六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
久しぶりすぎて六花の新規が来ちゃいましたね……
花衣君どんどん強くなるのか(白目)
# 第197話 忘却の花園
朝日が昇り、窓から差し込む光が三人の男たちを照らしていた。
一人は机に突っ伏し、眼鏡をずらしたまま眠っている。一人は床に大の字になり、最後の一人はベッドの中で力尽きていた。
周囲にはカードが散乱し、床に倒れている焔の傍らには、六十枚のカードを重ねたデッキが置かれている。
夜通し続いたデッキ構築は、夜明け直前にようやく完成したのだった。
「皆さんー? 朝食ができましたので、そろそろ……」
扉を開けた花音は、部屋の惨状を目にして硬直した。
「キャァァァァァ!?」
その悲鳴が目覚まし時計となったのか、三人はゆっくりと目を開いた。
「んぁ? もう朝か……眠ぃ……」
「……疲れた」
「怪我を抱えて徹夜するものじゃないね……」
三人の無事を確認した花音は安堵したものの、目の下に隈を作り、髪も乱れた彼らの姿を見て眉をひそめた。
「あ、あの……皆さん、まずはお風呂に入りませんか? その……少し臭います」
「一日ぐらいいいだろ。カードゲームプレイヤーって風呂とかあんま入らねぇし」
「偏見ですよね、それ!?」
「んー……否定できない」
「彼方さんまで!?」
結局、花音はアロマージたちと協力して三人を浴室へ送り込んだ。
「つーか、このハーキュリーベースってシャワー室まであんのかよ。すげぇよなぁ」
「まあ、基地というぐらいだからね。生活できる設備が整っていても不思議じゃないよ」
「問題は、どうやってこれほどの水量と電力を確保しているかだ。浮遊している原理も気になる。可能なら分解して研究したいが……」
「空ー、今それする暇ねぇだろ」
自分の世界に入りかけた空の頭に軽く手刀を落とし、三人は身支度を整えてブリッジへ向かった。
◇
ブリッジには既にジェニーたちが揃っており、巨大なテーブルには朝食が並べられていた。
「来たわね。朝風呂ですっきりしたところで、今日の本題に移っても大丈夫?」
「ほぅ! いふへもいいふぉ!」
「食べるか喋るか、どちらかにしろ」
おにぎりを頬張る焔を横目に、ジェニーは端末を操作した。
テーブルの上空にホログラムが形成され、カーマの街並みと警備設備の配置が映し出される。
「いよいよカーマに足を踏み入れるわけだけど、今回の目的は焔君と空君を花衣のところまで送り届けることよ」
「んで、俺たちがデュエルに勝って、花衣を連れ戻すってことだな」
「そういうこと。でも、あまり時間はないわ」
「……時間?」
「彼方君、十代君。昨日の花衣はどんな状態だった?」
ジェニーに尋ねられ、二人は昨日のデュエルを思い返した。
「かなりダークネスに近い状態だったね。あのまま侵食が進めば、花衣君は完全にダークネスへ取り込まれてしまうだろう」
「そ、それって……! 早く助けないと大変じゃないですか!」
慌てる花音を落ち着かせるように、彼方は言葉を続けた。
「ただ、まだ希望はある。花衣君の戦い方は、以前と変わっていなかったんだ」
「……戦い方?」
「特に六花や閃刀姫たちへの接し方だね。彼女たちを守ろうとする姿勢は、僕たちが知っている花衣君そのものだった」
「ああ。自分が傷ついてでも、あいつらを守ろうとしていたな」
十代も頷いた。
「そもそもダークネスは、仲間との繋がりを大切にするような存在じゃない。彼女たちを守りたいという感情が残っているなら、それはあいつ自身の意思なんじゃないかと思っている」
「……ってことは」
焔は身を乗り出した。
「まだ花衣を助けられんだな!?」
「可能性は十分にあるよ」
「……そうね」
ジェニーは頷いた。
「でも、時間がないのも確かよ。だから、少し強引な方法で焔君と空君をカーマまで送り届けるわ」
「……強引?」
ジェニーが眼鏡を光らせ、不敵に微笑む。
その笑顔に、焔と空の背筋が冷たくなった。
嫌な予感がした時には既に遅く、ジェニーはホログラムに小型の飛行体を映し出した。
「二人には、これに乗ってカーマまで射出されてもらうわ」
「……は?」
二人は絶句した。
「そのちっちゃい丸い奴に、俺と空を?」
「ええ、そうよ」
「どうやって飛ぶんだ?」
「ハーキュリーベースの発射口から、弾丸みたいに撃ち出すの。大体マッハ二ぐらいになるかしら」
「マッハ二って、どんぐらい速ぇんだ?」
「条件にもよるが、およそ時速二千五百キロだ」
「……それに俺らを乗せて、ぶっ飛ばすのか?」
「正解」
次の瞬間、二人は席を立って逃げようとした。
「アリアス~」
「かしこまりました」
ジェニーの呼びかけに応じ、アリアスが使役する水の眷属が鎖へと姿を変えた。
水の鎖は二人の身体に絡みつき、その動きを封じる。
「うおおお!? 殺されるぅぅ! 花衣のところに行く前に、花衣の母ちゃんに殺されるぅぅ!!」
「大丈夫よ。加速時の負荷を和らげる装置もあるし、着地の衝撃も抑えられるようになっているから」
「それでも嫌だぁぁ!!」
「私の魔法でも補助するから! お願い、今はこれが花衣のところへ辿り着く最短の方法なの」
「……んぐぐぐ」
ジェニーの切実な表情に、焔は抵抗を止めた。
花衣がいつダークネスに取り込まれるか分からない以上、一分一秒が惜しい。
「……分かったよ。乗りゃいいんだろ、乗りゃ!」
その言葉を聞き、アリアスは二人の拘束を解いた。
「よし! 腕さえ残ってりゃデュエルはできる! 乗るぞ、空!」
「腕以外が残らないことを前提に話すな」
「どうやら決まったようね。……それと、このポッドは三人乗りなの。あと一人、同行できるんだけど……」
ジェニーは周囲を見渡した。
最有力候補は彼方だったが、目が合うと彼は首を横に振った。
「僕は怪我で耐えられない。ここに残って後方支援に回るよ」
「となると……」
「俺か、そこの嬢ちゃんだな」
十代が腕を組んだ。
デュエルの腕を考えれば、十代を行かせるのが最善だろう。
しかし、その結論が出るより早く、花音が手を上げた。
「あ、あの! 私がご一緒してもよろしいでしょうか!」
「花音?」
「私はこの中で一番非力で、弱いかもしれません。もしかしたら、お二人の足手まといになるかもしれません。でも……!」
花音は十代へ向き直り、頭を下げた。
「花衣さんを助けたいんです! お願いします! 私に行かせていただけませんか!」
十代はしばらく考えた後、口角を上げて笑った。
「……まっ、断る理由もねぇな」
「じゃ、じゃあ……!」
「行ってこい。花衣のこと、頼んだぜ」
「……はいっ!」
こうして、焔、空、花音の三人が先行することになった。
「三人とも、到着したら通信機で連絡してね」
「こちらからもサポートするよ」
ジェニーと彼方の言葉を受け、三人はハーキュリーベースに搭載された輸送ポッドへ乗り込んだ。
全員が座席に着くと扉が閉まり、発射口のハッチが開かれる。
「お二方の足を引っ張らないように頑張ります!」
「無理すんなよ、花音」
「必要なら俺たちがサポートする」
機内に低い振動が響き、電子音が重なった。
花音は両手を胸元で握りしめ、座席に深く身体を沈める。
「何かこういうのって、絶叫マシンみてぇだな」
「命がけのジェットコースターなんてものはない」
空の冷静な突っ込みに、焔は一瞬黙り込んだ。
『――射出準備完了。カウントダウン開始』
「そもそもジェットコースターは、緻密に計算された構造物だ。危険は……」
『三……二……一……』
「絶対にない」
『――射出』
その瞬間、輸送ポッドはレール上を猛烈な勢いで加速し、青空へと撃ち出された。
機体は雲を突き抜け、流星のようにカーマへと飛んでいく。
「……頼んだよ、皆」
空の向こうへ消えていく三人を見送りながら、彼方はそう呟いた。
◇
カーマ近郊の雪原。
三人を乗せた輸送ポッドは、一度も妨害を受けることなく予定地点へ着陸した。
しかし、その順調さがかえって空の警戒心を強めていた。
扉が開くと、空が先に外へ出て周囲を確認し、焔と花音もそれに続いた。
辺り一面には銀世界が広がっていた。
「ヴぇっくしょん! うぅ、寒っ……!」
「六花の皆さんの仕業でしょうか……。あまり長く外にはいられませんね」
「慎重に進むしかない。地図によれば、カーマはこの先だ」
空は以前の街で入手した地図を頼りに、雪の森へと足を踏み入れた。
「にしても、すんなりカーマの近くまで来れたよな。警備ドローンとか結構来ると思ったんだけどよ」
「
三人は木々の陰に身を隠しながら進んだ。
やがて森を抜けると、目の前に巨大な城壁が現れた。
「高ぇぇ……! こりゃ空のRRを使うしかねぇか?」
「いや、飛行すれば目立ちすぎる。内部に警備ロボットが待ち構えている可能性もあるからな」
「じゃあ、どうしたら……」
「……少し待て」
空は城壁に沿って進み、壁面に積もった雪を払い落とした。
拳で軽く叩きながら場所を変えていくと、一部分だけ違う音が返ってくる。
「……ここか。焔、この壁を壊せ」
「うっし、任せとけ!」
焔は腰を落とし、鋭い回し蹴りを放った。
蹴りが直撃すると壁面に亀裂が走り、人一人が通れるほどの穴が開いた。
その奥には、薄暗い通路が続いていた。
「おおー! こんなもんがあったのかよ!」
「こ、これって隠し通路ですか? どうして場所が分かったんです?」
「資料にカーマの非常脱出用通路の記録があった。外から開く機構は失われていたようだが、出口なら周囲より壁が薄いと考えた」
「非常脱出用……?」
焔は通路を覗き込んだ。
「それって、カーマを捨てる時のためってことだよな? ここってレイの故郷みたいな場所だろ? 何でそんなもんがあるんだ?」
「恐らく、敵に制圧された時に閃刀姫だけでも逃がすためだ」
「……故郷を捨ててでも、戦争に勝ちたかったのでしょうか」
花音の呟きに、焔と空は黙り込んだ。
閃刀姫は、列強という国に立ち向かうために作り出された存在だ。
長い戦争の末、この世界の人口は三割にまで減少したという。
三人が街で得られた情報は、まだその程度だった。
「……今はその話をする時間はない。行くぞ」
空を先頭に、焔、花音の順で通路へと足を踏み入れた。
狭い通路を抜けた先には、近未来の兵器を運用する都市とは思えない街並みが広がっていた。
煉瓦造りの家々に、石畳の道路。中央には噴水があり、至る所に氷の花が咲いている。
「わぁ……! 中世ヨーロッパのような街並みですね!」
「てか、さっっむ!! ここだけ雪降ってんじゃねぇか!」
焔は不知火の刀を実体化させ、刀身に炎を纏わせた。
その暖を取るため、空と花音も近づく。
「んで、ここからどうやって花衣を探すんだ? アテはあんのか?」
『それなら、レゾンカードを使えばいい』
通信機から彼方の声が聞こえた。
『レゾンカードには、ダークネスの因子を探知する性質もある。試してみてくれ』
空は【イグニッション・ファルコン】を取り出し、ゆっくりと向きを変えた。
すると、ある方向へ向けた瞬間、カードが一際強く輝いた。
「……反応がある。この方角に花衣がいるはずだ」
「おぉ~! そんな使い道があったとは!」
「ダークネスを倒すためのカードだからな。ジェニーから探知能力についても聞いておいた」
「便利だなー」
「気を抜くな。行くぞ」
◇
「……おかしい。静かすぎる」
空が足を止めた。
「確かにな。昨日あれだけドンパチしたのに、何の反応もねぇってのは変だよな」
「逆に怖いですね……何か理由があるのでしょうか」
三人は警戒しながらカーマの街を進んでいた。
人影はなく、警備ロボットも見当たらない。
聞こえてくるのは足音と衣擦れ、そして微かな呼吸音だけだった。
やがて、空は一際大きな建物の前で足を止めた。
屋敷というより、城と呼んだ方が相応しい。
「……ここか?」
レゾンカードは、その建物を示していた。
不思議なことに、城の門は開かれたままだった。
「いかにも入れって言ってるな」
三人は警戒を怠らずに内部へ足を踏み入れた。
そこには、博物館を思わせる広大な展示室が広がっていた。
ガラスケースには壺や掛け軸、王冠といった前文明の遺物が収められている。
「わぁ……! 色々な歴史的遺物がこんなに!」
「諸行無常……って、掛け軸まであるのかよ。違う世界なのに、俺らと同じ言葉があるんだな」
「博物館というより、保管庫に近いな。……ん?」
空は奥にあるガラスケースへ目を向けた。
そこには、見覚えのある機体が展示されていた。
「これって、イーグルブースターか?」
三人が見つけたのは、閃刀機―イーグルブースターと酷似したものだった。
説明板には初期型の試作機であり、かつて閃刀姫が使用していたと記されている。
「結構昔から閃刀姫っていたんだな」
「それが戦争で……たくさん失われたんですよね?」
「記録ではそうなっている」
「……悲しいですね。でも、その戦いを終わらせたのがカイム……花衣さんなんですよね?」
「少なくとも、俺たちの知る限りではな。ただ、ここにはその記録が残っていない」
三人は数々の閃刀機の試作機を眺めながら、展示室の奥へと進んだ。
その最奥には、二本の閃刀が展示されていた。
黒い刀身に白いラインが走る剣と、白い刀身に血管のような模様が刻まれた剣。
「……これ、カイムの奴じゃねぇか?」
「ですよね? レプリカでしょうか……?」
「……レプリカだな。間違いない」
「何で分かんだよ?」
「本物は以前、花衣を通じてレイに触らせてもらったことがある。あれとは違う」
「よくあいつらから触らせてもらえたな」
「高一の頃の花衣の写真を見せたら許可してくれた」
「えっ!? 何ですかそれ!? ずるい……じゃなくて! プライバシーの侵害では!?」
「ただ作業記録に映り込んだだけだ。……それより」
空はレゾンカードを取り出した。
カードは、これまでにない強い輝きを放っている。
「……奥に反応がある。どうやらこの先に花衣がいるようだ」
展示室の奥には、薄暗い通路が続いていた。
しかし、そこから漂ってくる気配に、三人は足を止めた。
「……っ!」
身体の芯から熱を奪われるような感覚。
黒いオーラが押し寄せるたびに、胸が締めつけられ、呼吸が浅くなる。
「……何だよ、これ」
「ダークネスの反応だ。しかも、相当強い」
本能が逃げろと警告していた。
それでも焔は拳を握りしめ、一歩前へ踏み出した。
「……行くぞ」
「……ああ」
「……はい!」
三人は互いに頷き合い、通路へと進んだ。
無機質な廊下に、足音だけが反響する。
やがて奥に一筋の光が見え、その向こうから微かな笑い声が聞こえてきた。
「……花衣?」
焔は思わず足を止めた。
聞き覚えのある声だった。
三人は光へと近づき、廊下を抜けた。
その瞬間、景色が一変した。
そこには、氷の花々が咲き誇る庭園が広がっていた。
白銀の花弁が舞う、その中心。
黒い装束を纏った花衣が、二人の少女に囲まれていた。
隣には、漆黒のウェディングドレスを思わせる衣装のティアドロップが寄り添い、穏やかに笑い合っていた。
しかし、庭園に足音が響いた瞬間、表情が変わった。
ティアドロップは花衣を抱き寄せ、焔たちを冷たく睨みつけた。
「殺されに来たのですか?」
「何言ってんだよ。花衣を迎えに来たに決まってんだろ」
「必要ありません。花衣様はここで幸せに暮らしているんです。貴方たちが連れ戻す必要などありません」
その時、花衣が焔たちへ目を向けた。
虚ろな瞳には、生気が感じられない。
しかし、それ以上に焔を困惑させたのは、花衣の反応だった。
驚きも、懐かしさもない。
ただ、見知らぬ人間を眺めるように首を傾げている。
「……誰だ?」
「……は?」
焔の表情が固まった。
花衣はしばらく考え込んだ後、興味を失うかのようにティアドロップに顔を寄せた。
「冗談だろ」
焔は乾いた笑みを浮かべた。
『……おかしい』
通信機から彼方の声が聞こえる。
『ダークネスには、取り込んだ存在そのものを消す性質がある。だが、本人の記憶が失われるというのは……』
『俺も初めて見る状態だ』
十代の声が続いた。
『昨日のあいつは、少なくとも俺たちを覚えていた。たった一晩でここまで進んだのか……』
「……そんな」
花音は口元を両手で覆った。
「花衣さん……本当に、皆さんのことを忘れてしまったんですか?」
「良いじゃないですか、忘れてしまって」
その言葉と共に、ティアドロップは両手で花衣の目を覆った。
「貴方には私たちがいます。それに、いなくなる人たちのことなど覚えていなくても良いんです」
花衣の腕へととを伸ばし黒いデュエルディスクが現れる、彼女の手に呼応するように、花衣の身体から黒い光が立ち上る。
「やる気って訳だな」
焔は拳を握りしめ、デュエルディスクを構える。
空と花音も焔の後を追うように、デュエルディスクを構えた。
「悪いけどな、俺らはお前を忘れてねぇんだよ」
「……」
「一緒に戦ったことも、笑い合ったことも、全部覚えてる。お前が忘れたからって、無かったことになんかできねぇし、もったいねぇよ」
焔は60枚のデッキをディスクに装填する。
「お前の過去、お前が出会ってきた仲間、全部全部無かったことになんかさせるかよ!」
「……どうでもいい」
ティアドロップの手が離れ、花衣の虚ろな瞳が三人へ向けられた。
「皆さえいれば、それでいい」
その『皆』の中に、焔たちは含まれていない。
それでも、誰一人として退こうとはしなかった。
氷の庭園に、黒い花弁が舞い上がる。
そして、三人の声が重なった。
「「「デュエル!!!」」」
オリカをまとめた章が欲しい?
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欲しい!
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別に( *¯ ³¯*)