六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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想いの強さ

「…ん…っん…?」

 

今日は悪夢を見なかった。少し安心して目を開けると、そこには知ってる天井があった。

何度も見覚えがある天井…俺の部屋の天井だった。

たしか俺はレイ達の家で寝ていた筈なのに…何故俺の部屋に俺がいるのだろうか?夢だったのかと、布団の上で充電していた携帯を見つけ、日付を確認すると、今日は土曜日…確か昨日は休んでしまったが、学校があった日…金曜日だった筈だ。訳が分からず、俺は首を傾げてしまう。

 

「あ、起きたんだね!」

 

元気な声で眠い意識が目覚めると、何も無いところからストレナエが急に抱きついてきた。急な事で俺は反応出来ず、俺はストレナエに押し倒されてしまい、またベットの上に倒れてしまう。

 

「えへへ〜おはよう!花衣君!」

 

「あ、あぁ…おはよう、ストレナエ。…なぁ、確か俺は閃刀姫達の家にいたはずだけど…」

 

「それがね、閃刀姫達が夜中にこっそりこの家に花衣君をこの部屋に運んだんだよ。今日は大事な日だからって。」

 

そうか…今日はあの【ロマンス・タッグデュエル】の開催日だ。恐らくそこに行く準備の為に閃刀姫達が俺を帰らせてくれたのだろう。

…ちょっと待て、俺の家に勝手に入ってきたのかアイツら。不法侵入じゃねえか。まぁ…この際気にしないでおこう…

 

「それとね!今日は渡したい物があるんだ〜!早く来てきて!」

 

「渡したい物…?」

 

そう言えば…ティアドロップも昨日、渡したい物があると言っていたな…。最近六花達が何かしていた事と関係あるのだろうか?

兎に角、俺は体を起こしてストレナエに着いていく。

階段を降り、リビングへと繋ぐドアを開けると、そこには六花達が俺を待っていたかのように出迎えてくれた。

 

「あ、おはよう!花衣君〜!」

 

「おはようございます。旦那様。」

 

スノードロップとカンザシに挨拶を返した後、六花達は何かを楽しみにしているように小さく笑っていた。

そわそわしてるような気持ちも感じられ、俺は何か何かと急かしていた。

するとティアドロップが何か畳まれている物を持ちながら俺に近づいてきた。

 

「おはようございます、花衣様。今日はあの【ロマンス・タッグデュエル】の日ですね。」

 

「そうだな…それに結構な偉い人達が来るから緊張するなぁ…俺スーツとか持ってないし…」

 

【ロマンス・タッグデュエル】の開催場所は豪華客船である【ブルーアイズ・タイタニック号】と言う所で行われる。調べてみた所、船の中は最早1つの町と言っていいほど設備が充実しており、1泊で何百万もすると言う超高級客船だ。そんな所にこんな庶民の俺が行くとなると緊張しない訳が無い。今すぐにでも辞退したい所だ。

 

「それなんですが…実は私達から贈り物があるのです。…どうぞ受け取ってください。」

 

ティアドロップはそう言うと、持っていた物を俺に渡した。俺はそれを手に取ると、何か布みたいな物だとわかった。これは…服か?

 

「広げていい…?」

 

「どうぞ。」

 

俺は渡された服を広げると、それは黒いスーツとズボンだった。一目見ただけなのに美しさに俺は目を奪われてしまった。所々に少し暗い青色の花の刺繍が縫われていた。これは…六花達の花だ。

プリムのプリムラ、シクランのシクラメン、ボタン、エリカ、スノードロップ、ヘレボラスの花が綺麗に縫われていた。

 

「いや〜大変だったね!」

 

「ですが、花衣さんの為にと考えると…手が自然と動きましたから、苦では無かったですね。」

 

スノードロップとヘレボラスが作業の大変さと楽しさについて語り、俺はこのスーツにどれだけの思いが込められているのか改めて認識される。

 

「花衣君!私には…これ!」

 

ストレナエがある物を手に取ると、そこにはプリムラとシクラメンの花々で作られたブレスレットがあった。

 

「えへへ、本当は私のモチーフのストレニア…リースにしたかったんだけど、それじゃあ花衣君が邪魔そうにするかなって思って、ブレスレットにしたの!」

 

俺はストレナエのブレスレットを手に取る。ブレスレットは金属装飾でこれまた美しく輝いていた。しかも自作した筈なのにこれといった歪みが全くない。まさに職人のような出来栄えだった。

 

「旦那様、私にはこれを…」

 

今度はカンザシが、自分のモチーフであるローダンセ、またの名をヒロハノハナカンザシの花飾りを俺に渡した。

 

「髪飾りとはいきませんでしたからね…ですが、旦那様の魅力を上げるためにこれをお作り致ました。」

 

大きすぎず、慎ましさが感じ取れるこの花飾りは、正しくカンザシの性格の表れが出ていた。

花飾りの肌触りが良く、何とも安心する気分になる…

 

「花衣様、最後に私とひとひらからこれを…」

 

ティアドロップの手のひらにひとひらが現れ、ひとひらとティアドロップは笑顔で俺に1つの指輪を差し出した。

指輪は銀色では無く、氷のような美しい水色をしていた。一目見れば氷の指輪と勘違いしてしまいそうだが、実際には普通の指輪と変わらない、金属製の指輪だ。

指輪は水色だけでは無く、ティアドロップブーケを思わせるような花々が見事に装飾されている。

 

「どれも凄いな…まさか、最近姿を消したのは…この為?」

 

最近、六花達の姿が見えなかったのはこれを作る為だと考えた俺は、六花達にそれを言うと、その通りだと言うように皆は頷いた。わざわざ俺の為にこんな凄いものを作るなんて…

 

「…ありがとう。」

 

思わず嬉しさで涙が零れそうだった。というより、誰かにこんな風に何かを贈られるなんて無かった。

親の誕生日プレゼントも、配達で贈られたが、親が直接プレゼントしてくれた事なんて無かった。

誰かに物をプレゼントされる事がこんなに嬉しい物なんて思わなかった。

 

「花衣様…涙を流してどうされましたか?…まさかお気に召しませんでしたか!?」

 

ティアドロップに言われて、俺は初めて無意識に涙を流していた事に気づく。

六花達は俺が気に入らなかったから涙を流したと勘違いしてるようであった為、そんな事は無いと否定する。

 

「違う…っ、違うんだ。誰かにこんな風にプレゼントされるのは生まれて初めてだから。嬉しくて…!」

 

嬉しさが込み上げ、涙が溢れてしまった。嬉し涙なんて初めて流したからどうすれば良いか分からずそのまま泣き崩れてしまう。だが、これ以上心配をかける訳にも行かない。俺は無理やり笑顔を作り六花達を安心させる。

 

「皆…本当にありがとうっ!」

 

「ふふ、貴方の為ですから…」

 

ティアドロップが俺の涙を吹き、慈愛に満ちた笑顔を俺に向けた。涙のせいかどうかわからないがその笑顔がとても美しく見えた。

ティアドロップだけじゃない、他の六花達全員も同じように美しく輝いた笑顔を俺に渡してくれた。それを見ただけで俺は満たされる程の幸せをくれた。

 

『〜♪。』

 

突然ポケットにある携帯から着信音が鳴り、も涙をふいて携帯を確認する。画面には【咲初花音】という文字が表示され、電話待機画面になっていた。

六花達と顔を見合せ、目配りで電話に出てもいいかと問うと、六花達は首を縦に振ってくれた。

許可を得た俺は、携帯を操作して電話を開始した。

 

「もしもし?」

 

『あ、もしもし、花衣さんですか?今日は【ロマンス・タッグデュエル】の日なので、こちらからお迎えしようと思っているのですが…』

 

「迎えにって…家の場所分かるのですか?」

 

咲初はかなりの金持ちの令嬢だと昨日のテレビで知った俺は、思わず敬語で喋ってしまった。一瞬謎の間が会ったが、咲初はすぐに話を戻した。

 

『あ…そこは焔さんが教えてくれましたので大丈夫です…』

 

なるほど、あいつと機羽は俺の家に来たことがある為、家の場所を知っていても当然か。

迎えの件なら勿論歓迎だ。客船がある場所が分かっていても、道が分からなかった為困っていた所なのだから。

 

「じゃあお願いします。」

 

『はい…準備をして待っててください…』

 

そう言って咲初は連絡を切った。何処か悲しそうな声をしていたが、とにかく咲初が来る前に準備でもしよう。

スーツは六花達ので整い、デッキもOK。あとは心構えだけだ。

 

「ふぅ…緊張するな…」

 

「大丈夫です、リラックスして下さい。」

 

ティアドロップは強ばった俺の肩を解すように肩を揉み始めた。なかなかの手つきで強ばりがほぐれそうだ。

 

「花衣様…よろしければ…私が渡した指輪を…今ここではめて下さいませんか?」

 

「え?良いけど…」

 

しかしどの指にはめるかだな…そうだ、確か左手の小指に指輪をはめると、『チャンスを呼ぶ』と言った意味があったはずだ。デュエルで勝利を掴むために、ここは左手小指にはめよう。

指輪を取り出し、左手の小指にはめようとしたが、ティアドロップが突然俺の手を掴み、無理やり左薬指に指輪をはめようとした。

 

「ティアドロップ?何してんるんだ。ちょ…力強いから離してくれないかな?」

 

「花衣様こそ…指輪は左薬指にはめるべきです。さ、早くはめてください。」

 

「いやお前が手を離さないとはめれないんだけど!?」

 

こいつ無理やり指輪を俺の左薬指にはめる気だ…!

やはり力の差があるのかどんどん俺は押し負けてしまう。だが、ヘレボラスとスノードロップがティアドロップの手を掴み、俺との押し合いは中断された。

 

「ティアドロップさん…?よくもまぁぬけぬけとそんな行いが出来ますね…?」

 

「流石の私でも怒るよ〜?ティアドロップちゃん。」

 

「私は花衣様の伴侶なんですから当然ですよ。早くこの手を離しなさい。」

 

「「「むぅ…」」」

 

ティアドロップとヘレボラス、そしてスノードロップの視線の間に火花が散り、今のうちに俺は指輪を左小指にはめた。そのまま今から始まる闘いから避けるようにそそくさとティアドロップ達から離れる。

 

「ねぇねぇ花衣君。私のブレスレットも付けてみて!」

 

「お、おう…」

 

今度はストレナエから貰ったブレスレットを取り出した。そうだな…俺は右利きで、これから使うであろうデュエルディスクを左腕で装着するので、ここは右腕につけるとしよう。

ブレスレットを右手首にはめると、ピッタリと俺の手首にハマってくれた。

 

「お、丁度いい…」

 

「えへへ〜伊達に花衣君を見てないよ!」

 

ストレナエは堂々と胸を張り、ドヤ顔で俺に話してきた。あまりの子供らしさに思わず笑ってしまった。

 

「あ〜馬鹿にしてる〜!」

 

どうやら俺がからかっていると誤解したストレナエはそのまま俺の胸に飛びついてポカポカと弱く胸を叩き始めた。

ダメージは無く、じゃれあっていると言った方が正しかった。

 

「あはは、ごめんごめん。」

 

俺はストレナエの頭を宥めるようにそっと撫でると、ストレナエは甘い声を出しながら許してくれた。

…なんかすっごい悪い男の行動してるような気がする…

それを見たプリムとシクランが羨ましそうにストレナエを見ていた。

 

「あ〜!ずるいずるい!私達もそれ作るの頑張ったのに!私も褒めてよ〜!」

 

プリムが俺の右側に抱きつき、撫でてと言わんばかりに頭を差し出してきた。俺はプリムの頭を撫でると、嬉しそうな声でプリムは俺の腕に擦り寄ってきた。

残るはシクランだけだが…何処か遠慮してるような感じだった。

 

「あ…うぅ…私も!」

 

ついにシクランが我慢できずに、俺の左側に飛びつき、俺は左手でシクランの頭を撫でる。

プリムとシクランが嬉しそうに声を出すが、俺の腕は当然2本しか無い。当然撫でられる人は二人なので1人はお預け状態を食らう事になる。

右手でプリム、左手でシクランを撫でてるので、余るのは真ん中にいるストレナエだ。

 

「花衣君〜!もっとなでなでしてよ〜!」

 

お預け状態になったストレナエはグイグイと顔を近づかせ、もっと頭を撫でてと言ってきた。

俺は右手でストレナエを撫でたが、今度はプリムがお預け状態になってしまう。

 

「ねぇねぇ〜!足りないよ〜!」

 

「はいはい。」

 

今度は右手でプリムを左手でストレナエの頭を撫でる。しかしそれだとシクランがお預けを食らうってしまうのが現実である。

 

「ねぇねぇ、もっと撫でてよ〜」

 

「だぁぁ腕が足りないっ!」

 

腕がもう一本欲しいと願っても現実はそうはいかないので、俺は腕を早く動かし、ストレナエ達が満足するまで撫で続ける。

 

「はいはい、そこまでですよ。旦那様が困っていますよ。」

 

カンザシはストレナエを、ボタンがプリム、エリカがシクランを抱えると、俺の撫では中断された。まだまだ物足りないのか、ストレナエじたばたしていた。

 

「や〜だ〜!あともうちょと撫でられたいのー!」

 

「ダメです。旦那様もこの後があるのですから。」

 

カンザシがそう言うと、突然家のインターホンがなり始めた。インターホンの画面に映し出されていたのは、咲初の姿だった。どうやら、もう迎えに来たらしいので急いで荷物をまとめ、準備を急ぐ。

 

「よし、じゃあ皆、カードに戻って。」

 

俺がそう言うと、皆は素直に姿を消してカードに戻った。これにて準備万端。いよいよ、【ロマンス・タッグデュエル】の幕開けとなる。

だが、あと1つやっておくことがある。

 

「…レイ、ロゼ、お前達も頼りにしてるからな。」

 

俺は何も無い所に振り返ると、そこにゆっくりとレイとロゼが姿を現した。

 

「気づいていたんですか…?」

 

「何となくだけど。」

 

誰かに見られてるような気がしたから、もしかしたらと思ってダメもとで呼んでみたが、俺の予想は当たっていた。ずっと六花達に気づかれないように俺の事を見ていたのだろう。

 

「花衣さん、私…貴方の為に頑張ります!」

 

「私も、貴方の為に戦うわ。」

 

「うん。頼りにしてる。」

 

そう言うとレイとロゼは姿を消した。恐らくカードに戻ったのだろう。

ここでやる事は全て終わったので、リビングから出て、家の扉を開ける。

扉を開けると、咲初とその後ろに高級そうなリムジンが待ち構えていた。

 

…え?リムジン?こんな住宅街でリムジン?初めて見るし、なんか違和感しか無いんだけど…

 

「お待ちしていました!花衣さん!ささ、どうぞ車の中へ!」

 

「は…はい…」

 

圧倒的な圧みたいな物に押しつぶされた俺は、咲初の言う通りにリムジンの中へと入る。

中に入ると、そのには車内の広さとは思えない程の広さの空間が広がっており、テレビや小型の冷蔵庫まであった。

いや部屋かよ。とんでもねぇなリムジン。俺ここにいていいのか?

なれない車内で緊張感が限界を超えた俺は落ち着かなくてそわそわしてしまう。

 

「それじゃあ行きましょうか。運転手さん、お願いします。」

 

「かしこまりました。」

 

スーツを着た執事さんが、運転席まで移動し、ついにリムジンが動き出した。

 

「飲み物…いりますか?」

 

「あ、大丈夫です!」

 

こんな緊張感の中飲み物なんて飲めるはずも無く、俺は咲初の好意を断った。

咲初がどういう家の人かは分からないが、兎に角物凄い金持ちの娘だと分かった今、今までのようには接しずらく、俺と咲初の間に沈黙が走り続けていた。

なんでか冷や汗が止まらず、やはり何か話した方が良いかと悩んだ。

だが、一体何を話せばいい?わからん…思い浮かばなかった。

 

「…花衣さん、少しよろしいですか?」

 

悲しそうな声で俺の名前を呼ぶと、咲初は声と同じような悲しい顔でこちらを見ていた。

 

「私達…友達…ですか?」

 

「え?」

 

それは…多分そうだろう。出会いはたまたまカードショップで会って、デュエルをして、一緒にどんなデッキを作るか悩んだりしたりした。

レイとのあのデュエルだって、俺の事を追いかけ、俺の事を守ってくれたりもした。

こうして見ると、友達…とは言うが、それ以上の関係とも言えるだろう。

 

「まぁ、友達ですね。」

 

「だったら…敬語はやめてください…いつも通り、タメ口で接してください!」

 

咲初がグイッと俺に顔を近づかせ、俺の目だけを真剣に見ていた。

 

「私も敬語の話し方で説得力はないと思いますけど…お友達がそんな風に腫れ物に触るような感じがする喋り方は悲しいです…」

 

「咲初…」

 

「私だって、普通の女の子のように学校帰りに遊んだりしたいんですよ?友達と一緒に遊んで、ふざけたりしたりするのが…憧れなんです。」

 

「……」

 

俺黙って咲初の話を聞いた。咲初の立場を知った人間は自分に訪れるであろう災難を嫌ったせいか、腫れ物に触るような態度をとったという。まるで、今の俺のように…。

だから咲初は身分を隠すように、親から離れて一人暮らしを初め、普通の女の子のように振舞ったらしい。

だが、今回の件で咲初は【ロマンス・タッグデュエル】に参加することになってしまい、どうしてもお嬢様に戻ることを余儀なくされたらしい。

 

「だから、貴方には是非来てもらいたかったんです。貴方がいると…なんだか落ち着くんです。」

 

自分が何を言っているのか分かっているのか、咲初は少し顔を赤くして俺に顔を背けた。

そんな反応すると俺まで恥ずかしいんだが…

 

「だから花衣さん、敬語はやめてくれませんか…?」

 

神に願うかのように両手を握り、俺にそう言ってきた。

…ま、今思えば俺は精霊と話したり一緒に住んでいるんだ。今更お嬢様と友達…しかもタメ口なんて今更なことだろう。それに…咲初も悲しんでいるし、答えは一つだ。

 

「…分かったよ。ごめんな。」

 

「…!はい!ありがとうございます!」

 

咲初は満面の笑顔を浮かべて礼を言った。そのせいか緊張感と肩の疲れが無くなり、少し気持ちが楽になった。

 

「それと、もう1つ良いですか?」

 

「ん?」

 

咲初がまたもう1つお願いと言うと、俺は素直にそれを承諾した。一体何だろうか…

 

「苗字じゃなくて…名前で読んでくれませんか?」

 

「えぇ!?いや…それはちょっと…」

 

今まで俺は他人の事を名前で読んでいる。それを急に名前で呼ぶとなると、俺の中の違和感が拒んでいた。

 

「…ダメですか?」

 

うぐっ…その今にも泣きそうな顔を見せると、俺の中の心のライフポイントがガリガリと削られていく…

ずるいぞそれは…

 

「…分かったよ。花音…これでいい?」

 

「…!もう1回!もう1回お願いします!」

 

「…花音。」

 

「もう1回!」

 

「うぅ…勘弁してくれぇ…」

 

今まで苗字で読んだ人の名前を呼ぶことがこんなにも恥ずかしいものだとは思わなかった。咲初は嬉しいのか、俺にもう1回、あと1回と言いながら俺に名前を呼ばせていた。

 

そうこうしている内にリムジンの窓から見える景色が変わり、港へと到着する。港で1番目立っている船を見つけると、あれが【ブルーアイズ・タイタニック号】なのかと認識する。間近で見ると青白く輝いており、まさに豪華客船と言った迫力を持っていた。

 

「花衣さん、今回のデュエル大会はかなりの偉い人が来るので、それなりの服装が必要ですが…よろしければこちらから準備しますね。」

 

「いや、大丈夫だ。六花達がスーツを作ってくれたからこれで行こうと思う。」

 

俺は自慢げに六花達が作ってくれたスーツを見せると、咲初は驚くようにスーツをまじまじと見た。

 

「わぁ…すごい!所々にお花の刺繍がありますね!まさに花の衣…花衣さんにお似合いですね!」

 

(…ん?何だろうこの感じ…)

 

笑っているはずなのに、何処か花音には悲しげな思いが感じ取れた俺は、何かあったのか花音に伝えようとしたが、咲初は逃げるように無理やり話の腰を折った。

「さぁさぁ、それでは早速着替えましょう!到着したらすぐに案内の人が来ますので、その人について行ってください!」

 

完全に速度を止めたリムジンの扉が急に開き、花音は急かすように俺を外に出させた。

リムジンからでると、案内の人だろうか、スーツ姿の女性が姿勢正しく待っていた。

 

「いらっしゃませ。桜雪花衣様ですね?早速ですが、お着替えをしていただきますので、どうぞこちらに。」

 

案内人の人が俺を部屋まで送り届けるように案内するが、どうしても俺は花音の様子が気になってしまう。

花音にもう一度話をしようとするが、その本人に無理やり先を進んでと言われてしまう。

 

「お話ならまた後で聞きますから!さぁ、早くしないとお時間になっちゃいますよ!」

 

「わ…分かった。じゃあ、また後でな。」

 

何かを隠してるのが丸わかりの反応だが、それが何かはこの先教えることは無いだろう。俺は諦めて、案内人について行く。

 

 

 

「…よろしいのですか?花音様…」

 

「はい、だって…あっちの方が想いが大きいのですから…」

 

私は花衣さんの為に用意したスーツを悔し交じりで握ってしまう。

スーツだけじゃない、花衣さんの左薬指にはめていた指輪や、右手手首にあったブレスレットと花飾り…全部六花さん達が作ってくれたのでしょう。

私よりも大きくて深い思いを込めて…

 

「ちょっとだけ…悔しいですね…」

 

私の中で、少し醜い気持ちがシミのようにこびりついたのを感じた。

ダメだなぁ…私って…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、これで良いかな?」

 

服のサイズも俺の体にフィットするように丁度よく、窮屈さは一切感じられない。

ストレナエ達が作ったブレスレットもちゃんと右手首に付け、ボタン達が作った花飾りはスーツの胸ポケット辺りで飾る。

最後に、ティアドロップとひとひらが作ってくれた氷のような指輪も左小指にはめ、最後にデッキを持ったのを確認すると、準備は完了した。

後は大会の会場に足を踏み入れるだけだ。

 

「花衣様、準備の方はよろしいでしょうか?」

 

「あ、はい!大丈夫です!」

 

俺は控え室の扉を開けて、案内人に準備は整ったと伝えると、早速会場に…つまり【ブルーアイズ・タイタニック号】に案内した。

世界で五本の指に入る豪華客船にまさか足を踏み入れるとは恐れ多いが、俺は招待された身だ…大丈夫。大丈夫な筈だ…

 

外に出て、【ブルーアイズ・タイタニック号】の外観が目の前でそびえ立つように見えた俺は生唾を飲み、心臓の鼓動を無意識に早めさせた。

庶民の俺がこんな所に来てもいいのだろうかと、今更ながらの考えでいっぱいになった俺を、後から来た花音が優しくフォローしてくれた。

 

「大丈夫ですよ花衣さん。さ、行きましょう。」

 

花音が白く美しいドレスを身にまといながら、俺をエスコートするように俺を案内した。

ここは花音の言う通りにした方が良いと考えた俺は、咲初について行く。地上と船を繋げる橋を渡り、俺はいよいよ【ブルーアイズ・タイタニック号】へと足を踏み入れる。

 

そこには、最早町と言わんばかりの広さと商業施設があり、ここで一生暮らせるような感じだった。

 

「な…なんじゃこりやぁぁぁ!?」

 

あまりの凄さに俺は空いた口が塞がらず、そのまま呆然としてしまう。

 

「まぁ…そんな反応しますよね。ここには商業施設は勿論、色んな施設がありますよ。屋外にはプールやリゾート温泉等もありますし、無いものを探す方が難しいぐらいですね。」

 

「凄いな…最早海に浮かぶ町じゃないか…」

 

「ふふ、その表現はあながち間違いでは無いですね。さ、会場はこの船の2階奥のダンスパーティー場です。ご案内致しますね。」

 

何度もこの船を乗っているのか、咲初は行きなれた足つきでこの船を案内した。

階段を上がり、一際大きな扉の前に着くと、咲初はその扉を開ける。

そのには広いパーティー会場があり、様々人。恐らく参加者だろう人が優雅に振舞っていた。

 

「えーと…あ、焔さん達がいましたよ!」

 

「ん?お、花衣か!ようやく来たか!」

 

スーツを来た炎山が自分の場所を教えるように大きく手を振っており、俺たちはその場まで移動する。

そこには炎山だけでは無く、機羽や白井そして河原もいた。

やはり皆スーツやドレスを着ており、新鮮さが増していた。

 

「お前のスーツ、なんか凄いな…オーダーメイドか?」

 

「まあ…そんなものかな。」

 

遊戯王の六花達が作ったとは言えず、俺はそうだと告げる。まぁ、オーダーメイドみたいな物ものだし、あながち間違ってはいないだろう。

 

「それにしても炎山、スーツ似合ってないな。」

 

「あ〜それは俺も思う…袴とか和風の正装なら気慣れてるからな…こっちのやつは性にあわねぇや。」

 

炎山が苦笑いしながら、今すぐにでもこのスーツを脱ぎたいのか、スーツのボタンを一部外し、着崩した。

 

「こんな時ぐらい我慢しなさい。私だって、こんなの着て落ち着かないもの…」

 

白井も炎山と同じような思いなのか、白いドレスを見て少し不快感な顔をしていた。

似合っているとは思うが、本人にとってはそうでは無いのか…

 

「ふふ、我にかかれば下界の服などこのように着こなして見せる…」

 

相変わらずの河原の態度だが、確かに来ている黒ドレスを上手く着こなしていた。そして何を思っているのか、左目に薔薇の飾り花をつけており、左目が見えない状態であった。

 

「お前な…こんな時にそれはやめたらどうだ。」

 

「だってデュエルディスクだよ!?モンスターが出るんだよ!?凄くない!?」

 

「まぁ、確かにそうだな…」

 

六花と閃刀姫達と暮らしている俺はさほどそんなに衝撃は無いが、確かによくよく考えてみれば、凄いことだ。今まで使っていたモンスターが自分の目の前で出てくるのだから、それは驚く事だろう。

俺も最初…ティアドロップが出てきた時は本当に驚いた。もう2ヶ月くらい前か…なんだか懐かしい気分になるな。

 

そうこう話している内に、パーティー会場の電気が暗くなり、前方のステージにライトが浴びる。

参加者は静まり返り、ステージの方へと注目すると、ステージ端から女性が足音を立てながら登場した。

あの人は…テレビ出できた花音のお母さんか…?

 

「皆様、今日はこの【ロマンス・タッグデュエル】にご参加いただきありがとうございます。私は、この大会の主催者兼進行を務める【咲初薫子】でございます。」

 

花音のお母さんが深く礼をすると、参加者達は一斉に拍手をした。拍手が会場内を多いつくし、花音のお母さんが礼をやめ、顔を上げると、その拍手は静まった。

 

「さて、皆さんはご存知でしょうが、この大会においてはデュエルディスクと言うものを使用させていただきます。デュエルディスクとは、カードに描かれたモンスターがそのまま貴方の目の前に現れ、より臨場感があるデュエルをすることが出来る、画期的な代物です。」

 

デュエルディスク…レイとのあのデュエル…俺が初めての大会での決勝戦で俺は1度使ったことがある。

あの時のデュエルは、精霊側の世界だった為か、モンスターに触れる事も、ダメージがそのまま痛みに変わることになっていた。

あの時を思い出したせいか、体の節々が少し痛み出してきた。

 

「…言葉で説明するより、実際に見てもらった方がよろしいでしょう。」

 

すると、薫子さんの後ろがライトアップされ、何やら長方形の物体がその姿を現した。

あの形状…ZEXAL型のデュエルディスクか?

 

「これが我社の技術提供によって作られた…デュエルディスクでございます。ここにふたつありますので、今からこの中から2名ほど選びオープニングデュエルをさせたいと考えています。」

 

その時、会場内がざわめいた。もしかしたら自分が世界で初めてデュエルディスクを使える者かもしれないという事実が彼ら…デュエリストの心が震えだしていた。

まぁ…この世界の人間で1番最初にデュエルディスクを使ったのは俺なんだが…。

花音もその事実を見た1人でもあるので、思わず苦笑いをしていた。

 

「では、オープニングデュエルに参加することが出来る幸運の持ち主は誰か…カードによって決めましょう!」

 

薫子さんは2枚のカードを取り出すと、それぞれのデュエルデュエルを起動しカードを置いた。

やはりディスクは遊戯王ZEXALで出てきたデュエルディスクであったが、Dゲイザーらしきものは無かった。

カードをディスクにセットした直後に、無数の名前が表示されていた。

よく見ると俺や炎山の名前がある事から、あれ全てが参加者の名前だろう。

名前の1つが色を変え、そのまま目まぐるしく色は移動して行く。

やがて色の移動が止まると、その色の下にある名前が大きく映し出された。

その2人の名前は…【桜雪花衣】と【咲初花音】と表示されていた。

 

「まぁ…カードが選んだのはこの2人です!」

 

俺と咲初の頭上にライトが光だし、俺と咲初はそのまま参加者の注目の的にされる。

 

「さぁ、お二人はステージに上がってください。」

 

薫子さんからの催促により、俺と咲初は一緒にステージへと上がる。ステージに近づく度に緊張感が増し、手から汗が止まらずにでてきた。

震える手で片方のデュエルディスクを左腕に装着し、デュエルの立ち位置まで移動する。

 

「ディスクを装着したら、デッキを差し込み口にセットして下さい。」

 

言われるがまま差し込む口にデッキを差し込むと、ディスクが変形し、メインモンスターゾーンを置く場所とエクストラモンスターゾーンが置く場所が出てきた。

側面にカードの差し込み口がある為、ここは恐らく魔法・罠カードゾーンだろう。デッキがきめ細かくシャッフルされ、時間が経つとシャッフルを終えた。どうやらデッキを差し込むと"オートシャッフル"機能が作動するのだろう。

 

「準備が完了しましたら、ディスクのパッド部分を操作し、デュエルモードに移行してください。両者の準備が完了次第、デュエルは開始されます!」

 

ディスクのパッド部分を見ると、【DUELmodeON】と言う英単語が表示されていた。どうやらこれをタッチする事で、ようやくデュエルが開始されるらしい。

 

「…あの時の事を思い出しますね。」

 

「ん?」

 

向こうにいる咲初が突然喋りだし、何かを思い出すように目を閉じながら俺に話しかけてきた。

 

「覚えていますか?私と貴方が初めて会った時のあのデュエル…」

 

俺と咲初が初めて会った時…あぁ、そう言えば俺はあの時、大会に向けてのデッキを調整に苦しんだその時に、花音と出会ったんだ。そこで調整したデッキの小手調べにと咲初とデュエルしたんだっけ。

 

「結果は私の惨敗…あなたにライフを削ることすらできませんでした。」

 

咲初は悔しそうに小さく頬を膨らませ、その事を話した。ま、あれは俺も申し訳無かったと思う…

今となってはいい思い出だ。

 

「ですが、今度はそうは行きませんからね!貴方とはタッグですが、今は敵です!よろしくお願いします!」

 

「…あぁ!望むところだ。」

 

ディスクのパッド部分をタッチし、デュエルモードを起動させる。するとステージにプログラム言語なのか、空中で無数の言語が表示されると、何かを終えたようにその言語は消えていった。

別段、特に変わった所は無い様に見えるが…

 

「さて、先行はどちらでしょうか?」

 

「リベンジマッチだからな、花音に譲るよ。」

 

本来ならコインとかで決めるが、花音にとってこれはリベンジマッチでもある。ここは花音に先行を譲るのが通りだろう。

 

「ふふ〜ん!行きますよ!花衣さん!」

 

「行くよ!花音!」

 

お互いにデッキからカードを5枚引き、参加者が歓声の渦を作り出す。

 

『さぁ、始まりました!世界で初めてのデュエルディスクを用いたデュエルはが今ここに開始されます!』

 

実況口調のアナウンサーだろうか?カメラ目線で俺達のことを実況していた。そう言えば…この大会はテレビで報道されるのだったな。

だが、今の俺には関係なかった。今の俺は、花音とデュエルする事にとても楽しさを感じていた。

あれからどんな風に変わったのか、俺のデッキが通用するのか、ワクワクしていた。

 

「「デュエル!」」

 

今ここに、次世代を開くデュエルが開始されようとしていた。

ここまで(〜90話)出てきたレゾンカードの中で強いと思うのは?

  • 六花聖華ティアドロップ、カイリ
  • 閃刀騎-カイムと閃刀騎-ラグナロク
  • 銀河心眼の光子竜
  • RRRリノベイルイグニッションファルコン
  • 炎転生遺物-不知火の太刀
  • 常闇の颶風
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