六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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情報収集:sideジェニー

 カーマという町の情報を探す為、私は花衣の友人の焔君と、花衣のお嫁さん候補(仮)の花音ちゃんを連れて、この世界にある街で情報収集を努めていた。

 

 近未来的な技術がありながらも、崩壊しているビルは少し見受けられ、この街の外に出たら荒廃した世界が広がっている。

 

 ここは閃刀姫の世界なのかどうかは知らないけど、カーマと列強というキーワードから、ほぼここが彼女達の世界だと言うのは確定している。

 

 現に二国との戦争が会ったことは、大体の人から聞いていた。けど、それ以上の情報はあまり得られなかった。

 

 なんでもこの街は閉鎖的であり、ほぼ自給自足で成り立っているらしい。

 だから、外のことを知る者は少なく、ほぼ手詰まりな状況になってしまった。

 

「たくよ〜。こんな街に引きこもっちゃつまんねーだろ」

「ですけど、外には私たちが襲ったロボが徘徊しています。危険に自ら向かうのは……こわいですから」

「けど、このままだと滅ぶのは間違いないわね」

「なんで?」

「今の自給自足は人数が少ないからこそ成り立っている。いずれこの街に住む人が増えたら、とてもじゃないけど賄えなくなる。そうなったら……」

 

 これ以上は言わずとも、二人の中には私と同じ考えが浮かんだでしょう。

 

 思い浮かべた言葉は略奪の二文字。

 

 誰かがこの事に気づき、外の世界へと足を向けなければ少ない食糧を奪い合い、いずれ衰退する。

 折角生き残ったのだから、どうか道を切り開いて欲しいと、勝手ながらに祈ってしまう。

 

「この世界も大変ね……」

「この世界【も】? と言うと、そちらも大変そうです」

「ふふ、大変じゃない世界なんてあるのかしら」

 

 にしても、思うように情報が集まらず、このまま時間を無駄に潰しまった時、どこからともなくお腹の虫が叫んでいる様な大きな音が後ろにいる焔君から聞こえた。

 

「あぁ……腹減ったぁ」

「そういえばお昼まだだったわね。ちょうどあそこにホットドッグ屋さんがあるから、そこで食べましょうか」

 

 この廃れた世界でまさかのキッチンカーでのホットドッグ店に足を運び、店長の気前の良い返事と一緒に写真付きのメニューを眺める。

 

「んじゃ俺、この【ファイアウォール・ドック】ての5個!」

「私は【クロック・ドック】1つ。花音ちゃんは?」

「ええと……ふ、普通の物で」

「あいよ! 空いてる席で少々お待ちを」

 

 適当に空いている白いテーブル席に座り、しばらく経つと、店員が頼んでいたホットドッグを配膳し、テーブルには6つのホットドッグが乗せられる。

 

 ソースや具材盛り沢山で七色のホットドッグは焔君のファイアウォール・ドック。

 

 ブルーベリーを主軸に黄色のフルーツが挟まれて、どちらかと言えばフルーツサンドの様な物は私のクロック・ドック。

 

 そして、逆に安心出来る普通のホットドッグを見ると、彼と私が頼んだ物は相当奇抜なのだと教えられた。

 

「美味そう! いったっきゃーす!」

 

 焔君は躊躇いなくファイアウォール・ドックを一口かじるとと、紙まで食べそうな勢いでホットドッグを食べ進めた。

 

「相変わらずの食べっぷりね」

「……」

 

 それとは対照的に、花音ちゃんはホットドッグを手に付けず、代わりにじっと私の事を見ていた。

 

「どうしたの花音ちゃん?」

「あ、あの……アロマの皆さんを助けて下さり、ありがとうございました」

 

 すると突然、花音ちゃんは席を立ち、私に頭を下げた。

 

「貴方が店長さんだと知った時から、お礼が言いたいと思っていました。だから、今しか無いと思って……」

 

 花音ちゃんが言っていることは、彼女が初めてアロマ達と出会ったあの時の事だ。

 ウェルシーによって故郷を滅ぼされ、闇に侵されていた所を私が助けた。

 

 あんなカードを持ち込まれたときは驚いたし、闇を晴らせるかどうかは分からなかったけど、今では花音ちゃんの隣にあの子達がいて笑いあってるのを見てると、本当に闇を晴らせて良かったと思う。

 

「でも、その優しさをもう少し花衣さんに分けて欲しかったです」

 

 私は思わず息を飲み込む。

 

 彼女の瞳には責めるような色はなかった。ただ、ほんの少し寂しそうに、そして切なげに私をじっと見て、目を離さなった。

 

「花衣さん……ずっと、お母さんに会えない寂しさに苦しんでたんだと思います。色んなことが起きて、ひとりで耐えて、私たちにも言えずに……ずっと」

 

 花音ちゃんの声は静かだったけれど、真っ直ぐ胸に響く。

 

「だから、今度は母親として助けてあげてください。言いたいことは、それだけです」

 

 彼女の言葉に、私は胸の奥が痛んだ。

 言い訳も、弁論も、何一つ言えない立場に置かれた私は、ただひたすらに彼女の友……いや、想い人を想う怒りを受け入れる。

 

 今思えば、私は花衣の事を中途半端に手放してしまっている。

 

 チェイムに託した時、旅を見送った時、まだ子供で教える事が多く、導かないといけない時期に私は花衣の手を離してしまった。

 

 育てた気になってしまっていて、大事な時に側にいてあげなかった事の引け目から、私は店長さんという立場で彼を支えていた。

 

 ……支えていた気になっていた。結局私は、どこかで花衣の事をダークネスとして見ていたかもしれない。

 だからこそ、踏み込めずに接していた。

 

「……今度は絶対、あの子を助ける為に踏み込まないとね」

「はい。私も、焔さんのように花衣さんとぶつかってでも、ぶつかり合わないと!」

「は? 俺?」

 

 突然名前を呼ばれた彼は、ホットドッグを咥えたまま目を丸くしてこっちを見た。

 

「俺、なんかしたっけ?」

 

 口の端にケチャップを付けたまま、ぽかんとする焔。その姿に思わず笑ってしまいそうになるのをこらえながら、花音ちゃんはまっすぐに彼を見つめた。

 

「しましたよ。焔さんは、花衣さんに拒絶されても、それでも真正面から向き合ってくれた。あの子の心に誰よりも強く飛び込んでいって、言葉をぶつけたでしょう?」

「まっ、俺が言いたいこと言っただけだしなー。てか、あんな事言われて、ふつーにムカついた」

「そういえば……私、気になったんです。花衣さんとはどうやって仲良くなったのですか?」

 

 藪から棒に花音ちゃんは訪ねると、焔君は晴れ渡る空を見上げて、「あー……」と上の空になった。

 どこから話せば良いのか分からないのか、口を開いたと思ったらまた口を閉じてしまい、ここは助け舟を出す事にした。

 

「じゃあ、どんな風に出会ったの? まずはそこから聞かせて?」

 

 一瞬彼は固まり、記憶の糸を辿って花衣との出会いを思い出した。

 

「……あいつと出会ったのは、雨の日だった」

 

 その時の情景を思い出すように、彼は言葉を拾いながら、拙いながらも私達に花衣との軌跡を話した。

 

 

 出会いは、大粒の雨が降る土砂降りだった。

 いつもの帰り道、家に続く石階段の前に花衣(あいつ)がいた。

 

 土砂降りなのに傘もささず、全身ずぶ濡れでいた花衣は花衣も登らずじっと階段の先を見上げていた。

 

 この時、俺らは同じクラスになったばっかで直ぐにクラスメイトだとは気づかなった。ようやく気づいたのは、アイツの横顔をはっきりと見た時だ。

 

「俺ん家になんか用か?」

「…………」

 

 花衣は何にも話さず、すっげぇ暗い目で俺を見たのを覚えてる。

 あの時の目は、まるでこの世の悪い所を全部煮詰めた様な黒い目は、雨の冷たさと相まって体が震えた。

 

 こいつはヤバいと本能が叫んでいると、俺は傘をほおり投げて距離を離して、部活で貰った竹刀を握った。

 だが、よく見るとそいつの目は純粋そのものの様にも思えた。

 

 悪いヤツなのかそうじゃないのか、判断が付きにくいのが第一印象で、竹刀を構えながら話した。

 

「おめぇ、クラスメイトだよな? 名前忘れたけど」

「…………」

「なんか言えよ」

 

 雨が少しだけ弱くなると、アイツはようやく言葉を発した。

 

「声が……聞こえた」

 

 するとアイツは、俺の家がある階段の向こうに指を指した。

 

「女の人のこえ……聞こえる」

「声? そりゃあ、俺の家だしな。お袋ババアの声だろ。てか、こんな雨音でよく聞こえたな」

「……二人、いる」

「2人?」

 

 妹の燐かと思ったその時、アイツの背後の向こうから傘をさした鱗が向かってくる。

 

 鱗は俺たちのずぶ濡れ姿を見ると、ギョッとした顔で叫んだ。

 

「な、なにやってんのお兄ちゃん! てか、この人誰っ!?」

 

 あの時の鱗と言えば、マジでビビってたな〜。そりゃあ、あんな怖い目をした奴が家の前にいたら、ビビるわ。

 

「……くしゅん!」

 

 するとアイツはこの雨の冷たさからくしゃみをし、体を震わせた。

 何だか拍子抜けした俺は、竹刀を下ろし、あいつに対しての敵意を解いた。

 

「とりあえず、家入ろうぜ。お前もこいよ。俺ん家の風呂は大浴場並にデッケェぞ。あー……なんて言ったっけ?」

「……?」

「名前だよ、おまえの名前。俺は炎山焔!」

「……桜雪花衣」

 

 

 

 

 

 

 

「てな感じで、最初に出会った時、俺ん家に入れて風呂入らせて飯食わせた。……まぁ、この先は空がいる所で話したいな」

「どうしてですか?」

「俺らがつるむ様になったのは、ある事件……ていうか、出来事だな」

「それが空君に関係してると?」

「……まぁな」

 

 焔君はこれ以上話さず、残りのホットドッグを全て平らげると、お腹いっぱいになって満足そうにお腹を叩く。

 

 特に暗い顔は浮かばなかったけど、一瞬、焔君の手が強ばったのを私は見逃さなかった。

 

 実を言うと、私は花衣のことを全て把握している訳では無い。花衣が何故、どのように焔君と空君と仲良くなったのかは分からない。

 

 焔君の強ばった手を見ていると、どうやらあまりいい話じゃ無さそうだけど、かなり悪い話でもない。彼の懐かむ顔が、そう物語っていた。

 

「ふぃー美味かった〜! ごちそーさん!」

「じゃ、情報収集再開ね」

 

 椅子からすっと立ち上がり、さっきまでの和やかな空気から一転、きりっとした表情になる。焔くんもそれを見て、さっきまでのお気楽な雰囲気を切り替えるように立ち上がった。

 

 意外にも、カーマの町の新たな情報を得たのはそれほど時間はかからなかった。

 

「カーマの町? あそこに行くのはやめておけ」

「あぁ? 何でだよ」

「あそこには……恐ろしい魔女がいる」

 

 男は、聞いた話が到底信じきれない疑心暗鬼な表情を浮かべ、話すかどうか悩んでいた。

 

「教えてちょうだい」

 

 私の言葉に男は「夢物語の様な話だからあんまり真に受けるなよ」と一言断りを入れると、その妙な話をしてくれた。

 

「あそこには氷の魔女がいるらしい」

「氷の魔女……?」

「カーマの町の一部には雪が降る森があって、あそこに行くにはそこを通らないと行けない。あんなのつい最近は無かったんだかな」

 

 最近……詳しい日時は分からないけど、花衣がここに来た時期と被る。

 氷の魔女というのは、恐らくティアドロップの事でしょう。その子達がいるという事は花衣は間違いなくそこにいる。

 

「そのカーマの街はどこにあるの?」

「ここから東に向かって行けば、氷の森が見える。その近くにカーマの街がある」

「東ね。わかった、ありがとうね」

 

 思ったよりも早く情報を手に入れる事が出来た事をハイネちゃん達に報告し、別れる前に集まったあの噴水広場で合流する事になった。

 

「これで殴り込みに行けるな!」

「残念だけど、まだその時じゃないわ」

 

 意気揚々と息巻いている焔くんはずっこけてしまった。

 

「何でだよ!!」

「場所が分かっても、カーマの町の全体像が見えないわ。どのくらい広いか、どこに罠が張ってあるのかも不明なのよ?」

 

 相手が本気で私達を倒すつもりなのは明白。だからこそ、この子達を危険に晒さない為にも情報は必要。

 

 罠の位置や性質、氷の森はどのくらい広がっているのか、そして花衣がいる場所。少なくともこの情報が無ければ迂闊には攻め込めない。

 

 仮に私達がこの世界に来たと知らされていると考えれば……偵察もままならないぐらいの反撃が予想される。

 

「……少し、助っ人が必要かしら」

「助っ人? そんな人達が呼べるのですか?」

「ふっふっふ、ウィッチクラフト便利魔法道具を舐めたらいけないわよ!」

 

 魔女らしく怪しい笑い声をしながら荷物の中に取り出したるは、改良に改良を重ねた新アイテムのマジックアイテム。

 

「じゃじゃーん! 別次元でも簡単に連絡できるマジックアイテム!」

「……ただの電話の受話器にしか見えませんが」

 

 確かに見た目は昔ながらの黒電話の受話器。

 

 けど侮るなかれ、百聞は一見にしかずと言うし、まずは実演する為、2人から遠く離れ、受話器を耳に当てる。

 

「焔君に連絡したい」

 

 すると、焔君の携帯から着信音がなると、そこには非通知設定の画面が現れた。

 恐る恐る焔君は携帯に耳を当て、もしもしと言ってくれた。

 

『ハーイ、焔君』

「うおお!? 俺の携帯からジェニーの声がいきなりきたァ!? ……連絡交換してねぇよな?」

「ええ。頭の中で思い浮かべた人物と、必ず連絡が取れる優れものよ」

「へぇ〜。でもさ、携帯持ってないやつはどうすんの?」

「その時は頭の中で声が響くようになるわ」

「こええよ」

「まぁまぁ、良とにかくこれで助っ人頼むから。ちょつと待っててね。あ、もしもし〜?」

 

 二人も私に近づき、誰に電話をかけたか気になっている。

 呼び鈴が受話器から鳴り、2コールぐらいで向こうから連絡が来た。

 

『……なんだ?』

 

 受話器から女性にしては低い声がなる。

 

「久しぶりね。ちょっと貴女の力が必要なんだけど」

『いきなりテレパシー見たいな物を使ってなんだ。失礼だな』

「ごめんごめん、でも緊急なの。直ぐに来れる?」

 

 受話器の向こうから、わずかに空気が張りつめるような気配が伝わってくる。かつて幾多の異変を潜り抜けてきた、鋭く研ぎ澄まされた勘──その何かを、彼女もまた感じ取っていた。

 

「お願い、時間がないの」

 

 どうしてもこの声の主の力が必要になる。

 

 息を吞む中、彼女は二つ返事で返した。

 

『分かった。どうすればそっちに行ける』

「前に、あるカードを渡したでしょう? それを使えば、こっちに行けるから」

『ああ、アレか……待っていろ』

 

 受話器が切られる音がなり、合流の約束を取り付けた。

 

「誰が来るんだ?」

「ん~花衣の……リカイの師匠かしら」

 

 焔の眉がわずかに上がり、誰が来るのか察していた。

 

「もしかしてさ……あの黒魔女?」

「ふふ、それは後のお楽しみよ」

 

 魔女らしく意味深な笑みを浮かべながら、彼らを連れて来た道を戻っていく。

 

 続きはあの噴水広場でね。

 

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