすると、頭の中に声が響き出した。

 

 _ダメ! 諦めないで生きて! 

 

「つぁ……! チェイム……なのか?」

 

 さっきドラゴンメイド・チェイムが俺を守ってくれたからそう考えたが、声は何も返事をしてくれなかった。

 

 生きてと言うが、俺が生きてちゃダメなんだ。なんならここでサレンダーする気だ。右手をデッキの上に置こうとすると、光を守った影が俺の腕を掴み、サレンダーをさせないようにしていた。

 

「そんなに俺を戦わせたいのか? けど……俺はこれでターンエンドだ」

 

 _花衣っ! 

 

 頭の中に響く女の声を振り払い、デュエルを放棄した。

 

 白夜の態度は変わらず、俺の事を倒そうと冷たいを目を向けていた。

 

「私のターン。通常ドローを放棄し、デッキから魔法カード【光を導く道標(ルクス・アディーレ)】を手札に加えて発動」

 

 白夜のフィールドに光の道が出現し、道は白夜の後ろにある城へと長く続いた。

 

「このカードを発動した場合、手札を1枚捨てることでデッキから光属性又は【光】と名のつくモンスターを手札に加えられる。……だが、私のフィールドに【闇を消し去る光の楽園(ルクス・ペイン・サンクチュアリ)が存在すれば、そのモンスターを特殊召喚出来る」

 

 実質デッキからモンスターを特殊召喚できるカードというわけだ。どんな奴でも良い。早く終わらせてくれと願っていると、それを叶えてくれるように手早く白夜はカートを手にした。

 

「私は【アルカナフォースⅩⅩⅠ-THE WORLD】を特殊召喚する」

 

 光の道から【アルカナフォースⅩⅩⅠ-THE WORLD】が現れ、モンスターの上にカードが上下にゆっくりと回転していた。

 

「こいつの効果は知っているな? 正位置と逆位置で効果は決まるが……当然正位置だ」

 

 どこかで聞いた事あるようなセリフと共に、ザ・ワールドのカードは正位置で止まった。

 

「これにより、エンドフェイズに2体のモンスターをリリースする事でお前のターンをスキップする。【イーバ】を召喚し、バトルフェイズをスキップさせてターンエンド」

 

 エンドフェイズになった瞬間、【TheWorld】が光り輝き始めると、フィールドにいた【光の結界像】と【イーバ】がフィールドに消えた瞬間、【TheWorld】の中央部分か光り輝いた。

 

 これにより、俺のターンはスキップされ、白夜のターンへと移っていく。

 

 何も出来ないまま、終わってしまう。

 

 だけどどうだっていい。恐らくだがこのターンを終えれば、白夜は総攻撃を仕掛けて俺のライフを0にするだろう。そうなれば……終わる。

 

 これで良いんだと自分に言い聞かせ、瞳を閉じてターンエンドを宣言しようとした…………が、何故か言葉が出なかった。

 

 それどころか、まるで言葉を出すのを躊躇っているように体が震えていた。

 

(ここまで来て怖気付いたのか……俺?)

 

 ふざけるなと自分を叱りながら息を吸い込み、ターンエンドという言葉を言うだけだ。それだけなのにそれが出来ない。

 

 言葉を発するという事を忘れたかの様に、俺の口は言葉を出すのを拒否した。

 

 そんな光景を見た白夜は眉を顰めさせ、目に見える苛立ちを見せた。

 

「どうした、早くターンを終わらせろ」

 

「分かってるっ!! 分かってる……けど」

 

 言葉が出ない苛立ちやわかだまりを白夜にぶつけるが、それで何かが変わること無く、結局ターンを終えるどころか引き伸ばしていた。

 

 自分でも訳が分からない行動に思わず地面に倒れるように座ってしまい項垂れた。

 

「……どうしたんだよ、何でだよ」

 

 俺が生きてちゃ大切な人が傷つく。だから生きてちゃいけないんだ。

 

 俺のせいで誰かが傷つくのは嫌だ。だから傷つかないように消えるしかない。

 

 だからもう、こんな気持ちは抱くな。

 

 会いたい、触れたい、感じていたい。生きていたい。

 

 全部捨てろ。暗い暗い闇の中に全部捨てて忘れろ。

 

 頼む……忘れてくれ……俺。

 

 自問自答を繰り返す。命を終わらせる為に。大切な人を気づかない為に。何度も、何度も、何度も、懇願するように自分に言い聞かせた。

 

 だけど、それを受け入れない自分がいて、自問自答を繰り返す度に大切な人達の姿が目に浮かんで思わず涙が零れ落ちる。

 

「……皆に会いたい」

 

 ぽつりと呟いた言葉を引き金に、心の内側に閉じ込めた感情が爆発したと同時に、心の中の深淵が俺を覗き、青い眼を光らせた。

 

 ﹁それがお前の心の闇か﹂

 

「……えっ?」

 

 青い光がこの空間を包み込むように広がり、あまりの眩しさに目を閉じた。

 

 

 

 

 ……どれくらい経ったのだろうか、ゆっくりと目を開けると、そこには黒い空間では無くいつも通り見慣れた部屋が目に映った。

 

 見覚えのある天井、黒いベッド、少し明るめの茶色い机にそれに合わせた色の椅子に、青い絨毯が敷かれている床に扉……間違いない、ここは俺の部屋だった。

 

 よく見ると腕にデュエルディスクも無い。

 

 俺は……いつの間にデュエルを終えたのだろうか。とにかく、動くしか俺には選択肢は無かった。

 

 窓の外は明るく、机の上に置いてある時計を見ると朝の8時を指していた。

 

 いつもだったらティアドロップ達が下の階で朝の準備やらしている筈だが、その気配が無い。

 

 階段をおり、リビングに足を運ぶと……そこには誰も居なかった。生活している様子も無く、だだっ広い静かなリビングがあるだけだった。

 

「どういう事だ……?」

 

 胸騒ぎを覚える中、俺は慌ててリビングと庭を繋ぐ大窓を開けて庭を見ようとした。

 

 あそこには、ティアドロップ達がお茶会に使うテーブルがあった筈だが、何も無かった。テーブルがあったという痕跡も無く、まるで最初からそこには何も無かった。

 

 何故? なんで……? 

 

 言葉にならない焦りが身体中の体温を奪っていくかのように血の気が引き、目眩が襲いかかった。

 

 視界が狭まり少しづつ暗闇に支配される中、ふと隣の家に目に映る。

 

「そうだ……レイ達は!?」

 

 庭から直接家に出てレイ達が住む家のインターホンを鳴らす。しかし、鳴らしてもインターホンから声は聞こえず、何度も何度もインターホンを押しても、レイ達からの反応は無かった。

 

「レイ! ロゼ! アザレア! カメリア! 居ないのか!?」

 

 インターホンが聞こえないと思い、扉を強く叩いて俺が来たと知らせるが、家の中は無言を貫いた。

 

 嫌な予感が胸の中でざわめく中、地面を蹴って歩く足音が聞こえる。

 

 足音はまるで洞窟の中で出しているかのように反響し、足音に目を向けると、3人の男達が和気あいあいと談笑しながら歩いていた。

 

 あれは……焔と空と彼方さんだ。3人で何かは聞き取れない。そうだ、焔達にティアドロップ達がどこに行ったか聞いてみよう。

 

 焔達の名前を呼び、声をかけたが焔達は聞こえていないようだった。距離が遠かったか? けど、お互いの顔が見れる程度しか離れてない。

 

 俺の声が小さいだけかと苦笑いしながら焔達の元まで走り、また焔の名前を呼んだ。

 

 だが、焔達は振り返らなかった。それどころか俺の声なんて聞こえない様に、無視するように話を続けていた。

 

 無視されてムカッとして1つ文句を言おうと焔の肩を掴むと……俺の手は焔の方をすり抜けた。

 

 声にならない声が渦巻き、自分の手を見る。

 

 何も無い、ただの普通の血の通った手。なのに触れられない。目の錯覚で本当は少しだけ遠かったと思いながらも、今度は焔達を回り込んで声をかける。

 

 だけど気づかない、気づいてくれない。まるで目の前に俺が居ないかのように。

 

 やがて焔達が目の前に来てあと一歩でぶつかりそうなところで後ずさるが、焔達は止まらずオレは身構えた。

 

 ぶつかる……と次にくる衝撃に備えると、その衝撃はいつまで経ったも来ず、それどころか焔達の体が俺の体をする抜けた。

 

 見間違いじゃない、まるで透明人間になった自分の体が信じられず、何度も焔達に声を出す。

 

「焔! 空! 彼方さん! 俺が見えないのか!?」

 

 声を荒げても焔達は届かない。引き止めようにも体がすり抜けて止まらない。

 

 やがて焔達は曲がり角に消え、今度は花音、霊香、雀、カレンさんがいた。四人で買い物をしていたのか、それぞれの腕には買い物袋があった。

 

「っ……花音!」

 

 名前を呼ぶと、花音だけが振り向いてくれた。良かったと思ったのも束の間、花音は俺を見ていなかった。

 

 何も無い空間2突然振り向いた花音に驚いた霊香が声をかけた。

 

「花音、どうしたの」

 

「今……誰かが私の名前を言ったような……」

 

「えー? 私には聞こえなかったよ」

 

「幻聴では無くて?」

 

 言った。言ったんだ花音。ここに俺はいると声を出しても花音には届かず、花音は俺では無いどこかに目を向けた後、気の所為と呟きながら歩いていった。

 

 誰にも気づいて貰えない。誰にも認知されない。まるで俺が世界に取り残されたかのような気がして体に力が抜け、その場に座り込んで項垂れる。

 

「なんなんだよ……これ」

 

 呟いても何かが変わる訳では無い。けど、何か言わなければこのまま忘れ去られてしまいそうで怖かった。

 

 焔達は俺の事を見えておらず、声も聞こえない。ティアドロップ達も居ない。

 

 世界が少しづつ色を失った中、後ろから女の声が鼓膜を叩いた。

 

「あー! もう、こんな所にいたんですか?」

 

 後ろを振り向くと、そこにはレイがいた。

 

 レイはぷりぷりと可愛らしく頬を膨らませながら怒ってこっちに近づき、グイッと顔を近づかせた。

 

 エメラルド色の目は光り輝いていて、姿が見えていると安心させた。

 

「もう〜今日は私とデートなの忘れましたか? 酷いです!」

 

「デート……?」

 

 そんな約束した覚えは無いが……とにかく、レイと話せて良かった。安心感で胸を撫で下ろした後、声を出そうとした瞬間、俺の中から黒いコートを着た男が現れた。

 

「はぁ? デート? そんなの、覚えてないぞ」

 

 俺の声だが……俺が言った言葉じゃない。目の前に……俺の中から現れた男が言った。

 

 黒いコートをなびかせ、年相応の活発さを備えた彼は俺と同じ顔をしていた。

 

 間違いない、こいつは……カイム。閃刀騎ーカイムだった。

 

 俺の前世らしい彼は、俺の目の前でレイと会話しており、レイはカイム以外見えていないようだった。

 

「しましたよ! この前、ロゼとアザレアとカメリアとデートしたんですから、私にもしてくれないと不公平です!」

 

「あれはデートというか買い物に付き合わされただけだぞ」

 

「そ れ を! デートと言うんです! だから今日は徹底的に付き合わせますから」

 

 レイはカイムの右腕に手を回し、腕にくっつく様にしてカイムに寄り添った。

 

 カイムの体温を感じたレイの表情は幸せに満ち、その顔を見た俺は思わず口を手で抑え、張り裂ける胸を左手で掴んだ。

 

「レイ……! 俺はここだ! ここにいる!」

 

 名前を呼んでも彼女は振り返らない。

 

 叫んでも彼女の耳には届かず、彼女は隣にいる男と共に奥の道へと消えていった。

 

 レイも俺の姿を見えなかった……。絶望という重りが体に載せられ様に膝をつき、灰色の地面を見つめた。

 

 少しづつ黒くなっていく世界の中、一人の幸せそうな微笑む声が鼓膜を叩いた。

 

 氷のように透き通った愛らしい声……間違いない、ティアドロップだ。方向的に俺の家にある庭だ。

 

 急いで家に戻ってティアドロップの姿を見たい一心で走った。

 

 ティアドロップが居るのなら、カンザシ達も居るはずだ。きっと、きっと皆なら俺の姿が見てくれる。

 

 そんな希望を胸に家の庭に足を踏み入れると、さっきまで居なかったティアドロップ達が優雅にお茶を飲んでいた。

 

 1つ1つの美しさが川の流れのように優雅であり、まるで絵に書いたような美しい背景に心を打たれながらも、俺はティアドロップに声をかけようとしたが、先にティアドロップが俺を目にした。

 

 目と目が合って安心して胸を撫で下ろすと、ティアドロップは俺に微笑みかけて椅子からたち、互いの瞳が見れる距離まで近づいた。

 

「あぁ良かった。ティアドロップは俺のことがみえ……」

 

「おかえりなさいカイリ様」

 

「…………えっ?」

 

 カイリ……? 俺の事をそういったのか? 

 

 いつもは花衣って呼んでくれるのに、今日は何でカイリなんだ? 揶揄っているのかと震える声で言おうとした瞬間、俺の中から白い服を来たモンスターがティアドロップの前に現れた。

 

 あれはカイリ。俺の……前世だ。ティアドロップとカイリは目と目が合うと笑い合い、お茶会の席に座って六花達と仲良くお茶会を楽しんでいた。

 

 誰も俺を見ていない。見ているのはカイリだった。

 

 さっきのティアドロップも、俺じゃなくてカイリを見ていた。

 

「みんな……」

 

 ティアドロップ達に触れようとするも、空気を掴むかのようにすり抜け、触れられない。

 

 一方的に楽しいお茶会を見せられ、幸せそうな顔を見た瞬間、胸が張り裂ける程痛くなった。

 

 胸どころか心や体さえも裂かれるような痛みに吐き気もする。

 

 俺であって俺じゃない顔をしたカイリと、心の底から笑っているティアドロップの顔を交互見て更に吐き気が止まらない。

 

 直ぐにこの場から離れないとどうなるか分からない恐怖と、心の奥底に渦巻くどす黒い感情から逃げるように俺は庭を出て道に出る。

 

 道に出た瞬間、我慢した物が一気に俺の口から吐き出された。

 

 気持ち悪い。心が痛い。信じたくない。

 

「う……うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 ごちゃごちゃに黒く混じった感情を吐き出す様に俺は叫んだ。

 

 喉が潰れそうで血の味がする叫びを何度も何度も繰り返し、それでも誰も俺を見ない。

 

 やがて黒い雨が降り注ぎ、周りに黒い人影が俺を嘲笑うかのように見下ろしていた。

 

 ﹁これが、お前の闇ダ﹂

 

「闇……」

 

 ﹁お前は、存在を認められたかッた﹂

 

 ﹁愛されて、愛した。だが、カノジョタチはお前の中に潜む、2つの影を見ていた﹂

 

「違う! 皆は、ティアドロップ達はこの俺、花衣を愛してくれている! そういった!」

 

 ﹁本当に? ﹂

 

「っ……」

 

 黒い雨が降る中、ティアドロップとレイがカイリとカイムと過ごしたあの幸せな顔が頭を過ぎった。

 

 ﹁アイツらはお前を見ていなイ。お前のカゲを見て、愛した。現に、きっかけはその影だ﹂

 

「違う……きっかけはそうでも、今は違う!」

 

 ﹁ならあの姿はなんだ? お前といる時以上に、幸せに暮らしているぞ﹂

 

「それは…………」

 

 ﹁何故なら、あれがあの娘達が望んでいる未来だからだ﹂

 

「望んだ……未来」

 

 ﹁そうだ。一体誰が、空っぽで何も無いお前を愛せるというのだ﹂

 

「空っぽ…………」

 

 あぁ……そうだ。俺の人生って、ティアドロップ達を除くと何も無いや。

 

 息を吸って、食べ物を食べて、寝て、呼吸を繰り返す。

 まるで、【生きる】という作業をこなすロボット……いや、植物だ。

 

 ただ生きるという本能のままに、人生の空白を残し続け、意味もなく生きて意味もなく死ぬ。

 

 一言で表すのなら……虚無。

 

 深淵すら無い暗闇の様な人生で生きてきた空っぽの人間が、桜雪花衣。俺だった。

 

 だから誰も見ようともしない、俺の声を聞かない、存在さえ認知出来ない。なぜなら……無だからだ。

 

 何も無いから、ティアドロップはカイリを見る。レイはカイムを見る。

 

 だったら俺は……なんの為に皆と一緒に居たんだ? 

 

 嫌だ……嫌だ、失いたくない。俺の生きてきた証を失いたくない。もう一度ティアドロップに会おうと立ち上がると、地面から黒い手が俺を掴み、飲みこもうとしていた。

 

「離せぇぇ!! 俺はまだみんなと一緒に……生き……ティア……」

 

 名前を呼ぼうとしても黒い手が俺口の中に入り込み、嘔吐感と嫌悪感が頭の中を支配した。

 

 喋りたくても喋れず、ただ出るのは嗚咽のみ。

 

 ﹁それがお前の闇。虚無が故に、存在の爪痕残そうと愛する人に縋る。醜く、実に深い闇だ﹂

 

 ﹁そしてそれを生み出したのは、愛という光。光があれば、闇はまた濃くなり、光を呑み込む﹂

 

 一筋の光が消え、俺は意識を手放してしまった。

 

 最後に、俺が愛した人達の名前を呼びながら……虚無へと。

 

 

 

「諦めないで」

 

 虚無に意識が堕ちる中、女の声が聞こえると同時にまた一筋の光が俺の胸へと突き刺さる。

 

 痛みは無く、むしろ暖かい光は右手と左手に変わり、俺に手を差し伸べていた。

 

「貴方は確かに愛されてる」

 

「貴方を必要としている人がすぐ傍にいる」

 

 2人の女性の声が聞こえた。暖かくて、優しくて、心が穏やかになれる優しい声。

 

 まるでこれは…………

 

「母……さん……」

 

 俺は2つの手に包まれ、ゆっくりと目を閉じた。

 

 _

 

 __

 

 ___

 

「……どういうつもりだ」

 

 デュエル中、意識を失って倒れた花衣の隣に、黒いメイド服のモンスター、ドラゴンメイド・チェイムがいた。

 

 ついさっきまでは姿を現さずにいたチェイムに驚く様子の白夜だが、白夜はこの場にチェイムの姿を見えている事に対して驚くと同時に、最悪な答えに辿り着いていた。

 

「お前がここにいるという事は、そいつの心の闇を抑えきれなかったという事か」

 

「その通りです。申し訳ございません」

 

「ならすぐそこを退け。トドメを刺す」

 

 白夜はデッキから1枚のカードを取り出し、それをフィールドに出そうとしたその時、チェイムは花衣の前に立って両手を広げた。

 

 白夜は静止する事もチェイムが何故そんな事をする理由も聞かず、モンスターを召喚する手を止めなかった。

 

 デュエルディスクに光り輝くカードが置かれた瞬間、デュエルディスクが眩く光、白夜の城から巨大なドラゴンが現れる。

 

 光そのものと言わんばかりの白い体は神々しく、見るだけさえも拒まれれる。

 

 光のドラゴンが虹色に光を集め、花衣とチェイムのこの世から消滅させる白夜の意志を受け継ぐように、ドラゴンは怒りのままに光を2人に放とうとしたその時、白夜のデュエルディスクに亀裂が走った。

 

「何っ!?」

 

 デュエルディスクの破損は白夜にとっても想定外のようでもあり、白夜は初めて動揺の顔を見せ、白夜の城とモンスター、そしてドラゴンも姿を消してしまい、デュエルは中断という形で終わってしまった。

 

 最も花衣が一方的にデュエルを放棄していたため、デュエルらしいデュエルはしていなかったが、チェイムは命を繋げた事に安堵の息を漏らした。

 

 だがチェイムは警戒は解かずに白夜から目を離さず、そんな白夜は破損したデュエルディスクの残骸を見た後、原因となったカードを手に取った。

 

「まだこの力を制御できるレベルでは無かったか……」

 

 折角のチャンスを踏み潰してしまった後悔と歯がゆさが混じった顰めた表情を見せた白夜は倒れている花衣を睨み、この場を後にした。

 

「そいつはもうお前の知っている花衣では無い。母親もどきの世話はもうやめろ」

 

 チェイムはその場で膝を折り、花衣の頭を自分の膝に乗せて膝枕をした。これが答えだと言わんばかりに、チェイムは眠った花衣の頭をゆっくりと撫でた。

 

 白夜は呆れたため息を吐き出し、何も言わずに光となってこの場から消えた。

 

 白夜が居なくなったせいか、光の空間が闇へと染まり始め、歪み始めた。

 

 空間が黒く染まると同時にチェイムの身体は透けていき、この場から消えようとしていた。

 

「ここは貴方の心。その中にいた私の龍の力もここまです」

 

 手足の感覚が無くなり初め、花衣の頬に触れている指から感じられる筈の体温さえも無くなっていく。

 

「貴方の軌跡をずっと見た。だから、きっと……この心の闇を乗り越えられる」

 

 チェイムは花衣の前髪をどかして閉じた瞳を見つめ、笑顔を向けた後、静かに消えていく。

 

 心の闇を乗り越えられることを信じて。

 

 そして入れ替わるように花衣の目が開くと、今まで闇で隠れていたカード達が地面に散りばめられていた。

 

 ちりばめられたカードをおおっていた闇は消え、花衣の目には六花と閃刀姫のカードが映る。

 

 花衣は重い体で地面を這いずりながらカードを集め、抱き抱えるようにした。

 

「ずっと……俺は……」

 

「花衣様!」

 

 花衣の部屋の扉を蹴破るかのように勢いよく開けたティアドロップの荒げた声が花衣の鼓膜を叩いたと同時に、周りが薄暗い花衣の部屋へと戻った。

 

 今まで夢だったのかとぼんやりと思う花衣に、ティアドロップは花衣を抱きしめた。

 

 体温と息遣いで無事だと分かったティアドロップは更に強く花衣を抱きとめ、花衣もそれに答える様に強く抱きしめ返した。

 

 互いの吐息が肌に触れ、心臓の鼓動が触れ合い、互いの体の境目が分からなくなり、情熱的な抱擁にティアドロップは喜びながらも、ここまでする花衣の事を珍しくも思った。

 

「花衣様? 求めてくれるのは嬉しいですけど……何かありましたか?」

 

「俺……お前達がいないとダメだ」

 

 震える声で花衣は言葉を噛み締めた。

 

「さっき別れてくれとか言った手前こんな事言うのは凄く最低だって分かってるし、自分勝手だって分かってる。けど……俺やっぱり、お前と」

 

 一緒に居たい。と、花衣が言うより先にティアドロップは花衣と唇を重ね、その口を塞いだ。

 

 更にティアドロップは舌を伸ばし、貪る様にして花衣の舌と絡ませる。

 

 熱いキスをいきなり交わされて動揺している花衣をティアドロップはベットの上に押し倒し、逃げられないように両肩を押さえた。

 

「花衣様、私は大変傷つきましたよ? 心にもない別れの言葉を聞かされて心が裂けた痛みを負いました」

 

「……ごめん。だからそれは撤回する、本当にごめん。だから……」

 

 倫理的にも、誰から見ても最低最悪な行動に小動物の様に震え、怯えている花衣の表情にティアドロップは昂りを覚える。

 

 今の花衣はティアドロップを……自分を求めている。何度も何度も願っていた光景を目の前にある興奮を抑え続け、その限界が近づく度にティアドロップは浅い呼吸を繰り返す。

 

 そうでもしないと鎖が切れそうだから。だが直ぐにその鎖は引きちぎられ、欲望のままにまた花衣の唇を犯した。

 

 息が出来ない花衣を無視し、悦楽に浸る。

 

 その悦に浸ったせいで、赤く紅潮する花衣の顔を見てティアドロップはまた感情を昂らせ、身体中に電流が走ったかのように身をよじらせる。

 

 ようやく望んだものを手にしたと確信し、自分の物だと刻みつける様に花衣の首筋に痕を残す。

 

「撤回するのなら今ここで私を求めてください。傷ついた心を貴方で癒してください……ね?」

 

 首筋、腕に口付けし、花衣もそれを受け入れるや否や、痕を残される事に安堵と幸福を噛み締める様に微笑んだ。

 

 自分に見せたことの無い微笑みを向けられたティアドロップは喜びに満ちた涙を見せ、黒いドレスをはだけさせて白く柔らかな肌を露出させる。

 

 ティアドロップのなされるがままに花衣はティアドロップへと手を伸ばし、輪郭に沿うようにして存在を確かめるように頬を撫でていく。

 

 ゆっくりと手を頭の後ろに置き、自分の方へも引き込んでいき、もう一度唇を重ねる。今度は優しく、互いの熱が混じりあっているのが感じられるのが分かるキスだった。

 

 3回目のキスを終え、ティアドロップが少し顔を引くと後ろにいた存在に気づく。

 

 じっとこちらを見つめている目がいくつもあり、それぞれ見た事ある目であり、さっきまでの行為を恨めしそうにかつ羨ましそうに見ていた。

 

 ようやく来たとティアドロップは口に出しながら、くすりと笑った。

 

「これからもずっとずっと私達を愛してくださいね、花衣様」

 

 

 

 

「そして……待っています。貴方の本当の心が戻ってくるのを」

 

 もう一度ティアドロップは涙を零し、その涙は花衣の心に向かうかのように、花衣に零れ落ちた。




闇を消し去る光の楽園(ルクス・ペイン・サンクチュアリ)】フィールド魔法
・このカードが表側で存在する限り、自分は光属性または【光】と名のつくカードしか発動出来ない。

①:自分ドローフェイズに発動できる。通常のドローを行う代わりに、デッキから光属性モンスター、または【光】と名のつくカードをデッキから手札に加える。



光が生まれた原初の輝き(ルクス・オルトゥス)
・このカード名の①②効果は1ターンに1度しか発動出来ない。

①:自分のメインフェイズ1のみこの効果を発動出来る。このターンのドローフェイズをもう一度行う事が出来る。この効果発動後、次の自分バトルフェイズをスキップする。

②:自分の光属性モンスター又は【光】となのつくモンスターの効果が発動した場合発動できる。

墓地のモンスターを対象に、対象のモンスターに記されている名前、種族、レベルをそのカードとして扱う事が出来る。


光を導く道標(ルクス・アディーレ)
通常魔法

①:1ターンに1度発動出来る。自分のデッキから光属性モンスターまたは【光】と名のつくカードを1枚手札に加える事が出来る。自分フィールドに【闇を消し去る光の楽園(ルクス・ペイン・サンクチュアリ)】が表側で存在する場合、手札に加えたモンスターを特殊召喚出来る。

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