六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

179 / 196
ワンターン・スリーキル

 このデュエルも終盤に差し掛かり、終わりが見えてきた。いくら3対1とはいえ、ここまで辛い盤面が形成されるとは思わなかった。

 

 

 

 現在の状況 6ターン目終了

 

 大和     燐     火々璃

 ライフ:8000 ライフ:500 ライフ:6500

 手札:0    手札:0    手札:3

 □□□□□   □□⑤⑥□  □□□□□

 □□⑦□□   □□④□□  □①□②□

 

 □□□□□

 □□□□□

 焔

 ライフ:250

 手札:0

 

 ①:天霆號アーゼウス

 ②:エクソシスター・マルファ

 

 ④:珠の御巫フゥリ

 ⑤:御巫の火叢舞

 ⑥:伏せカード

 

 ⑦:真紅眼の鋼炎竜(レッドアイズ・フレアメタルドラゴン)

 

 

 

「……結構エグい事してくんなぁ、親父」

 

 俺のライフはたったの250……。効果が発動する度に500のダメージを与えてくる【真紅眼の鋼炎竜(レッドアイズ・フレアメタルドラゴン)】が存在する限り、カード効果を使えば俺はこのデュエルに負ける。

 

(場には何も無い。手札も0。しかもカード効果を使えばその時点で終了か……)

 

 ほぼ詰みで、誰もが負けると思う盤面だ。効果が使えないでどうやって勝つって言うんだ。ふざけんなって言いたい。

 だが、俺はまだ負けてない。何故なら俺はまだドローすらしちゃいない。

 

 この状況を覆すカードが俺のデッキにはある。墓地には存在しないという事は、このデッキの中で早く出せと叫んでいるに違いねぇ。

 

 度重なる激しい攻撃を受け、唯一感じる事が出来る感覚、痛みのせいで小刻みに震える右手でデッキに触れる。指先から伝わるのは、今まで感じた事のないプレッシャーと、果てしなく重い1枚のカードだった。

 

 プレッシャーと、負けへの恐怖がカードの重りとなり、まるで引くことを拒んでいるかのようだ。

 

「このドローは……果てしなく重いぜ」

 

 だが、逃げない。何が何でも引いてやる。

 

「だが引いてやる……っ! 見せてやるぜ、俺の燃え盛る、デュエル魂って奴をなぁ! 俺のターンっ、ドロォォォォォォ!!!」

 

 岩のように重かったカードはデッキから離れた瞬間軽くなり、それを刀の様にデッキという鞘から抜くようにドローする。

 勢いが強いせいか親父達の所まで風圧が届き、空気が一変する。

 

「……よぉ、待ってたぜ。お前をよ」

 

 引いたカードを確認した瞬間、頭の中で逆転への布石が見え始めた。

 足を踏ん張り、ドローしたカードを親父に向かって投げつけると、カードは親父のフィールドに突き刺さる。

 次の瞬間、フィールドから巨大なモンスターが【真紅眼の鋼炎竜(レッドアイズ・フレアメタルドラゴン)】を踏み潰し、親父の場に新たなモンスターが現れた。

 

 何が起こったのか親父達は理解が出来ず、目の前にいる亀の様な姿をした巨大なモンスター……【ガメシエル】をポカンとした顔で見上げた。

 

「俺が引いたのは【海亀壊獣ガメシエル】。こいつは相手モンスターをリリースする事で、相手の場に攻撃表示で特殊召喚出来るんだよ」

「効果を使ったのなら、何故ダメージが入らないんだ?」

「効果で特殊召喚した訳じゃねぇからな。コストとして、そっちのモンスターをリリースしたんだよ」

 

 そう、効果による召喚とコストによる召喚は別だ。

 

 効果による召喚は何かしらのカードを対象にしてから【発動】してしまい、これだとチェーンが挟まれて俺は負ける。

 

 だが、【ガメシエル】の様なコストを用いての特殊召喚は条件による特殊召喚という分類になり、チェーンを一切挟まない召喚になる。

 だから、【真紅眼の鋼炎竜(レッドアイズ・フレアメタルドラゴン)】のバーン効果を踏まずに済んだわけだ。

 

「まぁ要は突破出来た訳だ! こっから先はガンガン行くぜ! 墓地の3枚目の【トランザクション・ロールバック】を除外して効果を発動! もっかい墓地の【活路への希望】の効果を使う!」

 

 炎山焔 残りライフ250→125

 

「親父とのライフ差を参照し、3枚ドロー!」

「私を忘れんなっての! 墓地に触れたことにより、【マルファ】の効果発動! EXデッキから【エクソシスター ・アソフィール】を特殊召喚!」

 

【マルファ】から【アソフィール】に姿を変えたその時、【アソフィール】の弓矢が俺の墓地に向かって突っ込んできた。

 

「【アソフィール】の効果でお互いに墓地のカードは発動できない!」

「させっかよ! 墓地の【ブレイクルー・スキル】の効果発動! こいつを墓地から除外して【アソフィール】の効果を無効にする!」

「アンタどんだけ墓地から効果発動するのよ……! 墓地なんだからじっとしなさいよ!」

「うっせぇ! これが俺のやり方なんだよ」

 

【アソフィール】の矢は墓地に触れる前に粉々に消滅し、ババアは効果が通らなかった事で歯ぎしりをした。

 

「こっから反撃だ! 墓地の【妖刀ー不知火】の効果発動! 墓地のコイツと【霊道士チャンシー】でレベルの合計と同じシンクロモンスターを特殊召喚する」

 

 合計はレベルは8。いきなりあのカードを特殊召喚は出来るが、それだと勝てない。だから呼び出すカードはこいつと決まっている。

 

「来い! 【戦神ー不知火】!」

 

 俺のフィールドに【戦神ー不知火】が現れ、アイツは俺のやろうとしている事を分かっているのか、こっちに目を向けて力強く頷いた。

 

「魔法カード【魔法石の採掘】を発動。手札2枚を捨て、墓地から魔法カードを回収できる。俺が回収するのは当然【不知火ー炎舞の陣】。そしてこれを発動!」

 

 この圧倒的な不利な状況を押し返せと言わんばかりに激しく俺の周りに九つの炎の柱が囲むように燃え盛り、それに呼応するかのように俺のEXデッキに眠る【不知火の太刀】が赤く輝いた。

 

「俺は【炎舞の陣】の効果発動! 自分フィールドのSモンスターを素材にして、同レベルのSモンスターをS召喚する!」

 

 九つの炎が【戦神】を包み込み、姿が変わり、人の形をした物が炎を纏った刀が俺の手の中で作りあげられる。

 

「煙炎漲天! 一刀両断! 全てを断ち切る俺の切り札! 【炎転生遺物ー不知火の太刀】!」

 

 炎転生遺物ー不知火の太刀

 レベル8/炎属性/アンデット族/ATK2800/DEF0

 

「【不知火の太刀】の効果! こいつを俺の魔法・罠ゾーンに移動させ、バトルフェイズのみモンスターとして扱う!」

 

 つまりは俺の装備カードって事だ。【不知火の太刀】を【炎舞の陣】のリンク先に移動させた事により、【炎舞の陣】の効果が発動する。

 

「【炎舞の陣】の効果発動! デッキの上から3枚捲り、その中の1枚を手札に、1枚は墓地に、1枚は除外させる!」

 

 3枚のカードが俺の前に表示され、手札に加えるべきカードを考える。

 今の俺にとって最大の障壁は燐の御巫だ。

 御巫は俺にとって相性が悪く、下手にモンスターを出せばその場で終わってしまうため、これ以上モンスターは出せない。

 

 除去しようにもフゥリがいるせいで御巫カードに対象は取れないし、破壊もできない。極めつけはあの一枚の伏せカードだ。3枚の中に伏せカードを破壊するものはある。

 だが、俺の直感はこのカードでは無いと言っている。直観を信じ、一枚のカードを手札に加えた。

 

「更に墓地の【錬装融合】をデッキに戻してカードを1枚ドローする」

 

 ドローしたカードはとある罠カードだった。これが果たして活路になるのか分かんねぇが、これで準備は整った。後は……真っ直ぐ行くのみ! 

 

「行けるとこまで行くぜ! このままバトル! まずは【アーゼウス】に向かって攻撃だ!」

 

 不知火の達を握りしめ、俺自身がフィールドに降り立った瞬間、不思議と体の痛みが無くなり体が軽くなった様な気がした。

 多分気の所為だが、気のせいでも体が動けるなら問題ない。山のようにデカいアーゼウスに向けて走り出し、アーゼウスは近づく俺に向かって右手を振り下ろしていく。

 

 まさに隕石の様な振り下ろす拳を前に、対抗して刀を突き出す。

 巨大ロボットとの根比べをする中、刀が紅蓮の炎を刀の周りで燃え盛っていた。

 

「【不知火の太刀】の効果発動! ダメージ計算前に墓地の炎属性・アンデット族のカードを除外して、除外したモンスターのレベルかランクの数×200攻撃力を上げる! 俺は【戦神ー不知火】を除外!」

 

 炎転生遺物ー不知火の太刀 ATK2800→4400

 

 効果を発動し、炎が刀に纏う。刀は巨大な炎の刀へと姿を変え、アーゼウスの拳を粉々に砕け散らせる。

 破壊された衝撃でバランスを崩したアーゼウスに向かい、俺は刀を振り下ろし、炎の斬撃をアーゼウスの体に傷が生まれ、更にダメ押しにと炎の渦がアーゼウスを飲み込んでいく。

 

「更に【炎舞の陣】の効果発動! こいつのリンク先のモンスターの攻撃力をこのバトルの間、倍にさせる!」

 

 炎転生遺物ー不知火の太刀 ATK4400→8800

 

「攻撃力8800!?」

「まだだ! 更に【不知火の太刀】で相手に与える戦闘ダメージは倍になる!!」

「てことは……ダメージは1万越え!?」

 

 アーゼウスの攻撃力は3000に対して8800。普通なら5800のダメージになるが、【不知火の太刀】はその倍、11600のダメージを与えられる。

 この時点で負けを悟ったババアはフィールドのアーゼウスが破壊されて粉々に破壊され、隣にいたアソフィールも爆発の余波に巻き込まれる。

 

「火々璃!」

 

 親父がババアの事を庇うために走り出し、ババアを覆いかぶさるようにして抱きかかえた。

 だが、その瞬間親父たちの周りに炎の壁が形成され、親父たちを爆発から守り、親父たちの前には妲己が経っていた。

 

「妲己……?」

「だめーじはそ奴と焔だけの約束じゃからのう」

「すまない、ありがとう」

「まぁ、次の攻撃は防がんぞ?」

 

 妲己は俺を見ては小さく笑い、親父はババア……お袋を付いた砂埃を払って怪我がない事に安堵し、愛おしそうに髪を撫でた。

 

「良かった……。怪我が無くて」

「あんた、無茶しすぎ」

「夫が妻を守らなくてどうするんだ」

「……それ言うのはズルいっての」

「ねぇ! 今そんなところでいちゃつかないで!? 真剣勝負の最中なの忘れてない!?」

 

 燐の突っこみに親父達から出ているピンク色の雰囲気をしまい込ませ、二人は軽く咳ばらいをして名残惜しくも距離を置いた。燐が止めなかったらそのままイチャイチャすること間違いない。

 そういう親だってこと、すっかり忘れていたぜ……。

 

「ま、まぁ大人の余裕って事で……さぁ来い! 焔!」

「んじゃあ遠慮なくやらせてもらうぜ。【不知火の太刀】の効果で除外したモンスターがSモンスターだった場合、もう一度攻撃が出来る!」

 

【戦神ー不知火】は炎属性かつSモンスターだ。つまり再度攻撃出来る。だが、【炎舞の陣】の攻撃上昇効果はここで切れる。

 

 炎転生遺物ー不知火の太刀 ATK8800→4400

 

「親父に攻撃する前に墓地の【逢華妖麗譚-魔妖不知火語】の効果発動! 墓地のこいつを除外し、除外されているモンスターを墓地に戻す!」

「……ということはつまり」

「そういうことだ! このまま【ガメシエル】とバトル! 【不知火の太刀】の効果で【戦神ー不知火】を除外し、攻撃力がアップ!」

 

 炎転生遺物ー不知火の太刀 ATK4400→6000

 

 戦闘に入った瞬間、不知火の刀の炎が更に燃え上がる。

 炎が紅蓮に染まる度に俺の中の闘志も熱くなり、墓地の【戦神】を除外する。

 

「更に【炎舞の陣】の効果! こいつの攻撃倍化の効果は、別のモンスターを攻撃すればもっかい使える!」

 

 炎転生遺物ー不知火の太刀 ATK6000→12000

 

 これで攻撃力は更に上昇し、親父を倒せる算段は整った。

 

「行くぞぉぉ! 親父ぃぃぃ!!」

「来いっ! 焔!!」

 

 叫びと共に刀を激しく振り下ろし、炎の斬撃がガメシエルに襲いかかる。

 斬撃がガメシエルの鱗を焦がしながら貫通し、やがて全身が炎に飲み込まれていき、最後に炎が爆発して【ガメシエル】が破壊される。

 

 爆風の衝撃を一身に受けた親父は爆発に吹き飛ばされながらも足は曲げず、身体中が傷つきながらも倒れる事は無かった。

 苦痛の表情どころかまるで成長を喜んで満足そうな笑顔を浮かばせた後、親父はゆっくりと後ろに倒れた。

 

「大きくなったな……焔」

 

 炎山大和 残りライフ8000→0

 

「大和!!」

 

 最後に親父は大の字に倒れ、ババアは倒れた親父に駆け寄った。

 やりすぎたかと内心焦ったが、親父は息をしていた。ババアもその事を知ると、倒れた親父に体を寄せては自分の膝に頭を乗せた。

 

「もう、馬鹿なんだから。燐! アンタも頑張りな!」

「分かってるから!」

 

 親父もババアも倒して、残りは燐だけ。【不知火の太刀】の効果でもう一度攻撃は出来るが、【御巫】相手じゃ分が悪い。

 

 しかもあの伏せカードの正体がまだ分からない。【炎舞の陣】の効果を使って、直感で選んだ手札に加えたこのカードを活かせられるかどうか分からない。

 

「……でもここで逃げるのは違うよな」

 

 一瞬でも逃げ腰になった俺を叱り、刀の柄を強く握りしめる。これが正真正銘、最後の攻撃だ。

 

「行くぞ燐! このままバトルだ!」

「忘れたの? 【フゥリ】は戦闘ダメージを相手に跳ね返す効果があるのに!」

「なら無効にするすれば良いだろ! 速攻魔法【墓穴の指名者】!」

「それって墓地のカードを除外するもの……?」

「あぁ、【ヴァンパイア】の効果で墓地に送られたカードの中に、2枚目の【フゥリ】がある事は確認してる」

「でも、【フゥリ】は対象にならない!」

「フィールドのはな。が、墓地の奴は対象に取れる! 効果で2枚目の【フゥリ】を墓地から除外させてもらう!」

 

 突然フゥリの足下に緑肌の手がフゥリの足元を掴み、フゥリは嫌な顔をしながらも抵抗するが、指名者の手はビクともせず、完全に動きが完全に止まる。

 

「【墓穴の指名者】は除外した同名モンスターの効果を無効にする。お前のフィールドに存在する【フゥリ】の効果は完全に無効化された! これで俺の勝ちだ!」

 

 最後の攻撃を燐に向けて突撃をかけたその瞬間、燐の伏せカードが表向きになり、カードから眩い光が解き放たれた。

 

「罠カード【神の宣告】! 【墓穴の指名者】はこれで無効にする」

 

 炎山 燐 残りライフ500→250

 

 あまりの眩しさに俺は足を止め、指名者の手が地中に潜ってしまった。神の宣告によって自由になったフゥリはお返しと言わんばかりに俺に攻撃を仕掛けてくる。

 

 フゥリは扇子を大きく横に広げるように振り、左右から竜巻が風の刃をまといながら俺に襲いかかる。

 竜巻から逃れる為に一旦後ろに下がるが、左右の風圧のせいで後ろに下がれず、寧ろ竜巻に向かってしまう程押し返されてしまう。

 

「これで【フゥリ】の効果は無効にされず、ダメージはそっちに返す! これで……私の勝ち! 他人を勝手に巻き込んで自滅する、馬鹿な兄貴のお似合いの末路よ!」

「ライフを半分払い、手札からカウンター罠【レッド・リブート】発動!」

 

 炎山焔 残りライフ125→73

 

「……えっ?」

 

【レッド・リブート】のカードを【神の宣告】に向けて投げつけると、【レッド・リブート】の効果が起動し、【神の宣告】は再びセットされ、眩しい光が消え去り、同時にフゥリが呼び出した竜巻も消え、指名者の腕ももう一度地中から蘇り、フゥリの足を掴んだ。

 

 竜巻が消えた事で目の前の道が開かれ、最後の力を振り絞って燐の前へと駆け抜ける。

 燐との距離が目と鼻の先になり、刀は燐の首元にまで差し掛かった。

 

「俺の勝ちだ」

「嘘……なんで……?」

 

 何が起きたのか分からないのか、燐は体を固まらせて困惑した。

 

「【レッド・リブート】はライフ半分払って手札から発動できる罠カードだ。相手のカードの発動を無効にしてセットし直し、相手はデッキから罠をセット出来るが、もう関係ないな」

「そんな……じゃあ」

「【墓穴の指名者】の効果は通り、【フゥリ】の効果は無効だ」

「つまり、実質ダイレクトアタックのダメージが入り、お前のライフは尽きた」

 

 炎山 燐 残りライフ250→0

 

 WINNER 炎山焔

 

 デュエルの勝敗が確定した瞬間、デュエルフィールドが消えて風景が元の庭へと戻っていき、炎舞の陣も消え去り、不知火の刀も俺の手から消えた。

 

「へへ、どうだ。ワンターンスリーキルしてやった……ぜ」

 

 何でか体の力が抜け、俺は仰向けになった倒れてしまう。もう鼻くそほじる力も残ってねぇし、身体中が鉛になったかのように動けない。

 

 そういや俺、結構ダメージ食らったんだよなぁ……あー、身体中痛ェ……もう無理。

 

「どうやら、でゅえるが終わって気の張りが無くなったんじゃろうな」

「これじゃあ、どっちが勝ったのかわかんないね」

 

 妲己と親父を担ぐババアと燐は俺を見下ろし、うるせぇと言いたいが叫ぶ気力すらもうなく、親父に俺は確認する。

 

「……これで、行ってもいいよな?」

「あぁ。だが、必ず戻ってこい」

「たりめぇだ……クソ親父」

 

 もはやこれ以上の言葉はいらない。言葉が無くても、言いたい事は全部デュエルでぶつけたんだからな。

 けど燐は納得していないようだった。決まりは決まり、それは分かっているが、心は納得していない。

 

 理解するのと納得するのとは違う。俯く燐を前に、久しぶりに兄貴らしい事をしようと、俺は言葉を投げる。

 

「燐、お前が最後に言った奴。他人を巻き込むって言うの。……まぁまぁ自覚してる」

「……だから?」

「思い知らされた。突っ走るだけじゃ俺だけじゃなくて周りの奴らを危ない目に合わせちまうって」

 

 ひとつの間違いがピンチに繋がる。この3人とのデュエルで嫌という程味わった。俺ならいい。だが、空たちが危険な目に合わせるのは違う。

 

 俺が突っ走る理由は、誰かを危険な目に合わせない為だ。それを破っちゃ、ただの自暴自棄と変わんねぇ。

 

「……分かってるんだったら行かないでよ」

「それは無理だし、お前負けたろ」

「そうなんだけど……でも、お兄ちゃんが帰ってこなくなるのは嫌だ」

 

 燐はそう言って涙を流し、涙の粒が俺の頬に当たる。こいつが泣いているのを見るのはいつぶりだっけな……泣いてる妹を見て胸が締め付けられるように苦しくなり、さっきまで勝った事への喜びが哀しみに変わっていく。

 

「……心配すんな。着いてくる奴に危ない目にあう前にぜってぇ俺を止めてくれる奴がいるからよ」

 

 俺は空を見上げてそう確信した。アイツなら止めてくれる。俺と違ってアイツは天才だからな。きっと、俺だけじゃなくて皆を影からサポートしてくれるに違いない。

だから、信用できるし、帰って来れるって信じてる。

 

「まぁ、ぶらっと帰ってくるわ。帰ったら美味いもんよろしく」

「……バカ兄」

 

 俺を許してくれたのか、燐はそれ以上何も言わずに涙を拭い、精一杯で強がりな笑顔を向けてくれた。

 燐なりの心遣いなんだろうな。兄貴としてはすごく嬉しい。

 認めてくれて、許してくれて、俺の事を兄としてまだ見てくれていた事にホッとする。

 

「絶対に帰らないとダメだよなぁ」

「そうだぞ焔。なんなら、そういうのは俺たち大人が命をかけるべき事なんだ」

「その前にアンタ休みな。まだ出発には時間があるんでしょ」

「はは、それもそうだ。……妲己、焔を頼むよ」

「仕方ないのぉ」

 

 親父に言われ、妲己は妖術で自分の筋力を上げたのか、俺を担ぎ上げてくれた。女に担がれるのは少し男しては恥ずかしいし、情けないと思ってしまうが、今は甘えるしかない。

 

 そんな内心を透けて見えたのか、妲己は煽るような笑みを浮かべさせ、わざとらしく笑い声をあげた。

 

「くく……随分と情けない姿じゃのぅ」

「うるせぇよ」

 

 妲己から目を逸らし、家の中から良い匂いがしてきた。そういや昼飯前だっけか。

 

「あ〜腹減ったー」

 

 どんな状況になっても腹は減る。今日の昼は何だろうなと思いながら、俺は瞼を閉じて眠った。

 

オリカをまとめた章が欲しい?

  • 欲しい!
  • 別に( *¯ ³¯*)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。