六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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ど、ドラグーンがエラッタ無しで帰ってくるだと……?
自分が遊戯王を始めた時はそいつ禁止でしたが、効果見て戦慄しました。
まぁ今の環境だったら戻っても良い感じかなと言ったところ。

後は増殖するGも準制限の件ですかね。これは類似カードの存在も大きいのかなと思うのと、後攻捲りカードの1枚だったので準制限は中々強気だなと思いましたね。
何気に好きな手札誘発でもあります。(妹はこれ敵視してデッキに1枚も入れてない)




騎士と黒魔女とクソガキ

 

「え? 本日は待機……ですか?」

 

 ラビュリンス様からの依頼から3日目。

 本日も修繕対応をしようと準備を終えた所でアリアスさんからそう伝えられた。

 

 私のネガティブ脳内思考では遠回しにクビを宣告されたと思い、雷に撃たれたかのようなショックを受けつつ、以来がダメになってしまった事への恐怖や焦りで感情を埋め尽くされた。

 

「や、やはり昨日リカイがラビュリンス様の部屋に勝手に入ったせいで……?」

 

「いえ、そうではなく。本日この城にご来客達が来るので、少々屋敷が騒がしくなりますので、御二方にはしばらくこちらで待機をお願いします」

 

「ご来客?」

 

「ええ。お1人は風貌から『騎士さま』と呼んでおり、何度もこの城に出入りしています」

 

「な、何度も……ですか?」

 

 ということはつまり、凶悪な罠を何度も挑んでは生きて帰って来ているという事になる。

 この城の罠をその身で受けた経験者からすれば、あんな罠を何度も突破するのは困難極まりない。

 

 一体どんな屈強な方なのでしょうか……それとも、伝説の戦士? 

 というかそもそもどうしてこの城に何故それ程に出入りしているのかという謎も気にはなりますが……私達は部外者。

 あまり詮索しないのが得策でしょう。

 

「ねぇねぇ、今日はお休みなの?」

 

「え? そうなりますね……」

 

「じゃあ姫様と遊ぶー!」

 

「そうは行きません!」

 

 早速カイが部屋を出ようと走り去り、こういう事は日頃の行いから予想出来た事です。

 服の袖からこの為に作った捕縛用のロープをカイに向けて射出し、ロープはカイの体の腹部に巻き付かれる。

 

 足は自由なのでカイは思い切り走ってロープを引きちぎろうとしますが、ロープの力比べはロープの方が勝ち、カイはその場で力尽きて私の元へと引き戻された。

 

「ぶ〜……」

 

「では、本日は英気を養ってください。私はこれにて失礼します」

 

 アリアスさんは客室から出て、私はカイを見張りながらソファーに腰かける。

 肝心のカイは部屋から出ていこうと必死に走り回りますが、ロープの伸縮性には勝てず、部屋から出る手前ぐらいで私の元に引き戻される。

 

「カイ、遊び相手なら私がなりますから今日は大人しくしよう? ね?」

 

「ヤダ! ハイネ姉と遊ぶのは飽きた!」

 

「ガーン……どどど、どうして……!?」

 

「だってハイネ姉とずーっと遊んでるもん。今日は姫様とか遊びたいー!」

 

 ロープに縛られているというのにカイはジタバタ暴れながらわがままを言ってきた。

 一体どこで育て方を間違って……というか、母親であるジェニーさんも自由奔放な方なので母親と似たのでしょう。

 

「カイ、今日はこの部屋で過ごしましょう?」

 

「いーやー!!」

 

「言うこと聞かないとまたおしりペンペンしますよ」

 

 この前のおしりペンペンがかなり効いたのか、カイはスンっ……と真顔になって大人しくなりました。

 

 しかしこのまま時間を潰すという事は勿体ない。何かカイの暇つぶしになりそうなものは……残念ながら私の荷物からは無い。

 せめてものと思いつつも、私は途中で作りかけていたある物を作ろうと裁縫針とその他諸々の道具をポーチから取り出し、裁縫を始めた。

 

(この時間を使ってこれを完成させたいですね)

 

 針に糸を通し、糸を編む。裁縫はこの繰り返しですが、その一つ一つの行動が作品の完成度を決めていく。

 特にこれは大事な物です。より丁寧に作っていかなくては……。

 

「ねぇねぇ、それ何作ってるのー?」

 

 暇を持て余したカイは私の作業を覗き込み、クロも興味深そうにじっと見ていた。

 

「まだ内緒です」

 

「えー! 教えてよ〜」

 

「ダーメーです〜」

 

 頬を膨れさせるカイを見て、少しでも仕返しが出来たと勝ち誇った気持ちになった私は糸を編む速度が早くなったような気がした。

 

 今までじっと私の作業を見続けたカイですが、流石に同じ光景で飽きたのか、いつの間にか私の作業を見るのをやめて床に転がっていた。

 

「カイ、床に転がっては汚いですよ。貴方もウィッチクラフトなんですから、魔法のお勉強をしたらどうですか」

 

「じゃあ勉強する為に本がある所に行く! だからこれ外して〜」

 

「ダメです。本ならここにもありますから」

 

「うぅ〜……」

 

「全く……」

 

 静かな時間が流れること数分、私は黙々と作業をする中、カイはこの部屋の隅々を探索していた……というより、暇で仕方なく体を動かしているのでしょう。

 ベッドの上をトランポリンのように跳ねたり、クロに芸を仕込ませたりしていた。

 

「ギャウ?」

 

「ん、どうしたのクロ」

 

 突然クロがベッドの下から何かを見つけ、小さい体を活かしてクロはベッドの下へと潜り込んだ。

 

 クロはベッドの奥から何かを見つけると、クロは顔を出し、黄金の鍵の様な物をカイに渡した。

 

「なにこれ」

 

「鍵見たいですけど……ん? ちょっと待ってくださいそれもしかして……」

 

 黄金色の鍵が突如光だし、鍵がカイに巻き付けられたロープに触れると、ロープは魔法の効力を失って拘束力をなくし、ただの布に戻った。

 

「ま……『魔法除去』じゃないですかー!」

 

「あれ、よく分かんないけどラッキー! ナイスクロ!」

 

「ギャウギャウ!」

 

「あ……こら! 待ちなさい!」

 

 カイはクロを抱えて部屋から出ていき、私はカイを追いかけようとすると、クロが私に向けて小さな炎を吐いてきた。

 小さくても真紅眼の黒竜なので火力は凄まじく、避けられざる追えなかった。

 

「ひ、ひぃぃ〜! ま、待ちなさい! 待ってください〜」

 

「いーやーだー!」

 

「もう! 捕まえたらおしりペンペン2倍ですからねー!!」

 

 ___

 

 __

 

 _

 

「えへへ〜アリアスお姉ちゃんが言ってた『騎士』さんってどんな人かなー」

 

 騎士と言えば、カッコイイ鎧にカッコイイ剣を持ってる物語の中で一番カッコイイ人だ。でも、騎士って悪い魔物をやっつける人でも本で読んだ事あるけど……ここに悪い魔物なんていたっけ? 

 

 ここにいるのは姫様とアリアスお姉ちゃん達だけだし……もしかしたら騎士さんはお宝を狙っている? 

 

「まぁいいや。聞けば分かるよね」

 

 騎士さんを探そうと館を歩くと、遠くの方から何か物凄く大きな音がした。

 音はだんだん大きくなり、後ろに振り返ると2つの影がこっちに来た。思わずしゃがんで影を避けると、影は壁に当たってその姿を見せた。

 

「きゅ〜……」

 

「や、やられた〜」

 

「あれ、アリアーヌお姉ちゃんとアリアンヌお姉ちゃんだ。ツンツン……大丈夫?」

 

 2人はぐるぐる目になって気絶している2人を杖でツンツンと突っつくと、廊下の奥から物凄いスピードで罠を突破しながら何か近づいてきた。

 

 銀色の鎧を纏った金髪の人が無表情のままこっちにくる。クロが警戒してその人に向かって黒炎弾を放った。

 

 でもまだクロは小さいから黒炎弾も小さくて威力も弱く、近づいてくる人には届かないヘロヘロ黒炎弾を見ると、鎧の人は首を傾げて変に思ったのか、足を止めた。

 

「……貴方、誰?」

 

「お姉さんこそ誰ー? もしかして、騎士さん?」

 

 甲冑に頭の兜には赤い羽根が付いていて、見た目は騎士っぽいけど……なんか顔付きが普通で無表情で、女の人……なのかな、何だか拍子抜けっていうのが第一印象だった。

 

「私はこの迷宮の攻略者。貴方は誰?」

 

「こんにちは! ウィザードクラフト・リカイです!」

 

「ウィザードクラフト……? ウィッチクラフトなら聞いた事あるけど」

 

「ふふん、そのウィッチクラフトに居るんだよ! 凄いでしょ」

 

「ふーん。それで、貴方はどうしてここにいるの?」

 

「姫様に依頼されてきたの」

 

 これまでの事、そしてこれからしようとしている事を話すと、騎士さんは興味無さそうに無表情を浮かべていた。

 

「じー……」

 

「何? 私に何か付いてる?」

 

「騎士さんって、女の人?」

 

「そう、だけど」

 

「へ〜女の騎士さんなんているんだ〜」

 

 騎士はとっても勇敢で屈強な人って物語には多く書かれているから、女の人だとは思わなかった。

 ぐるぐると騎士さんの周りを回っていると、騎士さんはため息を吐きながら先に行こうと歩いた。

 

「あ、待ってよー。一緒に行くー」

 

「え、何で?」

 

「僕も姫様と遊びたいから!」

 

「遊ぶ訳じゃないんだけど」

 

「え、じゃあ何でこの城に来たの?」

 

「……教える必要ある?」

 

「えー! 教えてよ!」

 

 騎士さんの背中に引っ付き、この城に来た理由やほかの事を聞こうとしようとすると、騎士さんは僕を振り下ろす様に体をよじったり、壁を走って振り落とそうとした。

 

「ちょっと……離して!」

 

「いーやー! 折角騎士さんに会ったんだから遊びたいー!」

 

「だから遊ぶ訳じゃ……」

 

 騎士さんと取っ組み合いが続くと、騎士さんが足元のスイッチを踏んでしまい、騎士さんの足元の床がパカッと開き、僕達は落とし穴に真っ逆さまに落ちていく。

 

「わぁー!!」

 

 結構深く落ちていき、ママから教えて貰った風の魔法を騎士さんの周りに唱え、風は騎士さんを包んで落ちていく速さがゆっくりとなり、何とか無事に落とし穴の底に着地する事が出来た。

 

 落とし穴の底はかなり広くて暗く、辺り一面は壁で覆われていた。落とし穴の底というより、地下の迷路って感じだった。

 

「ねぇ、大丈夫?」

 

「うん! 騎士さんは?」

 

「貴方の魔法のおかげでなんとか。……地下にこんな所あったんだ。知らなかった」

 

「え、そうなの?」

 

「基本的にトラップにはかからないから。……うん、面白い」

 

 無表情だった騎士さんが少しだけ笑うと、騎士さんはこの地下迷路を進んで行った。

 

 薄暗てジメジメした空間で僕と騎士さんの足音が反響して、静かな空気が何だか嫌だ。

 騎士さんは何も喋らないし、この無言に耐えきれず僕は気になる事全部を話し続けた。

 

「ねぇねぇ、騎士さんの好きな物は? 僕は魔法とお菓子!」

 

「肉」

 

「嫌いな物は?」

 

「ダルがるみしてくる人」

 

「いつも何してるの?」

 

「他のダンジョンの攻略……ねぇ、それ聞いて意味あるの?」

 

「ある! だって騎士さんの事知れるもん」

 

「知ってどうするの?」

 

「?? 騎士さんの事を知りたいから聞いてるだけだよ?」

 

 騎士さんの言っている意味が分からず、僕は自分が思っている事を口にすると、騎士さんは首を傾げた。

 僕、難しいこと言ったかな……? 

 

「……しっ、ちょっと静かにして」

 

 急に騎士さんが止まって後ろに添えている大剣を構えると、急に壁の方を凝視していた。

 同じように壁を凝視すると、壁から何か黒いモヤモヤが見えた。黒いモヤモヤは僕たちの周りをグルグルと壁の中で泳ぐように動くと、丁度騎士さんの後ろで止まる。

 

「騎士さん、後ろだよ!」

 

「っ!」

 

 僕の叫び声と同時に、黒いモヤモヤがあった壁から急にモンスターが現れた。

 モンスターは大きな爪と牙を持って目がいくつもある化け物で、大きな爪で騎士さんを倒そうとしていた。

 

 けど、騎士さんは大剣を大きく振ってモンスターの腕を切り、もう一度剣を振ってモンスターの体をぶった斬った。

 

 斬られたモンスターは紫色の血を出しながら倒れると、まるで割れたガラスの様に全身が壊れてしまった。

 

「わぁ……凄い! さすが騎士だね!」

 

「ガウガウガウ!」

 

 クロも騎士さんの凄い動きに感動して僕と同じように拍手をした。

 騎士さんは顔を赤くして照れながら剣をしまうと、そっぽを向いてしまった。

 

「あ、ありがと。は、早くこの迷路を出よう」

 

「うん!」

 

 離れないように騎士さんと手を繋ぐと、騎士さんはびっくりして手を離した。

 

「手、繋げられると剣が振れない」

 

「あ、そっか。じゃあ、どうしようか」

 

「……左手なら良い。右手だけでも剣は一応使える」

 

 騎士さんは左手を差し出すと、僕も左手で手を繋ぎ、迷路を進んでいった。

 まさか本で読んだ騎士と手を繋ぐなんて嬉しくて、大きく腕を振ってスキップして歩いていくと、騎士さんはまた笑った。

 

 右に行ったり左に行ったりと迷路を進んでいくと、宝箱が見つかった。しかもキラキラと輝く銀色の宝箱で、僕と騎士さんは目を輝かせた。

 

「おー! お宝だ!」

 

「待って、まずはミミックチェックしないと……」

 

「ミミックってなーに?」

 

「宝箱に化けるモンスターの事。鎖が真っ直ぐ伸びていたりとか、ちょっと傾いていたりとかしてたらミミック」

 

 騎士さんは宝箱を触らずに隅々まで調べていた。それ程そのモンスターが苦手なのか真剣な顔付きだった。

 

「ねぇねぇ、その宝箱には黒いモヤモヤが無いから大丈夫だと思うよ」

 

「は? ちょっと待っ……」

 

 僕は宝箱を開けたと同時に騎士さんは剣を構えたけど、宝箱は宝箱のままでミミックとかじゃ無かった。

 宝箱の中身は金銀財宝とかじゃなくて、赤くて大きい宝石1つだけだった。

 

「なにこれー?」

 

「ただの宝石っぽいけど。ところで、何でミミックじゃないって分かったの? 黒いモヤが無いからって言ってたし、壁の中に潜むモンスターも見分けられた」

 

「僕ね、人やモンスターの悪意が見えるんだってママから言われたんだ」

 

 悪い人や僕に対して悪い事をしてこようとするモンスターには、必ず黒いモヤモヤが僕の目には映っている。

 どうして僕がこんな風に見えるのか分からないけど、それで良い人や悪い人の区別は尽くし、さっきみたいにモンスターが隠れている場所も分かる。

 

「人やモンスターの悪意が分かる……凄いね、リカイは」

 

「そう? えへへ〜。あ、この宝石どうする? 騎士さんいる?」

 

「……いや、宝箱の中身は開けた人の物って攻略者のルールがあるの。それはキミに渡すよ」

 

「ほんと!? ありがとう! 騎士さん!」

 

 綺麗な赤い宝石を手に入れた僕はじっと宝石を見つめた。こんなに綺麗な宝石、エーデルお姉ちゃんの所でも見た事が無い。

 渡したらエーデルお姉ちゃん喜んでくれるかな〜。

 

「さっ、早く迷路を抜けよう。迷子にならないで」

 

「うん!」

 

 騎士さんと手を繋ぎ、僕たちは迷路の中を歩いていく。

 

 途中で行き止まりにあったり、落とし穴に落ちそうになったりと、ようやく迷路の出口である階段を上がっていくと、ようやく元の場所に戻った白銀の壁が見えた。

 

「戻ったー! やっとだね〜」

 

「まぁ、そっちが私に付きまとわなければ落とし穴には落ちなかったけど。まぁ、良い汗かいたよ」

 

「ごめんなさーい。でも楽しかった!」

 

「楽しい……うん、楽しい」

 

「あ、また笑った」

 

「あ、あまり見ないで」

 

 騎士さんはまたそっぽを向いてしまい、顔を見ようと周り込もうとすると頑なに顔を見せなかった。

 あの綺麗な笑顔が見たいのにと思いながらも、僕は諦めて騎士さんの隣を歩いた。

 

「ねぇねぇ、騎士さんはどうしてこの城に来たのー?」

 

 何となく今ならこのお城に来た理由が聞けるかなと思った。

 さっきは話さなかったけど、仲良くなった今は話してくれた。

 

「強いて言えば……成長のため?」

 

「成長?」

 

「ここは罠の精度が高くて面白い仕掛けが沢山ある。レベルアップには丁度いい」

 

「えー? じゃあ、このお城のお宝とかには興味無いの?」

 

「あるにはあるけど……実態が分からないからあまり興味無い」

 

「そっか〜。なんだろうね、お宝って」

 

 誰も何も教えてくれないし、取れば何が起こるのかも分からない。一体、お宝ってなんだろうと思いつつ、地下で見つけた赤くて綺麗な宝石を眺めた。

 

 ……何だかこの宝石には不思議な感じがする。よく見ると蛇の目の様な模様もある。試しにコンコンと叩いてみても、なんの反応もない。

 

「リカイって言ったっけ。キミはお宝とか興味あるの?」

 

「んー? あるけど今はただ姫様とかと遊びたいだけー。だって姫様つまんなそうだもん」

 

「つまんなそう? ……そんな様子は見ないけど」

 

「えー。だって姫様のお部屋に入った時、寂しそうな顔してたよ?」

 

 2回目に部屋に入った時、姫様は飽き飽きした目をしながらトランプタワーを立てていた。

 つまんなそうにため息を吐きながら、無心で遊ぶ後ろ姿は悲しそうで、つまんなそうだった。

 でも騎士さんが言うには、会う時はいつもオーホッホッホって笑っているらしい。騎士さんと遊ぶのが好きなのかなぁ……。

 

 だったら3人……いや、アリアスお姉ちゃん達とハイネお姉ちゃんの皆で遊びたいなと思っていると、騎士さんは足を止めて周りを見渡した。

 

「どうしたの?」

 

「いや、いつもなら家具達が罠と一緒に攻めてくるのになって思って」

 

「いつもはもっとすごいの?」

 

「そう。ここなんかは時計の家具とゴーレムと、横から飛び出すマジックハンドとのコンボが来るのに……」

 

 騎士さんが壁を見渡し、僕も真似して壁や廊下を見渡した。故障でもしたのかな? でも昨日までは何も無かったし……うーん、謎。

 

「な、なんなんですのアナター!!」

 

 なんでかなと悩みに悩んでいると、遠くの方で姫様の叫び声と、ドゴーンって大きな衝撃音が聞こえた。

 

「今のって……姫様?」

 

「玉座の方から聞こえてきた。急ぐから背中におぶって」

 

「はーい」

 

 騎士さんの背中に向かってジャンプして背中に乗ると、騎士さんは全速力で廊下を走り抜ける。

 だけど玉座の間に近づけば近づくほど罠は多くなり、騎士さんの目の前には無数の罠が待ち構えていた。

 

「しっかり捕まってて」

 

 騎士さんは剣を構えてまずは迫り来る大きなマジックハンドのアームを切り落とし、続けて横の壁から出てくる槍を全て斬撃だけで吹き飛ばした。

 

 一つ一つの動きが凄くてまるでジェットコースターの様だ。少しでも掴む力を緩むと吹っ飛ばされてしまうほど僕の体が振り回され、何とかクロと一緒にしがみついて騎士さんの背中から離れないようにする。

 

「あとワンフロア……」

 

 次ラストスパートをかけるように騎士さんは全速力で駆け抜けると、突然目の前の地面が抜けて針穴地獄の罠が襲いかかる。

 ジャンプしても届かないような幅だから風の魔法を使って騎士さんを浮かせようとしたけど、呪文を詠唱する暇が無いほど穴は近くなっていく。

 

 もうダメだ、落ちてしまうと思った矢先、騎士さんは小さく飛び、一瞬壁を走ったその後、壁を蹴って穴を越えた。

 

「す、すごーい!」

 

「穴を超える時オススメだよ」

 

「でも僕魔法使えるからな〜」

 

「魔法が禁止されるエリアとかあるから、覚えておくと便利だよ」

 

 少しの雑談をしながら、あと少しで玉座の間に付ける開けた所に僕達は辿り着き、最初に目に付いたのは奥にある階段の更に奥の大きな白い扉が壊されていた。

 

 あそこって確か玉座の間で、姫様がいるところだ。扉の奥では何かが壊れる音や、魔法を使っている様な音が入り交じり、何だか凄いことになっているのは間違い無かった。

 

「どうやら戦闘が始まっている。危ないからここで待ってて」

 

「え〜!? 僕も一緒に行く! 行きたーい!」

 

「こればかりはダメ。何だか嫌な予感がする……早く背中から離れて」

 

「いーやーだー!」

 

「むっ……いいから離れて!」

 

 騎士さんが僕を引っぺがそうとしても、騎士さんの背中を離れない。てこでも動かない僕に騎士さんは諦めて深いため息を吐いた。

 

「分かった。分かったよ……でも、自分の命は大事にね」

 

「うん! 大事にするー!」

 

「本当に分かってるの……?」

 

 騎士さんはゆっくりと階段を上がって大扉の前に立ち、壊れた扉の影に隠れながら玉座の間の様子を見る。

 僕も騎士さんの背中からこっそり玉座の間の様子を見ると、そこにはアリアスお姉ちゃんと姫様、そしてもう1人いた。

 

 その人は黒いフードに黒い服を着て、少し肌と髪が白い女の人だった。右手にはダガーを持っていて、顔の右側に赤色の仮面を被っていた。

 黒フードの女の人からはもう1つ、白いモヤモヤが2つあった。

 黒いモヤモヤは何度か見た事あるけど、白いモヤモヤは初めてだった。モヤモヤをよく見ると、黒フードの女の人からではなく、フードに付いている手のような物2つから出ていた。

 

 もう少し観察していたいけど、黒フードの女の人はアリアスお姉ちゃんと戦って激しく動き回っているから、観察が出来なかった。

 あの人……凄い、騎士さんと同じぐらいの動きだ。騎士さんもあの人の事を凄いと思っているのか、いつになく真剣な顔をしていた。

 

「あの黒いやつ……どこかで見た事ある」

 

 騎士さんは腰にあるバックから1枚の紙を取り出すと、それと黒フードの女の人と見比べると、僕に対してその紙を見せた。

 

 紙には大きく形相の悪い女の人が描かれていて、『財宝狩りの悪魔』と描かれていた。

 

「財宝狩りの悪魔ディアベルスター。まさかアイツがここにいるなんてね」

 

「悪い人達なの?」

 

「噂程度しか聞いてないけどね。なんでも、罪宝っていう危ない宝を求めては、所々に喧嘩売ってるらしいよ」

 

「へぇ〜」

 

 何だか悪い人には見えないけど、あのディアベルスターっていう人はアリアスお姉ちゃんに向けて拳を向け、アリアスお姉ちゃんは拳を受けて壁にぶっ飛ばされた。

 

 ディアベルスターって人……凄い力持ちだ

 

「あ、アリアス!」

 

「残るはアンタだ姫様。さっさと罪宝を渡せ」

 

「な、何よ! ここにはそんなもの無いわよ!」

 

「しらばっくれるな。赤色の罪宝がここにあると噂で聞いた」

 

「噂程度で私の城を破壊するなんてとんだ脳筋魔女ですわ!」

 

(赤色?)

 

 もしかして地下迷路の宝箱にあったやつかなと思ってポーチから取り出すと、ディアベルスターの服にある手のような物の1つがこっちに伸びてきた。

 騎士さんはそれに反応して伸びてきた黒い手を剣で防いだ。

 

「扉の奥にいる2人はアンタの仲間か?」

 

「奥……? ……!!!」

 

 姫様は僕と騎士さんに目に入ると飛び上がるほどびっくりした。

 

「なな、なんでクソガキが騎士様と一緒にいるんですのー!?」

 

「え? 廊下で会って地下に落ちてここに来たの」

 

「つつ、つまりここまでずっとい、一緒に?」

 

「うん。そうだよ」

 

「う、羨まし……じゃなくて! 今はそこの黒魔女を何とかしましてよ!」

 

「何とかって言っても……あ、そうだ。ねぇねぇ、探してるものってコレ?」

 

 地下迷路で見つけた赤い宝石をディアベルスターに見せながら玉座の間に入り、ディアベルスターは直ぐにこっちに来て僕から宝石を取り上げてじっと見た。

 

「それだ。私に渡せ」

 

「えー……ヤダ! これは僕が見つけた宝箱から貰ったもん! あげないよーだ!」

 

 折角見つけた物を知らない人に渡すなんて嫌で舌を出して嫌悪感を出し、ディアベルスターはブチっと堪忍袋の緒が切れたかのように怒っ

 

「そうか……なら力づくで奪ってやる!!」

 

 ディアベルスターは地面がえぐれるほどの力強いジャンプでこっちに近づくと、右手のダガーを向けてきた。

 近くにある瓦礫を浮かせて防御しようと思うよりも先に、騎士さんがディアベルスターの攻撃を体験で受け止め、剣同士の力勝負になった。

 

 だけど騎士さんの方が力負けしてしまって騎士さんは片膝をついてしまう。

 

「なんて馬鹿力……!」

 

「普段から筋トレしてるからな」

 

 筋トレの成果もあっての馬鹿力で騎士さんは吹っ飛ばされてしまい、銀色の鎧がベコベコに凹んでしまった。

 

「くっ……まだ!」

 

 騎士さんは立ち上がって直ぐにカバンから何か丸い物をディアベルスターに投げつけ、ディアベルスターは後ろに振り返らなかった。

 あれがもし爆弾とかだったら危ないと思い、ディアベルスターさんにバリアを貼ろうとした。

 

 だけどディアベルスターさんの右肩の黒い手が動き出し、騎士さんが投げつけた物を鋭い爪で切り裂いた。

 すると丸い物から白い霧がこの部屋に充満し、誰も他の人の姿がよく見えなくなった。

 

「これで……!」

 

 だけど騎士さんは他の人が見えているように動き回り、うっすらと武器も変えているような気がした。

 

「こんなもの吹き飛ばしてやる」

 

 ディアベルスターが今度は左肩の手が動き出すと、手が悪魔の様な羽の形をした大きな鎌へと姿を変えた。

 ディアベルスターは鎌を回し、黒緑の風を起こすとこの部屋を覆った霧がはれ、槍を構えていた騎士さんとディアベルスターの目が合った。

 

「しまった……!」

 

 ディアベルスターは騎士さんに向けて大きな鎌を振り下ろし、やられる騎士さんを見たくなくて思わず目を閉じた。

 

 ガキンっと金属の音がぶつかり合う音が鳴り、その後何も音がしないのが気になってゆっくりと目を開けると、騎士さんの前には、三又の槍を持った姫様がディアベルスターの攻撃を受け止めていた。

 

「これ以上、私の城で好き勝手はさせませんわよ!」

 

「邪魔を……するな!」

 

 ディアベルスターは姫様と騎士さんを吹っとばし遠くの壁に吹き飛ばされ、そのまま倒れてしまった。

 ディアベルスターは大きな鎌を元の黒い手に戻し、ダガーを僕に突き付けた。

 

「さぁ、渡せ」

 

「やだ! お姉さん『達』は、悪い人じゃないけど……今は悪い人! そんな人に渡したくない!」

 

「こんのっ……」

 

「ギャウガァ!!」

 

 ディアベルスターは僕に拳を振ろうとすると、クロが僕から飛び出し、ディアベルスターに飛びついた。

 

 クロはドラゴンだけどまだ小さいから力も弱く、ディアベルスターが腕を振っただけでクロは吹き飛ばされるしまった。

 

「クロー!!」

 

 吹き飛ばされたクロを見て胸が痛くなる。

 ううん、もっと前に騎士さんと姫様が吹き飛ばされた時から胸がドクンと動いて止まらない。

 体の奥から熱いムカムカが湧いてきて、色んなものが溢れて涙が出る。

 

 だけど悲しくなくて、むしろ怒っている。怒っているのに泣いているのは変だけど、今の僕は今はそれよりも目の前のお姉さん達に向かって怒っている。

 

「みんなを……いじめるな──!!!!!」

 

 その時、僕の中から黒いモヤモヤが溢れ出した。

 

 モヤモヤはドラゴンの形になり、ディアベルスターに向けて光る眼を向けた。

 

「なっ、ドラゴン!? 一体どこから……」

 

 ディアベルスターさんは右肩に付いた手に目を向け、何かをしようとしていたけど、その手は首振るようにブンブンと動かし、左肩の手も「そんな事しないで」と言うように慌ただしく動いていた。

 

「相変わらず、お前達は子供に甘いな……仕方ない、私だけでやる」

 

「ちょっと待ってくださーい!!!」

 

 突然大きな声が聞こえてそっちに目を向けると、向こうにはハイネ姉が魔法の絨毯に乗って物凄いスピードでこっちに来ていた。

 

「あっ、ハイネ姉……」

 

 ハイネ姉からまたあのロープが僕にぐるぐる巻き付けれると身動きが取れず、モヤモヤから生まれたドラゴンも消えてしまった。

 

 ハイネ姉は玉座の間にいる僕を引き寄せた後、ディアベルスターの目の前で土下座した。

 

「うちの子が何をしでかしたか分かりませんが大変申し訳ありませんでしたぁぁ! どうか、どうかお許しを〜!!」

 

泣きながら謝り倒すハイネ姉を見たディアベルスターは、困惑した顔でハイネ姉を見下ろして、汗を流しながら立ち止まった。

 

「…………何なんだ? お前ら」

 

「き……今日は厄日……ですわ……ガクッ」

 

 ボロボロになった姫様は最後そんな風に呟きながら、倒れてしまった。

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