六花テーマを作って愛用したらそのまま俺への愛が重くなった件について 作:白だし茶漬け
次は年が明けてからとなり、焔君と空君がバンバン登場させる予定です。
それでは少し早いですが良いお年を*˙︶˙*)ノ"
初めて回転寿司に連れて行って貰った時はいつだろうか。
俺の時は多分幼稚園かその辺だった様な気がするけど、もうそんな昔の事は覚えない。だけど、俺達の年になって初めて回転寿司に足を踏み入れた人がここにいた。
その人は目を輝かせ、遠くに見えるレーンの上で進む寿司を見つめていた。
「か、花衣さん!お、お寿司が何か丸い物に覆われてレーンの上で進んでます!あのドームは何なんですか? 」
「あれは寿司が長時間回っているあいだホコリとか付けない様にするためだ 」
「わ!け、ケーキがありますよ!?ここお寿司屋さんじゃ無いんですか!? 」
「うどんとかもあるぞ 」
「えぇー!? 」
うーん、この反応である。まるで初めて回転寿司に来た子供の様だが、こんな反応をするのは1人では無かった。
「what!?Hey彼方!寿司が100円ってどういう事なの!?……まさか、魚と見せかけて品種改良された魚もどきを使っているのでは無くて!? 」
「そんな訳無いだろ。ちゃんとした魚だ 」
まぁ知らない人からすれば全品ほぼ100円とかとんでもない事というのは間違いない。こっちからすれば安くて美味しいから文句のつけ所は無いけどな。
「まぁまぁカレンさん。大手チェーン店である以上、安全性は保証してもいいはずです 」
「それよりも早く食べようよーお腹空いた〜 」
「はいはい、直ぐにでも食べられますからね。だから少し静かかにしましょうね、ストレナエ 」
カレンさんとストレナエを宥めるカンザシの言う通り、前もって人数分予約したからスムーズに席まで案内された。しかし、まず俺や彼方さん、カレンさんと花音さん、そして天音ちゃんの人間グループ5人に六花と閃刀姫合わせて11人。合計人数は16人だ数人ともなるとやはりテーブル1つでは無理があり、用意された席は4席。つまり、1席辺り4人程度座れる計算だ。
こうなれば自ずと……
「では私が優勝したので花衣様の隣は私が…… 」
「いえいえ、ここは和に成通している私こそが旦那様の隣に 」
「チッチッチッ、この中で1番和食に詳しいのは私ネ 」
「あら、私も負けないけど? 」
「花衣さんにうんちくを聞かせる暇は無いですよ。花衣さん、私を選んでください! 」
やっぱりこうなるよなぁ……誰が俺の隣に座るかの話になり、いがみ合いが始まった。
「落ち着け皆。ここはじゃんけんで決めよう。俺に勝ったら俺と同じ席に座れて、その中で勝てば俺の隣!どうだ? 」
「お、いい考えだな花衣君。じゃあ俺は別の席で先に注文しておくよ、天音?行くぞ 」
「お寿司……!お兄ちゃん、私たまごがいい! 」
「ちょっと彼方!私の事を忘れないで! 」
彼方さんとカレンさん、天音ちゃんは別の席で先に待っており、彼方さんに至ってはこの状況を遠目でニヤニヤと面白がっており、カレンさんに至っては初めての回転寿司の注文の仕方を天音ちゃんに教わっていた。
「さぁ花衣様!早くジャンケンをしましょう!そして私が貴方の隣でずっと食べさせてあげます! 」
「せめて俺のペースで食べさせてくれ。それじゃ行くぞ……ジャンケン! 」
勝負は……なんと1回で決められた。
「やったー!勝った〜! 」
「やったねプリムちゃん、シクランちゃん! 」
「う、うん……! 」
「よっし勝ったネ! 」
「わ、私もやりました!けど、6人になってしまいましたね 」
ジャンケンに勝ったのはプリム、シクラン、ストレナエ、ボタン、そして花音の5人だった。確かにこれでは多いからその中でまたジャンケンをしようと思ったが……
「いや、プリム達の体型は小さいから6人ぐらい行けるだろ 」
ストレナエ達はまだ幼いし、ボタンも……まぁ、大丈夫だろうと判断したが、ボタンはムスッと頬を膨らませた。
「花衣〜?さっき私の体みて判断したネー?おっぱい小さいからってストレナエ達と一緒にしたアル! 」
「い、いや別にそんな事は…… 」
「まぁ別に良いアル。別に?気にしてなんかないからネ 」
絶対気にしてそうな態度でボタンはテーブルの奥に座り、ストレナエ達の方は勝手に反対側のソファ席に座って3人並んで座った後、タッチパネルを持ってなんのネタが良いか探しあった。
こうなれば俺の席は決まった。ボタンの隣に座り、花音も後から俺の隣へと座り、2人に挟み込まれる形で席に座った。
他の皆も空いているテーブル席にしぶしぶ座っており、レイとティアドロップに至ってはかなり悔しそうにしていた。
「わ、私ピックアップデュエルでベスト4入りしてるのに〜! 」
「それを言うなら私は優勝したのですよ。花衣様の言う事は絶対なのですから。私達も早く食べましょう。……って、かき氷まであるのですね。どうなっているんですかここは…… 」
「そういえば手を洗うのを忘れてましたわ。彼方、ここにある蛇口で洗えば良いのかしら?あら?随分と硬いわねこのボタン…… 」
「そこは熱湯が出る所だ!そこで手を洗うなバカ!このおしぼりを使え 」
「誰かバカですって!? 」
向こうも向こうで大変そうだなぁ……まぁ、とにかく食べよう。もう腹が減って倒れそうだ。タッチパネルは幸いにも2つあった為、もう1個の方を取り出すと早速何を食べるか悩みに悩んだ。
「うーん、何が良いかな。ボタン、寿司は最初に何を食べるのが良いかってあるのか? 」
「別にそんなのないネ。花衣は花衣なりに好きな物を食べると良いネ!寿司は好きな物を食べて美味しく食べるものアル 」
「あ、だったら私、コハダが良いです。ありますか? 」
「多分あると思うぞ……ええと、あったあった 」
「ほぅ、花音ってツウだネ〜 」
「え、ええと……お寿司屋さんに行く時、いつもコハダが来るので……理由は知らないんです 」
「ま、そんなに気にしなくても良いネ〜。あ、私ヒラメが良いネ 」
「ヒラメね。じゃあ俺は……無難にマグロかな。ストレナエ達は決まったのか? 」
「私ハンバーグ! 」
「マヨコーン! 」
「さ、サーモン! 」
これはまた随分なネタだ……流石回転寿司と言ったところだ。まぁサーモンは普通だと思うけど。とにかく全員決まった為注文を飛ばし、後は待つだけ……
だったのだが、ここで回転寿司あるあるの1つであろう注文したばかりのネタがレーンの上に回ってきた。
「あれ?シクランのサーモンが来たよ?はいシクラン 」
「え?あ、ありがとう……? 」
ストレナエがサーモンを取ってシクランに渡し、注文から手渡された速さにシクランは困惑し、恐らくシクランは頼んだ物だけど頼んだ物とは違うサーモンだと分かっているのだろう。
その光景に俺は笑いを堪え、堪えている最中に注文した寿司が上のレーンから流れてきた。
「あれ?もう1個来ちゃった? 」
「ブフ……! 」
頭の上に『?』マークを浮かばせているストレナエの顔を見て堪えていた笑いが溢れ出してしまった。
「え?どうして花衣君笑ったの? 」
「いやすまない……頼んでいたのにわざわざ皿を取るストレナエを見たら笑っちまった……ぷっ 」
「えっとね、ストレナエ。多分これ……私が頼んでいた物じゃ無いの。あの上にある物がそうなの 」
「えー!?でも同じサーモンじゃん 」
「そうなんだけど…… 」
「まぁまぁ!とにかく食べるネ!ほら、ハンバーグあるヨ〜?……ハンバーグの上にマヨネーズ?シャリとマヨネーズの合わせって合うノ……?」
まさかの組み合わせにボタンは困惑していたが、マヨネーズは本の一摘み程度だ。シャリの影響はそこまででは無いだろう。
さて、ようやく飯だ。2個のマグロを1つ箸で掴み醤油を掛けて一口で寿司を食べる。
うん、やはり美味い。これが低価格で食べれるというのがすごいが、回らない寿司……要するに高級な物を食べ続けているであろう花音やカレンさんの反応はどうだろうか……?
花音は隣で目を閉じて寿司を咀嚼し続けており、コハダを味わっていた。所作の所々が気品に満ちており、まさに絵に書いたお嬢様だった。
「むぐ?花衣さん、私の顔に何か付いてますか? 」
「あ、いや……味はどうかなって 」
まじまじと見てしまった事を謝るように俺は寿司の事について話し、花音は気にもとめずに話してくれた。
「味ですか?もちろん美味し…… 」
「箸休めの食にしてはまぁまぁですわね。低価格でこの味を出すのは評価致しますわ。ですが、シャリの握りは機械でやっているから少しボソボソ、ネタの切り方も雑ですわね。まぁ、食べられない物では無いですわ 」
向こうのテーブルでカレンさんが中々の辛口評価を付けながらも彼方さんに次の注文を頼んでいた。
「あ、あはは……カレンちゃんは正直に言いますね 」
「正直って言うと? 」
「私の舌が肥えてしまっているからかもしれませんが、正直味に関しては見劣りする部分が多いです。ですが、こんなに安くて誰でも美味しく食べられるのは凄いと思っています。カレンちゃんもそこは評価しています 。あ、そこのビントロを取ってもらえますか? 」
「はいネ〜 」
俺はボタンに一言言ってレーンの上のビントロを取り、花音に渡した。
「ですが、ここで食べるお寿司はいつもより特別な感じがします。まるで、あの時、船の中で一緒に食べたレストランの料理と同じ感じです 」
「船の中のレストラン……?あぁ、ロマンス・タッグデュエルの時の 」
「はい、あの時の花衣さんはとても緊張していましたね 」
緊張しすぎてゲロ吐きそうなぐらいだったからな……まぁ今でもそんな所に連れてこられたら料理が喉を通らない自信しか無い。
「でも、あの時ってめちゃくちゃ高級店だったろ。同じな訳…… 」
「いいえ同じなんです。きっと、貴方が隣にいるからでしょうね 」
「え? 」
花音はそう言いながら取ったビントロを食べると、食べている最中自分が言った事を思い返し、まるでマグロの刺身の様に顔を赤く染めた。
「ふ、深い意味は無いですよ!?あ、いや……でもそういう意味もあるって言うか事実というか……ええと、あのその……ええと…… 」
「はいはーい、私の花衣とイチャつくのはそこまでネ〜 」
おもむろにボタンが俺の膝に体を乗せ、すかさずレーンの上に取ったブリを花音の前に置いた。
「寿司は鮮度が命ネ。早く食べるネ〜 」
「……怒ってるな?ボタン 」
「怒ってないネ 」
「うそこけ 」
「そう思ってるならもっと私に構うネ〜 」
「はいはい。でも、飯を食ってからな。そうだ、寿司をもっと美味くなる食べ方とかあれば教えてくれよ 」
「まっかせるネ 」
ボタンの機嫌取りという訳では無いが、ボタンの頭を撫で、寿司のイロハを教えてもらった。醤油の付け方、寿司の食べ方や、ネタの食べ順等ボタンは嬉しそうに教えてくれた。
俺自身寿司に関する事や知らなかった事が聞けて、いやいや聞かされるという感じは微塵も無かった。
それにしても楽しそうにボタンを見ると、ついつい食が進んでしまう。1皿、また1皿と食べ終えるといつの間にか数十枚の皿がテーブルの上に乗せられてしまい、少しぐらついていた。
「わわっ、そういえば食べ終えたお皿はどうするのですか?そのままレーンに……って訳では無いですよね? 」
「あぁ、忘れてた。食べ終えた皿はここに入れるんだ 」
俺は食べ終えた皿を熱湯が出るお湯の下にある投入口に入れた。
「はい、これで良いんだ。それと、5枚入れるとちょっとしたゲームがあるんだ 」
「ゲーム……ですか? 」
「なになに?何かあるの? 」
ストレナエも興味津々であり、試しにあと4枚入れてみろという意味合いを込めて投入口に指を指すと、ストレナエはワクワクしながら皿を1枚ずつ投入口に入れていく。
2枚、3枚、4枚、そして5枚の皿が投入口に入れられると、突然ストレナエが持っていたタッチパネルの液晶画面が変わり、ゲーム画面へと切り替わった。
「わっ、何か始まった! 」
「もし当たったら、いい物が貰えるかもな 」
プリムとシクランもタッチパネルを覗きこんでおり、ゲーム画面にはクリボーが何やら他のモンスターと競争をする様子だった。数秒後、クリボーとモンスターの競争が走り、画面の中のクリボーは必死にモンスターを追い越そうと頑張っていた。
「負けるなクリボー! 」
「頑張れクリボー! 」
3人は必死にクリボーを応援するが、結果は虚しくクリボーは途中でコケてしまい、画面には残念という文字が映し出されながらクリボーは涙目となり、ゲームは終了して元の注文画面へと戻ってしまった。
「え?終わりなの? 」
「まぁな。でも、もう一度5枚入れたらまたゲームが出来るよ 」
「よーし、今度こそ! 」
今度はプリムとシクランも皿を投入し始め、俺達全員が食べ終えた皿を全て入れ終わると、2回目のゲームが始まった。今度もまたクリボーとモンスターの競争が始まり、前の画面と変わらないスタートをきった。
「今度こそ頑張れ〜! 」
「負けるな負けるな〜! 」
「ファイト……!負けるな……! 」
プログラムされた物を応援しても結果は変わらないと思うが、たとえ画面上の物でも頑張っている姿を見れば応援したい物なのだろう。その辺、ストレナエ達の純粋無垢な心が顕になっていてほっこりする。
だがそんな応援もまた虚しく散ってしまうようにクリボーは転けてしまい、3人はガッカリと肩を透かしてしまったが……その時画面が変わり、クリボーが虹色に光るともう一度立ち上がり、凄まじい勢いで見事モンスターを抜き去ってゴールテープを切った。
「やったー!……で?これで何が起こるの? 」
「ちょっと待ってろよ。ええと確かこの上だよな 」
寿司が回っているレーンの上の台にある箱型のボックスから1個のカプセルを取り出し、ストレナエに渡した。
「はい、ゲームで当たりが出るとフィギュアが貰えるんだ。今はクリボー系統が当たるらしいが……まぁ、開けてからのお楽しみだな 」
ストレナエはカプセルを開け、中に袋からフィギュアを取り出した。フィギュアの正体はハネクリボーであり、ウィンクの表情を浮かべていた。
「可愛いー! 」
「えぇー良いな良いな〜。ねぇねぇ、もっとしたいよ 」
「そんな事言ってもな〜もう5皿入れないとダメだな 」
「よーし!いっぱい食べるぞ!ね、シクラン 」
「う、うーん、そんなに食べれるかな…… 」
「まぁまぁ、俺も食べるから 」
「じゃあストレナエ!どんどん持ってきてー!」
「はい来た! 」
ストレナエはどんどんレールで回っている寿司をテーブルに置き、トロやハマチ、タイにかっぱ巻き、はたまた納豆とか色んな寿司を見境無しにテーブルの上に置き続けた。
「こーら、お前らそんなに食べれるのか? 」
「もちろん!」
半ば疑いの目を向けながら寿司を食べ続けるストレナエ達を見ながら俺も適当な寿司を食べ続けた。
最初は結構良いペースで食べ続けたが、やはり半分ぐらいしか食べられず、結局ゲームは3回程度しか出来なかった。ちなみにその3回とも失敗している。
「うぇーん当たんないよ〜! 」
(そりゃあポンポン当てられたら売上にならないしな )
「カンザシ〜!そっちのお皿分けて〜 」
「そんな面倒な事はしません。それにテーブルの上にまだお皿が残っているでしょ。それを食べなさい 」
「そ、そろそろお腹いっぱいなの〜 」
確かにまだ皿自体はあるが、殆どに寿司が残っている。このまま投入口に入れる訳にもいかないし、ましてやレーンに戻す事もできない。ストレナエは自らの行動を悔いるように涙を浮かべ、机に顎を乗せる。
「ほら見たことアル。食べ物を粗末にすると、悪いモンスターに食べられちゃうアルよ〜? 」
「えぇーやだー! 」
「まぁまぁ、私達が食べれば良いのですから 」
「ま、それもそうだな 」
テーブルに残っている寿司を取り、とにかく食べなければもったいない。幸いまだ腹に余裕はあるし、俺だけでも全然大丈夫だ。
「それにしても本当に美味しいね。ほらヘレちゃん見て見て、ケーキが回ってきたよ。もーらい 」
「しかも低価格……ですが、寿司はカロリーが意外と高いんですよね。私はもうこのくらいで…… 」
向こうでヘレボラスが喋っていたのを聞いた花音が何故か石のように動きを止めてしまった。
「え〜でもどうせヘレちゃんの栄養はこの胸に全部行くからいいじゃん……って嘘っ、ヘレちゃんまた大きくなってない? 」
「し、知りません!! 」
大きさを確かめるようにスノードロップはヘレボラスを胸を両手で掴んでは揉んでおり、その豊満さに驚きを隠せないでいた。
「あっちはあっちで何してんだ……こっちも花音が固まってるし……花音、大丈夫か? 」
「カロリー……体重……あれ、そういえば私お昼確か……うぅ、また体重がぁ〜 」
ダメだ聞こえてない。そして他のテーブルでも何やら問題は起こっている様子だ。
「あぁぁ!ロゼちゃんそれ私のトロォォォ!! 」
「早い者勝ち……それは戦場に置いても同じ事。モキュ……うん、美味しい 」
「〜〜!なんですのこれ!?なんか緑色の物を食べたら鼻と口が痺れて……っっー! 」
「お前わさびそのまま食ったのか!? 」
「えぐっ……お兄ちゃん〜私もわさび食べちゃった〜! 」
「あぁ、ほら無理せず吐き出して良いからな?ほら、ジュースもあるぞ 」
「全く騒がしいですね。もう少し落ち着いて食べる事は出来ないのですかね 」
「まぁまぁ、花衣さんの隣に座れなかったからと言って不機嫌になるのはどうかと思うわよ、カンザシ 」
「貴方も人の事言わないのでは?エリカ 」
「「うふふふふ…… 」」
なんか騒がしくなってきたなぁ……まぁ、俺のテーブルも人の事言えない程わちゃわちゃしてるが。
こうして見ると何だか数ヶ月前、母さんが家に帰ってくる前に一緒に飯を食べた時の事を思い出す。
母さんが帰って来ている今はもう飯を食べることは無くなったが、久しぶりにこうしてわちゃわちゃしながら食べるとなると楽しい。勿論母さんとの食事も楽しいし嬉しい、だけどそれとは違う物がここにはあった。
「ふぅ〜もう無理〜お腹いっぱい!デザート食べたーい 」
「もうお腹いっぱいなのにか? 」
「デザートは別〜!何が良いかな〜 」
ストレナエ達は締めのデザートを選び、俺もテーブルの上にある寿司もほとんど食べ終えた。その甲斐あってかストレナエとプリムとシクランにハネクリボー、クリボーン、リンクリボーを与えることが出来、天音ちゃんの方からはギャラクリボーが手に入ったらしい。
お兄ちゃんが使っているカードと同じクリボーが手に入り、天音ちゃんも満足していた。
(やばい、これ以上入らないかも…… )
このテーブルで何枚くった?皿の合計枚数を見るとその数65枚と表示されていた。ピックアップデュエルの時結構動かなかったらここまで腹に入れることは出来なかっただろう。
そろそろ皆も箸を置いて料理を食べ終えており、会計の時間が近づいてきた。パネルのおあいそボタンを押して会計を済ませようとした時、違うテーブルから子供泣き声が聞こえた。
「やーだー!ギャラクリボー欲しいよ〜! 」
「いい加減にしなさい。当たらなかったんだから仕方ないでしょ 」
ねだる子供にそれを諭す母親と父親。どうやら見た感じだと目当てのフィギュアが当たらなかったどころか一つも当たらなかったのだろうか、会計を済ませるだけの所を子供が駄々を捏ねているのだろう。
あの男の子はギャラクリボーが欲しいと言っていたのも天音ちゃんは聞こえてしまったのか、天音ちゃんは見られないようにギャラクリボーをそっと手で覆うように隠していた。だが、天音ちゃんは男の子の方を見てはギャラクリボーを交互に見つめ、体をもじもじさせていた。
「天音、良いんだぞ 」
すると彼方さんは天音ちゃんの頭をポンと優しく撫でると、天音ちゃんは勇気を持って席を離れ、そのまま男の子の方に歩いていく。
「あ……あ……あ、の……! 」
必死に声を上げ、男の子は天音ちゃんの方に振り返った。
「誰? 」
「え……と、あの……ええと……こ……れ、あげ……る……ます 」
ドギマギした言葉の中、天音ちゃんは手のひらのギャラクリボーを見せ、男の子にあげた。
「わぁ!ギャラクリボーだ!良いの? 」
「う……う……ん、ほ、欲しいって、い、言っていた……から……その…… 」
「ありがとう! 」
男の子は笑顔でお礼を言うと、天音ちゃんは恥ずかしくなったのか彼方さんの方に言ってしまい、そのまま彼方さんにうずくまるようにした。
男の子の保護者の方も彼方さんが血縁関係の人と分かったのかお礼を言ってこの場から離れていった。
「よく頑張ったな天音。でも、良いのか?」
「うん、良いの。だって、あの子には会えるから 」
「……そうか 」
すると彼方さんは少し悲しげな顔をしていた。
「さて、そろそろ帰るとしよう。花衣君達はもういいだろ? 」
「俺は大丈夫です。皆も大丈夫か? 」
「私もお腹いっぱい〜。あ、そうだ!ねぇねぇ天音ちゃん、これあげる! 」
するとストレナエは当たったハネクリボーのフィギュアを天音ちゃんにあげた。
「え?良いの? 」
「良いよ〜。天音ちゃん渡す時悲しそうだったし。でも欲しかった奴じゃ無くてごめんね 」
「ううん……良いよ。ありがとう……嬉しい……な 」
「じゃあ私もこれあげる!」
「わ、私もこれ…… 」
プリムとシクランもクリボーンとリンクリボーのフィギュアを天音ちゃんに渡し、天音ちゃんも目を輝かせて喜んでくれていた。
「わぁ……ありがとう!やっぱり精霊さんは優しいね 」
「エヘヘ…… 」
「さ、そろそろ帰ろうか。ええと会計は…… 」
「あら?それならもう済ませたましたわよ 」
会計しようと思ったらカレンさんが漆黒のカードを取り出し、会計は済ませたと言ってきた。レシートもあるし、本当にいつの間にか会計したのだろう……って言うか、あれ……ブラックカードって奴だよな。
「お前な…… 」
「あのような端金なら私が払いますわよ。ご心配なく、私に取っては小銭の様な物なので 」
「お前それあまり人前で言うなよ 」
「あはは、カレンちゃんは相変わらずだね…… 」
「ふん、さっさと帰りますわよ。迎えはもう来ているので 」
「迎え? 」
着いてこいと言わんばかりに店の外に出ると、駐車場にはやけに目立つ車が2つあった。1つはどこかで見覚えがあり、見覚えがある人が扉の前で待っていた。
「あれは……陽向さん? 」
「はい、遅くなるからってお父様に連絡していたんです。流石お父様、丁度いい時間ですね 」
「そして向かい側の車が私の車ですわ。彼方、貴方は私の車に乗りなさい 」
「相変わらず準備が良いな。……ところで、花衣君は精霊をどうするつもりだ? 」
「うーん、とりあえずカードに戻します 」
「分かった。じゃあカレン、俺達は先に帰るぞ 」
彼方さんはティアドロップ達が精霊とは知らないカレンさんを先に帰らせてくれた。
「花音!次このような勝負をする時は必ず負けませんからねー! 」
「うん!私も負けないからー! 」
ライバル同士……と言っていいのか、カレンさんと花音は互いの再戦を誓って別れた。カレンさんが車に乗り込んで出発したのを確認し、周りに誰もいない事を確認すると皆をカードに戻し、ここにいるのは俺と花音だけどなった。
「じゃあ俺達も帰ろうか。ごめんな、迎え呼んだりして 」
「いえいえ、良いんですよ。夜道は危険ですので、迎えを出すのは当然ですから 」
やばい、花音が眩しく見える。これが人の優しさというものだろうか、夜道なのに周りが明るく見えそうであり、そんな幻覚をみながらも花音と一緒に車まで歩き、そこで陽向さんと出会った。
「やぁ花衣君、久方ぶりだね 」
「あれ?今日は執事モードじゃ無いんですね 」
「勤務時間外だからね 」
「お父様もいつもそんな態度で良いのに。部下の執事さん達にも言われてるんだよね? 」
「執事は俺と薫子の繋がりだからな。それよりも、早く乗ると良い。飲み物とか用意してるから 」
相変わらずこの人も準備が良いなぁ……流石先咲家の執事であり、その夫というべきか。
涼しい車内に乗り、やはり慣れないリムジンに乗って俺達は家へと向かっていく。
「大会はどうなったんだい? 」
「それが負けてしまいまして……はは 」
「それは残念だったね。花音はどうだった? 」
「私も少し残念な結果になって…… 」
「あらら、せっかく優勝して花衣君と誕生日パーテイをしようって言ってたのに 」
「わー!わー!お父さん!それは言わない約束! 」
「誕生日? 」
流石に俺でもこの事は聞いてしまい、花音は観念して話してくれた。
「……実は、ピックアップデュエルに優勝したら誕生日パーテイに招待しようと思ったんです。もし優勝したら、マリンセス・ビーチでそれをしようかなって思ったりして…… 」
「その優勝景品のマリンセス・ビーチの招待券の有効期限が花音の誕生日の8月7日なんだよ。つまり、その日までしか行けないからその日まであわよくば…… 」
「あわよくばなんて考えてませんからねっ!? 」
花音がグイッと顔を近づけて否定し、俺は思わず頷いた。それにしても……8月7日か……それって。
「俺の誕生日と同じだな…… 」
「え?そ、そうだったんですか!? 」
「あぁ。俺の誕生日も8月7日だ 」
「わぁ……同じ誕生日で名前に花が付いたりして……えへへ、何だか運命……ですね」
8月7日、つまり花の日に俺は生まれたから花衣って名前をしたんだと母さんは言っていたが……まさかの花音まで誕生日が同じだったとは……
「凄い偶然だね。……おっ、もうすぐで花衣君の家に付くけど、どの辺で止めたらいい? 」
「あ、じゃあもうこの辺りで良いですよ。ありがとうございました 」
「どういたしまして。……それじゃ、これからも花音の事、よろしくね 」
「はい。花音、今日はありがとうな 」
「こちらこそ。じゃあ、おやすみなさい、花衣さん 」
花音の車から降り、車が見えなくなるまで俺は手を振り続けてそのまま花音と別れた。
空も黒くなってすっかり夜になってしまい、長い1日が終わるとなって腕を伸ばし、体の力を抜いた。
「ふぅ、さて帰るか 」
「隣、失礼しますよ。花衣様 」
「ティアドロップ。……あれ?ほかの皆は? 」
「皆、今日は疲れて寝ていますよ。それよりも、私というものがいながら他の女性の事を考えないでください 」
「無理がある 」
そんないつも通りの話を交わしながら夜道の帰路を歩いていく。
「……なぁ、優勝景品のアレ。どうするつもりだ 」
アレとはマリンセス・ビーチの事ではなく、俺に対してのお願いを聞く権利の事だ。ティアドロップはその事を察し、マリンセス・ビーチの招待券をちらつかせた。
「勿論、これと併用して使います。思わぬ収穫でしたから使わない手はありません。これで2人きり……なんて事も出来ますね 」
「それなんだが……ちょっと良いか? 」
「さしずめ、お誕生日についてですよね 」
こいつ俺の心でも読めるのか?俺はコクリと頷き、ティアドロップは少し不満げながらも俺の話を聞いた。
「あぁ。そこに……俺の母さんや花音達も誘いたい。出来ればでいいんだが…… 」
「……確かにこの招待券は20人までなら招待可能です。人数的には問題無いでしょう。ですが、招待するのでしたら条件があります 」
「条件? 」
「1つ、私達精霊は全員実体化して過ごします。2つ目、ホテルの部屋は貴方と同じにすること。この2つの条件を受け入れたら招待します。どうですか? 」
大方予想出来た条件だ。しかしティアドロップと同室か……なんかろくな事ならなそうな気がするが……
「分かった。連絡して全員が行けそうなら招待は頼む 」
「交渉成立です。ふふ、今からが楽しみです 」
「だろうな……そろそろ家だ。一応カードに戻ってくれ 」
「分かりました。それでは、失礼します 」
ティアドロップは六花聖ティアドロップのカードとなり、俺はそれをポケットに入れてようやく家へと戻った。外からリビングの電気がついているのが分かる事から、母さんはまだリビングにいるようだ。
家の鍵を差し込んで回し、家の鍵をロックを解除して扉を開け、家の中へと入っていき、ただいまと言おうとした瞬間、リビングの方から母さんの怒鳴り声が聞こえた。
「ふざけないでっ!そんな話認めるわけありませんっ! 」
「……母さん? 」
珍しく声を荒らげた母さんに驚いてしまい、思わず足音を立てずに靴を脱ぎ、そっとリビングの扉を開けると、母さんは何やら電話をしていたようだった。
「確かにあの子は……だけど十分に制御している筈です。それにあの子がいなくなったら今後はどうするつもりですか?……分かっています。だけど…… 」
(誰と話してるんだ? それにあの子って誰の事だ? )
「とにかく私はその話には乗りません。あの子は守ります。絶対に 」
そう言って母さんは電話を切り、テーブルに座ってため息を吐いた。あまり触れない方がいい感じがして声をかけようが悩んでしまい、どうすれば良いか分からなかった。
すると母さんはこっちの気配に気づいたの俺の方に気づき、俺を見てかなり驚いた表情を浮かべた。
「花衣!?も、もう帰っていたのね 」
「う、うん。ただいま。さっきの電話って仕事の話? 」
「聞いていたのね……まぁ、そんな感じよ 」
気まずい空気となってしまい、母さんに誕生日の事を話しづらくなってしまった。8月まで2週間程度……それに焔と空との約束もある。早めに話さないとダメだが声が出しにくく、部屋に戻ろうとした。
「じゃあ、俺部屋に戻ってくよ…… 」
「待って! 」
すると母さんは俺の両肩を掴み、必死な形相でこう言った。
「花衣、どこか遠くにいかない?誰も知らない所に……ね? 」
俺はこの時、こう言われたような気がした。
しかもその遠くって言うのは、果てしなく遠く、この世界では無いように思えた。この瞬間、母さんがまるで違う世界から来た何かの様に見えた。
オリカをまとめた章が欲しい?
-
欲しい!
-
別に( *¯ ³¯*)