六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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どうもお待たせしました。
かなりの投稿ペースが落ちてますが、途中で辞めることは無いのでご愛読の方、お願いします。


献身的な愛

目の前には白く美しいウエディングドレスのような衣装を纏った"六花聖華ティアドロップ"がいた。

まさかこのカードがまた使えるとは思わなかった…

デュエルディスクがこのカードを認識するのもそうだが、第一に俺はこのカードをデッキに入れていない。

1枚の"六花聖ティアドロップ"のカードが突然光だし、この"六花聖華ティアドロップ"へ生まれ変わるように、俺のエクストラデッキに加わったのだ。

 

それだけじゃない。さっき俺が使っていたカード…"六花の返り咲き"と言うカード…俺はあんなカードをデッキに入れた覚えも、それどころか見た事も無い。にもかかわらず、デュエルディスクは問題無く起動した…どういう事だ…?

これには俺だけではなく、これを見ていた観客達もざわめき出す。

 

「あのカード見た事ないぞ…不正では無いのか?」

 

「でも、デュエルディスクはちゃんと機能しているぞ?もしかしたら俺たちの知らないレアカードなのかもしれない。」

 

不正だと言うものもいれば、まだ発表されていないカードだと言う人だっていた。会場はざわめきの渦を巻き起こした。

…やばい、いやこのざわめきの渦を作り出した原因は俺なのだが、一体全体どうやって治めればいいのか分からない…あぁダメだ。俺の頭では思いつけない。

こめかみを押してもう一度よく考えている内に、存在感が全面的に出ている声が会場内を沈黙させた。

 

「おい、静かにしたらどうだ。」

 

若い男の声だ。観客席方面に顔を向けると、白いコート姿の男がこちらを睨むように見ていた。

いや、目が細めているせいか睨むように見えているだけで、実際には睨んでいるとは限らないのだが、その目の細さは尋常ではない程の圧が放たれていた。

 

「見た事がないカードだが、デュエルディスクは不正と認識してはいないんだろう?だったら問題ない。続けろ。」

 

そう言って男はそのまま会場から出ていってしまった。嵐のような存在のように、先程の騒ぎが無かったかのように辺りは静まり返っていた。

 

「…デュエルディスクは確かに不正とは認識されておりません。デュエルを再開して下さい。」

 

花音のお母さんがデュエルの続行を許可を宣言し、俺と花音はデュエルを再開する。

今の俺の手札は2枚であり、場には"六花聖華ティアドロップ"と"立花精エリカ"の効果を有した魔法カード"六花の返り咲き"が場にあり、永続魔法"水舞台"が発動している。

 

対する花音の手札は1枚であり、場には"妖精竜エンシェント"に"ナチュル・パイナポー"、そしてエクストラモンスターゾーンに"アロマセラフィージャスミン"。

永続魔法"アロマガーデニング"と永続罠の"恵みの風"、フィールド魔法"アロマガーデン"が場にある。

 

どうして"六花の誓い"や"六花聖華ティアドロップ"が使えるのか分からないが、デュエルは続行する。

その時だ。急に右手から全身にかけて痛みが全身に蝕んで来た。それほどの痛みは無いが、中から苦しみが暴れるような嫌悪感で思わず歯を食いしばり、苦しみにもがき苦しんだ。

 

「ガッ…!ぐっ…っ!」

 

「花衣様!?どうなさいましたか!?」

 

フィールドにいるティアドロップが苦しむ俺を見て寄り添おうとしたが、心配かけまいと俺は左手を伸ばし大丈夫だと行動で示した。だが、ティアドロップの顔を見るからに今の俺の顔は酷い事になっているだろう。

息も荒く、視線もなんだがぼんやりする…今のこの状況で長期的なデュエルは正直いってキツい…一気に勝負を決める…!

 

「俺は…"六花聖華ティアドロップ"の効果…発動…!"六花の誓い"によってこのカードがエクシーズ召喚された時…相手フィールド上のカード効果を無効にし、相手のモンスターを全てリリースする…」

 

ティアドロップがブーケを天高く投げると、そこから風花が起き、花音のフィールドのモンスターを全てリリースした。これにより花音の場にはモンスターが居なくなった。

 

「更に…ティアドロップはモンスターがリリースされる度攻撃力を500ポイントあげる…今リリースしたモンスターの数は三体…よって1500ポイントアップする…」

 

"六花聖華ティアドロップ"の攻撃力は3500…よって攻撃力は5000になる。

 

六花聖華ティアドロップ

ATK3500→5000

 

これでダイレクトアタックを行えば花音に5000の大ダメージを与えることが出来る。

それなのに体が重く、思うように言うことを聞いてくれない。目眩や少し弱い頭痛までしてきた…立っていないで横になるたい程に体がしんどい…

重い口を上げ、喉を震わせ、いつものように声をあげる。

 

「バトルだ…俺は…"六花聖華ティアドロップ"でダイレクト…アタックだ…」

 

苦し紛れの精一杯のかすれ声が更にティアドロップの心境を不安にさせてしまう。ティアドロップは俺から付かず離れずの距離を保つように氷の傘を空気を斬る様に振りかざすと、地面から氷の柱が次々と花音に襲いかかる。

 

「っ…!」

 

ソリッドビジョンなので花音に冷たさや痛みは受けないはずだが、やはり人間の反応は無意識な為、痛みはないと分かっていても身を守ろうとする。咲初は咄嗟に防御の姿勢をとり、自分の身を守ろうとした。

 

咲初花音

残りLP8600→3600

 

あれだけあったライフポイントが一気に削られ、一気にライフの差は逆転した。

このターン、俺に出来る事はもう無い。後はターンを終えれば良い…

 

「俺はこれで…ターン…エンドだ。」

 

ターンを終えた緩みのせいか一気に体が重くなった。

蝕みがその隙を突くように、一気に全身を這いずり回る嫌悪感と気持ちの悪さが纏わりつき、痛みよりも苦しさが俺に襲いかかる。

 

「私のターン…ドローです!」

 

咲初はドローしたカードを見ずに俺の事をじっと見ていた。恐らく俺の様態を案じているみたいだが、心配はいらないと、苦し紛れの笑顔で首を縦に振る。

花音は何を思ったのか、ドローしたカードを見つめ行動に移した。

ドローしたカードを…デッキに戻し、デュエルディスクのパッド部分を操作し始めた。

 

「私は…このデュエルをサレンダーします。」

 

「な…!?」

 

花音がサレンダーを宣言した瞬間、会場は騒然とした。

サレンダーとは、いわゆる降参と言う意味をもつ行動だ。プレイヤーが勝てないと思った時に使う行動だが、花音には充分勝てる目はあるはずだ。

 

「そんな状態でデュエルなんて出来るわけが無いです。貴方を早く休ませるには…これしかありませんから。」

 

あぁ…そう言う事か。結局俺は花音にも迷惑をかけてしまった…デュエルが終わった気の緩みで俺は完全に体の力が抜かれるように、そのまま倒れてしまう。

 

「花衣様!」

 

倒れる俺をティアドロップが支えようとしていたのが見えたが、今のティアドロップの体はソリッドビジョンで作られたホログラムだ。俺の体はティアドロップの腕を虚しく貫通させ、そのまま地面に倒れる。

 

「花衣さんっ!」

 

花音の忙しない足音が大きくなっていた様な気がするが、意識が遠のく俺には、地面と衝突した衝撃も、花音の声も、ティアドロップの声も何もかも聞こえなかった。

ただ瞼を閉じ、ゆっくりと意識を失うことしか今の俺には出来なかった…虚ろう意識の中、俺の手札の"暗黒世界-シャドウ・ディストピア"とあと1枚の魔法カード"超融合"が禍々しい黒いオーラーを放っていたような気がした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悔しい

 

辛い

 

どんな事をしても勝ちたい

 

負けたくない

 

 

醜く、汚らわしく、人々の闇が聞こえる。耳を塞いでもその声が頭の中まで響き俺に攻撃してくるようだった。

怒りや憎しみ、憎悪や悲しみが俺の中に入っていく。

 

憎い

 

恨めしい

 

何故あいつなんかが…

 

その声がどんどん大きく、増えていき、いつしかこの悪意の声達を聞くと体が裂けるような痛みに襲われる。

体をのたうち回らせ、見るも無様に体をくねらせて痛みに耐える。

 

「がっ…あっ…ああああああ!!!」

 

痛みにこらえる為、必死に声を上げて痛みを和らげようとするが、途方もない痛みの進撃の前では無意味だと嘲笑うかのように痛みは絶え間なく俺に襲いかかる。

痛い

 

悔しい

 

嫌だ…

 

誰か…

 

助けを求める声もあげられず、俺は苦しさに押し潰されるようにその場で倒れてしまう。その時、左小指でキラリと光る氷のような指輪が俺の目に映った。

この指輪は…ひとひらとティアドロップが作り俺に渡してくれた物だ。それだけじゃない、右腕のブレスレットや胸に飾った花飾りも淡く光り、苦しみが少し和らいだ気がした。

 

「みんな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はっ!」

悪夢にうなされ、悪夢から逃げるように思い切り体を起こす。いつの間にかベットの上で寝ていてのは気にも止めてず、俺は徐々に落ち着きを取り戻す。荒い呼吸を何度も繰り返しながら、俺がいる場所を確認する。

いつの間にかベットの上におり、窓から見えるのは海だけ…しかも景色が動いている事から…動ける場所…

そういえば俺が今いる場所は"ブルーアイズタイタニック号"という豪華客船だ。俺が寝ている間にいつの間にか船は動いたのだろう。

流石豪華客船と言った所か、揺れは全く感じない。船の中と言うよりかはホテルの中にいるのと全く変わらず、酔いも全くしない。

さて…ここは船のどこだ?部屋と言うには少し広いような気がするし…何より少し薬品のような匂いがする。

まるで…学校の保健室か病院のようだ…そんな事を考えている内にコツコツと2人分の足音が聞こえてきた。

俺の周りにある白いカーテンが開けられ、そこには白衣を来た女性と花音がいた。

 

「…!花衣さんっ!良かった…目を覚ましたのですね!」

 

花音が俺の無事を目にすると、そのまま小走りで俺のベットの傍に駆け寄った。俺に気遣うように、膝を屈んで俺の目線を下げてくれた。

あとから白衣の女性も微笑ましそうに俺と花音を見ると、俺の目をじっとみた。

 

「あら、起きたのね。具合はどう?」

 

女性でありながら少し低い声はまさしく大人の女性と思わせる様な感じだった。

体には特に異常は感じられない。あの時デュエルした体の嫌悪感と悪夢で感じたあの痛みはもう感じられない。

思い出すとまた痛みが思い出してしまうように気がした為、忘れるように首を激しく横に振る。

 

「大丈夫です…あの、俺は一体…」

 

「貴方、急にデュエル中に倒れたのよ。花音ちゃんたら貴方の事をずっと看病していたのよ。」

 

「そ、それは秘密ってあれほど!」

 

花音本人からしたら秘密にしたかったのか、看病した事をバラされて赤面した花音を見た女医さんは、面白そうにクスリと笑った。

デュエル…そうだ、確か俺は花音とデュエルしてそれから倒れたんだった…その後の記憶は全く無く、俺は自分のデッキがどこにあるのかも分からなかった。

 

「あの…俺のデッキは…」

 

「あぁそうだったわね。」

 

女医さんが向こうの机の上に置かれたデッキを丁寧に持ち、そのまま俺に渡してくれた。

 

「貴方のデッキ…可愛らしい子が多いわね。そう言う子達が好みなのかしら?」

 

「え?い…いやその…えーと…」

 

今俺と一緒に暮らしている奴らなんです。

なんて言えるわけが無い。何か良い言い訳は無いかと探ったが、女医さんが察するようにまた笑った。

多分、こういう子が好みだと誤解されたのだろう。この際それでも構わなかった。

 

「それじゃ、私はお邪魔っぽいから…終わったら教えてね〜!」

 

「え?あ、ちょっと先生!?」

 

花音が驚く様子で女医さんを止めようとしたが、女医すぐ様医務室から出ていってしまった。

嵐のような去り際で沈黙の空気が生まれ、俺と花音は互いに見つめ合う。何故か急に気恥しさが生まれ、俺と花音は互いに目を逸らした。

気を紛らわそうとデッキを表返し、何か変化は無いかと確認すると、そこには"六花聖華ティアドロップ"のカードがあった。

 

「これって…!」

 

デッキを隅々確認すると、"RUM-六花の誓い"と先程のデュエルで使った"六花の返り咲き"があった。それぞれ1枚ずつあった。改めてこのカードを見るが、どこも異常はなく、普通のカードと全く同じだ。

異常と言えば…あのカード、"暗黒世界-シャドウ・ディストピア"も確認すべきだ。あのカードを引いた瞬間、俺の中に苦しさが蝕んだような感覚に陥ったのだから。

恐る恐る"シャドウ・ディストピア"のカードを手に取ると、なんの感覚も無かった。

 

「…あれ、何ともない。」

 

気のせいで片付けるにはあまりにも生々しい苦しさと…ここに存在する"六花聖華ティアドロップ"のカードだってある…。

もう何がなんだが分からなくなり、頭の中が疑問で埋まる中、カードが眩く光だし、ティアドロップが飛び出してきた。

 

「花衣様!お身体は大丈夫ですか!」

 

「ちょ…ティア…」

 

ティアドロップと言う前に、俺はティアドロップに押し倒された体勢でベットに背中をついた。

人が元から備わっている反射のせいで、無意識に目を瞑ってしまい、何やら胸部に柔らかい感触が…何が起こったのか確かめる為にそっと目を開ける。

目を開けた先は、薄白い肌に氷のような青い目で俺の顔を見ているティアドロップの顔しか映らなかった。

ティアドロップは俺の両頬を両手で添え、俺に異常は無いかとじっと見ていた。

一心不乱に俺を見つめるティアドロップから思わず目を逸らすように、目線を少しさげる。

だが、それが仇となってしまった。目線を下げた先には、密着しているせいか、横に広く潰れている2つの豊満な胸が俺の目を釘付けさせるように激しく主張していたようだった。

 

「…!」

 

思わずその胸をガン見してしまいそうになる俺の煩悩を振り払うように目を瞑ろうとしたが、薄汚い下心の悪魔が少しずつ瞼を開けるように、俺はティアドロップの胸をチラチラと見てしまう。

女は視線に鋭いと言うものなのか、ティアドロップがクスリと小さく笑っていた。

 

「ふふ…エッチですね。」

 

「な…ちがっ!そういう訳じゃなくて…!」

 

俺は弁解しようとしたが、ティアドロップの胸を見た事は事実な為、何も言えずにいた。

ティアドロップは両手を頬から離し、代わりに俺の背中の方まで俺を抱くように回す。

 

「良いんですよ?もっと私を感じて、他の女の人なんて考えられないように…太陽に溶ける雪のように私に溶けてしまっても…」

 

ティアドロップは更に腕を強く組み、悪魔の囁きのように俺の耳元でそう言った。

生暖かい吐息が俺の耳を通して脳を刺激されるような体がビクビクと体が震える。

思わず変な声が出そうになるにも、必死に口を食いしばって声を押し殺す。

ティアドロップは更に俺の事を攻めようと更に抱く力を強めたが、突如ティアドロップを引き離すように何者かの手がティアドロップの右腕を掴んだ。

 

「あ〜な〜た〜は何やっているんですか!!」

 

腕の正体はレイの腕だった。レイは物凄い形相をしながらティアドロップを思い切り俺から引き離させると、ティアドロップはレイを睨んだ。

 

「何するのですか…今花衣様に異常が無いか調べていた所なのに…」

 

「いや絶対違いますよね!?貴方一体ナニをしようとしたんですか!」

 

「ナニって…それは…愛の育みです//」

 

「やっぱりそうですか!やはり貴方はここで排除するべきです…!」

 

レイが剣を抜き、ティアドロップが氷の傘を構えると、何かの拍子で戦闘が始まる気配を醸し出していた。

いやいや待て待て待て、こんなところで戦ったりしたら俺まで巻き込んでしまうぞ!?

それに花音も両手で顔を隠して部屋の隅で縮こまっていた。

 

「何してんの…花音。」

 

「な…なんだか見てはいけないような光景を見てしまったので、恥ずかしくて…」

 

あ〜…成程。さっきティアドロップが飛び出したあの時か…花音が近くにいるのにも関わらず、ティアドロップはグイグイ責めてきたからな…そりゃ他の人はそんな反応するよ…

 

「花衣様に相応しいのは私です!」

 

「いーや!私です〜!」

 

「「むむむむ…」」

 

視線の鍔迫り合いが勃発し、今にもどちらか動けばその時点で戦いが起きそうだ…流石にそれは不味いと思い、俺はベットから飛び出し、二人の間に割り込んで戦いを止めようとしようとしたその時、医務室の扉が開けられた。それを素早く察知したティアドロップとレイは姿を消し、カードの中へと戻って行った。

扉を開けたその人は…花音のお母さん、"咲初薫子"であった。

 

「お…お母様!」

 

「あら花音…やっぱり貴方もここにいたのね。」

 

薫子さんは何処か嬉しそうな表情を浮かべながら、真っ直ぐ俺のいるベットまで向かった。

何か言われるのではないかと考えた俺は、生唾を飲み込み、背筋を伸ばす。

 

「ああ、大丈夫ですよ。何も何か言おうとして来た訳では無いから…花音、少し席を外して貰えるかしら?」

 

「え?あ…でも…」

 

花音が俺の方に視線を向けると、気になるようにその場に留まっていた。どうやら俺のことが心配で席を外すことは出来ないらしい。俺は大丈夫だと言うように首を縦に振ると、花音が俺の考えを汲み取ったのか、丁寧にお時期して部屋から出ていった。

花音がいなくなり、目の前には花音のお母さん…しかもかなりの上の立場という人もあってか、緊張で吐き気がしそうなほど動悸が激しくなった。

何かを言うつもりは無いと言ったが、俺は"六花聖華ティアドロップ"等のカードを使用したり、更には放映中に倒れてしまう等かなりの事をやらかしている。

面子を傷つけるには十分過ぎるほどの過ちであり、どう責任を取らされるのかとばかり考えた。

ようやく薫子さんが口を開き、会話を始めると、俺は緊張で呼吸を忘れた。

 

「…花音とはどうなのかしら?」

 

「……え?」

 

どう…ってつまり、俺と花音の関係を知りたがっているのだろうか…?花音とは友達だと思っているのだが…。

 

「貴方…花音の恋人かしら?」

 

「ぶふぉ!?」

 

俺の考えと的外れすぎる質問に行儀悪く吹き出してしまった。怒られると思ったが、俺の反応を見て薫子さんはクスリと笑った。

 

「ふふ、どうなのかしら?」

 

「恋人…では無いですね…」

 

「あらそうなの…いつも花音が貴方の事話してたからてっきり…」

 

「花音が俺のことを?」

 

なんだか想像つかないが、一体どんな事を話しているのだろうか?

 

「そもそも、花音が男の人を呼び出すなんて初めてだったから。」

 

「え?そうなんですか?」

 

それは意外だ…性格的に男女問わずに友達を連れて何処か遊びに行ったりとかしそうなイメージだったが…そうでは無いのか。

 

「花音は…生まれにコンプレックスを持っているの。他の人とは違うんだから、それ故に避けられたり、それを狙おうとしている人は少なくは無かったから…だから身分を隠して、普通の女の子になろうとしたの。」

 

「……」

 

俺はここに来る前、花音と一緒にいた車の中の出来事を思い出した。

 

_お友達がそんな風に腫れ物に触るような感じがする喋り方は悲しいです…

 

あの時の花音は、酷く寂しそうな表情をしていた。理由を知った俺は、そのことを思い出すと、胸が酷く傷んだ。

今思えば…合流する前、花音からの電話でも様子がおかしかった。もっと俺がよく見ていればと悔やむように布団を強く握った。

 

「…そうか、だからあんな表情を…」

 

「もし良ければ、これからも花音の事を…よろしくお願いね。」

 

そう言って薫子さんは深く頭を下げた。

俺よりも地位が上の人にそんな事させられると困るので顔を上げるように俺は急かす。

 

「わわ!そんな事しなくても、俺は花音の事を普通の友達のように接しますよ!」

 

薫子さんは礼を言って顔を上げてくれた。

 

「ありがとう…貴方なら花音の事、任せられそうね。」

 

その事に俺は首を傾げてしまう。任せるってどういう意味なのだろうか?そして何故かデッキから六花達と閃刀姫達の強い圧を感じる…

 

「私が言うのもなんだけど、花音は優良物件とは思うわよ?顔も可愛いとは思うし、何事にも一生懸命で、思いに一途な子よ。」

 

「あの…何を言ってるんですか?」

 

「あら、貴方なら花音の婚約者(フィアンセ)に相応しいかもって思ってるけど…」

 

フィアンセ…?婚約者って事か?誰が?…俺が?

頭の中と頭上に疑問と?マークが飛び交い、俺は一瞬思考停止してしまう。

デッキから六花と閃刀姫達への威圧感が目に見えるような強さを醸し出していたのを感じた俺は、思考を蘇らせ、言われた事の意味を悟った。

 

「お…おおおおお俺が婚約者!?いやいやいやいやいや俺にはまだ早いって言うかなんて言うか…」

 

「貴方手が千手観音みたいになっているわよ…」

 

残像を生み出すほど俺は混乱で素早く頭と手を同時に動かし、見る人にとっては千手観音みたいになっている。と言うか言われた。あまりの早さで動かしたせいか、首と手を少し痛め、俺は落ち着きを少しだけ取り戻した。

慌てた姿を見た薫子さんは、面白そうに笑っていた。

 

「貴方…本当に面白いわね。…まるで昔の夫みたいな反応なんかして…」

 

「夫さんと?」

 

「私が夫に告白した時、それはもうあの人ったら貴方みたいにあたふたしてたのよ。」

 

薫子さんはその時を懐かしむように小さく笑った。

花音のお父さんか…ちょっと気になるな。どんな人なんだろう…いや、別に婚約者として会いに行くという意味では無くて、単純に気になっただけだ。

そんな事を考えていると、薫子さんが俺の手に持っているデッキを見た。

 

「そうだ…貴方のデッキに入っていた…えーと、"六花聖華ティアドロップ"と"六花の誓い"、あと"六花の返り咲き"の件なんだけど…」

 

心臓が跳ね上がる衝撃を受け、俺はデッキにある"六花聖華ティアドロップ"のカードをじっと見つめた。

恐らくだがこっちの方が本題だろう。和やかな空気が一気に凍りついたような気がした。

そして薫子さんは耳を疑うような事を口にする。

 

「貴方のそのカード、公式…つまり、"レゾン"から手渡されたカードのようね。さっき確認したから大丈夫。そのカードはこの大会で使っても良いわ。もう、そんなカードがあるならこっちにも連絡すれば良いのに…」

 

…は?何言ってるんだこの人は…そんな訳ない。この3枚のカードは公式から手渡された訳が無い。何故なら、このカードはそもそもデッキにすら入れてなかったからだ。

しかも"六花聖華ティアドロップ"と"六花の誓い"は、今回初めて使ったカードでは無い。レイとのあのデュエルの時…突如として俺のデッキに入ったのだ。"六花の返り咲き"に関しては今回で初めて使うカードだ。

俺はそんな事は無いと言おうとしたが、突如ロゼが後ろから現れ、それを止めるように俺の左肩に手を置いた。

 

『ダメ、ここは口裏を合わした方が良い。』

 

「ロゼ…?」

 

『振り返らないで、今は私の言う事を聞いて。』

 

今振り返れば、目の前にいる薫子さんに不審に思われると考えた結果そう言ったのだろう。ここはロゼの言う通りに口裏を合わした方が良いだろう。

 

「そ…そうなんですよ。あっちから連絡するって言っていたから。何も言わずに使ったのは…ごめんなさい。」

 

嘘偽りを本当の事のように言い、どうにかしてこの場を誤魔化す。正直本当の事を言いたいが、信じてくれる事は無いだろう。心が針で小さく痛むような感覚がじわじわと俺を蝕むようでもあった。

 

「あら…そうだったの。連絡はきっちりしてもらいたいものね全く…」

 

薫子さんは呆れたように怒りながら俺の言うことを信じてくれた。しかし、ロゼはまだ終わりでは無いと言わんばかりに俺の耳元に近づいた。

 

『次、デュエルディスクの事について聞いて。そうね…出来れば開発責任者の名前まで絞り出して。』

 

そんな事言われてもどう話せばいいんだ…?…そうだ。確かデュエルディスクは薫子さんの会社で作ったと聞いた。となると薫子さんが開発責任者なんだろうか…?

取り敢えずこの事でゆさぶりをかけてみよう。

 

「あの…デュエルディスクって薫子さんが開発責任者なんですか?」

 

「ん?いえ、私は違うけど…どうしてそんなことを?」

 

やばい、話が急にそれすぎたか。薫子さんは不審までとは思ってはいないようだが、気にってはいた。

 

「い、いや〜デュエルディスクの技術が凄いから、作ってる人はどんな人かなぁって。」

 

「あぁ…なるほどね。でも、機密事項だから言えないの。ごめんね。」

 

どうやら聞き出せることはここまでのようだ。

やはり今の話で1番気になったのは…"レゾン"と言う組織だ。話を聞くと、どうやらデュエルモンスターズを管理している会社で間違い無いが。聞いた事ない会社だぞ…そもそも管理している会社自体が変わっているし…

やはりこれも世界が変わった影響なのだろうか…?

いや、待て…そもそも誰がそんな連絡をしたんだ?これが言えるのは…俺が精霊が見える事…つまり、俺の事を知っている人だ。

花音は違う。じゃあ…誰だ? そんな時、ふと花音のモンスター"アロマージマジョラム"が言ったことを思い出した。

 

_【閃刀姫】達の他にあと一人…同じように存在ごと移動した人物がいるのを感じます。

 

この世界のどこかに、俺の状態を知っている者がいる。そして、それは…あの時、カードショップにいた誰か…まさか…炎山達の誰かは…デュエルモンスターズの精霊と言う事になる。

 

「さて、じゃあ私はそろそろ行くわね。大会まであと少し時間があるから、それまでこの船の中を花音と一緒に歩くと良いわ。」

 

考えた俺の意識は現実に持っていかれ、薫子さんは立ち上がり、自分の持ち場に戻ろうとした。

そろそろこっちも体の調子が戻ってきたので、いいタイミングだろう。

「じゃ、花音の事…よろしくね?」

 

からかうように笑いながら薫子さんは部屋から出ていってしまった。

肩の荷がおりたような感覚で息を吐くと、後ろでロゼが急に抱きついてきた。

 

「…ロゼ?」

 

「渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない渡さない…花衣は絶対あの女なんかに渡さない…」

 

なんか呪文見たいにブツブツと呟いているが、聞かなかった事にしよう…そうしよう。

ロゼが離さないように強く、それでも優しく俺の事を後ろから抱いた。

 

「なんだか薫子さんに悪いなぁ…」

 

今この瞬間を悪くないと思っている俺は…他の人から見ると、ろくでもない男だと言うに違いない。

そして、頭と心の片隅で俺は炎山達のことを疑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだか懐かしい気分になりながら部屋に出た薫子は、大会運営の為に部屋を後にした。

娘が連れてきた男がどんな人か見る為に来たが、薫子は安心していた。昔、娘に近づいた男達は、全て自分の財産目当てがほとんどであり、ろくな人なんていなかった。それでは娘は幸せになれない。

そんな時だった、花音がまさか男の人を連れて来たと聞いた時、驚いた。それと同時に喜びもした。

あの子なら大丈夫だろうと薫子はそう感じた。

 

「…花音、いるんでしょう?出てきなさい。」

 

自分の娘の名前を呼ぶと、物陰から花音がしぶしぶと出てきた。

 

「ば…バレちゃった…?」

 

「ま、娘の事は分かっているつもりだからね。」

 

怒ってはいないと伝えるように、薫子は花音に笑いかけた。隠れていたのに見つけられた恥ずかしさなのか、花音は顔を赤くしながら薫子の隣に来た。

 

「あの子…花衣君だっけ?中々良い人じゃない〜お母さん安心したわ〜!」

 

「もう!花衣さんとはまだそんな関係じゃ…」

 

「まだ?て事は近々そんな関係に?」

 

「もう!お母さん!!」

 

まるで学生同士の会話に手玉を取られるようにからかわれていた花音は小さく地団駄を踏んで更に顔を赤くした。赤くなった顔を見せないように手で顔を隠し、足を曲げてその場でしゃがみこんでしまった。

 

「…でもあの子…多分他に好きな子いるかもね。」

 

「…!」

 

自分の経験から予測した結論を述べた薫子だが、花音には心当たりがあった。

そう、六花と閃刀姫達の事だ。一緒に住んでおり、いつも隣にいる彼女たちの存在は、花衣にとって家族かそれ以上の物だろう。そこには決して入り込めないような空間を花音は何度も見てきた。

今朝の花衣のスーツだってそうだ。六花達が作ってくれた物を心から喜んでいる表情を浮かべた花衣を見た花音は言葉には出来ない痛みと悲しさが込み上げてきた。

 

「…お母さん、私…どうしたらいいかな?」

 

つい弱音を吐いてしまった花音に、薫子は優しく頭を撫でた。

 

「貴方のやりたい事…したい事をすればいいのよ。だって、それが人間だもの。自分に正直に生きなさい。」

 

「…ありがとうお母さん。」

 

花音はスっと立ち上がり前を向いた。

 

「お母さん、私ちょっと花衣さんと行ってきますね。」

 

「はい、行ってらっしゃい。大会の時間までには戻ってくるのよ?」

 

花音は花衣のいる部屋に戻ろうとすると、腰にかけていたデッキケースを落としてしまい、デッキの中身がバラけてしまう。

 

「あわわ!」

 

「…ドジな所は相変わらずね。」

 

「うぅ…」

 

申し訳ないと感じながら花音はカードを急いで集め、薫子もそれを手伝った。2人なので直ぐにカードを集め終えると、薫子はある一つのカードを手に取ると、手を止めてしまい、小さく笑った。

 

「…?お母さん、どうしたの?」

 

「ふふ…いえ、貴方は本当に一途なのねって。」

 

薫子はデッキに入れていたカード"献身的な愛"を花音に渡した。花音は顔を今日1番真っ赤にして、目にも止まらない早さでカードを取った。

献身的な愛とは、発動すると相手の攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させるが、使ったプレイヤーのライフが0になるという、ハッキリいって使えないカードだが、タッグデュエルとなると別だ。

そう、このカードはタッグデュエル前提としたカードだ。

 

「ま…このロマンスタッグデュエルのルールではそれは使えるけど…まさかそのカードを入れてるなんてね。」

 

「うぅ…もういいでしょう!?花衣さんとちょっと歩いてくるから邪魔しないでね!?」

 

花音は"献身的な愛"のカードを握りしめて、花衣がいる部屋へと入った。

ここまで(〜90話)出てきたレゾンカードの中で強いと思うのは?

  • 六花聖華ティアドロップ、カイリ
  • 閃刀騎-カイムと閃刀騎-ラグナロク
  • 銀河心眼の光子竜
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