六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
「お城〜お宝〜ランランラーン♪」
迷い森の中でカイは黒龍の雛を抱き抱えながらスキップしている姿と対比して、私は重い足と沈み込む感情をを引きずりながら歩いていく。
迷い森の中は薄暗く、道に逸れるだけで生い茂る森の中は見通しが悪い。まるで今の私の心境を現しているかのようでした。
「はぁぁぁ……
しかし、その城に足を踏み入れた人達は皆『白の主のおで迎え』という名の罠に陥り、生きて帰って来た人はほぼ居ないという。
噂ではそんな危険な城を何度も出入りしている冒険者がいると聞きますが……どんな豪胆な冒険者なのでしょうか。会いたいような、会いたくないような……なるべく穏便に済ませたい思いで胸がいっぱいになる。
出来れば帰りたい。すっごく帰りたい。けれど依頼を受けた以上はおざなりには出来ず、覚悟を決めて顔を上げると私の目の遠くには白銀に輝く白の上に目立つオブジェクトがあった。
あれが
身の毛が捩り、鳥肌が立って涙が止まらず逃げ出したいとも思っていますが、カイはむしろ目を宝石のように輝かせ、むしろウキウキしていた。
「お〜! 綺麗だね!」
黒竜の雛も同じ気持ちなのか炎を拭きながら喜んだ声を上げた。
子供の無邪気さは恐れにも勝るのでしょうか……。
その無邪気さが好奇心を刺激して何かあってはならない。私があの子を守らなければならないと奮起し、いざ城に向かうと、城の入口に執事服を着た女性がいた。
(……女性、ですよね?)
自分で言うのも何ですが、私は女性平均身長よりも高い部類ですが、あの人は私よりも少し高いです。
しかも執事服を着ているので男性に見えてしまう。ですが顔の瞼の長さや、僅かに見える胸の膨らみから出てくる服の皺からして女性……の筈です。
執事さんは私たちを目にすると、礼儀良く頭を下げた。
「お待ちしておりました。リカイ様、ハイネ様。私はアリアス。我が主の執事を務めさせて頂いております」
(あ、女性ですね。良かった……)
低めですが確かな女性の声で予想が当たったと安堵し、こちらも同様に頭を下げた。
「ほ、本日はご依頼ありがとうございます。私はウィッチクラフト・ハイネ。今回はリカイの付き人で参りました。……リカイ、挨拶を」
「はい! ウィッチ……じゃない。ウィザードクラフト・リカイです! 今日はよろしくお願いします!」
礼儀良くカイは頭を下げ、満面の笑みをアリアスさんに見せた。
アリアスさんは無表情のまま頭をもう一度下げ、カイはアリアスさんの事をじっと見つめているのを感じたアリアスさんは首を少し傾げた。
「……私に何か?」
「顔に傷があるよ。怪我したの?」
カイの言う通り、確かにアリアスさんは右頬に傷……と言うより、ヒビの様なものがあった。
アリアスさんはヒビのある所を手で触れると、表情を一切変えずに淡々と話した。
「お気になさらず。城の中へと案内します。罠が常時配置されているので、私の後に着いてきてください」
話すつもりは無いという事なのか、アリアスさんは顔の傷について触れずに城の扉に触れ、中を見せた。私たちもアリアスさんの後について行き、白銀の城が棺桶にならないように祈りながら足を踏み入れていく。
まず目に映ったのは城のエントラス。
開けた広場に中央には2階へと続く階段があり、龍の頭を持ったシャンデリアがぶら下がっていた。
見た目は美しいエントラスで罠があるとは思えない。アリアスさんについて行こうと足を踏み入れようとしたその時、アリアスさんの声が耳に入った。
「お気をつけください。3歩先のタイルを踏むと罠が発動しますので」
「は、はい! 気をつけ……」
「気をつけます」と言おうとしたその時、カチッと何かスイッチが起動した音が耳に入り、ゆっくりとそちらに顔を向け、カイがそのタイルを踏んでいた。
「あ、ごめん。何か踏んじゃった」
「ちょっとー!?」
罠を踏んだカイの頭の上に槍が降り注がれ、慌てて私はポーチから布をカイに纏わせ、布を硬質化させて鋼のような硬さを得る。
槍は鋼の布を貫通出来ず、カイは布の中から黒竜の雛と共に顔を出した。
「危なかったー。ありがとうハイネ姉!」
「ギャウギャウ!」
黒竜の雛も笑顔で私に感謝していますが、肝を冷やしてそれどころでは無かった。
足の力が抜けてへたり込み、思わず床のタイルに手をつけたその時、またカチリっという音が私の耳に入る。
瞬間、階段の手すり部分にあった悪魔の彫像の目からビームが放たれ、私の両脇を掠って銀色の壁を焦がした。
「そこはこの石像からビームが飛ぶ罠です」
「先に言ってくださいいいいい〜!!」
涙が止まらない私を気にかける事もなくアリアスさんは冷たい眼差しと無表情を保ったまま先へ進んだ。
「というかなんで罠が発動したままなんですか!?」
「お出迎えはいつでもするのが私たちの流儀ですから」
「私達一応客なんですよね……?」
「贔屓はしませんので」
冷たい眼差しはまるで槍のように突き刺さると同時に鳥肌が立つ。
依頼者の筈なのに私たちの安否も気にもとめない態度……正に悪魔と言うべき人達です。今すぐにでも帰りたいですが、カイはこの城をテーマパークに来たかのように楽しみ、軽い足取りで城の中へと進んだ。
そんな足取りの中で城を歩くのですから、勿論この罠だらけの棺桶の中でまたスイッチを踏むのは当然だった。
今度は龍の形をしたシャンデリアが動き出し、カイに向けて青色の炎を吐き出した。
炎を浴びる前に、カイが抱いていた黒竜の雛が真紅の炎が青い炎とぶつかり、雛にも関わらない大火力にシャンデリアの紐が焼き切れる。
「おー、凄い! ……あっ、ヤバっ」
シャンデリアは吊られた紐を切れたせいであわあわと落下し、硬い地面に衝突するとぶつかるのは必須だ。
このままではシャンデリアは壊れるだろう。そんな事させまいとカイは階段の手すりの上に乗って切られて落ちるシャンデリアの所まで滑り、その場でジャンプする。
「ハイネ姉! この子お願い!」
カイは空中で黒竜の雛を私に向けて投げつけ、慌てながらも私は黒竜の雛を抱きとめ、カイはシャンデリアを体全体で抱きとめる。
けど着地の事を考えてなかったのか、このままだとカイは背中から地面にぶつかって大怪我をする。
そんな事はさせまいとポーチから布を広げて取りだし、カイを包み込む。
包み込まれた布のおかげで落下の衝撃が和らぎ、カイとシャンデリアは傷一つつかなかった。
「カイー! 大丈夫ですかー!?」
「モゴモゴ……ぷはぁっ! うん、大丈夫ー! シャンデリアも無事ー!」
カイは笑顔で無傷のシャンデリアを見せ、カイ自身も傷一つ付かなかった。
ホッと安堵し、黒竜の雛もカイの安否を気にするようにカイと目を合わせ、アリアスさんも事の始終を2階で無表情に見守っていた。
「……リカイ様、どうしてそのシャンデリアを? 家具達は壊れても主の力で修復が可能です。何故それ程までに体を張るのですか?」
家具……修復……つまり、家具に命を与えるような魔術があるのでしょうか。
しかし修復と言うと、あまり高度な物では無いと見受けられます。現にシャンデリアの意思は少し無機質な様にも感じられる。
修復というのはつまり、替えがきく。代わりの命を簡単に生み出させると、遠回しにアリアスさんは言っていた。
まだ魔術の知識や言葉の意味を理解出来ないカイはアリアスさんの言葉をそのままの意味で受け取ると、シャンデリアをじっと見つめて答えた。
「なんか可愛そうだったから」
カイの答えに初めてアリアスさんは初めて感情を顕にし、動きを止めてカイの答えに驚いていた。
「可愛そう……とは?」
「んー、分かんない。でも何となくそうしたかった」
カイはシャンデリアを大事に抱えるとどこに置こうか迷っていた。
「……シャンデリアはそこに置いてください。後で妹達に配置し直せます」
「えっ、妹さんいるんですか?」
「意外ですか?」
「えぇ。だって貴女は……」
見た時からの違和感を告げようとしたその時、アリアスさんが指を鳴らすと2階廊下の奥から2つの影がエントランスに物凄い速さで移動してくると、燭台を持ったメイドと、手が完全に隠れる程のフリルの様な物を手に付けているメイドがカイの前に現れた。
「「ようこそ、我が主の城へ」」
似た様な出で立ちに似た様な髪型からして2人は双子であり、アリアスさんの妹なのでしょう。
よく見るとアリアスさんと同じ様な傷……いえヒビが顔にあり、人の形をしているのに違和感を持った。
(やはりこの人達全員……人間じゃありませんね)
私だって物を創る立場の物、人の形をしていてこうして意思疎通は出来ていますが、どこか無機質な表情で分かりました。
この人達はあのシャンデリアと同じ存在、創られた命の者だ。
あの笑顔と済ました顔に無機質な物を感じたのは、私が無意識にそう理解したから。
カイはそれを知らずに2人のメイドに挨拶し、私は頭を下げる程度の会釈をした後、2人はシャンデリアを吊るし直した。
「ごめんね、シャンデリア壊そうとして」
「あぁ全然大丈夫ですよ。いつもの事なんで」
カイは短いハーフツインのメイドと話すと、そのメイドはカイに罪悪感を与えない様に笑っていた。
果たしてアレは彼女本人の意思なのかそれとも……。
「にしても貴方が城の修繕をしてくれる子? ついでに私の方も直してもらおうかな〜」
ハーフツインのメイドがカイの目と鼻の先まで顔を近づかせると、ヒビ割れている所に指を指し、さらには服をめくって細いくびれにある酷く損傷したヒビを見せた。
「最近何かといそがしいから所々壊れちゃってね。ちょちょいって直してくれない? 勿論その分のお金は払うよ」
「あ、私もして欲しい」
もう1人のメイドさんもカイの力に興味を持って近寄った。というより可愛がっているような気がするのは気のせいでしょうか……。
2人はカイのモチモチなほっぺを揉みしだいたり、つんつんとつついたりと、カイの事をこれみよがしに可愛がっていた。
「わぁ〜もちもちだ〜!」
「つんつん……ふふ、かわいい」
「む〜! なにするのー!」
揉みくちゃに触られて嫌気をさしたカイは2人のメイドから離れ、私の後ろに隠れた。
「アリアンナ、アリアーヌ。お客人との付き合いは後にしてください。……では二人とも、行きましょう」
名前を呼ばれた二人は返事をしてシャンデリアを元の位置にかけるように動き初めた。
「あ、ハイネ姉。クロをありがと」
「……クロ?」
「この子の名前! 黒竜の雛じゃ可哀想だから!」
「ギャぅ!」
名前を呼ばれた黒竜の雛、もといクロは炎を拭きながら鳴いた。
黒いからクロですか……カイらしい真っ直ぐで安直なネーミングセンスと笑みを零し、今度は危険な目に合わないようにカイとしっかりを手を繋いで城の中を歩く。
_カチッ
「あ、ごめん。また何か踏んじゃった」
嫌な音と共に向こうの壁から槍がまたカイの頭上を通り過ぎ、私の髪をすり抜けていく。命が無くなりかける恐怖に涙が止まらない。帰りたい。けど戻った所でまた罠だらけなので戻るに戻れない。
「生きて帰りたいぃぃ……」
そう願いながら、私とカイは城の中を歩いていく。
___
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「到着しました。修繕したい場所はこの廊下と他の場所にも御座います……おやハイネ様、随分と汚れていますね」
ボロボロになった服と髪、そして何度も死地を突破した精神的な疲れから出る白目と息切れに最早生きているのかさえ分からない。
カイがうっかり起動した罠から全力で守って、庇って、落とし穴に落ちかけて……そろそろ体力が限界が近く、これ以上死地を経験したらヤバいと身体中から悲鳴が叫び出していた。
そんな私とは対照的にカイはアトラクションを楽しんだかのように興奮し、笑顔を浮かべた。
「楽しいねここ!」
「私は楽じぐあ”り”ま”ぜん!! というか元はと言えばカイの不注意でこうなったのですよ!?」
あまりの危機感の無さに我慢出来ずカイにあたり、カイの両肩を掴んで前後に体を揺らした。
「ごめんなさいー」
「本当に分かってますか!? 分かってます!?」
「……話を進めてもよろしいでしょうか」
アリアスさんの冷ややかな目で落ち着き、つい取り乱した事に羞恥心で顔を赤くさせ、右手を小さく差し出すように出して話の主導権を渡す。
笑う事も苦笑いも浮かべることも無く、アリアスさんは無表情のまま淡々と依頼内容について話した。
「まず、依頼内容と致しましては依頼書の記載された通り、各城内の修復とその保全が主です。最近お客人が多く、掃除も大変なので」
確かに外から見てこの城はかなり大きく、いくら従者が多くても隅々まで掃除をするのには無理がある。
そこでカイの魔法を使って壁の修復もとい保全を依頼しようとするのは分かりますが……それだけでカイを指名するとは思えなかった。
カイの魔法は『物の状態を無限に繰り返す』事であり、修復とは違う。
例えば、壁に穴が空いてしまっているのならばまずその穴を埋める為の工程が必要で、その後ようやくカイの魔法を使って保全をする。
一応カイは修復魔法を習得してはいますが、それならばカイよりも魔法の知識が深いジェニーさんやマスターに依頼した方が良い。
にも関わらず、この人はカイをわざわざ指名したということは……どちらかと言えば、状態の保存を重視しているという事でしょうか……?
「修復して欲しい箇所はこちらに記載してありますのでご確認ください。それと、この依頼は長期的な物を想定しているので、御二方も部屋もご用意しています」
アリアスさんは修復箇所をマークした城内の地図と、同じ形をした鍵を2つそれぞれ私とカイに渡してくれた。
「お部屋は2階の突き当たりの角部屋でございます。何かありましたら、お部屋のベルや私の名前をお呼びください」
「アリアスお姉ちゃんー! って呼べば良いの?」
「ええ。それと、アリアスでよろしいですよ」
「分かった! アリアスお姉ちゃん!」
「……では、まず部屋の案内から致します」
アリアスさんは変わらない態度で私達を部屋に案内しましたが、さっきよりも妙に私達を気遣うように、罠の配置を丁寧に教えているのは気のせいでしょうか……?
兎にも角にも、私達はなんの危険もなく用意された部屋にたどり着き、アリアスさんはこの城にしては何の変哲もない扉を開けた。
開かれた扉の向こうには、豪華絢爛で物語の中の貴族が住んでいそうな部屋が目に映る。
赤い絨毯には凝った模様が施され、大きなベットは白くて薄いながらも、外からは内側を見れないようにベットレースがかけられていた。
夢にまで見た様な部屋に心を踊らせながら部屋に入ろうとすると、先にカイとクロが部屋に入り、広々とした空間を走り回ったり、ベットの上で飛び跳ねた。
「うわー広ーい! 楽しー!」
「こ、こらカイ! そこまでにしないとアリアスさんが……」
ベットをトランポリンの様にして遊ぶカイを叱ろうとしてももう遅く、アリアスさんは無表情の目をカイに向けていた。
「ごごごごめんなさい! うちのカイの躾がなってないばかりにこのような部屋をぞんざいに扱ってすみませんー!!」
見るからに怒っているアリアスさんに私は深くを頭を下げ続けると、アリアスさんはキョトンとした顔をして首を傾げた。
「何故謝るのですか? むしろ喜んで頂けて何よりです。なにせ、この部屋を使うのは初めてですから」
私の早とちりだったのか、アリアスさんは怒っていないようでした。
間違った私が言うのもなんですか、この人は本当に表情から感情が読めない。
そもそも感情なんてものあるのでしょうか……? ともかく怒っていないようで安心しつつも、「初めて」という言葉に引っ掛かりを覚えた。
「初めて……?」
「ええ。大抵の方々はここにたどり着く前にやられますから」
「だったらどうして客室があるのですか? 侵入者を排除する為の城なのですから、このような部屋の必要は無い様な気がしますが」
招く必要も無ければ、客人という名の侵入者をもてなす事すら無いであろうこの城には明らかに不要な部屋のはず……ですがこの部屋は見るからに掃除の手が行き届いており、埃一つも見えなかった。
この部屋の真意を探ろうと尋ねてみるものの、アリアスさんはモノクルを少し押し上げただけで、それ以上は深く言わなかった。
「ご心配なさらなくとも、この部屋には罠はございません。本日はお疲れでしょうから、依頼は明日からでお願いします」
(詮索はしないで……と言うことでしょうか)
ならばこちらから踏み込む理由は無く、アリアスさんは私にある地図を手渡した。
「この城の見取り図です。では、夕餉の時間にまた参られますので。ごゆっくり」
アリアスさんは部屋の扉を静かに閉め、私はぐるりと部屋を見渡して罠が無いかを確認した。
……と言っても、罠を感知出来る魔法のスキルは持っていないので、どうする事も出来ない。
張り詰めた緊張感から解き放たれるかのように詰まった息を吐き出し、私は柔らかいソファーに全体重を預けるように座る。
「ねぇねぇハイネ姉ー。僕このお城を探検したい〜」
「ダメです。罠の位置とか把握してないのですから」
「え〜〜」
アリアスさんから貰った城の見取り図を確認すると、罠の位置や依頼の箇所が丁寧にまとめあげられており、これなら城の中で迷う事やもう罠に悩まらせる事は無いでしょう。
ですが……外見もそうですがやはり城というには違和感が造りをしているのが、この見取り図を見て確信に変わった。
(城というより……迷宮ですね)
入口と出口がバラバラに配置されたり、魔術を使ってのワープゲートを用いた転送で現在地の特定をさせない造りも施されており、ここに招き入れた方々を確実に仕留める工夫がいくつもされている。
教えなければ命は無い……まさに棺桶と言っても過言ではありません。
背筋から悪寒が走り、今以上にカイの事を気遣わなくてはカイの身も危ない。
「カイ、私から離れないように……って、あれ?」
息を整え、明日の依頼に向けて気を張るようにして体を起き上がらせ、カイもちゃんと諭そうとしましたが……この部屋にカイはいませんでした。
「あ……あれ? カイー? どこですかー?」
隠れんぼでもしていて欲しいと思いながら、ベットの下やカーテンの裏、天井やソファーの裏など、カイが隠れられる場所をくまなく探していると、いつの間にか扉が開けられた事に気づく。
心臓がキュッと締め付けられる様な苦しさに襲われ、呼吸が浅く激しくなる。
「か……カイ──!! どこに行ったのですかー!?」
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「探検冒険〜らんらんらーん♪」
もうハイネ姉のお小言は聞き飽きた。こんなに凄い城があるのに探検しないのは勿体ない。
ハイネ姉は危険だって言ったけど、アリアスお姉ちゃんから貰った物があればへっちゃらだ。
それにすっごいドラゴンのクロだっている。怖いものなんて何も無い。
銀色にキラキラ光る壁がある廊下を歩き回り、地図を見ながらまだ行ってない場所に向かう。もしかしたらお宝に辿り着けるかもしれない……そう思うとドキドキワクワクが止まらなかった。
見つけた壺の中身を見たり、知らない部屋に行ったり、まるで本の中で見た冒険のようで楽しい。
ここには知らない事ばかりが溢れていて本当に楽しかった。いつの間にか窓がない長い通路に入り、暗いから夜なんだと思っていたけど、お城には窓が無いから太陽が登っているのか分からない。
「あれーここどこ?」
クロと一緒に周りをキョロキョロ見ると、長い廊下しかなくてどこから来たのかさえ分からなかった。
あるのは、一番奥にある大きな扉だけ。
茶色くて高級感のある扉には好奇心が昂り、目をキラキラさせてながら扉に触れる。
ちょっと重たいけど力いっぱい扉を引けば何とかなった。
重たい扉の先には今までとは違った雰囲気の部屋が広がっていた。
もの静かで少し薄暗い部屋に、赤い絨毯の上には乱雑に置かれたおもちゃや本が転がっていた。
誰かのお部屋なのかなと思いつつ、好奇心任せでゆっくりと部屋に入ると、クロが何かを感じたのか部屋の奥に向かって鳴いた。
「誰かいるのかな?」
クロが向いている方向に向かうと段々明るくなっていき、人影が見えた。
銀色の髪に大きな角の人が白い……ジャージを着ていた。
ハイネ姉がお休みの日にいつも着ている物と同じ物だなと思っていると、白ジャージの人が声を出した。
「んー? アリアスもう来たのー? お菓子とかはそこに置いといてー」
「お菓子なんて無いよー?」
「ええー? そんな訳な……ん?」
知らない声にジャージの人は反応してこっちに顔を向けた。
白銀の眼に目尻には濃いクマがあってよく眠れて無いのかな。すごく眠そうな目をしていた。
だけど眠そうな目がパッチリ開いた。ゴシゴシ目を擦ってまた僕を見ると口を大きく開けて叫び出した。
「だ、誰ですの貴方ー!?!?」
「おばさんこそだれー?」
「おば……っ、誰がおばさんですってぇぇぇ!? 失礼すぎるクソガキですわぁぁぁぁ!!!」
ジャージの人は怒りながら右手に銀色の三又の槍を手に持ち、僕に向かって力任せに振り下ろした。
大振りだったから右に1歩大きく動くだけで避ける事が出来て、槍は赤い絨毯を突き破ってくい込んだ。
「中々やりますわね! だったらこれで……!」
槍を使ってもう一度攻撃しようとしているのが見えると、すかさず槍に向かって魔法の弾を放った。
白と黒の魔法弾は槍にぶつかると、槍自体には特に何も変化は無かった。
ジャージのおばさんは不発に終わったと思って笑いながら槍を持ち上げようとするけど、槍を引き抜けずにおばさんは踏ん張り続けて顔を真っ赤にしても、槍は抜けなかった。
「あ……あら? フギギギっ! 何でこれ抜けないの!?」
「だって僕がそうしてるんだもん」
「は、はぁ!?」
「僕の魔法でその槍はずっとその状態を繰り返してるんだ」
「状態を繰り返し……えぇ? 訳が分かりませんわ! ならステゴロでタイマンを致しますわよ!」
「わわ、ちょっと逃げようーっと」
「ギャウギャ!」
クロも逃げろと言って僕はこの部屋から飛び出していき、長い廊下を走っていく。
あのおばさんは確かよく見ると大きな角が生えていたから鬼ごっこの始まりだ。
「鬼さんこちら! 手の鳴る方へ〜」
「待ちなさいこのクソガキぃ! 私の城から生きて帰れるとは思わないでくださいまし!」
おばさんが右手を動かすと突然床が抜けてしまい、地面の奥深くには無数の槍が僕を刺そうと待ち構えていた。
足場が無いから走る事も出来ないし、クロもまだ小さいから僕を抱えて飛ぶことも出来ない。
うーん、どうしようかなこれ。
「オーホッホッホ! 針串刺しになってしまいなさい!」
「あ、そうだ。これ使おう」
ポケットの中から飴玉が入ったポーチを全部空中にばら撒き、ばら撒かれた飴玉を1つ握ってから魔法を込める。
「皆止まれ!」
呪文の詠唱を終えると同時に空中にばら撒かれた飴玉は全て空中で止まり、まるで固定されたかのようにその場にとどまった。
僕の手の中の飴玉も空中で止まっているから手すりの様な役割を果たし、僕は落下せずにいた。
他人から見れば、僕はきっと空中で何も無い所にぶら下がっていると見えてるに違いない。
僕のことを上から見下ろしているおばさんは空中に浮いている飴玉と僕を見て白目を向きながら驚き、とてもショックを受けていた。
「なななななんですってー!? どうなってるんですのこれ!?」
「これが僕の魔法だよ! よいっ……しょっ!」
空中に浮かぶ飴玉を掴みながら上へと登っていき、楽々と落とし穴から脱出した後は飴玉にかけた魔法を解き、ポーチを開けると飴玉はポーチに吸い込まれていった。
「えへへ、ママが作ってくれたこのポーチはやっぱりすごいな〜! じゃあね、おばさんー!」
「あ、こら!待ちなさい!」
「えへへ、やーだよ」
「いいえ、ここでおいたは終わりでございます」
突然アリアスお姉ちゃんの声が聞こえると、僕の足元に水のような物が巻き付かれ、水は僕の足を持ち上げるようにして動いた。
天井と床がぐるんと回り、不思議な水のせいで僕は宙ぶらりんになってしまった。外そうにも水のせいで触れられないし、どうする事出来ない僕は諦めてだらんと腕を下ろした。
そんな時、僕の背後から二人分の足音が聞こえると、1人はアリアスお姉ちゃん、もう1人はハイネ姉がいた。
「あれ、ハイネ姉どうしたのー?」
「それはこっちのセリフです! あああ、貴女……姫様にななななな、何をし、ししししてるんですかぁぁぁ!?」
「ひめさま? 誰の事ー?」
「あちらでボケっとしているお方です」
アリアスお姉ちゃんは向こうに指を向けると、さっきのおばさんが目に映った。
「えー、あの人がお姫様? 違うよ。だってお姫様って綺麗なドレス着てるんでしょ? でもあの人はハイネ姉が着てるような芋ジャージ着てるよ?」
「何で知ってるの!? ……あ、一緒に過ごしてるからですねはい。じゃなくて! 何で私に流れ弾を当てるんですか!?」
「アレはオフの日の姫様なので。……とにかく、詳しい事をお聞かせください。姫様、リカイ様」
「楽しく鬼ごっこしてたー!」
「このクソガキを修正してやる所でしたわ!」
「…………これは、ブレイクタイムの時間が必要そうですね」
何故ハイネだけが罠の餌食になっているかは、ハイネ自身の効果のせい。
詳しくは、ウィッチクラフト・ハイネ 効果で調べてみよう!
オリカをまとめた章が欲しい?
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欲しい!
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別に( *¯ ³¯*)