六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
「ん〜…」
ある平日の放課後俺はカードショップに居た。この世界がだんだん遊戯王中心に変わってきた事からか、この店も大分客が増えた。
俺は来週の土曜に開催される"ロマンスタッグデュエル"と言う物に招待された。ペアの相手は咲初であり、彼女とアロマデッキと俺の立花とは相性が良いので、そこは問題では無い。問題は…
「良いですか?花衣様と豪華客船で一緒に過ごすのはこの私です。」
「違います〜!花衣さんと豪華客船で美しい夜を過ごすのは私です〜!」
これだ…立花達と閃刀姫…どちらがそのデュエル…と言うよりは豪華客船で俺を過ごすかを討論していた。その件について俺は大いに悩んでいた。
それならどっちも連れていけば良いと思っているのだが、それが立花達とレイ達が許してくれるのだろうか、と言うか今の状況では話を聞いてはくれないだろう。
どっちも連れていくとなると、俺のデッキは【立花】と【閃刀姫】の混合デッキにしなければならない。
だが、どちらもそんなシナジーは無い。どうすればいいのやら…
「あら?なんだか凄く悩んでいるわね。どうしたのかしら?」
レジにいた客を捌いてきた店長さんが悩んでいる俺を見て尋ねてきた。俺は、どうにかして立花と閃刀姫を一緒に戦わせることが出来ないかと相談したが、やはり難しいのか店長さんはかなり悩んでいた。
「【立花】と【閃刀姫】の混合デッキね…ん〜正直行って難しいわ。【立花】は植物族、閃刀姫はメインモンスターゾーンを使わないからこそ真価を発揮すると言ってもいいわ。正直に言うと相性が悪すぎるわ。」
「そう…ですよね…」
現に俺の目の前でティアドロップとレイの喧嘩が勃発しているし…
「貴方に花衣様の何が分かるのですか!」
「分かりますよ!5時間目の授業は気持ちよさそうに寝てるし、瞼が少し長い事も、たまに可愛らしい寝言もします!」
「そんな物、夜寝ている私でも分かっている事です!」
「よ…夜寝てる…!?なんですかそれは!」
頼むから本人の前で私生活をばらすのは辞めてくれぇ…!しかし止めようにもすぐ近くに客や店長さんがいるので思い切って止めに入る事は出来ずに、ティアドロップは俺の私生活を誇らしげに語っていった…
なんだこれは…地獄か?…ん?地獄…?その言葉を聞いて、俺はあるカードを確認する。それは"闇黒世界-シャドウ・ディストピア-"と言うカードだ。
【闇黒世界-シャドウ・ディストピア-】
①:フィールドの表側表示モンスターは闇属性になる。②:1ターンに1度、自分がカードの効果を発動するために自分フィールドのモンスターをリリースする場合、自分フィールドのモンスター1体の代わりに相手フィールドの闇属性モンスター1体をリリースできる。③:自分・相手のエンドフェイズに発動する。このターンにこのカードが表側表示で存在する状態でリリースされたモンスターの数まで、ターンプレイヤーのフィールドに「シャドウトークン」(悪魔族・闇・星3・攻/守1000)を可能な限り守備表示で特殊召喚する。
「このカード…上手く使えるか?」
六花はリリースを起点として展開等をする事が多いし、レイもリリースしてエクストラデッキの閃刀姫リンクモンスターを特殊召喚できる効果もある。
…かなりごった煮のデッキになるが、現状俺の知恵で立花と閃刀姫のデッキを作るにはこのカードが必要だ。
「…それにしても闇属性…【闇】ね…」
闇という言葉を聞いた瞬間、俺はまたあの時見た悪夢を思い出してしまう。今朝も同じように俺を苦しめる悪夢にうなされていた。夢では無く、まるで本当に身体が締め付けられるようなあの想像絶する苦しみは一昨日に続いて二度も体感した。またあの悪夢を見ると思うと寝るのも憂鬱になる。
「花衣様?なんだか元気がなさそうですね…?」
ティアドロップとレイが俺の様子に気づき、俺は慌てて気持ちを切り替える。こんな事で弱気になっちゃダメだ。何か…意識を逸らせるような話題は無いのか?
そう思ってティアドロップとレイの顔を交互に見ると、ふと疑問に思った事がある。
「そうだ、"六花聖華カイリ"と"閃刀騎-カイム"とか、あの世界で使ったカードってここでは使えないのか?」
あれを使えば戦略の幅が広がるのだが…この世界には無いカードだ。まぁ、使えないだろうと思ったが…
「え?使いたいなら使えますけど?」
「やっぱりな〜使えないか…って…え?使えるの?」
まさかの答えに俺は思わず体を乗り出してしまい、他の客が俺のおかしな行動に視線を集めた。
そうだ、他の人にティアドロップ達は見えない。つまり今の俺は何も無い所でいきなり机に体を乗り出した変人にしか認識されているということになる。
俺は気にしない素振りをしながら内心やってしまったと羞恥心を抱きながらデッキ調整を装いながらティアドロップ達と話す。
「使えるなら良いけど…この世界には無いカードだぞ?使ったとしても反則だって言われるのがオチだ。」
「確かに花衣さんがいた世界ならそうなりますね。だけど…この世界はもう、花衣さんが住んでいた世界とはかけ離れた存在になっています。…もう分かっていますよね?」
「…!?じゃあお前達はこの世界が変わり続ける事を実感していたのか!?」
てっきりこの世界の変貌を認識しているのは俺だけだと思っていたのに…まさか立花達と閃刀姫達もこの世界が変わっている事を実感していたなんて…ん?と言う事は…
「と言う事は…咲初もこの世界が変わっている事を実感しているのか?」
俺と咲初にはデュエルモンスターズの精霊が見えるという共通点がある。俺と立花達が世界の変貌を感じているなら同じ共通点がある咲初だって俺と同じ境遇な恥ずだと考えたが、その考えは外れることになった。
「残念ですが花衣様。あの女の様子からして、花衣様のように世界が変わっている事なんて分かっていません。むしろ変わった影響をマトモに受けていますね。」
「そう…なのか…」
いや、よく考えたら咲初の性格からしてこの異変に関して真っ先に俺に相談するはずだ。だが、咲初もこの世界がまるで最初からこんな感じだと思っているように過ごしていた。…じゃあなんで俺は影響を受けないんだ?
「あるじゃないですか…私たちと花衣様の共通点が…」
俺と…立花達の共通点?そんな事言ったって、俺は人間で立花達と閃刀姫はデュエルモンスターズの精霊…いや待て…俺は昔、立花と閃刀姫と一緒に過ごしたことがあり、俺の前世だろうモンスター、"六花精華カイリ"と"閃刀騎-カイム"は同一人物…考えられることは一つだけだ。
「…デュエルモンスターズの精霊か?」
「はい!そうですよ!」
正解を祝福するようにレイは手をパチパチと叩く。
成程…遊戯王中心に変わり続けるこの世界だからこそ、その中核にいるデュエルモンスターズのモンスター達は影響を受けないのか。となると…咲初の【アロマ】モンスターもこの世界の異変に気づいてるはずだ。
まとめると、俺は前世がモンスターだった為、異変の影響を受けずにいた。…という事になるのかな?
「問題はこの異変が所まで拡大するかだな…」
現時点では、世界中で遊戯王が大ブームを巻き起こしており、デュエルディスクの生産に世界が注目している。
デュエルで世界を支配とか、デュエルで犯罪とか、デュエルで奴らを拘束せよ!見たいな事にはなっていない。
というかならないで欲しい。
「ま…そんな事より今はデッキだなぁ…これ使ってみるか。」
俺はスマホに映し出されているカード、"闇黒世界-シャドウ・ディストピア-"を用いた、立花と閃刀姫の混合デッキを制作する事にした。…多分40枚では済まないと思うが…
求めよ…
俺はまた…あの悪夢の声が聞こえた気がした。
_数時間後
な…何とか調整からの実践の無限サイクルを繰り返してようやく実践で使えるほどまで調整が完了した。
お…思った以上に疲れた…思った以上に仲が悪くて凄く苦労した。だが、その分他のみんなを驚かすことが出来るはずだ。早く来週になってくれないかと気持ちが先走りするばかりだった。
「花衣さん、少し良いですか?」
「ん?どうしたレイ。」
カードショップからの帰り道の中、レイが珍しくしょげた顔をして力なく俺の服の袖を掴んできた。
「どうして無理に私を使うのですか?…言ってしまえば、六花だけ使えばアロマを使う彼女とは相性が良いはずです。…どうしてですか?」
確かに六花だけでデッキを調整した方が、咲初とのデッキにも相性が良いため、わざわざ閃刀姫を入れる必要は無い。勝つ為だけなら閃刀姫を入れないが、勿論理由がある。
「寂しそうにしていたから。」
咲初とのタッグデュエルをすると言う事を聞いたレイは、目に見えて気分をしょげていた。
レイと咲初はこの前の大会で一度戦った事がある為、お互いがどんなデッキを使っているのか分かっていた。
咲初の使うデッキは【アロマ】だ。閃刀姫では無く、同じ植物族である六花を使った方がまだマシだろう。
わざわざ閃刀姫を理由は全くもって見られないが、それだけでレイとロゼを置き去りにするのは、前世の俺…つまりは"閃刀騎-カイム"が何も言わずにレイ達から離れたように思い、どうしても俺は嫌だった。いや、それ以前に所々レイの悲しそうな顔を見たくなかったからだ。
自分の問いの答えを聞いたレイは顔から火が出るほどに真っ赤にして顔を俯かせる。頭上から蒸気が出るほどその赤い顔は、戦士では無く年相応の可愛らしい反応だった。
「ず…ずるいですよ。そんな事言ってると…もっと好きになっちゃいますよ?」
そう言いながらレイは俺の腕へと抱きつき、そのまま強く腕を抱きしめるようにした。感触が主張したがるように、俺の腕から何やら程よい柔らかい感触が伝わって来る。
…着痩せするタイプなのか…いやいやいやいや何を考えてるんだ俺は!煩悩を断ち切る為に俺はレイから離れようとするがやはり力の差があり、レイは一向に腕から離れてくれなかった。
「どうして離れるんですか〜?もっとくっつきましょうよ〜!」
ムニっと擬音が聞こえるような感触が更に俺の煩悩を加速させる。
どうにか気を逸らそうと素数を数えたりレイとは反対の方角顔を背けたが、その先にはいつの間にかいたロゼが俺の腕を掴んでいた。
「私を忘れちゃ困る…」
「あ…あはは…」
レイばかり気にかけていた事にロゼは怒ったのか、ロゼはレイに負けまいと腕を組んできた。両端から2人の重心が俺の体に押し寄せるが、俺の歩く速さと歩幅を完璧に把握してるか、歩きづらくは無かった。
そして住宅街を俺たちは歩いているので、通りかかる人は俺とレイ達を見て仲睦まじい関係だと思っているだろう。
「あら、モテモテね。」
通りかかる人はそんな俺たちの関係を勝手に想像し、勝手に微笑ましく思っていた。レイ達は満足そうな顔をしながら更に俺の腕に強く抱きついた。
だが、それを良しとしないものもいるのが世界という訳でして…現に俺の体に痛いほど厳しい視線が浴びせられているのをひしひしと感じる。
「花衣様〜?そんな貧相な胸より私の方が柔らかくてハリの良い弾力を備わっていますよ〜?」
霊体化で自身を浮かているティアドロップは、レイ達に煽るようにと同時に俺を誘惑するように自身の胸を俺の頭の上に乗せた。右も左も上も柔らかな感触に支配されそうな俺は、残りの理性を振り絞ってティアドロップ達から離れた。甘い魅惑的な支配に呑み込まれそうになった俺の体は熱く、心臓が激しくなっていた。
「お…お前ら!年頃の男にそんな事していいと思っているのか!?」
「あ!花衣さん顔を赤くしてる。可愛い…♡」
自分の顔の赤さを見られた俺はからかわれたせいか、まるで女性を癒す子猫を見るように見つめらせいなのか、男のプライドが傷つけられたようにも感じ、俺の顔は更に赤くなる。
「っ〜!ふん!俺はもう帰る!」
駄々をこねた子供のように怒ってしまった俺はそのまま走って家へと帰る。こればかりはみっともないと自分でも思った。だが、あの誘惑はこれだけでは逃れる事なんて出来なかった…
走り終わって激しい息切れをしていた俺は、家のドアに持たれかけて息を整えていた。
今日は…体力的と精神的に疲れた…心臓がこれまでに無く昂っており、呼吸が息苦くなり、鼓動音も俺の耳にまで届いていた。
どうしてもさっきの胸の感触が忘れられず煩悩を払うかのように何も無い所に手を慌てて振る。そのまま俺のありとあらゆるモノを沈める為に部屋に駆け込んだ。
制服を乱雑に脱いで床にほおり投げて急いで部屋着に着替える。ベッドに横たわり昂る体を休ませようとしたが、高まる体が言うことを聞いてくれずいつまでも心臓が落ち着いてくれなかった。
「だぁぁぁ!忘れろ忘れろ!」
布団にくるまり、枕を殴って忘れようとしても感覚が忘れてくれずにいた。その感覚が引き金になり、煩悩による卑しい妄想も俺の脳裏に過ぎった。
_花衣様…私と一緒に甘くて長い夜を過ごしましょ…?
「うわわ!俺はなんて事を考えてるんだ…」
服をはだけさせ、熱い吐息と校閲した目と表情をさせたティアドロップが俺の所に近づく光景を想像した俺は、己の性欲の醜悪さを呪った。
こんな態度をしてるが、俺だって年頃の男だ。そんな事に憧れや、やってみたいという気持ちはあるにはある。
どことは言わないが俺の一部が盛り上がる事だってある。
だがその1歩を踏み出したくない自分かいた。その1歩を踏むと…俺が俺で無くなるような…そんな気がするからだ。六花達の事は好きと言えば好きだ。だが、そこには愛する人を思う愛ではなく。友達…いや、家族としての愛…つまりは家族愛だ。
俺と六花はこの1ヶ月、この家と共に過ごしてきた。だからこそこの家族愛が芽生えたのかもしれない。
だが、六花達が望む愛はそれよりももっと深い愛だ。
一途に花に水をやる子供のように、はたまた咲いた花を一途に思う愛が、六花達の望む愛だとは思う。
だが俺はそれを拒んでいた。正直に言うと、俺の生活はほぼ六花達に依存している。料理も、掃除も、洗濯も、生活の全てが六花達が賄っていた。最初こそは俺も手伝うと言ったが、六花達はことごとくそれを遠慮し、あくまでも自分達だけでやると言った。
最終的に俺は手伝うと言うことは無くなり、無意識に六花に依存していた。
そんな状態の俺が、欲望まで六花達にぶつけたらどうなるのだろうか…?俺は…俺のままでいられるのだろうか。
答えは簡単。…俺は自制心まで失い、完全に依存するだろう。花の蜜を求める虫のように俺は六花達に縋ってしまう。
「…俺、このままでいいのかな…」
そんな事を考えていると、ドアのノックが部屋に響いた。俺は考えを一旦止め、ドアを開ける。ドアの先にはヘレボラスが待っていた。
「花衣さん…ご夕食の用意が出来ました。どうされますか?」
もうそんな時間か…時計を見ると、自分が思っている以上に時間が経っていた事に気づき、俺はそろそろ夕食を済ませることにする。
「分かったよ。ありがとう、わざわざ…」
「良いのですよ、では夕食にしましょう。」
階段降り、いい匂い共に近づくと共に俺とヘレボラスはリビングへと辿り着く。だが…何故か他の六花達の姿が見えなかった。
「あれ…皆は?」
「それは…ふふっ、内緒です。」
意味深な笑みを浮かべたヘレボラスは、そのまま水に流すように夕食の準備をした。
今日の献立はシチューとパスタだ。出来たてで暖かそうな湯気が立ち込め、シチューのいい匂いも食欲をそそる。へレボラスが綺麗に更に盛り付け、テーブルに2人の皿を置く。
「いただきます。」
スプーンでシチューを一杯すくい、口の中に入れる。ちょうどいい温かさとミルクのコクがあって相当美味しい…筈なのに、どうしても寂しさを感じてしまう。空席だらけのテーブルを見渡し、静まり返ったリビングを見渡す。
…こんなにリビング広かったかな。いつもいる六花達が居ないから、部屋の空間が酷く広く感じられた。そして、それに合わせるように寂しさも広がってくる。
「花衣さん?どうかなされましたか…?まさか…私の料理がお口に合いませんでしたか…?」
「あ、いやそうじゃないんだ。へレボラスの料理は美味しいよ。ただ…」
また俺はリビングを見渡し、またも寂しさに浸ってしまう。寂しいとは素直に言えず、俺はへレボラスから顔を背けた。それを見たへレボラスは俺の寂しさに気づいたのか、俺の隣へと座る。
「花衣さん、少しよろしいですか?」
「ん?どうしたの…」
すると、いきなりへレボラスが俺に腕を俺の後ろまで伸ばし、そのまま抱き寄せるように俺を引き寄せた。
顔がへレボラスの胸で埋まり、俺の視界は奪われた。
顔全体が柔らかでハリのはる弾力に包まれ、甘く誘われそうな匂いが嗅覚を支配していた。
何がなんだか分からないが、へレボラスの豊満すぎる胸が俺の呼吸を乱していた。
「むぐぅぅ!むー!」
必死に胸から離れようともがくが、へレボラスの腕はビクともしなかった。人とモンスターの差なのか、それとも攻撃力が2600もある故なのか、俺はへレボラスの胸の中で荒い呼吸を繰り返していた。
「ん…か、花衣さん…胸がくすぐったい…あっ…」
へレボラスの甘い喘ぎ声のせいで俺が悪い事をしてるみたいな事になってるが、俺はそんなに気は無い。
と言うかそろそろ息がかなり苦しくなっているから離して欲しい…離してくれと言わんばかりに俺はへレボラスの肩を叩こうとしたが…何故か俺の手にあまるような大きさで、指が沈んで行きそうな感触が感じられた。これは…まさか…
「花衣さん…貴方が望むなら…好きなようにして下さい…♡」
「〜〜〜っ!?!?」
間違いない…へレボラスの胸だ。咄嗟に俺は手を離し、一瞬へレボラスの力が抜けたスキをついて俺はへレボラスから離れる。
へレボラスが何だか寂しそうな顔をしたが、俺はそれどころでは無い。胸に包まれた顔とそれを掴んだ感触がまだ残っており、俺の思考はショート寸前で気持ちも訳が分からないまま混乱している。一体何故へレボラスはこんな事をしたんだ…
「へへへレボラス!なな何で急に抱きついた!?」
呂律が回っているのか回ってないのか、俺は早口でへレボラスの行動を追求した。
「それは…花衣さんが寂しそうな顔をしていたので…男性の方はその…胸が好きと思ってこうしました…嫌でしたか?」
嫌では…無かった。むしろ俺の中に喜び…いや、少しの悦びを感じた。柔らかで指が沈みそうな感触であるにも関わらず、ハリのある弾力を持ち合わせ、しかも超弩級サイズの物に挟まれたあの感覚は…正直とても良かった。しかし、へレボラスは心配そうに俺の事を見ていた。嫌だったらどうしようかと不安そうな目をしていた。ここで俺が黙っていたら、嫌だったとへレボラスは決めつけてしまうだろう。
俺は恥ずかしさを乗り越え、口を開けて喉をふるわせる。
「と…とても…良かったです……」
へレボラスと俺だけにしか聞こえない小さな声でそう言うと、へレボラスは顔を上げて喜んだ顔をさせた。
「良かった…!嫌だったら捨てられてしまうかと…」
へレボラスは安心したように胸に手を当てて安堵の息を漏らし、そのまま俺の肩に寄り添った。
俺はそれに受け入れるように動かず、ただへレボラスとこの静かな空気を過ごした。
「花衣さん、寂しかったら…寂しいって言ってもいいのですよ?」
それを聞いた瞬間、俺の心は飛び上がったような気がした。まるで見透してるようなへレボラスの慈愛の目はお見通しと言わんばかりだった。
「寂しいのは…辛いですよね。私も寂しさを感じた時もあったので貴方の気持ちは分かります。だから…その寂しさで空いてしまった心を埋めたいと思って…さっきの抱擁を…させていただきました。」
そう言うとへレボラスは顔を真っ赤にしてもじもじし始めた。…お前も恥ずかしいならしなければ良いのに…だが俺の為に喜びそうな事を考えたついた結果があれなら、へレボラスを責めることは出来ない。
現に俺は嬉しかった。いや抱擁の事じゃなくて、俺の為に何かしようとしたその心遣いが嬉しかった。それだけで俺は嬉しい。例え不器用でも、俺はその思いだけで寂しさなんて吹き飛ばせる。
「ありがとう…へレボラス。」
お礼と言ってはなんだが、俺は目の前にあるへレボラスの頭を撫でた。
甘える猫のようにへレボラスは嬉しそうな表情を浮かべながら更に俺の肩に寄り添った。
「あぁ…嬉しい…ですが、折角の夕食が冷めてしまいます。さ、早く食べましょう。私が…あーんしてあげますので…お口を開けてください。」
へレボラスがシチューを食べさせようとしたその時、へレボラスの背後に人影がいた。その人影は人差し指でちょんとへレボラスの背中をつつくと、へレボラスは驚きで体を跳ね上がらせた。
「ひゃあ!?」
「へレボラス〜?そろそろ交代の時間ネ〜。」
へレボラスの背後から顔を出したのはボタンだった。ボタンは先程の抱擁を見たのか、恨めしそうにへレボラスの胸を持ち上げた。
上下左右に激しく揺れる巨万な胸の存在感が凄まじく、目を逸らそうにも迫力の重力のようなもので目を逸らせずにいた。
「…相変わらず大きい…羨ましいネ〜!」
「ひゃあ…やめてください〜!私もそちらに行きますからやめてください〜!」
へレボラスの降参を聞いて気が済んだのか、ボタンはへレボラスの胸から手を離した。自分の体の一部を激しく動かされた疲労感でへレボラスは荒い呼吸を続けた。
「はぁ…はぁ…では花衣さん。またお会いしましょうね…?」
へレボラスはそのまま紫の淡い光と共に姿を消し、この場は俺とボタンだけになった。
…それにしても交代って言ってたな…何かしてるのか?ここでしてないと考えると…かなり長期的な何かをしてるのか、俺には言えない何かをしてるのだろうか…?
考えても仕方ないので、ダメ元でボタンに話を聞く事にしよう。
「なぁ、お前達は何をやっているんだ?」
「ふふ〜ん、それは内緒!楽しみにしとくといいネ!」
ボタンは何かを隠すようにしたがらも、これから起こることが楽しみなように笑った。凄く気になる事だが、聞いても答えにくれそうに無いのでこの話は終わりにした方が良いだろう。
さて…飯の続きをと行くところを、ボタンが俺のスプーンを取り上げてしまった。
「今日は私が食べさせてあげるネ!はい、あーん!」
ボタンが笑顔で俺が食べるのを待っていると、その笑顔からは逃げられないと悟った俺は、口を開けて食べる。
いつもは皆で喋りながらの食事だけど、こんな風に2人だけで食べる食事も悪くは無い。
少なくとも1人で食べるよりは…断然マシだ。
食事を終え、風呂も入り、今日は寝るだけとなった1日だが、その睡眠が俺には少し恐怖を覚えていた。
最近になり、俺は悪夢を見るようになった。現実のような痛みと苦しみが迫り来る悪夢を俺はもう見たくない。
それ故に、俺は寝ることを拒んでいた。
どうにかして夢を見ない方法は無いかと模索はしたが、そんなに都合よくは出てこなかった。
しかし、人間には抗えない睡眠欲という物がある。俺もその欲に襲われ、瞼が重くなっていく。しかも明日も学校だ、寝ない訳にはいかない。
そんな時、隣にいたボタンが俺の寝間着の袖を握った。
「花衣、大丈夫ネ。私が悪夢から守ってあげるから…」
「…ありがとう。」
ボタンに誘われながら、俺は自分のベットに横たわる。
布団を被り、眠る準備は万端、あとは重い瞼を閉じて寝るだけだが…どうしてもそれが出来ない。 しかし、瞼が重くなる一方で、俺は覚悟を決めて眠りにつこうとしたその時、ボタンが俺の背中をつついた。
「花衣…ちょっとこっち向いて…」
ボタンに言われるがまま俺はボタンの方に体を向かせると、ボタンが優しく腕を俺の背中まで回し、俺を抱いた。
「どう…?へレボラスみたいに大きくは無いけど、私もあるにはある方だと思うネ。」
小ぶりだが柔らかい感触に包まれながら、ドクンと規則正しいボタンの心臓の鼓動音がまるで子守唄のように聞こえた。ボタンは俺の背中を優しく叩き、俺を安眠に誘った。
「んん…ボタン…俺…」
「大丈夫ネ…絶対私達が悪夢から守ってあげるから…だから安心して眠ってネ…」
そろそろ意識が遠くなってきた…だが、安心する。
もし悪夢を見ても多分大丈夫…きっと…夢の中で六花達が助けてくれるのだから…
俺は瞼を閉じ、ボタンの心臓の鼓動を感じながら眠った。
「うん…大丈夫ネ…今度は絶対に離さない。行かせない…ずっと一緒に…傍にいるネ…」
ここまで(〜90話)出てきたレゾンカードの中で強いと思うのは?
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六花聖華ティアドロップ、カイリ
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閃刀騎-カイムと閃刀騎-ラグナロク
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銀河心眼の光子竜
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RRRリノベイルイグニッションファルコン
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炎転生遺物-不知火の太刀
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常闇の颶風