六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について   作:白だし茶漬け

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ヴ……ヴェルデアナコンダ君が禁止……?(今更?)
まぁこっちとしてはあんまし融合デッキは使ってないんで良いんですけどね。
しかもマスターデュエルの方は無傷。対して問題ないな!
さて、中々遅い更新となってしまい申し訳ございません。

さてこの度、またこの小説がランキングに掲載される事になり、誠に感謝します!今の所最高順位が60位前後なので、更にランクアップしたいなと思っております。


集う日常

また俺は夢を見る。

 

苦しく、辛く、それでいてどこか懐かしい夢を。

 

辺りは暗く、何も見えない光景が広がっていた。光さえ通らないこの闇の中で、俺はただ一人ここにいた。

冷たくて何も無く、そして目の前にはこの暗闇に溶け込むような影がいた。

 

「……誰だ? 」

 

近づいて足を1歩前に出した途端、影は寄せ付けないオーラを実体化させるように衝撃波を放ち、俺を近づけさせないようにしていた。

近づく所か吹き飛ばされそうな衝撃に立っているので精一杯だ。足に力を入れて踏ん張り、何とか吹き飛ばされないようにしたが、それは時間の問題だろう。

 

「お前は一体誰だ!誰なんだ! 」

 

声を上げようにも影は喋ることおろか指一本も動かす気は無かった。やがて地に着いていた足が地面から離れ、そのまま俺は影から距離を離れ、どこかも分からない場所に吹き飛ばされる。

 

「ハヤく……コイ…… 」

 

吹き飛ばされた中で、影は確かにそう言った。

こだまする声の中、俺は暗い底よりも深い所に落ちて行く。

 

 

__

 

____

 

_____

 

目を閉じた中、俺は夢と同じように落ちていった。そして刹那の時が過ぎた時、頭から地面にぶつけ、その痛みで俺の意識は覚醒した。

頭の中が光っているような感じで視界が奪われ、頭をぶつけたから当然のように頭が痛い。

 

「あいってて……派手にぶつけたか? 」

 

たんこぶとかは……出来てない。痛みも無くなり初め、改めてついさっきみた夢を思い返す。

 

今まで見た感じとは何かが違っていた。今まではまるで俺が他の何か別の物になっていたような感じだったが、さっき夢の中で見た俺は、俺自身だった。

だが同じ共通点らしきものが1つあった。

 

あの懐かしさ……あの影から感じた懐かしさは今までの夢と同じだった。そして、あの影が言った最後の言葉……「早く来い」。確かに影はそう言った。

来いって……どういう事だ?どこに行けばいいんだ?そもそもそこはどういう所なんだ……?

あまり良い場所では無いような気はするけどな……

 

考えたら考えたらで分からくなってきた。ここは綺麗さっぱり忘れて気持ちを切り替えるべきだ。転げた体を起き上がらせた途端、机の上に置いてある制定カバンの中から光が漏れだした。

 

「花衣様!お身体の方は大丈夫ですか!?どこか痛むところはありませんか!? 」

 

光と共にティアドロップが実体の持った体で飛び出し、ぶつけた頭を労わるように俺の頭に優しく触れた。

そしてさりげなく唇を近づかせてキスを迫ってくるのを俺は見逃さなかった。

 

「だぁぁ!大丈夫だからそんなに口元近づけるな! 」

 

もう六花達全員がこの世界に来てから数日前にもなり、日に日に積極性が増したようにも思える。まぁ元からそうではあったが。

しかし今となっては実体化の制限が無くなり、抑えられた物を爆発しているようにも思える。

 

そして今、ティアドロップに押し倒されて人間とモンスターの力の差が顕になっていた。

両手で恋人繋ぎをしているがやってる事は獲物と獣ような光景だ。細身の腕の力に勝てず、伸ばされた腕がベットに抑え込まれ、万事休すとなった。

 

「ふふ、観念して下さい 」

 

「くっそぉぉぉ!! 」

 

「こらー!エッチなの禁止ぃぃ! 」

 

ティアドロップの背後にスノードロップがティアドロップの両肩を思い切り掴み、そのまま重心を後ろに傾け、自身の全身の力を使って合わさった手と絡まれた指が離れ、ティアドロップはスノードロップと共に大きな音を立てて地面に叩きつけられ、そのままお互いを抱き合うような状態になっていた。

 

「あっ……!」

 

実体化したモンスターは現実の世界にも当然影響する。精霊が見えない人でも精霊が見えるし、精霊側からも物に触れられる。そして、今みたいにぶつかって音を出したら当然その音は他人にも聞こえる。さっきみたいに大きな音なら尚更だ。

 

「花衣〜?大きな音したけど何かあったの〜? 」

 

下から母さんの声が聞こえ、階段から足音が近づいて来ていた。

 

「まずい……!2人とも早く隠れろ! 」

 

ティアドロップとスノードロップは咄嗟に霊体化で姿を消し、その後直ぐに部屋の扉が開かれた。

扉の向こうはエプロン姿の母さんが心配そうに見つめていた。

 

「花衣?大丈夫? 」

 

「あ……うん。大丈夫だよ 」

 

「そう?そう言えば今日、勉強会でしょう?早く着替えてご飯食べに来なさい 」

 

そう言えばもう勉強会の日か……何事も無ければ良いけど。

取り敢えず俺は母さんの服を私服に着替えようとしたが、後ろから2人……いや、多人数の視線を感じた。

 

「……あまり見るな 」

 

「み、見てませんよ? 」

 

本当かどうか確認する為後ろに振り返るとティアドロップとスノードロップはさっきの抱き合っている状態のまま俺をガン見しており、他の六花は両手を使って目を隠しているが、指と指の隙間から覗いていた。

この立場から見てみると案外バレバレなんだな……

 

「これは着替えるのも大変になりそうだなぁ 」

 

上はまぁ良いとして、問題は下だ。流石に下着は見せられないし見せたくない。取り敢えず布団を使ってそれを腰に巻き、下を見せないようにしていた。六花達の落ち込んだ声が聞こえるが、それを無視して俺はまず下の寝巻きを下ろし、クローゼットから取り出したズボンを履く。

 

この行動をしていると、何だか小学校の時を思い出した。小学校のプールの授業の時男女共用で教室で着替えていた。男子は下着の代わりに水着を履いて登校していた人もいれば、こんな風にタオルで下を隠してズボンを脱いで水着に着替えていた人もいた。

女子も大抵は同じぐらいだ。何だか懐かしいなぁ……

 

 

(……あれ?そう言えば俺……どこの学校に行ってたんだっけ?)

 

学校名が思い出せず、それどころか中学生の事すらも思い出せない。それに俺の部屋には卒業アルバムさえ見かけない。母さんが持っているのか?後で聞いてみようかな。

 

「もう少し……もう少し下に…… 」

 

何故か後ろで六花達がコソコソ話している。もう少し下とかこっそりズラすとか言っており、六花達の視線を辿ってみると……布団がズレて俺の腰あたりの下半身が顕になっていた。

 

「のぉぉぉぉぉぉ!?!? 」

 

「花衣〜!?また叫んでどうかしたのー!? 」

 

勉強会の日に限って朝からこの始末だ。果たして……今日、大丈夫なのだろうか。

 

 

 

_数分後

 

激動の朝を乗り越え、そろそろ10時頃になる。約束ではそろそろ炎山達が来る頃だ。リビングでゆっくりテレビを眺めると、丁度インターホンの音が鳴った。

インターホンに近づき、画面を覗くと炎山と機羽、そしてレイとロゼがいたが……他にも後ろに3人ほどの人影がいた。よく画面を覗いてみると……間違いない、花音や白井、そして河原もいた。

 

「ちょ!? 」

 

急いでリビングを抜けて玄関を走り、家の扉を力強く開ける。すると外の向こうにには教科書が入っているだろう鞄に私服姿の炎山達がいるが……その背後には見慣れた3人が確かにいた。

 

「よ、来たぞ 」

 

「炎山!なんで花音達までいるんだ? 」

 

「ん?試しに誘ったら是非って花音達から連絡が帰ってきたからよ、そんで連れて来た 」

 

「いや急すぎだろ…… 」

 

「それは悪かったって。まぁでも花音もいるしなぁ?捗る事間違いねぇって 」

 

肩に腕を置いた炎山はニヤニヤと笑った。

「お、お久しぶりです花衣さん!あの……いきなりですけど、私もお力になれると思うので! 」

 

「花衣さん!私も力になりますよ! 」

 

「私も…… 」

 

花音とレイ、ロゼが小さくガッツポーズをしたが、対する俺は二階にある後ろの窓から覗いているであろう六花達の圧が刺さりに刺さっていた。

 

あぁ……これ、今日修羅場になるな。

 

俺はそう確信し、勉強会が始まった。

 

 

「……うげぇ、ここわっかんねぇ 」

 

「ここは解の公式を使って後は簡単な式の計算ね 」

 

「すみません、この文法が分からないんですけど…… 」

 

「これはね、英語圏の人はお米の数はかぞえられないからここの書き方が変わっていくの。これだと…… 」

 

次々と炎山と機羽の質問に難なく答えて行き、全員母さんの知識に驚きを隠せずにいた。

 

「凄いですね。炎山さん達では無く、私達の所までサポートしてるなんて…… 」

 

「しかも全問正解でかなり分かりやすい。その辺の教師よりも腕が良いわ 」

 

花音達も母さんの教えを受け、問題集には答案よりも完璧な答えが書かれていた。相変わらず人に何かを教えるのが上手い人だ。

 

「こ、これが無限の知識を持つ者(インフィニティウィザード)の力……!我が絶望なる深淵(デザストネメシス)の力が圧倒されるとは……! 」

 

「要するに、助かったって事で良いのかしら? 」

 

「え、えへへ……随分ね 」

 

どうやら河原も母さんのおかげで助かったみたいだ。そういう意味では炎山の誘いはファインプレーだったと考えても良いだろう。

 

「そう言えば貴方、私たちに対しては苗字読みなのに、花音に対しては名前なのね 」

 

「お、そういえばそうだな。なんか理由があるのか? 」

 

「え、えーと……それはだな 」

 

「おぉ?まさか花衣と花音ちゃんってそんな関係だとか!? 」

 

母さんが目を輝かせながら興味津々に顔をグイグイと近づかせ、皆も興味がありそうにしており、俺と花音は反応に困ってしまう。だが、母さんの質問にカチンと来た奴が2人、俺と花音の間を割り込んできた。

 

「ちーがーいーまーす!花衣さんは! 」

 

「私たちの物…… 」

 

レイとロゼは俺と腕を組んで自分達の所有物だとアピールして来た。花音の前なのか心做しかかなり力を込めており、腕が鈍い音を立てているような気がした。

 

「ヒュー!お前やっぱりモテモテだなぁ!チクショー!羨ましい! 」

 

「そうね〜ティアドロップさんって言う人もいるしね 」

 

ティアドロップの名前を出した瞬間、母さんを除く全員が凍りついた。

 

「おい……流石に四股はダメだろ…… 」

 

「待ってくれ機羽、その人とレイ達とはそんな関係じゃ無いんだ 」

 

引いている表情をしている機羽の誤解を解かせるためにあれやこれやと言ったが、機羽の表情は変わらなかった。

まぁそれはそうだろう……レイとロゼのように好意を全面的にぶつけられて置いて付き合って無いと言えば、キープしているとか思うのが大抵だろう。

 

「まぁ、お前がそんな奴では無い事は分かっている。……いつか後ろから刺されそうだな 」

 

「そういう冗談はやめてくれ…… 」

 

「骨は拾ってやる 」

 

冗談なのかそれとも本気なのか分からないが、機羽が少し笑っていた。表情を見れば冗談なのは間違いないが、こんな風に機羽の冗談を聞くのは初めてかもしれない。

 

「話を戻すが、花音だけが名前呼びなのは何でだ? 」

 

「いや結局そこに戻るのか!? 」

 

「当然だ。苗字呼びが主なお前が、花音だけ……いや、レイとロゼをも名前で呼ぶのは何故だ? 」

 

「えーとそれはだな…… 」

 

「私が頼んだんです。苗字では無く、名前で呼んで欲しいって 」

 

花音が助け船を出すように割って入ってくれた。機羽はその理由に納得し、何かを閃いてたかのやうに思い立った。

 

「そうか、じゃあ俺の事も名前で読んでもらおうか 」

 

「え? 」

 

「お、良いなそれ。俺も名前で呼んでくれよ。まさか女の言うことだけ聞いて野郎の言うことは聞かねぇとかないよな? 」

 

「そんな事……!」

 

「じゃあ良いよな?花衣 」

 

炎山と機羽に上手く丸め込まれた感じになり、名前で呼ぶしか無くなった。

だが、今まで苗字呼びだったのに今更名前呼びなんて恥ずかしくも思い、口に出すのが躊躇った。

 

「なんだよ〜早く言えって! 」

 

急かすように炎山は肩を組んで顔をグイグイと近づかせた。夏だからか普段よりも暑苦しく、正直離れて欲しい。

 

「だぁぁ!近いぞ焔!……あっ 」

 

「……言ったな? 」

 

思わず名前を口に出した俺は勝手に動いた口を触れ、初めて俺に名前を呼ばれた焔は嬉しそうに歯を見せながら大きく笑っていた。

 

「にしし、どうだ。名前呼びの方が良いだろ? 」

 

「いや、分からないけど……」

 

「ま、これからは名前で呼べという事だ。ほら、次は俺だ 」

 

「何だよ空まで……これでいいのか? 」

 

「ま、合格だな 」

 

満足そうに空は小さく笑いながら、課題である現代文のプリントの最後の答えを同時に書き終えた。

 

「よし、大分理解と絆が深まったと言うべきか?焔、そっちは……って、言う必要も無いな 」

 

「いや本当に数学と英語は無理なんだって……んがぁぁ

!こんなの将来にどう役立つんだよ! 」

 

空と比べて焔のプリントは半分程真っ白だった。母さんに教えてもらっても、やはり地頭はそうそう変わらないということなのだろう。終わらないと焔は嘆き、それを見た母さんは慈愛に満ちた貫禄で焔の勉強を徹底的に見てあげていた。

 

「あらあら、相当苦労してるわね。でもね、勉強しないともーっと苦労する事になるわよ〜? 」

 

「それよく聞くけどよ〜どう苦労するんだ?高卒でも会社には入れるし、勉強してた所だって使う所とかねぇだろ? 」

 

「確かに今やってる内容は社会では殆ど使わないわね。だけど、勉強の本質はそこじゃないわ 」

 

「本質? 」

 

「ちょっと今の勉強会から外れると思うけど……皆は勉強する意味ってどう考えてる? 」

 

母さんから投げかけられた哲学のような物は、非常に難しい質問だった。

 

勉強する意味か……単純に考えれば、良い大学に入って良い企業に入社して……安定した生活、もしくは良い生活をする為?いや、何か違うような気がするし、母さんが言っているような事とは違うと思うようにも思えてきた。

こう考えて見ると、どうして勉強をしているのか、なんの為に勉強をしているのかなんて全く考えた事も無かった。皆も俺と同じ考えになっているのか首を傾げて悩んでいた中で、花音が先に口を出した。

 

「論理的思考を育てるとか……ですか? 」

 

「ロンリー……なんて? 」

 

「論理的思考だバカ。簡単に言えば、物事を詳しく捉えられ、その根拠を把握出来る考え方だ 」

 

焔の疑問には空が答えたが、焔は首を傾げて頭の上にハテナマークを量産していた。呆れた顔をして空は説明を諦め、焔はキャパオーバーなのか頭をショートさせて口を開けて鳩が豆鉄砲をくらったかのような顔をした。

 

「そうね。論理的思考があれば、詐欺にも騙されないし、物事にも手際よく手をつけられる身を守る盾にも武器になるわ。数学とか学べばその考え方が身につくし、現代文を学べば会話や伝達力も上がったり、歴史を学べば会話のネタにもなるわ。全部の勉強に意味があるのよ 」

 

「でもよ〜将来使わないなら意味無くねぇか? 」

 

「あら、じゃあ焔君。貴方は勉強して後悔した事ってある? 」

 

「んぁ?そりゃあ……ん?そんな事思った事ねぇな…… 」

 

「勉強しなくて後悔した。なんて事はよく聞くけど、勉強して後悔したなんて無いのよ。知識は蓄えられ財産にもなり、それは決して無くならない。そしてその財産を使えば色んな道に進めるの。私達は、幸せな道を沢山作る為に勉強するのよ 」

 

勉強会がいつの間にか講演会見たいな事になったが、全員母さんが言ったことを真剣に聞き入っていた。

静まり返った雰囲気で母さんは我に返ったかのように肩をあがらせると、自身の行動に少し恥じるように顔を赤く染めた。

 

「まっ!私ったら勉強教えるつもりだったのになんだか変な事言っちゃったわね 」

 

「いえいえ!とても良い考え方でした!改めて勉強する心構え……って言うんでしょうか。そういうのを再確認出来ました! 」

 

花音の言う通り、誰もが感心した雰囲気になった。俺も俺で考えさせれる所が山ほどあり、勉強そっちのけで考えにふけってしまう。

 

「幸せな道か…… 」

 

ふと思った事がある。もしもこのまま何事も無く過ごし、皆と一緒に過ごす事になったら……俺は果たして幸せと感じられるのだろうか。

 

俺には将来の夢なんか無いし、かと言ってやりたい事も無い。そんな俺に果たして幸せな道なんてあるのだろうか。そもそも、俺は……それを選べるのだろうか。

ふと過ぎるあの頃……俺がポルーションに対して殺意が溢れたあの時、俺の中から黒い影が生まれ、そのまま鋭い鉤爪に変わったのを俺自身の目ではっきりと見た。

 

あれが俺の過去に繋がる物だとしたら……俺は果たしてその道に進む資格があるのだろうか。

 

「……花衣さん?どうしたのですか? 」

 

隣から花音の声が聞こえ、俺は考えが飛んで花音の方に顔を向けた。花音は心配そうに見つめており、俺は心配書けないように下手な作り笑いを浮かべた。

 

「……大丈夫だ 」

 

「でも…… 」

 

花音が詰め寄ってくる雰囲気になったが、それはある男の腹の音によってその雰囲気はぶち壊された。

腹の音は止まぬ事が知らないかのように大きく、長く続き、その持ち主である炎山は罰が悪そうに笑った。

 

「た……たはは、悪ぃ悪ぃ。腹減っちまってよ 」

 

「そう言えばもうお昼なのね。じゃあ勉強は一旦ここまでにしてご飯にしましょうか。大人数だから張り切るわよ〜! 」

 

母さんは服の袖を捲り、リビングにある椅子に掛けられている緑色のエプロンを付け、キッチンへと足を運んだ。

 

「あ、私手伝います! 」

 

「私も手伝う 」

 

レイとロゼが手伝いの名乗りを上げ、母さんはそれを承諾して3人はキッチンにて料理を始めた。一体どんな料理が出来るのか今からでも楽しみだ。

そんな期待を胸に教科書を閉じ、来るであろう皿の為にノートを退けていく。

 

「だぁぁ!疲れたぁぁ!俺から提案したけどくっそ疲れるわ…… 」

 

「だが助かっただろう? 」

 

「まぁな〜 」

 

いよいよテストは明日だ。いつも赤点ギリギリの炎山だが、次のテストはかなり期待出来そうだ。

 

「それにしても、貴方のお母さんは凄いわね……不思議な感じがするわ 」

 

「そう……あれは普通の人間では無い……! 」

 

「いや、俺の母さんは普通の人間だから…… 」

 

確かに母さんは何でも出来るし何でも知っている。どこか悪い所があるのかと言われたら多分言えないし考えられない。というか母さんに欠点とか苦手な物とかあるのか……?

 

そう考えていたら、いきなりキッチンから何かが落ちたのか大きな物音が聞こえた。

 

「きゃ!お義母さんどうしたんですか」

 

「あぁごめんなさいね。ボウル落としちゃった…… 」

 

どうやら母さんが料理の最中にボウルを落としてしまったようだ。音の軽さからして何も入れてはいなかったようだが、母さんがそんなドジを踏むなんて珍しい。

いつもはこんなミスはしない筈なのに……

 

「へぇ、意外とおっちょこちょいの所あるんだな 」

 

「いや……そんな訳は無いと思うけど…… 」

 

だけど、全てが完璧な母さんの少し人間らしい所が見えて少し得をしたなと少し感じた。

 

「さて、切り替えて行くわよ! 」

 

「はい! 」

 

空のボウルを母さんは拾い、再度慣れた手つきで食材を切っていき料理への完成を目指して行った。

 

さて、料理の手伝いとかもしていない俺達は時間を持て余している。何もしない訳には行かないが、取り敢えず賑やかしの為に俺はテレビのリモコンに手を伸ばし、テレビの電源を付ける。と言っても、休日の昼にやっている番組で、俺達見たいな高校生向けの番組なんか無いと思うが……そう思い、最初に付いた画面はテレビのCMだった。

 

CMの内容は……遊戯王の新たしいカードパックに関する物だった。新しいカードが出ていると声優が言うと同時に、新たなカードが画面に溢れ、その新たなカードの中には、【閃刀姫】の新しいカードもあった。

 

「お、これ【閃刀姫】と【魔妖】の新規が封入されてんじゃん!花衣と霊香はこれ買うのか? 」

 

「まぁ一応ね 」

 

【魔妖】使いである霊香はこのパックに興味を向けており、購入は確定しているだろう。俺も霊香と同じ意見で、とりあえずはこのパックに目を向ける事にしよう。

 

CMが終わり、また新しいCMが流れたが内容は変わらず遊戯王関連だった。

 

『大会に参加してレゾンカードを手に入れよう! 』

 

そんなキャッチフレーズが流れると、全員がテレビに向ける意識を変えた。

 

レゾンカード……一般的には1枚しか無い強力なレアカードという事になっているが、俺のカードだけは違う。俺のカードだけは、俺自身が作り出したカードであり、誰かから渡された物ではない。と言っても好き勝手に作れる訳じゃない。俺が今まで作ったカードは全部デュエル中に出来た物であり、それ以外では作れるのかも分からない。

 

……待てよ?そういえば、2枚だけ少々事情が違うカードがある。それが【閃刀騎-カイム】と【閃刀騎-ラグナロク】であり、元はレイが使用していたカードであり、経緯については聞かされていない。後で聞いてみようかな……

 

「レゾンカードねぇ〜俺も不知火の奴が欲しいぜ 」

 

「私もBFが欲しいなぁ〜。ねぇねぇ、花衣はどうやってレゾンカードを手に入れたの? 」

 

雀からこれまた答えにくい質問が投げかけられ来た。俺が作った奴とか、レイから貰ったなんて言える訳も無い。しかし、【六花聖華カンザシ】を除き、皆に見せたレゾンカードは合計で6枚もある。偶然届いたなんて言っても信憑性は薄いだろうし、逆に何かあると怪しまれるだろう。

さてどう言った物か……

 

「皆〜!お昼が出来たから食べるわよ〜! 」

「今日は中華ですよ〜! 」

 

ナイスタイミングと言う言葉がこれ程あってる場面があるだろうか。母さん達3人は大きな大皿を手に持って食卓に並べ、焔達は皿から香る料理の匂いで腹を刺激され、腹の虫を大きく鳴らした。

 

「おお〜!美味そう〜!早く食おうぜ! 」

 

誰よりも早く焔は椅子に座り、素手で生春巻きを食べようとすると、ロゼに手の甲を手痛く叩かれてしまう。

 

「がっつかないで 」

 

「あらあら、しっかり者ね。じゃあ、ご飯にしましょう。一緒にね 」

 

母さんは作った中華料理を更に並べ終えると、すぐ様箸も人数分用意し、間もなく昼食が始まった。

 

食卓には麻婆豆腐や生春巻きの他、八宝菜や回鍋肉もあってバリエーション豊富だった。

 

「うおっ!この麻婆豆腐うめえ!辛いけどその辛さを超える旨さ! 」

 

「この回鍋肉の肉も相当柔らかいぞ……!?豚バラ肉……だよな? 」

 

「こ、この坦々麺も麺がもちもちで美味しいです! 」

 

母さんの料理は絶賛されており、皆はまるで高級レストランの料理でも食べているかのような反応をしていた。大抵の人は母さんの料理に驚くが、俺はいつも食べているのかそうそう驚きはしなかった。

 

「花衣さん、私が作った春巻き食べてみて下さい! 」

 

レイが半分に切った生春巻きを箸でつまんでは差し出し、俺が口を開けるのを目を輝かせながら待っていた。当然皆この光景を見ており、母さんに至ってはやってと言わんばかりの期待に満ちた目をしていた。そんな風にじっと見られると食べにくいっちゃありゃしない。

しかし、無視する訳にも行かない。諦めて俺はレイが作った春巻きを1口で食べ切り、口の中で頬張った。

 

パリッと仕上がった生地の中に肉や野菜の旨みが凝縮され、噛めば噛むほどその旨さが口の中に広がってくる。この前作ってくれたハンバーグは半分程焦げていたが、この春巻きにはその失敗が感じられないほど上手く出来ている。この短期間でよくこれ程上達したものだ。

 

「美味しいよ。腕上げたね 」

 

「はい!いつも花衣さんの事を思って料理の勉強をしてますから! 」

 

なんだかそんな様子が容易に想像が出来た。よく見ると指の所に絆創膏がいくつか貼られており、この怪我だけでどれだけ努力したか一目瞭然だった。

 

「花衣さん!もっと食べてみて下さい! 」

 

「え、いやちょっと連続は流石に…… 」

 

「食べて……くれないのですか? 」

 

レイは涙目を浮かべながら上目遣いで俺を見つめ、これで断ったら最低な男確定の行動をしてきた。しかも皆に見られている手前断る訳にも行かず、仕方なく俺はレイの春巻きをまた1口食べる。

 

「はむっ……たく、そんな事しなくても食べるのに 」

 

「えへへ、どうしてもあ〜んってしたくて。ささ、次はこれを…… 」

 

「ダメ、次は私の八宝菜も食べて 」

 

ロゼはそう言って俺の顔を左手の指を使って頬を掴んではロゼの方向に顔を強制的に向けさせ、そのままスプーン一杯の八宝菜を口の中に優しくも強引にねじ込まれた。

 

口の中がねじ込まれた八宝菜の庵の旨みと複数の野菜の甘みが丁度良く混ざり合って口の中が踊り出すようにも思えた。

 

「お、美味しい…… 」

 

「当然よ。貴方の為に作ったんだから 」

 

良くもまぁ表情を崩さずにそんな言葉を言うものだ。男性顔負けの度胸と態度はまさに女性でありながら王子様のようだ。

 

「ほら、もっとあるから食べて 」

 

「ああ!そんなにずるい!花衣さん、私の分ももっと食べてください! 」

 

「いや一気にそんなには…… 」

 

「「良いから! 」」

 

仲の良い2人の対抗心の表れなのか無理やり二方向から料理が無理矢理ねじ込まれ、口の中がもう何が何だか分からない味になっていた。

だが美味しく無いわけでは無いので混ざりあった料理を飲み込み、更に追い打ちをかけるように2人はまた料理を差し出したが、流石にこう連続に来ては飲み込めない。

 

「ま……待ってちょっと連続は無理……! 」

 

「えー!まぁ、無理強いは良くありませんね 」

 

レイとロゼは無理強いを止めて料理を下げ、母さんの作った料理の味を盗むように料理を味わった。2人とも結構向上心あるんだな……まぁ、それは俺の為だとは思うけど、そう考えると嬉しくも感じる。

 

「あ、あの……花衣さん! 」

 

突然前の席にいる花音が俺の名前を呼んだが、どこか恥ずかしそうに下を向いていた。すると花音は近くにあった麻婆豆腐をスプーン1杯分すくうと、そのまま食べると思いきや何か思い立ったかのようにスプーンの手が止まった。

 

「花音? 」

 

「……やっぱり何でも無いです」

そのまま何事も無かったかのように、花音は麻婆豆腐を口に入れた。何がしたかったのだろうが、それは当の本人しか知る由が無い。一瞬俺の方を見たような気もしたが、そこまで自信を持って言える訳じゃ無いので気にはしなかった。

 

大人数だからかどんどん皿の上の料理がなくなり始めた。まぁほとんど焔の底知れぬ胃袋の中に消えて言ったが、他の皆もまぁまぁ食べていた。

 

「ぷはぁ!食った食ったぁ!ご馳走様!」

 

腹が膨れた焔はポンと腹を叩いた後消化を促進するように腹を擦り、そのまま仰向けになって倒れると今にも寝そうになっていた。相当食べたからその分血が胃に言ったのだろうか。

 

「はい、お粗末さまです。花衣、お皿を下げるのを手伝ってくれる? 」

 

「分かった 」

 

料理が無くなった皿を重ね、キッチンにある洗面台に皿を置き、母さんはスポンジに洗剤をつけて早速皿を洗った。

 

「何か手伝おうか? 」

 

「じゃあお皿を乾燥機に入れてくれる? 」

 

母さんが洗った皿を手に取り、乾燥機の中へと仕舞う。なるべく多くの皿をしまえるように丁寧に皿を乾燥機の中に入れ、1つ、また1つと入れた。

 

「ふふ、良い友達ばっかりね。こんな風に友達がいっぱい来るなんて初めてなんじゃないかしら? 」

 

「あ〜それもそうかな? 」

 

言われてみればこんな大勢の友達を家に入れたのは初めてかも知れない。そもそも小学と中学の時はあまり親しい間柄がいなかったのもあるし………

 

……あれ?そう言えばどこの学校に通ってたんだっけ?

今まで過ごして来た学校を忘れるなんてそうそうないと思うが、現に俺は小学校、中学校の名前を忘れたおろか、そこで過ごしたことも所々抜けている。

どんな風な生徒がいたか、どんな先生がいたのかさえ思い出せず、唯一覚えているのは入学式と卒業式辺りだけだ。

そう言えば……部屋にはアルバムも無かったな。

 

「ねぇ母さん、俺……どこの小中学校に通ってたんだっけ?」

 

すると母さんは一瞬てを止めると直ぐに皿洗いの手を動かしながら答えてくれた。

 

「それは……近くの学校よ。調べれば出てくるでしょう? 」

 

「まぁそれはそうなんだけど……しかも卒業アルバムも俺の部屋には無くて……母さんが持ってるの? 」

 

「あぁ……えぇそうよ。海外務めで貴方の顔が恋しくなるから、貴方の卒業アルバムを見てるのよ 」

 

「そう……? 」

 

わざわざ卒業アルバムを選ぶのもどうかと思うけどなぁ……まぁでも、学校生活の様子とか母さんはあまり知らないだろうし、それに帰ってきた荷物の中にアルバムがあるはずだ。多分母さんの部屋のどこかにあるはずだからまた後で探すことにしよう。

 

「それより〜残りの勉強時間……レイちゃんとロゼちゃん、それに花音ちゃんとお部屋で勉強したら? 」

 

母さんが皿洗いを終え、最後の1枚を俺に渡した途端、顔を近づけて笑いながらそう言ってきた。

 

「え、どうして? 」

 

「だって花衣、あの子達と良い雰囲気なんだもーん!1つ屋根の下の部屋で……きゃー!ついに息子が大人の階段を登るのね! 」

 

「ちょ……!だからそんな関係じゃ…… 」

 

動揺が形となってしまい、思わず乾拭きした皿を掴み損ねて皿は俺の手から離れてそのまま床へと落ちていってしまう。気づいた時にはもう俺の腕では届かない所まで落下していったが、母さんは見事膝を曲げて体制を低くし、見事落下する皿を受け止めた。

 

「おっとっと、動揺してるって事は意識してんじゃないの〜? 」

 

「うぐ…… 」

 

「……好きなんでしょ?3人共、じゃないとそんな真剣に悩めないもの 」

 

「……分からないんだ 」

 

母さんが持っている最後の1枚の皿を取り、食洗機に入れると食洗機の棚を締め、操作しながら話を続けた。

 

「レイとロゼの好意も分かる。……好きって言われたんだ。それぐらい分かる。しかも他の人にもそう言われた。でも……俺自身どうしたいか、どんな気持ちなのかちょっとよく分からないんだ 」

 

「どういう事……? 」

 

「なんて言うか、踏み込め無い……いや、踏み込むのがダメなような……そんな気がするんだ。一緒にいたいとも思ってるし、楽しい時は共有したいとも思ってる。だけど心の中で何でか分からないけど、それ以上は踏み込むなって……言ってるような。そんな気がするんだ 」

 

勿論これは単なる俺の言い分だ。心の中なんて他の誰にも分からないし、ましてや自分でも分からないなら尚更だ。

 

この前の時もある。俺の中に【何か】がいるのは確かだ。そしてその【何か】は人を簡単に傷つける……いや、傷つける事を目的とした物だろう。

もし、俺の考え通りにこの【何か】の正体が人に害を成す物ならば……俺は、俺の傍には誰かいちゃいけない。

そうなってしまえば、その人を傷つけるのだから。

 

だけど……そうなると、周りに誰も居ない日々が戻ってきてしまう。世界が灰色で、何も感じる事も無ければ、生きている意味も見失う程の喪失が付きまとうあの悲しい日々が再開する。正直、1人で生きる哀しさと虚しさは人一倍分かっているつもりだ。だから尚更、その葛藤が俺を悩ませ、苦しませていた。

 

「俺……どうすれば良い? 」

 

思わず母さんに縋るように話を振り、母さんは何かを考え込んでいるように眼鏡を上げ、レンズの反射で目が見えないが、多分真剣な表情をしている。

 

「……母さん? 」

 

「え?あ……ごめんなさい、少しボーってしていたわ 」

 

「珍しいね。母さんがそんな風になるって。勉強を教えたり、料理作ったりで疲れちゃった? 」

 

「いえ、大丈夫よ。ちょっと……ね。さっきの事だけど、それは自分で決めることよ。貴方の人生なんだもの、他人がどうこう言える領域では無いと思うわ 」

 

「……だよね 」

 

まぁ予想通りの答えが返ってきた。流石の母さんも人間関係の事をどうこう言える事は出来ず、気持ちが振り出しに戻ってしまった。

 

「でも、その気持ちを話してみたらどうかしら?人は言葉にしないと気持ちなんて伝わらないわよ? 」

 

「気持ちって……こんな変な気持ち伝えても…… 」

 

「気持ちに変なんてないわ。人の気持ちは千差万別、色んな気持ちがあるの。言葉に出来ない物もあれば、表現しにくい物だってあるの。だけど、人には伝えられる言葉や意思がある。最初から決めつけないで、気持ちをぶつけるのも大事な事。それが、気持ちを知ってもらう為の唯一の方法よ 」

 

「気持ちを知ってもらう……か。もしかして、これを言うために母さんは花音達を俺の部屋に誘うように? 」

 

「ん?いいえ、何だかその方が面白そうだなって 」

 

「台無しだよ!さっきのちょっとの感動を返してっ!? 」

 

てっきり母さんの事だからめちゃくちゃ深い意味があるのかと思ったけど……単なる思いつきだったらしい。落胆した俺を見ては母さんは面白がるように笑っていた。

さっきまでのいい事を言っていたのにたったの1文で自分で台無しにするのはある種の才能だろう。

 

でも、これが俺の母さんなんだな。母さんのように立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花と言う言葉が似合う人はそうそういない。

だけど、こんな風にちょっと抜けてるというか何と言うか……面白い所がある。血は繋がってないけど、この人の息子で俺はそれだけで充分幸せ物だ。

 

 

_大丈夫よ。私が守るから……

 

 

「……え? 」

 

突然頭の中でノイズ混じりの映像が浮かび上がってきた。日が昇り、レンガ創りの道と街並みの中、俺は誰かに抱えられている目線でいた。

俺を抱えている人物は陽の光とノイズ混じりでよく見えないが、その瞳はエメラルドのようは綺麗な緑色のめをしていた。それに……何だか懐かしく安心さえも感じられる。まるで母さんのようだ。

 

「花衣?どうしたの? 」

 

「え、あ……何でも無い 」

 

母さんの声でノイズ混じりの映像が電源の切れたテレビのようにプツンと途切れ、俺は現実に引き戻された。

今のは俺の過去……正確には俺が母さんに拾われた記憶なのだろうか。どうして今になってそれが思い出したんだろう……

 

変な映像を見たせいか心做しか体がふらついているような気がする。頭もいきなり重りが乗ったのように重くなり、ふらつく体を止める為にキッチンの目立たない所で母さんに見つからないようにし、そのままふらついた体を壁にもたれかけさせる。

 

最近どうもこんな感じだ。変な夢を見たりさっきみたいな頭の中に映像が浮かび上がるのも昔から不定期に浮かび上がるから精神的にもまいってしまう。

 

「花衣?そろそろ勉強を再開するって 」

 

「あ……あぁ。今行く 」

 

少し持たれかけたおかげで少し体力も気持ちも整理出来た。さぁ、勉強再開だ。

 

「じゃあ、花音ちゃん達を部屋に招かないとね? 」

 

「え?それ本気だったの? 」

 

「私はいつだって本気よ 」

 

母さんは眼鏡をクイッと上げて口角を上げながらレンズを煌めかせた。こうなった母さんは誰にも止められないんだよなぁ……実際昔小さい頃色々あわされたから間違いない。現に俺の代わりに部屋を招こうともう花音達の前に立っているのだから。

 

「花音ちゃん、レイちゃん、ロゼちゃん〜。花衣が分からない所があるから貴方達に教えて貰いたいんだって〜 」

 

「え!?花衣さんが私達を!? 」

 

レイが激しく興味を持って机の上からそのまま天井へと飛んでいくような勢いで席に立ち、ロゼも静かに立ち上がった。

 

「それで教科は!?現代文?数学?……ハッ!まさか……保健体育とか!? 」

 

「何っ!?実技か!? 」

 

何で焔が興味湧いてるんだよ。確かに保健体育というか副教科も今回はテストに含まれているのは確かだが実技までやるつもりはないぞ俺は。

 

「花音ちゃんはどうする? 」

 

「ふぇ!?わ、私も是非!あ、いや実技とかじゃなくて勉強の方を教えるためにでして…… 」

 

「とりあえずOKね。花衣、皆大丈夫だって〜 」

 

「うん聞こえてた。まさか本人の代わりに言うとは思わなかったよ。なんて事をしてくれたんだ 」

 

皮肉交じりの笑顔で母さんに圧をかけるものの、母さんはウィンクをしながら舌を出し、所謂テヘペロと言うものをしていた。

何だろう、母さんにこれ程怒りの感情を向けるのは初めてだ。

 

別に勉強を教えて貰うこと自体はいいんだ。問題は……花音達を部屋に招き入れるという点だ。

そう、俺の部屋には……無制限に実体化が可能になったティアドロップ達がいる。狭くはないが広くもない男子の部屋に他人数の女性対俺1人……何も起きない訳がない。

最悪部屋1つなくなってもおかしくはない修羅場はまぁ簡単に予想出来る。

 

「では早速行きましょう!私が手取り足取り教えますから! 」

 

「みっちりと……ね 」

 

目にも止まらぬ速さで2人は俺の両腕を抱き抱え、そのまま俺を連れ去るように俺の部屋へと移動した。俺の部屋に行くのに俺の部屋に連れ去られるって何だよ。

 

「ま、待って下さい〜! 」

 

花音も俺たちについて行くように後ろにぴったりとくっつき、皆仲良く……?部屋へと移動した。

 

「死ぬなよ〜花衣 」

 

「骨は拾ってやる 」

 

あの野郎共……!自分には関係無いからって……覚えてろよぉぉぉ!!

 

 

 

 

 

 

 

「……それで?その子達を連れて来たと? 」

 

「まぁ……ね 」

 

部屋に連行されて真っ先にされたのはティアドロップによる尋問だった。まぁこんな風になるとは思ってはいた。

 

「あ、あの!ティアドロップさんは実体化して大丈夫なんですか?お時間とかは…… 」

 

「あぁ、心配しないで。ティアドロップ達はレイ達と同じようになったんだ 」

 

「と言うと……? 」

 

「レイとロゼのように、存在事こっちに移ったんだ 」

 

実体化した先週の経緯を花音に話し、ティアドロップの実体化に驚いていた花音は俺の説明に納得してくれた。

 

「なるほど……ん?ということは実質この部屋で10人の女の子と暮らしているという事になるんじゃ……? 」

 

「いや流石にそんな大人数はギリギリ入らないし、母さんもいるんだ。しばらくはいつも通りに過ごしてもらう 」

 

「ちょっと勿体ないですが、花衣様の頼みなら仕方ありません 」

 

「残念でしたね。私とロゼちゃんは花衣さんのクラスメイトという立場という合法な手段で近づけます!そして外堀を埋めていずれは…… 」

 

「合法って言ってるけど、どんな手段で入学したんだ? 」

 

「花衣、世の中には知らない方がいい事もあるのよ 」

 

ロゼがマフラーを口元まで上げて目をそらすと、レイも同じように言いたくなさげに目を逸らしていた。そこまで言うと逆に怖くて聞きたくない。レイ達に限って俺の命を奪うことは無いだろうが好奇心は猫をも殺すという。この話は聞かなかった事にするのが懸命だろう。

 

「学校と言いますと、もうすぐ夏休みですね。花衣さんは夏休みのご予定はあるんですか? 」

 

「え?まだ真っ白かな。とりあえず課題をどう早めに終わらせるかなって今は考えてる 」

 

テストが終わって数日が経ったらいよいよ夏休みが始まるが、夏休みには切っても切れない縁がある。そう、それは学生を苦しめる夏休みの課題だ。

せっかくの長い休み、学校の事なんて綺麗さっぱり忘れて遊びたいがそうもいかない。最初から一気に終わらせるか、地道に削っていくか……それが悩みどころだ。

 

「夏休みと言えばそっちもだよな。そっちは進学校だから課題とか多そうだけど 」

 

「そうなんです。でも、将来の為と思えば頑張れます! 」

 

「将来か……花音は将来の夢とかあるの? 」

 

「私は……お母様の後を継ごうと思っています 」

 

花音のお母さん……つまり薫子さんが経営している咲初コーポレーションの代表……言わば社長になるという事だ。

かなりの大企業でしかもその社長となれば……専門的な知識は勿論、キャリアや責任も大きく表立つ事は間違いない。花音はさらりと言ってはいたが、その言葉の重みは他人の俺なんかじゃ想像出来ないほど重たい物だろう。

 

「お母様は無理に継がなくても良いって言われてますが、この性の下に生まれたからには後を継ごうと思っています 」

 

「結構大変そうだけど…… 」

 

「はい。学ぶべき事ばかりです。ですが後悔なんてした事ありませんし、苦痛とも思った事もありません。ただひとつあるとすれば、周りの人の反応が苦しかったです…… 」

 

「周りの……人? 」

 

「私が跡継ぎを受けるのを知っていると聞き付けた人達の態度が怖かったんです。それまで交流が無かった人が急に私に声をかけたり、媚びへつらうように頭を下げたり、挙句の果てには政略結婚の話まで飛んできたり…… 」

 

思い出すだけでも花音の様子がますます暗くなり、花音は無意識なのか苦しい胸を掴んでいた。

 

「勿論、政略結婚の件はお母様が何とかしました。しかし、相手があの見下さんなのでかなりしつこくて…… 」

 

「見下……か 」

 

ロマンス・タッグデュエルの時の初戦の相手であり、俺のデッキを奪った人物だ。しかもアイツは俺のデッキを金で買おうとしたり、盗んだ行為についても謝罪すらしなかったとんでもない奴だ。

ティアドロップ達も俺と同じ気持ちなのか、名前を聞くと顔を歪め、怒りを顕にしていた。

 

……そういえば、見下はデュエル後半で様子がおかしくなり、デュエルに負けて終えるとそのまま意識不明でそのまま係の人に連れていかれた頃から見ていない。

花音の話から察するに、しつこく連絡をしているのだろう。

 

「でも、確かアイツに大嫌いって言っただろ? 」

 

「はい。ですがあの人は信じないとか、花衣さんに言わされてるだけだと一方的で……花衣さんがそんな人な訳無いのに……!そうだ、花衣さんはあの人に何か嫌がらせをされていませんか!?もしそうなら直ぐに警察に…… 」

 

「いや、今の所まだだ 」

 

「良かった……でも気をつけてください。あの人、何だか最近様子がおかしいので…… 」

 

「どういう事だ? 」

 

「何だか、私より貴方の方を狙っているような気がしてならないんです 」

 

俺の事を?さしずめ俺への逆恨みだろうか。だとしたらかなりのとばっちりだ。

 

「まぁ……気をつけるよ 」

 

「大丈夫です。何かあったら私達が守りますから 」

 

「頼りになりすぎるな 」

 

モンスターが守ってくれるなら心強い所か下手な所より安全だろう。

 

「ところで……そろそろ勉強と行きたい所なんですけど……花衣さん、何か分からない所とかありますか? 」

 

「うーん……正直言うと手堅い所は網羅してるし、特には無いかな…… 」

 

「そ、そうですか。だったら……その……えーと…… 」

 

花音が何故か顔を俯かせ、正座の体勢からモジモジと忙しなく指を動かしたり、膝を小刻みに震わせていた。

 

「……?どうした? 」

 

「え、えーと……その、わ、……わわ、私と…… 」

 

花音が口をパクパク動かしながら目が挙動不審に動き、その瞳はぐるぐるしていた。そしていつしか自暴自棄気味に顔をあげると、花音の顔は熟したリンゴのように真っ赤になっており、顔から蒸気が出る程熱そうだった。

そしてその勢いと共に、花音は最後に言葉を大きく突きつけた。

 

 

「わ……私と付き合って下さいっ!! 」

ここまで(〜90話)出てきたレゾンカードの中で強いと思うのは?

  • 六花聖華ティアドロップ、カイリ
  • 閃刀騎-カイムと閃刀騎-ラグナロク
  • 銀河心眼の光子竜
  • RRRリノベイルイグニッションファルコン
  • 炎転生遺物-不知火の太刀
  • 常闇の颶風
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