六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
特に言うことは無い。無いです。強いて言えば、メルフィーが可愛すぎてデッキを組んでしまった事でしょうか。
あの子達イラストの割に効果がエグい。
「…あれ…ここはどこだ?」
目を開けると、そこには黒い霧のようなものが宙に漂っており、なんだが嫌な雰囲気だった。
微かに香る潮の匂い、石畳の道に木が生い茂る森…そして何かの施設…いや、正面から見えるの扉からして…学校か?
そして何故か俺の視線が高くなっており、俺は体を自由に動かせずにいた。唯一動かせる目だけを頼りに周りを見ると、正面に黒い霧のようなもので姿が見えない人影が2人いた。一人は立ち方して男であり、一人は…背中に羽のようなものが生えている気がした。
…ダメだ、これ以上は人物像が分からない。
「…ん?あれは…」
男であろう影をよく見ると、男の左腕にはデュエルディスクが装着されていた。つまり、この男はデュエルをしてると言う事になる。
「そして相手は…俺?」
どうしていきなりデュエルしてるのか訳が分からず、とてつもない焦りが俺に襲いかかる。
そんな俺を無視するように、俺の体が勝手に動き出した。手札が目に移り、手が勝手に1枚のカードを手に取る。
見えた手札が黒塗りで認識が出来なかったが、立花や閃刀姫では無い事が確かであり、カードから禍々しい気が感じられた。
「……は■□▪▫を…動。」
聞こえてくる言葉が、まるで断線間際で使い物にならないイヤホンのように所々にノイズが走り、どんなカードを出したのか分からなかった。
「お……⿴⿻⿸を召…!」
_衣…?。
今度は男の方がモンスターを召喚したようだが、やはり黒いモヤがかかってよく見えない。分かるのはそのモンスターがとてつもなく巨大な事だけだ。それにこの胸のざわめき…俺はこのデュエルを知っているような気がする。
そして知っている。俺は…このデュエルに負ける。
「やめろ…」
そしてこのデュエルに負けた者は消滅する。負けると確信した俺は全身の細胞が震えだし、俺は死への恐怖に直面した。
_花…君!
「⿴⿻⿸■□の攻撃!」
巨大な影から5色の光が灯り、その光が混ざり、白い光へと変わると、俺のモンスターを破壊した。
「やめろォぉぉぉぉ!!!」
_花衣君っ!!
「…!…六花…?」
「…うわぁぁぁ!?…はぁはぁ…夢…?」
悪夢から逃げるように目が覚めた俺は、激しく呼吸を行う。本当に安全かと目を挙動不審に動かし、ようやくここが自分の部屋だと認識する。
手が何かに掴まれてる感覚を感じた俺は、自分の手を見る。そこには別の手が優しく両手で俺の手を握ってくれていた。握っている手の先には俺を心配そうに見つめている。六花精ボタンが俺のベットで共に寝転がっていた。
そういえば…昨日はボタンと一緒に寝たんだった…
「花衣!凄くうなされていたネ…大丈夫?」
この声…そうか、夢で最後に聞いた声はボタンの声だったのか…おかげで悪夢から目を覚ますことが出来た俺はボタンの手から離れ、体を起こす。
まだあの夢の恐怖が残っており、寒くないのにも関わらず、俺の指先から全身まで震えていた。
その震えを見たボタンは後ろから優しく俺を抱きしめ、震えを止めようとした。
「花衣…?」
背中からボタンの人肌の温もりが伝わるが、それでも震えが止まらない。
死を誘う死神が俺の頬を撫でているかのような冷たさと恐怖が全身を凍りつかせる。ボタンが俺の名前を呼び続けている様だが、今の俺にはその声は聞こえなかった。
あぁ…一体なんなんだ…最近決まって悪夢を見る…俺を誘うような悪夢の次には今度はさっきみたいな襲いかかる悪夢…起きただけでも1日の体力を使った疲労感がのしかかり、今日一日は何もしたくない。だがそう言う訳にも行かない。今日は平日、普通に学校がある日だ。
怖い夢を見たから休みますなんて言える訳が無いので、俺はベットから離れ、自室のドアノブを触れようとしたが、足に力が入らず、そのまま俺は座り込んでしまう。
「花衣!?もう今日は学校休んだらどうネ…」
「……あぁ、そうする。」
疲労や恐怖が入り交じり、ボタンの言葉に甘えに甘え、今日は学校を休んだ。
弱いな…俺。
「はい…そう言う事で学校を休みます。…すみません。」
適当に体調不良等言っておけば大抵は何とかなる。親が海外にいるので親の確認は困難であり、嘘がバレることは無い。ズル休みをした罪悪感を感じるが、今日一日は本当に何もしたくない。
リビングのソファーに倒れ込み、このまま二度寝しようかと思ったが、また悪夢を見てしまうと思うと、その気も失せた。
深いため息を吐き、今日はどのように過ごすか考えてる中、立花達が俺を上から覗くように見ていた。
「花衣様…お身体の調子はどうでしょうか?」
「旦那様、何か食べたい物はありませんか?私が全身全霊をかけてお作り致しますよ?」
「あぁ…ありがとう。でもまだいいよ。」
正直に言って食欲も無く、朝から何も食べたくは無かった。どうしても今日見た悪夢がちらつき、俺はそれを見えないように腕で目を隠す。…本当になんなんだあれは。
埒が明かない考えを止めるように、いきなり携帯の着信音が鳴り響いた。携帯を取り出し、誰が電話したのかを確認すると、画面には炎山焔と言う名前が表示されていた。
今の時間は学校の1時限目が始まる5分前だ。心配で電話してきたのだろうか。携帯を操作し、携帯を耳に当てて、炎山との通話を開始する。
「はい、もしもし。」
『おう、もしもし?なんかお前休みって聞いたから大丈夫かと思ってな。』
「あぁ…ごめん。まぁ大したこと無いから…」
まぁ体に異常は無いが…精神的に相当参ってはいた。
そのせいで体が重く、気分も悪くなる。まるで、呪いみたいに俺の体に枷をつけてるような感じだ。
『あぁそうだ。レイとロゼも学校休んでるだけど。知らないか?』
「え?アイツらも来てないのか?…まさか」
俺の家と、レイとロゼの家は隣同士だ。基本的に通学時間になると、レイ達がいつも俺を待っていたかのように外で待っていた。
いやもしかしたら本当に待っていたのかも知れないが、それは定かではない。
まさかとは思い、俺は急いで玄関の扉まで歩くき、扉を開ける。やはりというか、外にはレイとロゼが制服姿で待っていたかのように俺の家の前にいた。
「あ…花衣さん!中々出てこないから心配で…どこが具合が悪いんですか!?」
「なんだか顔色が悪い。…何かあった?」
レイとロゼが俺の顔色を見る為に思い切り自分たちの顔を近づけさせた。レイとロゼの目だけが俺の目に映り込んだ。
複数の女性に凝視されていると思うと、恥ずかしさのせいか顔が熱くなり、思わず目を背ける。
「花衣さん、なんだか顔が赤いですけど…まさか風邪ですか!?だったら直ぐに看病しないと!ささ、自分のお部屋に!」
いやここ俺の家だぞ?なんでお前たちの家のように俺を家に押し込めようとしてるんだ。
レイたちは俺を強引に家に押し込み、そのまま看病すると言い出したが、勿論それは六花達が良しとはしなかった。
「ご心配なく、花衣様は私達が看病致しますので、貴方達の出る幕はありません。」
その言葉にカチンと来たのか、レイは家の玄関を靴を脱いで上がると、ティアドロップに突っかかってきた。
「そんな事ないです!カイムさんだった頃、私の献身的な介護をカイムさんは喜んでくれましたよ!」
「…ほとんど失敗して私がフォローしたけど。」
「そ、それは言わないで…」
何となく想像出来た光景で思わず小さく笑ってしまう。
最早俺の記憶には無いが、何故か懐かしい感じがする。
…やっぱり本当に俺は昔…カイムやカイリだった頃があったのだと感じる事が出来た。
…そういえば、悪夢を見た時期は、レイとのデュエルで俺が"六花精華カイリ"の力を使った日の翌日だ。
何か関係があるのだろうか。例えば…俺に力を渡してくれたあの男が言った【使命】と言うのにも関係あるのかもしれない。
「…なぁ、レイとロゼは学校休むのか?」
「勿論です。正直言って、貴方がいない所はどこでも嫌です。」
「私も同じ。貴方のいない場所は…価値は無い。」
そこまで言うか…まぁ、だったら話は早い。
「ティアドロップ、レイ…いや、六花と閃刀姫に聞きたい事がある。」
改まった態度に六花と閃刀姫達に緊張感が走っているかのような顔つきになった。
俺は知らなければ…いや、思い出さなければならないのかもしれない。自分が何者かと言う事に。
「俺に教えてくれないか。カイムやカイリだった頃の俺を…」
「……」
突然の静寂に俺は威圧感を感じていた。六花と閃刀姫達の目が哀しくも見えたのは決して気のせいでは無いだろう。それだけは言いたくないと言う思いが口では出さなくとも、目でひしひしと伝わってくる。
「ごめんなさい花衣様…その事だけは絶対に話したくはないのです。」
「私も…したくはありません。」
やはりというか…六花達もロゼも同じような思いの目をしていた。きっと、話をした何かの弾みで何かを思い出すと、俺がまた皆を置いてどこかに行くと思っているはずだ。だから話さずにいるのかもしれない。
「…分かった。ごめん、嫌な事話させようとして。」
無理に話させようとしても、恐らく皆は話してくれないだろう。
ここは一旦話を無かった事にすると、皆は安心そうに息を漏らしていた。
だが、今日は皆で仲良く家に過ごそうと言える雰囲気では無くなり、俺は逃げるように部屋へと戻った。
思い足取りで階段を登り、妙に重いドアノブを押して扉を開ける。
部屋に入るとすぐ様ベットに横たわった。
「…どうしようかな。」
まだ昼もなっていない朝から何をしようかと言う意味でもあるが、それよりも六花と閃刀姫達との関わりについてだ。自分自身で爆弾を投げつけたように、何だか六花と閃刀姫達の関係が遠ざかったようにも思えた俺は、どんな顔で会うべきか困っていた。
今思えば最悪な言葉であった。カイムとカイリは、言わば六花達と閃刀姫達から何も言わずにそのまま去っていったトラウマ的な存在な筈なのに、それを教えてくれと言われたらああなる。
参った…本当にどんな顔で会えば良いんだ?こういう時は眠って時間を経たせて時間が解決するのに任せるのが良いが、眠気なんて無い。
どうする事も出来ない状況を嘆くように、俺は何度もため息を吐き続ける。
そんな時、コンコンとドアを叩いた音がした。
「花衣さん。あの…ここを開けてくれませんか?ロゼちゃんも心配でここいにいますよ。」
「花衣、開けて。」
どうやら扉の前にはレイとロゼがいるらしい。だが、六花達が良く許してくれたな…てっきり帰ったとばかり思い込んでしまったが…
いや、そんな事は良い。扉を開けようとしたが、先程の事もあってか、扉を開け、閃刀姫達と会うのを拒んでいた。…がしかし、それでも閃刀姫達は止まらない。
「花衣さん。早くしないと学校の屋上見たいに扉を吹き飛ばして無理やり開けますよ?」
「ちょ…!それは止めろ!分かった!分かったから!」
流石に俺の扉までそうされたら部屋の物も巻き添えで吹き飛んでしまうので、俺は慌てて扉を開ける。扉を開け、閃刀姫達に会おうとすると、その先ににこやかな笑顔のレイがたっており、その後ろからロゼも顔を出した。
「あ、やっと出てきてくれましたね。ちょっとお邪魔しますよ〜」
「え?あ、ちょっと…」
レイとロゼは強引に俺の部屋に入ると、まじまじと俺の部屋を眺めたりした。レイに至っては何かを探すように部屋の中を隅々まで見ていた。
「え〜と…レイ、何か探してるのか?」
「ん?あ、ちょっとアレが無いかのチェックを…」
遂にはベットの下まで捜索を開始したレイだが、目当ての物が無くてガッカリ…いや、むしろ喜んでいた。
何だか妙な反応に俺は気になり、レイが何を探しているのか聞いて見たが、それより先にレイがその答えを言ってくれた。
「よし!エッチな本はありませんでしたね!」
「あるかそんなもの!!」
呆れた…まさかレイが探してるのがそんな本だと知った俺は、そのまま机の椅子に倒れ込むように座る。
と言うかそんなものあったら真っ先に六花達からの怒りを受けるか、俺にそんな気があると誤解を受けて…あられもない行為をするのかも知れない。
とにかく、俺の部屋にそんな本は無い!
「…ところでロゼは何してるんだ?」
部屋中エロ本が無いか探し回ったレイとは逆に、ロゼは俺のベットの上に上がって布団にくるまったまま動かずにいた。
「すぅ…はぁ…今貴方の匂いを感じてるの。」
「いや本人がいる前でそんな事しないでくれ。」
「それって…貴方に抱きつけって事かしら…?」
「違うわ!」
「そう…残念…」
目に見えてガッカリした態度をとったロゼはそのままベットに寝転がって布団を深くくるまった。
そしてそのまま匂いを全て吸い込むかのようにロゼは俺の布団をスハスハと嗅ぎ続けた。
「…これ、他の女の臭いがする…誰?」
俺以外の匂いに気づいたロゼはそのまま俺に追求する為、目には止まらぬ速さで俺の前に立ち塞がった。
「花衣…どうして貴方の部屋なのに他の女の匂いがあるのかしら?どうして?どうしてどうしてどうして?」
「ちょ…落ち着けって…!」
ロゼがどんどん俺の体に密着しはじめ、遂に俺の腰の上にロゼの下半身が乗っている状態にまで来てしまった。
ロゼの顔が目と鼻の先にまで接近していた。
「あー!ロゼちゃんずるい!私も花衣さんの膝の上に乗りたい〜!」
レイも飛びつくように俺の右膝に乗ると、ロゼは譲るように俺の左膝を占領した。2人の女性のそれぞれの体重が両膝にかかる中、そんな重さが感じられる余裕が無いほどに、2人の顔が近づいてくる。
「えへへ〜花衣さんを二り占め〜」
「…貴方の匂いがこんなにも…」
1人は俺の胸に抱きつき、1人は首筋辺りから匂いを嗅ぐようにしていた。最早逃れることなど出来ず、俺はなすがままにされていた。
首から感じるの擽ったさと体から感じるの柔らかな感覚が俺を支配するようにも感じられた。
と言うか、これ六花達に見られたらとんでもない事になる…!どうにかしてどいてもらわなければ…
「あ、あの〜閃刀姫さん達?ちょっとどいてくれないかな…?」
「い や で す〜!」
「ねぇ…まだ話は終わってない…」
やはりというかなんと言うか、レイとロゼは更に抱く力を強めた。と言うか想像以上にこの体制はキツい、足が痺れ始め、どことは言わないが大きくなり始めてしまう。
不味い、これは大変不味い。言うなればライフは100で手札と場が0だも言う状況だ。
…いや待て、それなら詰みじゃん。終わってるじゃん。
「もう花衣さんは逃げられないんですよ?もう花衣さんは私達の物です。」
「そうですか。それは一体誰の許可を得てそう言っているのですかね…?」
冷たい氷のように突き刺さる冷ややかな視線が俺とレイ達に突き刺さる。視線の正体は勿論お分かりのティアドロップの視線だ。
まるでゴミを見るような冷たい目は部屋中の温度を氷点下にまで下がるかのように感じられた。
「花衣様、そこをどいて下さい。その泥棒猫達をまとめてリリースさせますので。」
「そうですかぁ〜奇遇ですね…丁度貴方達を殲滅しようと思った所なんですよ…」
腹が痛い…何か胃に穴が空いたように痛い…修羅場に巻き込まれた俺は自分の身の危険を感じ、どうにかしてティアドロップ達を止めようと考えを張り巡らした。
と言うか、お前ら俺のデッキにあるんだから少しは仲良くしてくれ…!
「おいおい!お前らは同じデッキに入ってるんだから少しは仲良く…」
「それはいくら花衣様のお願いでも聞けない事です。」
「そうですよ。今日1日花衣さんを渡してくれるのなら話は別ですが。」
「な…!」
「ふふ…貴方、花衣さんに隠してる事…あるんですよね?だったら1日ぐらい私達に花衣さんを渡しても良いですよね?」
レイの言いぶりだと、立花達が何をやっているのか分かっているようだ。もしもここでレイ達の条件を呑まなければ、俺にその事を話そうとしている雰囲気だ。
ティアドロップもその事に気づき、強気には出なくなった。
「うぅ…分かりました…ですが、いかがわしい事はダメです!絶対に!」
「もしも花衣さんから求めたとしても?」
「そ…それは…花衣様はそんな事しませんよね?貴方の初めては私ですよね?」
「え?あ…いや…えーと…」
いやそんな事言われても答えに困るのだが…ここで肯定してもレイ達から何されるか分からないし…ここで否定したらティアドロップに何されるか…正に前門の虎後門の狼である。
「…分かりました。今日一日だけは貴方達に花衣様を預けます。ですが!もし変な事したら…分かっていますよね…?」
俺の反応を見たティアドロップは諦めてレイ達を預けると言い出した。いくらやる事を見透かされてるからと言って、そこまで引き下がるティアドロップとは思えない。
それほどの弱みだと言う事なのだろうか?
「交渉成立ですね!じゃあ花衣さん!私の部屋に行きましょう!」
「レッツゴー…」
レイとロゼの2人になすがままに連行される俺は、そのまま部屋から出ようとしていた。それを見たティアドロップはどこか悲しそうな顔をしながら俺を引き留めようと腕を伸ばそうとしたが、先程の取引をしたせいか強気には出られずにいた。
「…夜には戻るから。」
「…!はい!お待ちしております!」
安心で少し涙を浮かべ、目頭を赤くしたティアドロップは俺の帰りを待つことにした。
俺の家から外に出てすぐ横の家のドアを突き破らんとする勢いでレイは自分達の家の扉を開けた。
扉の先は至って普通の家の内装だ。特に変わったところは無い。
「さぁさぁ、どうぞ上がってください!」
上がってください!と言ってるが、もはや強引に俺の靴を脱がしてる辺り、強制的に上がらせている。俺に拒否権等無く、そのまま2人に腕を抱かれながらリビングへと向かう。
リビングにも特に変わったところは無い。強いていえばキッチンの形がカウンター式だという事と、何か謎の機械が置いてある事だ。
機械の大きさ形は市販の電子レンジのような形をしており、今は機能していないようだ。
「あ、それがこの前学校で言ってたヤツですよ。ほら、食材を投入すると、勝手に料理が出てくると言うアレです。」
つまりこれはレイたちの世界の機械ということか…明らかにこの世界の技術では作れないような雰囲気を醸し出している。
こんな風な機械を見ていると、男のさがというものなのか使いたいと言う気持ちがふつふつと高まっていく。
「…使いたい?」
「え!?あ、まぁ使いたいなぁって…ほら、もうすぐ昼だし。腹も減ったし…」
年甲斐も無く未知のテクノロジーが詰まった機械を見ていたら思わず童心に戻ってしまい、気恥しさで頬をかいてしまう。
「ふふ、相変わらず機械には目が無いのね。でも、その機械は使わないわ。何故なら私が貴方の為に料理を振る舞うのだから。」
ロゼは小さくガッツポーズをすると、自分の軍帽を外し、ツインテールの髪を解いてポニーテールの髪型に変えた。その後、俺が通う学校の制服姿の上にエプロンを着け、準備万端と言ってるように俺を見た。
「そうか、そう言えばロゼは料理をするんだったな…」
この前の学校の昼休みに、俺は1度ロゼの手料理を食べた事がある。ティアドロップの料理と負けず劣らずの美味しさであり、かなり料理の腕を積んでいたものでもあった。
あれがもう一度食べられるとなると、少し楽しみになって来た。
「あ!ロゼちゃんだけじゃありませんよ!私も花衣さんの為にとびっきり美味しい料理を作りますから!」
レイも負けじと髪をゆってポニーテールにすると、ピンクで可愛らしいエプロンを着けると、最高の料理を作ると胸を張って豪語した。
「心配…」
「ちょっとロゼちゃん!?」
普段のレイを見ているかるか、ロゼはレイが料理に加わる事を酷く心配していた。俺はレイの私生活を見ている訳では無いのでよく分からないが…いやちょっと待て。
レイは確か以前俺の学校の屋上のドアを破壊して屋上への道を強引に開けた事がある。
度々レイの大雑把さを見た俺にも、ロゼの心配を察することが出来た。
「ま、まぁ…頑張ってくれ…」
「勿論…貴方はテレビとか見ていて。机の上にテレビのリモコンがあるから。」
そう言われて机を見ると、リモコンらしき物が確かにあった。しかし、何でもかんでもやってもらうのは何だか申し訳ない。
「俺も手伝おうか…?」
「心配しないで、強引に上がらせたけど貴方はお客さんだからゆっくりしていって。」
やはりというかなんと言うか、ロゼは俺の手伝いを気持ちだけ受け取るようにした。まぁ、俺がいても足でまといにしかならないか…諦めたように俺はテレビのリモコンを手に取り、テレビの電源を付ける。
しかし、見るにしても今は平日の昼、やっているとしたら、芸能人のバラエティー番組ぐらいしかないだろう。
テレビに画面がつくと、やはり芸能人のバラエティー番組が最初に映し出された。
『いやそれにしても【デュエルディスク】だっけ?あれほんま凄いよな〜!?カードからそのイラストのモンスターが出てくるんだから!』
『これにのっとって、今は世界中遊戯王ブームですからね〜!プロデュエリストって職業も出てるって話ですよ!』
遊戯王に興味を示さなかった芸能人が、いきなり遊戯王の事について語り出していた。やはり、全てが変わっていた。
今までどこか信じないと言った気持ちが、粉々に打ち砕かれたような衝撃を受け、俺は無心でテレビを見ていた。
『さて、それではここでそのデュエルディスクが試験運用される場の一つ、【ブルーアイズ・タイタニック号】で行われる【ロマンス・タッグデュエル】の主催者である、【咲初薫子】さんにお話を伺って見ました!』
「…ん?咲初…?」
咲初と言うと、俺の知っている間では咲初花音がそれに該当した。そう言えば、俺は咲初の誘いでその【ロマンス・タッグデュエル】に参加する事になっている。
…ちょっと待て、今それがテレビに出ていて咲初と同じ苗字の人が出てくると言うことは…!
俺は無心から解き放たれるように、テレビの画面に注目した。
テレビの映像が番組のスタジオから外に変わり、テレビキャスターの背景には青白く輝く美しい船があった。
あれが【ブルーアイズ・タイタニック号】だろうか。
『はい!それでは薫子さん!お話をお伺いします!今回このタッグデュエルを設けた理由は何でしょうか?』
テレビキャスターが一人の女性にマイクを向けると、恐らく【咲初薫子】であろう女性は慣れた態度で話を受けた。
『はい、今回のタッグデュエルは我が会社の技術をアピールする事が主な目的です。』
『技術と言うと、【ソリッドビジョン】の事でしょうか?』
「…!」
ソリッドビジョン…遊戯王ではおなじみの設定だ。
デュエルディスクに搭載されているソリッドビジョンによってモンスターの立体映像が現れ、デュエルに更なる臨場感が生まれた。
アークファイブでは、そのソリッドビジョンが質量を持ち、モンスターに乗ったりした【アクションデュエル】が可能にした。…まぁ、あのアクションデュエルは俺はあまり好きでは無いのだが。
『そうです。ソリッドビジョンは本来、ARデバイス等で用いている予定でしたが、これを応用・試験的という事で、遊戯王と言うカードゲームにソリッドビジョンを加えました。』
『なるほど!今世界は空前の遊戯王ブーム!試験にはうってつけですね!』
確かに今この世界はほとんどの人が遊戯王をしている状態だ。自分達の技術をアピールするにはうってつけだろう。
『そして、この【ロマンス・タッグデュエル】は地上波で生放送を予定しております故…是非お楽しみ下さい。』
「…は?」
ちょっと待て…なんて言った?地上波?つまりテレビだと言うことか?俺がテレビに映るって事か?聞いてないんですけど。
『では、ここからは私の娘であり【ロマンス・タッグデュエル】の参加者である、【咲初花音】に話をさせましょう。花音、こっちに来て。』
咲初花音という名前聞いた俺は、ついに確信を得た。あの咲初薫子という人は、咲初花音の母親という事に…
『は、はい!お母様!え、え…と咲初花音と言います!よ、よろしくお願い致します!』
ドレスを着た咲初の緊張している姿がテレビに移り、いよいよ咲初の身分が知ってしまった。
俺…この後咲初とどんな顔で会えばいいんだ?
見た感じ咲初はかなりの金持ちの人…振る舞い方を考えないといけないなぁ…
すると突然テレビの電源が切れ、俺の視界は真っ暗になった。目から感じる人肌の感触からして恐らくレイかロゼの手なのだろう。
「花衣、昼食が出来た…早く食べましょう?」
右耳からロゼの囁き声が聴こえた。どうやら俺の目を塞いでいるのはロゼだ。
「今は私達の物…他の女なんて見ないで…私を見て?」
自分がいると主張するように、ロゼは何度も耳に囁いてきた。声が耳を通り、体全体を撫でられている感覚に襲われた俺は、体をビクビクと震えさせる。
「…耳、弱いのね…」
「そんな事…んっ!?」
間髪入れずにロゼはひたすら俺の耳に囁きかけた。
視界が塞がれてるせいか、感覚が敏感になってしまい、ロゼの冷たくも暖かい吐息が耳から身体中を駆け巡り、俺の体は俺の意思とは反するように震えさせる。
これではいけないとロゼから離れようとするが、ロゼが俺の体をしっかり固定するように後ろから抱いている為、動けずにいた。
「逃げないで…もっと私で満たすのだから…」
「これ…レイにバレるから…!」
「大丈夫よ…今レイは全神経を使って料理に集中してるからバレないわ。」
ロゼが耳の外側を甘噛みした後、ついに舌で耳を舐めようとしてきた。目は勿論ロゼに塞がれて見えないのだが、舌を出すような音と、ロゼの吐息が近づくことからして間違いないだろう。迫り来るであろう感覚に身構えたが、いつまで経っても次の感覚がやって来ることは無かった。それどころか、ロゼの手が目から離れ、俺は視界を取り戻した。
何が起こったのか分からず、俺はロゼの方に顔を向けた。
「もっとしたいけど…ご飯が冷めちゃう。続きは後で…ね?」
ロゼは妖しく小さな笑顔を浮かべながら、人差し指を口に当て、秘密にしてと言わんばかりにキッチンに戻った。
興奮と緊張が合わさった心臓の鼓動が耳を済まさなくても聞こえる程大きく、息苦しくなるほどだった。
鼓動を落ち着かせるように服の胸部分を掴むと心無しか少しだけ落ち着けたような気がする。
「花衣さーん!ご飯出来ましたよ〜」
レイの声が後ろから大きく聞こえ、いよいよ料理が完成したらしい。…とにかく飯を食べよう。
リビングのソファーから立ちあがり、テーブルに移動すると、既に料理が並べてあった。
主食のライスに野菜を沢山煮込んたコンソメスープに、メインのハンバーグが二つ…どれも美味しそうだ。
「おお、凄いなこれ…」
「どうぞ召し上がれ。」
「じゃあお言葉に甘えて…」
最初にどれを手につけようかと考えた結果、俺はまずはハンバーグから手に着けた。2つあるハンバーグの1つを箸で1口サイズに切る。
箸で切った所から肉汁が溢れ出す所から、相当の肉汁が閉じ込められていることが分かる。箸から伝わるズッシリとした重さを感じながら1口ハンバーグをほおりこむ。
噛んだ瞬間に甘い肉汁が口の中に広がり、肉の旨味も同時に襲いかかる。そして、ハンバーグにかけてあるデミグラスソースもそれに相まってかなりの旨味が広がる。飲み込むのが勿体ないと感じてしまうほどだが、充分に噛んだ後、俺はハンバーグを飲み込む。
「…どう…かしら?貴方の為にソースにもこだわって自作したけど…」
レイ以外の人に食べさせる事が少ないからなのか、珍しくロゼが自信なさげな顔を浮かべていた。
と言うかこのソースもロゼが作った物なのか、通りで普通のデミグラスソースとは少し違った味がするわけだ。
「めっちゃ美味しい…!」
何だその小学生並の感想はと自分でも思うのだが、この言葉しか出ないほどに衝撃的に美味しいのだ。
続いてコンソメスープも飲んでみると、野菜の旨味がしっかりとスープに染み込んでおり、ライスも丁度いい硬さと、ほのかな甘みがあってこれも美味い。
食事をする箸が止まらず、俺はどんどん料理を食べ尽くしてしまう。
「良かった…上手く出来て良かったわ…」
「やっぱり凄いなぁ…ロゼちゃんは…それに比べて私は…」
弱々しい声のレイが気になり、俺はレイの皿を見る。パッと見は特に変わっ所が無いように見えるが、レイのハンバーグが少し黒ずんでいた。つまり、他と比べてかなりの焦げがあるのだ。
レイが作ったものだろうか、レイは俺を見ているのに気づくと、隠すような俺から皿を遠ざけた。
「これ、私が作ったものなんですけど…上手くいかなくて…あはは…」
「…レイ、それ俺にくれないか?」
「え?だ…ダメですよ!こんなの他の人に食べさせられるものじゃ…」
「いいから。俺はレイが作ったものが食べたいな?」
ちょっとずるい言い方だっただろうか、レイは少し顔を赤くして驚いていた。レイはしぶしぶハンバーグを1口サイズに切り、焦げの苦味を誤魔化すようにハンバーグにデミグラスソースをたっぷり刷り込んでから箸でハンバーグをつまんだ。
「はい、口を開けてください。」
やはりそう来たか…流石に六花達でこのシチュエーションは慣れたので、俺はそのまま口を開けてレイが作ったハンバーグを食べる。
やはりデミグラスソースでは焦げを誤魔化す事など出来なかったのか、かなりの苦味がある。焼きすぎのせいかかなりの食感が固い。こう言っては悪いが、ロゼの方が大分美味い。
「…やっぱり美味しくないですよね…」
いや違う。美味しいか美味しくないと言えば断然美味しい。俺はレイが作ったハンバーグを飲み込み、レイを元気つかせるように笑顔を浮かべさせる。
「いや、美味しいよ。お世辞とかそんなんじゃなくて本当に。」
「美味しい訳ないです…だって私も食べて美味しくないと思っていますもん…」
「…他人の為に作ってくれた料理が美味しくない訳ないだろ。」
レイがハッとしたような表情でこちらを見ると、何故か顔を背けてしまった。…余計なお世話だったのだろうか。
「大丈夫よ。レイは嬉しくて顔を赤くしてニヤけてるから。」
「ロゼちゃんっ!!」
ロゼにポカポカと弱い攻撃をし続けるレイは可愛らしいほかなかった。あまりのほのぼのしさに思わず笑ってしまうところだ。
俺にとって【閃刀姫】のイメージは殲滅第一みたいなイメージを持っていた。だが、そのイメージは段々と崩れ去って言った。やはり年頃の女の子なんだなと思う一面も多々あり、今だってそうだ。
レイは俺の笑みに気づいたのか更に恥ずかしそうに顔を赤くした。
「〜!もう!花衣さんはずるいです!そんな事言われたらもっと好きになっちゃうじゃ無いですか!」
「えぇ!?俺は事実を言っただけなんだけどな…」
ゲームだと『レイの好感度が上がった!』見たいな感じにレイの俺への好意が上がったらしい…。
甘える猫のように右腕に擦り寄ってきたレイを振りほどく事など出来ず、俺の利き手は右手なので飯を食べられずにいた。
「レイ?ちょっとご飯が食べられないんだけど…」
「だったら私がさっきみたいに食べさせてあげます!はい、あ〜ん!」
俺のハンバーグを1口サイズ箸で切ると、そのまま俺に食べさせようとしていた。それを見たロゼが嫉妬したのか、目を細めていた。
「…ほとんど私が作った料理なのに…花衣、私の方が上手く食べさせてあげることができる。だから私に口を開けて。」
「い…いや1人で食べれrムグッっ!?」
2方向からのハンバーグの挟撃に逃げる所は無かった。同時にハンバーグを無理やり口に突っ込まれた俺は為す術なくハンバーグを噛んで飲み込む。
「だから一人d…ムギュっ!!??」
俺が口を開けた瞬間に、今度はレイが米を、ロゼがスープを俺の口に突っ込んだ。米をスープで流し込むように食べ終えた俺はまた口に突っ込まれ無いように今度は固く口を閉じた。
「花衣さん!口を開けてください!」
「早く開けて…」
2人のお願いを俺は口では答えず、全力の首の横振りでその願いを拒んだ。
いやこれ以上無理やり口に突っ込んだら何か戻してしまいそうな気がする…!
「だったら…こうするまでです!」
レイは急に自分のハンバーグを1口サイズより少し縦長に切ると、そのまま半分咥えて俺に半分を差し出すように口を出した。
「どうひょ!」
恐らく、「どうぞ!」と言っているのだろう。
要するにレイは口移しで食べさせようとしているが、流石にそれはまずい。俺は手で口を塞ぎながら首を横に振った。
するとどうだろう、レイは無理やり俺の手を振りほどきハンバーグを口に押し込まんとする。レイの顔が近づき、もはやこれまでかと言うところにロゼがレイの肩を掴んでいた。
「…それはあまりにも卑怯よ。レイ…」
「はむはむ…ふん!ロゼちゃんだってさっき花衣さんとイチャイチャしてたくせに!」
恐らくロゼが俺の耳に息をふきかけていた時の事だろう。あれはイチャイチャでは無く、ただ俺がロゼになすがままにされていたと言った方が正しいが…背中越しで見ていたレイにはそういう風に見えたのだろう。
「だいたい貴方は乱暴すぎる。もっと花衣を労わって。」
「そういうロゼちゃんこそ目が怖いよ!もっと笑って花衣さんの気をほのぼのにさせないと!」
レイとロゼの口喧嘩が勃発した中、俺はこの隙にとレイとロゼが作った昼飯を全て平らげる。料理を全部食べきったとなれば、レイとロゼだって無理やり食べさせる事はないだろう。
最後のハンバーグの一切れを食べ、水で流し込むように食べると。腹の満腹が身にしみた後、律儀に手を合わせた。
「ふぅ…ご馳走様!じゃあ俺はトイレに行ってくる…」
逃げるようにトイレに向かおうとすると、後ろから何かワッパーのようなもので体を拘束されてしまう。
俺はそのまま引きずり込まれるように後ろに連れていかれ、そのまま尻もちをついてしまう。
「どこに行くんですか…?まさか逃げようだなんて思ってませんよね…?」
レイの目のハイライトが消えてるように見えた俺は、顔から出る冷や汗を止められずにいた。
どうやらこのワッパー…いや、魔法カードである【閃刀機構ウィンドアンカー】だろう。カードイラストと全く同じな為にすぐ気がついた。
隣にいたロゼも同じような目をしており、逃がさないと言ってるような感じだった。
「…これはお仕置が必要なようね。」
「そ…それだけはご勘弁を…!」
レイとロゼはこう見えても軍人的な立ち位置にいるやつだ。拷問やらなんやらはお手の物だろう。
ただの人間である俺にモンスターの拷問なんて耐えられるわけが無い。どうにかして許してもらわなければ…
だがしかし今のレイ達に何と言おうとも許してはくれなかった。ウィンドアンカーで手足を拘束されている俺は逃げることはおろか、体を動けずにいた。万事休す、もはやここまでだ…
「じゃあ早速…お仕置です♡」
レイは俺に馬乗りすると、その両手を俺の脇腹に添え始めた。
「ふふふ…悪い人にはこうです!」
「え?ちょ…あっはっはっ!やめ…それは!」
レイが俺の脇腹をくすぐり初め、耐えきれずに笑ってしまう。レイのくすぐりは止まることを知らないように動き続け、俺を過呼吸にまで追い込む。
「も…もうひゃめ…あっはっは!息続かない〜!」
「まだまだ序の口…今度は足にも追加。」
今度はロゼが俺の靴下とロゼの手袋を脱ぎ始め、そのまま足裏をくすぐり始める。両足から伝わる電流のような感覚が更に俺をおいつめていた。
「そ…それ無理ィィ!」
「ふふ…カイムは昔からここが弱いんだから…」
レイとロゼのくすぐり攻撃は止まらず、時間の流れを忘れて俺はこのくすぐり地獄を受けた…最後には俺は力尽きるように意識を失ってしまった…
…ーー…
「…はっ!?」
地獄が終わったのか、俺は急激に意識を取り戻した。目を覚ますとそこには知らない天井が最初に目に映っていた。そして体の後ろに何か柔らかい羽毛のようなものが感じられた。これは…布団だろうか?上に毛布も被せられているのでレイ達が布団まで運んだのだろうか。
ここは何処か当たりを見渡すと、目と鼻の先にレイが隣で寝息を立てて寝ていた。
大声で叫ぶとレイが起きてしまうかもしれないので何とかして心の中で絶叫しながら声を押し殺した。
「落ち着け落ち着け…取り敢えず体を反対に向けてと…」
例とは反対方向に体を向けると、今度はロゼが目と鼻の先にいた。目を瞑り、すやすやと寝息を立てていた。
「〜〜〜!?」
無言でレイ達を起こさないように体を起こしながら、ここは何処か確認する。昼間にいたリビングとは違う内装をしており、一人部屋の広さだった。恐らく、レイがロゼの部屋だろう。
「…これ、勝手に帰ったらダメだよな。」
外を見るともう夜になっており、そろそろ帰らないと六花達が心配して何をするか分からないが、何も言わずに帰ってしまうのは行けない。
何故ならそれはカイムの事を思い出してしまうかもしれないのだから…
取り敢えずレイ達が起きるまで部屋からは出ない事にしたが、如何せん暇だ…どっちの部屋かは分からないし、この部屋の主には悪いが少し部屋の中を探索させてもらう。
レイとロゼを起こさないようにゆっくりと静かに布団から離れ、辺りを見渡す。部屋の電気は完全には消しておらず、少しだけ明るく設定されていた。
暗闇に目が慣れたのか、段々と内装の詳細が分かってきた。
まず目に映ったのは壁に飾られた写真だった。壁に穴があかないように、コルクボードを飾り、その上で写真がはられていた。
これは…レイの昔の写真だろうか?いや違う。レイでは無く、一人の男の写真だった。
「これは…俺と同じ顔…"閃刀騎-カイム"か?」
レイとのデュエルで1度見たカイムの姿を見て驚愕したのが、俺と同じ顔だった事だ。こうして写真でまじまじと見ると、本当に同じ顔であり、俺の前世である事は間違いないだろう。
飾られた写真の内容のほとんどが男の日常を撮っていた物だった。
武器を手入れする姿、食事をしている姿、仲間…だろうか?色んな人と笑顔でカメラ目線で笑っている姿や、レイが勝手に撮ったのか、カイムが寝ている隣でレイがカメラ目線の写真もあった。
「…どんな人だったんだろう…気になるなぁ…」
自分の前世を知れるかもしれない好奇心が俺を駆り立て、どうにかしてカイムの人物像が分からないか当たりを探す。机に何か無いかと探すと、一冊の本が見つけた。
「これは…日記か?」
しかし部屋が暗くて文字が読めない…携帯のライトで何とか出来ないかと考えたが、生憎携帯は自分の家に置いてきてしまった。
これでは読めないと諦め、俺はそのまま布団の傍まで戻って行く。
「…なんで勝手に何処かに行ったんだろうな…」
写真を見る限りだと悪い人では無さそうだが、どうしてレイ達を悲しませるような事をしたのだろうか?
何か理由があるのは確かだが、それを思いつく事は出来ずにいた。
「…行かないで…」
突然レイから声が聞こえ、俺が起きたのがバレたのかと心臓を跳ね上がらせる。だが、いつまで経ってもそれからの反応は無く、俺はそっとレイの顔を見た。
「カイムさん…行かないで…」
レイの瞳に涙がこぼれ落ち、俺の腕を掴んで離さなかった。俺が…いや、カイムが何処かに言ってしまった日を思い出しているのだろうか。
その姿は、俺が前に見たティアドロップの姿と同じだった。自分達を置いて何処かに行ってしまった悲しみの夢にうなされ、涙を流している姿が特に…。
「…ティアドロップ、そこにいるか?」
「…バレていましたか。」
「帰りが遅くなったから、きっと様子を見てるかもって思っただけだよ。」
ティアドロップが後ろからゆっくりと姿を現し、俺の傍まで近寄った。ティアドロップは俺の言いたい事が分かっているかのような顔をしていた。
「ティアドロップ、今日はレイ達と…その…」
「分かっています。今日一日はあの子達に譲る取引ですから…」
「…え?良いのか?」
カイムとのトラウマがある以上、俺は黙ってレイ達から離れる訳には行かなかった。しかし、レイとロゼが目を覚ます気配は無く、このまま夜を越すことになりそうだった。
つまり、今日俺はこの部屋で今日を終えなければならない。だが、それが六花達が許してはくれないだろうと考えた俺は、意外にもあっさり引き下がったティアドロップの反応に少し驚いてしまう。
「大切な方が自身に何も言わずに何処かに行ってしまった悲しみは私にも分かりますから…」
胸の痛みを沈めるように、ティアドロップは自分の胸に手を添えた。そうだ、ティアドロップ達…六花も閃刀姫達と同じ苦しみを…
「ですが、明日は絶対帰ってきて下さい。明日はあの【ロマンス・タッグデュエル】の日…渡したい物もあるので絶対ですよ。」
「渡したい物?それって…何かな?」
「ふふ…秘密です。それではお休みなさいませ…」
ティアドロップはそのまま氷の結晶と共に消え、俺の前から姿を消した。
その後俺は、布団の上へと戻り、レイとロゼの間に空いたスペースに寝転がった。
「レイ…ロゼ、今の俺は絶対に何処かに行かない。」
そう決意をした俺は深い眠りにつく。そして、悪夢を見ない事を願いながら、深く…深く意識を溶かす。
ここまで(〜90話)出てきたレゾンカードの中で強いと思うのは?
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六花聖華ティアドロップ、カイリ
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閃刀騎-カイムと閃刀騎-ラグナロク
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銀河心眼の光子竜
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RRRリノベイルイグニッションファルコン
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炎転生遺物-不知火の太刀
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常闇の颶風