六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
さていよいよ次の話は空君のRRと雀ちゃんのBF対決です。
はい、という事はつまり……次の話……多分1ヶ月後とかそこら辺になります……(最悪3ヶ月)頑張って書きますのでご愛読よろしくお願いします……!
誰かが泣いている声がした。
まだ幼く無垢な子供が涙を流してどこかを歩いていた。
歩き疲れた子供はその場でうずくまり、また大粒の涙を流した。
誰もいない場所に一人きりのせいか、寂しく辛い感情が心に染み渡り、子供はまた大粒の涙を零しながら声を漏らした。
必死に母親の元に帰りたいと願い続け、その願いを叶うかのように足音が聞こえた。
足音の主は優しく子供抱き抱え、あやす様に背中を優しく叩いた。すると子供は徐々に泣き止み初め、目を開く事無く泣き疲れて寝てしまった。
胸の中の安心感と共に、子供はこう呟いた。
_……お母さん
子供は女性から離れないように強く服を握った。
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「……っ、今のは……夢? 」
何故か感じた懐かしい夢と共に、俺は意識を覚醒させた。いつの間に寝たのだろうか、テーブルに乗った体を起き上がらさせ、俺は寝起きの目を擦り寝る直前の記憶を遡った。
「えーと……確かタッグデュエルの試合が終わってそれから……ティアドロップと……〜!! 」
俺はティアドロップとの行動を思い出し、俺は自分の行動を今更ながら恥じた。ティアドロップが一時的に奪われた事や変なデュエルになったせいで精神的に疲れていたにせよ、ティアドロップと……抱き合ったなんて……いや、嫌では無い。寧ろ嬉しい気持ちが大きい。
現に抱き合った温もりや感触がまだ忘れられず、それ故に羞恥心が込み上げてきた。
相変わらず子供っぽい感情で情けないと思いつつ、煩悩をかき消すように頭を掻きむしった。
「……そうだ、ティアドロップは!? 」
急いでデュエルディスクに収納されているエクストラデッキを調べ、ティアドロップのカードを確認した。
精霊が実体化や霊体化をすると、その精霊が宿っているカードの絵柄は消える。
勿論、そのカードは俺のデッキに加えられている。入ってるカードの絵柄は消えていなかったので無事な事は確かだった。
安心して全身の力が抜けてしまい、椅子に全体重を持たれて空を見上げた。
そんな放心状態の俺を覗き込むように、2人の女性が俺の視界に入った。
「おはようございます。花衣さん 」
「ん……おはよう 」
「うおっ!?」
突然レイとロゼが俺の視界に入った事により驚いた俺は後ろに倒れ込んでしまった。椅子にのしかかった全体重が後ろに乗った事により、椅子の重心は大きく後ろに倒れ込み、壁のない椅子は俺諸共傾いてしまうが、レイが支えてくれた事によって倒れる事は防げた。
驚いた俺に対してレイは笑って椅子を元に戻し、空いているテーブルの席へと座った。
「全く、抱き合ってそのまま眠るなんて……変わらず呑気ですね 」
「カイムの時も、偶に地面の上で寝ていた事もあったから尚更 」
どうやら、このテーブルに運んだのはレイとロゼだったようだ。確かに、誰かに運ばれたような感覚は朧気ながら感じてはいたが……
それに、何かを忘れているような気がする……
「花衣さ〜ん! 」
後ろから花音の声が聞こえ、俺は雲が晴れたように忘れていた事を思い出した。
そう言えば……星空と話があるって言ってたっけ。
幸い場所はこの船外デッキなのでそろそろ時間の筈だ。
「ん、先に来ていたか 」
白いスーツを見事に着こなし、俺よりも背が高い彼は間違いなく星空だった。
「……どうやらお邪魔だったか?そちらのテーブルに女性2人がいるのだか 」
「なっ!? 」
「えっ!?レイさん達の姿……見えているんですか? 」
一瞬何かの冗談かと思ったが、ここで嘘をつく必要も理由も無い。それに、星空の目は確かにレイとロゼに向いていた。
見えてる事に警戒心を持った2人の目付きが鋭くなり、武器を構えて今にでも星空に襲いかかろうとしていた。
「待て待て2人共。何もそんなに警戒しなくても…… 」
「ですが…… 」
「……妙な真似をしたら潰す 」
何とか2人の武器をしまわせたが、警戒心は解いてはいなかった。俺は椅子から立ち上がり、星空と面と向かった。
「すまない、警戒させるつもりは無かった。ただ俺は、同じ精霊が見える者同士話がしたいのと……あの子が君達の精霊と話したいと言って聞かなかったんだ 」
「あの子……? 」
星空はデッキに出る通路の扉に目を向けると、俺達も釣られるように向こうの扉に目を向けると、扉の裏に隠れている小さな女の子の姿が見えた。不意にその子と目が合うと、女の子は扉の後ろに隠れてしまった。
怖がらせたのかな……
「何恥ずかしがっているんだ、早くお姉ちゃん達に挨拶をしろ 」
扉の向こうの女の子を安心させるように、柔らかな声で女の子を呼び出していた。女の子はたじろぎつつも扉から離れて、小走りでこちらに向かって来たかと思いきや、すぐ様星空の後ろに隠れてしまったのだが、フリルがある白いドレスのせいで隠れきれては居ない。
唾の大きい帽子で顔を隠している為、顔は見えない。無理やり見ようとしても嫌がってしまうような気がする為、俺は顔を見ようとはしなかった。
「こーら、挨拶をするんだ。
天音……多分女の子の名前だろう。名前を呼ばれた天音ちゃんははずがしながら勇気を出して俺達に姿を表したのだが、やはり顔を見せずにいた。やれやれと言ってるようなため息をついた星空は、天音ちゃんの帽子をとってしまい、無理矢理俺達に顔を見せた。
「お、お兄ちゃん……!返してよ〜 」
少し金色が混じった白金のロングヘアをなびかせ、星空が取った帽子を取り返そうと必死にジャンプするが、身長の差があまりにも大きい為、ジャンプしても届かずにいた。どうやっても取れないと判断した天音ちゃんは、顔を俯かせながらも自己紹介してくれた。
「ほ……
初々しい自己紹介が終わり、最後の方に言葉を噛んでしまった事が恥ずかしいのか、また星空の後ろに隠れてしまった。
「あぁ、すまない。こいつは人見知りがまぁまぁ激しくてな……悪いが、妖精のような小さいなサイズの精霊はいるか? 」
「え?まぁ……いるにはいますけど…… 」
妖精のようなサイズの精霊だったら、俺の"六花のひとひら"か花音の"アロマージ・アンゼリカ"が該当する筈だ。俺と花音はそれぞれそのカードを星空に見せると、星空は問題無いように頷いた。
「少し緊張を解す為、天音にその子を合わせてくれ。天音も精霊が見えるからな 」
「こ、この子も精霊が見えるのですか!? 」
花音の驚きの声にびっくりした天音ちゃんは更に体を縮こませて星空の後ろに隠れてしまった。
「あぁ……ごめんね、天音ちゃん…… 」
花音が面と向かって謝ろうとするものの、天音ちゃんはどうしても花音とは顔を合わせようとはしなかった。
かなりの恥ずかしがり屋さんに思えたが、これはどちらかと言えば避けてるようにか見えなかった。
人見知りと言うよりかは、怖がっていると言った方が様子的に近かった。花音もそれを思ったのか、天音ちゃんとは顔を合わせず、1歩後ろに下がった。
「す、凄い人見知りの子ですね…… 」
「天音は少々……いや、かなり人付き合いが苦手でな……悪いが、精霊を頼む 」
「分かりました。おいで、"ひとひら" 」
俺はひとひらを呼びかけると、カードが光り輝き、その輝かきと六花の雪と共にひとひらが出てきた。周りには人はいないが、万が一に備えて霊体化で出した。
「ほら天音、精霊が出たよ 」
ひとひらとアンゼリカが天音ちゃんの周りに飛び続け、それを見た天音ちゃんはこれまでの態度とは打って変わって笑顔になった。
「わぁ……精霊さんだ! 」
目を輝かせながらひとひらに触れようとそっと手を伸ばすと、ひとひらは天音ちゃんの両手に乗り、挨拶なのか笑顔で大きく手を振った。
「見て見てお兄ちゃん!精霊さんが手を振ってくれたよ! 」
「そうか、良かったな 」
「うん! 」
妹の笑顔を見て嬉しい兄は、優しい微笑みで天音ちゃんの事を見守っていた。天音ちゃんはひとひらと2人きりで話したいのか、星空の背中から離れ、隅っこの方でひとひらと2人きりになった。
だけど……ひとひらは言葉を発する事が出来ず、何かしらの行動でしか意思表示ができない。会話できるかどうか不安でしかないが、近づいて怖がらせたら可哀想だ。どうしようか考えた末、俺はプリムとシクランとストレナエのカードを取り出した。
「あの、この子達も天音ちゃんに会わせようか?背丈的にも、天音ちゃんとほぼ同じだが…… 」
「そうだな……緊張は解けたようだし、呼び出そう。おーい天音!このお兄ちゃんがまた精霊を呼んでくれるそうだ! 」
大声で天音ちゃんを呼び出し、精霊を呼ぶと言う言葉に飛びつくように天音ちゃんは積極的にこちらに走ってきた。
目を星のように輝かせながら待つ天音ちゃんに見られながらも、俺はプリム達3人を呼び出した。カードの輝きと共に、プリム達は現れたと同時に俺の所に飛びついて来た。
「かーいくーん!! 」
「ふぐぉ!? 」
ストレナエとプリムが俺の胸へと思い切り飛びつき、俺は2人の体重と衝撃を上半身だけで受け止めるものの、そのせいで上半身にかなりの負担がかかった。鈍い痛みが襲いかかるものの、何とかして倒れること無く2人を受け止める事が出来た。
「花衣君から呼び出すのは珍しいね! 」
「今日はどうしたの? 」
俺からの呼び出しが嬉しいのか、プリムとストレナエは俺から引っ付いて離れなかった。唯一シクランは俺の体にしがみついてはおらず、遠慮してなのか俺の手だけを握っていた。
俺はどうにか体勢を低くしてプリムとストレナエを下ろし、状況を説明した。
「こ……この子と少し遊んではくれないかな。白い帽子を被ってるこの子だ 」
天音ちゃんに目を向けると、自分の同じ背丈の精霊を見るのは初めて出興奮したのか、天音ちゃん瞳がプラネタリウムのような満遍なく星が見えそうな程輝かせていた。
「わぁ……私と同じくらいの精霊さんだぁ!私、初めて見たよ!! 」
人型の精霊を見たのは初めてなのか、シクランに向かって手を繋いだ。
「わわ!この子、私達の事見えてるの!? 」
あまりの驚きに天音ちゃんの手を払い除け、シクランは俺の後ろに隠れてしまった。後ろに隠れたシクランを安心させ、シクランは恐る恐る天音ちゃんと向かい合った。
「よ、よろしくね 」
「うん! 」
天音ちゃんはシクランの手を握ると、プリム達と一緒に向こうに行ってしまった。
「わーい!それじゃあ何して遊ぶ? 」
同じ背丈同士のおかげか、それほど時間もかからず打ち解けてくれた。プリム達3人とひとひら、そして天音ちゃんは、仲良く向こうで遊んだ。一体どんな遊びをしているのかと気になりはするが、混ざる訳には行かない。
どこか少し煩わしい気持ちになってしまい、子を持つ父親のような気分になった。
「ふふ、仲睦まじいですね 」
「あぁ、天音があんなに喜んでくれたのは君のおかげだ。ありがとう 」
星空は俺に握手を求め、俺はそれに応えて握手を交わした。
「ところで……お話と言うのは自分も精霊が見えるって話でしょうか……? 」
花音がそう質問すると、星空さんは俺から手を離し、質問に応えようとすると、何故か一瞬俺の目を見て少し雰囲気がピリついた。
「元はそうだったんだが……君達のデュエルを見て少し事情が変わった 」
「変わった……? 」
「君のその頬の傷の事だ 」
俺は反射的に頬の傷を撫でると、先程のデュエルで怪我した頬には治療された形跡が残っていた。恐らくだが閃刀姫か六花達のどちらかが治療してくれたのだろう。
だが、これがあのデュエルが現実に影響した裏付けとなった。
「君のその傷はデュエルの最中で起きたものだろ。最初に会った時は無かったからな 」
「…… 」
「有り得ない事と考えてるが、君の傷がその"有り得ない"事を物語っている。……あのデュエルはダメージが実際の痛みとなっていた。そうだろう 」
疑問を超え、最早確信めいた発言に俺は戸惑っていた。ここでしらばっくれても、言い訳しても、彼は納得しないだろう。
観念するように俺は息を吐き、全てを話す事にした。
「……そうだ。あのデュエルの終盤、デュエルのダメージは現実の痛みへとなった 」
「それにしては……随分と冷静だな 」
「そ、それは…… 」
レイとのデュエルで経験してるなんて言える訳が無い。しかも場所が精霊の世界なんて言ったら大混乱間違い無しだ。
しかしここで話を逸らしたらそれこそ星空に怪しまれ、問い詰められること間違いなしだ。どうするべきか沈黙すると、船内からのドアが開き、炎山達が来てくれた。
「おお花衣!ここにいたのか!なんだよ〜勝った報告ぐらいすれば良いのによ〜! 」
丁度良いタイミングで邪魔してくれた炎山に感謝しながら、心の中で一息をつけた。タイミングを失った星空は話を切り出す事無く、諦めたようにため息をついた。
「まぁ、話したくないなら良い。ところで、君が次の対戦相手の炎山君かな? 」
「ん?あぁ、俺と霊香の対戦相手か。へへ、負けねぇからな 」
星空と炎山はお互いに握手を交わしていはいたが、星空の疑惑の意識はまだこちらに向けられていた。
炎山達がいる以上、精霊関連の話は出来ないのでこれ以上話す事は無いと思うのだが……
しかし、炎山がこれまたいい感じに空気を壊してくれた。
「……どうやら俺は邪魔のようだ。俺はこれで失礼する、天音!戻るぞ〜! 」
天音ちゃんを呼び出したと同時に俺はストレナエ達をカードに戻させ、天音ちゃんは物足りない顔をしながらもちゃんと星空の言うことを聞いて近くに寄った。
仲睦まじくしっかりと手を握り、この場を離れようとしたその時だった。
「また話そう。今度は俺と君2人でだ 」
そう言って星空はそのまま天音ちゃんを連れてこの場から離れた。
今の反応からして、間違いなくどこか俺に不信感を抱いている筈だ。今度話す時は間違いなく見下とのデュエルを掘り下げて来る筈だ。
今度は間違いなく精霊世界について話すとは思うが……果たして話して良いのだろうか?
星空も精霊が見える時点で、精霊の世界があるとは考えている筈だ。もしかしたら……あの人がレゾンの人だって言うことも考えられる。
レゾン……ネットで調べた限りでは、今や世界的に人気となった遊戯王デュエルモンスターズを運営し、数々の分野で活動をしている企業と言う事ぐらいしか分からなかった。
その超大手企業のレゾンから俺だけ特別なカード、"六花聖華ティアドロップ"等渡されたと表では知らされてるが、実態は違う。
"六花聖華ティアドロップ"は、俺とレイがデュエルした時に生まれたカードだ。誰かに渡された事なんかじゃ無いし、それどころかこの事実が知っているのはあの場にいた人物、俺や六花とレイとロゼ、最後に花音だ。
現段階で最も怪しいのは花音だが……いかにも私が犯人ですと言われてしまう今の状況でレゾンに精霊世界についての出来事を報告するなんて自殺行為だ。
一旦除外しておいて良いだろう。
そうなるとやはり考えられるのは、この前"アロマージ・マジョラム"が俺に言ったあの言葉だ。
『私達以外にも、同じような存在が貴方の近くにいる事を感じられます 』
同じような存在が俺の近くにいる……つまり、炎山達の誰かがモンスターであり、俺の事を監視してレゾンに俺の行動を報告している事になる。
だがそれ以前に何故俺の事を監視して報告する必要があるんだ?考えられる理由としては……俺の過去、つまり、俺がデュエルモンスターのモンスターだったという事ぐらいしか理由が思いつかない。そこまで俺は何かやらかしていたのだろうか。
「ん?何難しい顔をしてるんだ花衣? 」
突然炎山から声をかけられ、俺は考えをバラバラにされた。
……いや、考えても仕方ない事なのでいいタイミングだったのかもしれない。
「いや〜それにしても次はお前と空が相手だろ?気合い入れてけよ? 」
「それは良いけど……その機羽が死にそうになってるんですけど 」
炎山の後ろでぐったりと地面と同化する勢いで死にかけている機羽に気づき、一瞬誰だか分からなかった。
声をかけても反応せず、最早ただのしかばねみたいなものになっていた。
「俺は知らん。詳しくは雀に聞いてくれ 」
「良かろう……我が眼に映し出された盟友との禁断の 」
え?その口調で喋るの?と言うツッコミを口に出す前に、白井が冷たい雰囲気で河原を見ていた。
「普通に説明しなさい 」
「……は〜い……ぶー 」
かっこよく説明したかった河原だったが、普通に説明しろと白井が鋭い眼差しで見つめられた河原は仕方なく普通の口調で説明した。
……その方がありがたいのは本人に黙っておこう。
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「皆さん〜!今日は私"アリア"と!」
「私"ソナタ"のステージに来てくれて、ありがとう〜! 」
機羽と河原のデュエルの初戦はある2人のアイドルとの対決になった。
その2人とは、国民的……いや、世界的に人気である【ミスティックメロディー】と言う2人組のアイドルであった。
アイドルでありながらデュエルをしており、少しのツテでこの【ロマンス・タッグデュエル】に招待された。
彼女達が使っているデッキは"アリア"が【ドレミコード】と"ソナタ"が【トリックスター】であり、まさにアイドルに相応しいカードであった。
しかし、問題はそこでは無い。空はそれ以上に、このデュエルの空気に耐えきれなくなる寸前だった。
「皆さーん!今日は私達のステージに来てくれてありがとう〜! 」
すると2人のアイドルとモンスター達はこの場をステージのように振る舞い、美しい歌声と麗しいダンスで人を魅了させた。
観客達一人一人目を配り、ファンサービスを忘れずにいた。
デュエル中にも関わらずアイドルらしい振る舞いをするのは流石はプロと言うべきか、しかし相手にしている空にしては、やりづらい相手でもあった。
相手は世界的に有名なアイドル……仮にここで勝っても、空には多少のバッシングが来るのは考えうるだろう。
例えば、観客からネットで酷い事をしていたとか、アイドル本人達から酷い事されたとかネットで書き込まれると最悪だ。
「ちょっと待て!何であっちは女性2人組なんだ!?これ男女ペアのタッグデュエルの筈だろ!? 」
空はそもそもの理由を2人に指を指し、開催者である花音の母親の薫子に抗議し、薫子は申し訳なさそうに笑いながら空の問いに答えた。
「いや〜申し訳ありません。あの子達がどうしても2人で出たいと言ってた物で…… 」
「そうよ!私達は2人で1人! 」
「私達の絆は誰にも遮られないのよ! 」
そういうキャラ付けでも無く、彼女達の絆は本物である。如何なる時にも共に過ごし、共に励んだ2人は正に一心同体であった。
「そんな事より!私達の歌を聞いてよ〜! 」
「おい、デュエルしろよ 」
最もらしい正論をぶつけるものの、2人のアイドルの前では無力であるかのように二人は踊りながらカードを取り出し、モンスターを召喚した。
召喚されたモンスターも、2人のステージに合わせるようにそれぞれの個性を全面に出していた。
トリックスターは美しい美声を、ドレミコードは華麗な音楽の旋律で観客達を虜にしていた。
流石はアイドルと言ったところなのか、どんな場所でもそのプロ魂は尽きないのだろう。
そして、それに感化するように空のペアである雀も気分を昂らせていた。
「ふははは!そんな物で我が漆黒の翼の軍団を止めることは出来ない!行くぞ我が盟友よ! 」
「誰が盟友だ! 」
いきなり厨二病ワールドに巻き込まれまた空は今の状況でかなり精神が浪費してしまい、最早これ以上デュエルする気は無かった。
「だぁぁぁ!こうなったら一気に勝負をつけてやる!俺は"RR-ライズ・ファルコン"で雀の"BFフルアーマード・ウィング"の攻撃力を加えてお前らのモンスターに攻撃だ!」
雀のBFの攻撃力を加えたせいか、黒い炎を纏ったライズファルコンは空の怒りの炎のように燃え上がり、ステージを崩壊する勢いで相手のモンスターの殆どに突撃をかけた。
ライズファルコンは特殊召喚されたモンスターに全てが攻撃可能であり、ドレミコードのペンデュラム召喚とトリックスターの特殊召喚されたモンスターに全て刺さり、2人のライフを削りきった。
「とまぁ、こんな感じ! 」
「もうあんなデュエルは二度とごめんだ…… 」
聞いただけでもかなり賑やか……いや、空にしてはやかましいデュエルだったんだな……
機羽は基本的に静かな所で機械を作ったりするのが趣味だから、好きな環境の真逆に男一人は想像するだけで神経が疲れそうだ。
「と言うかアイドルまで参加してるのか…… 」
しかも俺でも知っている超有名アイドルだ。CDを出せば売上ランキングも必ず1位になり、しかもそれを数週間キープ出来る正に最強のアイドルだ。
「実は……ある催しで呼んだんですよ〜」
「催しって……どんな? 」
「内緒です」
この大会が終わったら何がするのだろうか?
しかし……招待を受けた以前にアイドルがデュエルをしている事自体が驚きだ。
やはり異常な程デュエルが人気になってるな……
「そう言えば……俺と霊香のデュエルも結構面白かったんだよいや〜まさか霊香があんnふがっ」
「言ったら殴るわよ……! 」
炎山が自分たちのデュエルの様子を話そうと思った矢先、何故か必死な形相で白井が炎山の口を塞いだ。
口どころか鼻まで力強く塞いでおり、呼吸が困難になった炎山が顔を赤くして激しく悶えていた。
「れ、霊香ちゃん!焔さんが死んじゃいますよ!? 」
「流石にそれはヤバいって! 」
花音と河原の2人掛かりで白井を抑え、俺と機羽が炎山の様態を確認すると、どうやら無事なようだった。
「し……死ぬかと思った…… 」
「そこまでして聞かされたくないのか…… 」
いつもクールな白井があんなに取り乱す事なんて無いので、俺の中の好奇心が燻られてしまった。
だが、白井には悪い。俺の中の悪魔を振り飛ばし炎山とのデュエルは聞かないことにしようとしたが……
「んじゃまぁ聞いてくれよ〜霊香がな? 」
「あ……話すのね 」
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炎山と霊香の相手は小さな子供と大人の相手だった。おそらくは親子なのだろう。
炎山達が不知火と魔妖のアンデット族中心に対し、相手は獣族中心のデッキであった。相手が繰り出して来たのはメルフィーであり、つぶらな瞳で炎山達を見つめていた。
「私は"メルフィー・ラビィ"を召喚!ターンエンド! 」
「はぁ!?それだけかよ!? 」
"メルフィー・ラビィ"の攻撃力は0だ。それを伏せカードも何も伏せないでただ攻撃力0のモンスターを攻撃表示のモンスターを出しては、ダイレクトアタックして下さいと言ってるような物だ。
(あの女の子完全に初心者だよな……どうした物か…… )
ここで"メルフィー・ラビィ"に攻撃した方が良いのだが、女の子とラビィはつぶらな瞳で炎山をじっと見ており、謎の罪悪感で攻撃がしづらかった。
霊香に相談しようとチラリと隣の霊香を見ると、何やら様子がおかしかった。"メルフィー・ラビィ"が出た瞬間、その場で固定されたかのように動かなくなり、何より悶絶するように震えていた。
「あ……?おーい霊香〜?なんかあったのk 」
「か……可愛い……! 」
「へ? 」
突然霊香が聞いたことも無い高い声をあげ、まるで目にハートマークがついてるかのように"メルフィー・ラビィ"に夢中になっていた。
それもそのはず、この白井霊香……かなりの可愛もの好きなのである!自室にはかなりの数のぬいぐるみがあり、自作するまでに至り、その数何と数しれず。
そんな子がホログラム上の存在であろうとも、可愛らしい小動物のモンスターを見たら惚れるのは自明の理であった。
「焔!貴方あのモンスターをいじめたら許さないわよ!分かった!? 」
「お前キャラ変わってねえか……? 」
とは言っても、いずれは倒さなければ行けないモンスターなのだから、許そうにも焔の意思は変わらなかった。
「まぁ……勝負だしなぁ……俺は"戦神-不知火"で"メルフィー・ラビィ"に攻撃だ! 」
無慈悲な炎の刀が無垢な兎に襲いかかり、無垢な兎は逃げ場も泣く炎に囲まれた。涙目になった"メルフィー・ラビィ"はもうダメだとうずくまったその時、戦神の頭上に天罰の雷が下った。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!? 」
効果を無効にされて破壊された事からして間違いなく罠カードだが、相手には伏せカードは無い。つまり、伏せカードを発動したのは……霊香だった。
「罠カード、"天罰"。フィールド上のモンスターの効果を無効にして破壊するわ 」
「何しとんじゃお前ぇぇぇぇぇぇぇ!? 」
「あんな可愛い生き物をあんな無慈悲に攻撃する気!? 」
「いやだからって俺の邪魔すんじゃねええええええ!!」
こうして、白井はメルフィーを守る為に焔を妨害し続けたが、相手が初心者&不知火の火力のゴリ押しで何とかなった。
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「まぁこんな感じだ。いや〜まさか霊香があんな可愛いもの好きだったとはな〜 」
「ぐぬぬぬ…… 」
「へ〜霊香ちゃんにそんな趣味があったなんて…… 」
どうや花音にも知らない趣味らしく、秘密を暴露された白井は顔を真っ赤にさせ、拘束を解けば今すぐにでも炎山に襲いかかる勢いだった。
というか炎山……今日を生きられるのだろうか、白井の純粋な殺意が溢れ出てこっちまで怖いんだが。
「そうだ、お前の花音の試合はどうだったんだ? 」
あの殺意を無視する炎山に呆れながらも、俺は第1試合……つまり見下のデュエルを思い出そうとしたが……正直言って思い出しくもないデュエルだった。
相手のパートナーは可哀想だわ、終盤はなんか激情に狩られるわ……それに加えてティアドロップを……
「……エースモンスターを取られた 」
「うわぁ……お前のエースってティアドロップだろ?寝取られじゃん……」
「それを言うな馬鹿が 」
ド直球の言葉を胸を刺されたが、すぐ様機羽がカバーに入り、炎山の頭をチョップで叩いた。
「そう言えば……花衣さんにひとつ気になった事があったんですけど……」
花音の質問に全員が注目し、花音の言葉を待っていた。
気になる事か……恐らくだが終盤のおかしなデュエルの事では無いだろう。終盤でのダメージが現実の痛みへと変わった時の様子を言うと、この場にいる全員に精霊についての秘密をばらすことになる。それとは関係無しな件だと思うけど……何だろうか?
「花衣さん、何故貴方は"六花の誓い"を使わなかったのですか? 」
「え…… 」
「デュエルの中盤、貴方は"六花聖ティアドロップ"を召喚する為に、スノードロップさんとボタンさんを召喚しました。その際、ボタンさんの効果で貴方が加えたカードは"六花深々"です。あの時加えたカードが"六花の誓い"だったら、"六花聖華ティアドロップ"を召喚出来て、もっと楽に勝てたはずです。どうしてでしょうか……? 」
そういう事か……確かに花音の言う通り、"六花聖華ティアドロップ"を召喚すれば、ティアドロップも見下に取られずに済んだのかもしれない。だがそれを使う自分が許せなかった。
「……ずるいって思ったからなんだ。このデッキには、皆が知らない俺だけが知ってるカードがまだある。しかもどれもかなり強力だから……これを振りかざす自分が嫌なんだ 」
下らないプライドなのかもしれない。けど、これを使う自分を想像すると、憎むぐらい卑怯だった。だから俺は、本来のデッキで勝ち抜くことに決めていた。そうしてようやく皆と対等になれると思ったからだ。
「……おい、お前ふざけてるのか 」
突然機羽が俺の胸ぐらを掴み、見た事ない形相で俺を睨んでいた。
「お前よく次の対戦相手にそんな事言えたものだな……!」
「き……機羽? 」
何がなんだか分からないまま胸ぐらをまた強く掴まれると、流石にマズいと思ったのか皆が止めに入った。これを見た六花達はすぐ様機羽をどうにかしようとしたが、それを止めるように俺はデッキケースを強く握った。
「や……やめろ! 」
勿論これは機羽に対しての言葉では無く、暴走手前の六花達を止める言葉だ。六花達もこの言葉の真意に気づき、出ることを止めたが、精霊の存在を知らない機羽にしては、自分に対する言葉だと受け取っていた。
「やめるか馬鹿野郎!いいか、お前がどんなカードを使おうとも、俺は負けない!例え負けても俺は後悔しない!だが……お前が哀れみで全力を出さず、俺が勝っても嬉しくないんだぞ……! 」
「っ……」
俺は機羽に突き放され、気道を取り戻した反動で激しく咳き込んだ。だが木羽はそれを心配せずに鋭い目付きで俺を見下ろしていた。
「次の試合、レゾンのカードを出せ。もしもお前がそれでも出さなかったら……お前との縁を切る 」
「なっ……おい!それはいくらなんでも……! 」
やりすぎでは無いかと言う前に、機羽はその言葉を聞かないようにすぐ様ここから離れ、船内に入ってしまった。
「あ……ま、待ってよ空! 」
河原も機羽を追いかけて船内に入ってしまった。辺りの空気が静寂になり、心無しか氷の冷たさまであるようだ。俺達はその空気に呑まれるようにしばらくの間口を開け無かった。
「……まぁ空の言うことも分からなくはないけどなぁ…… 」
炎山の言う通りだ。機羽の目線からすれば、俺のやってる行為は可哀想だから手加減してやると言った感じの舐めプをしているような物だ。
デュエルを始めたばかりの俺にそんなプイレングは無いし、何より相手への冒涜以外何物でもない。だから機羽を責める権利も無い。
「俺……ちょっと考えてくる 」
心にモヤを消し去るため、俺は一人船内へとさまよった。なるべく人のいない……一人でいられる場所に俺は歩いた。一人でいられるわけが無いのにも関わらず……
「花衣さん……お身体の方は大丈夫ですか? 」
「レイか……うん、大丈夫だよ 」
胸ぐらを掴まれた鈍い痛みももう無いし、痕が残っていることも無い。それでもレイは心配なのか、俺の前に立って喉元をじっくりと見つめた。
「レ……レイ? 」
「動かないでください 」
あまりの近さに1歩下がろうとした途端にレイが俺の顔を掴んで更に顔を近づけた。お互いの息がかかる程近い状態になってしまい、エメラルドのような綺麗な翠色の瞳が眩しくも思えた。
胸の鼓動が早まり、呼吸したいのにも関わらず息が出来なくて苦しい。この時俺は完全に呼吸を忘れてしまい、そろそろ苦しみで体がもがいてしまうその時、満足したのか顔から手を離れさせた。
勢い余って思わず尻もちをついてしまい、我慢した分の酸素を取り込んだ。
「痕は残ってないようですね。痕を残してたらあの男を排除しようと思ってしまいました 」
そう言って満面の笑みで恐ろしい冗談を言ったレイに対して、俺は先程で精神を疲労してしまったのか、あまり反応は出来なかった。
「……お前それ冗談でも言うなよ 」
「冗談?ふふ、そう聞こえましたか……」
「……? 」
どこか意味深な笑いを浮かべたレイだったが、その疑問が吹き飛ぶようにレイは別の話をした。
「そう言えば花衣さん、次のデュエルではあのカードを使うのですか? 」
あのカードというのは何も"六花聖華ティアドロップ"だけではない。このデッキには……"閃刀騎-カイム"と"閃刀騎ラグナロク"のカードも存在していた。
レイの言うことは、そのカードも含まれていた。
カイムのカードに至っては、何故かイラストが変更され、俺と同じ顔の素顔を覆うような黒い仮面を被っていた。まるで過去を知られたくない俺の気持ちが具現化されたような感じだ。何だかカードに心を見透かされているようで気分は良くなかった。
俺は過去の自分である"閃刀騎-カイム"のカードを見つめでも尚、答えを出せずにいた。
「正直……まだ使う事に戸惑っている。やっぱり、俺だけが使えるカードで勝っても、卑怯って思うし、皆も思うって考えると……使いたくは……無い 」
「ですが使わないと絶交されるんですよね? 」
「それは…… 」
機羽の言葉と俺の心が葛藤し、どうすれば良いのか分からずにいた。
「大丈夫ですよ……もし周りが貴方と縁を切っても、私やロゼちゃんがずうっとずうっと……そばにいますからね 」
悪魔のような囁きをしたレイの瞳は……怖いほど澄んでいた。水晶のような目は、心に嘘偽りや間違いなんて無いと言ってるようでもあった。
「俺は……どうすれば良いんだろうな…… 」
縁を切られたくないが為にカードを使えば、間違いなく機羽はそれに気づくだろう。だが俺の変なプライドで勝負を終えたら機羽とはもう……
そうして、結局俺は心の針を抜くこと無く2回戦に挑むことになった。
『只今より、第2回戦第1試合を行います。参加者である"桜雪花衣、咲初花音チーム"と"機羽空、河原雀"はステージに上がってください 』
2回戦からは同時進行では無く、第1試合第2試合と続けて行う。観客ステージには炎山と白井、そして星空と天音ちゃんが見ており、見下はいないが1回戦で負けてしまった者もこのデュエルを見届けていた。
1回戦とは比べ物にならないほどの視線と機羽から襲いかかる激しい視線のプレッシャーが走り、冷たい汗と激しい胸の鼓動が呼吸をさせないようにしていた。
「本気で来いよ……花衣! 」
何も答えが出ないまま、機羽とのデュエルが始まった……
ここまで(〜90話)出てきたレゾンカードの中で強いと思うのは?
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六花聖華ティアドロップ、カイリ
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閃刀騎-カイムと閃刀騎-ラグナロク
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銀河心眼の光子竜
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RRRリノベイルイグニッションファルコン
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炎転生遺物-不知火の太刀
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常闇の颶風