六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
それにしてもこいつデッキビルドパック産の女性テーマに縁があるな……
「ありがとうございます! これで妖精達との演奏が上手くいきます!」
「いやいや、こっちこそ天界の天使の楽器を直せる貴重な体験をしてくれてありがとう」
ここは天界、人間達がいる下界とは違う世界にある世界であり、そこで私達ウィッチクラフトはドレミコードという、天界の一角であるドレミ界の天使の依頼を受けた。
内容は、クーリアと呼ばれる少女が使う指揮棒の修復と、状態維持の魔法をかけること。
ドレミコードは各々自分達の妖精がついており、ドレミコードが持つ指揮棒を使って妖精達を指揮し、その演奏で下界を浄化する使命があるようです。
この依頼を受けたのは勿論カイ。このウィッチクラフトでは、ウィザードクラフト・リカイと名乗っています。
ラビュリンスの依頼から3年が経過し、カイも立派なウィッチクラフトの一員となって感動で目頭が熱くなり、あんなにお転婆でブレーキの聞かないモンスターマシンだったリカイが落ち着いて本当に良かった……あのまま成長したら本当に手が付けられない子供になってしまうと思ってたからますます目頭が熱くなって……うぅ、泣きそうです。
「ではこちらが依頼料です。本当にありがとうございました!」
「はい。これからもウィッチクラフトをご贔屓に」
クーリアは意気揚々と店から出ていき、お金がたんまり入った袋をリカイは口を結びながらニヤついていた。
自分の成功体験を可視化されているからか、随分と嬉しそうであり、その顔を見るとこっちもついつい頬を緩ませる。
「ん? ハイネさんどうしたの? そんなにニヤニヤして」
私の緩んだ頬を見たカイはニヤついた顔を直し、稼いだ依頼料をウィッチクラフトの金庫に入れた。
「ご、ごめんなさい。嬉しそうな顔だなって思って」
「そう? じゃあ俺、ヴェールさんに仕事の報告してくるから」
「はい。お疲れ様です」
きちんと真面目に仕事をこなすリカイを見て思わず親心で感心している私に、背後から女性の声が聞こえてくる。
「『はぁ〜カッコよく成長してハイネお姉ちゃん嬉しいです。でも昔みたいにハイネお姉ちゃんとか、ハイネ姉とか呼んで欲しいな〜』」
「勝手に私の心を捏造しないでください、ジェニーさん」
「でも本心でしょ?」
「ええまぁ。昔のようにハイネお姉ちゃんとは呼ばれたい……って、何言わせるんですかー!!」
戯れ程度の拳をジェニーさんに叩きつけ、ジェニーさんは小悪魔の様に笑って私の事をからかってくる。
カイは見違えるほど成長しましたけど、この人の態度は全く成長していなかった。
「あはは、ハイネちゃん可愛いからいじめがいがあるわ〜」
「うぅ……酷いですよ」
「ごめんなさいね。それで? どう、ハイネちゃんから見たカイの様子は」
突然真剣なトーンで話すジェニーさんは私の事を見つめる。今のカイの様子の他に、ダークネスの力についても気になっている事を悟った私は、その瞳に吸い込まれるように口を開く。
「今では応用魔術も幅広く会得していて、多様な依頼をこなせています。ダークネスの力も、ラビュリンスからの依頼の時以降、目立った力はありません。ですが……」
「あのディアベルスターって魔女の事が気になる?」
私はなにも言わずに頷きで返した。
黒魔女ディアベルスター。罪宝という物を求めて世界を放浪としている女性であり、別名罪宝狩りの悪魔として指名手配されている危険な人物というのが一般的な人物像です。
しかし、私とカイは3年前にそのディアベルスターさんとラビュリンス様の城で遭遇し、不思議と縁を持った。
そのディアベルさんは3年後何故かカイを連れ出すと言いだし、今がちょうどその3年後になる。
何かを治したり、保全をするという雰囲気でも無かったので、少し気がかりにもなります。
「それに罪宝は人の心に巣食う宝とも聞いた事あります。そこにカイが介入したらと思うと……」
「間違いなくダークネスの因子が活性化すると。うーん、流石にそれは困るわね」
「そうですね……」
どうしても拭いきれない不安感に押しつぶされそうになっていると、工房の扉が開き、扉に付けられていた鐘が小さく鳴る。
いつもなら「いらっしゃいませ」と言うところを、この時ばかりは息を飲み込み、言葉が出なかった。
「久しぶりだな、泣き虫魔女」
その名に似合う黒衣装に灰色の髪をした魔女は私にそう言った。
「お久しぶりです。ディアベルさん」
「約束通りあのガキを借りるぞ。どこた」
「今あの子はマスターに依頼完了の報告をして席を外してます」
「そうか。ならここで待つ」
ディアベルさんは近くにあった椅子に座り、目をつぶってカイが来るのを待っていた。
「ねぇ、アレが噂のディアベルさん?」
「ええ。どう思いますか?」
「意外と若いわね。あの肌の潤いとか羨ましい〜」
「え、そっちですか? ジェニーさんも相応の潤いだと思うのですけど」
実際ウィッチクラフトの中では歳が上のジェニーさんは年齢的に言えばかなり若く見られる。
それほど羨ましがる必要なんてないほどに。
そんなジェニーさんはディアベルさんが座っているテーブルの向かいに座り、魔法で奥にあったお茶と菓子を皿に移動させ、その皿を自分達のテーブルまで浮かせた。
「初めましてディアベルさん。私はウィッチクラフト・ジェニー。息子がお世話になったわね」
「息子……あのガキの母親か?」
「そう。大事な一人息子をどうして借りるのか親として気になってこうして話をした訳なんだけど」
「それもそうか。まぁ隠す事も無いしな」
意外にもディアベルさんはジェニーさんの言う事を聞き、興味本位で私とカウンターの奥で聞き耳を立てた。
「私がアイツを連れ出すのは、罪宝の意志が感じられると思ったからだ」
「罪宝の意志?」
私もジェニーさんと同じ言葉を心の中で反芻させる。
まるでディアベルさんが罪宝を生き物として扱っている様な言葉遣いに違和感を持ち、罪宝に対しての興味ときな臭さが一気に込み上げてくる。
「罪宝の事をどれだけ知ってる」
「んー、強大な魔力を持ち、人間の心に巣食う呪われた宝という認識かしら?」
「大体あってる。だがそれだけじゃない。あいつらには意志が宿っているんだ」
「意志ね……それは貴女の肩にかけられている2つの手にも関係してるの?」
「気づいたのか」
「いいえ。息子とハイネちゃんが教えてくれたの。そっちのもふもふの手がシルウィアさんで、そっちの綺麗な手をしているのがルシエラさんよね?」
隠す必要が無いと判断したのか、御二方はお辞儀をするように手を動かし、ジェニーさんも驚きもせずにこやかに挨拶を交わした。
あれを見ても動じないなんて……流石ジェニーさん、胆力がある。
「話を戻すぞ。罪宝は意思がありそれぞれの目的がある。……その目的は知らないがな」
「意志があるから人間の心を狙っているのかしら、研究しがいがありそうで面白いわね……ふふふ」
ジェニーさんの知的好奇心が燻らせて、メガネを光らせてとても悪い顔をしていた。
その様子を見たディアベルさんは額に少しだけの汗を出し、椅子ごと離れようとするほど引いていた。
「と、とにかくだ。罪宝の意志を汲み取る事が出来れば、罪宝が何故意志を持つのか、その目的が分かるはずだ……そうすれば」
突然ディアベルさんの言葉の歯切れが悪くなり、その次の言葉を出さずにいた。
それ程何かしら隠したいものがあるのか、それともこの言葉に続く言葉がディアベルさんが罪宝を求める理由なのか……その真相は語られはしませんでした。
「話は終わりだ。私は罪宝の意志を汲み取り、私自身の目的の為にあのガキを借りる。心配するな、絶対に危害は加えない。金もある」
ディアベルさんは荷物から大きな袋を取りだし、金属音が鳴り響く音を出しながら袋の紐を解くと、中には大量の金銀財宝が詰め込まれていた。
「この財宝は?」
「アイツの依頼料は高いんだろ。少しばかり借りるから少し多めに取ってきた。一応トレジャーハンターだからな」
ジェニーさんは袋の中にある金貨を1枚取り、じっくりと観察した。
「言っておくが偽物では無い」
「大丈夫よ。ただ、財宝はそれぞれで価値が違うから依頼料に見合うかどうか分からないから、一応鑑定させて貰える?」
「構わない」
「ありがとう。エーデルちゃーん! ちょっときて貰える〜?」
ジェニーさんは杖に向かってエーデルさんを呼ぶと、工房奥から足音が聞こえてくる。
それ程時間が立たない中、後ろの扉が開かれ、私はお尻をドアに叩かれるように吹っ飛ばされ、顔面から木の床にぶつかった。
「えぇ!? ハイネなんでそんな所にいるの!?」
エーデルさんの驚く声でテーブルに座っている2人も私の事に気づき、私がお尻を突き出して半べそをかいている無様な姿を目に焼き付けていた。
「あらハイネちゃん。……それは新しいストレッチ?」
「馬鹿なのかアイツは」
「うぅ〜……」
穴があったら入りたい程恥ずかしく、そして情けない姿を忘れてくださいと連呼しても、ジェニーさんは絶対に忘れないと確信して思わず泣いてしまった。
そんな鳴き声に釣られるように、もう1人この場所にやってきた人物がいた。
「なんか大きな声出してどうし……えぇ!? ハイネさん、なんでお尻突き上げて倒れてんだ?」
「り、リカイ!? みみみみ、見ないでー!!」
1番見られたくなかった人に私の姿が見られ、私の声は近隣の人達にも少しのご迷惑をかけてしまい、その対応で私は落ち着きを取り戻した……。
「……ご迷惑かけてすみません」
「本当だよ……びっくりした」
「そうね〜思春期で多感な時期のリカイにとっては、ハイネちゃんのさっきの体勢は刺激が強いからね」
「はぁ!? べ、別にそんな事無いしぃ!?」
「あら、顔が赤いわよ?」
「もうやめてください〜〜……」
わざとじゃないし、ドアの近くにいた私が何より悪いので何も言えず、ただ羞恥心を抉る言葉を聞くしかない私は顔を見せないように机に顔をつっ伏した。
「……で? リカイを借りる件はどうなった」
「エーデルちゃんの鑑定によると、この子を2ヶ月程度借りる程の価値だそうよ」
「なら話は決まった。さっさとこいつを……」
「たーだーし、条件があります」
ディアベルさんはカイの腕を掴もうと手を伸ばしましたが、ジェニーさんがその手を止めた。
「条件だと?」
「罪宝の捜索に私とハイネちゃんも連れていくこと。それが条件」
「ええ!? なんで私もなんですか!?」
「だって危険な所に私一人じゃ厳しいもん」
「だとしてもなんで私なんですか!?」
「ウィッチクラフトの中で一番攻撃力があるから?」
「なんですか攻撃力って! そんなもの高い訳ないじゃないですか!」
「まぁまぁ良いじゃない。ほら、ハイネちゃん何年も有給消化しきってないからここで消化しないと」
是が非でも私を連れ出したいジェニーさんの意図は知りませんが、カイの事が気がかりなので私にとっても都合が良い。
ですがそれ以上に危険が隣合わせの今回の件はどちらかと言えばスルーしたいのが本音です。
ラビュリンスの時も危険でしたが、アレは向こうが半ば友好的だったからの話であり、今回は友好的な物も無ければ情報も少ない。
いくらお金を積まれても、カイの命には替えられない。
覚悟を決めた私は財宝がある袋を返そうと手を伸ばそうとすると、カイは立ち上がって自分に意識を向けさせた。
「母さん、ハイネさん。これは俺の依頼なんだ。だから俺一人で充分だよ」
まさかのカイは自分一人で行くと言い出し、私の心の中にある意見を全否定した。
「だ、ダメです! 危険です!」
私は行かさせまいと、手を引こうと手を伸ばした。
だがカイは私を押しのけてその手を拒み、嫌そうな顔を向けた。
カイがここに来て初めてした顔に胸が突き刺されるような痛みが走る。
チクチクと針で縫われる様な痛みが続く度に悲しくなり、突き放された様な寂しさも感じた。
カイはそんな私を気にせず、1人で行ける理由を述べ続けた。
「大丈夫だって! 俺はもう子供じゃ無いし、俺は天っっ才だから」
カイは自分の才を見せびらかすように様々な魔法を唱えると、手のひらに炎、水、風、地、光、闇の魔法元素を同時に詠唱し、その元素を掛け合わせた。
掛け合わされた元素は透明な膜の中で新たな元素となって生まれ、小さな花火が巻き起こった。
他にも星々を生み出したり植物を種から一瞬で花を咲かせるほど成長させたりと披露した。
「へへ〜ん。凄いでしょ! 元素を複合する事でどんな物質も作ったり、俺の時間操作でどんな物も直ぐに成長する! いやぁ〜天才だな、俺」
まるでマスターヴェールの様にドヤ顔で高らかに自分の能力誇示すると、ジェニーさんは我が子の成長を感激し、称えるように拍手をする。
「きゃー! 流石私の息子〜!」
「ドヤァ……!」
(自分でドヤってる……)
ジェニーさんもジェニーさんでカイの事を甘やかすからこんな風になったと思うと、この人達は本当に親子なんだと改めて思い知る。
「なるほどな……わかった」
「やっぱり俺一人で……」
「母親とそこの泣き虫の魔女を連れていく」
「なんでぇぇ!?」
自分の力を見せたのにディアベルさんに信用されていないと思ったカイは脳天に雷が下りるほどのショックを受けた。
「俺だけでも大丈夫だって!」
「誰がお前みたいになクソガキを信じるんだバカ」
「俺はもう子供じゃない!」
「そういう所が子供だ。準備が出来たら声をかけろ。出来次第出発する」
話を終えようとディアベルさんはカイに背を向け、カイが何を言っても聞く耳を持たなかった。
自分の自尊心とプライドを傷つけられたカイは悔し紛れに天井を見上げ続け、怒りを落ち着かせる。
少し落ち着きを取り戻してもカイの悔しさは消えず、少し大きな足音を立てながらカイは自分の部屋へと戻ろうとした。
「あ、カイ……準備するなら私も手伝っ」
「いらない! それぐらい俺一人でも出来る!」
怒り任せに扉を開け、勢いよく扉を閉められる。
取り残された私は伸ばした手を戻す事も、急ぐ事もなく、ただ自分の手を見つめて少しの悲しさと寂しさだけが残り、止まらない涙を流した。
強く杖を握りしめて落ち込む私にジェニーさんは肩に手を当てると、私に暖かい言葉を届けた。
「ごめんねハイネちゃん。あの子今は反抗期なのよ。気にしないで良いわ」
カイの年齢的に思春期や反抗期に突入するのは分かってはいる。
成長するにつれて出来る事と出来ない事を知り、価値観の違いや自分で考えられる事で訪れる反抗期は成長には必要なのは理解はできる。
ですが、あんな風に真っ向から否定されるのは良い気分にはなれない。
気にしないと言われても、私の脳裏には私を拒絶したカイの顔がこびりつき、既にカイと会うのが気まずくなった。
「ハイネちゃん。良かったら一緒に準備しましょう? 折角私達2人がカイと一緒に行くんだから、念入りにね?」
「そう……ですね」
共に行けるだけでも僥倖と思い、せめて危険な場所に行くという事でお守りとして魔除けの石を作ったり、一応護身用のナイフを新人のシュミッタに作らせ、こっそり持っていく事にした。
数時間後、準備を終わらせた私達はまだ準備が終わらないカイを待ち続けた。
「……カイ、遅いですね。何かあったのでしょうか」
「大丈夫よ。どうせ、何持っていくか迷っているだけだから。ところでディアベルさん。私達はどこまで行かされるのかしら」
「北にある砂漠の向こうにある遺跡だ」
ディアベルさんは随分と使い古した地図を広げ、最近付けたであろう赤い丸印の所に指を指した。
指を指された砂漠はここからかなり遠く、普通の移動手段でも一ヶ月はかかる。
「随分と遠いわね……」
「あの、移動手段は……?」
「徒歩だ」
「……は? え、いやいや。車とか飛行魔法を使っても一ヶ月はかかるんですよ? そういう乗り物は……」
「持ってない。金もアイツを借りるために殆ど使った」
「…………」
なんとも言えない沈黙が流れ続け、何を言えばいいのか分からなかった。
この人もしかして意外とドジっ子なのでしょうか。私も人の事が言えないのですけど……。
ジェニーさんも、面白い人を見つけて笑いを堪えており、体をピクピクと震わせていた。
あれは新しいおもちゃを見つけた顔であり、隙を見てはディアベルさんを弄るんだろうなと思っていると、カイが大きな荷物を持って現れた。
「よーし準備完了! で? どこにどうやって行くの?」
「それを今話したところよ。……そうだ、アレが使えるかも」
ジェニーさんは荷物から小さな羽を取り出した。
羽は蒼穹に輝いていて、触れたら壊れそうな水晶のように透明だった。
「ジェニーさん、それは?」
「
「ジェニーさんいつの間にそんな物を……」
「暇な時に少しね。これで行くだけなら問題ないわ。帰りは知らないけど」
「行く手筈が整ったのなら行くぞ」
「よーし! 早く行こう!」
「ちょっと待って! 心の準備がまだ……」
「ヤダ! 待たない! 待てない!」
ジェニーさんからミストバレーペンナを受け取ったカイは意気揚々と目的地まで行くのがとても待ちきれないようだった。
羽を天にかざすと、羽は翡翠に輝かせると羽はカイの手から離れて大空を優雅に飛び立つと、私達を包むように天から光が差し込み、私達の足は地面から離れ、羽に続くように飛び立った。
私が住む町は直ぐに飴玉のように小さくなり、私の目には地平線の彼方まで見える海が広がった。
「うおおすげぇ! 海と空が近い!」
カイは空を飛ぶ感覚に興奮し、私も心ばかりの喜びと地に足が離れている感覚の恐怖に板挟みになりつつも、空を飛ぶ感覚を楽しんだ。
街は直ぐに見えなくなり、海を越え、山を超え、見た事ない街を超えるのを繰り返すと、太陽の日差しが強くなり続けると、ようやく砂漠が見えてきた。
そして砂漠の奥には黒いピラミッドがポツンと立てられ、見るからに怪しい雰囲気を漂わせていた。
「あ、あれですかね?」
「これなら直ぐに砂漠の遺跡につけるけど、遺跡の情報が知りたいから近くの街に降りましょう」
「ならあそこに下りるぞ」
ディアベルさんが指を刺したのは砂漠のすぐ近くにある小さな街だった。
建築物の殆どは煉瓦でしょうか? 太陽光のせいで色素が全体的に薄く、言ってしまえば古代に取り残された街というのが第一印象だった。
日差しの強さを背にし、数時間ぶりの地上へと足をつける。
「ふぅ……熱い」
「太陽を遮るものが何も無いからね。リカイ、ちゃんと水分補給するのよ」
「分かってるよ。……あぁ、そうだ。クロ、もういいよ」
「ガウガウ!」
カイの大きなカバンから
「つ、連れてきたんですか?」
「良いじゃん別に。クロだけ留守番なんて可哀想だし」
クロもそうだそうだと私に抗議するように吠えると、私は何も言わず、過ぎたことは仕方ないと自分に言い聞かせた。
「さてと、空を飛んで見た感じ、ここから遺跡まではまぁまぁ距離があるけど、私とハイネちゃんの魔法で何とかなるわね」
「なら今日は情報収集だな。そこの酒場に行くぞ」
「さ、酒場!? 子供のリカイもいるんですよ! ダメです! そんな所には行かせられません!」
「私も流石に未成年に酒場はちょっとね〜」
「俺は子供じゃない!」
「ちっ……過保護な奴だ。まぁいい。腹ごなしにそこの店に行くぞ。安心しろ、ただの定食屋だ」
「はいは〜い。リカイ、こっちよ。酒場に行かないの」
ジェニーさんが酒場に行こうとするカイの腕を掴むと、カイは不貞腐れながらもディアベルさんが紹介してくれた定食屋へと足を運び、お昼すぎにも関わらず中は賑わっていた。
しかし、賑わっているにも関わらず空いている席は空いている。
どうしたものかと周りを見たすと、1席だけ人が集中しているところがあった。私達は気になってその席を覗くと、テーブルの上に積み上げられたお皿の向こうには2人の子供がいた。
「すみません〜! コシャリおかわりくださ〜い!」
「お〜すげぇなあの金髪の嬢ちゃん! もう50皿目だぜ!」
どうやらあの金髪の子供が体格に似合わない大食いにお客さんは感心していた。
私も思わず感心してしまった。……それよりもあの女の子、何だか少し不思議な魔力を感じる。
「ジェニーさん、あの女の子は……」
「多分魔法使いね。それよりもその向かいにいる白髪の男の子の方が気になるわ」
ジェニーさんは白髪の男の子に注目していた。
ですが彼はなんの魔力も感じませんが……ジェニーさんの他にカイも同じように何かを感じていた。
「エクレシア、もうそれぐらいにしないか?」
「ダメです! もっと食べたいです! アルバス君ももっと食べましょうよ。ほら、このバグラヴァというお菓子も美味しいよ!」
「全く相変わらずだな……ん?」
突然アルバスと呼ばれた白髪の男の子がこちらを……と言うより、カイをじっと見ていた。
「おい、何してるんだ。早く飯を食って情報を集めるぞ」
「あっ、はーい」
カイはアルバスという少年に何かを感じながらも、罪宝についての情報を得る為にまずは食事をとる事に決めた。
「さてと、何食べようかしら」
「ここならケバブが美味いぞ」
「じゃあ私はそれで」
「じゃあ……私はコシャリで。カイはどうしますか?」
「…………」
カイはメニューを見ず、じっとアルバス君を見つめていた。
あの男の子に何か感じているのか、少し目を離したらそっちに行ってしまいそうな程だった。
「リカイ、早く決めなさい」
ジェニーさんのお叱りにカイは慌ててメニューを見始めた。
「わ、分かってる。じゃあ、ハマーム・マシュイで」
全員メニューを決めてウエイトレスに注文をし、しばらくして注文した料理がやってきた。
どれも見た事も無い料理で好奇心がうずき、コシャリと呼ばれる料理を口に入れた。
「か……辛っ! これ辛いです〜!!」
「えー? そんなに? ちょっと1口……うわっ、ホントね。でも美味しいわ〜これ!」
「俺にもちょうだい」
「ガウガウがーう」
「私にもよこせ」
クロも他の料理を食べたいのか、カイのハマーム・マシュイやケバブも食べ進め、初の異国料理を堪能した。
ディアベルさんも情報集めの為に店を選んだのに料理を堪能し、少し楽しい食事となった。
「おい、そこの店員。ちょっと来てくれ」
「はいはーい? なんでしょうか?」
「この砂漠の向こうにある遺跡について何か知っている事は無いか?」
「あー……すみません、私砂漠あんまり行かなくて……」
「そうか。悪かったな、急に呼び出して」
「いえいえ〜。あ、でも遺跡は近づくと呪われるとか魂が抜かれるとか言ってましたね。現にウチの知り合いが遺跡に言って帰ってくると、何だか魂が抜けたようになって……」
いきなり恐ろしい情報を聞いてしまった私は料理を喉に詰まらせ、ことの恐ろしさを思い知った。
「ゲホッゴホッ……呪われなんて怖いですね」
「まぁ十中八九、罪宝のせいだな」
「もう少し情報が欲しいところね。今日は情報収集に徹して出発は明日にしない?」
「私もジェニーさんの言う事に賛成です。予想以上に移動が早く済みましたし、時間はあります」
「えぇ……ぱぱっと行ってみたいのに。俺一人で行っていい?」
「ダメよ。それは絶対にダメ」
身震いする程ジェニーさんの低い声にカイは思わず立ち上がり、カイの事を睨んでいるジェニーさんから目を逸らしつつも、反抗期らしく反論してきた。
「な、なんだよ! ちょっとぐらい良いだろ! 偵察だよ偵察!」
「だとしてもダメよ。砂漠には道標は無いし、迷ったら遭難よ」
「俺は魔法で空飛べるから遭難なんかしねぇよ!」
「とにかく、ダメな物はダメよ」
ジェニーさんには強く当たれないカイは渋々とジェニーさんの言う事を聞きながらと、不貞腐れてしまって窓の外を眺めた。
「全く、反抗期は大変ね。ディアベルさんもそれで大丈夫?」
「いいぞ。なら早めに宿を探すとするか」
食事を終えた私達は宿を探すと同時に街の人から遺跡についての情報を集める為に聞き回りを始めた。
しかし、帰ってくる情報はどれも似たような物ばかりでした。
近づくと呪われる、魂が抜かれるなど、遺跡の内部や何があるのかの情報が一切無く、結局なにも分からないまま夜になり、その時に見つけた宿で一晩を過ごすことになりましたが……。
「えぇ、部屋が2つしか余ってないんですか?」
「すみません〜……ですが、お二人分の部屋なので分けて貰えれば……」
「じゃあ2対2で別れられるのね。リカイ、誰と一緒に寝る?」
「はぁ!? 俺が選ぶの!?」
「良いじゃないの。選り取りみどりで〜。で? 誰にする? 優しいママの私か、可愛いハイネちゃんか、クールビューティーなディアベルさんか」
「て言われてもなぁ……」
リカイはチラッと私達3人を見る。
皆、それぞれ違う魅力がある女性ばかりだ。こんな中ら誰を選べばいいのかと悩みつつも、選ぶ事自体恥ずかしかっていた。
そういう私も選択肢の中に勝手に加えられて少し恥ずかしくなり、思わず目を逸らす。
「じゃあ……ディアベルさんと一緒の部屋にする」
「私だと?」
自分が選ばれると思っていなかったのか、ディアベルさんは冗談と思っていた。
「本当は1人がいいけど、母さんやハイネさんと一緒だったら絶対に何か小言とか言いそうだから」
「私だとそう言わないと。まぁ当たってるな」
「この思春期め〜。じゃあ私はハイネちゃんと仲良く一晩過ごしてくるわね〜」
「あの、大丈夫でしょうか?」
「何が? カイがディアベルさんと一線超える事が心配とか?」
「違います! ……まぁそれも心配といえば心配ですけど、カイが夜中に出歩かないか心配です」
昼間カイは1人でも遺跡に行こうとしていたのを思い出し、ふとそう思ってしまう。
あの子は自分で何でも出来ると分かっているからこそ、無茶な行動をしても何とか出来ると思っている。
その驕りと無鉄砲が合わさってしまえば、行先は悪い物だと決まっている。
自分からカイと同じ部屋にすると言い出すべきだったかと後悔し、カイはディアベルさんと一緒の部屋に行ってしまった。
「大丈夫大丈夫。ディアベルさんが止めてくれるわよ。それよりも新しい化粧水作ってみたの。試してみて」
「もう……楽観的ですね」
「ふふ、たまには自分の弱さや驕りを思い知らなきゃね」
___
__
_
「……よし、ディアベルさんとクロは寝てるな」
皆が寝静まった静かな夜、俺は荷物を持って部屋から出ていき1人であの黒い遺跡に行こうとした。
母さんもハイネさんも皆俺の事を子供扱いして舐めている。
あの2人や、いつまでも俺の事を子供扱いするウィッチクラフト達に俺の力を見せてやるんだ。
俺はもう一人前の魔法使いだって。そう意気込んで部屋を出ようとすると、突然ディアベルさんが来ていた黒い服についていた2つの手が俺を掴んできた。
「なっ! このルシエラさんとシルウィアさん!? う……うわぁぁ!」
2人の手に足をすくわれて大きな物音を立てながら転んでしまった。
まずい、このままではディアベルさんが起きてしまう。直ぐに2人の手をひっぺがそうとすると、俺の前に色素の薄い肌色の筋肉質な足が目に映った。
「うるさいぞ。お前たちは何してるんだ」
「あ、あはは……」
寝ている所を邪魔されて怒っているディアベルさんの顔は鬼のようだった。
顔を引き攣りながら俺の事を見下すようにして睨んでいるディアベルさんから逃げようとしてもルシエラさん達に掴まれて思うように動けず、ディアベルさんは胸ぐらを掴んで俺を持ち上げた。
「ぐぇぇ〜ぐるじぃ〜!」
「黙れ。ガキはさっさと寝ろ」
「ね、寝るから離して!」
ディアベルさんは俺から手を離し、俺は素早く潜り込んで狸寝入りをした。
今度はルシエラさん達に気づかれないように慎重にベッドから降り、四つん這いで物音を立てずに移動する。
今度はバレずに部屋の扉まで行くことが出来、あともう少しで部屋から抜け出そうとしたその時、俺の背後から黒いダガーが横を通り過ぎ、すぐ側にある壁に突き刺さった。
「イイカゲンニシロ……! 」
(ふ、振り向きたくない)
怒ってる。間違いなく怒ってる。振り返ったら絶対に怒っているディアベルさんの顔が目に入って悪夢になりそうだから振り替えれず、なんならこのままゴリ押しで出ていこうと考えた瞬間、ディアベルさんの手が俺の足につかみ、まるで悪魔に住処へ案内される様に俺は明かりのついてない部屋に戻っていく。
「いやぁぁ! ごめんなさい! もうしませんから!」
「うるさい黙れ。そして信用出来ない」
ディアベルさんは俺をベッドに押し倒すようにすると、がっちりと俺の体を掴み、抱きしめるようにした。
抱きしめられて顔がちょうどディアベルさんの胸に埋めるような形になり、意外と柔らかでむにゅっとした胸に包まれて息が苦しくなる。
「うぷっ……はぁ! ちょっと! 何するんだ!」
「こうしないとお前はまた抜け出す。それに、大人の胸が堪能出来て嬉しいだろ。エロガキ」
「う、嬉しくなんて無い! それに俺はこんなの慣れてるし!?」
本当はちょっと嬉しいけど、それを言うとまた子供扱いされそうで嫌だ。
精一杯の強がりを見せつけてディアベルさんに対抗しようとすると、いきなりディアベルさんは俺の頭を優しく撫でた。
「お前はまだ1人で生きなくても良い。焦るな、お前にはまだ早すぎる」
「……?? いきなり何を言ってるんですか」
「さぁな。けど、お前を大事にしてくれている奴はいる。そいつらを大事にしろ。……私にはもう、そんなやつは居ないからな」
まるで母さんの様に優しく頭を撫でているディアベルさんの顔は暗くてよく見えなかったけど、少しだけ悲しそうな顔をしていた様な気がした。
「今日はこのままお前を離さないから覚悟しておけ」
そう言ってディアベルさんは少しキツめに俺を抱きしめ、これは本気だと悟った俺はもうこの部屋から抜け出すのを諦めた。
「分かったよ。というか魔法使いなのになんでこんなに力あるんだよ。魔法あるから腕力なんていらないでしょ」
「分かってないな。筋力はどんな時でも通用するんだ。お前ももっと鍛えろ」
「また今度やるよ。……ふわぁ、眠い」
今日は色々あったのと、何故か落ち着く感じがして眠気が襲いかかってきた。
「早く寝ろ。……良い夢を見ろよ」
最後にまたディアベルさんは俺の頭を撫で、ルシエラさんとシルウィアさんからも一緒に頭を撫でられながら目を閉じる。
___
__
_
灼熱の太陽が照らす朝、中々起きないカイとディアベルさんを起こそうと2人がいる部屋をノックする。
しかし2人からの返事は無く、微かな心配が胸の中で込み上げてくる。
「リカイー? ディアベルさん? そろそろ朝ごはんの時間ですけど……」
「もう開けちゃったら? ハイネちゃん」
「良いんでしょうか?」
「良いんじゃない?」
時間も時間ですし、私はジェニーさんの言う通り扉を開ける事を決めた。
しかしここには鍵がかかっており、宿の主人から理由を言ってマスターキーを貰ってそれを使って扉を開けた。
するとそこには……2つベッドがあるにも関わらず、同じベッドで抱き合いながら寝ている2人が目に映った。
(……え?)
何かの見間違いだと思って目を擦っても、やっぱりカイとディアベルさんが一緒に寝ていた。
雷が頭の上に落ちた様な衝撃とショックを受け、一瞬私の魂が抜かれるようだった。
「あ……あわわわ……! ど、どうしてカイとディアベルさんが同じベッドで寝ているんですか!?」
「あらら〜♡これは意外と大胆」
「え……まさか本当に一線超えたとか!? 〇〇〇とか×××とか……まだカイは子供なのに!?」
「ハイネちゃん落ち着いて? 公共の場で言ってはいけない言葉言ってるから」
「んん、うるさいぞ。朝っぱらから……」
肌着姿のディアベルさんはまぶたを擦りながら目を覚ます。同時にカイも起き、2人はまるで長い事一緒に暮らしたかのようにも思えた。
「ふわぁぁ〜……ん? なんで母さんとハイネさんが居るの?」
「2人を起こしに来たのよ。早く朝ごはんにしましょ?」
「ふあゎーい……」
眠そうなカイはほわんとした返事をしながらも私の裾を掴んで一緒に朝食を食べようとすると、ある少年と少女が私達の前に現れた。
「少し良いか?」
「貴方達は……昨日レストランにいた?」
「俺はアルバス。こっちはエクレシアだ。少し話を聞いたんだが、貴方達は砂漠の向こうの遺跡にいくのか?」
「ええ。ですがそれがどうかしたのですか?」
「俺たちもそこに連れて行ってくれないか?」
オリカをまとめた章が欲しい?
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欲しい!
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別に( *¯ ³¯*)