六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
ノ(死者蘇生)
よーし復活したぁ!さて、この話を持ちまして第3章は終わりです。
次の話は新章となり、物語は更に波乱になっていきます。花衣の正体、監視者の正体も徐々に近づいてくので、良ければ皆さんも考察を楽しみながら読んで言ってください。
さて、ここで皆さんに1つアンケートにご協力を願いたいと思います。
アンケートの内容は【デュエル描写の際に図は必要ですか?】というアンケートです。
詳しくいうと、下の図のような感じにしたいと思っています。
決闘者名: 残りライフ
□□□□□ 魔法・罠ゾーン
□□□□① メインモンスターゾーン
② □ エクストラモンスターゾーン
③□□□□ メインモンスターゾーン
④□□□□ 魔法・罠ゾーン
決闘者名:残りライフ
①モンスター名:攻撃力と守備力
②モンスター名:攻撃力と守備力
③モンスター名:攻撃力と守備力
④魔法又は罠カード:カード名(伏せ又は表側表示)
と言った感じですね。これをエンドフェイズが終わる度に書いていこうと思っていますが、そうなると文字数がかなり多くなるので、良ければ参考の程にご協力お願いします。もし、別の書き方があるのでしたらメッセージの方にてよろしくお願いします。
最後に、後書きの方で新たに出てくるキャラや、前回では説明しなったポルーションの大まかな解説も書いていますので、最後までお楽しみに!
「では、貴方を私達の元にお連れします 」
ついにこの時が来たと言うべきなのか、俺は仕方ないと思いながら監視者の元に着いていくと決めた。
監視者との約束により、この森や動物達、そして心咲ちゃん達を救えると言った監視者に対し、俺は救ったら監視者について行くと言った。自分で言ったことを今更無かった事なんて出来るはずも無く、監視者は俺を連れ去ろうと手を伸ばしたが、既の所で監視者は腕を伸ばすのを止め、後ろに振り返った。
「と思ったのですが、今日は貴方の活躍に免じて見逃します 」
「え……お、おい!俺の事連れていくんじゃないのか? 」
「いいえ、大丈夫です 」
俺はこの森や皆を助けてくれる事を条件に、俺は監視者の元について行くと提案した。監視者はそれを受け取って森や皆を蝕んでいた毒を払い除けた。
だから俺は監視者の所に行かないと行けない。行かないと釣り合わない労力な筈なのに、なぜが監視者側は大丈夫だと言ってきた。
「あれは貴方が勝手に言ったことです。私はそんな事しなくてもここの森を浄化しようと思っていましたし……着いてこなくても大丈夫です。それに、その人達が許してくれるとは思いませんし…… 」
監視者はティアドロップ達に視線を向け、俺もティアドロップ達に目を向けると、監視者達に凄い怖い形相で睨んでいた。監視者は余りの圧に肩をビクつかせ、そそくさと逃げるように俺たちから距離を離した。
意外と小心者なのかな……?
「ひっ……!と、とにかく!私はこれで失礼します。それと……これだけは言っておきます。決して自分の事を見失わないようにして下さい。どんな姿でも、自分の本当の正体が何だったとしても、貴方は【桜雪花衣】という存在だと言う事を忘れないでください 」
「俺の……本当の正体?何なんだそれ!? 」
「今は言えません。……貴方がそれに辿り着かない事を祈ります 」
そう言って監視者はワープゲートを作り、何も言わずに消え去った。
「……俺の本当の正体? 」
カイリやカイムでは無い何かとは思うが、監視者はそれを危険視していた様子だ。一体俺は……何だったんだ?それに、デュエルする前に俺に纏ったあの黒い影……まるでシャドウディストピアと同じような物を感じた。
もしもあの時の俺が本当の正体と直結する物だとしたら……俺は……生きてはいけない存在なのか……?
(……流石に飛躍しすぎか )
「花衣様…… 」
「大丈夫だ。それよりも……あの子、心咲ちゃんは大丈夫なのかな 」
ティアドロップ達が無事なら、心咲ちゃんも無事な筈だ。心咲ちゃんのいる切り株に行こうとするが、動物達がそれを良しとしないのか、行く手を立ち塞いでいた。
「グルルァァ! 」
熊やライオンと言った肉食動物や、小型の動物が唸り声をあげており、それ以上近づいたら食い破ると言わんばかりの目つきだ。当然人間が動物に勝てる訳も無い。このまま近づいたら自殺行為にしかならないだろう。
「花衣様!離れてください危険です! 」
ティアドロップもああ言っており、本来ここは大人しく引いた方が良いだろう。だけど、今だけは引く訳には行かない。
ここの動物達は、ポルーションのせいで人間に対してかなりの不信感を抱いている。心咲ちゃんは例外だろうが、他の人間に対してはもう心は開くことすら無いだろう。
だけどそれではあまりにも悲しすぎる。折角人と触れ合える施設にいるんだ。たった心無い1人の人間のせいで人を拒絶するなんてあまりにも悲しすぎる。だから、もう一度人を信じてもらえるように、俺は引く訳には行かない。
「人間のせいで、森や皆に迷惑をかけてしまった……本当にすまないと思っている。だけど、あんな人間だけじゃないんだ。心咲ちゃんのように動物と自然を愛する者だっている。だから……もう一度俺たち人間を信じてくれないか? 」
目を逸らさず、背けず、真っ直ぐ動物達の瞳を見て訴えかける。動物に人間の言葉を理解出来るとは思ってはいない。だけど心咲ちゃんは言った。
動物もやりたい事、したい事を行動で示していると。だから俺は、俺の気持ちを行動で示すだけだ。俺は動物達の群れに1歩足を踏み出した。
踏み出したと同時に前にいたライオンも右前脚を動かし、俺に向けて力強く吠えた。
「花衣さん! 」
「何もするなレイ! 」
恐らく武器を構えているであろうレイを止め、俺はそのライオンに目を向けた。威嚇ではなく、信じて欲しいと訴えかけるように見つめ、ライオンは唸り声を上げつつも俺を襲わなかった。
「頼む……もう一度だけ信じてくれ! 」
心からの叫びをライオンにぶつけたが、ライオンはそれを威嚇の咆哮だと勘違いしたのか、また1歩足を踏み出した。ライオンの熱い吐息が迫ってくる中、ダメなのかと諦めかけたが、森の茂みから俺とライオンの間を割って入るかのように何かが飛び出してきた。
茂みから飛び出してきた物は桃色の毛皮を持ち、うさぎと思わせるようなその姿は、間違いなく【メルフィー・ラビィ】だった。
「【メルフィーラビィ】!?なんでここに……というか危ないぞ! 」
うさぎとライオンという最悪な組み合わせが目の前に広がり、ライオンも例外なく【メルフィーラビィ】が見えているのか、【メルフィーラビィ】に視線を変えた。
今でも【メルフィーラビィ】を食べてしまいそうな雰囲気だが、【メルフィーラビィ】は体を震えさせながらもライオンに何かを訴えるように身振り手振りを交えて何かを伝えていた。
二本足で立って何かを表現したり、小さな腕を大きく動かして何かのサインも出していた。何だか愛くるしい行動だが、傍から見ればそれは挑発行動なので内心冷や冷やしている。
【メルフィーラビィ】はようやくジェスチャーを終えると、ライオンはゆっくりと後ろに下がり、他の動物達も心咲ちゃんのいる切り株の道を開けるように横に広がった。
「分かって……くれたのか? 」
【メルフィーラビィ】にそう訪ねるように見ると、【メルフィーラビィ】はこくりと頷いた。
俺は真っ直ぐ心咲ちゃんの所まで歩き、寝ている心咲ちゃんの体をゆっくりと優しく譲った。
「心咲ちゃん、起きてる?怪我は無い? 」
「ん……んん?あれ……私、寝ていたの……? 」
「良かった。無事だったんだね」
心咲ちゃんはゆっくりと体を起こすと、キョロキョロと森や動物達の事を不思議そうに見ると、急に心咲ちゃんの両目から涙が溢れ、泣き出してしまった。
「ひぐっ……えぐっ……怖かった……怖かったよぉ。動物さんや森が怖い人のせいで……ひぐっ、酷い事になって……それで……ぐすっ 」
どうやら心咲ちゃんはあの出来事の事を夢だと思っていたらしい。それなら好都合だ。例え現実であったとしても、こんな小さくて関係ない人を巻き込むことは無い。
夢なら夢で、忘れてれば良いのだから。
「そっか、怖かったね 」
「うん…… 」
心咲ちゃんは恐怖から逃げるように俺の胸に飛び込み、そのまま蹲りながら泣き叫んだ。せめて落ち着かせるようにと俺は心咲ちゃんの頭を撫で、泣き止むまでそばにいた。
「あのね……怖かったけど、怖いだけじゃ無かったんだ 」
「ん? 」
「夢の中で花衣お兄ちゃんが怖い人から私や動物さん達を守ってくれてたの。だから、怖いけど、怖くなかったよ 」
あながち間違ってはいない夢だなと内心驚いたが、表情を崩さず笑顔のまま頷いた。
「……その後はどうなったの? 」
「その後?うーん……覚えてない。その時で目が覚めたから…… 」
「そっか、それは残念だね…… 」
「でもね、きっとこんな感じの続きだと思うの。花衣お兄ちゃんのお陰で森は元通りになって、動物さん達も元気になった。ちょうど今みたいに 」
「うん心咲ちゃんがそう言うならきっとそうなんだろうね 」
実際に森を元通りにしたのは監視者だけど……心咲ちゃんがそれでいいならそれでいい。次に監視者に会った時は、俺からお礼を言っておこう。
「ところで花衣お兄ちゃん 」
「ん?どうしたの?」
「この後、花衣お兄ちゃんは花衣お兄ちゃんのママとどうするの? 」
そういえば、そもそもそれを何とかしたいがために心咲ちゃんはここに連れ出してくれたんだったな。勿論決心はついている。
「一緒に回りたいって、言ってくるよ 」
「うん!それがいい……よ……」
心咲ちゃんが突然体の力が抜けきると、そのまま寝息をたてて寝てしまった。無理もない、色んなことが起こったから、緊張がとけて一気に疲れが出てしまったのだろう。今は満足するまで寝かしておこう。
「……さて、ようやく本題に入る事になるけど 」
俺は心咲ちゃんを抱えながら【メルフィーラビィ】の方に視線を向ける。
「どうしてここに【メルフィー】がいる……という事ですね? 」
「そうだティアドロップ。しかもここの動物達も【メルフィーラビィ】の事が見えている。そして、さっきのやり取りからして、動物達は【メルフィー】達と少なからず面識があるようにも思える 」
いくら同じ動物とはいえ、完全初対面でかつ違う種族の動物……ましてやモンスターだったら餌と同類であるうさぎをライオンがすんなり話を受け入れる訳が無い。
俺の推測だが、この辺りの動物と対等に話せる辺り、【メルフィー】はこの森の中でかなり上の立場なのだろう。そもそもこの森自体中々不思議な所なんだが。
「……!花衣さん、何かが近づいてきます。気をつけてください 」
レイが何かを察知したのか、黒い閃刀を構えて森の奥へと視線を変えた。確かに、草木をゆっくりと踏む足音が徐々に大きくなり、何か大きい物が近づいてくる。
ティアドロップ達も続いて俺を守るように前に立ち、その何かに警戒態勢をとった。足音が一際大きくなるも森の影から大きなシルエットが浮かんだ。
遠目でもかなりの巨体であり、全長が3m程、あるいはそれ以上ある大きさだ。
太陽の光でシルエットに色が付き始める。色は全体的に桃色であり、4足歩行でこの場に現れたのは、やはりモンスターだったが……
「……でかすぎるだろ 」
でかい。とにかくでかい。そこら辺の巨木の長さと同じぐらいの全長であり、もしこのモンスターが二本足で立てば太陽の光なんて見れない程だった。
その巨大さ故なのか、動物達はこのモンスターを崇拝するかのように体を小さくし、頭を下げていた。
「これは……【メルフィーマミィ】! 」
「【メルフィーマミィ】……? 」
「メルフィー達の親見たいな存在ですよ。まさかこんな所で会えるなんて…… 」
ティアドロップ達が驚いたようにそのメルフィーマミィを見上げると、【メルフィーマミィ】は何も言わずにただ微笑んでいるような表情を浮かべるだけだった。
いや、動物だから喋れないのか?だとしたらどうやって意思疎通しようかと悩んでいた時、また声が聞こえた。
『この森を救ってくれたのですね。ありがとうございます 』
突然おおらかで柔らかい声のした女性の声が聞こえてきた。
「……?皆、何か言った? 」
「いいえ……何も…… 」
「私は何も言ってませんよ? 」
ティアドロップ達では無いよな。じゃあ誰だ?
『私です。あなたの目の前にいる【メルフィーマミィ】です 』
「!? 」
声は【メルフィーマミィ】と言ったが、【メルフィーマミィ】が喋った様子も無ければ、そもそも動物が喋るのかという疑問が浮かんだ。
テレパシーというものだろうか?確かに頭の中に直接語りかけてくるように声が少しエコー気味なような気もするが……
とにかく、意思疎通が出来るならなによりだ。
『まずはこの森を救ってくれたことに感謝します。また私達が生きる場所を失う所でした…… 』
「また……? 」
『私達の住処の森は、あの方によって破壊されたのです。そう、貴方達が戦ったポルーションに…… 』
「そうだったのか…… 」
あいつ……精霊の世界でもあんな風に森や動物達を苦しめていたのか……想像するとあいつの笑い声が耳元に聞こえてきそうで嫌になる。
『あの方に森を破滅され、戦う手段が乏しい私達は逃げる事を強いられました。しかし森は焼かれ、毒は蔓延し、事態は一刻を争いました。私達が唯一残された手段はこの世界に行くことでした…… 』
メルフィーマミィは相当トラウマになっているのか、喋っていて顔が青ざめていた。無理もない、住処があんな風な地獄に様変わりされたら誰だってそうなる。
「でも、どうしてわざわざこっちに……?そっちの世界なら魔法でなんか瞬間移動でワープ出来たりしそうだけど…… 」
『私達にはそのような魔力はありません。そちらの閃刀姫の方のように存在ごとこの世界に行くと、瞬時にこの世界のどこかに私達のカードが生まれます。そのカードが依代となって私たちは存在でき、そうして来たのがこの森という事です 』
つまり……レイ達のように存在ごとこの世界に行くと、ランダムの場所に自分達のカードが現れて、それが依代となってこの世界に来るのか……。ん、ちょっと待て……そう考えると、同じようにこの世界に来たレイとロゼと出会えたのって相当な奇跡じゃないか?
「レイ、ロゼ……お前たち凄いな。どこに行くのかも分からないのにこの世界に来て俺と出会うなんて……相当な確率だぞ? 」
「えへへ、これぞ愛の力ってやつですよ〜!私達の思いの強さが貴方と出会えたんですよ〜! 」
「というのも……実は完全にランダムって訳じゃないの。この世界に来る時には、その人との関係がある場所、あるいはその人と繋がりがある人の近くの所にカードが表れるの 」
「つまり……どゆこと? 」
「つまり……愛の力って事よ 」
お前もそう言うのかよ。まぁ、つまりは俺がカイムという前世があるからレイとロゼは俺の近くに現れることが出来たと言うことか。俺を探すのに時間がかかっていたのは、多分俺が前世の事を忘れていたからだろう。まぁ、前世の事を覚えてる人なんてそうそういないと思うけど。
「……?てことはメルフィー達はここに何らかの関係があるってことか? 」
『ええ。この森は私達が住んでいた森と似ています。種族が違えど共存して、皆が仲良く暮らしている……このような所がこの世界にもあるなんて驚きです 』
「俺だって驚いたよ。本当に絵本の中の森みたいだよ 」
ニュースでも言っていたけど、今は環境破壊が進んで自然が少なくなっていると言うけど……この森はそうは感じられなかった。ここに人間が立ち入るのはおこがましい程に綺麗で美しく、汚すことは罪だと思う程だ。
「……そうだ!なぁ【メルフィーマミィ】、ここにいる動物達全員お前達精霊が見えるのは何でだ?レイが言っていたが、ここの空気というか雰囲気が精霊の世界と似ていると言っていたけど…… 」
『……それは聞くより見た方が早いでしょう。着いてきてください 』
「分かった。けど……この子も連れてきていいか?流石に寝ている子を1人にするのは心配だ。ここの動物達を信用していない訳では無いけど…… 」
俺は膝の上で寝ている心咲ちゃんに目線を向けた。いくらここの動物達が心咲ちゃんの事を守ろうとしていると言っても、この子はまだ年端もいかない少女だ。森の中で1人には出来ない。それに、心咲ちゃんは無意識下で俺の服を掴んでいる。無理やり話す事も出来るのだが、それはあまりにもこの子に悪い。
『いいでしょう。それに、その子にも縁がありますからね 』
「縁……? 」
『歩きながら説明しましょう。どうぞこちらです 』
メルフィーマミィはメルフィーラビィを連れてゆっくりと森の奥に進み、俺は心咲ちゃんを起こさないようにゆっくりと切り株から立ち上がってメルフィーマミィについて行った。
「皆、カードに戻ってくれ。ポルーションの毒が治ったと言っても病み上がりだ。無理はするな 」
「そんな事…… 」
ティアドロップは目眩がしたかのように体をふらつかせ、レイとロゼ、カンザシも目に見えて消耗していた。
「言わんこっちゃない。別に危険なんかないから、ゆっくり休め 」
「……では、そうします。危険な目に会う前に必ず私たちを呼んでください 」
「そうするよ 」
少し不満ながらも皆カードに戻り、俺はメルフィーマミィの所について行く。
奥に進むにつれて森が深くなり、鳥のさえずりや羽音も多くなっていく。不気味な感じは一切なく、例外なく動物も住み着いていた。
「なぁ、お前達は一体いつからここに来たんだ? 」
『そうですね、もうかれこれ1年程でしょうか 』
「い……1年!?そんな長い事住んでいるのか!? 」
てっきり数ヶ月ぐらいかと思ったが、まさか1年なんてな……1年なんて、俺が六花達と会う前どころか、デュエルモンスターズなんてやってない頃だぞ。
やっぱり、精霊自体はかなり昔からこっちの世界に行き来しているという事なのだろうか……
「なぁ、お前たちのような存在もこの世界にはいるのか……? 」
『それは、存在事この世界に移動したという意味でしょうか? 』
俺は首を頷いた。
『正確な場所や数は分かりませんが、確かに存在します。基本的に、存在事この世界に来たとしても、私達の世界とは行き来は可能ですので 』
確かに、俺とレイが初めて会った時も、精霊の世界に連れていかれた事があったな。監視者もワープゲート見たいなもので行き来はしていたし、差程問題では無いのだろう。
「そうだ、確か心咲ちゃんに縁があるとか言っていたけど……どういう事だ? 」
前のメルフィーマミィの言葉を思い出し、俺はそんな質問を投げかけた。するとメルフィーマミィは心咲ちゃんの顔を見ると、快い笑顔で話してくれた。
『私達がこの森に来た時、そこにあったカードを拾ったのはその子なのですよ。拾ってくれたのはほんの最近なんです 』
「そうだったんだ 」
『その子には不思議な何かを感じました 』
「何かって? 」
『そうですね……言葉にするのは難しいです。精霊が見えない筈なのに、どこか不思議なオーラがある……なんと言うか、安心出来ると言った感じです 』
随分とふわふわした答えだけど、それは何となくわかる気がする。色んな動物達と対話したり、自然と共存している彼女は、この現代社会でも見ない特別な物を感じられた。
「そんな子が精霊が見えないなんて少し勿体ないような気もするけどね 」
『いえ、存外その方がいいのかもしれませんね 』
「どういう事だ? 」
『人間とモンスター……私たちは本来混じり合うことがない世界の住人同士です。そんな者たちが接触すると、
その方の運命を狂わせるかもしれないから……貴方のように 』
確かに俺は六花達と出会ったあの日から俺の人生は大きく変わった。レイと出会って、戦って、監視者という存在から狙われたり、さっきみたいにポルーションという謎の敵とも戦ってきた。
更にシャドウディストピアや超融合のカードが俺を蝕んだりと、少しずつゆっくりと俺の人生は大きく変わった。
正直、この先どうなるか俺にも分からず、もしかしたら命を落とすかもしれないと考えると怖くて仕方ない。
でも、悪いことばかりじゃない。
六花達と出会って灰色がかった景色は色をつき始め、人生に孤独を感じていた俺は孤独では無くなった。それだけは確かなのだから。
「悪いことばかりじゃないと思う。俺、六花や閃刀姫達皆と会えて良かったと思ってるから 」
『ですが…… 』
「勿論無理強いはしない。俺だってもうこの子をあんな怖い目にはあわせたくない。でもきっと……この子は精霊とも共存出来る。そう考えてる 」
『そうですね。……着きました。ここが貴方達の知る答えがある場所です 』
森が開けた場所に辿り着くと、そこには大きな泉があった。一見なんのおかしなところもないただの泉のようだけど、こんなところに何かあると言うのだろうか。
『少し待っててください 』
メルフィーマミィが泉の前まで歩くと、泉に向かって綺麗な雄叫びを上げた。獰猛な獣の力強い咆哮とは違い、まるで歌のような咆哮は泉に波紋を生み出し、泉の中心の空間が歪み始めだ。
歪みは空間を拗らせ、いつしか空間に亀裂が走り、1部の空間がガラスのように崩れ去ると、どこかへと通ずる穴が生まれた。
「こ、これは……何だ? 」
『これは……私達の世界へと通ずる道です。どういう訳か、こんな物がこの場所にあるのです 』
「原因が分からないのか? 」
『残念ながら…… 』
「みんなも心当たりはないか? 」
俺は六花達を呼び出して穴を見せると、皆も皆目見当もつかない様子だった。それよりかは、穴よりもこの空間に対して疑問を抱いている様子だったを
『この感じ……やはりこの辺り、私達の世界と同じですね…… 』
『間違いないですね。花衣さん、この森のここだけ……私達の世界です 』
「なんだって……? 」
つまり、ここの泉周辺が精霊の世界という事か?いや、それだとあの穴が精霊の世界に通じていることに対しての辻褄が合わない。それに、精霊の世界に行ったという感じもしなかった。どういう事だ……?
『その方達の言う通りです。この場所は私達の世界になりつつあります。まるで、この世界に溶け込むように…… 』
『しかもこれ、明らかに人為的な物ね…… 』
最初にレイが言っていた予想は当たっていたという事か。それにしても、どうしてこんな穴があるんだ……?
それにロゼの言う通りこれが人為的な物だとしたら、一体これを作ったのは誰なのだろうか。
怪しいとしたらポルーションだが、あいつがこれを作る理由が検討もつかない。だとしたら監視者か?いや、ポルーションも監視者も目的は俺だ。これを作る理由がどこにも見当たらない。
現時点でこの穴は、精霊の世界に繋がる道ぐらいしかわかる気がしない。
「一体誰が何のためにこんな事を…… 」
『理由は知りませんが、この森にいる動物達が私達の姿を見えるのはこの為です 』
『質問です。あの穴からモンスターが出てくる事はあるのでしょうか? 』
ティアドロップがそんな質問を投げかけた。確かに、あの穴から世界の出入りが可能になるということは、仮に凶悪なモンスターがここから出れば、近くにあるメルフィーパークは大変な事になってしまう。
『ご心配なく。あの穴での出入りは不可能です。ここから入る事も、あちらからこちらに入る事はありません。私たちで試しましたから 』
「良かった……なら一安心……なのか? 」
『ですが花衣さん、あの穴の周辺は間違いなく精霊世界です。このままどんどんこの世界が侵食されたら、いずれはモンスターも入り込んでしまう可能性もあります。破壊しましょう 』
「と言うけど……できるのか? 」
『やってみせます 』
レイがシャークキャノンを取り出し、問答無用で穴に向けて最大出力の砲撃を放った。光熱を帯びた光は泉の上を突っ切って穴に向かい、穴と光が衝突するその刹那だった。まるで何かに遮られたかのようにシャークキャノンの砲撃は既のところで消え去ってしまい、砲撃は跡形もなく消えてしまった。
『だったら接近戦で……! 』
今度は黒い閃刀を取り出して穴に向かって跳躍し、宙で閃刀を振りかざしたが、やはり既のところで遮られるかのように空中で火花が散り、レイの攻撃は届かず、そのままレイは空中でバランスを崩してしまい、泉に落ちていった。
『レイ! 』
すぐ様ロゼが現れてはウィドウアンカーを射出し、三又の手がレイを掴み、そのままレイをこっちまで引き寄せた。
『うぅ……ダメです。周りにバリアがあるのか攻撃が通りません 』
「じゃあ破壊は無理か…… 」
となれば、俺たちに出来ることはもう無い。だがここで無視する訳にも行かない。かと言って無視するのも危険だが……
「手詰まりだな…… 」
『そんなに深刻に考えなくても大丈夫だよ〜 』
突然背後から知らない女性の声が聞こえ、俺たちは咄嗟に後ろに振り返った。
振り返った先には白いローブを着た背の低い女性が大きな杖を持って俺たちの前に現れた。
「誰だ……? 」
「おお〜そんなに警戒しなくて良いよ。私はただの魔法使いだから 」
「姿からして怪しんだが…… 」
「ありゃりゃ、まぁ細かい事は気にしない気にしない。それよりもあの穴の事について気になるんでしょ?だったら教えてあげなくもないよ〜? 」
「……どうしてあの穴の事を知っている 」
「え?だってあの穴私が作ったやつだもん 」
ここに来て、あの穴の事についての謎が一気に解明できる人物が目の前に存在し、思わず目を丸くした。
そんな反応を見た謎の少女は腰に手を当てて胸を張り、何か誇らしげな表情をしていた。ローブで顔を隠してるから表情は分からないが、多分ドヤ顔してるに違いない。
「……あの穴は何だ? 」
「殆どそのマミィが言った通りだけど、本質は違う。あの穴は、この世界と精霊世界の繋がりを断つ物だから 」
『まぁ……そうだったのですか 』
「そうそう〜ホント、ここまで抑えるのに苦労したよ〜元はここの森殆どが精霊の世界と融合していたんだもん! 」
「何だって……!? 」
「ホントホント、あれから数年経ってるから私も頑張ったもんだよ! 」
少女はローブ越しでヘラヘラと笑いながら言っていると、真っ直ぐ俺の方に向かい、ローブの向こう側で俺の事を覗き込むように顔を上げた。
「……ふぅん、随分とカッコよく成長したね 」
「……え?今なんて……? 」
小声で分からないが、少女は何かを呟くと共に俺から離れ、ガラスで作られたような扉を出現させた。
「んじゃそういう訳で失礼するよ〜。バイバイ〜 」
「あ……おい!ちょっと待t」
俺の静止を聞かずに彼女はガラスで作られた扉を開き、扉はすぐ様砕け散って消えてしまった。
まるで何処吹く風のように気ままでありながら、嵐のように破天荒な少女は重要な事をサラサラと言って消えていった。
「……なんなんだあの子 」
『明らかにモンスターなのは確定ですね。それにしても……あの穴があの子が作ったものだったのは……私の見当違いでしたね 』
メルフィーマミィは真実とは違う考察を俺たちに言った事に負い目を感じているのか、巨大な体を下げて頭まで下げてしまった。
「いやいや、あんな正体不明な物を調べようとする気にもならないよ。間違えるのは仕方ない 」
『ですが…… 』
「それに、あの穴が無害だって事は分かっただけでも良しとしよう。これでこの森の謎は解決……って事で良いのか? 」
『いえ、まだあるわ。そもそもこの森が誰が作ったのか、まだそれが残っているわ 』
「あ、そう言えばそうだったな…… 」
そうだ、まだこの森を誰が作ったのかという疑問が残っていた。
パーク内でのこの森に通ずる隠し扉……そして手入れが施されている所や、違う種族との共存が出来てる程調教されている動物達……依然として人の手がないと成り立たない環境だ。一体誰が……?
そんな事を考えている時だった、森の奥からまた一人別誰かの声が耳に届く。
「そこにいるのは誰かな? 」
声は男の物だった。森の奥から慣れた足並みで俺達の元に姿を現したのは、どこか心咲ちゃんに似ている男だった。
「……おや、その子は……って、君は……見た所1人のようだが…… 」
1人……つまり霊体化しているティアドロップ達の事を見えていないという事になり、この人は精霊が見えない一般人だ。……いや待て、そもそも一般人なら何でこんな所知ってるんだ?
心咲ちゃんが言うにはここは心咲ちゃんしか知らない秘密の場所らしく、人が出入りしたところは見たことないと言っていた。それなのに、今目の前には人がいるということは……少なくともこの森に関与している人物という事になる。
「……貴方は? 」
「私は君が抱いている子の父親だよ 」
「父親……? 」
確かにどことなく似ている気はするけど……本当なのだろうか。ポルーションの件があってこの時ばかりは人間不信になっており、簡単に信じられることが出来なくなっており、俺は若干の警戒をしてしまう。右足を一歩後ろに下がった瞬間、体の揺れで抱えていた心咲ちゃんが声を小さく上げながら目をゆっくり開けた。
「ん……んん?ふぁぁ……あれ?ここどこ……? 」
目を開けた心咲ちゃんは場所を確認するように右へ左へと顔を動かすと、男がいる方へと視線を向けると、顔の動きを止めて眠い体を起こすようにビクッと体を震え上がらせた。
「あ!パパだ!なんでここにいるの!? 」
「パ……パパ!?じゃあやっぱりあの人心咲ちゃんの……お父さん!? 」
「はっはっは。まさかここに娘がいるなんてね。まぁとにかく立って話すのもなんだろう。向こうにある切り株で座って話をしよう 」
そう言って、心咲ちゃんのお父さんは案内するように森の奥へと進んで行った……
_数分後
「いや〜まさか心咲がこんな奥深い所にいるとは……」
「その言い様……もしかして、この森を作ったのって……貴方なんですか? 」
「いかにも。この森を作ったのは私だ 」
なるほど……言われてみれば納得いくと言えば納得いく。パーク内に隠し扉を作らせたり、森を手入れするにはかなりの人員が必要だ。その人員が動かせるほどの権力を持っているとすれば、それはパークの総責任者しないない。そして、このパークの総責任者である心咲ちゃんのお父さんが、いま俺の隣にある切り株に座っている人この人なのだ。
「確か君は……【桜雪花衣】君だったかな。ロマンス・タッグデュエルの戦いは見させてもらったよ 」
「あ、ありがとうございます……やはり貴方もあそこに……? 」
「私は残念ながら1回戦で負けてしまったけどね。ええと……あの武士や妖怪のようなものを使う子達に負けてね 」
多分、炎山と白井の事だろう。炎山達が戦っていたのは、心咲ちゃん達親子だったのか。
「それにしても、どうして君がここにいるんだ?心咲は昔ここを訪れていたのは知ってはいたが、君まで来てるとは意外だったよ 」
「あぁ……それは心咲ちゃんから連れてこられたんです。俺を元気つかせる為に、秘密の場所だってこの森に…… 」
「そうか、迷惑をかけてしまったかな? 」
「い、いえいえとんでもない!むしろ感謝こそしてますよ! 」
あの子のおかけで、母さんに対する気持ちも再認識できたし、自分の気持ちに少しは素直になろうと思えたのだから、感謝してもしきれないほどだ。
そんな感謝を胸に、俺は遠くで動物と戯れている心咲ちゃんを見つめる。
「本当に動物に好かれてますね 」
「あぁ。やっぱりあの子には不思議な力があるんだろうねぇ。この森を持ったかいがあるってものだよ 」
「そういえば、そもそもこの森って何ですか? 」
「この森……と言うよりかは、この一帯の山は私の所有物さ。そもそも、この森はこの山に元々あった物なんだ 」
「こ、この一帯の山がしょ……所有物!? 」
「ははは、なーにそんな対したお金じゃないさ。その気になれば安い山は誰だって買えるよ 」
そうは言うが山を買うには最低でも数百万はするって聞いたぞ……それをこの辺り一帯っていうと、数百万どころじゃない、数百億の域にも届くんだぞ……それをこの人は済ました顔で笑っている。
改めてロマンス・タッグデュエルの参加者がどれ程の大御所なのか思い知らされる。
「山を買って、この近くにメルフィーパークを作ったのも私だ。私は大の動物が好きでね。色んな動物達を出会い、触れ合え、癒されて欲しくてメルフィーパークを作ったんだけど、他にも理由がある 」
「理由……? 」
「……動物達を救いたかったのさ 」
「……? 」
「君は、世界中で殺処分されている動物の数を知っているかい? 」
「いえ……詳しくは 」
話を聞いた限りでは、毎年犬が数万匹いると聞いている。だが世界となると調べた事はないので分からなかった。
「毎年約500万匹以上さ。この国では1日90匹程殺処分されているとされている 」
「そんなに……!? 」
「保健所での数が多すぎるといる理由で犬や猫が殺処分されている。他の動物でもそうだ、捨てられて、危険視され、乱獲され、更には娯楽の為に狩りの獲物にされているのも含めると、更に数は多いけどね。最も、多いのは飼い主に捨てられたペットの数だけどね 」
「…… 」
「だから、それらの動物達を引き取ってメルフィーパークで育てている。そして、充分に保護したらこの森に放っているんだ。動物はやはり、自然と共に生きるのが1番だからね。まぁ、放した動物はパークに戻ってくるけどね 」
なるほど、違う種族同士が仲良くしてるのもこの人のおかげなのか。
「でもまぁ、独りよがりのエゴだとは思う部分もある。動物を保護しているのに結局野生に放っている部分を見れば、金持ちの道楽と思われても仕方ない 」
俺はこの人の話を黙って聞いた。この人は心咲ちゃんと同じ……いや、それ以上に動物の事が好きなんだ。
動物の為に山を買い、施設を作り、自分の手で保護している。どれだけの資金や労力が掛かっているのか想像が出来ないし、きっとそれを教えてと言われたら彼は笑って大したことはしてないと言うだろう。
「俺はそうは思いません。心咲ちゃんの周りにいる動物達を見れば分かります。ここの動物達は少なくとも人に対しての警戒心は無いし、あんなに人に接しているんだ。貴方の言うエゴは、動物達にとっては良い物だと俺は思っています 」
「嬉しいこと言ってくれるね 」
「本心ですよ 」
「だろうね 」
彼はそう言って笑うと、俺の足元に何か人肌のような温かさを持った物が触れると、俺は足元を見た。
足元を見るとそこには綺麗な黒猫が俺の足元に顔を擦り付けてきた。
「動物は人の本心に寄り添う生き物だ。君の心は動物達が教えてくれる 」
猫が外にいて驚いたが、そういえば元々猫は野生動物だからよくよく考えたら普通か。にゃーとなく猫を抱き抱え、膝の上に乗らせると、黒猫は膝の上で丸くなってしまった。
「その黒猫は【サイ】君だね。黒猫は甘えん坊だが、この子は気難しい性格だ。だけど初対面の君に懐いている。やはり君は優しい人だね 」
「え、この黒猫知ってるんですか?」
「ん?ここにいる動物は元々パークにいた子達だよ?自分がつけた名前の動物は全員覚えているよ 」
「え、それってつまり…… 」
「ここにいる動物達や、パーク内の動物達の特徴や顔つき、そして付けた名前は全部覚えているよ 」
あまりの凄さに俺は絶句した。いやまさかとは思い、俺は適当な動物を指を指すと、彼はすぐ様名前を言い当ててはこちらに呼び出した。
指を指し、名前を呼ばれた鹿は彼の元まで嬉しそうに走り出し、彼の手を待つかのように顔を差し出した。
彼は手を伸ばして鹿の顔を優しく撫でると、鹿は嬉しそうに更に顔を手に擦り寄らせた。
動物とあんな風に接している心咲ちゃんも凄いけど、この人もすごいな……やっぱり親子なんだなと再認識される光景だ。
「さて、ここでの長居は無用だろう。ここにいると時間の感覚が忘れてしまうからね 」
「え……うわっ!もうこんな時間!? 」
激動のデュエルやら色んなことが起こったのもあり、携帯のデジタル時計を見ると、もう15時を過ぎていた。
パークに入ったのが11時頃だったから……いつの間にか4時間程過ぎていた。
「じゃあ……俺はこれで 」
「うん。おーい!心咲!花衣君が帰るって! 」
「え〜!もう少し居ようよ〜! 」
「我儘を言うんじゃないよ 」
心咲ちゃんは俺を引き留めようと腰に手を回してがっちりと掴んでいた。まだまだ遊び足りないと訴えるように、上目遣いで俺の事を見ていた。
謎の罪悪感が込み上げてきて、もう少しだけここにいようかなと心が揺らいでしまう。だけど長い事時間をかけては流石に母さんも心配に思うだろう。それに……
「……ごめんな。俺この後、一緒に居たい人がいるから 」
「そっか……うん、なら良い。でも、次はもっともっと遊ぼうね!……そうだ、ねぇねぇ、ちょっと屈んでもらっていい? 」
心咲ちゃんに言われて俺は膝を屈んで姿勢を低くすると、心咲ちゃんは何かを企むように笑顔を浮かべると、突然俺の頬に唇をつけた。
「……へ? 」
「えへへ、またこっちに来てね? 」
「あ……いや…………うん、分かっ……た 」
頬に口付けをされ、心咲ちゃんは満足そうに笑顔を浮かべ、その後ろにいる心咲ちゃんのお父さんも驚きはしたが、しばらくすると娘のイタズラを笑って許してくれる父親の笑顔を見せた。
そしてティアドロップ達の視線も針のように刺さっている。頼む!そんな気は起こさないし起きないからこればかりは許してくれ……!
「おーおー、これはまた年の離れた恋人だね 」
「ちょ!? 」
「ま、子供のイタズラだろうさ。良ければまた来ると良い。今度はそちらの親御さんとも来てくれ 」
「じゃあ、そうします。色々ありがとうございました 」
「それはこちらのセリフだよ。ほら心咲、挨拶しなさい 」
「バイバイ花衣お兄ちゃん!」
「うん、じゃあね心咲ちゃん。それと……えーと…… 」
そういえば、心咲ちゃんのお父さんの名前を聞いていなかった。いや、もしかしたら言っていたのかもしれないと考え、頭の中の記憶を辿ったが申し訳ないことに思い出せずにいた。
お父さんはそれを察したのか、慌てて名前を言ってくれた。
「あぁ忘れてたよ。私の名前は
「じゃあ三木さん。さようなら 」
兎乃親子に見送られながら俺はパークへと戻る道を歩いたが、それでも皆の痛々しい視線は解けなかった。
「……なぁ、子供のイタズラみたいなものって三木さんも言ってただろ?そんなに怒らなくても…… 」
『ご心配なく、私もいちいち子供のやる事にみっともなく嫉妬なんてしないので 』
「レイと花音に対してはすっごく怒るのにか? 」
『あの方達はライバルみたいな者です!第一、花衣様に相応しいのは私です 』
『はぁぁ!?何言ってるんですか!?花衣さんの隣にいるべきは私です〜! 』
『いいえ、旦那様のお隣は私です! 』
『何言ってるの?私以外居ないでしょ 』
「おいおい…… 」
またいつも通りに俺を取り合うように喧嘩が始まり、先程まで皆命に危機があった事なんて信じられず、それを考えると無意識に笑ってしまう。
『おや?何かおかしい所がありましたか? 』
ここまでの案内を担っていたメルフィーマミィは、不思議そうにそう訪ねてきた。
「いや、なんかいつも通りで安心したなって。さっきまで皆、危ない状態だったから…… 」
今でも背筋が凍りそうな程の悲劇であり、もう思い出しくもない光景だ。でもそんな状況の中でもこうしていつも通り言い合ったり張り合ったりのを見ると、その光景が薄れてきてとても安心できた。
「それに……普通じゃない俺の事をまだ想ってくれてるのがな…… 」
ポルーションに向けたあの力……手が鉤爪のように鋭く、背中から尻尾のような物が生えたあの黒い影が俺の中から生まれてきた。
あれがもし俺の正体に繋がるものだとしたら、俺は……
『花衣様? 』
「……あ、いや……何でもない 」
ようやくパークに続く扉まで辿り着き、後は扉に触れれば隠し扉が自動ドアみたいに左右に開き、パークに入れる筈だ。
『では、私達はここでお別れですね 』
「あぁ。色々とありがとう 」
『こちらこそ、森と心咲を守って下さりありがとうございます 』
「それは監視者のおかげだよ 」
『いいえ、確かに貴方の言う監視者が森を元に戻しましたが、貴方は皆を助けるために身を呈してあの悪しき者と戦いました。貴方のおかげで監視者という方も毒の浄化に集中でき、全てが救われたのですよ 』
「そう……なのかな 」
『謙虚すぎですよ 』
だけど、俺自身は戦っていただけだ。俺はティアドロップ達を守ることも、助けることも出来なかったんだ。それ故に、気持ちの負い目の方が大きい。
「じゃあ、そろそろ帰るよ。……なぁ、1つ頼み事良いか? 」
『何でしょうか 』
「もしも、またポルーションみたいな奴が現れたら……守ってやってくれ 」
『……その時は力の限りあの子達をお守りします 』
メルフィーマミィだけではなく、他のメルフィーモンスターも守ってみせると言わんばかりにメルフィーマミィの胸にある青色のハートの部分の中からひょこっと現れ、可愛らしくも頼もしい顔つきをしていた。
ずっとそこにいたのか……まるでカンガルー見たいだな。
最後に良い物を見れたと思いながら俺は隠し扉に触れ、扉はゆっくりと開かられた。
「じゃあね。ほら皆、行くよ 」
ティアドロップ達をカードに戻し、これで後はこの扉をくぐれば後は母さんに会うだけだ。
『はい、また会う日を楽しみにしています 』
俺はメルフィー達に見送られながら扉をくぐり、別世界のような森から抜け出した。
抜け出した先は現実味を帯びた風景が広がっていた。多くの人と動物で賑わい、人々はごく普通に暮らしていた。この壁の向こうでは大変な事が起こった事なんて誰も思っていない事だろう。
「……よし、じゃあ母さんに会いに行こうかな 」
『ですが花衣様、お義母様の場所は分かるのですか 』
「多分だけど、あの動物がいる所にいるよ 」
連絡しなとも、多分母さんはあそこにいる。そう思い、俺は連絡もせずにある場所へと走っていく。
人混みをかき分け、向かった先には木材で作られた大きなドームのような物があり、そこには【猫ハウス】。つまりは猫がいるペースへと俺はたどり着いた。
母さんは動物の中では猫が1番好きであり、特に黒猫が大の好きだ。多分だけど母さんはここにいる。
ドームの扉を開き、中に入ると天井が高い広々とした空間には大量の猫がジャングルジムのように組み立てられた遊具やキャットタワーで遊んでいる猫もいれば、柔らかいカーペットの下で寝ている猫もいた。
あまりにも広く、人もまばらにいるので母さんがいてもこれじゃあ探しようがない。
「あの、すみません! 」
俺は受付の人に、母さんの特徴を言ってここに来てないかと尋ねた。
「あぁ、その方でしたら2階の奥の席にいらっしゃますよ 」
「ありがとうございます! 」
急いで近くの木の螺旋階段を駆け上がり、息を切らして2階に辿り着く。2階はまるでカフェのような作りになっており、近くにはケーキ等の焼菓子が置かれているガラスのショーウィンドウと、本棚が並んでおり、ここも例外なく猫が気ままにくつろいでいた。
「いらっしゃいませ。この猫スペースはカフェとしてもご利用なられますが如何なさいますか? 」
「いえ、人を探しているので 」
俺は2階の奥にある窓際の席まで移動し、数あるテーブル席から母さんを見つけ出す。そして、左手の方向に顔を向けると、窓越しの夕日に照らされて輝いているプラチナブロンドの長髪の女性が、膝に黒猫を抱きながら本を読んでいた。
「母さん! 」
見間違えようがない女性をそう呼ぶと、母さんは驚いたように俺の方に顔を向けた。
「花衣……!?貴方、レイちゃんとロゼちゃんはどうしたの? 」
「置いてきたというかなんと言うか…… 」
実際は俺のショルダーバッグの中にあるデッキにいるのだが、本当の事は言えないのでとりあえず誤魔化しながら向かいの長椅子に座った。
「とにかく別れてきた 」
「どうしてそんな事を…… 」
「母さんと一緒にいたいから 」
そう言うと、母さんはまた一段と驚いた様に肩をビクッと上がらせ、それにびっくりしたのか膝の上に寝ていた黒猫も起こしてしまう。だが俺はそんな事気にせずに話を続けた。
「……母さん、ごめん。さっきあんなに酷い事を言って…… 」
「良いのよ、本当の事だもの。ろくに帰らないくせに、満足に連絡もしない親なんて、突き放されて当然よ…… 」
「それでも俺は母さんの息子だ!俺……母さんと一緒に居たい!せめてここに帰って来たくらいには……ね? 」
「花衣…… 」
「俺は……会えなかった時間と同じくらいに……いや、それよりも長く過ごしたいんだ 」
小さい頃から言えなかった気持ちを母さんにぶつけ、母さんはようやく顔を向けてくれた。
向けられた母さんの右目から、無意識なのか涙が一粒落ちていった。
「……ごめんね 」
「なんで謝るんだよ 」
「っ……いやね、私ったら……私だってそう思ってたのに、言えなくて……情けないって思ってね 」
母さんは静かにすすり泣きながらかけていた眼鏡を外しては涙を吹き、顔を手で覆って俺に泣いている姿を見せないようにした。母親のみっともない姿を見せたくは無いのだろう。
「こんな最低な母親なのに……それでも私を母親って言ってくれるの? 」
「当たり前じゃないか 」
「……貴方、見ないうちに大きくなって…… 」
母さんは手をどけて顔を見せると、子供の成長を見て喜んだ笑顔を涙を浮かべて見せてくれた。膝の上に乗っていた猫も、母さんの肩に乗って涙を拭こうと母さんの頬を舐めたりしており、俺もカバンの中にあるハンカチをとって母さんに差し出した。
「あらあら、ありがとう。……じゃあ、一緒に居ましょうか。どこに行きたい? 」
「母さんの好きなところならどこでもいいよ。行きたい所があるならついて行くし、ここに居たいならここに居るよ 」
「じゃあ、ここで猫とゆっくりと過ごしましょう。向こうにケーキや本もあるから、それでも食べて閉園時間までね? 」
「うん、じゃあ俺は……ショートケーキでいいかな 」
こうして、俺と母さんは閉園時間まで近づいてくる猫達と共に過ごし、激動の土日の二日間は終わりを迎えた。
だけど、この2日間が俺の運命を大きく変えたなんて、この時はまだ誰も知る由が無かった……
キャラ解説
兎乃三木(うさぎのみき ) 年齢40代後半程
兎乃心咲の父親であり、メルフィーパークの創設者。心咲にも負けない程の動物を愛しており、動物と自然の共存の為、メルフィーパークの周りにある全ての山を所有しており、そこにパーク内の動物を放っている。
元々動物を保護する為に山を買ったが、動物達の素晴らしさを伝える為にメルフィーパークを建設。今でも、殺処分となった動物や、野生の動物を保護をしている。
ちなみに、出会った動物に名前をつけており、パークの動物全てに名前をつけている。
出会った動物の顔は覚えおり、同じ種類の動物でも、動きの癖や顔つきで判別可能。
ポルーション 年齢????(外見は20代程 )
如何にも科学者ですよと言わんばかりの白衣を身にまとい、突如として花衣の前に立ちはだかった謎の男。
自身のオリジナルデッキ【汚染大罪】を使用し、極度に魔法を嫌う事からか、このデッキには魔法カードが存在しない。
魔法の事になると性格が豹変し、荒々しい性格になる。
精霊の世界でも悪行に手を染めており、メルフィー達の住んでいた森を汚染している。
花衣とは面識があるのか、まるで目上のように接してはいるが、その関係性と目的は未だに不明。モンスターなのかも不明であり、謎に包まれている。
ここまで(〜90話)出てきたレゾンカードの中で強いと思うのは?
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閃刀騎-カイムと閃刀騎-ラグナロク
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