六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
さて、いよいよ【ピックアップデュエル】編が始まりましたが、まずはカードを集める所から!
さぁ参加者全員が不動遊星見たいなことになる今、花衣君は果たしてどのように立ち回るのか……
そして、その影に暗躍する影が……?
今回は後書きに【ピックアップデュエル】のルールについての詳細が書いているので、良ければ見ていって下さいー!
落ちて 墜ちて 堕ちて
天気は曇りなしの快晴であり、夏の暑さが身に染みる程の熱気がこの場所を支配していた。
今俺がいる場所は【ピックアップデュエル】の開催場所だ。廃棄されたテーマパークの跡地を改修されて作られているからか、会場自体かなり広くなっており、参加人数が100余人いるこの中でもまだまだ余裕を残していた。
この大会の詳しいルールは後で詳しく知らされていると思うが、一概に言えば、この広い敷地内にあるカードを拾い、その拾ったカードでデュエルするという何とも異色な大会だ。
この日の為に、俺はカードショップに通って色んなカードの知識と回し方について店長さんに教えられたが、未だに自信が無い。そもそも、拾ったカードが40枚未満ならその時点で失格となるから、まずはそこをどう乗り切るかが鍵だ。不安に不安を重ねて考え混んでいると、後ろからちょんちょんと肩を叩かれた。
「花衣さん、不安は分かりますが私達は私達になりにベストを尽くしましょう! 」
後ろに振り返ると夏服なのか白い服で腕全体が出ているのに清楚な感じが出ている花音が現れた。
花音はこういっているが、やはり緊張しているのか足と腕が小さく震えており、表情も少し硬かった。
「お前の方こそ大丈夫か……? 」
「は、はい! 大丈夫でひゅ! この時のためにすんごく鍛えましたから! 」
ちょっと噛んでるけどまぁ、心配は無いだろう。それに、今回の花音は敵だ。油断はならない。そして、油断ならないと言えば……
「お久しぶりですね、花衣様。そして、ひとひらも 」
1週間ぶりだろうか、懐かしい声が聞こえた。あの日から呼びかけにも応じず姿を見せなかった彼女たちは、いつものドレスのような衣装では無くそれを基調とした夏服となっていた。
ティアドロップに名前を呼ばれたひとひらは俺の胸ポケットから顔を見せ、久しぶりの六花達に大きく手を振っていた。ひとひらは今日この日、この大きさで参加することは不可能だから今日一日は俺と行動を共にする。
「久しぶり花衣君ー! ひとひらちゃん! 見て見てこの服! どう? 」
スノードロップが白くてふわふわとした服……チュールトップスと言うのだろうか、そのトップスにはスノードロップの花と六花模様が入っており、下のスカートも同じく白を基調としたミニスカートだった。
「うん、似合ってるよ 」
「えへへ、久しぶりに会うから嬉しさ倍増っ! だけど、今回は私も全力で行くよ。だから……花衣君も全力で来てね 」
スノードロップ……だけでは無く、六花全員の目付きが鋭くなった。ティアドロップだけじゃなく、全員が本気で俺と戦うのは本当のようだ。生半可な気持ちで挑んだら痛い目に逢いそうだ……
「そう言えば、旦那様の衣装もかなり気合いが入っておりますね。白と黒が入り交じった衣装でありながらも、協調さえも感じ取れるその衣装……素敵でございます 」
「それを言うなら母さんの職場仲間に言って。これ、その人が作ったらしいから 」
今日の朝一に母さんが良ければこれを着て行ってと言われて渡されたのがこの服だ。見た目は長袖の服だが通気性が段違いに良いのか見た目より軽く、しかも風が通ったらすごく体が涼しくなるから本当に凄い。
「それに、私達が作った装飾もつけてくれてるしね! 」
ストレナエは俺の右腕を掴むと、ストレナエの重みで俺は彼女の頭部分まで腕を下ろさせれ、右手首に付けられている花飾りを纏った腕輪を見つめた。
「これと花飾り、そして指輪は俺のお守り見たいなものだからな。こういう大会の時はつけるよ 」
「嬉しい限りです。ですが今は敵同士、負けませんからね 」
「それでは花衣様、また試合でお会いしましょう 」
ティアドロップを先導に六花達は俺から離れ、俺は無意識に止めるように手を伸ばしていた。
(ダメだダメだ……! 今はもう敵同士なんだ。集中しろ…… )
伸ばした手でそのまま自分の頬を叩いて集中力を無理やり目覚めさせた。
「あの……花衣さんはティアドロップさん達と喧嘩でもしたんですか……? 」
この光景を見た花音は心配そうな表情を浮かべながら恐る恐る聞いてくると、俺は心配ないと伝えた。
「大丈夫だ。喧嘩と言うにはちょっと違うから 」
六花達とはあれ以来から今日この日まで全く姿を現さなかった。恐らく、彼女たちなりのケジメというものだろう。
それに、閃刀姫達も同じようにここ1週間は会っていない。だけど姿は見えなくても気配見たいなものは感じていたので、多分俺を誰かから守る為に付かず離れずの距離感を保っているのだろう。現にこの人混みの中でも、2人の気配が感じ取れる。試しに探してみようと周りを見てみるが、やはりこの人数の多さでは無理があった。
だが、近くにはいる……ような気がする。
「そんなに探しても私達は見つかりませんよ、花衣さん 」
「おお、びっくりした 」
急に何もない所からレイがひょこっと姿を現し、ロゼも後に続いて姿を見せた。霊体化……では無いな。
普通の霊体化では普通の人は見えないが、俺や花音のように精霊が見える奴には効果は無い。せいぜい体が透けて見えるぐらいのレベルだ。
だが、レイとロゼは本当に何も無かった所から急に現れ、霊体化とは違う何かは確かだ。
「……あれ? 花衣さん、何だか反応薄くないですか? てっきりうわぁ〜! って驚くかと思ったのに 」
「何だか近くにいるような気はしたから。それで、一体どんなを使ったんだ? 」
「答えはこれです 」
するとレイは手のひらサイズの機械、ホーネットビットを取り出し、ホーネットビットの上部が少し光出して小さな端末上のホログラムをレイが操作すると、操作が完了した途端目の前にいたレイが消えてしまった。
「あれ!? レイさんは何処に行ったんですか? 」
俺よりも花音の方が驚いており、何処かにいなくなったのかとウロウロしながら探し回っていると、花音の動きが急に止まった。
「そんなに驚かなくても大丈夫ですよ。反応が大きすぎです 」
すると消えたはずのレイの声が何故か花音の背後から聞こえ、花音は誰かに捕まったかのように手を後ろに拘束されていた。
「え!? えぇ!? なななななんですかこれ〜!? 」
「ホーネットビットの機能の一部、ステルスよ。これを使って敵の基地に侵入したり、あんな風に闇討ちに使用したりするの 」
なんて高機能なんだホーネットビット……機能の一部と言うからにはまだまだ機能を備えているのが何とも恐ろしい。流石は向こうの世界の技術と言うべきだろう。
時間切れが来たのかレイの姿が花音の後ろに現れ、同時に花音の手を離した。
「ま、この機能は今回使いませんけどね。あくまで自分の力で貴方に挑むつもりですよ。花衣さん 」
「六花達から聞いたわよ。随分と自分自身について悩んでいるそうね 」
「まぁ……な 」
「花衣さん、前にも言いましたが私達は貴方の事を好いているんです。その事を、今回のデュエルで貴方にぶつけますから 」
レイとロゼも、六花達と同じような目をしていた。
「それじゃぁ花衣さん、また後で 」
「本気で貴方を対峙するつもりでいくから。後、私のホーネットビットを渡しておくわ。身を守るにはなるだろうから 」
別れ際にロゼが自分のホーネットビットを俺に投げ渡し、俺はそれを難なくキャッチした。手のひらサイズのホーネットビットは服のポケットに入れ、そのままレイとロゼの姿が人混みに消えるまで見送った。
「皆さん、貴方から離れちゃいましたけど……何かありましたか? あんな風に自分から離れるのは初めてでは……? 」
「原因は俺にあるというかなんと言うか…… 」
「……分かりました。でしたら私はこれ以上詮索はしません。それに、貴方と本気でぶつかるのは私も同じ気持ちですから 」
すると花音は1歩俺から離れていき、そのまま向き合うように体を振り返らせた。
「約束を覚えてますか? もし私が優勝したら、その時は私のお願いを聞いてください 」
「それは良いけど……どんなお願いをするつもりなんだ? 」
花音のことをまだ全部が全部知っている訳では無いから逆にそれが好奇心を揺さぶられた。
思わずどんな願いをするのか聞くと、花音は顔をくねらせ、少し顔を赤く染めた。
「え!? ええとそれは……言えません…… 」
「え、なんで? 」
「何でもです! では私も失礼します! お互いベストを尽くしましょう! 」
すると漫画だったら竜巻みたいな足になるぐらいの速さで花音は向こう側に行ってしまった……
「……何なんだ? 」
そう疑問に思うと頭の上からひとひらがぺちぺちと俺の頭を叩き、数回叩いた後は頭の上から飛び込んで俺の目線まで浮くと、ひとひらの表情は何とも言えない怒っているような顔をしていた。
「な、なんだよひとひら。……詮索するなって事か? 」
俺の答えにひとひらは大きく首を縦に頷いた。
「まぁ……良いけどさ 」
ひとひらがこう言うのなら深く探るのは諦め、いよいよ【ピックアップデュエル】開催時間となる。始まる時間が近づくにつれ心臓が早く動き、息を整えるように大きく深呼吸を繰り返す。
大会よりももっと凄い出来事に遭遇しているのにも関わらず、やはりこういう大きな舞台にいるのはいささか緊張する。数回目の深呼吸を終えた頃に開催合図のアナウンスが流れ始めた。
「は──い皆さん改めましてこんにちはー! さぁいよいよ拾ったカードでデュエルする【ピックアップデュエル】を開催しますよー!! 」
「あれ? あの人……Mixさん? 」
派手な金髪に顔には星型の模様があり、かなりハイテンションな性格は間違いない、【ロマンス・タッグデュエル】で実況を務めていたMixさんだった。
Mixさんの登場に会場の参加者は大盛り上がりを見せ、会場は熱狂と完成の渦に包まれた。
「それではルールの説明を開始しますよ〜! 正面の巨大スクリーンをご覧あれ! 」
Mixさんが正面の巨大スクリーンに手を向けると、黒かった巨大スクリーンに映像が入り、それを追ってルール説明がはじまった。
「まず皆さんには2時間程この会場内に散らばっているカードを拾って貰います! 拾ったカードは40枚でも60枚でもOKでかつエクストラデッキは無くても良いすが、この2時間の間にメインデッキが40枚未満だったらその場で失格となります! 」
制限時間は2時間か……結構時間を取るんだなと思ったが、ここの会場は思ったよりも広い。会場に入った際に渡された地図を見ると、この会場には複数のエリアに別れており、自然が多い所、溶岩地帯を模した所、海を催した所等、まるでアトラクションみたいな所が多い。
全ての場所を回るのは不可能に近く、せいぜい回ったとしても1箇所か2箇所辺りだろう。
「更に! カードを集めてもデッキを作らなければ意味がありません! 持っているカードがあっても、使うカード、使わないカードを決めてデッキを作るまでがこのフェーズなのです! つまり、制限時間内にデッキを作れなかった場合でも失格となります! 」
なるほど……つまり、サイドデッキ等は無しという事になる。これはかなり厳しいな……闇雲にカードを集めれば良いと思っていたが、デッキを作る時間も考慮すると、カードを探す時間は思っていたより短いかもしれない。
「まだまだありますよ! 続いては禁止事項について! 相手を殴ってカードを奪う行為や、意図して相手の行動を妨害する事は禁止します! その場合は即刻退場処分となり、拾ったカードは妨害を受けたプレイヤーのものになります! 」
まぁこれはあり得ると言えばあり得る事だが……こんな広大で参加者も多い中、それを監視する手段何てあるのか? と思いきや、お見通しと言わんばかりにMixさんのまりには多数のドローンが登場し、無数のドローンは各地に移動した。
「ふっふっふ、心配ご無用! ドローンはどこまでも追いかけて行き、妨害行為が確認した時点で失格となります! ルールを守って、楽しいデュエルをしましょう! 」
とりあえず、妨害行為とかは心配しなくて良さそうだな……
「そしてなんと! この大会ではあるカードが使用すること出来ます! それはこれだぁぁ! 」
巨大スクリーンの場面が変わると、6枚のカードが映し出され、映し出されたカードはなんと、【六花聖華ティアドロップ】【六花の誓い】【閃刀騎カイム】【閃刀騎ラグナロク】【銀河心眼の光子竜】【星雲の誓い】の6枚のレゾンカードだった。
「本大会ではこの6枚のレゾンカード……のコピーカードが使用可能! コピーカードなので公式で使用出来ませんが、この大会なら無問題! しかも、これらのカードは2枚1組になっているので、見つければかなりのアドバンテージが期待出来ます! 」
世界に1枚しかないレゾンカードが使える事に参加者は喝采をあげていた。
コピーカードって……確か既存のカードの上に画像をコピーしたカードの画像を貼っつけただけのカードだよな?
「あ! 良い子の皆さんはコピーカードでデュエルしちゃダメですよ! お姉さんとの約束だ! 」
どこの誰に向かって注意しているんだ。まぁとりあえず、コピーカードであっても普通に使えるカードとして認識出来ていれば良いだろう。
2枚1組という事は、【六花聖華ティアドロップ】と【六花の誓い】が同時に手に入れられるという事だ。だけど、これはかなりハイリスクハイリターンな賭けだ。
あの6枚のレゾンカードはかなり強力ではあるが、あれらのカードはそれぞれのカテゴリーに組みしてようやく力を発揮出来るカードばかりだ。
【六花の誓い】は【六花】エクシーズモンスターしか使えないし、【閃刀騎ラグナロク】なんて【閃刀騎】と【閃刀姫】の3人がいなければ使い物にならない。
デッキが作れないリスクを加味して強力なカードをとるか、それとも安定を取って取らないかはプレイヤーの判断次第だろう。
「うぉぉぉレゾンカード! 使ってみてぇー! 」
「だがそれだとデッキが決められてしまうな…… 」
この段階でも使う側と使わない側が一定数に別れており、俺もどうするか悩んでいた。
(どうする……? 使い慣れているカードではあるけど他のカードを見つける保証は無いし……だけど、まともなデッキが作れないこの状況下でレゾンカードとそれをサポートするカードを集める事が出来れば他の人よりもかなりのアドバンテージが取れるし…… )
どちらをとっても一長一短であり、悩みに悩んでいるとふと胸ポケットにいるひとひらと目が合った。
ひとひらは自分の意思で決めろと言わんばかりの熱い視線を返し、俺はそれを見てふと皆が俺に向けた目を思い出した。
本気の戦いを望んでいるあの目は、何処か【ロマンス・タッグデュエル】の時の空と似ていた。あれがなければ俺は本気で行けなかったと思うし、皆とも本当の意味で向き合えなかったもしれない。
今回の場合もそれに似ており、もしここで俺が迷って負けでもしたら俺も皆も心に引っ掛かりが残って後悔する事になる。
「……それはやだな 」
なら、心は決まった。
「俺は俺のやり方で皆と戦う。レゾンカードは狙わずに行こう 」
恐らく、ティアドロップとレイは自分自身のカードを使ってくる筈だ。ならば俺は別方向での戦い方に集中し、彼女たちのカードを使わない方針に切り替える。
「さぁそろそろ開始時間1分前です! 皆さんそれぞれ拾うカードは決めましたか? ならばその足でカードを拾い! 貪欲なまでに手に取って下さい! 」
正面の今日スクリーンの画面が60秒のカウントダウンを刻んでおり、参加者達はこれから行う大行動に備えて準備運動をしていた。この2時間という長いようで短いような時間の限りを尽くす為に体を壊しては元の子もない。それに天気が快晴のおかげで暑さもあるから体力もある。これはこの時点でペース配分等に気をつけなければ行けないな……
「さぁあと10秒! 9! 8! 7! 」
カウントも秒読みに入り、1秒刻む事に神経が研ぎ澄まされ、呼吸も少し早くなる。あと5秒程で、この100人以上の参加者が一斉に動き出す事になる。
「5! 4! 3! 2! 1! ……【ピックアップデュエル】開催っっ!!」
カウントが0になると同時に開始のサイレンと同時にモニターがあるステージに炎が上がり、各自一斉に走り出した。
分かれ道を進む川のように一斉に会場を走り回り、俺はその荒波に揉まれながらも必死に食らいつくようにある場所へと移動する。
「やっぱり最初は少しもたつくな……ひとひら、大丈夫か? 」
この人混みで押しつぶされそうながらも、俺は極力胸ポケットにいるひとひらを潰さないように立ち回り、ひとひらを気にしていると、ひとひらは問題ないと言うように頷いてくれた。
「よし、じゃあいきなりだけど急ぐぞ! 」
『さぁさぁここから先は実況に移りましょう! さて、参加者の動向は〜……っと、どうやら殆どの人が自然が多い【プラントエリア】に進んでますね〜これはあるであろう【六花聖華ティアドロップ】目当てか!? 』
あのMixさんの言い草によると、やはり落ちているカードはそれぞれのエリアに対応しているのだろうか?
例えば炎属性のカードなら火山を用いているエリア【マグマエリア】に多くあり、水属性なら海のアトラクションが多い【アクアエリア】に多くあると行った感じなのだろうか。
だが、Mixさんはそこにレゾンカードがあるとは言っていないのが注意だ。
さっきMixさんは「あるであろう」と言っただけで、確実にあるとは言っていない。
それに【六花】は植物族だが水属性でもある。意外にも【アクアエリア】にある可能性も捨ててはならない。序盤から考える事ばかりで想像以上に大変な大会になりそうだな……
因みに俺が今向かっている場所は大勢の参加者が向かっている【プラントエリア】であり、理由は単に植物族モンスターが目当てだ。
特訓をしている時に店長さんに言われた事だが、長い間六花を使い続けていた事から、植物族に関しては扱い慣れていると言われた為、今回はあわよくば植物族で行こうと思ったが……予想以上に同じ場所に集まる参加者が多く、最悪このエリアのカード全部取られてるのではと考える程だ。
(これはうかうかしてられないな…… )
少し駆け足で【プラントエリア】に入ると、そこは風景が一変して巨大な樹木に囲まれたエリアだった。たった今まで遊園地のような所に居ることを忘れてしまい、本当に別の森に迷い込んでしまったようだ。
というかこんな所でカードなんか見つかるのか? カード所か小物を落としたら二度と見つからないぐらい森は深く、地面に生えている雑草も少しだけ長い。どこから探すべきか他の人達も困惑しており、右往左往している人も居れば、立ち止まる人もいた。
こんな所で時間を取られる訳には行かない為、まずは行動と言わんばかりに俺は森奥深くへと走っていく。
木々の中を走り回ると、一瞬視界の端に何か太陽の日差しの反射でキラリと光った何かが映り、その場所まで俺は足を運んだ。
「確かこの木の辺りだったような…… 」
俺が見た光は目の前にある少し小さめの木の枝辺りで発し、俺はこの木を注意深く見ると……枝の方に何やら銀色のパックのようなものが引っ掛かっていた。
「あれか! 」
幸いにも枝はジャンプして手を伸ばせば届く高さであり、俺は膝を曲げて思い切りジャンプし、空中で手を伸ばして難なく銀色のパックを手にした。
厚さ的に……3枚程のカードが入っており、早速パックを開けるとやはり中には3枚のカードが入っており、表を見ると全てモンスターカードであり、入っていたカードは【ヴェルズ・マンドラゴ】【トラップ・マスター】
【グラス・ファントム】の3枚だった。
3枚の内真ん中の【トラップ・マスター】以外は植物族であり、1回は使ったことあるカードだ。最初に引いたカードとしては、まずまずと言ったところだ。
3枚のカードを入場時に受け取ったデッキケースにしまい、更に奥深くに進入した。
木の枝以外にも、木の根元は草元の地面、はたまた小さな岩の裏にパックは隠されており、合計で21枚のカードが取れた……が、ここで少し問題が発生した。
「し……種族がかなりバラバラ過ぎる! 」
7つのパックを開けてきたが的はずれなカードが多く、植物族のサポートカードはおろな汎用の罠カードも引けてない始末だ。1枚ずつの収集では無いのが唯一の救いだが、これ程中身がランダムなのは少しキツイ。
ランダムと言っても、正確に言えば少し違う。これまで開けてきた中で植物族が入って無かったのは無いのを見ると、このエリアには確定で植物族のモンスター、またはそれはそれをサポートするカードが封入されていはいる。いるんだけど……それを引くのはあくまで運だ。こればかりはどうしようもない事実だった。
「ま、落ち込んでも仕方ないな。どんどん行こうか 」
また新たなパックを探しにいざゆかんとしようとした途端、突然胸ポケットからひとひらが飛び出した。
「おおっと、どうしたひとひら? 」
飛び出したまま宙に浮くひとひらを見つめていると、ひとひらは左方向に指を指してはそのまま飛び去ってしまう。
「あ! おい! ちょっと待て! 」
ひとひらは霊体化している為他の人には見えないから姿を見られることは無いが、見えている俺でも手のひらサイズ程の小さな体のひとひらをこんな森深くで見失ったあと見つけ出すのは困難だ。
何とかひとひらに追いつく程のスピードで走り、ひとひらを視界の中に保ったまま走ると突然ひとひらは止まり、止まったそばに咲いてあるシロツメクサの大群に指を指した。
「ここに何かあるのか? 」
ひとひらは大きく頷くと、そのままシロツメクサの大群の中に飛び込んで草根をかき分けながらガサゴソと草は動くと、しばらくしてひとひらは自分の体よりも大きな銀色のパックを両手で持ちながら大群を抜け出してきた。
「ひとひら! わざわざこれの為に? 」
少し泥んこになったひとひらは笑顔でこくりと頷いて俺の両手に着地し、俺は持っていたハンカチで泥んこになったひとひらの顔を優しく人差し指だけで拭いた。
顔周りは綺麗になったひとひらは俺にパックを差し出すかのようにすると、俺はパックを受け取り、早速開けてみた。
開けたカードは変わらず3枚であり、中身は【光の王マルデル】【ローンファイア・ブロッサム】そしてなんと、リンクモンスターである【アロマージ・ジャスミン】があった。
これまで開けてきた中でもかなりの当たり枠であり、しかも望んでいたカードの1枚だったのでこれでかなりの戦略が取れるものでもあった。
同じ植物族モンスターだからなのか、どうやらひとひらはカードを感じ取れる事が出来るようであり、ひとひらは次に良いカードがある方向に指を指していたが……俺はそこには行かず、ひとひらの頭を指でそっと撫でた。
「ありがとう、ひとひら。でももう良いんだ。ここからは俺一人でやるから 」
俺の言葉にひとひらは戸惑いを隠せておらず、本当に良いの? と言うようにしていた。
「良いんだ。これは俺と六花と閃刀姫、そして花音との勝負でもあるけど、俺自身どこまでやれるかの問題なんだ。何でもかんでも頼る訳には行かないし……あいつらに不公平だ 」
あくまで勝負は勝負。六花達だけではなく、他の参加者はそんなカードを察知出来る能力はある筈なく、自分自身の足と運でカードを探している。俺だけこんな風に探しても俺自身納得いかないし、何より俺自身が許せない。
「だからひとひら、気持ちは嬉しいけど……分かってくれ 」
ひとひらは俺の話を分かってくれたのか、そのまま胸ポケットに戻り、頑張れとエールを送ってくれた。
「ありがとな。それじゃ、探索再開と行きますか! 」
気持ちを切り替え、ひとひらが指を指した方向とは反対方向に体の向きを変えて走り出そうとしたが、何か嫌な予感を感じて歩き出そうとした足を止めた。
……おかしい、周りの参加者が何故か全員俺の事を見ており、明らかに俺の事を包囲していた。
人数は4人であり、じりじりとこっちに向かって来た。
「……あの、俺に何か用ですか 」
正面にいたアクセサリーをこれみよがしに身につけ、肌は日焼けでガン黒くて金髪という見るからに不節制そうな男に声をかけると、男はダルそうな態度を取って俺に話しかけてきた。
「あ〜お前、【桜雪花衣】で間違い無いか? 」
「……そうだとしたらどうするんですか 」
「ちとくたばれや 」
そう言って男は真っ先に俺を殴りかかろうと右の大ぶりで拳を俺の顔に殴りつけようとしてきた。
だが薄々感じていた嫌な予感で無防備では無かった為直ぐにその攻撃に反応した俺はいち早く攻撃をすんでのところで躱し、男から距離を取った。
「いきなりなんなんだ! しかも妨害行為は即失格だぞれ 」
「そんなの知ったこっちゃねぇよ! とっととくたばれやガキがよぉ! 」
こいつ……失格になる事に何の躊躇いもないように攻撃を続け、俺は反撃を行わずにその場での回避や防御に徹した。
もしここで反撃して俺がヤツに危害を加えて失格にでもなったらたまったものじゃない。にしても、会場には無数のドローンが居るはずなのに今回に限ったはそれが見当たらない。まさかこいつ……それを知っててこんな事をしているのか!?
「こっちもいるぞぉ! 」
正面の敵にばかり気をとる場合では無さそうだ。今度は後ろにいる男が俺を捕まえようと飛び込み、何とか左に飛び込む事で正面にいた男と飛び込んだ男は衝突し、逃げ道が出来た所で俺はすぐさまこの場から離れた。
「逃がすな! 追え! 」
後ろから4人の男が迫っているが、振り向いている余裕は無い。とにかく真っ直ぐ森を抜けるのが最優先だ。
ここには木々が相当多く、ドローンが入り込めないせいなのか監視のドローンが1つも無い。男達はそれが分かっているのか禁止行為を堂々とやっており、それが集団でやっているんだがらタチが悪い。
とりあえずまずは人目につくところに行かなければならない。人目につくところなら監視ドローンもあり、他の参加者からの通報も可能な筈だ。ちょうど森が抜けるのか木々が少なくなり、そろそろ森を抜ける。
森を抜ければ後は何とかなると思ったが……それは呆気なく崩れ去った。森を抜けた先は一通りが多い浅い森では無く、その先は道が無い崖だった。
「なっ…… 」
「どうやら貴様もここまでのようだな 」
「その声っ……! 」
忘れはしない、憎いやつで他人を下に見ているその高圧的な態度の声は1人しか俺は知らない。
崖を背に振り返り、そこには俺を逃がさないように逃げ道を塞いでいた男達と、それを取り巻くように真ん中で堂々と立っていた金衣装を纏った男がいた。
「見下……!」
「久しぶりだな……花衣! 」
「何でお前みたいな奴が参加している!」
「決まっているだろ、僕も参加する為のチケットを買ったんだよ。……偽名だけどな 」
そういう事か……チケットがどのようにして手に入れるかは分からないが、こいつも一応どこぞの御曹司だ。偽名を使ってチケットを手に入れる事ぐらい造作もない事だろう。こいつ……どこまで卑劣なんだ……!
「いやぁ〜やはり花音さんは純粋だな〜純粋で、潔白で、純情な花のような存在……そんな存在がお前のような下等な存在じゃ釣り合わない。まさに高嶺の花だ 」
「こういう嘘つきで卑劣な奴も花音は嫌いだと思うがな。実際、お前は花音に嫌われている所だしな 」
「花音さんはお前に仕方なく付き合っているだけであれはほんの少しだけの気の迷いなんだよ。それか、お前が何か誑かしたに過ぎない 」
こいつ……本当に何も分かっていない。幻滅を通り越し、呆れさえも湧いて来ない。俺は溜息を吐き、憐れむように見下を見た。
「お前、花音の事本当に分かっていないんだな 」
「何だと……? お前に花音さんの何が分かる? 生まれに差があり、お前らみたいな平民は花音さんと会うことすら本来叶わない方なんだぞ!? 」
「花音はその平民に憧れていたんだよっ! 」
見下の大声に対抗し、俺も声を荒らげて見下を黙らせた。
「花音は普通に居たかったって言ってたぞ。周りにちやほやされて、触るのもおこがましい程の扱いをされるよりも、友達と一緒に遊んだり、学校で喋ったり、ふざけあったりしたいって言ってたぞ 」
あの時、花音に言われた言葉と表情を思い出しながら、花音の事を分かっていないやつに、知る限り花音の気持ちをぶつけた。
「だから……お前みたいに、他人を見下し、真っ向から否定する人間なんかじゃ花音には釣り合わないって事だよ! 」
「ふ……ふ、ふざけるなぁぁぁぁ!! この愚民が……! まぁ、良い。おいお前ら、今すぐこいつを崖からつき落とせ 」
「なっ…… 」
怒りに怒った見下は顔を荒らげ、顔を歪めて取り巻きの奴らに俺をつき落とせと言った。
しかし取り巻きはその事について戸惑っており、先程まで無関心を貫いていた態度が一変して冷や汗をかき、戸惑っていた。
「何してる! お前らのような屑でも簡単に出来て、なお金が貰えるんだぞ!? 」
「お、俺達はただこいつを黙らせたり、カードを集めるだけって言われただけだ! 殺しなんてそんな…… 」
「お前……こいつらを金で雇っているのか 」
「あぁそうさ。こいつらは今初めて会っただけさ。そして、こいつらにカードの収集も頼んでいる。合理的だろ? 現に、僕は一組のレゾンカードを手にしている 」
「お前っ……他の人は自分の力で挑んでいるんだぞ! お前のやっている事はそんな他人を侮辱するような事なんだぞっ! 」
「はっ! 勝負は勝つか負けるかだ! それに他人何て知らないね。何故赤の他人に敬意を払う? それに生まれも平凡な庶民に? 虫酸が走る 」
どこまでも他人を見下すあいつにもう我慢の限界だ。内に湧き上がる怒りが込み上げ、今にでもあいつをぶん殴ってやりたい所だ。無意識に右手で拳を作り、爪が食い込む程に強く、強く握っていた。
「お前は……お前はどこまで人を見下すんだぁぁぁ!! 」
自分の怒りが溢れるように声を荒らげ、体の内から黒い影が溢れ、その場を震撼させた。
もう俺の中に見下を許す心や憐れむ心も無くなった。ただあるのは……溢れるばかりの憎悪のみ!
潰す
倒す
ねじ伏せる……!
「ひ……ひぃ! お前ら! 早く何とかしろぉ! 」
「む、無理だ! あいつはヤバい! 俺達はただ言われた事を…… 」
「うるさい虫だな…… 」
少し低い声を出しただけなのに取り巻きたちはまるで蛇に睨まれた蛙のように恐れに恐れ、そのまま雇い主である見下を置いてどこかに行った。
「金の切れ目が縁の切れ目……いや、お前の場合は人望か 」
「く……来るなっ! お前は……お前は一体何なんだ!? 化け物っ! 」
「化け物……? それでも良いさ。お前を倒せるならそれでっ! 」
あと1歩、あと1歩で見下を触れる所まで来たその瞬間体に激痛が走った。
蝕むような痛みではなく、何かに抑え込まれているような苦しさが滲み溢れるようだ。
「がっ……ぐぁ……! 」
_ダメよ。堪えて!
「誰だ……! お前っ……! 」
頭の中に女の声が聞こえ、耳を塞いでも堪えてと繰り返して言ってくる。優しくも安心するような声だが、今よ俺にとってはそれは何よりも耳障りな声でもあった。
暴れ回りたい動きを抑え、体を丸めてその場で蹲ってこの声と痛みに耐えていた。
頭が割れそうだ。
体が推し潰れそうだ。
俺が……俺で無くなりそうだ。
目の前が真っ暗になり、ここがどこかさえも分からない闇の中に俺はいた。
「俺は……俺はァ……! 」
「うわぁぁぁぁ!! 」
すると誰かに押されたかのような衝撃で俺は後ろに倒れ、倒れた先には壁など無く、あるのは体を突き抜ける空気だけだった。
その刹那に俺の視界は元に戻り、後に見えた光景は快晴の空と、徐々に上に離れていく見下だった。
何で見下が空を飛んでいるんだ?
いや違う、俺が飛んでいる……というか、落ちている。あまりの出来事に何か何だか分からず、頭の中が真っ白になった。
考えがまとまらない。地面に激突したら死んでしまうのだろうか。いや、間違いなく死ぬ。どうする? 何が出来る?
そう考えている間にも重力には逆らえず真っ直ぐ落ちていき、1秒が何秒にも感じ始めて、その一瞬で何かの記憶が目まぐるしく目に浮かんできた。
これは……走馬灯という奴だ。走馬灯は俺と六花達が過ごしてきたものばかりであり、皆はすごく嬉しそうに笑っていたものばかりだった。
「あぁ、最後に見るのがこれなら……」
言葉は続かず、俺の意識はこの場で途切れた。
ピックアップデュエルルール
①:本大会は拾ったカードのみ使用可能であり、それ以外のカードを使用した場合は失格となる。
②:メインデッキは40〜60枚、エクストラデッキは0〜15枚であり、制限時間内まで、手持ちにメインデッキに使用可能なカードが40枚未満であれば失格となる。
③制限時間内に、使用するカードを選びデッキを作れなかった場合でも失格となる。
④拾ったカードはトレードや讓渡、捨てる事は出来ない。そうした場合、即失格とする。
⑤:余って使わないカードがある場合、本大会のスタッフが回収することによって失格は免れる。
⑥:暴力行為等によるカードの強奪は失格となる。
⑦:同じタイミングでカードを手にした場合、ジャンケンによって仲裁処置を行う。その場合、勝ったプレイヤーがカードを手に入れられる。
⑧:本大会は予選、決勝に別れており、予選はライフ4000、決勝は8000となっている。基本的なルールはそれ以外変わっていない。
ここまで(〜90話)出てきたレゾンカードの中で強いと思うのは?
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六花聖華ティアドロップ、カイリ
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閃刀騎-カイムと閃刀騎-ラグナロク
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銀河心眼の光子竜
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RRRリノベイルイグニッションファルコン
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炎転生遺物-不知火の太刀
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常闇の颶風