六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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はい、約2ヶ月ぶりの投稿です……

やはりデュエル描写は時間がかかりますね……と言ってもこのもけもけ並のゆる遅さはさすがにアレですが。

さて、今回はこちらのオリジナルカード、いわゆるレゾンカードが2枚登場します。
果たしてこのカードが以下にして影響するのか……是非お楽しみください!


可憐さと煌びやかさ

星空の中2匹の龍が満点の夜空に向けて咆哮をあげ、白銀の装甲を纏った戦士が剣を構えて、まるで絵本の中の勇者と伝説の龍の対決のようだ。

 

今フィールドには俺の"閃刀騎-カイム"と星空の"銀河眼の光子卿"と"No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー"が存在する。

 

これにより、1ターンに1度だけだが花音の魔法とモンスターの効果は無効にされてしまうかなり厄介な状況だ。

 

「私のターンです。私はフィールド"白薔薇の回廊"を設置して効果を…… 」

 

「悪いが出鼻をくじかせて貰う。"タイタニック・ギャラクシー"の効果を発動し、"白薔薇の回廊"の発動を無効にし、エクシーズ素材にする 」

 

突如地面から白薔薇が咲き誇ると思った矢先、タイタニック・ギャラクシーの眩い閃光がまるで太陽の光の熱さを持っているかのように白薔薇が枯れてしまい、タイタニック・ギャラクシーの周囲にあるエクシーズ素材が1つ増えてしまった。

 

「ま、まだです!私は"イービル・ソーン"を通常召喚!そしてリリースすることで相手に300のダメージを与えます!私がダメージを与えるのは、星空さんです! 」

 

「残念だが、"銀河眼の光子卿"は墓地で発動する効果も無効にする。"イービル・ソーン"の効果も無効にさせて貰う 」

 

効果を発動させまいと"銀河眼の光子卿"の持つ槍が無慈悲にも"イービル・ソーン"に突き刺さり、効果も発動出来ないまま消えてしまった。いきなり出鼻をくじかれてしまい、打つ手無しかと思いきや花音にはまだ打つ手があった。

 

「だったらこれです!私は魔法カード"予想GUI"を発動!デッキからレベル4以下の通常モンスターを一体特殊召喚します! 」

 

「そのカードを入れてるのか……やる……! 」

 

『おおっとこれはまさに予想外のカード!星空選手してやられたかー!? 』

 

「私はデッキからレベル1の"聖種の地霊"を特殊召喚します 」

 

フィールドには、モンスターというよりかはなにかの種を掲げるような像が表れ、その掲げられている種は何やら少し不気味な雰囲気を漂わせていた。

 

……いや、気のせいだ。あれが不気味なのは『遊戯王VRAINS』で登場したある人物のせいだ。

 

 

聖種の地霊

植物族/レベル1/ATK0/DEF600

 

「ふん!何かと思えば攻撃力0で何の効果も持たないカードですわね! 」

 

「カレン、攻撃力だけ見てるといつか足元をすくわれるぞ 」

 

その通り、むしろ遊戯王は攻撃力が低いから注意が必要だ。例え攻撃力が少なくとも、1つ1つが導火線のように火が辿り、いつか爆弾まで届く事が出来れば驚異となるのだから。

 

「私は、"聖種の地霊"を素材にリンク召喚!召喚条件はレベル4以下の植物族モンスター一体!来てください!"聖天樹の幼精(サンアヴァロン・ドリュアス)!"」

 

リンク召喚をした瞬間、聖種の地霊の中から無数の枝が生まれ、そこに根付くように地面をえぐり、徐々に幹に、枝に、そしてその枝から若葉が生まれ、枝からさらに大きな房が生まれ、いつしか巨大な木へと変貌した。

 

聖天樹の幼精

植物族/リンク1/ATK0

 

「"聖天樹の幼精"が"聖種の地霊"を素材にリンク召喚した時、私はデッキから"サンヴァイン魔法・罠カードを1枚手札に加えます。私は永続魔法の"聖蔓の社"を加えます 」

 

「お〜!花音やるね〜!"サンアヴァロン"リンクモンスターの共通効果には、ダメージを受けた時にその分回復する効果もあるからアロマと相性も良いし、安心だね! 」

 

「いや、このままじゃ状況は悪くなる一方だ 」

 

「へ?どうして空? 」

 

「"サンアヴァロン"のその効果は誘発効果だ。しかもあの彼方の場にはモンスター効果を無効にする"銀河眼の光子卿"がいる。あれがある限り、サンアヴァロンのライフ回復効果は無効にされ、最悪ワンターンキルを受けてしまう 」

 

「しかもあいつの場にはタイタニック・ギャラクシーがいるから魔法が1回使えないからな〜。罠で何とかするか、花衣がどうにかするか方法がねぇぞこれ 」

 

炎山と機羽の言う通りだ。星空のモンスターをどうにかしなければ、俺達は手も足も出ずにいる。しかも俺の伏せカードは"閃刀術式-アフターバーナー"と"閃刀機-ウィンドアンカー"だ。どちらも魔法カードであり、この2枚を上手く使えばあの2体のモンスターをどうにかするのは可能だが、その前に宝石のターンがある。

何とかしてこの2枚は守りたい所だが……どう来る?

 

「私は先程手札に加えた永続魔法"聖蔓の社"を発動します。自分フィールドに"サンアバロン"モンスターが存在する時、手札を一枚捨てる事で墓地のレベル4以下の植物族通常モンスターを特殊召喚します。私は"アロマージ・ローリエ"を捨てて"聖種の地霊"を墓地から特殊召喚します 」

 

これで花音の場には、植物族モンスターが2体。一応アロマセラフィー・ジャスミン"の召喚条件は達成している。そして、花音が墓地に捨てたカードである"アロマージ・ローリエ"は墓地に行かれた時にライフを500回復する効果がある。上手い使い方だ。

 

咲初花音 残りライフ4000→4500

 

「私は"聖種の地霊"と"聖天樹の幼精"でリンク召喚!召喚条件は"サンアバロン"リンクモンスターを含む植物族モンスター2体!私は"聖天樹の精霊(サンアバロン・ドリュアデス)"を召喚! 」

 

聖天樹の幼精がまた大きくなり始め、生い茂る枝と若葉も増え、幹の中心部からひっそりとこちらを覗く顔が見え隠れしだした。やはりこのモンスターはどことなく不気味だ……心做しかこちらを見て不気味に笑っているようにも見えた。

 

 

聖天樹の精霊

植物族/リンク2/ATK0

 

「私は、カードを1枚伏せてターンエン…… 」

 

「ちょっと待った。ここで俺は、"銀河の光子卿"の効果を発動する。相手ターンに、こいつはデッキから"フォトン"か"ギャラクシー"カードを一枚手札に加えられるか、エクシーズ素材にする事が出来る。俺は"銀河騎士"を手札に加える 」

 

「私からはこれ以上何もありません。ターンエンドです 」

 

花音のターンが終わり、花音にはもう手札が無くなってしまった。"聖天樹の精霊"の効果で、戦闘ダメージはライフ回復になるが、それも無効にされたら花音は終わりだ。

 

「ふふ、とうとう私のターンですわ!さぁ、私の煌びやかなモンスター達よ!花音さんに美しさを見せつけるのですわ!まずは永続魔法"宝玉の樹"を設置し、私は"宝玉獣サファイア・ペガサス"を召喚! 」

 

フィールドに現れたのはペガサスのモンスター……では無く、深い青色に輝くサファイアだった。そのサファイアに亀裂が走り、その亀裂の隙間から光が溢れると同時にサファイアが砕け、サファイア・ペガサスがフィールド上に表れた。

 

宝玉獣サファイア・ペガサス

レベル4/獣族/風属性/ATK1800/DEF1200

 

「サファイア・ペガサスが召喚された時、手札、デッキ、墓地のいずれかから"宝玉獣"モンスターを魔法・罠ゾーンに設置しますわ。私は"宝玉獣トパーズ・タイガー"を設置! 」

 

今度は琥珀色のような宝石、トパーズがフィールド上に表れた。しかし今度はモンスターが出てくる気配が無く、単なる宝石としてフィールドに残っていた。

 

「更に、"宝玉の樹"の効果発動。私の魔法・罠ゾーンに宝玉が置かれた時、ジェムカウンターをひとつ乗せますわ 」

 

宝石の背後にそびえ立つ樹の枝から虹色に輝く小さな宝石を生み出した。

 

「更に私は魔法カード"宝玉の絆"を発動。デッキから"宝玉獣"と名のつく異なるモンスターをそれぞれデッキからフィールドと魔法・罠ゾーンに起きます。私は、フィールドに"宝玉獣ーエメラルド・タートル"、魔法・罠ゾーンに"宝玉獣ーアンバー・マンモス"をセット! 」

 

これでフィールド上には4つの宝玉が集まった。着々と宝玉が進む中、ここで警戒するべきはやはりあのモンスター……"究極宝玉神レインボードラゴン"だ。

 

確かあのカードは、"宝玉獣"カードが7種類無いと召喚出来ないカードだ。今は4種類……ここであと3種類揃うとなると厳しそうだが……?

 

「宝玉が置かれたことにより、更にジェムカウンターを1つ。これで宝石の樹には2つのジェムカウンターが乗りましたわ 」

 

ふと宝石がそんなことを呟くと、ビシッと花音の方に力強く指を指した。

 

「花音さん、貴方が華やかな植物を見せるのなら……私は煌びやかな宝石の輝きを見せつけますわ!私は"宝玉の樹"を墓地に送ることで、もうひとつの効果を発動させますわ! 」

 

宝玉の樹を墓地に送った瞬間、枝に2つの宝石が実った樹に亀裂が走り、樹は宝石を残してまるで石のように砕け、その破片の一つ一つが輝きながら散っていった。

 

その破片の輝きに皆は一瞬で心を惹かれ、宝石のきらびやかさに見惚れた。

 

「"宝玉の樹"を墓地に送ることで、ジェムカウンターの数だけデッキから"宝玉獣"を魔法・罠ゾーンに設置できます。カウンターは2つ置かれたので、デッキから"宝玉獣ーコバルト・イーグル"と"宝玉獣ーアメジスト・キャット"をセット! 」

 

『おおっと1ターンにいきなり宝玉を6つも設置!これであのレインボードラゴンの召喚条件をあと1種類で満たせます! 』

 

「まだですわ!更に私は魔法カード"レア・ヴァルュー"を発動!相手に魔法・罠ゾーンにある宝玉を一枚選ばせて、それを墓地に送った後私はカードを2枚ドローします。さぁ花音さん、好きな宝玉を選ぶのですわ! 」

 

「え?ええと……どれにしましょうか…… 」

 

今魔法・罠ゾーンにある宝玉は"コバルト"と"アメジスト"と"トパーズ"とアンバー"の4つだ。

正直どの宝石を選んでもこの先の展開は変わらないだろう。今現状で宝石の手札は1枚だけだ。宝石からすれば、なんとしてでも手札を増やしたいところだ。

 

「じゃあ……アンバーでお願いします 」

 

指定された太陽の光のような琥珀色を持つアンバーがひび割れて壊れると、宝石はそれと同時にカードを2枚ドローした。

 

『因みに、アンバーの石言葉は大きな愛があるそうです! 』

 

大きな愛と聞いた瞬間、何故か視線が集まるのを感じた。多分六花達なんだろうけどあまり気にしないでおこう。……なんか横からも視線を感じるけど気にしないでおこう。うん、そうしよう。

 

「ふふ、来ましたわ!私は魔法カード"宝玉の導き"を発動!フィールドに宝玉が2つ以上存在する時、デッキから"宝玉獣"を一体特殊召喚します! 」

 

「しまった……! 」

 

「さぁ来なさい!"宝玉獣ールビー・カーバンクル"! 」

 

美しい紅色のルビーから、伝説上の生き物であるカーバンクルが登場した。カーバンクルはフィールド自体にはたつことなく、宝石の肩に乗って甘えるように宝石の頬に擦り寄っているようでもあった。

 

宝玉獣ールビー・カーバンクル

レベル3/天使族/光属性/ATK300/DEF300

 

『これでフィールドと墓地を合わせると宝玉の数は7つ!これは来るか!?来てしまうのか!? 』

 

「まだまだですわ。"宝玉獣ールビー・カーバンクル"が召喚されたことにより、魔法・罠ゾーンに置かれている宝玉獣を可能な限り特殊召喚します!来なさい!コバルト、アメジスト! 」

 

カーバンクルが小さな雄叫びをあげると、アメジストとコバルトの宝玉が砕けたり、"コバルト・イーグル"と"アメジスト・キャット"がフィールド上に降り立った。

 

宝石の魔法・罠ゾーンにある宝玉は全部で3枚だったが、宝石のフィールドには既に"サファイア・ペガサス"と"エメラルド・タートル"そして"ルビー・カーバンクル"がいたので2体までしか召喚出来ず、魔法・罠ゾーンには"トパーズ・タイガー"が残っていた。

 

「更に、私は"強欲で貪欲な壺"を発動。私はデッキから10枚裏側除外した後、カードを2枚ドロー。そして、魔法カード、サイクロンを発動。私はフィールドのトパーズを破壊!」

 

これで手札は1枚……そして墓地とフィールドには7種の宝玉を持つモンスターがいる……来るか……!

 

「私は魔法カード"龍の鏡(ドラゴンズミラー)"を発動!自分のフィールド・墓地から、ドラゴン族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚しますわ!私はフィールドと墓地の"宝玉獣"を除外! 」

 

フィールドと墓地の全ての宝玉獣が形を変えて宝玉の姿になると、7色の宝玉から光が溢れた。

溢れた光が輝く虹色となり、その虹の向こう側から龍の姿が見え隠れした。

 

白く、長く、そして煌びやかな輝きと共に究極宝玉神がここに降臨した。

 

「さぁ来なさい!"究極宝玉神ーレインボー・オーバー・ドラゴン"!! 」

 

究極宝玉神ーレインボー・オーバー・ドラゴン

レベル10/融合/ドラゴン族/光属性/ATK4000/DEF0

 

『こ、これはぁ!1ターンでまさかの宝玉神を超える究極の宝玉神、レインボー・オーバー・ドラゴンが誕生したぁぁ! 』

 

「おーほっほっほ!流石はソリッドビジョンですわ!まさに私が求めていた煌びやかな輝きですわ〜! 」

 

「攻撃力4000って……一撃でやられてしまうじゃないですか! 」

 

「でも、まだ攻撃が出来るわけじゃない。大丈夫な筈だ…… 」

 

「それはどうでしょうか?レインボー・オーバー・ドラゴンの効果発動。このカードをリリースする事で、相手フィールドのカードを全てデッキに戻します! 」

 

「デッキに!? 」

レインボー・ドラゴンの体から眩い7色の光が溢れだそうとしており、この効果が通れば確実に負ける……!

 

「俺は速攻魔法"閃刀機ーウィンドアンカー"を発動!レインボー・ドラゴンの効果を無効…… 」

 

「俺はタイタニック・ギャラクシーの効果発動。相手の魔法カードの発動を無効にする 」

 

「くそっ……! 」

 

「更に俺は伏せカード、"タキオン・ギャラクシースパイラル"を発動!"銀河眼の光子卿"を対象に、対象になったモンスターは他の効果を受けない 」

 

俺が発動したウィンドアンカーも、タイタニック・ギャラクシーによって不発に終わってしまい、それによってレインボードラゴンの効果は発動される。

7色の光がフィールドを覆うと、俺のラグナロクと花音の"聖天樹の精霊"が光に飲み込まれた。

 

あまりの眩しさに目を伏せ、あとからゆっくりと目を開けると、俺たちの場はまるで初めから何も無かったかのようにガラ空きになった。

 

『こ、これは花衣選手達かなり絶望的な状況だ!フィールドがガラ空きになり、花音選手に至っては手札もありません! 』

 

だが、レインボードラゴンの効果は全てのプレイヤーに対してのものだ。

それを察知した星空は"銀河眼の光子卿"を守ったが、"タイタニック・ギャラクシー"を失った。

 

「うぅ……これじゃあ何も出来ません…… 」

 

「私はこれでターンエンドですわ 」

 

『さぁ、次は花衣選手のターンですが、彼方選手の場にはモンスターの効果を無効にする"銀河眼の光子卿"がいます!ここを乗り切れなければ、ガラ空きになっている花音選手のライフが尽きてしまいます! 』

 

確かに、もし俺が何とかしなければ、真っ先に狙われるのはガラ空きの花音の方だ。ライフも削れない中で、いきなり花音を失うと勝機が無くなってしまう。

何としてでも、このターンであのモンスターをどうにかしなくてはならない。

 

(……行けるのか?俺に…… )

 

いや、やるしか無いんだ。ここで勝つにはここを乗り切れなければならないんだ。

 

「俺の……ターン! 」

 

俺のドローカードは……"強欲で貪欲な壺"だった。このカードは、自分のデッキを上から10枚裏側除外した後デッキから2枚ドローできるカードだ。

だが、除外されたカードによっては、俺の敗北が濃厚になるかもしれない。だが、現時点でこの状況を打破できるカードは無い。……やるしかない。

 

「俺は……"強欲で貪欲な壺"を発動。デッキを10枚除外し、カードを2枚ドローする 」

 

「ちょっと待った。それにチェーンして先に"銀河眼の光子卿"の効果で、デッキから"銀河眼の光子龍"を手札に加える 」

 

「分かった…… 」

 

星空がデッキから2枚目の"銀河眼の光子龍"が手札に加えられると、デュエルディスクのデッキを除外ゾーンに送る。

 

デッキからカードを力強く引き、俺は指先から何やらぞわりとした感覚が腕に纏わりつき、伸びる枝のように体に伝わってきた。ゆっくりとドローカードを確認すると、俺の手には"ワンフォーワン"と"暗黒世界ーシャドウディストピア"があった。

特に、ディストピアがやけに異様な雰囲気を放っていた。

 

(何なんだこのカード……! )

 

このカードだけ明らかに違う雰囲気が漂い、無意識に手が震え、今でも投げ捨てたい程に嫌な感触がする。

でもそれが出来ないでいた。まるで、カードから見えない枝が腕に巻き付けられ、俺から離れないように、カードがそうしているようでもあった。

 

【闇を…… 】

 

突然何かの声が聞こえた。まるで喉が潰されたかのような掠れた声に、何か憎悪がこもった重い言葉が俺の耳を通して頭の中に響いてくる。

 

それ以外何も聞こえず、何も感じられず、何も見えず、何も得られず、何も……無かった。ただ俺の目の前には、真っ暗で光すら届かない暗くて、冷たくて……懐かしい場所だった。

 

「……花衣……さん? 」

 

「俺は……フィールド魔法"暗黒世界ーシャドウディストピア"を設置する 」

 

フィールド魔法にディストピアを設置すると、辺り一面が枯れた木々が生い茂り、空は夜も深い黒い空に覆われた。光も届かぬこの世界で、ここにいる奴らはその闇を恐れた。

 

「なんだこれ……これ、本当にソリッドビジョン……だよな? 」

 

「でもこの感じ……本当にARなの? 」

 

辺りはざわめき、シミが広がるカーペットのように不安は蝕んでいく。ざわめく声は徐々に上がり、それは【我】の賛美でもあった。

 

「……花衣君、一体どうした?何か様子がおかしいぞ 」

 

おかしいって何だ?俺は至って普通だ。普通にデュエルして、普通にやって……普通にデュエルして……

あれ、普通って……なんだっけ……

 

「俺は"六花のひとひら"を召喚する 」

 

暗い世界で小さな花が咲き、その蕾からひとひらが登場したが、どこか様子がおかしい。俺の事を心配するような素振りを見せるが、今はそんな事どうでもよかった。

 

「俺は手札の"閃刀術式ージャミングウェーブ"を捨て、魔法カード"超融合"を発動。お前の"銀河眼の光子卿"と"ひとひら"を素材とし、融合召喚する! 」

 

「超融合……だと! ?」

 

「そうだ、このカードに対してお前は何の効果も発動する事は出来ない! 」

 

海の上からなのか、突然冷たい海風が吹き荒れると同時にソリッドビジョンで作られた黒い穴が上空に生まれた。"銀河眼の光子卿"と"六花のひとひら"はその穴に飲み込まれまいと踏ん張っていたが、その力も虚しく穴に吸い込まれてしまう。

 

「シャドウディストピアによってこの2体のモンスターの属性は闇属性!そして、俺が呼び出すモンスターの融合条件は、トークン以外の闇属性モンスター2体! 」

 

輝く星の光はあの暗い闇で失われ、2体のモンスターは毒々しくも美しい龍へと変貌した。体に付いた赤と黄色の玉が暗い場所を鈍く灯し、飢えた牙を持つ毒龍は、獲物を求めるように闇の中からその姿を表した。

 

「来い!"スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン"!!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン

レベル8/闇属性/融合/ドラゴン族/ATK2800/DEF2000

 

スターヴヴェノムがこの場所を待ち侘びたのか、フィールドに降り立った瞬間咆哮を上げ、その咆哮によって暗かった周りが吹き飛ぶように消えた。

 

あまりの不穏な演出でこの場の物は声を発せず、ただこの毒龍の姿を見ることしか出来なかった。

 

「ひっ……あのお兄ちゃん……怖い……! 」

 

「大丈夫よ天音ちゃん。……それにしても花衣、どうしたのかしら…… 」

 

「あぁ……大丈夫なのか?花衣…… 」

 

「俺はカードを……2枚……伏せてターンエンド 」

 

スターヴ・ヴェノムを出したのは良いが、そのせいで俺はひとひらの効果やスノードロップの効果が使えず何も出来ずにいる。だが、残りの手札には最初のターンにドローした罠カードがある為、まぁ何かしらの対策は出来るだろう。まぁ最も、次はあいつのターンだ。手札は4枚……どうでるか。

 

「……君の様子を見てはいたけど、どうした花衣君。まるで人が変わったかのように感じるぞ 」

 

「人が変わった?何を言うかと思えば…… 」

 

「まだ会って間もない俺が言うのも何だが……君らしくはないと思うぞ 」

 

「あんたに俺の何が分かるんだ? 」

 

「分からないさ。だけど……少し嫌な予感がするというのは分かるけどね 」

 

そう言ってアイツはデッキの上から一枚のカードを引き、ドローカードを見つめた。

 

「そして、その印象……第1試合とよく似ている。まるで君では無い誰かと戦ってる感じだ 」

 

「何を……言って……い……る! 」

 

胸が苦しい。息が苦しい。まるで俺の中で誰かが暴れているかのように身体中が苦しい。暴れ出す何かを抑えるように胸を抑え、その苦しさに耐えるように歯を食いしばり、目を血ばらせる。

 

「っ………あぁ! 」

頭が割れるような激痛に耐えきれず、右足の膝を地面につかせて頭を抱えた。割れそうな頭を抑えるように力強く抑え、食いしばった歯が鈍い音を出し、血が出そうな程更に強く食いしばった。

 

「花衣さん!? 」

 

「花衣君!大丈夫か!? 」

 

「おい花衣!?どうした! 」

 

隣の花音の声や対面の星空さんの声、そして周りにいる炎山達の声が頭に響く。俺の苦しむ姿に観客達もざわめき始めた。

 

声が頭の中で反響しているように皆の声が次々と聞こえ、その心配の声が逆に苦しさを加速させる。入り交じった声が耳から頭に伝わり、いつしか俺は耳を塞いで何も聞こえないようにしていた。

 

「俺は……俺は……!」

 

『花衣様!』『花衣さん! 』

 

入り交じる荒波のように声が聞こえてくる中、はっきりと声が聞こえた。凛とした声や、まだ年端もいかない子の声等が次々と耳から頭へと入ってはいたが、気分を害するようなことは無かった。むしろなんだか落ち着くような感じだ。

 

その時、服の胸ポケットから1つの髪飾りが落ちてしまい、金属音と地面の衝突した音が耳に届き、ふと目に映った右手首の腕輪と右手の小指にある指輪に目を向けた。

 

ボタンとエリカの花に型どられた髪飾り、プリムとシクラメンの花々がつけられた腕輪に、氷の花模様が掘られた指輪、それらを見た瞬間苦しさが少し和らげられた。

 

「っ……はぁ……!はぁ……! 」

 

暗い闇底から何とか這い上がったかのように意識を取り戻し、荒い息を繰り返して地面に落ちた髪飾りを拾う。

 

『花衣選手、どうしましたか?どこか体が優れないでしょうか? 』

 

「あ……いえ、大丈夫です…… 」

 

力強く立ち上がり、何とかデュエルは再開出来そうだが、まだ意識は朦朧としている。大丈夫とは言ったが、7割程大丈夫では無い。

 

「……本当にいいんだね?花衣君 」

 

「折角の決勝戦を……っぁ、俺の身勝手な不良で止める訳には……行きませんから……! 」

 

強がりには聞こえるが、これは俺の本心でもある。何より、ここまで来たなら勝ちたいというプライドが俺を動かしていた。

 

「そうか……だけど手加減はしない。俺は俺の全力を持って君達に勝つ 」

 

星空はそう言って、1枚のカードをデュエルディスクにセットした。

 

「俺は儀式魔法"星雲の集い"を発動! 」

 

「"星雲の……集い"?」

 

見た事も聞いた事も無いカードに誰しもが戸惑ったが、デュエルディスクはちゃんとそのカードを認識し、フィールドにはその魔法カードが映し出された。

それを意味することは、1つしか無かった。

 

『こ、このカードはもしや……レゾンカードか!? 』

 

「そう、花衣君、レゾンカードを持ってるのは君だけじゃないというのは話した筈だ。今からそれを見せてやる! 」

 

急に空には青く光る星雲が浮かび、その星雲が渦巻いて中心には何かの影があった。その影は星のように輝く目を持っており、じっとこちらを覗いていた。

 

「"星雲の集い"は儀式魔法だ。俺は"銀河眼の光子龍"と"銀河騎士"をリリースする事で俺は手札のこのモンスターを特殊召喚する 」

 

確かあのカード達は……どっちも"銀河眼の光子卿"の効果で手札に加えたカードだ。まさか……この時の為に補充していたのか?

 

「これが、"銀河眼"を超える"銀河眼"だ!存分に見てくれ!俺の魂とも言えるモンスターを! 」

 

天高く指を指した星空に応えるように星雲は動き出し、その向こう側の影が動き出した。2本の前足に2本の後ろ足、体がまるで宇宙を取り込んでいるかのように暗くも輝いていた。

 

「降臨せよ!"|銀河心眼の光子龍"《コズミックアイズ・ギャラクシー・フォトン・ドラゴン》!! 」

 

猛々しくも、星の輝きを持った龍が、シャドウディストピアの闇を払い、辺りに星の輝きを与えた。

 

観客達はその輝きに心奪われたかのように惹かれたが、夜を照らすこの星の光が今の俺には何よりも恐ろしく思えた。

ここまで(〜90話)出てきたレゾンカードの中で強いと思うのは?

  • 六花聖華ティアドロップ、カイリ
  • 閃刀騎-カイムと閃刀騎-ラグナロク
  • 銀河心眼の光子竜
  • RRRリノベイルイグニッションファルコン
  • 炎転生遺物-不知火の太刀
  • 常闇の颶風
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