六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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学校が始まったぁぁぁ!

白だし茶漬けです!

はい来ました!植物族新規!その名も森羅の舞踏娘ピオネ!

植物族エクシーズである信頼の新規カード!中々六花達にも相性が良くて欲しいカードの1つです。

植物族エクシーズテーマが来たということは……これはまさかの六花新規がついに来ちゃったり!?
個人的には成長したひとひらとか見たり、六花精が六花聖になったりとか見てみたい気もしますね〜。夢が広がります。ムフッ(*¨*)


迫る本能

目をゆっくりと開ける。

 

視界の先には白い天井に動物が可愛らしく描かれたステッカーが貼られていた。

 

背中が柔らかい。どうやらベットの上にいるようだ。いつの間にか掛布団まで綺麗に俺の首元まで掛けられていた。

 

起き上がろうにも体が重く、思うように動けない。それでも上半身を起こし、俺はここがどこかと見渡す。

周りには何かの医療器具が置いてあり、ベットがここ以外にもあと1つある。多分……医務室か何かだろうか。

 

「花衣っ! 」

 

俺の耳元で大きく俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。ベットの横に顔を向けると、目の前に母さんがいた。

 

心配そうに涙ぐみながら俺の手を握っており、目を開けた俺を見て安堵の息を漏らしていた。

 

「あぁ良かった……ねぇ、気分は悪くない?大丈夫? 」

 

「えっと……俺、どうしてここに……? 」

 

「貴方途中で気を失ったのよ。声を掛けても返事が無かったから、ここに居る医者にも来てもらったんだから 」

 

医者と言われて1歩前に出た女の人が俺のベットの横に立ち、挨拶をするようにお辞儀をした。

 

「こんにちは花衣君。早速だけど熱を測らせて貰うね。もし熱中症だとしたら大変だから 」

 

そう言って彼女は俺に体温計を渡してきた。服の下から体温計を直接脇に挟み、しばらくするとピピっと電子音が鳴った。体温計のデジタル表記の体温を見ると、平熱の36.6℃が出ていた。

 

俺はそれを彼女に見せると、彼女は安心するように微笑んだ。

 

「はい、大丈夫そうですね。他にどこか不快感が感じられる所はありますか? 」

 

「いえ……特には 」

 

体の不快感や先程の体の重さも無い。多分大丈夫だろう。

 

「熱中症という訳でも無いですし……これはストレスが原因でしょうね。何か抱え込んでいる事はありますか? 」

 

抱え込んでいる事なんて分かりきっている。精霊の事や、俺の自身の事、そしてこの世界が精霊の世界と繋がりつつある事……一つ一つが大きすぎて押しつぶされそうだ。……いや、押しつぶされたこそここにいるんだろう。

 

こんな事誰かに話せる訳が無い。

 

話しても信じてくれるはずもない。

 

それに話してどうなる?話してその人が監視者に手にかけられたらどうする?どうする事も出来ずに後悔するに決まっている。だから俺は話さないし話せない。

 

「……なんでもありません 」

 

「花衣、何か困ってる事があるなら私にも相談して。1人で背負い込んだら何も解決できないわy」

 

「だからっ!何でもないって言ってるんだよ!!もうほっといてくれ!!今まで対して帰ってこなかった癖に! 」

 

思わず鬱憤を晴らすかのように母さんに向かって怒鳴ってしまい、後から我にかえり、母さんの方に顔を向けた。

 

母さんは怒るような顔でも、困惑している顔でもなく、少し悲しそうな顔をしていた。その顔を見た瞬間胸が締め付けられるような苦しさに襲われた。

 

「……ごめんなさい。そうよね……今更こんな風に接したって困るわよね…… 」

 

「いや……ち、違うんだ母さん。俺はただ…… 」

 

母さんを巻き込みたくは無い。ただそう思って俺は何も言わなかった。だけど俺はそれをいえなかった。もしそれを言ってしまえば、もう言い訳は聞かなくなりそうで怖いから。

 

でも、言わないと母さんはきっと誤解する。

 

さっき怒鳴った俺は、母さんにとっては大して傍に居てないのにそんなにズケズケと他人の領域に入るなと言ってるような物だ。そんな事微塵も思ってない。

 

それを伝えたい。伝えたいのに……どうして言えなかった。事のスケールが巨大であり、それ故に、巻き込まれたらどうなるか分からないから……

 

それから空気が心無しか重くなり、何を言い出せば良いか分からなくなった。

 

そんな時だった。ドアがコンコンとノックされた音が響き、女医さんがドアを開けた。開いたドアの先には、レイとロゼがいた。

 

「あら?花衣君のお友達でしょうか? 」

 

「はい。従業員から花衣さんがここにいるって聞いて 」

 

「花衣、遅くなった。具合はどう?大丈夫? 」

 

レイとロゼがこちらに駆け寄り、俺は何とも無いように首を頷いた。

すると、レイがこの空気の重さにいち早く気づいたのか、そっと耳打ちするように小声で話しかけてきた。

 

「何かあったのですか……?」

 

「……なんでもない 」

 

今の俺は、この状況を説明する気分では無かった。今はとにかく、この空気から逃げ出したい一心だ。

 

すると母さんが椅子から立ち上がると、レイとロゼに一声かけた。

 

「ねぇレイちゃん、ロゼちゃん。もし良かったら花衣と一緒にこのパークをまわってくれないかしら?ほら、中良さそうだし私はその辺で時間を潰しておくから! 」

 

「え?ですが…… 」

 

「クラスメイト同士の方が花衣も喜ぶから!じゃあ……私はこれで……先生、ありがとうございました 」

 

レイの質問には一切聞かないように笑顔でこの場から去っていった。その笑顔は、俺でも分かるぐらい酷く曇っていたことも……

 

「……花衣さん、状況を話してください 」

 

「それには同感。それに花衣自身も様子がおかしい 」

 

レイとロゼは話せと言わんばかりの圧で俺に詰め寄ると、俺は制止させるように両手を突き出し、観念するように息を吐く。

 

「わかった……分かったから!でも外で話そう。……女医さんがいるから。じゃあ、ありがとうございます 」

 

「はい、行ってらっしゃいませ 」

 

「……? 」

 

なんか違和感を感じたけど……俺は特に気にせず医務室から出ていった。

 

とりあえずその辺の人気が無いベンチに座った。丁度お昼頃だからなのか周りには人は少なく、喋るのには丁度いいだろう。ベンチに座り、2人もさも当然のように俺の隣に座り、事の経緯を話した。

 

今思えば大分後悔している。今からでも母さんの所に行って謝りたい所だけど、携帯で連絡してもきっと俺に負い目を感じて連絡には出ないだろう。どうしたものかと額に指を当て、何か無いなと考えたが、暑さと気の負い目で中々いい考えが浮かばない。

 

「……ん?あの、花衣さん。あの子…… 」

 

レイが指を指した方向に顔を上げると、そこには心咲ちゃんがいた。心咲ちゃんが走ってこっちに近づくと、よく見ると何だか怒っており、リスのように頬を膨らませていた。

 

「もう!勝手にどこかに行くなんて酷いよ!私と後で遊んでくれるって言ったのに! 」

 

「あぁ〜……そう言えば言ってたっけ…… 」

 

俺が【メルフィーラビィ】を追いかける前に、心咲ちゃんにそう言った覚えがある。色んな事があってすっかり忘れていた。

 

「……?どうしたの?何だか元気が無いけど…… 」

 

「あぁ……ちょっと色々あってね。さて、じゃあ……何する? 」

 

こんな小さな子供に愚痴を言う訳には行かないし、行ったとしても多分難しくて理解出来ないだろう。

俺はベンチから立ち上がり、心咲ちゃんとの約束を守ろうとしたが、心咲ちゃんの表情の雲行きが怪しかった。

 

「ちょっと来て! 」

 

心咲ちゃんは俺の手をいきなり掴むとそのまま何処かに案内するように力強く引っ張りながら歩いた。

子供だからそれほど力は無く、心咲ちゃんに俺を引っ張る力は無い。

 

俺はなされるがままについていくように力を抜き、心咲ちゃんについていく。勿論後からレイとロゼもついて行き、心咲ちゃんは長い時間をかけ、パークの隅まで俺達を案内した。

 

周りには動物もおらず、そのせいか人も居ない。周りにあるとすれば生い茂る森だけだ。と言っても、この先の森はパークの外側だ。こんなところでどうするつもり何だろうか?

 

「えへへ、今からね、私の秘密の場所に連れて行ってあげる!パパとママも知らない秘密の場所!ついてきて! 」

 

そう言って心咲ちゃんはパークの外壁の一部に触れると、まるで自動ドア見たいに壁が一部動いて森への道が出来た。

 

あまりの驚きに俺とレイ、ロゼは衝撃を受け、一瞬固まった。

そんな俺達を気にせずに心咲ちゃんは森の奥へと歩いていき、俺達は急いで心咲ちゃんの後を追った。

 

森は綺麗な若葉の緑で生い茂り、人の手はあまり触れられて居ない様子だった。だが生い茂る木々とは対照的に地面の草は中途半端な長さが多く、歩きづらくは無かった。

そんな道を歩いていくと、急に森の中なのにも関わらず広けた場所に出た。周りは木に囲まれ、切り株の自然の椅子があった。

まるで絵に書いたような幻想的な自然の風景だった。

 

「凄いな……ここ 」

 

「えへへ、ここは私の秘密の場所なんだよ!しかも〜ここには動物さん達もいっぱいいーっぱい来るんだよ!すぅ……おーい!おいで〜! 」

 

心咲ちゃんが切り株の上に立って大きな声をあげると、周りに草が踏まれる音が聞こえてきた。

驚く事に、周りに馬や狐、うさぎやリスや小鳥、そして熊までもこの広場のような場所に集まってきた。

 

「く……熊!? 」

 

「花衣さん下がって下さい! 」

 

「待って〜!皆悪い子じゃ無いんだよ!皆襲わないから大丈夫だよっ!! 」

 

まさかの熊が現れて俺はたじろぎ、レイとロゼが閃刀を構えようとしたが、心咲ちゃんがレイ達の前に立ちはだかる事によってそれは未然に防がれた。

 

確かに熊は俺達を襲う様子は無い。寧ろ友好的そうな撫で声をしてした。熊の撫で声なんて聞いた事無いぞ……低い声だが、随分と愛らしく……とは思うような思わわないような。

 

それにしても、凄い光景だ。小動物から大動物がこれらに一斉に1つの場所に来るなんて、絶対に見れない状況だ。

 

あまり調べてないけど、動物には縄張り意識という物が存在する。それは野生動物が絶対にある本能の1つであり、その縄張りを踏み込もうものなら抗戦するのが動物だ。たとえそれが草食動物とかでもだ。

 

しかし、ここの動物にはそれが無いのだ。違う種類の動物が仲良く日向ぼっこしていたりした。

 

「ねぇねぇ〜どう?動物さんは可愛いでしょ? 」

 

「可愛いと言うより……ここの動物は野生なの? 」

 

「え?うーん、わかんない。私が昔ここに迷った時にはここにいたの。その時は私をパークに戻してくれたんだよ〜! 」

 

パークに戻した……つまり動物達はパークの行き先を知っているという訳だ。なんか妙に引っかかっるな。

 

それに、森に続くパークのあの壁……象とか簡単に通れるぐらい広かった。それに手動で開く仕組みという事は、人の手で簡単に動物がここに来れるという事になる。

 

「もしかしたら、ここいる動物達は、元々パーク内の動物かもしれませんね 」

 

「どういう事? 」

 

「ここ、僅かだけど手入れが施されている。しかも、あの壁……なんでわざわざ開けるようにしていると思う? 」

 

「え……なんでって…… 」

 

そう言えば確かに謎だな。あんな設計じゃ、もし動物が空いている時にあそこに行けば必ずこの森を通る事になる……

 

「まさか……わざとここに放している? 」

 

「そうです。理由は分かりませんが…… 」

 

確かに謎だ。いくら調教はされているとは言え違う動物同士が出会ってしまったら縄張り争いで動物の数が減る可能性もあるし、何より野生に返ったらどうパークに戻させるのだろうか。

 

しかし、ここの動物達は共存している。しかも妙に心咲ちゃんに懐いているように、心咲ちゃんの切り株を中心に集まっている。

 

リスは少女の肩に乗り、小鳥も指に乗っては囀り、狐は膝に乗って丸くなっている。絵に描いて題名をつけるなら、正に森と共に生きる少女という題名が似合っている。

 

「本当にここ綺麗だな…… 」

「ここはね、私の秘密の場所なの。他の人には教えてない私だけの特別な場所なの 」

 

「そんな場所……なんで俺に教えたんだ? 」

 

「お兄ちゃん何だか元気が無かったから 」

 

心咲ちゃんは切り株から降りて俺の所に向かうと、指に乗っている小鳥を差し出すように手を向けた。

 

「辛い時や悲しい時があった時も、私はここに来るの。嫌な事が会った時には、動物さんは優しくそれを受け止めて慰めてくれるの。動物さんにはね、そういう人に寄り添って、元気にさせる特別な力があるの 」

 

「特別な力? 」

 

「動物さんは凄いの。だから花衣お兄ちゃんも元気になって欲しくて連れてきたの。人には言えない事も、動物さん達は優しく聞いてくれるよ 」

 

心咲ちゃんの指に乗っていた小鳥は俺の肩に乗り、小鳥は俺の事を全く警戒せずに肩の上でじっとしていた。

他の動物達もその場で座るようにし、俺の話を聞くように視線を向けている。

 

動物にこんなに視線を向けられているせいなのか、それともこんな特別な場所のせいなのか、何だか不思議な気分になる。

木々を通る日差しが眩く煌めき、風が通ると木々は揺れ、その自然が出す葉音の音楽はどうしてか心を落ち着かせる。

 

こうして静かになって目を閉じると、ここには俺一人しかいないようにも感じれる。

 

だけどどこか落ち着き、懐かしい感じもして安心する。

安心したせいか、俺は無意識に口を開け、言葉を出す。

 

「……俺、母さんに酷い事言ったんだ。母さんは海外に出張で殆ど家に帰らなくて、俺の誕生日の日になっても、帰ってこない事が多かった。別にそれは仕方ないと思ってるし、帰ってきた時には凄く接してくれてる。でも……最近俺の周りに結構色んな事が起きてさ、それは誰にも言えない事で、色々抱えてつい……酷いことを言った 」

 

弱音を吐くように次々と言葉を出続け、不器用ながらも事の経緯をぶちまけた。言葉が分からない動物には何を言っているのか分からないだろう。

だからこそこうして話せるし、少しは心のモヤも吐き出せるのだろう。

 

本能なのか、俺の肩に乗っている小鳥は慰めるように頬に擦り寄って来た。うさぎと狐も俺よ足に擦り寄り、いつしか俺の周りには動物達が集まっていた。

 

「ねぇねぇ、花衣お兄ちゃんは自分のママの事嫌い? 」

 

心咲ちゃんがそんな事言い出してきた。とんでもない、血は繋がってなくても、俺はあの人の息子だ。会えないながらも、俺のことは気遣ってくれたし、何より母親として育ててきた。そこにあるのは感謝だけだ。

 

「そんな事ないよ 」

 

「じゃあ、ちゃんと大好きって言わないとダメだよ。動物さんだって、自分のしたい事、やりたい事を行動で示しているんだから 」

 

確かに、本能のままに生きている動物にだってコミュニケーションがある。

 

いや寧ろ、本能のままだからこそ素直に相手に伝え、なまじ知性で考え、深読みして、疑惑に狩られるような人間のコミュニケーションよりも円滑だろう。

 

そう言えば、俺母さんに何かして欲しい事を言った事や、自分の気持ちを伝えた事なんてあったっけ……?

 

「……俺、やっぱ母さんに」

 

だがその後の言葉は枝が折れた音によって遮られた。

俺たちは音がした方向に振り返ると木陰に何やら人がいた。しかしその人影は俺たちが気づいた瞬間に森の奥へと逃げ込んだ。

 

しかし逃げ込んだ先にまた別の影が人影に向かって飛びつくようにぶつかった。影同士がぶつかり、人影はその衝撃でバランスを崩して木陰から離れ、太陽の光によってその姿は表された。

 

その姿は毒々しい紫色の髪色に、まるで科学者のような白衣を着ていた。身なりが酷くボロボロであり、白衣は色んな薬品が混じった酷い匂いは嗅いだだけで頭痛がしそうになり、頭もボサボサだ。見た限り怪しい奴だ。

 

「あいたた……随分と荒々しい歓迎だなぁ…… 」

 

「だ、誰だお前!? 」

 

「んー?おやおやこれはこれは…… 」

 

眼鏡を掛けている男か女か分からない中性的な顔立ちだが、恐らくは男だろう。男は急に笑いながら近づくと、俺は身の危険を感じてその人から離れ、レイ達が閃刀を手にし、その剣先を男に向けた。

 

「誰ですか貴方。いや、この感じ…… 」

 

「モンスター……! 」

 

「何っ!? 」

 

「おやおやバレてしまいましたか。まぁ影響は無いんですがね 」

 

眼鏡を上げ、反射で男の目が見えないせいか浮かべたその笑みが恐ろしく感じられた。

 

一瞬男から不気味なオーラが目に見えたようにも思え、周りの動物達も本能でそれを察したのかこの場から逃げ出した。

 

小鳥は音を出して逃げ出し、ここにいた熊さえも後ろに振り返って全速力で逃げて言ってしまった。

 

「え?何?何?お姉ちゃん達もその人も何だか怖いよ……」

 

「心咲ちゃん、俺から離れないで 」

 

震えている心咲ちゃんを守るようにそっと抱き、俺は六花達を呼び出す準備もした。心咲ちゃんにはバレてしまうけど、あの男はモンスターだ。なりふりは構っていられない。

 

しかし、背後のレイ達に剣を向けられているにも関わらず、男は余裕そうに笑っていた。まるで自分がここでやられる訳が無いと確信しているように……

 

「お前は誰だ!」

 

「おっと、やはり私をお忘れですか。では改めて……私は【ポルーション】と申します 」

 

男は俺に向かって丁寧にお辞儀をした。……おかしい、何か行動や言動に引っかかる。まるで俺の事を慕っているような感じだ。それに、忘れたってどういう事だ?俺はこの男と面識があるのか……?

 

いや、俺自身この男と面識が無い。という事は、カイムかカイリの時の知り合いなのかと考えたが、レイとロゼの様子からすると、ポルーションという男とレイ達は初対面であり、カイムの時と知り合った線は薄い。

 

じゃあカイリの時……?いや、デッキから伝わる六花達のポルーションに対する警戒心からして知り合いは無い。

 

じゃあこいつ……なんで俺の事を知ってるような言動をしてるんだ?

 

「お前、監視者なのか!? 」

 

「監視者?ふむ、どうやら私()以外にも貴方の事を狙っている組織がいるようですね〜これは良い情報だ 」

 

監視者じゃない?いやそれよりもこいつさっき()()って言っていたな。

 

つまりこいつは何かしらの組織の一人に過ぎないと言う訳になり、しかもこいつは俺を襲った監視者とは別の組織という事にもなる。しかもこいつは監視者自体の事も知らなかった……一体何がどうなっているんだ?

 

「ふーむ……それなら貴方を少し早くお迎えしないとダメですが……しかし貴方はまだご自身の事をまだ覚えていない様子だ。どうしたものか 」

 

「何を言ってるんだ……? 」

 

男はぶつぶつと何かを言っているようだが、小さすぎてよく聞き取れない。

 

やがて結論が出たのか、男は俺を見るとまた不気味に笑った。

 

「よし、結論が出ました。かなり早い段階ですが、貴方をお迎えします 」

 

「この……! 」

 

レイ達が何かを察したのか閃刀を男に切りつけようとしたが、男は2本の斬撃を軽く避け、1本の木の上まで跳躍した。

 

男が指を鳴らすと突然辺りに錆色の霧が発生した。すると森が溶けるように枯れ初め、動物達の阿鼻

叫喚の不協和音がそこら中に鳴り響いた。

 

地面にある雑報も色が抜け落ちていくように茶色く染まり、先程の幻想的な緑の風景が一気に廃墟的な光景に変わってしまった。

 

それに何だか匂いも変だ。鼻で息するどころが口で息するのも躊躇う程の匂いに心無しか気分が悪くなる。

 

「げほっごホッ!お兄ちゃん……何だか気持ち悪いよ。頭もくらくらして……げほっげほっ 」

 

心咲ちゃんが苦しそうに咳をしており、咳のしすぎで嗚咽までしている。背中を摩り、心咲ちゃん楽な体制をする為に仰向けにさせると……心咲ちゃんの口元には赤い血が溢れていた。それだけじゃない、俺の服の裾に赤黒い血が付着されており、全身に悪寒が走った。

 

「心咲ちゃん!?大丈夫!?心咲ちゃんっ!! 」

 

心咲ちゃんの吐血は止まらず、苦しそうに激しい呼吸をしている。しかし呼吸する度に血を吐き続け、また呼吸し、吐血するという悪循環が回っている。

 

心咲ちゃんだけじゃない、周りの動物も倒れており、その口元には血が付着されており、中にはもう命が無い動物もいる。原因は明らかにあのポルーションという男の仕業だ。

 

「お前……何をしたっ! 」

 

「なーに、少し取引したいだけですよ。ほら、リラックスしてくださいよ。深呼吸深呼吸 」

 

「花衣っ!騙されないで!この霧……毒よ! 」

 

「毒……!? 」

 

「はいその通りです。この毒は私のお手製でして、生物植物問わずに有害な毒素です。植物に関しては毒の周りは早いですが、生物に対しては少し個人差があります。その小さな女性ももうじき死ぬでしょう 」

 

心咲ちゃんの呼吸が浅くなっている。急いでハンカチで心咲ちゃんの口元を抑えても、毒の周りは止められず、心咲ちゃんは更に吐血し、俺のハンカチは白から赤黒く染まった。

 

「何でこんな事するんだ!何が目的だ! 」

 

「言ったじゃないですか。貴方を迎えに来たんですよ 」

 

「だからって……他の人を巻き込むなっっっ! 」

 

興奮してつい呼吸が荒くなると、毒が身体中を駆け巡り、俺は叫ぶと同時に吐血した。

 

頭が、腕が、足が、全身が痛い。目に見えるものが混じりあっているかのように見え、耳もなんだか遠くなっているように思える。

 

口の中が鉄の味に覆われ、頭が破裂するようだ。だがこれ以上心咲ちゃんに負担はかけられない。毒の痛みを堪え、俺は心咲ちゃんの抱く腕を決して強めず、産まれたてのうさぎを抱くかのように優しく、そのままの力を維持する。

 

「花衣さんっ!ごふっ……! 」

 

「かふっ……!ダメ……私達にも毒が…… 」

 

「レイ!ロゼ! 」

 

レイとロゼも毒の影響を受けてなのかその場で倒れ込み、最早戦闘は不可能だった。

 

「あ〜忘れてましたが勿論これモンスターにも影響はありますよ。さて、苦しいですが取引です。花衣さん、私と一緒に来てください。来てくれれば助けてあげましょう。証拠に……こちらにある液体を……と 」

 

ポルーションは水色の液体が入ったフラスコをこれみよがしに見せ、一滴持っていた小鳥にかけると、小鳥はこの霧の中でも嘘みたいに回復し、この場から逃げるように飛び立った。どうやら効果は本物のようだ。

 

「もし応じなければ……? 」

 

「貴方にそんな選択肢はありませんよ。まぁもし応じなければ貴方方はここで死亡……というかこの辺り一辺の生物は死に至りますね 」

 

「何だって……? 」

 

という事は……最悪パークにもこの霧が届くって事か?パークには動物おろかなんも関係ない一般人や母さんだっている。ダメだ、それだけは避けなければならない。

 

それを回避するにはもう、答えはひとつしか無かった。

 

「……お前について行けば……皆は無事なんだな? 」

 

「ダメ……で……す!花衣……さんっ! 」

 

「ダメ……よ……か……い…… 」

 

向こうでレイとロゼが引き留めようとしているが、もう限界ギリギリだろう。レイもロゼも、そしてここにいる全ての命を助けるにはもう、あのポルーションについて行くしかない。

 

レイとロゼの静止を聞かず、俺は心咲ちゃんをそっと地面に置き、余力を振り絞ってポルーションに向かって歩く、産まれたての小鹿のように足を震えさせながらも歩こうとしたその時、俺の腕を引っ張る者がいた。

 

「ダメで……す!か……いさ……まっ! 」

 

後ろには何とティアドロップが引き止めるように俺の腕を体全体を使ってしがみつくようにしていた。

 

「ティアドロップ……!?何やってる……んだ!早くカードに……! 」

 

「嫌です!花衣様をあのような方の元に行かせるわけには……けほっ!ごほっ! 」

 

ティアドロップもこの霧の影響で毒が回っており、俺にしがみつく腕の力も無くなり、その場から倒れてしまう。

 

「ティアドロップ! 」

 

「あ〜確かその方見た目の割に植物族でしたね〜ふむ、即効性の筈なのに毒の周りが少し遅いのは人型だからかそれとも他の六花達が力をその方に回しているのか…… 」

 

恐らくだが後者の方だろう。現に他の六花達が出てきておらず、カードの中にいる。恐らく大丈夫だろうが……肝心のティアドロップは今でも苦しそうだ。

 

「花衣さ……ま……ダメです…… 」

 

「ティアドロップ………… 」

 

ダメだ、もう時間が無い。限りある時間の中、俺は立ち上がり、ティアドロップに背を向けた。

 

「花衣さまっ…… 」

 

「……ごめん 」

 

そのまま顔を振り向くことなく、俺はよろめきながらポルーションの元に辿り着いた。

 

「さぁ……速く……皆を! 」

 

「はいはいそんな約束でしたね〜。じゃ、行きますよ 」

 

ポルーションは木の上から下りて俺の前に現れると、フラスコの注ぎ口を下に向け入った薬品を地面に全て零した。

 

これで皆が助かると思えば安心しきり、安堵の息を漏らした。フラスコの中身が空になり、霧が晴れるのを待ったが……霧は消える所か濃くなるばかりだった。

 

「な……んで……だ? 」

 

何故?どうして?何でだ?疑問が頭の中で溢れ帰り、顔で訴えるようにポルーションを見ると、ポルーションは愉悦の笑みを浮かべた。

 

「あ、これ全く持って関係ないただの水です 」

 

「そんな……だって……あの……鳥が…… 」

 

「あの鳥?あぁ……もしかしてこれですか? 」

 

ポルーションは白衣のポケットから亡骸の小鳥を取り出した。小鳥は間違いなくさっき解毒剤を受けて飛びだった小鳥だった。訳が分からず、力尽きるように倒れ込んでしまい、もう指1本も動けなかった。

 

「この毒は幻覚作用もありますからね。少しばかり幻覚を見させて貰いましたよ〜あ、因みに解毒剤はこちらです 」

 

ポルーションは小鳥をゴミのように投げ捨てると、注射器を取り出して俺の手首に注射を打った。

 

程なくして頭痛や吐き気も瞬時に収まったが、まだ体が思うように動けなかった。

 

「さてと、じゃあ貴方を連れてと 」

 

「待て!皆を助けるって約束だろっ! 」

 

「誰も皆って言ってないですよ。私はただ助けてあげましょうと言っただけです。ここにいる人達はどうでもいいです 」

 

「お前っ……!! 」

 

怒りが爆発して俺はポルーションに噛み付くように体を起き上がらせようとしたが、そうする前にポルーションに頭を踏まれ、俺は地面に押しつぶされ、土の味を味らわさせられる。

 

「か……い様……! 」

 

「か……いさ……ん! 」

 

「かい……っ! 」

 

「まーだ意識あるんですか。これが愛の力なんですかね〜何とも非科学的で鳥肌が立ちますが 」

 

「こんのっ……! 」

 

顔をあげようと腕に力を込めて起き上がろうとするが、モンスターの力の前には歯が立たず、俺は足1本で地面にへばり付けられて何も出来ずにいた。

 

「皆を……助けろっ!目的は俺だけだろっ!?他の人を巻き込むなっっ!! 」

 

「確かに目的は貴方だが正確には違う。私達の目的は……貴方の内に潜む物だ 」

 

横目から見えるポルーションの顔つきが変わり、ポルーションは更に踏んづける力を強めた。

 

「貴方のその怒り、憎しみ、焦燥、絶望……悪意……闇……私達はそれをお迎えしに来たのですよ 」

 

「さっきから何を言ってるんだ……! 」

 

「今のあなたには関係ないですよ。さて、ここにいる生物もあと数分の命です。最後に顔を見てやってください

 

ポルーションに蹴りあげられ、俺はティアドロップとレイ、ロゼ、そして心咲ちゃんに囲まれる所まで転がり、そのままうつ伏せのまま皆の様態を確認した。

 

皆の様態は最悪だ。血反吐を吐き、最早目さえも開けていない。呼吸も浅く、あと数分の言葉が真実だとこの目で理解すると、恐怖に支配されるようにこの現実を拒んだ。

 

「か……い……さ……ま 」

 

ティアドロップが這いずりながらも俺の所に近づいてきた。俺も這いずりながらティアドロップに近づき、腕を伸ばして彼女の手を握ろうとする。

 

ティアドロップも腕を伸ばした。酷く乱れた前髪で顔は見えないが、必死に俺たちは目の前の相手に這いずる。

 

あと少し、もう少しで手が届くその瞬間、ティアドロップの表情が見えた。

 

ティアドロップは……とても綺麗で美しく、儚い笑顔だった。

 

最後の最後でティアドロップは力尽きるように倒れ、手はあと数センチの所で届かなかった。

 

「……ティアドロップ? 」

 

名前を呼んでも返事が無い。手に触れても反応は無く、ティアドロップは動かなった。

 

「あぁ……ああああ…… 」

 

瞬間、俺は涙が溢れ、同時にティアドロップと過ごした生活も脳裏に溢れかえった。

 

一緒に生活した時や初めあった時の記憶が鮮明に蘇り、声まで頭の中で容易く再現出来る。

 

最初に出会った時には驚き、一緒に住んで最初は戸惑いつつも、何時しか当たり前のように過ごしてきた。

 

だが、その当たり前は目の前で簡単に壊れた。目の前には見たくない光景が広がり、何かがきそうだった。

 

「ああぁぁぁぁぁっっ!! 」

 

その時、俺の中から何かが溢れた。

 

ドス黒い何かが具現化し、俺の背後に取り付くと何故か体が軽くなった。

 

ゆっくりと立ち上がり、体の力を抜いて俺は憎しみを込めた目でポルーションを見た。

 

奴の顔を見ると自分の中の感情が抑えきれず、今にでもあいつをどうにかしたい気分だ。

 

「……殺してやる 」

 

そうだ……殺す。

 

徹底敵に、無惨に、残虐に、無慈悲に、この世に生きてきた事を後悔するぐらいに……

 

「殺してやるっっ!! お前のその顔も!存在をっ!全てをっ!!コワシテやるっっっっ!!! 」

 

自分の中の感情が爆発し、俺の周りには黒い何かが纏い、俺の手が黒い鉤爪へと変えた。

 

これならやれる。殺しきれる。ねじ伏せられる。

 

憎しみを、憎悪を、悪意を、闇を持って、俺は目の前の敵を壊す。

ここまで(〜90話)出てきたレゾンカードの中で強いと思うのは?

  • 六花聖華ティアドロップ、カイリ
  • 閃刀騎-カイムと閃刀騎-ラグナロク
  • 銀河心眼の光子竜
  • RRRリノベイルイグニッションファルコン
  • 炎転生遺物-不知火の太刀
  • 常闇の颶風
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