六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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画面にいた君と

「愛してまいます。旦那様」

 

 いつも通りの夜、カンザシが俺に向けて愛の言葉を注いでいた。もう俺を逃がさないように力いっぱい抱きしめ、俺はその束縛に抵抗しなかった。

 

 むしろ抵抗しない方が心地よく、その愛に溺れようカンザシを抱きしめる。

 

 暖かく、花の甘く馨しい香りが心を落ち着かせる。ずっとこうしていたい。永遠に離れないように抱きしめていると、カンザシの呼吸が変わり、心臓の鼓動が弱々しくなっていった。

 

「だん……な、さ……ま」

 

 突然カンザシの声が震え、顔を向ける。

 

 そこには……腹部を貫かれて吐血したカンザシの顔が目に映った。すると腕に何か違和感があった。

 生暖かく、鉄の臭いを纏ったぬめりが感じられ、そっと自分の腕を見ると、俺の腕は……カンザシの腹部を貫いていた。

 

「あっ……ああ……ああああああああああああああ!!!!!」

 

 急いで赤く染った腕を引き抜き、倒れるカンザシを抱きしめる。

 カンザシの目には生気が無く、どうして言わんばかりに真っ黒な目で俺を見つめていた。

 

「ど……し……て」

「違う! 違う! 俺は……俺は……ぁぁ……ああ!」

 

 こんな事望んでない。こんな事したくない。けどカンザシの体を傷つけたのは…………。

 

「いや違う! 違う! 違う違う違う違う違う!! 俺じゃない!!」

 

 必死に否定し、カンザシを抱きしめて泣き叫ぶ。

 どうして、なぜこんなことになったのかと、何をどうすれば良いか分からず、ただ俺は叫ぶ中、別の女性の声が聞こえた。

 

「花衣さん」

「っ、レイ?」

 

 レイは血まみれのカンザシを抱いている俺を見て笑った。レイの周りにはロゼ、アザレア、カメリアの3人の閃刀姫達が俺を囲んでいた。

 

「みんな……ちがっ、俺は……」

「大丈夫ですよ花衣さん」

 

 レイは俺を震えている俺を抱きしめ、泣いている赤ん坊を慰める様に背中をさすってくれた。だがカンザシから流れ出る血の臭いが俺の鼓動を荒ぶらせ、視界が暗く歪んでしまう。

 

「だっで……これ……は、アナタ……が……」

 

 するとレイからまた同じような臭いが鼻につき、嫌な予感をしつつもそっと顔を上げると……今度は黒い影に心臓を貫かれたレイとロゼ達が宙ずりになっていた。

 

 その影を伸ばしているのは俺の背中からだった。背中から黒い腕の様な物がレイの心臓を貫き、腕をレイから引き離そうと触れようとするが、黒い腕は影のように触れられず、腕はレイ達を苦しめ続けた。

 

「やめろ!! やめてくれっ!!」

 

 誰かに許しを乞うかのように泣き叫続けても、レイ達は動かない。背中を掻きむしっても黒い腕は離れず、わけも分からず抱いていたカンザシを置いていき、逃げるように走り去ろうとした時、足元に何かが当たる。

 

 恐る恐る下を向くと、そこには倒れたストレナエいた。

 明るく天真爛漫なストレナエが血塗れに倒れ、明るさが消し飛ぶ程の惨い姿でこちらを向き、ストレナエだけじゃなく、プリムとシクラン、エリカとボタン、スノードロップとヘレボラス、そしてしらひめの姿のひとひらもいた。

 

 4人の姿に体の底が逆流するかのように吐き気が襲いかかり、頭痛と目眩で力が抜け、膝を着く。

 

「うっ……!!」

 

 これ以上ストレナエを汚さまいと何も無い所で体の中にあるものを全て吐き出し、塵と血が混じり合う気持ち悪い臭いでまた吐き気が襲いかかる。

 

「なんで……どうして」

 

 俺のせいなのか? 俺がダークネスだから? 生きてちゃいけないから? なら俺はなんで生きてるんだ? 

 なんで? どうして? 俺は…………ここにいるんだ? 

 

「花衣様」

 

 自分の存在を否定しようとしている時、背後にティアドロップの声が聞こえた。

 振り向きたくない。今までの惨状を見てしまった心は崩れ去り、ティアドロップの無惨な姿を見たくない。

 

 だからこそ後ろには振り返らず、顔を上げないように体を蹲る。だが後ろからティアドロップの美しくも冷たい手を伸ばした。

 

 後ろから血の温かさと頬に伝う指先から血が塗りたくられ、背中からの重みが増していく。

 やめろ、振り向くな。横を見るな、ティアドロップを見るな。

 

「か……いさ……あい……し」

 

 

 

 

「やめろぉぉ! あぁ……っ、ああああああああ!!!!」

 

 目が覚めると、月が無い夜の闇に包まれた部屋にいた。さっきまでの悪夢にうなされていたにもかかわらず、不思議と汗はかいていなかった。あんなにも悍ましい夢だったというのに……。

 

「すぅ……すぅ……」

 

 隣にはストレナエがすやすやと寝息をたて、俺の叫び声では起きなかったようだ。起こさなかった事とさっきの悪夢が本当に現実では無いことに安堵し、ストレナエの寝息に耳を立て、起こさないようにストレナエの手首に触れる。

 

「……脈がある」

 

 血液が流れるのを指で感じ取り、生きていると実感する。良かったと呟くと、ストレナエの瞼が少し開いた。

 

「んんっ……? あれ、花衣くん。もう起きたの……?」

 

 まだ眠そうなストレナエは瞼を擦りながらゆっくりと体を起こし、体を預けるように抱きついた。

 

「ん〜まだ眠い〜。お日様はまだおはようって言ってない〜」

「……ごめん」

 

 ここ最近、眠ったらさっきのような悪夢が繰り返されては起きてしまう。

 なんなら、このままもう眠りたくないとも思っている。それでもこうして交代で隣には誰かが寄り添い、夜を共に過ごしはいるが……こう途中で起こしてしまうと申し訳なさで胸が苦しい。

 

「ほら、早く寝よう」

「え~もう寝たくなくなった~」

「寝ないと大きくなれないぞ」

「もう【六花聖華】で大きくなってるも〜ん」

「あれは違うだろ。ほら、隣にいるから」

 

 嫌がるストレナエだが、もう一度ストレナエと一緒に布団を被り、ストレナエの頭を撫でると、ストレナエは瞼を重くさせて撫でている手を掴み、頬に添えさせた。

 

「えへへ、暖かい……。もう絶対絶対……離さないもんね…………」

 

 離さないと言ってストレナエはそのまま寝てしまった。だけど俺の手を握る力は未だに強く、1歩もベッドから離れられなくなった。

 

 小さくても精霊と人間。力関係は圧倒的だ。否が応でもストレナエと体をくっ付けて寝る形になり、ここぞとばかりにストレナエは潜り込むように近づいた。

 子供らしいと微笑み、少しだけ悪夢の事は忘れ去った。

 

(……長い夜になりそうだ)

「まだ起きてるの?」

 

 部屋の外には、月明かりに照らされたカメリアが立っていた。カメリアは夜中でも起きている俺の顔を見つめ、ストレナエを起こさないように足音を立てずに部屋に入っていく。

 

「……君の叫び声が聞こえた。なにかあった?」

「いや、何でもない。大丈b」

「嘘はダメ」

 

 俺の嘘をあっさり見抜いたカメリアは俺の顎を指で掴み、強制的に目を合わせる為に顎を少しあげさせた。

 

「私たちに嘘を付いちゃダメ。隠し事も無し。ありのままの花衣と居たい。次嘘を言ったら、その口を塞ぐから」

「……そっちがキスをしたいだけじゃなくて?」

「ふふ、正解」

 

 嘘を言っても無いのにカメリアは唇を触れ合いさせ、軽い口づけを交わす。

 

「ストレナエが隣で寝てるんだぞ」

「だから起こさない程度の物で済ませた。けど、さっきの言葉は本当。……花衣なら分かるよね。それとも、キスされたいのかな」

 

 これ以上続けばカメリアは歯止めを効かなくなってこれ以上のことをするだろう。

 官能的な脅しに屈した俺はストレナエに手を繋がれたままカメリアに体を預けた。

 

「……寝ると悪夢を見るんだ。お前たちを傷つけてしまう悪夢がずっと」

 

 ここに来る前から不規則に見た夢が、今では毎日みてしまう。忘れようとしても忘れず、何をしようとしても、追いかけるように夢は繰り返される。

 夢の筈なのに感触や匂いがこびりつき、あんなものを見るぐらいなら眠らない方が良い。

 話を聞いてくれたカメリアは俺の頭をゆっくり撫でると、そのまま肩を寄り添わせる。

 

「じゃあ、起きて傍にいる。大丈夫、その子は起こさないようにするから」

「……ありがとう」

 

 悪夢を見ない為、今日も俺は大切な人達の隣で長い夜を超えるために起き続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……き……て」

 

「起きてよ!」

 

 隣から騒ぎ声が耳から頭の中へと貫き、心臓ごと跳ねながら俺は起きる。

 目が覚めるとそこにはタクシーの中であり、隣には黒を基調としたゴシック姿の雀がいた。

 

「もうすぐ目的地に着くよ。空ったら、昨日あんまり寝てないの?」

 

 名前を呼ばれ、昨日の事について朧気に思い出す。確か昨日は……あぁ、そうだ。雀から泊まってくれと頼まれてはそのまま流されて……夕飯をご馳走になって、それから……雀が俺が寝ているベッドに潜り込んで……。

 

「~~……!!」

 

 そうだ。雀が昨日の夜俺が寝ているベッドに潜り込んではそのまま寝たのだ。そのせいで心臓が激しく動くのが止まらずに目が冴えてしまい、まともな睡眠をとる事ができなかった。

 しかも背中を掴んでは離さなかったら途中でベッドから抜け出して1階のソファーで寝る事も出来なかった。

 

 だっで仕方ないだろ。最推しがいきなり隣に寝たら。恥ずかしさと嬉しさが暴走して気持ちが昂り、肌寒さも忘れるどころがベッドから出たいほど熱くなった自分を思い返すと……恥ずかしくなる。

 

「ねぇ、ホントに大丈夫?」

 

 雀の顔が近づくにつれ、心臓が激しく動いていき、雀を直視出来ない。逃げようにも車内だから逃げられず、雀と手が触れ合い、更に心臓が跳ね上がる。

 

「だ、大丈夫だ!」

「……ふーん」

「お客様、到着しましたよ」

 

 雀との会話の最中、タクシーの運転手が目的地に着いたと言ってくれたのを皮切りに会話を終え、逃げるようにして俺は料金を払って外に出る。

 雀も後から不機嫌そうにしながらも運転手にお礼を言い、外に出る。

 

 目的地だったのは都内にある高層ビルあり規模は大きかった。入口にある表札には数々の株式会社があり、恐らくオフィスビルだ。

 

 表札に書かれている会社は有名配信者を進出した会社がズラリと並んでおり、思わず目を丸くさせて驚いてしまう。

 

(ここでデュエルをするのか?)

「空〜! こっちこっち!」

 

 雀はいつの間にかビルの入口に移動しており、大手を振って待っていた。来たことない場所の空気に少し萎縮しながらも、雀の後を追い、オフィスビルの中に入る。

 

 広々としたロビーに出迎えられ、雀はまず受付の女性に声をかけた。何か首元にIDカードのようなものを見せ、俺の事を話すと、受付の人はゲスト用のIDカードを手渡してくれた。

 

「これで中に入れるよ。行こ」

 

 すぐそばにあった扉の横にある端末に渡されたIDカードをかざすと閉められた扉は開き、4つあるエレベーターの前に移動する。適当なボタンを押し、すぐにエレベータが到着して中に入る。

 雀は12階のボタンを押し、エレベーターが動き出すと、しばらく沈黙した空気が流れる。

 

「……ここにはよく来るのか?」

「うん。コラボとか機材とか借りる時にね」

 

 そういえば配信で稀に自室以外の所が映っていたところある。さしずめ仕事場と言ったところだろうか。もう一度沈黙が続き、エレベーターが12階に着く。

 扉が開くと、ロビーと同じぐらいの広さのエントランスが俺たちを迎えた。

 

「あ、トバリさん! お疲れ様です!」

「うむ、今宵もよく働いているな」

 

 トバリモードになった雀はすれ違うスタッフらしき人に上から物を言い方だが全てに人に労いの言葉をかけ、声をかけられたスタッフは「有難き幸せ」とか「トバリ様サイコー!」等の賛美の言葉を向けていた。

 しかも全員、何一つ嫌な顔はしていないのは雀の人柄の良さからだろうか。

 

「ちょっとここで待っててくれる? 直ぐに着替えるから」

 

 控室にたどり着き、雀は中に入って着替えなどの準備に入った。

 待っててと言われ、ちょうど近くに椅子があるのを見つけ、そこに座ってトバリが今まで行った配信の切り抜き動画を見る。

 

 他の人に迷惑をかけないようにイヤホンを付け、動画を見続けた。

 

『クックック、集え眷属達よ! 今日は我の為に描いた肖像画を見てみようでは無いか! まずはこれだ!』

 

 俺が開いたのは、トバリのファンアート紹介動画だ。

 トバリは定期的にこういう配信をしており、一つも欠かさずに紹介してくれている。

 普通なら、合間合間に少しだけ紹介するのだが、トバリは1枚1枚丁寧に見たりと、絵師からは好評だ。

 

『えっ? これ凄ーい!! 見て見て、羽が細かくない!? あっ……コホン、フフフ、我の事をよく知っているではないか!』

 

 ……こういう風に素が出るのも面白い。

 他にも色々と配信を見返してみる。ゲーム、雑談、コラボ、料理。色んなことをやり、いろんなことが起きた。俺の周りにも同じように起こってきた。

 現実味がないが、実際にあった出来事だ。そして遂に別世界……異世界みたいな所にいくときた。

 

「……見納めみたいだな、まるで」

「そんなことさせないぞ」

 

 突然右耳に低音の雀の声が聞こえ、右に顔を向けると黒いドレスに小さな黒い羽根の装飾が目立つ、トバリが目の前にいた。

 雀の時とは違うその姿は、本当に同一人物なのか疑う程だった。

 

「勝手に我から離れるのは許さん。貴様とは血よりも濃い闇の契約を交わしたのだからな」

 

 雀の素の声ではなく、低いトーンのトバリの声が近い。元の顔をキリっとさせたメイクはもはや別人物であり、トバリという仮面(ペルソナ)を付けた今の彼女は誰よりも輝いて見えた。

 普段とのギャップのせいか、言葉を失いながら胸の鼓動が強まり、不意に目を逸らしながら立ち上がる。

 

「……デュエルするんだろ。早く案内してくれ」

「ふふっ、良いだろう。ついてこい、我が眷属」

 

 こうして後から着いてきて辿り着いた場所は広い空間であり、部屋の隅にはソリッドビジョンの投影装置があった。恐らくここはデュエルフィールドだろう。

 それを示すかのように、入口に近くに電子ロックが施されたデュエルディスクが2つあった。

 

 まだ生産されているとはいえ、一般人には出回っていないデュエルディスクを持っているのはさすが有名配信者を進出させた所と言うべきか。

 

 雀はICカードをかざし、厳重にロックされたデュエルディスクのショーウィンドウがゆっくりと解放され、雀は1つのデュエルディスクを取り出した。

 

「これを使え」

 

 トバリ口調でデュエルディスクを渡し、俺は久しぶりのディスクを装着する。

 見た目からは想像出来ない程の軽さから、何も付けていないと錯覚してしまいそうだが、俺の目には確かにこれがあった。

 

 メインデッキをディスクに差し入れると、デッキが素早くシャッフルされる。

 雀もディスクを腕に装着すると、四方にある機械が作動し、一部分が虹色に光る。

 

「そろそろ始めるぞ。準備は良いか」

「ああ」

 

 短い言葉と、一回の呼吸で心の準備は整える。

 トバリが何かスイッチを押すと、俺たちの周りにカメラが搭載されたドローンが飛び交い、部屋のモニターにはトバリがいつも使っている悪魔を召喚する儀式の様な光景を催した待機画面が表示された。

 

「このドローンで我らの戦いの儀がより下僕たちの目を焼き付けせる。貴様の無様な負けの姿もな!」

「勝つつもりでいるのか」

「本気だからね」

 

 トーンも口調も雀のままだが、あの力強い目はトバリそのものだった。

 いつもは小動物のような愛くるしい目をしているのに、今は獲物を狩る鳥のような目だ。

 その目は俺の心を掴んでは離さず、虜にした。

 

 ここにある壁のモニターに、トバリの配信の待機画面が表示される。10秒というカウントダウンが刻まれ、1秒減る事に心臓が大きく動いていく。

 

 見る側だったものが、映る側に変わった事を実感しながら、緊張と期待が交錯していく。

 カウントダウンが進むにつれて、トバリの眼差しがます力強さを増していく。彼女の目に映るのは、真剣さと決意。まるで、自分自身のすべてを賭けて戦うかのような、そんな覚悟がひしひしと伝わってくる。

 

 5秒、4秒、3秒……と秒を刻む事に心臓が跳ね上がる。数多の待機コメントが待機画面に流れていき、リスナーの配信への期待感とは裏腹にそれに応えようとするプレッシャーがのしかかってくる。

 

 あいつは、いつもこんな風にプレッシャーを感じていたのだろうかと彼女をもう一度見つめる。

 すると、彼女の目は待機画面から流れるコメントを見て輝かせていた。

 

 嬉しい。という気持ちが誰にでも分かるかのような笑顔を浮かばせていた。

 

(……強いな)

 

 2秒、1秒。心臓の鼓動が途切れそうになるのは相変わらずだが、トバリの笑顔を見るとさっきまでプレッシャーは無くなり、変わりに別の気持ちが心の表面に現れた。

 

 もしかしたらずっと心の奥底で思っていた気持ち……だが、言ってしまえばトバリにとっての世界が終わる呪いの言葉。

 

 俺は息を止めて、その気持ちをしまいこみ、目の前に広がる新たな世界を始める瞬間を迎える。

 

 そして、ゼロになると同時に、画面が鮮やかに切り替わり、トバリの凛々しいが聞こえてくる。

 

「漆黒の闇の刻が終焉の時を迎えたのか……眩い光の刻の中で、我が真の力を開放してくれよう。その為に、貴様らの魂を我に捧げろ!!」

 

 いつもの挨拶を高らかに言い、コメント欄にはトバリを称えるコメント欄で埋め尽くされる。

 

 まさに彼女の真髄。画面越しに彼の心を掴み、引き込む力強さ。彼女の姿は、以前にも増して魅力的に見える。

 

 その思いをいつもなら画面の向こうに向けて送っているだろう。

 

 だが今は、対面でこうして自分のやる事を押し通す為に立っている。今はその気持ちを捨て、一人の決闘者として俺は今日を臨もう。

 

「クク、今日も我が下僕達は我の闇の世界を覗きたいのか。良いだろう……今日は戦いの義! 闇に選ばれた者しか扱えない禁忌の力を使い、あの憎き鋼鉄の鷹を操る者への復讐だっ!!」

 

 トバリが俺に指を指し、ドローンがこちらを向くと配信画面に俺の陰気な顔が映し出された。

 

『こいつってRRレゾンカード持ってる奴じゃね?』

『俺サマーライブで見た事ある』

『ロマンスでも見た』

『マ? RRのレゾンカードなんてあんのかよ』

 

 どうやらレゾンカードを持っている事を認知している奴もいれば、知らない奴も大半はいた。

 それもそうだろう。俺はロマンスタッグ・デュエル時点ではレゾンカードを持っていなかった。

 

 初めて人目を晒したのは、サマーライブ・デュエルの時、あの会場にいた一部の人間だけだ。

 

 挨拶をしようかと思ったが、まだ緊張が抜けず何を言えばいいのか分からない。敢えてここは何も言わず、顔を背けては手を振るだけにすると、ドローンは去っていった。

 

「ふっ、寡黙な奴だ。最後の言葉すら言えない程我に恐怖しているに違いない。何とも罪深き我! だが、戦いの義は止められない! さぁ、その禁忌という名の剣を構え、我と戦え!! 鋼鉄の鷹を操りし物よ!」

 

 トバリはディスクにデッキをセットし、デュエルディスクの画面に変化が起きる。

 対戦相手と俺の名前が表示され、手札、墓地、除外、ライフ、フィールドの状況が映し出され、デッキの上の5枚がはみ出す。

 

 これを取ればデュエルが始まる。トバリは颯爽に5枚のカードを取り、俺もそれに合わせてカードを手に取る。

 

「……悪いが、本気で勝つぞ」

 

 トバリの気持ちを否定しても、俺は……友を助けに行きたいのだから。

 

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