六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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こんにちは!雪が振ってるとの事ですか私の地域では雪は降っていません!

さて、今回は新しいキャラ……という訳でも無いですが、新たなキャラが登場します!
細かな事は後書きで書きますので良かったら是非……!


迫る蝕み

「この世界が……精霊たちの世界と繋がってる……? 」

 

レイからその事実を受け取った俺は、頭の中で追いつけないほどの情報量に飲み込まれつつあった。

 

確かに、この世界は少し変にはなりつつあるけど……いくらなんでも精霊世界と繋がるのはスケールが違いすぎる。

 

「……本当なのか? 」

 

「確定はしていません。ですが、私達の世界と似た空気が混じっているので、その可能性は否定できません 」

 

「原因は……? 」

 

「不明よ。こればかりはメルフィーから話を聞かないと分からない 」

 

話を聞くにしても……相手は動物だぞ……どうやって意思疎通すれば良いんだ?いやそもそも何で世界が繋がろとしているんだ?

 

あまりの情報量にレイ達の手を解くようにパンクしそうな頭を抱えた。頭を抱えながら足元を見たせいでようやく気づいたが、俺の足元には複数のうさぎ集まっていた。白いうさぎや灰色のうさぎ、茶色のうさぎやら色んな毛の色のうさぎが俺の所にあつまり、何やら訴えるようなくりんとした目でじっと見つめていた。

 

「え?なにこれ?なにこれ? 」

 

数十匹は軽く超える数に俺は困惑し、レイとロゼもあまりの数に困惑していた。

 

「な、何ですかこのうさぎ達!? 」

 

「……可愛い 」

 

「へぇ〜ロゼちゃんそんな顔するんだね 」

 

確かに、今のロゼの顔は緩みまくっており、なかなか見られない顔だった。直ぐに我に返ったロゼはマフラーと軍帽で自分の顔を隠し、俺とレイにそっぽをむいてしまった。

 

いや、それよりもこのうさぎの大群は何なんだ?なんか俺の方を見ているような気がするけど……あ、もしかして……この人参スティックか?試しに人参スティックを1本差し出すと1匹のうさぎが物凄い勢いでカリカリと人参を食べており、まるで鉛筆削りの如く長い人参が無くなった。

 

「なるほど、これか…… 」

 

ここに来たうさぎ達は全員この人参スティックが目当てらしい。そうと分かれば話は早い。俺はもう一本スティックを別のうさぎに与えた後、さらにもう一本別のうさぎに与えた。しかし、これでは数が足りない。こうなったらまた飼育員さんから追加で貰おうかと考えたが、うさぎの大群の後ろに誰かいた。

白いゴシップ調なドレスを来ており、体も小さい。ストレナエ達と同じぐらい小さな女の子だった。

 

女の子は俺に興味を持つように見つめると、うさぎの大群に混じって俺の事を見つめてきた。

 

「へぇ〜お兄ちゃん、こんなにうさぎちゃん達にかこまれるなんて、優しい人なんだね 」

 

「え、ええと……いや、多分この人参スティックがあるからだとは思うけど…… 」

 

「そんなの誰でも持ってるよ?だけど、このうさぎちゃん達はお兄ちゃんから貰いたいらしいよ。うさぎちゃんは警戒心がとっても強いから、餌を持っても中々来ないの。でも、お兄ちゃんからは安心するからみんな来てるんだよ 」

 

小さな女の子が自信満々にそう言ってくれると、嘘でも嬉しいものだ。

 

「ええと……君は誰かな。多分初対面だとは思うけど 」

 

「私?私は兎乃心咲(うさぎのみみ)!兎の耳って覚えてね 」

 

少女は自分の手をうさぎの耳のように頭に乗せるとぴょんぴょんと可愛らしく跳ねた。あっちが自己紹介したのなら、こっちも自己紹介すべきだろう。

 

「俺は…… 」

 

「知ってるよ。花の衣って呼んで、かい。花衣お兄ちゃんでしょ? 」

 

「なっ……なんで? 」

 

「だって、昨日のロマンス・タッグデュエルにいたよ?私もそこにいたもん 」

 

この子……昨日のロマンス・タッグデュエルの出場者だったのか。……まて、そう言えば炎山が確かメルフィーを使ってた小さな女の子とデュエルしたって言ってたな。特徴とか一致してるし……間違いはないだろう。

 

「昨日は凄かったよー!綺麗な女の人もいて〜良かった! 」

 

「あはは、ありがとう。負けちゃったけどね…… 」

 

「それでも凄かったよ! 」

 

心咲ちゃんの明るい笑顔に負けの悔しさが少し薄れ、やはり子供の笑顔には適わないと俺は少し笑った。

 

「ねぇねぇ、隣の2人はなーに?花衣お兄ちゃんの彼女? 」

 

「いやこいつらは…… 」

 

「彼女です」「彼女よ」

 

息のあった淀みない……いや淀みがありまくっている返答に関心しながらと違うと否定し、心咲ちゃんは少し困惑していた。

 

しかし2人か……レイとロゼは存在ごとこちらの世界に来てるから誰でも見えるが、俺の膝の上にいるシクランはそうでは無い。どうや、心咲ちゃんには精霊が見えないらしい。

 

「あれ?でも彼女って普通1人だよね?お兄ちゃんってうわきしょーって奴? 」

 

「ぐはっ……! 」

 

こんな子供に浮気性と呼ばれると流石に応え、今まで以上に胸にダイレクトアタックを受けた。しかも純粋無垢で真っ直ぐに言われると余計に傷つくなこれ……

 

「うわきはだめってテレビで言ってたよ?お兄ちゃんって優しいのに悪い人なの? 」

 

「ごばっ……! 」

 

まさかの追い討ちに俺は前尽きるように真っ白になって座り、そのまま微動だにしなかった。

 

「か、花衣さん!?戻ってきて下さぁぁい!! 」

 

『花衣君!?どどど、どうしよう……! 』

 

レイの叫びでうさぎ達は逃げ、なんかシクランが焦りながら俺の体をゆさっていたが、体格差のせいで俺の体は微動だにしなかった。

 

「いや……大丈夫……ちょっとショックを受けただけ…… 」

 

多分ライフポイントが可視化されれば俺のライフポイントは風前の灯火の数値だろう。

 

「……やっぱり俺って最低な男なのかな 」

 

「花衣さんは素敵な人ですよ! 」

 

「そうよ花衣、あなたは素晴らしい人。私を助けてくれた人よ 」

 

『花衣君はとっても優しいよ!だから気にしちゃダメ……! 』

 

皆のフォローが暖かすぎる……!思わず涙が出そうになって自分の不甲斐なさが身に染みる……!歓喜で悶絶している所をストレナエとプリムが遊び疲れたのかこちらに戻ってくると、何やら俺達がやってる事に興味を持っていた。

 

『ん?何何?花衣君の良いところを言ってるの〜?だったら私得意だよ!えっとね、優しくて〜カッコよくて〜お菓子とかくれたりとかして〜 』

『私もやる〜!花衣君はね、私達の事を考えてくれてるから好き! 』

 

(んん……恥ずかしいな )

 

きっと他意も無く純粋な答えなんだろうけど、それゆえに恥ずかしい。しかも好きとかストレートでこっちに向けて言うもんだから何かとこそばゆい。

ストレナエ達にも関わらず、ほかの六花達からも言われてるから言われてはいるがどうしても慣れない。夏の暑さも相まってか顔が沸騰したように熱い。

 

「あれ?お兄ちゃん顔赤いよ?どうしたの? 」

 

「うぇ!?い、いや〜やっぱり夏だから暑くて!いや〜暑くて汗かいちゃった! 」

 

『わっ!本当だ!まるでこのうさぎのように赤いよ!あれ?ピンクかな? 』

 

ストレナエが1匹のうさぎを抱きかかえて俺に見せると、そこにはピンク色のうさぎがいた。耳の裏の毛皮が青く、首には水色の毛でハート型が描かれてとても愛らしいフォルムだなと思い…………ん?

 

俺はもう一度ストレナエが抱きかかえているうさぎを見つめる。全身桃色の毛色で耳の裏側が水色で首には水色のハート型で…………

 

「……なぁ、皆あのうさぎって……… 」

 

「……【メルフィーラビィ】ですね 」

 

『へ?あ!本当だ!これモンスターだ! 』

 

まさかのストレナエ本人が大声を上げながら驚くと、それにびっくりした【メルフィーラビィ】がストレナエの腕の中でじたばたと暴れると、ストレナエは思わず腕を離し、ラビィは全速力で逃げていった。

 

「皆、追いかけるぞ!多分逃げた先に何かある! 」

 

「了解! 」

 

「わかった 」

 

レイとロゼが先行してラビィを追いかけ、俺はストレナエ達をカードに戻してベンチから立ち上がり、後を追うとしたが、心咲ちゃんに止められた。

 

「え?何で2人とも飛び出したの?ねぇねぇもう行くの?もう少しだけうさぎちゃん達と遊ぼうよ〜 」

 

心咲ちゃんが俺のズボンを引っ張って止めるが、ラビィを無視する訳には行かない。推測に過ぎないが、恐らくラビィ達が住み着いている家か場所がこのどこかにあり、それがこの世界と精霊世界が繋がっている答えがある筈だ。ここでラビィを見失えば、また姿を見せてくれるかも分からない。もしも姿が見せられずに立ち回れると捜索が困難になる。

 

そつなってしまえば、この世界と精霊の世界の繋がりの謎が解明出来ずじまいになる。

だからこそ、このチャンスを逃す訳には行かない。

 

「ごめんね……でも後で絶対に遊ぶから! 」

 

「……うん、分かった 」

 

ちょっと罪悪感を抱えながら俺はレイ達の後を追いかけた。途中母さんの所にもより、母さんに一声をかけた。

 

「母さんごめん!少し用事が出来た! 」

 

「へ!?ちょっと花衣!? 」

 

困惑していた母さんを俺はほっぽり出すようにラビィ達を追いかけ、母さんは置いてけぼりを食らったせいで開いた口が塞がっていなかった。申し訳ないと噛み締めているが、今はそんな感情に浸ってる場合じゃない。

 

もしもだ、この世界がもしも精霊世界と繋がりを保ち、いずれか入り交じるようになればこの世界はあっという間に精霊の世界に成り代わる。そうなってしまえば……この世界に生きている人間や生物はどうなる?規模は分からないが、最悪絶滅する事だって起きうる。

 

そんなことは絶対にさせまいと意気込むが、追いかけるタイムロスがあったせいかレイ達を見失った。これでは探せないと思い、俺はもう一度ストレナエを呼び出した。

 

「ストレナエ!上空に飛んでラビィがどこにいるか教えてくれ!」

 

『分かった!任せて! 』

 

六花の中で唯一飛ぶことが出来るストレナエは背中に纏っている薄い青色の羽から氷のような光を散らしながら上空に飛ぶと、レイ達を探した。

俺も地上からレイ達を探すが、やはり人混みがかなり多く、探すのに手間がかかりそうだ。

 

道行く人々の中からレイ達を探し出し、ストレナエも必死に探すがやはり見つからない。完全に見失っては、レイとロゼに任せるしかいないが、その心配はなかった。

 

『花衣君!あっちにいたよ! 』

 

上空にいるストレナエが東の方向に指を指したが、あいにく俺の方では人混みばかりが目に映るが、ストレナエを信じて人混みの中へと走っていく。

横切るように歩く人々をかき分け、ストレナエが指を指した方角へととにかく移動する。

 

道行く人に謝りながらややゴリ押しで通り、ようやく広い場所へと出ていった俺はそのまま全速力で真っ直ぐ走る。やがて3方向の分かれ道が目視で確認すると、上空のストレナエにどこに行けばいいのか尋ねる。

 

「ストレナエ!どっち!? 」

 

『ええと……左!その後真っ直ぐ行って右だよ!閃刀姫達も反対側から追いかけてるよ! 』

 

分かれ道を左に曲がり、辺りは小動物からライオンやヒョウといった大型肉食動物のエリアに入った。

 

こんな所にうさぎである【メルフィーラビィ】が逃げ込んで大丈夫なのか?食べられたりしないかと若干心配になるが、とにかく俺はストレナエに教えられた通りの道を進む。

 

周りにはショーケースの向こうにライオンのオスとメスが毛繕いしたり、まさかの誰でも入れそうな広場でライオンの親とどこかの家族が触れ合っている。横目で見ただけでその光景を疑ってしまうが、今はそんなことどうでもいい。

ストレナエの言った通り、次の分かれ道を右に曲がったその時だった。突然右に向いた瞬間【メルフィーラビィ】がいたが、同時にレイとロゼが俺の目の前に表れた。

 

「は? 」

 

「ええ!?ちょちょ、止まってください花衣さんー! 」

 

「いや無理無理無理!! 」

 

慣性ですぐには止まれず、俺とレイはそのまま為す術なくぶつかってしまい、それどころか側面にぶつけられた俺は体勢を崩し、俺はそのままレイを押し倒されるように倒れた。

 

頭こそぶつかっていないが、背中が地面にぶつかった鈍い痛みとレイとぶつかった腕の弱い痛みが少し残り、それでも立ち上がろうとするがどうしてか立ち上がらない。

目の前には綺麗な恐らくレイのものであろう金色の髪があり、俺の服に両手が掴まれ、なにか体に柔らかいものが乗っていた。

 

「いてて……花衣さん、大丈夫ですか? 」

 

「あ……あぁ…… 」

 

目の奥が見えそうな程俺とレイの顔は近く、レイのエメラルド色の瞳は吸い込まれそうな程綺麗だった。

 

「……おしくらまんじゅうならまだ季節外れよ 」

 

「ならお前のマフラーも大概だと思うけど……! 」

 

「……やっぱり覚えてないのね。……ほら、離れなさいレイ 」

 

「あ〜もうちょっと堪能したかった〜! 」

 

まるで嫌がる子供と親のように、ロゼはレイの服を引っ張り、レイは駄々をこねてロゼの引っ張りを拒んだ。しかしロゼの力の方が強く、レイは無慈悲にも俺から離れていった。

 

しかし、さっきのロゼの表情は悲しげだった。レイを離れさせたその後、何かを思い出すようにマフラーを両手で触っていたが、それ以降何も言わなかった。

とにかく俺は服に着いた砂埃を払い立ち上がった。

 

「ふぅ……見失ったな。これは…… 」

【メルフィーラビィ】は人混みに紛れ込んでしまい、最早探すのは不可能に近い。他の【メルフィー】を探すにしても、恐らくは勘づかれてそのまま逃げられてしまうに違いない。

 

『ごめんね花衣君……閃刀姫達の距離とか言えば良かったかも…… 』

 

ストレナエがしゅんとした表情のまま空から降りてくると、ストレナエの背中も羽もまるで申し訳なさそうに下向きになっていた。

 

「大丈夫だよ。気にするな 」

 

しょんぼりしているストレナエを元気付ける為に俺はストレナエの頭を優しく撫でた。ストレナエはこうして頭を撫でるといつも嬉しそうに笑ってくれるが、今に至っては笑ってはくれなかった。

 

「ぶつかったのは俺の不注意だし、それにストレナエは空から見てくれたじゃないか! 」

 

『でも…… 』

 

「それに、俺は笑ってるストレナエが好きだ 」

 

俺は口元に人差し指を当てるとそのまま口角をあげるようにして指を動かて笑顔を作った。

 

『花衣君……うん、私、もっと役に立てるように頑張るね! 』

 

ストレナエはいつも通りの元気を取り戻し、役に立てるようにと鼻息を荒くして小さくガッツポーズをして張り切りを見せた。

いつも通りの元気を見て安心した俺は、この後どうするか考える。

 

と言っても、とりあえず今はうさぎエリアに戻るしかやる事がないんだけどなぁ……。それに、心咲ちゃんに後で絶対に遊ぶと言った手前、戻らない訳にも行かない。

とにかく、俺たちは母さんや心咲ちゃんがいるうさぎエリアへと戻った。

 

 

 

 

 

_数分後

 

ようやくうさぎエリアに戻ってきた俺たちを待っていたのは、大量のうさぎに囲まれた母さんと心咲ちゃんだった。まるで濁流のように押し寄せるうさぎ達の集団の中心には餌を持っている母さんと、幸せそうに笑っている心咲ちゃんがいた。

 

「あ、おかえりなさい花衣 」

 

「あ、花衣お兄ちゃん! 」

 

「いや2人とも何してるの? 」

 

「あーこれ?もうお昼だから、うさちゃんにご飯上げてるの〜!花衣お兄ちゃんもどう? 」

 

「いや……遠慮しとくよ 」

 

さすがにあんな大群体のうさぎに餌を渡せる気力はさっきの追いかけっこで無くしてしまい、それはレイとロゼも同じだった。とにかく走り疲れた体力を回復させる為に、近くにあったベンチに俺達は座り、母さんと心咲ちゃんの餌やりを眺めた。

 

走り回って汗もかき、夏の日差しで体温も上がって服を脱ぎたい程暑い。喉も砂漠のように渇き、途中で飲み物を買っておけば良かったと後悔している。

その時、俺の左頬に冷たいアルミのような物が触れ、冷たさで咄嗟に左を向くと、冷えたジュース缶を持ったロゼがいた。

 

「喉が乾いたかと思って……買っておいた。はい、これパインジュース 」

 

「おお、ありがとうロゼ 」

 

「ロゼちゃん〜私にも頂戴〜! 」

 

「レイはアップルで良いわよね 」

 

「ありがとうロゼちゃん〜! 」

 

相当喉が乾いたのか、レイはロゼからアップルジュースを貰うと即缶の蓋を空け、ジュース缶をほぼ直角に上げてぐびぐびと飲み干していった。

 

「ごくごく……ぷはぁ〜!うん、まだ足りませんね!ちょっとそこの自販機で私用にもうひとつ買ってきますね! 」

 

そう言ってレイは近くの自動販売機に行って自分のジュースを買っていった。俺も缶の蓋を開け、レイのようにがぶ飲みは流石に出来ないのでゆっくりと飲んでいく。

 

パインの甘酸っぱさが口に広がり、砂漠のように乾いていた喉も潤った。

 

「ふぅ、ロゼもしっかり飲んでおけよ?暑そうな格好してるんだから…… 」

 

「私は平気。列強の時で鍛えてるから 」

 

ロゼは顔色一つ変えずにジュースを飲み、何かを思い出し家のようにマフラーを握った。

 

「そういえば、ロゼはいつもそのマフラーをしているな。学校の時もそれしてるだろ?何か思い入れがあるのか? 」

 

俺がマフラーのことについて触れると、ロゼは何故かこちらを見た。様子からして俺……というより、俺が【閃刀騎ーカイム】だった頃と関係しているのだろう。

何を思ったのか、ロゼはマフラーを外した。

 

「……これは、貴方(カイム)から貰ったものよ。戦争が終わって、私は貴方達の捕虜になったんだけど、カイムは私の事を仲間って言ったの。仲間になった記念に、私に贈り物をしようと言った矢先、私を街中へ連れ出した。ほんと、迷惑だったわ 」

 

「うっ……す、すまん…… 」

 

「なんで貴方が謝るのよ。別に私は気にしてない。寧ろ感謝している 」

 

ロゼは許すように小さく笑い、マフラーをまた首元に巻いた。

 

「カイムは私を連れて色んな所に連れて行った。何が欲しいとか、何がしたいとか、何が食べたいとかしつこく言ってきた。当時の私は捕虜になったばかりで、貴方の事を警戒していたわ。だって私には何もしてないし、隙だらけの背中を何度も見せていた。本当にこの人と戦って負けたのが信じられないくらいに 」

 

「……それで、最終的に渡したのがそのマフラーって訳か 」

 

「そう。しかもオーダーメイド。腕のいい職人を知っているとか言って、その人に作らせてそのまま私に渡したの。その日は寒い雪の日だったから、ちょうど良かったけど 」

 

ロゼはその日の事を思い出すようにマフラーを深く巻き、目を閉じていた。きっとロゼの瞼の裏には、雪が降っていたその日の光景が広がっている事だろう。

 

「それに……誰かからの贈り物なんて久しぶりだから。あの時は言えなかったけど、……私を救ってくれてありがとう 」

 

ロゼは瞳を閉じて、とても綺麗な笑みを俺に見せた。いつもクールで、冷静な表情しか見せなかったロゼだが、この一瞬だけまるで雪解けの春のように暖かく、年相応の可愛らしい笑顔だった。

 

普段なら絶対に見れいない笑顔に不意に心を打たれるような衝撃を受け、一瞬だが心臓が止まったかのように思えた。

そして、俺の頭に一瞬の激痛が走り、その痛みで俺が持っていたジュース缶は地面へと落ちていった。

頭を抑え、目を瞑り、脳裏に過ったモノクロでノイズが混じった映像が嫌でも目に入った。

 

 

 

 

 

暗く黒く淀んだ空気の中、俺の前には誰かが立っていた。1人では無い。2人だ。

1人は筋肉質な体型をしており、もう1人は奥にいて、俺と同じぐらいの背丈だ。

 

奥の男は何かを言っているが、ノイズばかりで聞き取れない。誰なのかも分からないが、何故かあの男を見ると苛立ちを感じる。

 

いや、苛立ちどころでは無い。憎悪や憤怒が入り交じり、あの男を憎しみの対象しか見られなかった。

胸の内が熱く、焼けただれそうだ。息も苦しく、心臓の鼓動も体から離れるくらい速い。

この苦しみから逃れたい。その為には……目の前の男を潰すしかないと俺の中の何かが囁いていた。

 

_潰せ……

 

「そうだ……潰してやる…… 」

 

この苦しみから逃れたい。その為にはあの男を潰すしかない。自分の手を伸ばし、奥の男を潰すように握ろうとした時、初めて自分の体を異常性を知った。

 

自分の手がまるで骨みたいに……いや、骨そのもののようだった。

 

「何だ……なんだよこれ……!? 」

 

右手だけじゃない、両手もそうだ。わけも分からず動揺してしまい、俺は自分じゃないような両手を見つめた。

そうして、自分の腕の皮膚がどんどん焼けただれるように溶け始め、ついには体も蝕み続けた。逃げられないその蝕みに俺は為す術なく侵食されていく。

 

「あぁ……あぁ……あああアアあァァァああぁああ!!」

 

「花衣っ!! どうしたのっ!? 」

 

「はっ……?え……あっ…… 」

 

景色が変わり、うさぎ達のいる世界へと戻った。うさぎは俺の声に驚いて逃げてしまい、隣にはロゼが心配そうに見ていた。

 

「花衣……急に大声出してどうしたの? 息も荒い……何かあったの? 」

 

いつの間にか息が荒くなっており、俺は急いで自分の両手を見た。肌色の皮膚もあり、触れると筋肉の柔らかさもある。顔も触れ、体も触れ、確かに自分の体はそこにあった。

どうやら俺が見たのは夢か幻覚の類だったようだが、酷い物を見たものだ……まだ震えが止まらず、両手で震える腕を無理やり抑え、震えを止めた。

 

息も少し乱れてる。荒く、浅く、呼吸している筈なのに体が酸素を求めているかのように息苦しい。

 

「花衣!?本当に大丈夫なの……?花衣? 」

 

「あ……あ……お、俺は…… 」

 

夏のように今は暑いのに、体が雪の中にでもいるように寒い。声も出ず、大丈夫とはいえなかった。

 

「花衣っ!! 」

 

震える中、大きな声で俺を呼ぶ声がした。懐かしく、安心出来る声が2つ。ひとつは遠くから、もう1つはすぐ近くに耳に入った。

 

「かあ……さ……ん?」

 

震える声でそっと顔を上げるとそこには母さんがいた。膝を屈み、心配そうな目は俺が如何に様子がおかしかったのか表していた。

 

「貴方いきなり大声で叫んでたのよ?それに顔色も悪いわ。ロゼちゃんだっけ?何かあったの? 」

 

「いえ……私も何が何だか分かんなくて…… 」

 

「そう……とりあえず休める所に移動しましょう。どこか無いかしら…… 」

 

「それなら知ってるよ〜!来る? 」

 

後から心咲ちゃんも着いてきて、休める場所があると伝えてきた。それを聞いた母さんは血相を変えて心咲ちゃんの手を握って教えて欲しいと頼み込んだ。

心咲ちゃんは笑顔で快く案内し、母さんは俺の腕に肩を通し、俺を肩で支えるようにした。

 

「花衣、歩ける?もし歩けなかったら人を呼んで車椅子持たせてくるから 」

 

「いや……大丈夫…… 」

 

「無理はしないでね。……ロゼちゃんはどうする? 」

 

「私は用……いや、レイが来てから行きます 」

 

確かに……レイの姿が見当たらない。いや、それどころか何故か六花達の姿も見えないような……。

俺がもし何かあれば真っ先にでてきそうだが、今ばかりは来なかった。何かあったのだろうか……行動を起こしたいが、気が動転して俺は思うように体が動けなかった。

 

「じゃあ、お願いね 」

 

「うん!こっちだよ〜! 」

 

心咲ちゃんに案内を頼み、俺は足を引きずるように母さんと肩を並べて歩いた。

 

「……私もレイ達の所に行かないと 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの様子、やはり近づいていますね。早急に対処しないと…… 」

 

うさぎエリアの端っこに、花衣を見つめる監視者がいた。監視者は花衣の反応を見て何かを確信し、急いでこの場から離れようとしたその時、木の枝が不気味に揺れた。

 

「……っ! 」

 

その揺れに反応した監視者は揺れた枝がある木から離れると、木の隙間から監視者目掛けて黒い影が襲いかかる。監視者は布のような物を全面に展開し、その影の衝突を避けた。

 

「これ……閃刀姫の……! 」

 

布にくるまられた物体の正体は【閃刀機ーホーネット・ビット】だった。ホーネット・ビットは包まられた瞬間爆発を起こし、周囲には爆煙が生じた。

 

「しまった……これじゃあ視界が……! 」

 

「もう遅い……! 」

 

爆煙によって監視者は視界を奪われ、監視者は背後から表れたロゼの攻撃を受けながらも、ローブがその身を挺して監視者の守るように光り、ロゼの攻撃は監視者自体には届かず、ローブだけを切り裂く結果となった。

 

「ちっ……あのローブ……普通じゃない 」

 

「大丈夫だよロゼちゃん。今回はあの人達もいるから 」

 

「あの人達……? 」

 

「私達のことですよ 」

 

瞬間、監視者の足元に植物のツタがまとわりつくように生え、監視者の足に絡まり、監視者はツタによってその場から動けずいた。

 

「これって……まさか! 」

 

「もう遅いです……! 」

 

監視者の上空には無数の氷の槍が形成されており、四方八方氷の槍先は監視者に向けられていた。何とか脱出を試みようと足を動かそうにもツタは両足に絡まって動けず、最早監視者に残された行動は防御のみだ。

 

「ようやくここまで追い込めましたね 」

 

木陰からなんと六花達全員が現れ、閃刀姫含むと11対1で監視者と対峙していた。

 

「な……なんで貴方達がいるんですか!?貴方達はあの子のカードを依代にしてこの世界にきているのに! 」

 

監視者は目に見えての焦りを露わにして六花達にそう言った。

確かに、六花達は花衣のカードが無ければこの世にはいられず、離れすぎると強制的にカードに戻されてしまうのだ。監視者はその特性を知っておるからこそ驚いており、疑問に思っていた。だが、その問いに答えたのは。レイの方だった。

 

「それならここにありますよ。花衣さんとぶつかった際、少し拝借しました 」

 

レイは六花達のカード全てを右手で広げて監視者達に見せた。そう、レイは【メルフィーラビィ】を追いかけてた際、花衣とぶつかったのだが、その際すぐ様花衣のカバンをあけ、デッキケースから六花カードを取ったのだ。

 

「そんな……なんの為に! 」

 

「それはこのストレナエが貴方の存在を確認したからですよ。この子優秀ですね。空から貴方の姿を確認した時、私達に合図を送ったんですよ。近くに監視者がいるって。その時この作戦を思いついたんです 」

 

「ねぇ、聞いたよ。昨日花衣君に酷い事したって。私……許せないなぁ。許せない……花衣君の楽しい時間や花衣君の好きな瞬間を傷つけたりする人は……絶対に許せない 」

 

ストレナエが目の光を失わせるまで監視者に対しての怒りを顕にし、氷の傘を監視者に向けて巨大な氷の矢を形成した。ストレナエの思っていることは六花達も全員思っており、監視者に対する目は全員怒りにしか持っていなかった。

 

「何か言い残す事はありますか?いえ……花衣様に害をなすなら、今ここで排除します。早く花衣様の様態も確認しないといけないので 」

 

レイはベクタードブラスト、ロゼはシャークキャノンを構え、六花達はそれぞれ氷の矢を形成して今まさに攻撃が開始されようとしていた。

 

「くっ……このままじゃ…… 」

 

レイとロゼ、そして六花達の攻撃は待つことも訪れる事も無く開始された。氷の槍が降り注ぎ、その合間に閃刀姫達の攻撃も開始された。氷の雨と砲撃の進撃は最早回避どころか防御も不可能だ。

万事休すかと監視者は目を瞑り、運命を受け入れようとしたその時だった。

 

突然監視者を包むように炎を纏っているかのようなドーム型の盾が六花達の攻撃を防ぎ、監視者は無事無傷で凌いだ。

 

「なっ……誰!? 」

 

「この盾……まさか! 」

 

「ふぃ〜間に合った!早く撤退するよ!早く早く! 」

 

奥からまた更に別の声が聞こえた。ローブを着ているが声からしたら女性であり、どうやら監視者の仲間だろう。新たな監視者の仲間に全員が注意を向いている中、監視者は巨大なハサミを出現させて自分の足に巻かれているツタを切り裂き、この場から脱出した。

 

「待ちなさいっ! 」

 

もちろんそれを許す六花では無い。カンザシがすかさず新たなツタを逃げる監視者に伸ばすが、監視者の仲間が炎を閉じ込めた瓶を投げつけるとツタが瓶に当たり、ツタは燃えた。

 

「それ、更にもう一個!オマケにもう2個もプレゼント! 」

 

計3つの瓶を適当な所に投げつけると、炎は木々に燃え移り、辺り一帯は火の海と化した。

 

「ちょっと!貴方達自分が何したか分かってるの!? 」

 

「このままじゃ、火がパーク内に来てしまいます……! 」

 

スノードロップとヘレボラスは急いで火に向かって氷を形成し、蒸発で炎を鎮火させた。

しかし不思議な事に、鎮火した場所の草木は焼けておらず、まるで植物が燃えていること自体気づかなかったように何事も無かったのだ。

 

「ちょっと悪いとは思ってるよー!でも、その火は特殊でね。少しの間はこの現実世界では影響ないよ。ただし、時間が経てば現実世界に影響する代物だ。急いだ方が良いよ! 」

 

監視者達はすぐ様この場から去るようにワープゲートを形成した。

 

「このっ……待てっ! 」

 

「レイ!今は火を消すのが先決! 」

 

「でも……! 」

 

「でもじゃありませんっ!このままじゃ花衣様の所にも影響が出ます! 」

 

「っ……!! 」

 

監視者達を追いかけようとしたレイは、ロゼとティアドロップの言葉で踏みとどまり、レイとロゼはホーネット・ビットの機能の一つである消火モードに移行し、辺りの火を鎮火させていく。

 

「……貴方達は、あの子の正体や危険性を知らないのです 」

 

ローブがズタボロになり、監視者達は姿を著さずゲートを通って精霊世界へと消えてしまい、ゲートも通過した瞬間消えていく。

 

監視者の言葉が気になりながらも、六花達は火元に氷を形成する事で次々と炎を閉じ込め、やがて炎は氷と共に消えていった。

 

辺りに燃えた形跡は認められず、どうやら現実世界への影響は無いようだ。

 

「ふぅ、何とかこの世界への影響は無いようね 」

 

「あ〜疲れたネー!それにしても……あの監視者が言ってた事はなんだったのかな? 」

 

「『あの子の正体や危険性』とか言ってたわね……花衣さんが危険ってどういうことかしら 」

 

エリカの放った言葉に全員は首を傾げた。危険という言葉も謎だが、それ以前に正体という言葉に皆は疑問や違和感を抱いていた。

 

花衣の正体……それは【六花聖華カイリ】や【閃刀騎-カイム】と言った、元はモンスターなのだが。それが危険性に繋がるとは考えにくい。

 

「【閃刀騎-ラグナロク】の事かしら? 」

 

「でもカイムさんあの装備1回しか使わなかったし、それにあれはあっちでは封印されてるよね。危険って言えるかな? 」

 

ロゼはラグナロクのことについて持ち出したが、レイはそれを否定した。

となれば、残るのは1つ。

 

「……カイリ様の時の記憶喪失。あれに関係が?」

 

そう、【六花聖華カイリ】は記憶喪失にあった。六花達に出会う前には何をしていたのかも分からず、自分がカイムだということさえ忘れていたのだ。

 

「そっか……カイムさんが出ていった時と六花達と出会ったその空白期間!そこに何かあるのかな? 」

 

そう、カイムが閃刀姫から離れた時〜カイリとして六花と出会った時のこの空白期間に、何かがあったのだ。監視者の言葉を信じるならの話だが、危険性に繋がるとしたらそこにあると皆は考えた。

 

「ねぇ、結局そのカイリの記憶は戻ったの? 」

 

「ううん、カイリ君は最後私達に何も言わずに出ていったから…… 」

 

ストレナエはその事を言葉にすると脳裏にその記憶が蘇り、目に見えるように落ち込んだ。

 

「カイムさんと同じですね。一体何をしようとしたんでしょうか…… 」

 

「それはともかく、早く花衣様の所に戻りましょう。花衣様の様態が心配です…… 」

 

「そうだ……!早く花衣さんの様態見なきゃ! 」

 

レイとロゼはすぐ様この場から離れ、六花達も直ぐにカードに戻って花衣のいる所へと走っていた。

 

しばらくして誰もいなくなった森の中、桃色の毛皮を持ったうさぎ、【メルフィーラビィ】が木陰から飛び出し、花衣の元へ向かうレイとロゼの背中が見えなくなるまでを見送ると、ラビィは森の奥へと駆けて行った。




兎乃心咲(うさぎのみみ) 年齢:9才

【メルフィーパーク】の建設者の一人娘であり、動物をこよなく愛する小さな女の子。特にうさぎとはかなり親しげにあり、噂では彼女はうさぎの言葉が分かるとの事……?

【ロマンス・タッグデュエル】では、創始者である父親からの招待状で参加し、理由は【メルフィー】が見たかったからという理由で参加した。

うさぎが好きだが、実は人参が苦手との事。

因みに、彼女には精霊が見えない。

ここまで(〜90話)出てきたレゾンカードの中で強いと思うのは?

  • 六花聖華ティアドロップ、カイリ
  • 閃刀騎-カイムと閃刀騎-ラグナロク
  • 銀河心眼の光子竜
  • RRRリノベイルイグニッションファルコン
  • 炎転生遺物-不知火の太刀
  • 常闇の颶風
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