六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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疑念

(ごめんなさい……花衣さん……!)

 

 花音のデュエルの敗北が確定し、彼女の命が吹き飛ばされる時が来るその刹那、花音の前に蛇のようにしなやかで禍々しい頭部と機械の翼を背負った黒龍がデュエルフィールドを打ち壊し、ラグナロクの攻撃を遮るように激突する。

 

「止めろ! 【アーク・リベリオン】!」

 

 名を呼ばれた黒龍は翼の先端からエンジンのように青い炎を噴射し、全身が刃の如くラグナロクに襲いかかる。

 

 ラグナロクはアーク・リベリオンの攻撃を受け止め、花音への攻撃を中断させた。

 

 だが、激突の衝撃が花音とジャスミン、マジョラムを吹き飛ばされ、壁に激突しようとしたその時、花音のデッキからアロマージ・ベルガモットが実体化し、3人を受け止める。

 

「大丈夫か?」

「えぇ、ありがとうございます。ベルガモットさん」

 

 一命を取り留め、アーク・リベリオンに乱入されてデュエルは強制的に中断されると、レイは舌打ちをしながらアーク・リベリオンから離れ、ラグナロクをカードへと戻った。

 

 アーク・リベリオンもまた持ち主の所へとカードとなって戻ると、その先には主である空がいた。

 

「空……さん」

「ついさっきシステムを掌握した。直ぐに他のやつも来るだろう」

 

 空が端末を操作すると、レイの周りにはさっきまで花音達が襲っていたロボットやドローンがレイに向かって武器を構えており、空が完全にここのシステムを掌握した証拠が目の当たりになる。

 

「既に焔達の所にも増援は送ってある。どうする?」

「まさかあのシステムを掌握するなんて、流石です」

 

 褒めるつもりは微塵も無い賛美の言葉に空は耳を傾けず、レイを捕縛しようとロボット達は動き出す。

 だが、その瞬間レイの背後の壁が破壊され、空いた風穴の向こうにはロゼが駆る閃刀姫-ジークがアザレアとカメリアを乗せていた。

 

「今回は貴方達の勝ちですよ。けど……花音さん」

 

 レイは花音に向かって怪しく微笑むと、花音はまるで剣先を突き立てられたかのように震えた。

 

「良かったですね。優しいお仲間に助けられて命拾いして」

「うっ……」

「所詮貴女の力なんてその程度。半端な覚悟と力で、私達の世界に入り込まないで」

 

 そう言い残し、レイ達はスペクトラ離れていく。恐らく、カーマの町に戻ったのだろう。

 

 もしも空が乱入してデュエルが中断されなければ、確実に負けていた花音はその場でへたれこみ、俯きながら涙を零した。

 

 そんな花音を案じ、空が駆け寄る。

 

「花音、大丈夫か?」

「……はい。すみません、何も出来なくて」

「いや、お前がデュエルで時間を稼いでくれたおかげでハッキングに集中出来た。本当にありがとう」

 

 空の心からの感謝をしたが、花音のやるせなさは消えず、空と目を合わせようとはしなかった。

 

 時間稼ぎをすればいいと花音は最初意気込んでいた。だが、あまりにも大きな力の差にそれすらも出来ない自分の力を心の奥底で嘆いた。

 

「……私、足でまといなのでしょうか」

「いや、そんなことは無い。十分良くやった。それに、お前のおかげであっちが新しいカードを使う事を知れたしな」

「見てたんですか?」

「あぁ。ハッキング中にカメラで見ていた」

「よくそんな余裕がありましたね」

「いや、余裕というより……まぁ、これは全員に共有しよう」

 

 空はハッキング中、気になる事を花音だけでは無く全員に共有しようと考えていた。

 丁度、焔達が空達のいる所まで集まり、外にいたチェイムやハイネ達も合流した。

 

「どうやら、全員無事みたいだな」

「あぁ。いやー、しんどかった! ロゼのやつ強すぎんだろ」

 

 いつものように振る舞うが、焔の手足には剣で斬られた傷があり、激戦を繰り広げていた事を物語っていた。

 

「なぁ空。アイツらって、俺らの事本気で倒そうとしてると思うか?」

「……お前もそう思うか」

 

 焔と空は同じような疑問を抱いていた。

 

「あの、どうしてそんなこと?」

 

 合流したハイネが恐る恐る焔に質問すると、焔は腕を組み、少し自信なさげに話した。

 

「いや、ロゼと戦った時。なーんかあいつ本気出してねぇなって思って」

 

 

 

 _数分前

 

「だぁぁ逃げんなよ! ロゼ!」

「わざわざ有利な状況を崩すバカは居ない」

 

 焔とクロ、そしてロゼの対決はロゼが地形を巧みに利用し、更には施設のロボットを駆使する戦術に焔達は苦戦していた。

 

 焔と共にいたジェニーはロゼのウィドウアンカーに捕らわれたままで魔法は使えず、何も出来ずこの状況を見る事しかできなかった。

 

「落ち着いて焔君。相手の土俵で戦う必要は無いわ!」

「って、言われても……!」

 

 相手のテリトリーかつ、ロゼの様に身軽に動く為の道具がない焔は苦戦を強いられていた。

 

(空、まだか……!?)

 

 空が必ずハッキングを成功する事を確信している焔だが、その焔自身は既に満身創痍になっていた。

 

「にしてもあいつ、なんで……」

 

 やがて、ロゼの放つ剣の斬撃に焔は不知火の刀を手放してしまい、ロゼの赤い閃刀の先が焔に向けられた。

 

 あと数ミリロゼの手を前に動かせば、焔の喉元が貫かれる状況で、焔はロゼの冷たい目を見る。

 

(やっぱ、なんで……)

 

 すると焔は、ロゼの微かな違和感を感じ始める。

 いや、正確には戦いながら違和感を確信していた。

 

「終わりよ」

「それはどう……だろうな!」

「ギャウウウ!!」

 

 焔のピンチを救う為、クロが黒炎弾をロゼに放ち、ロゼは黒炎弾を避ける。

 それと同時にクロが不知火の刀を咥え、焔の手に投げ飛ばし、彼の手に刀が戻った。

 

「ナイスクロ! お前、すげぇな」

「ぎゃうぎゃう〜♪」

 

 互いに意気投合する中、ロボット達は空気を読まずに襲いかかろうとしたその時、突然ロボットの動きが止まる。

 

 様子がおかしい事に警戒する焔とクロ、そしてロゼは何かを察すると、焔達を襲った機械達はロゼの方へと向かい、攻撃を仕掛ける。

 

 飛び交うビームを避け続け、システムが掌握されたと一瞬で理解したロゼは外に待機させていたジークを呼び出し、この場の壁を破壊し、ジークに乗り込んだ。

 

「逃げる気か!」

「この場は掌握された。ならもう、戦う意味は無い」

 

 ジークに乗り込んだロゼはレイ達を回収する為に塔の外周を飛び、壁を壊して合流していった。

 

 ジークの手にレイ、アザレア、カメリアが乗り込むのが見えると、ジークはスペクトラから離れていった。

 

「っぱ、あいつ。本気で俺らの事倒す気ねぇな……」

 

 

 

 

 

「ってな感じで、俺を倒そうと思えばあいつ、倒せたんだよ。なのにわざと見逃しててさ」

「それについてだが、裏付け出来る物があったぞ」

 

 すると空が見せたのはロボットを操作する時に使った端末だった。

 

「スペクトラのシステムの掌握についてだが、システムにプロテクトはかけられていなかった。司令室さえたどり着けば、ここのシステムは掌握出来たんだ」

「あー……つまりどういうこった?」

「真意は分からないが、レイ達はシステムを渡すつもりだったという事だ」

「どうしてそんな事を?」

 

 花音の質問に空は首を横に振り、肩を竦めた。

 

 分からないと言うより、不可解だった。

 

 レイ達は花衣を守る為に、花衣を倒す力がある焔達を倒そうとしている筈だ。

 だが実際には、焔を倒すチャンスが多くあったのにも関わらずそれを手放し、あまつさえシステムを守ろうともしなかった。

 

 それはまるで、焔達に花衣を助けるチャンスを与えるようでもあった。

 

「……ねぇ、ラビュリンス様。1度ここに仕掛けられた罠を見返してみて、今の話をどう思うか意見を貰える?」

『そうですわね。どちらかと言えば、力試しと言う側面が強い印象ですわ』

「力試しだぁ?」

『そう。特に分断させる意志を感じましたわ。普通、こういう時は、近づかせたくない部屋に行かせない罠を張るものですわ』

 

 この場合、司令室への道に行かせないようにする罠を張る事が普通だが、レイ達が行っていたのは分断と、それによる戦闘。

 

 そこにラビュリンスは引っかかっていた。

 

「見逃しとシステムの手放し……力試し。もしかして……」

「何か心当たりが?」

 

 ジェニーは何か考えを言おうとするも、混乱を避ける為にあえて何も言わず口を閉じた。

 

「まぁね。けど、推測に過ぎないから言うのは止めておくわ」

「逆に気になってしゃーねぇけどな」

「まぁまぁ。目的は達成したし、次はこのままカーマに直行よ。……あ、オリハルコン、ありがとうね」

 

 ジェニーは本物のオリハルコンを託した者である……クロに近づいた。

 

「ぎゃうぎゃう」

「まさかクロちゃんに渡すなんて、ロゼさんに壊されたらと思うと、ヒヤヒヤしましたよ」

「最悪クロだけならカーマに飛んでいけるからね」

 

 もし仮に焔達が倒されたとしても、クロが真紅眼の黒竜へと姿を変えれば、単騎でカーマに直行し、彼方達と合流出来るプランをジェニーは予め話していた。

 

「彼方さんの方は大丈夫でしょうか……」

「心配ないわよ。だって、あのディアベルスターがいるんだから」

 

 

 

 

 

 

「へっくしょん!!」

「なんだ? 風邪か?」

「いや、そういうわけでは……」

 

 焔たちと別れ、一足先にカーマへと向かっている彼方、十代、そしてディアベルスターの3人はカーマへと至る道である氷の森の中を歩いていた。

 木々は氷に包み込まれ、更にはここだけ雪が降り続け、3人の体温を少しづつ奪われていった。

 

「それにしても寒いな~。普通の奴だったらとっくにやられてるかもな」

「ディアベルスターは、なんの問題もないのか?」

「ああ。昔、ここと似たような所に住んでいたからな」

「白き森……ですか?」

「知っているのか?」

「あぁ、カードにもなっているからな」

「カード?」

 

 彼方はデュエルモンスターズのカードをディアベルスターに見せると、興味深くディアベルスターと、肩に乗っている猫はカードを見つめた。

 

「お前のカードもあるんだ。相当強いぞ、お前」

「ほう、なら後で詳しく聞かせてもらうぞ。……そこにいる奴もどうだ?」

 

 ディアベルスターが斜めの方角にある氷の木陰に目を向けると、突然氷の破片がディアベルスターに襲いかかる。

 

 彼方と十代は身構えたが、ディアベルスターはそれよりも早く、巨大な本を盾にして攻撃を防いだ。

 

「旦那様の昔話は興味深いですが、他の雌の声を旦那様の耳に触れさせるのは我慢なりませんね」

 

 木陰から現れたのは六花聖カンザシだった。

 

「おや? 随分と少ないですね。どこかで野垂れ死んだのでしょうか」

「焔君達は別件で居ないが、直ぐにこっちにくる」

「まぁ、では……お茶漬けでもいかがでしょうか(さっさと帰ってください)

「それ、方弁ってやつだろ。帰れって意味の」

 

 カンザシは方弁を指摘されると、不敵に笑った。

 

「でしたら、旦那様の為に周り右をして立ち去ってください」

「断る。花衣君の心の闇を晴らすまでは」

「……その理由を貴方々は知っているのですか?」

「何だって……?」

 

 カンザシの顔から笑みが消え、カンザシは氷の傘を彼方に向けた。

 

「旦那様が何から苦しんでいるのか、何故心の闇に支配されているのか、分かりますか?」

「ダークネスのせい……では無いのか?」

「呆れました。それすらも分からないとは……」

 

 何か期待をしていたのか、心の底から落胆したカンザシは嘲笑し、氷の傘を下ろした。

 

「それが分からないのなら、オリハルコンの眼を使ったとしても旦那様は救えません。……やはり、私達にしか救えないのです」

 

 突然カンザシの周りに吹雪が吹き荒れ、雪に目が入らないよう3人は咄嗟に腕を出し、視界を守った。

 

 同時にカンザシは吹雪のカーテンに身を包みこみ、姿を消してしまった。

 まるで最初から誰もいなかったかのように足跡すらも消え去り、彼方はカンザシが立っていた場所を見つめる。

 

(……なんだ、この違和感)

 

 彼方はカンザシの言葉を思い返していた。

 

 _それが分からないなら、オリハルコンの眼を使ったとしても旦那様は救えません。

 

「まるで俺たちに花衣君を助けるヒントを出している言い方だな……」

 

 六花と閃刀姫達は自分達に対して敵意を持っているという確信が、ここに来て疑い始めた彼方は六花達の真意を考えようとした。

 

 花衣を助けるという点では、こちらと向こうでは一致している。

 

 にも関わらず、六花達が自分達と敵対しているのは、花衣君を倒すレゾンカードという名の力を持っている事への危惧が大きいと向こうは考えているのだろうか。

 

それは分かる。だが、敵対する意味はあるのか。

 

彼方の頭の中は、多くの推察が渦のように回り続ける。

 

「……ダメだ、確信が持てない」

 

 断片的にしか情報が無い今は答えが出ない彼方は、頭の隅に疑問を置いた。

 

 気持ちを切り替え、先に進もうとする中、ディアベルスターが彼方にある事を質問した。

 

「アレがアイツの恋人か? いや、旦那と呼んでいたな……どんな関係だ?」

 

 カンザシと花衣の関係についてディアベルスターは彼方に問い出し、彼方はまた更に悩んでしまった。

 

「どんな関係と言われても……愛人……いや違うな。強いて言うなら、死がふたりを分かつまでの関係?」

「それは、その……け、けっ……」

 

 突然ディアベルスターは頬を赤く染め、言葉の歯切れが悪くなる。

 

 彼方が戸惑いながらも曖昧に答えると、ディアベルスターは一瞬目を見開き、次の瞬間には見るからに顔を真っ赤に染めていた。

 

「け、けっ……結婚してるということか?」

 

 その言葉を絞り出すように呟いたあと、彼女はぱっと視線を逸らし、何かを誤魔化すように前髪や片目のモノクルをいじりはじめる。

 

「えと、アレだ。キスとか、あとは……そ、その先をしてる、関係でもあるのか?」

 

 彼方と十代は顔を見合わせ、ディアベルスターの意外と初心な一面に彼方は笑みをこぼし、十代はそんな一面がどんな意味を持つのか分かっておらず、首を傾げた。

 

「なぁ彼方、あいつなんで顔を赤くしてんだ?」

「十代さんも鈍いですね……」

 

 だが十代らしいと思いつつ、彼方はディアベルスターの質問に返した。

 

「残念ですが、俺からはなんとも。けど……相思相愛なのは確かです」

「ふ、ふーん……」

「意外と初心なんだな……」

「だ、黙れ! ほら、早く行くぞ!」

 

 声が上ずらないように必死で取り繕いながら、顔を見られれば、今にも真っ赤になっている頬がバレないように、帽子を深く被りながら、ディアベルスターは彼方に背を向けて歩き出した。

 

 その光景を見たベージュ色の猫は喉を鳴らしながらからかうようにして笑っていた。

 

「君もそう思うかい?」

「ふにゃ〜ん」

 

 彼方の言葉を理解している猫は頷き、歩くディアベルスターの背中を追いかけ、彼方達もその後を追う。

 

「歩いてみた感じ、特に罠とかは無さそうだが……」

「いや、油断するなよ。こういうのって、いきなりドガッ! って来るものだからな」

 

 その言葉が出た刹那、突然目の前に氷のツタが彼方達の行く手は阻み、襲い掛かる。

 氷のツタは鞭の様にしなやかかに動き、まるで生き物の様だった。

 

 だが、氷のような冷たさと硬さは確かにそこにあり、掴まれば一瞬で命を凍らせる事は必須だ。

 

「氷だったらこれだ! 来い! 【フレイム・ウィングマン】!」

 

 十代は融合モンスターであるフレイム・ウィングマンを召喚し、その右腕に宿る龍の頭部から灼熱の炎を放つ。

 

「行けぇ! フレイム・シュート!」

 

 吹き出した猛炎は、相手の放った氷のツタと空中で激突し、轟音と共に蒸気を巻き上げた。

 

「ルシアは居ないが……」

 

 ディアベルスターも続き、隠し持っていたダガーを取り出し、ダガーの刃の周りに鎌のような形を帯びた魔力が可視化される。

 

 魔力は徐々に膨らみ、まるでそこに巨大な鎌があるかのようになると、ディアベルスターは振り、氷のツタを多く刈り取った。

 

「負けてられないな……行くぞ! 【銀河眼の時源竜】!」

 

 彼方は紫に淡く輝く龍の幻影のモンスターを呼び出し、紫白の波動を打ち込み、目の前の氷を粉砕する。

 

 3人は次々に迫るくるツタを打ち倒し続けると、森の先から光が差し込んだ。

 

 出口だろうかと、彼方達はあの光の向こうへと走り、光の中へと溶けていくと、そこに広がっていたのはどこまでも広がる銀世界だった。

 

 氷の森で囲まれた、薄氷の広場は言葉に出来ない程幻想的であり、彼方達は息を飲んだ。

 氷の森に囲まれたその広場は、まるで現実とは思えないほどの幻想に包まれていた。薄氷の上に立つ彼方たちは、息を飲む。

 

 だが、それはこの幻想的な光景ではなく、ある一人の男がこの場にいたからだ。

 

 黒い装飾に身を包み混む中、キラリと輝く氷色の指輪とデュエルディスクを付けた男は、彼方達が探していた人物であり、ティアドロップやレイ達が守ると誓った存在の……。

 

「花衣くん……!」

 

 そう、桜雪花衣だった。

 

 姿は変わっていないが、溢れ出る闇と全てを無に帰す虚ろな目は、本当に同一人物なのかと疑うほどの変貌だった。

 

「まさかここで会うなんてな」

「あいつが……リカイ? 随分と雰囲気が違うな」

 

 ディアベルスターは、過去に出会ったカイと今の花衣を重ねるが、あまりにも掛け離れた雰囲気で別人とも思ったが、その考えは花衣の中から溢れ出る闇で消え去った。

 

 闇は冷たく、深淵で溢れかえってる。

 

 全てを飲み飲み、破壊し、完全な無にされる恐怖心を煽り、彼方は冷や汗を拭い、十代も固唾を飲み込む。

 

「いや、あの闇……昔と同じだ」

「……誰だ?」

「お前……私を忘れたのか?」

 

 ディアベルスターは帽子を外し、モノクロを外して素顔を見せるが、花衣の目は変わらなかった。

 

「お前のような奴は知らない」

 

 そんな態度にイラついたディアベルスターは帽子を叩きつけ、指の関節を鳴らした。

 

「いい度胸だなお前。思いきり殴って思い出させてやろうか?」

「私の花衣様に手を出すのであれば、その身を凍らせますよ」

 

 凍てつく風が、花衣の背後から吹き抜ける。

 氷の傘が音もなく開き、その下に佇むのは黒きドレスに身を包んだ氷華の令嬢──六花聖ティアドロップ。

 彼女の瞳が静かに揺れるたび、周囲の温度がわずかに下がった。

 

「花衣様、私以外の言葉に耳を傾けないでください。私の声と存在だけ感じてください」

「分かってるさ。お前たち以外、誰も信じない」

 

 互いの熱を感じる様に、花衣とティアドロップは互いに寄り添う。

 花衣から溢れ出る闇を感じないのか、あの闇の近くにいるティアドロップに彼方は言葉を投げる。

 

「ティアドロップ! 君は……いや、君たち六花はそのままで良いのか!?」

「何が言いたいのですか?」

「このまま花衣君が心の闇に飲み込まれたら、花衣君の本来の姿……ダークネスになってしまうかもしれないんだぞ! それは……花衣君が花衣君がじゃなくなる事を意味する!」

「その心配は無いですよ。私がそうさせません」

 

 花衣から放つ闇を受け入れるかのようにティアドロップは花衣の事を抱き寄せる。

 

「誰のものにも、何者にもさせませんから……だから、花衣様。私達の邪魔をする人は全員壊しましょう」

 

 その言葉を聞いた花衣はデュエルディスクを展開し、彼方と十代に指を指す。

 

「みんなのシアワセを壊そうとする奴は、俺が潰す」

 

 迷いなく、花衣はそう言い放った。

 氷の様に冷たく、刀の様に鋭いその言葉が本心だと彼方は拳を握り、花衣の心の闇に直面した。

 

「……本気なんだな」

 

 花衣は何も答えない。言葉を交わす事さえ無意味と伝えるように、ただ冷たく虚無の目を向けられ、彼方はデュエルディスクを展開し、デッキという名の剣をセットする。

 

「お前も来い」

 

 花衣はまさかの十代にもデュエルを申し込む。

 

「お前の顔を見ると何故か虫唾が走る。目障りだから一緒に潰してやる」

「へっ、ダークネスから生まれたから、倒された記憶があるのか? 良いぜ、望むところだ!」

 

 十代はデュエルアカデミアから使っている赤色のデュエルディスクを展開し、3人の周りに氷のツタが壁のようにして包み込み、デュエルフィールドへと変貌していく。

 

 花衣のそばにいたティアドロップは光となって花衣のデッキへと消え、デュエルの時は近づいていった。

 

 

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